(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】統合された低費用のカーテン板、オリフィスPCB、およびイオンレンズアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01J 49/06 20060101AFI20230706BHJP
H01J 49/02 20060101ALI20230706BHJP
H01J 49/42 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
H01J49/06 700
H01J49/06 800
H01J49/02 200
H01J49/42 150
(21)【出願番号】P 2020545710
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 IB2019051685
(87)【国際公開番号】W WO2019167026
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-28
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブーイ, アーロン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウフラー, ロバート
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-142294(JP,A)
【文献】特表2014-533873(JP,A)
【文献】特表2016-533010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0245458(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0292500(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析システムにおける使用のためのカーテンおよびオリフィス板アセンブリであって、前記アセンブリ
は、
第1のプリント回路基板(PCB)を備えているカーテン板であって、前記第1のPCBは、前記質量分析システムのイオン源によって発生させられたイオンを受け取るために構成された開口と、少なくとも1つのガス流チャネルとを有し、前記第1のPCBは、その少なくとも一部上に
配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する、カーテン板と、
前記カーテン板に結合されたオリフィス板と
を備え、
前記オリフィス板は、前記開口と実質的に整列させられたオリフィスを提供する第2のプリント回路基板を備え、それによって、前記カーテン板の前記開口を介して前記アセンブリに入射する前記イオンは、前記オリフィスを介して前記アセンブリから出射可能であり、前記
第2のPCBは、その少なくとも一部上に
配置された少なくとも1つの金属コーティングを有し、
前記オリフィス板は、前記チャネルが前記カーテン板と前記オリフィス板との間の間隙を提供し、前記間隙を通して、ガス流が前記板間に確立されることが可能であるように、前記カーテン板に結合されている、アセンブリ。
【請求項2】
前記カーテン板および前記オリフィス板の前記金属コーティングは、前記板間に電圧差を印加することを可能にするように構成されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記電圧差は、前記カーテン板の前記開口から前記オリフィス板の前記オリフィスへの前記アセンブリを通した前記イオンの通過を促進するように構成されている、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記カーテン板は、ガスを受け取るための入口ポートを備え、前記ガスは、前記カーテン板の前記開口を介して前記アセンブリから退出する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記カーテン板の前記金属コーティングは、前記カーテン板の前記イオン受け取り開口を実質的に包囲している、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記第1のPCBは、前面と後面とを備え、前記開口は、前記前面から前記後面まで延びている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記カーテン板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、前記カーテン板の前記前面の少なくとも一部を被覆し、前記開口を少なくとも部分的に包囲している第1の金属コーティングを備えている、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記カーテン板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、前記カーテン板の前記後面の少なくとも一部を被覆し、前記開口を少なくとも部分的に包囲している第2の金属コーティングを備えている、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記カーテン板の前記第2の金属コーティングは、前記開口を包囲している第1の金属部分と、前記第1の部分から半径方向に間隔を置かれ、前記第1の部分を包囲している第2の金属部分とを備え、前記少なくとも1つのチャネルは、前記第