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特許7308166車両保護フィルム用粘着剤組成物及び車両保護フィルム
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  • 特許-車両保護フィルム用粘着剤組成物及び車両保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】車両保護フィルム用粘着剤組成物及び車両保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20230706BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230706BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230706BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J7/38
B32B27/30 A
B32B27/00 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020042374
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021143269
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 陽
(72)【発明者】
【氏名】竹口 港
(72)【発明者】
【氏名】狩野 肇
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159017(JP,A)
【文献】特開2018-165326(JP,A)
【文献】特開2018-35290(JP,A)
【文献】特開2017-132862(JP,A)
【文献】特開2019-19239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.5質量%~15質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、かつ、重量平均分子量が20万~180万である(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2.5質量%~20質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が0.3万~1万である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
金属キレート系架橋剤と、を含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部~35質量部であり、
前記金属キレート系架橋剤の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部~4質量部である車両保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が、-60℃~-10℃である請求項1に記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が、35℃~85℃である請求項1又は請求項2に記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物。
【請求項5】
基材と、前記基材上に設けられ、かつ、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える車両保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両保護フィルム用粘着剤組成物及び車両保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両保護フィルムは、車両の塗装面に傷、汚れ等が付かないように、外的要因から車両を守るための粘着フィルムである。このような粘着フィルムは、ペイントプロテクションフィルム(PPF)とも称され、近年、広く用いられている。車両保護フィルムは、車両に貼り付けた後、一定期間(例えば、3年)を経過した後に車両から剥離されるが、高温環境下に長期間曝されているため、車両から車両保護フィルムを剥離する際に、粘着剤層が車両に転着(所謂、糊残り)する場合がある。このため、高温環境下に曝された後に、糊残りを生じさせずに車両から剥離できるリワーク性が求められる。一般に、粘着フィルムのリワーク性を向上させるためには、粘着フィルムが備える粘着剤層の凝集力を高め、粘着剤層を硬くする必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、重量平均分子量が20万~200万である(メタ)アクリル系共重合体Aと、水酸基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位を含み、重量平均分子量が0.4万~2万である(メタ)アクリル系共重合体Bと、架橋剤と、を含有し、上記(メタ)アクリル系共重合体Bにおける水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の合計含有率b(単位:モル%)が、上記(メタ)アクリル系共重合体Aにおける水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位及びカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位の合計含有率a(単位:モル%)よりも多いフィルム用粘着剤組成物が開示されている。
特許文献1に開示されたフィルム用粘着剤組成物によれば、粘着剤層を形成する過程で、重量平均分子量が比較的低い(メタ)アクリル系共重合体Bが、粘着剤組成物の塗布膜の表面に偏在した後、架橋剤との間で架橋構造を形成する。このため、形成される粘着剤層は、表面付近(所謂、被着体との界面付近)が比較的硬くなり、リワーク性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-123224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両保護フィルムの被着体である車両は、三次元形状を有するため、車両保護フィルムの被着面は、曲面であることが多い。また、車両保護フィルムは、高温環境下に曝されることが多い。このため、車両保護フィルムには、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れることに加えて、高温環境下での曲面接着性に優れることが求められる。一般に、粘着フィルムの曲面接着性を向上させるためには、粘着フィルムが備える粘着剤層と被着体との密着性を高める必要がある。しかし、粘着フィルムのリワーク性を向上させるために、粘着フィルムが備える粘着剤層の凝集力を高め、粘着剤層を硬くすると、粘着剤層の被着体へのぬれ性が不足し、粘着剤層と被着体との密着性が低下する。このため、粘着フィルムの曲面接着性は、低下する傾向を示す。すなわち、凝集力の向上と密着性の向上とは、トレードオフの関係にあり、粘着フィルムにおいて、リワーク性と曲面接着性とを共に改善させることは、従来困難であった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被着体に対して良好な粘着力を示し、高温環境下での曲面接着性に優れ、かつ、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる車両保護フィルム用粘着剤組成物、及び車両保護フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.5質量%~15質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、かつ、重量平均分子量が20万~180万である(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2.5質量%~20質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が0.3万~1万である(メタ)アクリル系共重合体(B)と、
金属キレート系架橋剤と、を含み、
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部~35質量部であり、
上記金属キレート系架橋剤の含有量が、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部~4質量部である車両保護フィルム用粘着剤組成物。
<2> 上記(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が、-60℃~-10℃である<1>に記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物。
<3> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が、35℃~85℃である<1>又は<2>に記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物。
<4> 上記(メタ)アクリル系共重合体(B)が、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まない<1>~<3>のいずれか1つに記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物。
<5> 基材と、上記基材上に設けられ、かつ、<1>~<4>のいずれか1つに記載の車両保護フィルム用粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える車両保護フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被着体に対して良好な粘着力を示し、高温環境下での曲面接着性に優れ、かつ、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる車両保護フィルム用粘着剤組成物、及び車両保護フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における曲面接着性の評価試験方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、複数種の物質の合計量を意味する。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」とは、(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位〔即ち、(メタ)アクリル系共重合体の全構成単位〕の50質量%以上である共重合体を意味する。
