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特許7308204階段導波路要素、個人用表示装置及び画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】階段導波路要素、個人用表示装置及び画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230706BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20230706BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B6/00 301
H04N5/64 511A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020533769
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FI2018050957
(87)【国際公開番号】W WO2019122527
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】20176155
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520184365
【氏名又は名称】ディスペリックス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロムステット、カシミール
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/007569(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192237(US,A1)
【文献】特開2015-172624(JP,A)
【文献】特表2017-514172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの光学面(48A、48B)によって規定される導波路領域(40)であって、前記2つの光学面の間を光が内部全反射によって伝播可能であり、前記光学面が表面プロファイル(62A、62B)を有する、導波路領域と、
回折により前記導波路領域(40)内の光照射野を変更可能な少なくとも1つの回折光学要素(32、34)と、
を備え、
前記少なくとも2つの光学面の両方の前記表面プロファイル(62A、62B)が階段プロファイルであり、前記導波路領域(40)が、前記階段プロファイルの個別のステップ(40A-G)によって規定される略湾曲した形状を有
前記階段プロファイルは、前記内部全反射が発生する複数の主表面(134A、134B、136A、136B)と、任意選択で、前記主表面間の中間表面(135A、135B)とを含み、
前記主表面の少なくとも一部が、球面又は非球面のように湾曲している、
導波路要素。
【請求項2】
2つの光学面(48A、48B)によって規定される導波路領域(40)であって、前記2つの光学面の間を光が内部全反射によって伝播可能であり、前記光学面が表面プロファイル(62A、62B)を有する、導波路領域と、
回折により前記導波路領域(40)内の光照射野を変更可能な少なくとも1つの回折光学要素(32、34)と、
を備え、
前記少なくとも2つの光学面の両方の前記表面プロファイル(62A、62B)が階段プロファイルであり、前記導波路領域(40)が、前記階段プロファイルの個別のステップ(40A-G)によって規定される略湾曲した形状を有し、
前記導波路領域は、少なくとも1つの導波路層が前記階段プロファイルの少なくとも1つの階段の上に連続層として延在する複数の導波路層(10A、10B、10C、10D、10E)を含み、前記層間に前記層間の伝播光パワー分布を変化させるための少なくとも1つの中間回折光学要素(14AB、14BC)が設けられている、
導波路要素
【請求項3】
前記略湾曲した形状が、球面形又は非球面形である、請求項1又は2に記載の導波路要素。
【請求項4】
前記階段プロファイルは、前記内部全反射が発生する複数の主表面(134A、134B、136A、136B)と、任意選択で、前記主表面間の中間表面(135A、135B)とを含む、請求項に記載の導波路要素。
【請求項5】
前記主表面(134A、134B、136A、136B)の少なくとも一部が平面である、請求項1又は4に記載の導波路要素。
【請求項6】
前記主表面の少なくとも一部が、球面又は非球面のように湾曲している、請求項に記載の導波路要素。
【請求項7】
前記導波路領域(40)は略湾曲した形状を有し、前記主表面(134A、134B、136A、136B)は前記略湾曲した形状の曲率とは反対方向に曲率を有する、請求項1又は6に記載の導波路要素。
【請求項8】
前記導波路領域(40)は略湾曲した形状を有し、前記主表面(134A、134B、136A、136B)は前記略湾曲した形状の前記曲率と同じ方向の曲率を有する、請求項1又は6に記載の導波路要素。
【請求項9】
前記中間表面(135A、135B)の少なくとも一部は、前記主表面(134A、134B、136A、136B)よりも低い透過率を有する、請求項からまでのいずれかに記載の導波路要素。
【請求項10】
前記中間表面(135A、135B)が、隣接する前記主表面(134A、134B、136A、136B)に対して本質的に直角である、請求項からまでのいずれかに記載の導波路要素。
【請求項11】
前記導波路要素は、連続的な表面プロファイルを有する外面を有し、前記階段プロファイルを有する前記光学面は、材料の層によって前記外面から少なくとも部分的に分離されている、請求項1から10までのいずれかに記載の導波路要素。
【請求項12】