1の金属部分と前記第2の金属部分との間に電気接続を提供するために金属化されている、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのチャネルは、前記カーテン板の前記開口の周囲に配置された螺旋チャネルを備えている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記カーテン板は、前記第1および前記第2の金属コーティングのうちの少なくとも1つを電圧源に電気的に接続するための少なくとも1つの金属化タブを備えている、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記オリフィス板は、前面と後面とを備え、前記オリフィス板の前記前面は、前記アセンブリにおいて前記カーテン板の前記後面に面している、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記オリフィス板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、前記オリフィス板の前記前面上に配置された第1の金属コーティングと、前記オリフィス板の前記後面上に配置された第2の金属コーティングとを備えている、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記第1の金属コーティングは、第1の部分と、前記第1の部分から半径方向に分離され、前記第1の部分から電気的に絶縁された第2の部分とを備え、前記第1および第2の部分の各々は、少なくとも部分的に前記オリフィス板の前記オリフィスを包囲している、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記オリフィス板の前記第2の金属コーティングは、第1の部分と、前記第1の部分から半径方向に分離された第2の部分とを備え、前記第1および第2の部分の各々は、少なくとも部分的に前記オリフィスを包囲している、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記カーテン板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、約20ミクロン~約40ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記オリフィス板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、約20ミクロン~約40ミクロンの範囲内の厚さを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記カーテン板および前記オリフィス板のうちのいずれかの前記少なくとも1つの金属コーティングは、金めっきされた銅または銀を備えている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項19】
質量分析計であって、前記質量分析計は、
複数のイオンを発生させるためのイオン源と、
前記イオンを受け取るためのカーテン板/オリフィス板アセンブリと、
前記アセンブリを通過するイオンを受け取り、前記イオンの質量電荷比に基づいて前記イオンを分析するために前記カーテン板/オリフィス板アセンブリの下流に配置された質量分析器と
を備え、
前記カーテン板/オリフィス板アセンブリは、
第1のプリント回路基板(PCB)を備えているカーテン板であって、前記第1のPCBは、前記イオン源によって発生させられた前記複数のイオンを受け取るために構成された開口を有し、前記第1のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する、カーテン板と、
前記カーテン板に結合されたオリフィス板と
を備え、
前記オリフィス板は、前記開口と実質的に整列させられたオリフィスを提供する第2のPCBを備え、それによって、前記カーテン板の前記開口を介して前記アセンブリに入射する前記イオンの少なくとも一部は、前記オリフィス板の前記オリフィスを介して前記アセンブリから出射することが可能であり、前記第2のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する、質量分析計。
【請求項20】
前記カーテン板および前記オリフィス板の前記金属コーティングのうちのいずれかに電圧を印加するための電圧源をさらに備えている、請求項19に記載の質量分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる2018年3月2日に出願され、「Integrated Low Cost Curtain Plate and Orifice PCB Assembly」と題された米国仮出願第62/637,710号、および参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる2019年2月28日に出願され、「Integrated Low Cost Curtain Plate,Orifice PCB and Ion Lens Assembly」と題された米国仮出願第62/811,867号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、概して、質量分析計における使用のための統合カーテン板/オリフィス板アセンブリを対象とする。さらに、本開示は、堆積物がレンズ上に形成されることを防止すること、および/またはレンズの表面から堆積した汚染を除去することを行うためのレンズの直接加熱のための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの質量分析計において、イオン源によって発生させられたイオンは、カーテン板およびオリフィス板を通して連続的に透過させられ、質量分析計の下流構成要素(レンズ、四重極分析器等)に到達する。典型的に、ガスが、カーテン板とオリフィス板との間の空間内で流動し、例えば、中性種および/または他の汚染物質が下流構成要素に到達することを防止する。