【0013】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する用語であり、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方を包含する用語である。
【0014】
本明細書において、「n-」はノルマルを意味し、「i-」はイソを意味し、「s-」はセカンダリーを意味し、「t-」はターシャリーを意味する。
【0015】
本明細書において、「粘着剤組成物」とは、架橋反応が終了する前の液状又はペースト状の物質を意味する。
本明細書において、「粘着剤層」とは、粘着剤組成物における架橋反応が終了した後の物質からなる膜を意味する。
【0016】
[車両保護フィルム用粘着剤組成物]
本発明の車両保護フィルム用粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」ともいう。)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.5質量%~15質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、かつ、重量平均分子量が20万~180万である(メタ)アクリル系共重合体(A)〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体(A)」ともいう。〕と、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2.5質量%~20質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が0.3万~1万である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔以下、「特定(メタ)アクリル系共重合体(B)」ともいう。〕と、金属キレート系架橋剤と、を含み、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部~35質量部であり、金属キレート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部~4質量部である。
本発明の粘着剤組成物によれば、被着体に対して良好な粘着力を示し、高温環境下での曲面接着性に優れ、かつ、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる。
本発明の粘着剤組成物がこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本発明の粘着剤組成物を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0017】
本発明の粘着剤組成物は、重量平均分子量が比較的高い特定(メタ)アクリル系共重合体(A)と、重量平均分子量が比較的低い特定(メタ)アクリル系共重合体(B)と、を特定の割合で含むため、粘着剤層を形成する過程において、重量平均分子量が比較的低い特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、粘着剤組成物の塗布膜の表面に適度に偏在すると考えられる。本発明の粘着剤組成物は、架橋剤として金属キレート系架橋剤を含むが、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、金属キレート系架橋剤と架橋反応するカルボキシ基を含まないか、或いは、ほとんど含まないため、粘着剤層の表面付近(所謂、被着体との界面付近)において、架橋構造を形成しないか、或いは、架橋構造をほとんど形成しない。このため、粘着剤層の表面付近は、過度に硬くならないと考えられる。また、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、特定の割合以上の水酸基を有する特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、表面付近に適度に偏在するため、被着体へのぬれ性が良好となり、粘着剤層と被着体との密着性が高まると考えられる。よって、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下での曲面接着性に優れると推測される。一方、金属キレート系架橋剤と水酸基とは、弱い相互作用を示す。この相互作用によって、形成される粘着剤層は、適度な凝集力を示すと考えられる。また、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層では、特定の割合以下の水酸基を有する特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、表面付近に適度に偏在するため、粘着剤層と被着体との密着性は、過度に高くならないと考えられる。よって、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れると考えられる。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有し、金属キレート系架橋剤との間で架橋構造を形成する。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を適度に有するため、形成される粘着剤層は、被着体との相互作用により、十分な粘着力を発揮すると考えられる。よって、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、被着体に対して良好な粘着力を示すと考えられる。
【0018】
本発明の粘着剤組成物に対し、特許文献1に記載の粘着剤組成物では、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤を選択している。このため、粘着剤層を形成すると、表面付近が比較的硬くなり、被着体へのぬれ性が不足すると考えられる。よって、特許文献1に記載の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、リワーク性には優れるものの、曲面接着性は劣ると推測される。
【0019】
以下、本明細書では、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を「特定(メタ)アクリル系共重合体」と総称する。
【0020】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体(A)〕
本発明の粘着剤組成物は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.5質量%~15質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、かつ、重量平均分子量が20万~180万である(メタ)アクリル系共重合体(A)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)〕を含む。
【0021】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.5質量%~15質量%含む。
カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位のカルボキシ基は、後述の金属キレート系架橋剤と架橋反応し得る。
【0022】
本明細書において、「カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位」とは、カルボキシ基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0023】
カルボキシ基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、グルタコン酸、シトラコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート〔例えば、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート〕、コハク酸エステル〔例えば、2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸〕等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸(AA)が好ましい。
【0024】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、0.5質量%~15質量%であり、1質量%~15質量%であることが好ましく、3質量%~15質量%であることがより好ましく、5質量%~15質量%であることが更に好ましく、5質量%~12質量%であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0.5質量%以上であると、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、金属キレート系架橋剤と十分に架橋することで、形成される粘着剤層が十分な凝集力を示すためと考えられる。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0.5質量%以上であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
また、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して15質量%以下であると、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層の被着体との密着性が高くなりすぎないためと考えられる。
【0026】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、形成される粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0027】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体」には、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、含まれない。