前記導波路領域(40)を規定する前記光学面は、前記材料内の空洞によって形成されており、前記空洞は前記階段プロファイルの主表面(134A、134B、136A、136B)を規定する、請求項11に記載の導波路要素。
【請求項13】
前記材料の層は、前記導波路領域(40)と同じ屈折率を有する、請求項12に記載の導波路要素。
【請求項14】
前記少なくとも1つの回折光学要素が、
前記導波路領域外から前記導波路領域内に向けられた光線を結合するための入力結合格子、及び/又は
前記導波路領域内を移動する光線を前記導波路外で結合するための出力結合格子、及び/又は
前記導波路領域内を移動する光の射出瞳を拡張するための射出瞳エキスパンダ格子
を含む、請求項1から13までのいずれかに記載の導波路要素。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれかに記載の複数の導波路要素を互いに重ね合わせて含む導波路スタック。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれかに記載の導波路要素又は導波路スタックと、
前記導波路領域を用いて伝搬するために、前記導波路要素又は導波路スタックに画像を投影するように適合された画像プロジェクタと、
を備えた個人用表示装置。
【請求項17】
前記導波路要素は、湾曲した矯正レンズ若しくは非矯正レンズとして成形されるか、又は湾曲した矯正レンズ若しくは非矯正レンズの上にその形状に従って配置される、請求項16に記載の個人用表示装置。
【請求項18】
前記導波路要素又は導波路スタックが、眼鏡の形状因子で提供される、請求項16から17までのいずれかに記載の個人用表示装置。
【請求項19】
目に近い表示装置に可視画像を形成する方法であって、
請求項1から15までのいずれかに記載の導波路要素又は導波路スタックを提供することと、
前記導波路要素又は導波路スタックの第1の領域に配置された入力結合格子に画像を投影することと、
光が前記導波路領域内又は前記階段プロファイルに沿った領域内を伝播できるようにすることと、
前記導波路要素又は導波路スタックの第2の領域に配置された出力結合格子によって前記導波路からの光を結合することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路に関する。特に、本発明は、その上に設けられた回折格子を有する非平坦な導波路に関する。このような導波路は、拡張現実(AR:augmented reality)、仮想現実(VR:virtual reality)、複合現実(MR:mixed reality)の装置及び用途において、目の近くの表示装置(NED:near-to-the-eye displays)のように使用され得る。
【背景技術】
【0002】
拡張現実における目の近くの装置では、ユーザの片方又は両方の目の前に配置された導波路によって可視画像が生成され得る。導波路の形状は、導波路機能に課される物理的要件によって制限されるが、多くの場合、例えば、平面又は球形であり得るこの形状は、形状因子又は外観の観点から受け入れられない。
【0003】
米国特許第8,830,584号は、最先端の球面及び非球面導波路を開示している。特に、上記文献は、画像の広がりを低減し、画像の解像度を改善し、短い焦点距離を利用できるようにするべく、視認のために表示装置の射出瞳を拡大して表示するための球面又は非球面の非平面基板と複数の回折要素とを備えた射出瞳拡大器(EPE:exit pupil expanders)を使用する装置及び方法について説明している。同様の解決策については、P.Saarikko、J.Opt.A:Pure Appl.Opt.11(2009)、065504頁においても説明されている。
【0004】
従来技術の導波路解決策を使用すると、導波路の光学特性及び性能はその物理的形状と密接に結びついている。したがって、物理的デザイン要素と視覚的デザイン要素との間で妥協する必要がある。例えば、回折導波路表示装置を、矯正レンズ又は非矯正レンズなどの既存の光学要素と統合することは困難である。しかしながら、そのような統合は、例えば、特にAR NEDにおいて一般的である、所謂眼鏡の形状因子を有する表示装置を作るために望ましいであろう。
【0005】
したがって、改善された導波路及び導波路ベースの表示装置が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,830,584号
【非特許文献】
【0007】
【文献】P.Saarikko、J.Opt.A:Pure Appl.Opt.11(2009)、065504頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の問題の少なくともいくつかを解決し、特に個人用表示装置用途のための新規な導波路要素を提供することである。特定の目的は、導波路の形状とそれに続く表面の形状を分離するために使用できる解決策を提供することであり、これにより、物理的要件及び視覚的要件の両方を同時に満たすことができ、即ち、導波路設計の自由度を高める解決策を提供することができる。
【0009】
特定の目的として、目の近くの装置などの個人用表示装置を眼鏡の形状因子で提供することもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、独立請求項による発明によって達成される。
【0011】
一態様によれば、本発明は、2つの光学面によって規定される導波路領域であって、2つの光学面の間を光が内部全反射によって伝播可能であり、光学面が表面プロファイルを有する、導波路領域と、導波路領域内の光照射野を変更可能な少なくとも1つの回折光学要素(DOE:diffractive optical element)、特に格子と、を含む回折導波路要素を提供する。本発明によれば、少なくとも1つの光学面の表面プロファイルは、階段プロファイルである。