【0004】
従来の質量分析計において採用されるカーテン/オリフィス板組み合わせは、典型的に、大型、高価、かつ複雑すぎて、依然として許容可能なレベルの再現性、安定性、および感度を維持するであろう低費用質量分析計における使用のために実行可能ではない。さらに、従来の質量分析計において、カーテン板およびオリフィス板は、分光計の使用中に汚染された状態になり得る。カーテンおよびオリフィス板の洗浄は、時間がかかり、分光計の使用を限定し得る。
【0005】
故に、より多用途のカーテン板/オリフィス板組み合わせの必要性がある。
【0006】
さらに、例えば、化学イオン化またはエレクトロスプレーによる大気圧におけるイオン化は、サンプル内の分子をイオン化する概して非常に効率的な手段である。イオンの大気中イオン化は、着目分析物のみならず、多量の干渉/汚染イオンおよび中性分子も生成し得る。質量分析システムにおいて、概して、例えば、真空下にある間にイオンを送り、集中させ、操作し、検出することが、望ましい。動作中、生成されたイオンのみならず、干渉/汚染イオンも、質量分析システム内の表面に接触し、それに付着し、および/またはその上に堆積し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面において、質量分析システムにおける使用のためのカーテンおよびオリフィス板アセンブリが、開示され、それは、質量分析システムのイオン源によって発生させられたイオンの少なくとも一部を受け取るために構成される開口と少なくとも1つのガス流チャネルとを有する第1のプリント回路基板(PCB)を含むカーテン板を備え、第1のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する。アセンブリは、カーテン板に結合されたオリフィス板をさらに含み、オリフィス板は、カーテン板の開口と実質的に整列させられたオリフィスを提供するPCBを含み、それによって、カーテン板の開口を介してアセンブリに入射するイオンは、オリフィス板のオリフィスを介してアセンブリから出射かのうであり、第2のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する。オリフィス板は、カーテン板の少なくとも1つのガス流チャネルがそれを通してガス流が板間に確立され得るカーテン板とオリフィス板との間の間隙を提供するように、カーテン板に結合される。
【0008】
いくつかの実施形態において、カーテン板は、それを通してガスがアセンブリの中に導入され得る入口ポートと、それを通して導入されたガスがアセンブリから退出し得る出口ポートとを含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、アセンブリの中に導入されたガスは、カーテン板の開口を介してアセンブリから退出することができ、すなわち、カーテン板のイオン受け取り開口は、出口ポートとして機能する。
【0009】
カーテン板およびオリフィス板の金属コーティングは、電圧を板に印加することを可能にするように構成されることができる。いくつかの実施形態において、カーテン板に印加される電圧は、例えば、カーテン板のイオン受け取り開口の近傍において、入射イオンをカーテン板に誘引する電場を発生させることができる。いくつかの実施形態において、電圧差が、板に印加され、アセンブリを通したイオンの通過を促進するために好適な電場をアセンブリ内に発生させる。例として、限定ではないが、約-800ボルト(DC)~約+800ボルト(DC)の範囲内の電圧が、カーテン板およびオリフィス板のうちのいずれかに印加されることができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、カーテン板は、前面、すなわち、入射イオンに面する表面と、後面、すなわち、オリフィス板に面する表面とを含む金属化PCBから形成され、イオン受け取り開口は、前面から後面まで延びていることができる。いくつかのそのような実施形態において、カーテン板の金属コーティングは、カーテン板の前面の少なくとも一部を被覆し、開口を少なくとも部分的に包囲している第1の金属コーティングを含むことができる。さらに、カーテン板は、後面の少なくとも一部を被覆し、カーテン板のイオン受け取り開口を少なくとも部分的に包囲するその後面上に配置された第2の金属コーティングを含むことができる。例として、カーテン板の後面に関連付けられる金属コーティングは、開口を包囲している第1の金属部分と、第1の部分から半径方向に間隔を置かれ、第1の部分を少なくとも部分的に包囲する第2の金属部分とを含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、複数の半径方向に延びている金属化ガス流チャネルが、第1の金属部分を第2の金属部分に電気的に接続することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、カーテン板は、第1および第2の金属コーティングのうちの少なくとも1つを電圧源に電気的に接続するための少なくとも1つの金属化タブ(本明細書において、フィンガとも称される)を含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、金属化タブは、前面上に配置される金属コーティングを後面上に配置される金属コーティングに電気的に接続し、したがって、これらのコーティングは、金属化タブへの電圧の印加を介して単一の電位において維持されることができる。