【0028】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート(MA)、n-ブチルアクリレート(n-BA)、及び2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0030】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して、50質量%以上であり、50質量%~99.5質量%であることが好ましく、55質量%~99質量%であることがより好ましく、60質量%~97質量%であることが更に好ましく、65質量%~95質量%であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0032】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含むことができる。
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体の具体例は、後述の特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0033】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む場合、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0034】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて15質量%以下の範囲であることが好ましく、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて10質量%以下の範囲であることがより好ましく、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて5質量%以下の範囲であることが更に好ましく、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)が水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の全構成単位に対して0質量%を超えて15質量%以下の範囲であると、高温環境下に曝された後のリワーク性により優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
【0035】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、本発明の効果が発揮される範囲において、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含むことができる。
【0036】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0037】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0038】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0039】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(「Tg」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば、-60℃~-10℃であることが好ましく、-60℃~-15℃であることがより好ましく、-50℃~-15℃であることが更に好ましく、-45℃~-20℃であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が、上記範囲内であると、被着体に対してより良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が、適度に柔らかくなるためと考えられる。
【0040】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、下記の式1から計算により求められる絶対温度(単位:K;以下、同じ。)をセルシウス温度(単位:℃;以下、同じ。)に換算した値である。
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2+・・・+m(k-1)/Tg(k-1)+mk/Tgk (式1)
【0041】
式1中、Tg1、Tg2、・・・、Tg(k-1)、及びTgkは、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体を単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度をそれぞれ表す。m1、m2、・・・、m(k-1)、及びmkは、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を構成する各単量体のモル分率をそれぞれ表し、m1+m2+・・・+m(k-1)+mk=1である。
なお、絶対温度から273を引くことで絶対温度をセルシウス温度に換算でき、セルシウス温度に273を足すことでセルシウス温度を絶対温度に換算できる。
【0042】
本明細書において、「単独重合体としたときの絶対温度で表されるガラス転移温度」とは、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度で表されるガラス転移温度をいう。
単独重合体のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)〔型番:EXSTAR6000、セイコーインスツル(株)〕を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0043】
代表的な単量体の「単独重合体としたときのセルシウス温度で表されるガラス転移温度」は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が-76℃、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)が-10℃、n-ブチルアクリレート(n-BA)が-57℃、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)が21℃、t-ブチルアクリレート(t-BA)が41℃、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)が107℃、i-ブチルメタクリレート(i-BMA)が48℃、メチルアクリレート(MA)が5℃、メチルメタクリレート(MMA)が103℃、イソボニルメタクリレート(IBXMA)が155℃、イソボニルアクリレート(IBXA)が96℃、エチルアクリレート(EA)が-27℃、メタクリル酸が185℃、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が-39℃、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)が-15℃、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が55℃、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2HPA)が-7℃、アクリル酸(AA)が163℃、i-オクチルアクリレート(i-OA)が-75℃、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)が18℃、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートが-30℃、及び2-アクリロイルオキシエチル-コハク酸が-40℃である。
【0044】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0045】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(「Mw」ともいう。)は、20万~180万であり、30万~150万であることが好ましく、40万~140万であることがより好ましく、40万~130万であることが更に好ましく、40万~120万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が20万以上であると、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が十分な凝集力を示すためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量が180万以下であると、被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が、架橋によって硬くなりすぎないためと考えられる。
【0046】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、下記の方法により測定される値である。具体的には、下記の(1)~(3)に従って測定する。
(1)特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)とテトラヒドロフランとを用いて、固形分濃度が0.2質量%である試料溶液を得る。なお、ここでいう「固形分濃度」とは、試料溶液に占める特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の質量割合を意味する。
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、下記条件にて、標準ポリスチレン換算値として、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量を測定する。
【0047】
~条件~
測定装置:高速GPC〔型番:HLC-8220 GPC、東ソー(株)〕
検出器:示差屈折率計(RI)〔HLC-8220に組込、東ソー(株)〕
カラム:TSK-GEL GMHXL〔東ソー(株)〕を直列に4本接続
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
試料溶液の注入量:100μL
流量:0.8mL/分
【0048】
特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0049】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有率は、特に限定されないが、例えば、粘着剤組成物中の全固形分量に対して、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~95質量%であることがより好ましく、70質量%~95質量%であることが更に好ましく、75質量%~92質量%であることが特に好ましい。
