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特許7308203新規の回折格子構成を有する導波管ディスプレイ及びディスプレイ要素
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】新規の回折格子構成を有する導波管ディスプレイ及びディスプレイ要素
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20230706BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20230706BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
G02B6/00 301
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020533678
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FI2018050959
(87)【国際公開番号】W WO2019122529
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】20176157
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520184365
【氏名又は名称】ディスペリックス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロムステット、カシミール
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0085642(US,A1)
【文献】国際公開第2017/193012(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0322418(US,A1)
【文献】特表2019-523895(JP,A)
【文献】国際公開第2009/083977(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第106526730(CN,A)
【文献】特表2009-516225(JP,A)
【文献】特表2010-519588(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0038049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 27/02
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管と、導波管の上に又は導波管の中に配置される少なくとも1つの回折格子とを備える導波管イメージ・ディスプレイ要素であって、前記少なくとも1つの回折格子が、可視光を前記導波管に結合するように、可視光を前記導波管の中で結合するように、及び/又は可視光を前記導波管から出力するように、構成され、前記少なくとも1つの回折格子は、5μm以上の範囲の周期を有し、同じ入射角を有する少なくとも2つの異なる波長を、異なる回折次数を使用して5度の角度精度で同じ回折角に回折するように構成された収色性の格子であり、
前記格子の各周期は、周期ごとに繰り返される表面プロフィールを有する非周期的なマイクロ構造パターンを備える、導波管イメージ・ディスプレイ要素。
【請求項2】
前記回折格子の前記周期が5~1000μmの範囲であ、請求項1に記載のディスプレイ要素。
【請求項3】
前記回折格子の前記周期が10μm以上の範囲であり、具体的には、2次元回折格子の場合には10~50μmであり、1次元回折格子の場合には10~500μmである、請求項1又は2に記載のディスプレイ要素。
【請求項4】
前記回折格子が2次元周期であり、前記2次元の各々の前記周期が前記範囲内にある、請求項1からまでのいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項5】
前記回折格子が、前記導波管内での多様な伝播角度に対しての回折効率の波長依存の及び入射角依存の回折角の分割を実現するように適合される、請求項1からまでのいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項6】
前記回折格子が、少なくとも20度の角度範囲にわたって、少なくとも3つの異なる波長域において、収色性である、請求項に記載のディスプレイ要素。
【請求項7】
前記回折格子が、少なくとも60度の視野において、光を前記導波管の中に結合するように又は光を前記導波管から出力するように適合される、請求項1からまでのいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項8】
ニアアイ・ディスプレイ(NED)・デバイス、頭部装着型ディスプレイ(HMD)・デバイス、又はヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)・デバイスに適するイメージ・ディスプレイ要素である、請求項1からまでのいずれか一項に記載のディスプレイ要素。