【0012】
さらに、オリフィス板も、前面、すなわち、カーテン板に面する表面と、後面、すなわち、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリが組み込まれる質量分析計の1つ以上の分析器等の下流構成要素に面する表面とを含むことができる。いくつかの実施形態において、第1の金属コーティングが、オリフィス板の前面上に配置され、第2の金属コーティングが、オリフィス板の後面上に配置される。いくつかのそのような実施形態において、第1の金属コーティングは、第1の金属部分と、第1の金属部分から半径方向に分離され、PCBの非金属化部分を介してそれから電気的に絶縁される第2の金属部分とを含むことができる。オリフィス板の第1および第2の金属部分の各々は、部分的に、またはある場合、完全にオリフィス板のオリフィス板を包囲することができる。
【0013】
カーテン板の金属コーティングと同様、オリフィス板の金属コーティングは、種々の金属から形成されることができる。例として、オリフィスおよびカーテン板の金属コーティングは、金めっきされた銅、金、スズ、銀、または他の好適な金属から形成されることができる。例えば、一実施形態において、銅が、ニッケルを用いてコーティングされることができ、ニッケルは、次いで、金を用いて(例えば、電気化学堆積を介して)コーティングされることができる。さらに、オリフィスおよびカーテン板の金属コーティングは、例えば、約20~約40ミクロンの範囲内の厚さを有することができるが、他の好適な厚さも、採用されることができる。例えば、金属コーティングが、銅の上にニッケルの層を堆積させ、ニッケルを金を用いてコーティングすることによって形成される一実施形態において、銅層は、例えば、約35ミクロンの厚さを有することができ、ニッケル層の厚さは、例えば、約3ミクロン~約6ミクロンの範囲内であり得、金層の厚さは、例えば、約0.075ミクロン~約0.125ミクロンの範囲内であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、オリフィス板は、それらを通してイオンが進行するカーテン板とオリフィス板との間の空間内で流動するカーテンガスを加熱するために、加熱要素、例えば、抵抗性加熱要素を含むことができる。例として、いくつかの実施形態において、螺旋抵抗性要素が、オリフィス板の前面上に配置されることができる。抵抗性要素は、例えば、それへの電圧(電流)の印加を介してアクティブにされ、熱を発生させることができる。
【0015】
関連する側面において、質量分析計が、開示され、それは、イオンを発生させるためのイオン源と、イオン源によって発生させられたイオンの少なくとも一部を受け取るためにイオン源の下流に配置される本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリとを含む。質量分析器が、アセンブリを通過するイオンの少なくとも一部を受け取り、それらの質量電荷比に基づいてそれらのイオンを分析するためにカーテン板/オリフィス板アセンブリの下流に配置される。
【0016】
さらに、本開示は、質量分析システムにおいて、そのような質量分析システムの表面に衝突するイオンおよび場合によっては中性種からの汚染が、種々の異なる方法でイオンの伝送を妨げ得るという認識を包含する。特に、イオンレンズ上の堆積物からの汚染は、質量分析システムにおける性能の低下を引き起こし得る。本開示は、質量分析システムにおいて、レンズ表面に衝突するイオンおよび中性種からの汚染を阻止するように構成されるイオンレンズ、および/または、レンズ表面上に存在する汚染を低減させるように構成されるイオンレンズの必要性があるという認識をさらに包含する。
【0017】
とりわけ、本開示は、質量分析システムにおける使用のためのイオンレンズアセンブリを提供する。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、入射イオンに面するように配置された前方面を有する前部キャップ層と、後部層と、前部キャップ層と後部層との間に配置された加熱要素とを含む複数の層を含む。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの各層は、それを通した開口部を含み、開口部は、実質的に整列させられており、イオンレンズアセンブリを通したイオンの通過を可能にするようにサイズを決定される。