本明細書において、「粘着剤組成物中の全固形分量」とは、粘着剤組成物が溶媒を含まない場合には、粘着剤組成物の全質量を意味し、粘着剤組成物が溶媒を含む場合には、粘着剤組成物から溶媒を除いた残渣の質量を意味する。
【0050】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕
本発明の粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2.5質量%~20質量%、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含み、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位に対して0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であり、かつ、重量平均分子量が0.3万~1万である(メタ)アクリル系共重合体(B)〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕を含む。また、本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部~35質量部である。
【0051】
<水酸基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して2.5質量%~20質量%含む。
本明細書において、「水酸基を有する単量体に由来する構成単位」とは、水酸基を有する単量体が付加重合して形成される構成単位を意味する。
【0052】
水酸基を有する単量体の種類は、特に限定されない。
水酸基を有する単量体の具体例としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)が特に好ましい。
【0053】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0054】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、2.5質量%~20質量%であり、3質量%~18質量%であることが好ましく、5質量%~18質量%であることがより好ましく、7質量%~17質量%であることが更に好ましく、9質量%~17質量%であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して2.5質量%以上であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が被着体と十分に密着するためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して20質量%以下であると、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層の被着体との密着性が高くなりすぎないためと考えられる。
【0055】
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して50質量%以上含む。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位は、形成される粘着剤層の粘着力の調整に寄与する。
【0056】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の種類は、特に限定されない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、無置換の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のいずれであってもよい。
アルキル基の炭素数は、例えば、1~18であることが好ましく、1~12であることがより好ましく、1~8であることが更に好ましい。
【0057】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の具体例と同様であるため、ここでは説明を省略する。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、2-エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、n-ブチルメタクリレート(n-BMA)、t-ブチルメタクリレート(t-BMA)、及びi-ブチルメタクリレート(i-BMA)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0058】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0059】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、50質量%以上であり、50質量%~97.5質量%であることが好ましく、55質量%~97質量%であることがより好ましく、60質量%~95質量%であることが更に好ましく、65質量%~93質量%であることが特に好ましい。
ここで、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)における(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位の含有率が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して50質量%以上であることは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位が、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)を構成する構成単位の主成分として含まれていることを意味する。
【0060】
<カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であり、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.15質量%以下の範囲であることが好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.1質量%以下の範囲であることがより好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.05質量%以下の範囲であることが更に好ましく、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないことが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であると、被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が金属キレート系架橋剤と架橋反応しない、又は、過度に架橋反応せず、形成される粘着剤層が、架橋によって硬くなりすぎないためと考えられる。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)がカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を含まないか、又は、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の全構成単位に対して、0質量%を超えて0.2質量%以下の範囲であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が金属キレート系架橋剤と架橋反応しない、又は、過度に架橋反応せず、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が適度に粘着剤層の表面に偏在し、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)中の水酸基によって、粘着剤層が被着体と十分に密着するためと考えられる。
【0061】
<その他の構成単位>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、本発明の効果が発揮される範囲において、既述の構成単位以外の構成単位(所謂、その他の構成単位)を含むことができる。
【0062】
その他の構成単位を構成する単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びエトキシエチル(メタ)アクリレートに代表されるアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、クロロメチルスチレン、及びビニルトルエンに代表される芳香族モノビニル、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル、並びに、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルに代表されるビニルエステルが挙げられる。また、これらの単量体の各種誘導体が挙げられる。
【0063】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)は、その他の構成単位を含む場合、その他の構成単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)がその他の構成単位を含む場合、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)におけるその他の構成単位の含有率は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0065】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、35℃~85℃であることが好ましく、35℃~75℃であることがより好ましく、35℃~65℃であることが更に好ましく、40℃~65℃であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が35℃以上であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が適度な凝集力を示すためと考えられる。また、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が35℃以上であると、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が被着体に過度に濡れないためと考えられる。さらに、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が35℃以上であると、被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が適度に硬くなるためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度が85℃以下であると、被着体に対してより良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が、硬くなりすぎないためと考えられる。