【0012】
別の態様によれば、本発明は、互いに重ね合わされた、上記の種類の複数の類似又は非類似の導波路要素を含む導波路スタックを提供する。
【0013】
さらなる態様によれば、本発明は、この種の導波路要素又は導波路スタックと、導波路領域で伝搬するために導波路要素又は導波路スタックに画像を投影するように適合された画像プロジェクタとを備える個人用表示装置を提供する。格子は、入力結合格子、出力結合格子、射出瞳拡大器格子として機能し得る。
【0014】
一態様によれば、本発明は、上記のような導波路要素又は導波路スタックを提供するステップと、導波路要素又は導波路スタックの第1の領域上に配置された入力結合格子に画像を投影するステップと、導波路領域内又は階段プロファイルに沿った領域内を光が伝播することを可能にするステップと、導波路要素又は導波路スタックの第2の領域に配置された出力結合格子によって導波路外の光を結合するステップとを含む、目に近い表示装置で可視画像を形成する方法を提供する。
【0015】
本発明は重要な利点を提供する。第1に、本明細書で論じられる階段形状は、実際の導波路領域の形状が、導波路要素がたどる表面の形状とは異なるように、所定の非平面形状に従う導波路要素を実装するために使用できる。したがって、本発明の導波路形状は、境界をなす外面の形状から切り離されており、したがって、外面は、原則として、完全に任意であり得る。このことは、同じ形状の外面にのみ合致し得る従来の湾曲した導波路とは対照的である。
【0016】
簡単に言えば、階段プロファイルは、例えば、湾曲した基板上に導波路ベースの表示要素を実装するために使用でき、上記要素は、平面要素の、最も顕著には、画像が無限にあるように見える光学特性を有する。したがって、「光学的に平面」であるが物理的に非平面の表示要素を作ることができる。同様に、基板の形状に関係なく、所定の湾曲した導波路形状、したがって明らかに有限の画像距離を有する表示要素を実装することができる。したがって、「光学的に非平面」で物理的に平面又は非平面の表示要素を作ることができる。これらの変形のいくつかの例は、この文献の後半に記載されている。
【0017】
一例を挙げると、階段導波路は、2つの表面が同心であることが必要な従来の球状導波路では不可能である2つの非同心球状表面に追従するように作成することができる。一方、平面導波路の場合、平面導波路を階段導波路に置き換えても、導波路機能は影響を受けないままである。
【0018】
通常の(バニラ)平面導波路又は球形導波路から階段形状に変えることは、導波路形状の基本を変更しない(平面導波路の場合がそうであり、球面導波路の場合は0次に関してそうである)。したがって、階段導波路及びその上部の回折格子の設計に、確立された設計方法論をうまく適用できる。
【0019】
本導波路要素は、特に、眼鏡の形状因子がレンズの前側にぴったりと合う導波路要素を必要とする、NEDのようなAR、VR、及びMR近眼用途において使用され得る。特にシー・スルー表示装置で使用でき、とりわけ、矯正レンズを含むレンズ光学系に関連して使用され得る。階段形状は、平面導波路及び球形導波路の両方、つまり、無限遠又はなんらかの有限距離の焦点距離の画像をそれぞれ提供する導波路に適用できる。
【0020】
階段導波路は任意の表面形状に従い得るため、視覚的要件を使用して、光学機能の実現可能性に悪影響を与えることなく、導波路の形状を決定することができる。具体的には、階段導波路要素を使用して、眼鏡の形状因子を一致させることができる。この場合、視覚的な魅力のために、眼鏡レンズの外面に沿って要素をぴったりと配置する必要がある。実際に、本発明の一態様は、眼鏡の形状因子の目の近くの表示装置を含み、導波路要素は、矯正レンズ又は非矯正レンズの上に追加され、要素の一般的な形状は、少なくとも1つの領域におけるレンズの形状に合致する。同様に、階段導波路要素は、形状が他の任意の外面と一致するように設計され得る。
【0021】
階段導波路要素は積み重ねることもでき、このことは、光学面の同じ又は異なる曲率を有する複数の個々の階段導波路の積み重ねを実装できることを意味する。導波路の異なる曲率により、多焦点平面要素の実現が可能になり、これにより、新しい種類の光学機能を備え、ユーザ体験を向上したVR、AR、及びMR装置の実装が可能になる。
【0022】
従属請求項は、本発明の選択された実施例に向けられている。
【0023】
いくつかの実施例では、導波路を規定する2つの光学面の両方が階段プロファイルを有する。階段プロファイルを本質的に互いに対応させることにより、導波路要素の物理的形状に関係なく、「区分的に一定の厚さ」の導波路領域が所望の光学特性を有するようにすることができる。
【0024】
いくつかの実施例では、導波路領域は、球形又は非球面形などの概して湾曲した形状を有し、概して湾曲した形状は、階段プロファイルの個別のステップによって規定される。
【0025】
いくつかの実施例では、階段プロファイルは、上記内部全反射が生ずる複数の主表面を含む。さらなる実施例では、主表面の対の間に中間表面が存在する。代替の実施例では、光学的に重要な中間表面はなく、即ち、階段の蹴上げが主表面によって暗黙的に規定される。
【0026】
いくつかの実施例では、主表面の少なくともいくつか、又は全てが平面である。したがって、これらの部分では、導波路要素は光学的に平面導波路として表示される。いくつかの実施例では、主表面の少なくともいくつか、又は全てが、球面又は非球面であるなど、湾曲している。
【0027】
いくつかの実施例では、導波路領域は概して湾曲した形状を有し、主表面は概して湾曲した形状の曲率とは反対方向の曲率を有する。代替の実施例では、主表面は、上記の概して湾曲した形状の曲率と同じ方向の曲率を有する。
【0028】