【0018】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの前部キャップ層および後部層は、導電性であり得る。例えば、これらの層は、少なくとも部分的に電気導体および/または導電性材料から形成されることができる。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの前部キャップ層および/または後部層の各々は、少なくとも部分的に金属から形成されることができる。いくつかの実施形態において、例えば、イオンレンズアセンブリの後部層および/または前部キャップ層は、アルミニウム、アルミニウム合金、ベリリウム、黄銅、クロム、銅、金、インジウム、鉄、モリブデン、ニッケル、ニオブ、白金、パラジウム、ステンレス鋼、タンタル、チタン、タングステン、および/またはジルコニウムから形成されることができる。いくつかの実施形態において、前部キャップ層は、薄フィルムコーティングの形態であり得る。いくつかの実施形態において、前部キャップ層および後部層は、電圧を印加されることができる。いくつかの実施形態において、前部キャップ層および後部層は、例えば、印加される同じ電圧を介して、同じ電位において維持されることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの後部層は、電気的に絶縁性であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの後部層は、少なくとも部分的に誘電材料、ガラス、プラスチック、セラミック、天然結晶、紙、天然または合成ポリマー材料、石、および/または非導電性金属酸化物フィルムから形成されることができる。いくつかの実施形態において、例えば、セラミックは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、サファイア、窒化ケイ素、および/またはジルコニアであり得る。
【0020】
上記のように、いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、加熱要素を含むことができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、イオンレンズアセンブリの後部層と前部キャップ層との間に配置されることができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、それがイオンレンズアセンブリを約100℃~約300℃の温度に加熱するであろうように構成されることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、加熱要素は、抵抗性電気トレースを含むことができ、それは、それへの電力の印加に応答して熱を発生させることができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、電源に電気的に接続するための複数のピンを含むことができる。例として、いくつかの実施形態において、加熱要素は、電力供給源、コントローラ、および/またはドライバのうちのいずれかに結合されることができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、可撓性加熱器を含むことができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、熱電性デバイスを含むことができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、前部キャップ層および後部層から電気的に隔離されることができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、加熱要素は、それを通して流動する加熱された流体を有するレンズアセンブリの層内に、および/またはそれらの間に延びている1つ以上のチャネル、導管、流体経路、管、トンネル等を含むことができる。例として、そのようなチャネル、導管、流体経路、通路、管、トンネル等は、それを通して流体を輸送または流動させるために構成および/または配管されることができる。いくつかの実施形態において、流体は、例えば、アルコール、アンモニア、グリセリン、グリコール、および/または水を含むことができる。いくつかの実施形態において、流体は、高い温度、例えば、約100℃~約300℃に予熱されることができる。いくつかの実施形態において、流体は、接触時、発熱的に反応し、熱を発生させる、2つ以上の試薬を含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、温度センサを含むことができる。温度センサは、イオンレンズアセンブリの温度を感知および報告するように構成されることができる。例として、いくつかの実施形態において、温度センサは、抵抗温度検出器(RTD)であり得る。いくつかの実施形態において、温度センサは、加熱要素内に組み込まれ、測定デバイスへの電気接続のための複数のピンを含み得る、例えば、金属から形成される抵抗性電気トレースである。測定デバイスは、抵抗性トレースの抵抗を測定し、測定された抵抗を温度に関連させることができる。いくつかの実施形態において、温度センサは、サーミスタまたはサーモカップルを含むことができる。いくつかの実施形態において、温度センサは、前部キャップ層と後部層との間に配置されることができる。いくつかの実施形態において、温度センサは、前部キャップ層または後部層に、例えば、その外面に搭載されることができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、前部キャップ層と加熱要素との間に配置された第1の絶縁層を含むことができる。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、加熱要素と後部層との間に配置された第2の絶縁層を含むことができる。いくつかの実施形態において、第1および第2の絶縁層は、薄フィルムコーティングから形成されることができる。いくつかの実施形態において、第1および第2の絶縁層は、誘電材料、すなわち、ガラス、プラスチック、セラミック、天然結晶、紙、天然または合成ポリマー材料、石、および/または非導電性金属酸化物フィルムから形成されることができる。