【請求項9】
射光を前記導波管の中へ結合するように適合される入力部回折格子を備える請求項1乃至8のいずれか一項に記載の導波管イメージ・ディスプレイ要素と、
光を前記導波管から出力してユーザの目に入れるように適合される出力部回折格子と、
前記入力部回折格子に光を当てることができるイメージ・プロジェクタと
を備え
導波管ディスプレイ・デバイス。
【請求項10】
導波管要素を設計して任意選択で製造する方法であって、前記方法が、
1つの厚さ及び1つの材料を有する導波管を選択するステップと、
前記導波管の上に置かれる1つ又は複数の回折格子領域を選択するステップと、
前記1つ又は複数の回折格子領域を介しての光回折のための前記導波管の少なくとも1つの光学性能目標を選択するステップと、
以下のもの:前記回折格子の周期及び回折格子ユニットのマイクロ構造パターンの表面プロフィール、の2つを変数として有する回折格子モデルを含む回折格子最適化プロセッサを提供するステップと、
前記1つ又は複数の回折格子領域の上に配置されるときの前記回折格子により前記光学性能目標を満たすように前記回折格子モデルの前記変数を最適化するために前記回折格子最適化プロセッサを稼働させながら、前記回折格子の周期を5μmを超える状態で維持するステップと
を含み、
前記少なくとも1つの光学性能目標は、同じ入射角を有する少なくとも2つの異なる波長を、異なる回折次数を使用して5度の角度精度で同じ回折角に回折することを含む、
方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの性能目標が、各々の波長域のための異なる回折次数を使用する形での、等しい角度に向かうための、実質的に等しい入射角を有する赤帯域、緑帯域、及び青帯域などの少なくとも3つの別個の波長域の回折を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数の回折格子領域の上に前記回折格子を有する前記導波管を製造するステップを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回折格子ベースの導波管ディスプレイ及びその導波管要素に関する。詳細には、本発明は、このようなディスプレイのための、入力部回折格子(in-coupling grating)、瞳孔拡大回折格子、及び出力部回折格子(out-coupling grating)に関する。
【背景技術】
【0002】
頭部装着型ディスプレイ(HMD:Head-mounted display)及びヘッドアップ・ディスプレイ(HUD:head-up display)は導波管のテクノロジを使用して実装され得る。回折格子を使用して、光が、導波管に結合され得るか、導波管の中で方向を変えられ得るか、導波管から出力され得る。1つの従来のディスプレイ・デザインでは、光がプロジェクタから1次元入力部回折格子まで誘導され、1次元入力部回折格子が導波管に入る入射光の波長を回折し、導波管において光が全内部反射を介して出力部回折格子の方に伝播する。出力部回折格子が導波管から出る光を回折し、入力部回折格子までに元々表示されていたイメージを再現する。射出瞳孔拡大装置の回折格子(exit pupil expander grating)は、ディスプレイの可視領域を横方向に延ばすために、入力部回折格子と出力部回折格子との間で使用され得る。回折格子は、可視光の波長のオーダーである周期を有する。
【0003】
最近では、特にはHMDの分野での導波管ディスプレイの視野(FOV:field-of-view)を伸ばすことに多大な労力が払われてきた。基本的な構成では、FOVは基本的には導波管のために選択される材料によって制限されるが、ユーザ体験を向上させるために見掛けのFOVを大きくするための多くの試みがなされている。例えば、Han J.らの「Portable waveguide display system with a large field of view by integrating freeform elements and volume holograms」、Optics Express.23.3534.10.1364/OE.23.003534が、FOVを伸ばすために体積ホログラムを使用することを考察している。また、FOVの制限が、いくつかの多層デザインを作ることのきっかけにもなっており、多層デザインでは、元の光の多様な色が多様な導波管層まで誘導されてその中を伝播させられ、それによりさらに良好な色制御及び色再現を可能にする。
【0004】
しかし、導波管ディスプレイにおいて、設計自由度、FOVを向上させてより良好な色制御を実現するための代替的な改善された手段が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Han J.らの「Portable waveguide display system with a large field of view by integrating freeform elements and volume holograms」、Optics Express.23.3534.10.1364/OE.23.003534