いくつかの実施例では、主表面は、球面又は焦点距離を有するレンズ表面などの連続表面の一部として形作られる。つまり、階段の蹴上げが削除され、それに応じて主表面が隣同士で平行移動すると、連続した滑らかな表面が表出する。
【0029】
いくつかの実施例では、中間表面は、主表面よりも低い透過率を有する。中間表面の不透明度を低下させることにより、それらによって引き起こされる障害が低減され得る。
【0030】
いくつかの実施例では、中間表面は、隣接する主表面に対して本質的に直角である。或いは、中間表面のうちの少なくとも大部分を隣接する主表面に対して傾斜した角度で配置することにより、中間表面によって引き起こされる障害を低減することもできる。
【0031】
いくつかの実施例では、中間表面は互いに平行である。
【0032】
いくつかの実施例では、階段プロファイルを有する1つ又は複数の光学面は、導波路要素の外面の少なくとも一部を形成する。いくつかの実施例では、階段プロファイルを有する1つ又は複数の光学面は、材料の層によって要素の外面から少なくとも部分的に分離されている。材料は、導波路領域自体の材料と同じであってもよいし異なっていてもよい。材料が同じである場合は、要素の光学性能を低下させ得る中間表面の存在を回避することができる。導波路要素の外面プロファイルは、典型的には連続的、即ち滑らかであり、例えば平面又は球形である。
【0033】
導波路領域の階段プロファイルの光学面は、導波路と空気又は真空空洞層又は低屈折率固体材料層との間の界面によって規定され得る。
【0034】
いくつかの実施例では、導波路要素に含まれる回折光学要素は、
- 導波路領域外から導波路領域内に向けられた光線を結合するための入力結合格子、
- 導波路領域内を移動する光線を導波路外で結合するための出力結合格子、又は
- 導波路領域内を移動する光の射出瞳を拡張するための射出瞳エキスパンダ格子、を含む。
【0035】
また、これらのグループの1つ又は複数からのいくつかの格子が存在する場合や、要素内の任意の単一の格子がこれらの機能の2つ以上の役割を果たす場合がある。
【0036】
いくつかの実施例では、導波路要素は、透明な材料から作製され、光が導波路領域内の光の伝搬方向に対して本質的に横方向に導波路要素を通過することを可能にするように適合される。これにより、例えばAR用途におけるHMD表示装置及びHUD表示装置などのシー・スルー表示装置において要素を使用できるようになる。
【0037】
いくつかの実施例では、本個人用表示装置は、1つが導波路要素の第1の領域に位置決めされた入力結合格子であり、1つが導波路要素の第2の領域に位置決めされた出力結合格子である少なくとも2つの回折格子を含み、画像プロジェクタは、導波路領域に結合するために入力結合格子に画像を投影するように適合され、出力結合格子は、導波路領域からの画像を導波路要素から離れた観察者の目に結合するように適合される。
【0038】
いくつかの実施例では、導波路要素は、湾曲した矯正レンズ若しくは非矯正レンズとして成形されるか、又はその形状に従って湾曲した矯正レンズ若しくは非矯正レンズの上に配置される。
【0039】
いくつかの実施例では、本発明の導波路要素又はそのような要素を含む導波路スタックは、眼鏡の形状因子により提供され、スマート・グラスのような着用可能な表示装置に特に適する。
【0040】
次に、本発明の実施例及びその利点を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】目の前に置かれたNEDを示す。
図2】所謂眼鏡形状因子を有するNEDを示す。
図3】NEDで使用可能な一般的な導波路構造を示す。
図4】一実施例による階段導波路要素を斜視図で示す。
図5】階段導波路内の光の伝搬を斜視図で示す。
図6】階段表面プロファイルを有する導波路要素の異なる変形を断面図で示す。
図7】階段表面プロファイルを有する導波路要素の異なる変形を断面図で示す。
図8】階段表面プロファイルを有する導波路要素の異なる変形を断面図で示す。
図9】階段表面プロファイルを有する導波路要素の異なる変形を断面図で示す。
図10】階段表面プロファイルを有する導波路要素の異なる変形を断面図で示す。
図11】階段表面プロファイルを有する導波路要素の異なる変形を断面図で示す。
図12】階段表面が要素の外面を形成する階段導波路要素を示す。
図13】直角の中間表面を有する階段導波路における光線の伝播を詳細に示す。
図14】傾斜した中間表面を有する階段導波路における光線の伝播を詳細に示す。
図15】階段表面プロファイルのさらに別の変形例を断面図で示す。
図16】本発明の一実施例による多層導波路の1つの階段の詳細断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
定義
本明細書における「導波路領域」又は簡単に「導波路」とは、構造内において、内部全反射を介して光波長、特に可視光波長を案内することができる構造を指す。
【0043】
「導波路要素」は、少なくとも1つの導波路領域を含むものを指す。導波路領域は、互いの上にあるいくつかの別個の導波路層から構成され得る。しかしながら、要素は、導波路領域の表面上の1つ若しくは複数の材料層及び/又は1つ若しくは複数の格子などの他の部分も含み得る。
【0044】
「光学面」は、境界の又は導波路要素内の屈折界面を指す。
【0045】
「表面プロファイル」とは、その断面の平面で検査したときの表面の幾何学的形状を意味する。本明細書における様々な可能な表面プロファイルの形状の議論は、特に明記しない限り、又は明白でない限り、断面に関して行われることに留意されたい。但し、実際には、導波路及びその光学面は、この平面を横断する寸法及び曲率を有する三次元形状を有し得る。
【0046】