いくつかの実施形態において、例えば、セラミックは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、サファイア、窒化ケイ素、および/またはジルコニアであり得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの各層は、それを通した開口部を含むことができ、異なる層の開口部は、実質的に整列させられており、イオンレンズアセンブリを通したイオンの通過を可能にするようにサイズを決定される。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの少なくとも1つの層内、ある場合、全ての層内の開口部は、ほぼ円形であり得る。いくつかの実施形態において、そのような開口部は、約0.010mm~約10mmの範囲内の少なくとも1つの寸法、例えば、直径を有することができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、約0.025mm~約10mmの厚さを有することができ、厚さは、前部キャップ層の前方面から後部層の後方面までであり得る。質量分析システムおよびイオン経路の幾何学形状に関して、全体を通した目的のために、イオンレンズアセンブリの前方面またはイオンレンズアセンブリの任意の層が、イオンがレンズを通過するときに最初に通り過ぎる表面であろう。さらに、質量分析システムおよびイオン経路の幾何学形状に関して、全体を通した目的のために、イオンレンズアセンブリの後方面またはイオンレンズアセンブリの任意の層が、イオンがレンズを通過するときに最後に通り過ぎる表面であろう。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示は、質量分析システムを提供し、それは、イオンを発生させるためのイオン源と、イオンを受け取るためにイオン源から下流に位置付けられた1つ以上のイオンガイドチャンバとを含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のイオンガイドチャンバは、イオン源から発生させられたイオンを受け取るための入口オリフィスと、イオンを下流構成要素、例えば、質量分析器に透過させるための出射オリフィスとを含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリは、イオンガイドチャンバのうちの少なくとも1つの入口オリフィスまたは出射オリフィスのうちのいずれかに近接して位置付けられることができる。
【0028】
上記のように、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリは、イオンレンズアセンブリの温度を測定するための温度センサを含むことができる。いくつかのそのような実施形態において、温度センサは、フィードバック回路に電気的に結合され、それは、順に、電圧(例えば、dc電圧)をイオンレンズアセンブリ内に組み込まれる加熱要素に印加するように構成される電圧源を制御することができる。温度センサは、イオンレンズアセンブリの温度を示す信号をフィードバック回路に提供することができ、それは、順に、所望の範囲内でイオンレンズアセンブリの温度を維持するように、電圧源によってイオンレンズアセンブリの加熱要素に印加される電圧を調節することができる。例えば、温度データが、所定の上限閾値を上回る温度を示す場合、フィードバック回路は、電圧源に、加熱要素に印加される電圧を低下させることができ、温度データが、所定の下限閾値を下回る温度を示す場合、フィードバック回路は、電圧源に、加熱要素に印加される電圧を増加させることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示は、イオンレンズアセンブリを製作する方法を提供する。いくつかの実施形態において、そのような方法は、電気絶縁材料から形成され、それを通したイオンの通過を可能にするように成形およびサイズを決定される開口部、例えば、中心開口部を有する後部層を提供することを含むことができる。加熱要素が、次いで、後部層の前方面に結合されることができる。例えば、加熱要素は、後部層内に形成される開口部を閉塞しないであろう様式で後部層の前方面上に堆積させられた金属抵抗性トレースの形態であり得る。例えば、抵抗性トレースは、後部層の要素であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、金属抵抗性トレースは、後部層の前方面上に堆積させられることができる。それを通したイオンの通過のための開口部を有する絶縁層が、次いで、加熱要素上に配置されることができ、イオンの通過のための開口部を有する前部導電性層が、絶縁層上に配置されることができる。例として、いくつかの実施形態において、前部層は、加熱要素と接触する表面に対向する絶縁層の表面上に堆積させられる薄い金属コーティングの形態であり得る。後部層、絶縁層、および前部層は、それらのそれぞれの開口部が、それを通したイオンビームの通過を可能にするために実質的に整列させられるように組み立てられる。いくつかの実施形態において、後部層の前方面上に加熱要素を堆積させるステップ中、例えば、抵抗性トレースの形態における温度センサも、後部層の前方面上に堆積させられることができる。
【0030】