【0066】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度と同様の方法により求められる値である。
【0067】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)のガラス転移温度は、例えば、単独重合体としたときのガラス転移温度が異なる単量体を2種以上用いることで、適宜調整できる。
【0068】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量>>
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、0.3万~1万であり、0.3万~0.9万であることが好ましく、0.3万~0.8万であることがより好ましく、0.3万~0.7万であることが更に好ましく、0.4万~0.6万であることが特に好ましい。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が0.3万以上であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、粘着剤層の表面に偏在し、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)中の水酸基によって、粘着剤層が被着体と十分に密着するためと考えられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が1万以下であると、被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、過度に粘着剤層の表面に偏在せず、十分な粘着力が得られるためと考えられる。
【0069】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と同様の方法により測定される値である。
【0070】
特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、有機溶媒の使用量、重合開始剤の種類、重合開始剤の使用量等を調整することにより、所望の値にできる。
【0071】
<<特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量>>
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、5質量部~35質量部であり、10質量部~35質量部であることが好ましく、10質量部~30質量部であることがより好ましく、15質量部~30質量部であることが更に好ましく、15質量部~25質量部であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して5質量部以上であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、粘着剤層の表面に偏在し、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)中の水酸基によって、粘着剤層が被着体と十分に密着するためと考えられる。
本発明の粘着剤組成物における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して35質量部以下であると、被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、特定(メタ)アクリル系共重合体(B)が、過度に粘着剤層の表面に偏在せず、十分な粘着力が得られるためと考えられる。
【0072】
〔特定(メタ)アクリル系共重合体の製造方法〕
特定(メタ)アクリル系共重合体〔即ち、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)及び特定(メタ)アクリル系共重合体(B)〕の製造方法は、特に限定されない。
特定(メタ)アクリル系共重合体は、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、及び塊状重合法に代表される公知の重合方法で、既述の単量体を重合することにより製造できる。
重合方法としては、製造後に本発明の粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単であり、かつ、短時間で行える点で、溶液重合法が好ましい。
【0073】
溶液重合法では、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、例えば、窒素気流中、有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる。この場合、有機溶媒、単量体、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0074】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素化合物、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族系又は脂環族系炭化水素化合物、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン化合物、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル化合物、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールに代表されるアルコール化合物が挙げられる。
【0075】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、芳香族炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物等の重合反応中に連鎖移動を生じ難い有機溶媒の使用が好ましく、特に、特定(メタ)アクリル系共重合体の溶解性、重合反応の容易さ等の観点から、酢酸エチルの使用が好ましい。
【0076】
重合反応時には、有機溶媒を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0077】
重合開始剤としては、通常の溶液重合法で用いられる有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、ジ-i-プロピルペルオキシジカルボナート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカルボナート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)ブタン、及び2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルペルオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN〕、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)〔ABVN〕、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤の使用が好ましく、特に、アゾ化合物の使用が好ましい。
【0078】
重合反応時には、重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0079】
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0080】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いてもよい。
連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸、シアノ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、ブロモ酢酸、ブロモ酢酸の炭素数1~8のアルキルエステル化合物、α-メチルスチレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、及び9-フェニルフルオレンに代表される芳香族化合物、p-ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p-ニトロ安息香酸、p-ニトロフェノール、及びp-ニトロトルエンに代表される芳香族ニトロ化合物、ベンゾキノン及び2,3,5,6-テトラメチル-p-ベンゾキノンに代表されるベンゾキノン誘導体、トリブチルボランに代表されるボラン誘導体、四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、及び3-クロロ-1-プロペンに代表されるハロゲン化炭化水素化合物、クロラール及びフラルデヒドに代表されるアルデヒド化合物、炭素数1~18のアルキルメルカプタン化合物、チオフェノール及びトルエンメルカプタンに代表される芳香族メルカプタン化合物、メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1~10のアルキルエステル化合物、炭素数1~12のヒドロキシアルキルメルカプタン化合物、並びに、ピネン及びターピノレンに代表されるテルペン化合物が挙げられる。
【0081】
特定(メタ)アクリル系共重合体の製造に際し、連鎖移動剤を用いる場合、連鎖移動剤の使用量は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0082】
重合温度は、特に限定されず、例えば、目的とする特定(メタ)アクリル系共重合体の分子量に応じて、適宜設定できる。
【0083】
〔金属キレート系架橋剤〕
本発明の粘着剤組成物は、金属キレート系架橋剤を含む。また、本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部~4質量部である。
【0084】
本明細書において、「金属キレート系架橋剤」とは、架橋剤として機能する金属キレート化合物を指す。
【0085】