「階段プロファイル」とは、複数の不連続な(急激な)高さの変化を持つ表面プロファイルを意味する。プロファイルは、少なくとも1つの断面において、隣接する副表面に対してある角度で複数の区別可能な副表面を有し、したがって、階段の形に似た複数のステップを形成する。特に、1つおきの副表面(主表面)は、1つおきに隣接する副表面と平行又はほぼ平行であり得る。導波路の一般的な平面におけるステップの寸法は、光学的回折限界よりも大きいので、プロファイル自体は光の有意な回折を引き起こさず、むしろ所望の幾何学的スキームに従って高効率で光を導く。
【0047】
「連続プロファイル」とは、不連続な高さの変化がないプロファイル、つまり滑らかで階段のないプロファイルを指す。
【0048】
「階段導波路」は、階段プロファイルを備えた少なくとも1つの光学表面によって規定される導波路領域を指す。「バニラ導波路」とは、光の伝播に寄与する連続的な光学面のみを有する従来の導波路を指す。
【0049】
「導波路の一般的な平面/形状」は、導波路の巨視的な平面/形状を指し、したがって、その中の光の全体的な伝搬方向に大きな影響を与えない離散的な高さの変動を無視する。したがって、導波路の全体的な形状は、導波路領域全体が曲線内に留まるように、階段プロファイルのステップの外側の隅を介して収まる滑らかな曲線によって規定される。
【0050】
「非平面」は、完全に平面以外の全ての形状、つまり「パンケーキ」形状をカバーする。特に、球面及び非球面の湾曲した形状がカバーされる。本明細書で論じられる導波路の一般的な形状は、一般に平坦ではないが、階段プロファイルの副表面は、平坦又は非平坦のいずれかであり得ることに留意されたい。即ち、非平坦な導波路形状は、平坦又は非平坦な光学面、即ち平坦又は非平坦な階段のいずれかによって規定され得る。
【0051】
「主表面」とは、内部全反射を通じて、及び/又は、副表面に配置された回折格子などの回折光学要素(DOE)との相互作用を介して、光線を導波路の一般的な平面に沿って導くことに貢献する、階段状の表面の副表面(つまり、従来の階段の用語に従って、階段の踏み板)を指す。「中間表面」とは、2つの主表面の間の副表面を指し、したがって、階段(つまり、階段の蹴上げ)の形成に寄与する。中間表面は、一般に、主表面に対して直角又は斜めの角度であり、中間表面のそれぞれは、2つ、又はより複雑な形状ではさらに多くの主表面を接続する。
【0052】
「平面導波路」とは、全ての主表面(階段の踏み板)が平面、即ち平坦である導波路を指す。「湾曲した導波路」は、球面又は非球面などの、一部又は全ての主表面が湾曲している導波路を指す。
【0053】
「外面」は、導波路要素の境界面を指す。外面は、階段表面で形成することができ、それにより、導波路の一般的な形状、又は階段表面の上に提供される材料の別の表面に従う。したがって、導波路要素の外面は、導波路領域の一般的な形状に追従してもよいし追従しなくてもよい。
【0054】
「外側面」とは、レンズの表面など、導波路を配置できる別のものの表面を指す。
【0055】
格子によって導波路内の光照射野を変更することは、特に、光を導波路に入力結合すること、導波路から光を出力結合すること、又は他の方法で光照射野の特性を変更すること、例えば導波路の射出瞳を延長すること、を意味する。
【0056】
選択された実施例の説明
図1を参照すると、拡張現実用途用の目の近くの装置では、目12の通常の視界に重ね合わされた画像は、目12の近く、通常、目12自体から数cm離れて配置された装置10によって生成される。構成は、装置が1つ又は2つの目に対して画像を提供するようにすることができるが、両目機能(two-eye functionality)は、それぞれの目に1つずつ、2つの別々の装置を使用して実現することもできる。ここでは、本発明を片目又は両目分離の観点から説明しているが、両目設定にも同様に適用可能である。
【0057】
図2を参照すると、目の近くの装置の1つの可能な形状因子は、「眼鏡」の形状因子であり、目の近くの装置は(視覚的補正なしで)眼鏡レンズに置き換えられるか、又は(視覚的補正ありで)眼鏡レンズ上に載置される。このような構成では、画像は、例えば、眼鏡フレーム内で、導波路の入力結合領域22を照明する画像ビーム21としてプロジェクタ又は他の表示装置によって生成される。そこから、光照射野は、導波路23によって、ビーム拡大領域及び出力結合領域24に並びにそれらの内部に運ばれる。後者によって放出された光照射野から、観察者の目の瞳孔25を照明する。図示されたものは、そのような装置の1つの特定の例に過ぎず、多くの異なる変形及び構成が可能である。本発明及び以下の説明は、特に、導波路23の幾何学的形状(表面形状)に焦点を合わせる。
【0058】
図3は、一般的な平面導波路構造を断面図で示す。導波路33は、内部全反射が起こる2つの主表面33A、33Bと、波の伝搬が起こる導波路実質部(waveguide proper)とを含む。ここでは、主表面を平面であるものとして示しているが、一般に、本発明は、曲面、特に球面の部分を有する導波路にも等しく適用可能である。
【0059】
主表面33A、33Bの一方又は両方は、導波路実質部内の光照射野を適切に変更し得る回折構造によって完全に又は部分的に覆われ得る。回折構造は、図3に示すように、入力結合格子32若しくは出力結合格子34、又は射出瞳拡張格子(図示せず)として機能し得る。入力結合格子32は、導波路33の外側から導波路33内に向けられた光31Aを結合する。入力結合された光31Bは、それが当たって出力結合格子34によって結合出力されるまで導波路内を伝搬する。AR用途のように、シー・スルー表示装置の場合、環境からの光38は(最大の結合効率が望まれる入力結合領域を除いて)最小限の歪みで構造を通過できる。
【0060】
導波路実質部は、典型的には一定の屈折率をもつが、本発明の範囲内において、傾斜型屈折率分布プロファイルや、一定屈折率をもつ複数の材料どうしが回折格子により互いに間隔を隔てられてなるスタック、又は複数の導波路実質部からなるスタックのような他の導波路構造も考えられる。