別の実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリを製作する方法において、後部層は、導電性材料、例えば、金属から形成されることができる。そのような実施形態において、第1の絶縁層が、後部層の前方面上に配置され、例えば、抵抗性トレースの形態における加熱要素が、次いで、後部層と接触する表面と反対の絶縁層の表面上に堆積させられる。いくつかのそのような実施形態において、温度センサも、絶縁層の表面上に堆積させられることができる。いくつかの実施形態において、第2の絶縁層が、加熱要素上に堆積させられ、続けて、前部キャップ層を形成するように、加熱要素と接触する表面と反対の第2の絶縁層の表面上に金属層を堆積させることができる。
【0031】
例えば、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリの組立の方法は、金属レンズを提供することを含むことができ、レンズ片は、適切な場所に適切な寸法の開口を伴う正方形または丸形または他の好適な形状であり得る。前面は、誘電体を用いてコーティングされることができる。抵抗性トレースは、誘電体に取り付けられ、レンズとのいかなる接触も起こらないことを確実にすることができる。抵抗性トレースは、糊着されること、物理的堆積プロセスを使用して堆積させられること、または当技術分野で公知であるような好適な技術を使用して印刷されることができる。温度感知デバイスが、類似する方式で取り付けられることができる。それは、抵抗性の熱変動トレース(RTD)またはサーモカップルであり得る。抵抗性トレースおよびRTDトレースは、第2の誘電体カバーを用いてコーティングされることができる。第2の誘電体コーティングは、導電性コーティングを用いてコーティングされ、抵抗性加熱トレースおよびRTDトレースへの電気接触が起こらないことを確実にすることができる。設計は、抵抗性トレースおよびRTDトレースとの電気接触が可能であり、レンズがレンズ電力供給源および最終導電性コーティングと電気接触することを確実にすべきである。最終導電性コーティングおよびレンズは、同じ電圧源に電気接触することができる。
【0032】
別の例において、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリの組立の方法は、セラミックレンズを提供することを含むことができ、レンズ片は、適切な場所に適切な寸法の開口を伴う正方形または丸形または他の好適な形状であり得る。抵抗性トレースは、セラミックレンズに取り付けられることができる。抵抗性トレースは、糊着されること、物理的堆積プロセスを使用して堆積させられること、または当技術分野で公知であるような適切な技術を使用して印刷されることができる。温度感知デバイスが、類似する方式で取り付けられることができる。デバイスは、抵抗性の熱変動トレース(RTD)またはサーモカップルであり得る。抵抗性トレースおよびRTDは、誘電体コーティングを用いてコーティングされることができる。設計は、抵抗性トレースおよびRTDトレースとの電気接触が可能であることを確実にすべきである。両側を含むアセンブリ全体が、導電性材料を用いてコーティングされ、導電性コーティングと加熱器トレースまたはRTDトレースのいずれかとの間にいかなる電気接触も起こらないことを確実にすることができる。
【0033】
別の例において、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリの組立の方法は、2つの片のセラミックレンズを提供することを含むことができる。レンズ片は、適切な場所に適切な寸法の開口を伴う正方形または丸形または他の好適な形状であり得る。抵抗性トレースは、1つのセラミックレンズに取り付けられることができる。抵抗性トレースは、糊着されること、物理的堆積プロセスを使用して堆積させられること、または当技術分野で公知であるような適切なプロセスを使用して印刷されることができる。温度感知デバイスが、類似する方式で取り付けられることができる。デバイスは、抵抗性の熱変動トレース(RTD)またはサーモカップルであり得る。セラミックレンズの第2の片は、抵抗性トレースおよびRTDが取り付けられる第1のレンズ片に留められることができる。留めることは、接着剤、ねじ、クランプ、または当技術分野で公知であるような他の好適な技法を介して達成されることができる。アセンブリ全体が、導電性材料を用いてコーティングされ、抵抗性トレースおよびRTDが導電性コーティングに電気的に取り付けられないことを確実にすることができる。設計は、抵抗性トレースおよびRTDトレースとの電気接触が可能であることを確実にすべきである。
【0034】
別の例において、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリの組立の方法は、プリント回路基板(PCB)レンズを提供することを含むことができる。レンズは、それにイオンを通すために好適な適切にサイズを決定された開口を伴う正方形または円形または他の好適な形状の平坦なPCBであり得る。PCBレンズは、内部回路が、加熱器として使用されるために要求される抵抗とともに作成され得る多層PCBであり得る。PCBレンズは、温度を感知するためのRTDデバイスまたはサーモカップルを備えていることができる。PCBレンズは、導体を用いてめっきされることができる。外部めっきと内部抵抗性トレースとの間の電気接触は、望ましくない。設計は、抵抗性トレースおよびRTDトレースとの電気接触が可能であることを確実にすべきである。
【0035】
いくつかの実施形態において、製作方法は、加熱要素を通した流体、例えば、予熱された液体の流動を可能にする加熱要素内の1つ以上の流体チャネルを提供することをさらに含むことができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの温度は、例えば、温度センサおよび温度センサと通信するフィードバック回路およびイオンレンズアセンブリ内に組み込まれる加熱要素に電圧を印加する電圧源を使用することによって制御されることができる。フィードバック回路(コントローラ内に組み込まれ得る)は、温度センサから温度データを受信することができ、所望の温度範囲内、例えば、約100℃~約300℃の範囲内にイオンレンズアセンブリ(または少なくともその一部)の温度を維持するように、温度センサに印加される電圧(電力)を調節することができる。