金属キレート系架橋剤としては、特に限定されず、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、及びアルミニウムトリス(アセチルアセトネート)に代表されるアルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、コバルトキレート化合物等が挙げられる。
金属キレート系架橋剤としては、例えば、架橋速度の観点から、アルミニウムキレート化合物が好ましい。
【0086】
金属キレート系架橋剤としては、市販品を使用できる。
金属キレート系架橋剤の市販品の例としては、アルミキレートA〔商品名、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、川研ファインケミカル(株)〕、アルミキレートD〔商品名、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)〕、及びALCH-TR〔商品名、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、川研ファインケミカル(株)〕が挙げられる。
【0087】
本発明の粘着剤組成物は、金属キレート系架橋剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0088】
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量は、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部~4質量部であり、0.05質量部~3質量部であることが好ましく、0.1質量部~3質量部であることがより好ましく、0.1質量部~2質量部であることが更に好ましく、0.1質量部~1質量部であることが特に好ましい。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上であると、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が、架橋によって十分な凝集力を示すためと考えられる。また、本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して0.01質量部以上であると、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層を形成できる傾向がある。
本発明の粘着剤組成物における金属キレート系架橋剤の含有量が、特定(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対して4質量部以下であると、被着体に対して良好な粘着力を示す粘着剤層を形成できる傾向がある。理由としては、形成される粘着剤層が、架橋によって硬くなりすぎないためと考えられる。
【0089】
〔有機溶媒〕
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含むと、塗布性が向上し得る。
有機溶媒としては、例えば、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0090】
本発明の粘着剤組成物は、有機溶媒を含む場合、有機溶媒を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0091】
本発明の粘着剤組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は、特に限定されず、目的に応じて、適宜設定できる。
【0092】
〔その他の成分〕
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、既述した成分以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、金属キレート系架橋剤以外の架橋剤(例えば、エポキシ系架橋剤)、架橋触媒、着色剤(例えば、染料及び顔料)、光安定剤(例えば、紫外線吸収剤)等が挙げられる。
【0093】
本発明の粘着剤組成物がその他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、本発明の効果が発揮される範囲において、適宜設定できる。
【0094】
[用途]
本発明の粘着剤組成物は、被着体に対して良好な粘着力を示し、高温環境下での曲面接着性に優れ、かつ、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層を形成できるため、車両を保護するためのフィルム(所謂、車両保護フィルム)用として好適である。詳細には、本発明の粘着剤組成物は、車両の塗装面を保護するためのフィルム(所謂、ペイントプロテクションフィルム)に好ましく用いられる。
車両としては、特に限定されず、例えば、自動車、自動二輪車、列車等の車両が挙げられる。
塗装面としては、特に限定されず、例えば、メラミン塗装、アルキド塗装、アルキドメラミン塗装、アクリル塗装、ウレタン塗装、エポキシ塗装等が施された塗装面が挙げられる。
【0095】
[車両保護フィルム]
本発明の車両保護フィルム(以下、単に「保護フィルム」ともいう。)は、基材と、上記基材上に設けられ、かつ、既述の本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層と、を備える。すなわち、本発明の保護フィルムでは、基材と、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層とが、積層されている。
本発明の保護フィルムは、本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層を備えるため、被着体に対して良好な粘着力を示し、高温環境下での曲面接着性に優れ、かつ、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる。
【0096】
基材は、その基材上に粘着剤層を形成できれば、特に限定されない。
基材としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース樹脂)、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂を含むフィルムが挙げられる。また、基材としては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)フィルムも挙げられる。
基材としては、例えば、表面保護性能の観点から、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)フィルムが好ましい。
【0097】
基材は、可塑剤、着色剤(例えば、染料及び顔料)、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
基材は、一部又は全体に、模様が施されていてもよい。
【0098】
基材の厚さは、特に限定されないが、一般には500μm以下であり、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。
基材の厚さの下限は、例えば、保護フィルムの強度の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0099】
基材の片面又は両面には、帯電防止層が設けられていてもよい。また、基材の粘着剤層が設けられる側の表面には、基材と粘着剤層との密着性を向上させる観点から、コロナ放電処理、プラズマ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0100】
粘着剤層の形成方法は、特に限定されず、通常用いられる方法を採用できる。
基材上に粘着剤層を形成する方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、基材上に塗布し、塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、基材上に形成した粘着膜を養生することにより、基材上に粘着剤層を形成する。
【0101】
本発明の保護フィルムにおいて、露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離を容易に行えるものであれば、特に限定されず、例えば、片面又は両面に剥離処理剤による表面処理(所謂、易剥離処理)が施された樹脂フィルムが挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。
剥離処理剤としては、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物等が挙げられる。
剥離フィルムは、保護フィルムを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0102】
基材上に粘着剤層を形成する別の方法としては、例えば、以下の方法を採用できる。
本発明の粘着剤組成物を、そのままの状態で、又は、必要に応じて溶媒で希釈した状態で、剥離剤による表面処理が施された紙、樹脂フィルム等の剥離フィルム上に塗布し、剥離フィルム上に塗布膜を形成する。次いで、形成した塗布膜を乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜の露出した面を基材に接触させて加圧し、粘着膜を基材に転写することにより、基材上に粘着膜を形成する。次いで、形成した粘着膜を養生させることにより、基材上に粘着剤層を形成する。
【0103】
基材上又は剥離フィルム上に、粘着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、バーコーター、アプリケーター等を用いる公知の方法が挙げられる。
基材上又は剥離フィルム上への粘着剤組成物の塗布量は、形成する粘着剤層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0104】
粘着剤層の厚さは、保護フィルムに求められる粘着力、被着体の種類(例えば、材質及び形状)、被着体の表面粗さ等に応じて、適宜設定できる。
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、一般には1μm~100μmであり、5μm~50μmであることが好ましく、10μm~45μmであることがより好ましく、15μm~40μmであることが更に好ましい。
【0105】
基材上又は剥離フィルム上に形成した塗布膜を乾燥させる方法としては、特に限定されず、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されず、塗布膜の厚さ、塗布膜中の有機溶媒の量等に応じて、適宜設定される。