【0061】
次に、図4図15を参照して、階段導波路要素の異なる実施例を説明する。
【0062】
図4は、1つの可能な導波路40を示す。導波路40は、所定の目に近い表示装置の光学機能を実装するように、2つの所定の表面48A、48Bの間(即ち、所定の一般的な導波路形状内)に収まるように適合される。このことは、本発明に従って、導波路に階段表面プロファイルを提供することによって達成される。ここで、導波路の両方の表面は階段の形状を有し、階段40A~Gの端の位置は、導波路40の両側の所定の境界面48A、48Bの形状に従うようになっている。
【0063】
境界面48A、48Bは、後でより詳細に論じられるように、実際の面であってもよいし、仮想設計基準のみであってもよい。前者の場合、導波路からの光照射野は、目に入る前にこれらの表面の1つを通過し、この表面の光パワー(optical power)は設計により補償できる。
【0064】
境界面の間の空間が、有限数の階段を有する表面プロファイルによって、物理的構造、好ましくは導波路材料の単一の体積に区分できる限り、境界面の形状に基本的な制限はない。
【0065】
図5は、平面(平坦)階段51、52、53、即ち平面状の主表面を有する階段の場合の階段導波路における波59の伝搬を示す。階段51、52、53は、同じ屈折率を有する平面導波路のスタックと考えることができる。したがって、それらの界面で屈折は発生せず、主表面の平面内の伝播方向は変化しない。実際、バニラ平面導波路の機能との唯一の違いは、導波路の片側に当たる連続する光線の位置間の距離(ホップ距離)が、(バニラ)導波路の厚さの定数ではなく、その点における階段導波路の合計の厚さに影響されることである。この変更を除けば、階段導波路の基本的な機能は、導波路の厚さが異なる「ステップ」ごとに異なる階段導波路であっても、バニラ導波路の機能と変わらない。
【0066】
導波路上部の回折構造を設計/最適化するときにホップ距離を考慮することができるため、平面導波路に適用可能な全ての設計方法論を階段導波路にも直接適用することができることになる。このような方法論は一般的に重要ではなく、平面形状に強く依存しているため、階段アプローチは、これらの方法の有用性を所定の外表面に従う導波路に拡張する便利で簡単な方法を提供する(図4を参照)。
【0067】
平面階段の階段導波路62、72、82の追加の例が、図6図8に示されており、図6図8は、同じ所定の表面60A、60Bに従う、即ち、同じ一般的な導波路形状を実装するが、他の点では異なる、階段導波路を生成するために異なるステップサイズを使用できることを示す。便宜上、導波路構造の平面断面のみが示されているが、これは、本発明の範囲に対する制限を意味することなく、これから従う慣習である。図6及び図7において、第1及び第2の表面プロファイル62A、62B、72A、72Bは、互いに水平方向に並ぶ階段(中間表面)を有する。図6の階段の高さは、図7の場合よりも小さい。図8では、第1及び第2の表面82A、82Bの階段は、交互配置されている、即ち、互いに整列されていない。しかしながら、結果として生じる導波路82は、図6及び図7の導波路62、72と同じ一般的な導波路形状を実装する。
【0068】
これらの提示された原理は、平面導波路に適用されるだけでなく、球面導波路などの湾曲した導波路に直接適用することもできる。例えば、球面導波路は、光照射野の光線がその間で跳ね返る2つの同心の球面(導波路の主表面)を含む。このような導波路では、主表面と同心の特定の球面に対する光線角度は伝播の定数であり、つまり、ホップ間で変化しない。実際、この角度は、導波路の主表面の一方又は両方を別の同心球面に置き換えても変化しない。したがって、平面導波路と同様に、主表面が曲率半径の異なる多数の同心球面(ステップ)で表される場合、球面導波路も光線方向の恒常性をサポートする。
【0069】
球形の階段導波路92、102、112の例は、図9図11に示されている。全ての場合において、第1及び第2の光学表面92A、92B;102A、102B、112A、112Bは、湾曲した一般的な形状を有する導波路92:102;112を規定する。図9の場合、主表面は、一般的な形状を規定する所定の表面90A、90Bとは反対方向に曲率を有する球面である。図10の場合、主表面と所定の表面100A、100Bとの間の曲率は、同じ方向である(但し、大きさは概して同じではない)。図11は、所定の表面110A、110Bの主表面の曲率が互いに異なる状況を示す。
【0070】
より小さい階段でもより大きい階段でも同じ一般的な形状が実装され得る。適度に湾曲した形状の目の近くの用途では、階段の踏み板(図6図12の平面の主表面の寸法)は、例えば、2~30mm、例えば5~20mmであり、及び階段の蹴上げ(図6図12の平面における中間表面の方向)は、例えば50~1000μm、例えば100~200μmである。
【0071】
階段導波路とそれに続く所定の表面との組み合わせを含む、又はそれらから構成される完全なシステムは、異なるように具現化され得る。最も単純な実施例は、暗黙の参照のみを提供する、即ち物理的製品には存在しない所定の表面を有する導波路自体を単純に実現することである。これは、本明細書では「タイプA」要素又は「裸」階段導波路と呼ばれ、図12に示されている。したがって、階段表面は導波路の外表面を形成する。この構成では、導波路構造の平面(球形)モデルは、実際の導波路の動作の正確な(0次)記述を提供する。これは多くの用途において十分である。図6図11に示されている階段導波路形状はどれもタイプA要素として実装され得る。
【0072】