【文献】A.Shcherbakov、A.V.Tishchenko、「New fast and memory-sparing method for rigorous electromagnetic analysis of 2D periodic dielectric structures」、J.Quant.Spectrosc.Ra.、113,158-171頁、2012年
【文献】A.Junker、K.-H.Brenner、「High mode count rigorous simulation of diffractive optical elements by an iterative solution approach」、EOS Topical Meeting on Diffractive Optics、2017年、23頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の少なくとも一部の問題を解決すること、並びに新規の導波管ディスプレイ要素及びこのような導波管ディスプレイ要素を利用する導波管ディスプレイ・デバイスを提供することである。
【0007】
具体的には、目的には、例えば要素のFOVを向上させるために又はより良好に色を制御するために、使用され得るような、新しい設計自由度を実現する回折格子構造を実現することが含まれる。1つの具体的な目的は、回折格子の少なくとも部分的な無色化を可能にする回折格子構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、可視光の波長より有意に大きい周期を有する回折格子を提供することに基づく。具体的には、この周期が最大可視光波長(700nm)の少なくとも5倍であり、通常、5μm以上である。このような回折格子はこの周期より大きい入射光ビームに対しても回折性を有する。その理由は、この事例が通常はディスプレイの用途であるからである。しかし、それらの回折は従来の少ない回折次数(+/-1及び0)のみに限定されない。
【0009】
第1の態様では、本発明が、導波管と、導波管の上又は導波管の中に配置される少なくとも1つの回折格子とを備える導波管ディスプレイ要素を提供し、少なくとも1つの回折格子が、可視光を導波管の中に結合するように、可視光を導波管の中で結合するように、及び/又は可視光を導波管から出力するように、構成され、ここでは、回折格子の周期が5μm以上の範囲であり、5~1000μmなどである。回折格子の各周期が、周期から周期まで繰り返される1次元又は2次元の非周期的なマイクロ構造パターンを備えることができる。
【0010】
第2の態様によると、導波管領域と、入射光を導波管の中へ結合するように適合される入力部回折格子と、光を導波管から出力してユーザの目に入れるように適合される出力部回折格子とを備える導波管ディスプレイ要素を備える導波管ディスプレイ・デバイスが提供される。回折格子のうちの少なくとも1つの回折格子が5μm以上の範囲内にある周期を有する。加えて、入力部回折格子に光を当てることができるイメージ・プロジェクタが提供される。
【0011】
第3の態様によると、方法が提供され、この方法が、
- 1つの厚さ及び1つの材料を有する導波管を選択することと、
- 導波管の上に置かれる1つ又は複数の回折格子領域を選択することと、
- 上記1つ又は複数の回折格子領域を介しての光回折のための導波管の少なくとも1つの光学性能目標を選択することと、
- 以下のもの:回折格子の周期及び回折格子ユニットのマイクロ構造、のうちの少なくとも1つを変数として有する回折格子モデルを含む回折格子最適化プロセッサを提供することと、
- 上記1つ又は複数の回折格子領域の上に配置されるときの回折格子により上記光学性能目標を満たすように回折格子モデルの少なくとも1つの変数を最適化するために回折格子最適化プロセッサを稼働させながら、回折格子の周期を5μmを超える状態で維持することと
を含む。
【0012】
この方法が、回折格子モデル及び少なくとも1つの最適化された変数に従う回折格子を有する導波管を製造することを任意選択で含むことができる。
【0013】
具体的には、本発明が独立請求項の記載内容によって特徴付けられる。
【0014】
本発明は有意な利益を提供する。提案される解決策が、従来の短周期の回折格子より大きい回折次数を利用することを可能にする。回折角の分割がより精密であり、したがって導波管の内部で伝えられ得るイメージ・データの量が従来の回折格子の場合よりも大きい。
【0015】
加えて、本発明は、一般的に使用される赤、青、及び緑の波長域などの、異なる波長域の挙動を完全に分けるのを可能にする。例えば、回折格子構造が、各帯域及び各入射角において異なる回折次数を利用して、これらの波長域を導波管内部において実質的に等しい角度で回折するように、設計され得る。これは従来の短周期の回折格子とは異なる。従来の短周期の回折格子では、通常、第1の回折次数が導波管に沿う光透過のために利用可能であり、したがって異なる波長域のための回折角が異なる。したがって、本発明により、収色性(achromatic)の導波管要素が実現可能となる。