乾燥条件の一例としては、熱風乾燥機を用いて、70℃~120℃で1分間~3分間乾燥させる条件が挙げられる。
【0106】
養生は、例えば、20℃~35℃の環境下で、4日間~7日間行う。
養生により、粘着剤組成物の架橋反応が終了して粘着剤層が形成される。
【実施例
【0107】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
[(メタ)アクリル系共重合体Aの製造]
〔製造例A-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置の反応容器内に、酢酸エチル〔有機溶媒〕70.0質量部を仕込んだ。
また、別の容器に、n-ブチルアクリレート〔n-BA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕70.0質量部、メチルアクリレート〔MA;アクリル酸アルキルエステル単量体〕20.0質量部、及びアクリル酸〔AA;カルボキシ基を有する単量体〕10.0質量部からなる単量体混合物100.0質量部を準備した。この準備した単量体混合物のうちの20.0質量%を上記反応容器内に仕込んだ後、加熱し、還流温度で10分間還流を行った。
次いで、還流温度条件下で、上記単量体混合物の残り80.0質量%と、酢酸エチル50.0質量部と、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル〔AIBN;重合開始剤〕0.026質量部と、を120分間かけて上記反応容器内に逐次滴下し、滴下終了後に、更に30分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が35.0質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液を得た。
【0109】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体A-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系共重合体A-2~A-11の各溶液についても同様である。
【0110】
〔製造例A-2、A-3、A-8、及びA-9〕
製造例A-2、A-3、A-8、及びA-9では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体Aの重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が35.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-2、A-3、A-8、及びA-9の各溶液を得た。
【0111】
〔製造例A-4~A-7、A-10、及びA-11〕
製造例A-4~A-7、A-10、及びA-11では、(メタ)アクリル系共重合体Aの単量体組成を、表1に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体Aの重量平均分子量(Mw)を、表1に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例A-1と同様の操作を行い、固形分濃度が35.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体A-4~A-7、A-10、及びA-11の各溶液を得た。
【0112】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-11の単量体組成(単位:質量%)、重量平均分子量〔Mw、単位:万(表中では、「×10と表記)〕、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表1に示す。
【0113】
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-11の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-11のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算した。
【0114】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-11のうち、(メタ)アクリル系共重合体A-1~A-7は、本発明における特定(メタ)アクリル系共重合体(A)に相当する。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「2EHA」:2-エチルヘキシルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「n-BA」:n-ブチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「MA」:メチルアクリレート(アクリル酸アルキルエステル単量体)
「AA」:アクリル酸(カルボキシ基を有する単量体)
【0117】
表1中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表1では、「重量平均分子量」を「Mw」と表記し、「ガラス転移温度」を「Tg」と表記した。
【0118】
[(メタ)アクリル系共重合体Bの製造]
〔製造例B-1〕
撹拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応装置の反応容器内に、酢酸エチル〔有機溶媒〕60質量部を仕込んだ。
次いで、別の容器に、i-ブチルメタクリレート〔i-BMA;メタクリル酸アルキルエステル単量体〕85.0質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート〔2HEMA;水酸基を有する単量体〕15.0質量部、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル〔重合開始剤〕3.4質量部を入れて混合した溶液を準備した。
この準備した溶液を、還流温度条件下で、180分間かけて上記反応容器内に逐次滴下し、滴下終了後に、更に180分間反応させ、反応を完結させた。反応完結後の溶液を、固形分濃度が61.0質量%となるように酢酸エチルを用いて希釈し、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液を得た。
【0119】
ここでいう「固形分濃度」とは、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液に占める(メタ)アクリル系共重合体B-1の質量割合を意味する。
以下の(メタ)アクリル系共重合体B-2~B-16の各溶液についても同様である。
【0120】
〔製造例B-2、B-5~B-11、及びB-14~B-16〕
製造例B-2、B-5~B-11、及びB-14~B-16では、(メタ)アクリル系共重合体Bの単量体組成を、表2に示す単量体組成に変更したこと、並びに、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が61.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-2、B-5~B-11、及びB-14~B-16の各溶液を得た。
【0121】
〔製造例B-3、B-4、B-12、及びB-13〕
製造例B-3、B-4、B-12、及びB-13では、有機溶媒の使用量及び重合開始剤の使用量の少なくとも一方を調整することにより、(メタ)アクリル系共重合体Bの重量平均分子量(Mw)を、表2に示す重量平均分子量(Mw)に調整したこと以外は、製造例B-1と同様の操作を行い、固形分濃度が61.0質量%である(メタ)アクリル系共重合体B-3、B-4、B-12、及びB-13の各溶液を得た。
【0122】
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-16の単量体組成(単位:質量%)、重量平均分子量(Mw)、及びガラス転移温度(Tg、単位:℃)を表2に示す。
【0123】
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-16の重量平均分子量(Mw)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の測定方法と同様の方法により測定した。
(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-16のガラス転移温度(Tg)は、既述の特定(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の計算方法と同様の方法により計算した。
【0124】
上記にて得られた(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-16のうち、(メタ)アクリル系共重合体B-1~B-11は、本発明における特定(メタ)アクリル系共重合体(B)に相当する。
【0125】
【表2】
【0126】
表2に記載の各単量体の詳細は、以下に示すとおりである。
「2EHMA」:2-エチルヘキシルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「n-BMA」:n-ブチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「t-BMA」:t-ブチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「i-BMA」:i-ブチルメタクリレート(メタクリル酸アルキルエステル単量体)
「AA」:アクリル酸(カルボキシ基を有する単量体)
「2HEMA」:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(水酸基を有する単量体)
「2HEA」:2-ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基を有する単量体)
「4HBA」:4-ヒドロキシブチルアクリレート(水酸基を有する単量体)
【0127】
表2中、単量体組成の欄に記載の「-」は、その欄に該当する単量体を含んでいないことを意味する。
表2では、「重量平均分子量」を「Mw」と表記し、「ガラス転移温度」を「Tg」と表記した。
【0128】
[粘着剤組成物の調製]
〔実施例1〕
(メタ)アクリル系共重合体A-1の溶液285.7質量部(固形分として100質量部)と、(メタ)アクリル系共重合体B-1の溶液32.8質量部(固形分として20質量部)と、金属キレート系架橋剤としてアルミキレートA〔商品名、化学名:アルミニウムトリスアセチルアセトネート、川研ファインケミカル(株)〕0.4質量部(固形分として0.4質量部)と、を十分に混合して、実施例1の粘着剤組成物を得た。