いくつかの実施例では、予め規定された表面は明示的に存在し、即ち、物理的製品において階段表面とは別個の実際の外側光学表面として実装される。これは、本明細書では「タイプB」要素と呼ばれ、図6図11及び図15に示されている。予め規定された表面の光学的作用能力が十分に小さい場合、或いはそれらが望ましい効果又は許容できる効果を提供する場合、それらを階段導波路設計に単に追加することができる。「タイプB」要素では、内部全反射が発生するように、導波路62、72、82、92、102、112と外面60A/B、70A/B、80A/B、90A/B、100A/B、110A/Bとの間の材料層は、屈折率が著しく低い材料にすることができる。代替として、又はそれに加えて、層の境界面の位置に空気又は真空の空洞を設けることができ、これにより、屈折率の差、結果として要素のFOVの差を最大化する。さらに別の実施例では、層の間に薄い低屈折率の固体材料界面層がある。図6図11及び図15を参照すると、空洞層又は界面層は、主表面62A/B、72A/B、82A/B、92A/B、102A/B、112A/B、152A/B(及び存在する場合は中間表面)の位置に位置決めされており、特に図に描かれていない。
【0073】
導波路の主表面にある空洞層又は低屈折率界面層の場合、空洞層の厚さは、例えば、導波路を規定するのに十分な10~100μmなど、10μm以上であり得る。
【0074】
「タイプB」要素のいくつかの実施例では、別個の外面の追加された光学機能を補償するために、導波路形状を変更しなければならない。このような補償は、例えば平面導波路を球形導波路で置き換えることにより、又は例えば図9図11に示されるように球形導波路の曲率を変えることにより、導波路の非平面主表面で達成できる。非平面の主表面と別個の外面との両方を有する「タイプB」要素のこの特定のケースは、「タイプC」要素と呼ばれる。
【0075】
図示のように、中間表面は、通常、導波路の横断面の主表面よりも短い。1つの典型的な構成では、主表面は、その各位置で導波路の一般的な平面にほぼ平行であり、即ち、その平面から20度以下、通常は10度以下の偏差である。中間表面は、隣接する主表面に対して30~150度、例えば45~135度の角度、特に70~110度の角度であってよい。
【0076】
典型的なシー・スルーの目の近くの表示装置用途では、目に表示される画像を生成する光学システムは、環境から目へ通過する光に対して障害となってはならない(図3:38)。実際には、このような障害を完全に回避することはできないが、できる限り小さくする必要がある。平面導波路の場合、主表面の反射とこれらの表面の格子構造が障害の主な原因であり、これらの障害は合理的にうまく制御できる。球面導波路は、それらの主表面の光学的作用能力に起因して、レンズ効果をさらに導入する。この影響を補償することはさらに困難であるが、通常は許容できる。
【0077】
図13に示されるように、裸階段導波路(タイプA要素)では、導波路構造の中間表面135A、135B、137Bは、光照射野へのさらなる障害の原因をもたらす。実際、導波路を通過する光線13A、13B、13D又は導波路の内部を伝播する光線13Cは、これらの表面135A、135B、137Bによって反射される可能性があり(望ましくない反射及び屈折点は図13において円で囲まれている)、したがって間違った角度で、又はそうでない場合は意図せずに目に到達する。
【0078】
一実施例では、中間表面135A、135B、137Bは、望ましくない潜在的な反射及び/又は屈折にもかかわらず、主表面134A、134B、136A、136B、138Bと同じ光学特性を有する。図13に示すように、中間表面135A、135B、137Bは、断面の主表面に対して垂直にも配置され得る。
【0079】
代替の実施例では、導波路の片側又は両側の中間表面135A、135B、137Bは、対応する方向から目に光が届かないように、黒くされている、即ち、不透明にされている。これにより、不要な反射及び/又は屈折が削除される。一実施例では、中間表面135A、135B、137Bは、部分的に黒くされ、それにより、それらの透過率は、例えば、主表面134A、134B、136A、136B、138Bの10~90%であり得る。
【0080】
図14に示すように、一実施例では、中間表面145A、145B、147Bは、それらの隣接する主表面144A、144B、146A、146B、148Bの法線方向に対して斜めの角度にある。角度は一般に例えば1~60度であり得る。これは、不要な反射及び/若しくは屈折を低減し、並びに/又は視覚的により許容できるようにするために用いられ得る。
【0081】
不要な反射又は吸収の形で、導波路の非主表面によって引き起こされる、階段導波路のシー・スルー特性の中断は、軽微であり、並びに/又は、傾斜面の法線及び追加の回折構造を用いるなど、設計上の選択よって低減し得る。必要に応じて、これらの影響は、完全な導波路アセンブリの最適化プロセスにおいてさらに軽減することができる。
【0082】
一実施例では、導波路を通過する光線14A~Dに対する非主表面145A、145B、147Bの影響は、それらの法線が環境から導波路を通って目へ通過する光線の平均伝搬方向に対して垂直になるように表面を配向することによって低減される。この構成は、特に図14に示されている。但し、非主表面の向きを変更しても、導波路内を伝搬する光線(図13の光線13Cのような)への影響は根本的には削除されない。但し、これらの光線は、通常はいずれも最適化メリット関数の減少に繋がる特性であるエネルギー/強度を適切な画像から運び去り、ゴースト画像の原因であるので、この効果は、導波路設計を完成させるために使用される最適化手順によってある程度補償することができる。
【0083】
階段形状の利点には、導波路の形状が基本的に、従わなければならない表面の形状によって影響を受けないため、ほぼ任意の外面形状で階段導波路を実現できることが含まれる。さらに、導波路内部の光線間の角度関係は、外面の形状に影響されない。このため、対応するバニラ導波路(自然な曲率に従うもの)の既存の設計モダリティは、階段導波路に続く表面の設計を直接適用することができる。特定の焦点面距離を実現する従来の球面導波路は、階段導波路に変換できる。