【0016】
これらのファクタは導波管ディスプレイのための新しい設計自由度を可能にする。従来の回折格子では、回折次数の間で出力を分割するために回折格子プロフィールが変化され得るが、出力を誘導することができる利用可能である「スペア」の回折次数が存在しないか、わずかしか存在しない。長周期回折格子では、回折次数の数がより大きく、また回折格子のマイクロ構造がより広範囲であり、したがって、より多くの設計オプションを提供する。これにより、例えば、導波管の無色化が可能となる。
【0017】
本発明は、多様な目的のために回折格子を調整するのを可能にする。いくつかの従来の回折格子の設計プロセスでは、最初に、限定されるセットの回折格子の挙動が計算され、次いで、関連用途における最良性能(しかし、通常、それでも最適ではない)を有するものが選択される。本発明により、この設計スキームが大幅に改善され得:導波管及び回折格子のデザインをより高度にするように差別化して、導波管及び回折格子を個別に最適化することができる。具体的には、導波管の最適化により、求められる回折格子応答のセットが得られ、ここでは、この求められる回折格子応答のセットが回折格子の最適化の目標である。長周期回折格子を使用する場合に利用可能となる自由度が増大することにより、短周期回折格子を用いて達成され得ない手柄としての回折格子の最適化という課題に対しての良好な解決策を見つけることが可能となる。
【0018】
HMDデバイス及びHUDデバイスのユーザ体験も改善され得る。例えば、本明細書で説明されるように制御する形で多様な色を(ほぼ)同じ角度で回折することにより、要素のFOVを増大させることが可能となる。また、多様なFOV角度範囲を多様な回折次数へと誘導して導波管の内部でFOVの圧縮/伸張を実質的に実施することにより、回折次数の角度をより精密に角度的に分割することを利用する形で、FOVをさらに増大させることが実現され得る。
【0019】
従属請求項が本発明の選択される実施例を対象とする。
【0020】
回折格子が1次元周期又は2次元周期であってよい。回折格子が2次元周期である場合、2次元の各々の周期が好適には5μm以上の範囲内にある。
【0021】
いくつかの実施例では、回折格子が、導波管内での多様な伝播角度に対しての回折効率の波長依存の又は入射角依存の分割を実現するように適合される。例えば、回折格子は、異なる回折次数を使用して、等しい入射角を有する少なくとも2つの異なる波長をほぼ等しい(+/-5度)回折角へと回折するように適合され得る。この種の挙動/回折格子は、本明細書では、収色性の多次数挙動/多次数回折格子と称される。そういう意味で、別の実施例では、回折格子が少なくとも3つの波長域に対して、及び少なくとも30度の角距離を有する少なくとも2つの入射角に対して、収色性である。
【0022】
いくつかの実施例では、回折格子が、少なくとも60度の視野で、光を導波管の中に結合するか又は導波管から光を出力するように適合される。
【0023】
次に、添付図面を参照して、本発明の選択される実施例及びその利点をより詳細に考察する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】上に配置される2つの2次元長周期回折格子を備えるディスプレイ要素を示す側面図である。
図1B】上に配置される2つの2次元長周期回折格子を備えるディスプレイ要素を示す上面図である。
図1C】長周期回折格子の単一周期のマイクロ構造を示す側面図である。
図1D】長周期回折格子の単一周期のマイクロ構造を示す上面図である。
図2】本発明の利用可能である精密な回折角のセットを示す図である。
図3A】従来の回折格子及び本発明の一実施例による長周期回折格子に基づく多様な波長域の挙動を示す図である。
図3B】従来の回折格子及び本発明の一実施例による長周期回折格子に基づく多様な波長域の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
「(回折格子)ユニット要素」は、1次元又は2次元の回折格子の内部で繰り返される最大の非周期的ユニットを意味する。回折格子ユニットの寸法又は2つの横寸法が回折格子のそれぞれの周期を決定する。
【0026】
「構造部」は、ユニット要素の内部の幾何学的形態を意味する。
【0027】
特に明記しない限り、本明細書の「波長域」という用語は、20nm以下、また具体的には10nm以下の幅を有する域を意味する。RGB要素又はRGBディスプレイでは、これらの波長域が、例えば、600~750nm、495~600nm、及び450~495nmの波長範囲から相応に選択される。帯域の数は、4つ~6つといったように、3より多くてもよい。
【0028】
本明細書の「収色性」の回折格子は、固定の入射角及び強度においての多様な波長においてほぼ等しい応答(つまり、ほぼ等しい角度強度分布)を生じさせる回折格子を意味する。本明細書では、「ほぼ等しい応答」は、等しい角度(5度の、また具体的には2度の、角度精度)に進むすべての波長において相対的な強度の分布が+/-10%であることを意味する。相対的な強度は、入射光の強度に対しての、特定の角度に回折された光の強度の比率として決定される。