【0129】
〔実施例2~22〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~22の各粘着剤組成物を得た。
【0130】
〔比較例1~17〕
実施例1において、粘着剤組成物の組成を表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~17の各粘着剤組成物を得た。
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
表3及び表4中、「-」は、その欄に該当する成分を配合していないことを意味する。
表3及び表4中、「配合量」の欄に記載の数値は、全て固形分換算値である。
【0134】
表3及び表4に記載の成分の詳細は、以下に示すとおりである。
<金属キレート系架橋剤>
「アルミキレートA」〔商品名、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、川研ファインケミカル(株)〕
<その他の架橋剤又は比較架橋剤>
「コロネート L-45E」〔商品名:コロネート(登録商標) L-45E、東ソー(株)〕:イソシアネート系架橋剤
「TETRAD-X」〔商品名:TETRAD(登録商標)-X、三菱ガス化学(株)〕:エポキシ系架橋剤
<比較化合物>
「D-6011」〔商品名:パインクリスタル D-6011、ロジン樹脂、分子量:1100、荒川化学工業(株)〕:粘着付与樹脂
【0135】
[評価]
上記にて調製した粘着剤組成物を用い、以下の評価を行った。
結果を表5及び表6に示す。
【0136】
<評価用粘着シートの作製>
シリコーン系剥離処理剤で表面処理された剥離フィルム〔商品名:フィルムバイナ(登録商標)100E-0010N023、藤森工業(株)〕の表面処理面に、乾燥後の厚みが30μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、塗布膜を形成した。
次いで、形成した塗布膜を、熱風循環式乾燥機を用いて、乾燥温度100℃及び乾燥時間1分間の乾燥条件で乾燥させ、剥離フィルム上に粘着膜を形成した。
次いで、粘着膜の露出した面を、基材としてのTPU(熱可塑性ポリウレタンエラストマー)フィルム〔商品名:シルクロン(登録商標)、グレード名:SNY97、厚さ:150μm、大倉工業(株)〕に重ねて貼り合わせた後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下にて4日間養生を行うことで、評価用粘着シートを作製した。作製した評価用粘着シートは、剥離フィルム/粘着剤層/基材(TPUフィルム)の積層構造を有する。
【0137】
1.被着体に対する粘着力
評価用粘着シートを切断し、25mm×150mmの大きさの評価用粘着シート片を準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/基材(TPUフィルム)〕の剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、被着体としての白色塗装板〔型番:SPCC-CD、メラミン塗装、(株)パルテック〕の塗装面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、積層体を作製した。作製した積層体は、被着体(白色塗装板)/評価用粘着シート片〔構成:粘着剤層/基材(TPUフィルム)〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に24時間静置し、試験片とした。
この試験片について、被着体(白色塗装板)から粘着シート片を長辺(150mm)方向に180°剥離したときの粘着力(単位:N/25mm)を、測定装置としてシングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、剥離速度300mm/分の条件で測定した。そして、下記の評価基準に従って、被着体(白色塗装板)に対する粘着力を評価した。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、被着体(白色塗装板)に対して良好な粘着力を示す粘着剤層であると判断した。
【0138】
-評価基準-
A:粘着力が20N/25mm以上である。
B:粘着力が15N/25mm以上20N/25mm未満である。
C:粘着力が10N/25mm以上15N/25mm未満である。
D:粘着力が10N/25mm未満である。
【0139】
2.高温環境下での曲面接着性
曲面接着性は、以下に示す手順の定荷重試験の結果を指標とし、評価した。
評価用粘着シートを切断し、25mm×150mmの大きさの評価用粘着シート片を準備した。次いで、準備した評価用粘着シート片〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/基材(TPUフィルム)〕から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、被着体としての白色塗装板〔型番:SPCC-CD、メラミン塗装、(株)パルテック〕の塗装面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、積層体を作製した。作製した積層体は、被着体(白色塗装板)/評価用粘着シート片〔構成:粘着剤層/基材(TPUフィルム)〕の積層構造を有する。次いで、作製した積層体を、雰囲気温度80℃の環境下に30分間静置し、試験片とした。この試験片を用いて、高温環境下での曲面接着性の評価試験を行った。
評価試験の方法を、図面(図1)を参照しながら説明する。
被着体(白色塗装板)10から評価用粘着シート片〔粘着剤層20/基材(TPUフィルム)30〕を少し剥離した。次いで、剥離した評価用粘着シート片〔粘着剤層20/基材(TPUフィルム)30〕に、セロハンテープSを用いて、被着体(白色塗装板)10に対して90°の方向(被着面の法線方向)に100gの荷重が加わるように、重りWを吊るした。評価用粘着シート片の剥がれ始めのスタート位置に印を付けた後、雰囲気温度80℃の環境下にて30分間放置した。30分間の放置後、評価用粘着シート片の剥がれた長さ(単位:mm)を測定した。そして、下記の評価基準に従って、高温環境下での曲面接着性を評価した。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、高温環境下での曲面接着性に優れる粘着剤層であると判断した。
【0140】
-評価基準-
A:評価用粘着シート片の剥がれた長さが2mm未満である。
B:評価用粘着シート片の剥がれた長さが2mm以上5mm未満である。
C:評価用粘着シート片の剥がれた長さが5mm以上10mm未満である。
D:評価用粘着シート片の剥がれた長さが10mm以上である。
【0141】
3.高温環境下に曝された後のリワーク性
評価用粘着シートを切断し、25mm×150mmの大きさの評価用粘着シート片を2枚準備した。
準備した2枚の評価用粘着シート片〔構成:剥離フィルム/粘着剤層/基材(TPUフィルム)〕から剥離フィルムを剥離し、剥離により露出した粘着剤層の面を、それぞれ別の、被着体としての白色塗装板〔型番:SPCC-CD、メラミン塗装、(株)パルテック〕の塗装面に重ねて貼り合わせた後、2kgのローラーを1往復させて圧着し、積層体を2つ作製した。作製した2つの積層体は、いずれも被着体(白色塗装板)/評価用粘着シート片〔構成:粘着剤層/基材(TPUフィルム)〕の積層構造を有する。次いで、作製した2つの積層体を、雰囲気温度80℃の環境下に1週間静置した後、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下に1時間静置し、それぞれ試験片A及び試験片Bとした。これらの試験片を用いて、高温環境下に曝された後のリワーク性の評価試験を行った。
まず、試験片Aについて、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、被着体(白色塗装板)から評価用粘着シート片を、剥離速度300mm/分で長辺(150mm)方向に180°剥離した。
次に、試験片Bについて、雰囲気温度23℃、50%RHの環境下、シングルコラム型材料試験機〔型番:STA-1225、(株)エー・アンド・デイ〕を用い、被着体(白色塗装板)から評価用粘着シート片を、剥離速度1000mm/分で長辺(150mm)方向に180°剥離した。
試験片A及び試験片Bのそれぞれについて、剥離後の被着体(白色塗装板)の表面を目視にて観察し、糊残りの合計面積を求めた。なお、糊残りの合計面積は、糊残り部分を長方形に近似し、近似した長方形の面積を合計し、算出した。そして、下記の評価基準に従って、高温環境下に曝された後のリワーク性を評価した。
評価結果が「A」、「B」、又は「C」であれば、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れる粘着剤層であると判断した。
【0142】
-評価基準-
A:剥離速度1000mm/分で剥離した場合における被着体への糊残りの合計面積が、貼り合わせ面積に対して5%未満である。
B:剥離速度1000mm/分で剥離した場合における被着体への糊残りの合計面積は、貼り合わせ面積に対して5%以上50%未満であるが、剥離速度300mm/分で剥離した場合における被着体への糊残りの合計面積は、貼り合わせ面積に対して5%未満である。
C:剥離速度1000mm/分で剥離した場合における被着体への糊残りの合計面積は、貼り合わせ面積に対して50%以上であるが、剥離速度300mm/分で剥離した場合における被着体への糊残りの合計面積は、貼り合わせ面積に対して5%未満である。
D:剥離速度300mm/分で剥離した場合における被着体への糊残りの合計面積が、貼り合わせ面積に対して5%以上である。
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
表5に示すように、実施例1~22の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対して良好な粘着力を示し、高温環境下での曲面接着性に優れ、かつ、高温環境下に曝された後のリワーク性に優れることが確認された。
一方、表6に示すように、比較例1~17の粘着剤組成物により形成された粘着剤層は、被着体に対する粘着力、高温環境下での曲面接着性、及び高温環境下に曝された後のリワーク性の少なくとも1つの評価において、実施例の粘着剤組成物により形成された粘着剤層よりも劣ることが確認された。
【符号の説明】
【0146】
10 被着体(白色塗装板)
20 粘着剤層
30 基材(TPUフィルム)
S セロハンテープ
W 重り
図1