【0084】
導波路の階段表面及び/又は外表面上に1つ又は複数の回折格子が提供され得る。最も一般的には、そのような格子は、
- 導波路要素の外側からそこに向けられた光線をその導波路領域に結合するための入力結合格子、及び/又は
- 導波路領域内を移動する光線を導波路要素外で結合するための出力結合格子、及び/又は
- 導波路領域内を進む光の射出瞳を拡張するための射出瞳エキスパンダ格子である。
【0085】
その目的に応じて、格子は単一の主表面の領域内に収まってもよいし、階段のステップと重なり、隣接するいくつかの主表面にまたがってもよい。
【0086】
特にAR用途に適用可能な典型的な実施例では、導波路要素は透明な材料から作製され、光が導波路内の光の伝搬方向に対して本質的に横方向に導波路要素を通過できるように適合される。
【0087】
階段導波路スタックは、本明細書に記載されるように互いの上に配置された2つ以上の階段導波路要素を含み得る。階段面(タイプA要素)又は別個の表面(タイプB要素)からなるかどうかに関係なく、互いに向き合う導波路の外面は、互いにぴったりと合うように形作られてもよい。スタック内の各個別の導波路は、異なる波長の分離した入力結合格子及び/又は出力結合格子などの1つ又は複数の格子を含み得る。
【0088】
いくつかの実施例では、積み重ねられた各要素の各々の光学面は、同じ曲率、結果として同じ焦点面を有する。これにより、例えば、要素間の単一画像の色の分離が可能になる。
【0089】
いくつかの実施例では、積み重ねられた要素の少なくとも2つは、異なる曲率を有する主表面を有し、各曲率は、異なる焦点面に対応する。したがって、スタックには同時に多くの焦点面がある。これにより、この配置の有用な用途の1つとして、異なる見かけの距離で画像を表示できる。少なくとも2つの要素のそれぞれを個別に制御することができ、又は同じ画像をそれらのそれぞれに投影することができる。
【0090】
いくつかの実施例では、スタックは、異なる導波路曲率を有する少なくとも2つの要素と、同じ導波路曲率を有する少なくとも2つの要素とを含む。したがって、スタックは異なる目的を同時に果たすことができる。
【0091】
図15は、「タイプB」要素又は「タイプC」要素の特定の実施例を示し、導波路150は、第1及び第2の外面150A、150Bを含み、導波路152の主表面152A、152Bは、例えば、単一の材料、好ましくは単一の材料層の内部の真空又は空気の内部空洞で形成される。空洞は、中間表面が全くない導波路152に階段プロファイルを提供するように位置決め及び成形される。即ち、それらは、導波路領域の非連続的な光学表面を規定し、中間表面は明示的には現れない。これは、導波路領域152と導波路150を囲む真空/空気との間の材料の屈折率が導波路領域152自体の屈折率と一致する場合である。このような階段導波路の場合、階段形状自体は、観察者の目で見た環境の画像に障害をもたらさない。但し、非主表面が明示的に存在しない場合でも、導波路内を伝搬する光線に対する影響は残り(一部の光線は導波路から逃げる)、明示的な外側面のない階段導波路の場合、上記と同じ又は同様の考慮事項が保証される。
【0092】
他の実施例を参照して上述したように、この実施例においても、主表面152A、152Bは、平坦又は、球形などの非平坦であり得る。同様に、要素のFOVを犠牲にして、空洞を低屈折率の固体界面層で置き換えることができる。
【0093】
最後に、図16は、導波路領域の内部構造の1つの可能な実装を示している。単一の導波路層のみの代わりに、上記実装は複数の層10A~Eを含み、そのうちの少なくとも1つは階段の上で途切れることなく続く。階段の各側にはいくつかの層があり、ここではそれぞれ3つの層10A、10B、10C/10A、10D、10Eがある。光は、最初に複数の第1の側面層10A、10B、10Cに結合される。階段の上流には、少なくとも1つの回折光学要素14AB、14BCがあり、層10A、10B、10C間の光のパワー分布を変更して、光が階段前の連続層10Aに「パック」されるようにする。その層では、全てのパワーが階段の第2の側に転送される。したがって、光は階段を都合よく「登る」。第2の側では、光パワーは、中間の回折光学要素14AD、14DEを使用して、層10A、10D、10Eの間で再び再分配され得る。
【0094】
全ての実施例において、導波路領域の材料は、2.0以上の屈折率(n)を有する高屈折率ガラスであり得る。或いは、高屈折率(n≧1.7)プラスチックで形成することもできる。導波路領域上に低屈折率界面層及び/又は別個の外面形成層を含むタイプB及びタイプCの実施例では、この層は、例えば、n≦1.3などのn≦1.4のプラスチックで形成され得る。
【0095】
説明した全ての実施例において、導波路に含まれる1つ若しくは複数の格子、又はより一般的には回折光学要素(DOE)は、主表面が外表面であるか要素内の空洞を含む内部光学界面であるかに関係なく、主表面上又は主表面間に配置できる。典型的な実施例では、1つ又は複数の格子は、導波路の少なくとも主表面上に配置される。格子は、要素のタイプに応じて、空気若しくは真空の空洞層又は固体の低屈折率層であり得る次の層に浸透する場合と浸透しない場合とがある。
【0096】
格子材料は、例えば、酸化物又は窒化物、例えば、金属酸化物、例えば、TiOであり得る。
【0097】
1つ又は複数の格子は、単一の階段又はいくつかの階段の上に延在し得る。一実施例では、出力格子は、少なくとも2つの階段の領域上に延在し、その少なくとも片側に向かって漏れやすい表示要素を提供する。このようにして、光学歪みの少ない非平面表示装置要素を実装することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16