【0029】
限定される数の狭い波長範囲のみを構成する動作範囲において本明細書で開示される原理を使用する収色性の回折格子の実質的に全体を製造することが可能である。しかし、本明細書の用語はより広い意味を有し、上で言及した条件を満たす回折格子も包含する。実際的な用途では、しばしば、関連のデバイスで使用される入射光の極端な入射角において収色の条件を満たすことで十分である。極端な角度の間では、多様な波長を有する光線の分布がより自由に重複してよい。
【0030】
本明細書で使用される導波管ディスプレイ・デバイス及び導波管ディスプレイ要素は、表示されることになるイメージの相対的なピクセル位置を少なくとも実質的に維持しながら可視イメージを生成するデバイス及び要素を意味する。
【0031】
選択される実施例の説明
図1A及び1Bが例示の導波管要素を側断面図及び上面図で示す。この要素が、導波管ボディ10上に互いに対して側方に配置される入力部回折格子12及び出力部回折格子16を備える。回折格子12、16が繰り返しのユニット要素14、18から構成され、繰り返しのユニット要素14、18が回折格子12、16の周期に一致する側方長さPを有する。全体としての回折格子の寸法(出力部回折格子16の寸法Dなど)が、用途に応じて、例えば周期Pの100~1000倍であってよい。
【0032】
いくつかの実施例では、回折格子が1次元回折格子であり、この事例では、適切な周期範囲が5~1000mであり、10~500μmなどである。
【0033】
いくつかの実施例では、回折格子が2次元回折格子であり、ここでは、各々の周期方向においてその周期が例えば5~75μmであってよく、10~50μmなどである。
【0034】
要素が誘導回折格子又は射出瞳孔拡大装置の回折格子などをさらに備えることができる。
【0035】
多様な回折格子のユニット要素14、18は同様のものであっても又は異なるものであってもよい。しかし、典型的な実施例では周期が等しい。
【0036】
図1C及び1Dが例示のユニット要素を側断面図及び上面図で示す。ユニット要素が、回折格子の有効周期を縮小させないように実質的に非周期的である表面プロフィール15を有する。この構造は、平均サイズf及び最大高さhを有するマイクロ構造から構成される。本明細書では、fは谷の底部から隣のピークの頂部までの平均距離として定義される。
【0037】
この構造部のサイズfは例えば10~700nmであってよく、最大高さhは例えば20~500nmであってよい。
【0038】
図2が精密な回折角の分割を示す。従来の短周期回折格子は、入射光21のための角αのところに単一の伝播回折次数のビーム22のみを効果的に生成することができるが、本発明の回折格子は、角α、α、α、α...のところで、複数の伝播回折次数で、ビーム24A、24B、24C、24D、...を回折することができる。
【0039】
図3A及び3Bが、多様な角度に対しての回折効率の波長依存の又は入射角依存の分割を実現するのに、この回折格子ユニットの精密な角分割及びデザインが如何にして利用され得るか、を示している。この実例では、収色性の回折格子が示されている。
【0040】
図3Aが、等しい入射角を有する3つの波長域λ、λ、λが従来の回折格子32Aのところで如何にして挙動するかを示している。それぞれ角β、β、βの方を向く第1の伝播回折次数への分散回折を見ることができ、分散量は帯域の幅によって決定される。
【0041】
図3Bでは、回折格子が長周期回折格子32Bに置き換えられており、長期間回折格子32Bが、帯域λの光の大部分を回折次数Nの方に回折するように、帯域λの光の大部分を回折次数Nの方に回折するように、及び帯域λの光の大部分を回折次数Nの方に回折するように構成され、回折次数N、N、Nはすべて実質的に等しい角度を有し、つまりβ’=β=β’である。帯域λ及び帯域λの迷光が、β’=β=β’とは異なる角βs1及びβs3を有する迷光の回折次数(stray diffraction order)Ns1及びNs3の方に進む。回折格子は複数の入射角に対して同じことを行うように構成され得る。図3Bでは、一部の迷光の回折次数が示されているが、実際には、少量の(制御される量の)光がすべての利用可能な次数の方に不可避的に回折される、ことに留意されたい。
【0042】
一実施例では、多様な入射角範囲が多様な回折次数となるように回折される。
【0043】
したがって、提案されている回折格子構造/構成は、回折光の角度の範囲をより小さい/より大きい範囲にするように「圧縮」/「伸張」するのに使用され得、これが要素のFOVを増大させるのに使用され得る。
【0044】
典型的な実施例では、入射光のエネルギーの大部分が、利用可能なすべての回折次数のセットより小さい回折次数(主要な回折次数)のセットの方に誘導される。残りの次数(副回折次数)が、主要な回折次数の方のパワーを最大にするために又は他の設計目標を満たすために、回折格子の最適化において決定される形で、迷光を伝えるのに使用され得る。主要な回折次数の数は例えば10以下であってよく、5以下などであってよい。
【0045】
明視野の正規化された波ベクトル空間(kによって分割される長さを有するk空間)で検査する場合、従来の回折格子は線形的な移行を導入することになり、その方向及び大きさは回折次数によって決定され、波長によっては決定されない。対照的に、本発明は非線型的な移行を誘発することができ、これは、例えば、角度的広がりの圧縮/伸張及び狭い波長域の小さいセットにわたっての実質的な収色性の挙動を実現するのに利用され得る。
【0046】
一実施例では、本発明の方法が、
- 1つの厚さ及び1つの材料を有する導波管を選択することと、
- 導波管の上に置かれる1つ又は複数の回折格子領域を選択することと、
- 上記1つ又は複数の回折格子領域を介して光回折のための導波管の少なくとも1つの光学性能目標を選択することと、
- 以下のもの:回折格子の周期及び回折格子ユニットのマイクロ構造、のうちの少なくとも1つを変数として有する回折格子モデルを提供することと、
- 上記1つ又は複数の回折格子領域の上に配置されるときの回折格子により上記光学性能目標を満たすように回折格子モデルの少なくとも1つの変数を最適化しながら、回折格子の周期を5μmを超える状態で維持することと
を含む。
【0047】
別の実施例では、少なくとも1つの性能目標が、各々の波長域のための異なる回折次数を使用する形での、等しい角度に向かうための、実質的に等しい入射角を有する、赤帯域、緑帯域、及び青帯域などの少なくとも3つの別個の波長域の回折を含む。別の実施例では、少なくとも1つの性能目標が、少なくとも100個の入射角などの、複数の異なる入射角を維持するための条件を含む。
【0048】
別の実施例では、この方法が、上記1つ又は複数の回折格子領域の上に上記回折格子を有する導波管を製造することを含む。
【0049】
本発明の回折格子の詳細なサブマイクロメーター・スケールの構造は性能目標によって決定されるものであり、光の標的として多数の回折次数(具体的には、10以上)を使用する原理に依存するものである。一実施例では、副回折次数の方へ向かう回折はゼロとはならず、性能目標を達成することを目的として設計自由度を向上させるために光の一部分を伝えることが可能である。一般に、構造を最適化するために、例えば、副回折次数をゼロにしないようにする上記のような、最適化の戦略及び発想を適用することができ、これらの最適化の戦略及び発想は、いわゆるコンピュータ生成ホログラム(CGH:computer-generated hologram)のデザインから既知である。回折格子の計算において、現実的な計算時間を達成するためには、最近開発された公的に利用可能である、A.Shcherbakov、A.V.Tishchenko、「New fast and memory-sparing method for rigorous electromagnetic analysis of 2D periodic dielectric structures」、J.Quant.Spectrosc.Ra.、113,158-171頁、2012年、及びA.Junker、K.-H.Brenner、「High mode count rigorous simulation of diffractive optical elements by an iterative solution approach」、EOS Topical Meeting on Diffractive Optics、2017年、23頁で考察されている方法などの、fast methodを使用することを推奨しておく。
【0050】
本発明の実施例は、ニアアイ・ディスプレイ(NED:near-to-the-eye display)のような、拡張現実感(AR:augmented reality)デバイス、仮想現実(VR:virtual reality)デバイス、及び複合現実感(MR:mixed reality)デバイス、並びに他の頭部装着型ディスプレイ(HMD)、さらにはヘッドアップ・ディスプレイ(HUD:head-up display)、などの、多様なパーソナル・ディスプレイ・デバイスにおいて、それらの多様な形態で、利用可能である。
【0051】
引用リスト
非特許文献
Han J.らの「Portable waveguide display system with a large field of view by integrating freeform elements and volume holograms」、Optics Express.23.3534.10.1364/OE.23.003534
A.Shcherbakov、A.V.Tishchenko、「New fast and memory-sparing method for rigorous electromagnetic analysis of 2D periodic dielectric structures」、J.Quant.Spectrosc.Ra.、113,158-171頁、2012年
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図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B