【0037】
本発明の種々の側面のさらなる理解が、下で簡潔に説明される、関連付けられる図面と併せて、以下の詳細な説明を参照することによって取得されることができる。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
質量分析システムにおける使用のためのカーテンおよびオリフィス板アセンブリであって、前記アセンブリでは、
第1のプリント回路基板(PCB)を備えているカーテン板であって、前記第1のPCBは、前記質量分析システムのイオン源によって発生させられたイオンを受け取るために構成された開口と、少なくとも1つのガス流チャネルとを有し、前記第1のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する、カーテン板と、
前記カーテン板に結合されたオリフィス板と
を備え、
前記オリフィス板は、前記開口と実質的に整列させられたオリフィスを提供する第2のプリント回路基板を備え、それによって、前記カーテン板の前記開口を介して前記アセンブリに入射する前記イオンは、前記オリフィスを介して前記アセンブリから出射可能であり、前記第2のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有し、
前記オリフィス板は、前記チャネルが前記カーテン板と前記オリフィス板との間の間隙を提供し、前記間隙を通して、ガス流が前記板間に確立されることが可能であるように、前記カーテン板に結合されている、アセンブリ。
(項目2)
前記カーテン板および前記オリフィス板の前記金属コーティングは、前記板間に電圧差を印加することを可能にするように構成されている、項目1に記載のアセンブリ。
(項目3)
前記電圧差は、前記カーテン板の前記開口から前記オリフィス板の前記オリフィスへの前記アセンブリを通した前記イオンの通過を促進するように構成されている、項目2に記載のアセンブリ。
(項目4)
前記カーテン板は、ガスを受け取るための入口ポートを備え、前記ガスは、前記カーテン板の前記開口を介して前記アセンブリから退出する、項目1に記載のアセンブリ。
(項目5)
前記カーテン板の前記金属コーティングは、前記カーテン板の前記イオン受け取り開口を実質的に包囲している、項目1に記載のアセンブリ。
(項目6)
前記第1のPCBは、前面と後面とを備え、前記開口は、前記前面から前記後面まで延びている、項目1に記載のアセンブリ。
(項目7)
前記カーテン板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、前記カーテン板の前記前面の少なくとも一部を被覆し、前記開口を少なくとも部分的に包囲している第1の金属コーティングを備えている、項目6に記載のアセンブリ。
(項目8)
前記カーテン板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、前記カーテン板の前記後面の少なくとも一部を被覆し、前記開口を少なくとも部分的に包囲している第2の金属コーティングを備えている、項目7に記載のアセンブリ。
(項目9)
前記カーテン板の前記第2の金属コーティングは、前記開口を包囲している第1の金属部分と、前記第1の部分から半径方向に間隔を置かれ、前記第1の部分を包囲している第2の金属部分とを備え、前記少なくとも1つのチャネルは、前記第1の金属部分と前記第2の金属部分との間に電気接続を提供するために金属化されている、項目8に記載のアセンブリ。
(項目10)
前記少なくとも1つのチャネルは、前記カーテン板の前記開口の周囲に配置された螺旋チャネルを備えている、項目1に記載のアセンブリ。
(項目11)
前記カーテン板は、前記第1および前記第2の金属コーティングのうちの少なくとも1つを電圧源に電気的に接続するための少なくとも1つの金属化タブを備えている、項目8に記載のアセンブリ。
(項目12)
前記オリフィス板は、前面と後面とを備え、前記オリフィス板の前記前面は、前記アセンブリにおいて前記カーテン板の前記後面に面している、項目1に記載のアセンブリ。
(項目13)
前記オリフィス板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、前記オリフィス板の前記前面上に配置された第1の金属コーティングと、前記オリフィス板の前記後面上に配置された第2の金属コーティングとを備えている、項目12に記載のアセンブリ。
(項目14)
前記第1の金属コーティングは、第1の部分と、前記第1の部分から半径方向に分離され、前記第1の部分から電気的に絶縁された第2の部分とを備え、前記第1および第2の部分の各々は、少なくとも部分的に前記オリフィス板の前記オリフィスを包囲している、項目13に記載のアセンブリ。
(項目15)
前記オリフィス板の前記第2の金属コーティングは、第1の部分と、前記第1の部分から半径方向に分離された第2の部分とを備え、前記第1および第2の部分の各々は、少なくとも部分的に前記オリフィスを包囲している、項目14に記載のアセンブリ。
(項目16)
前記カーテン板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、約20ミクロン~約40ミクロンの範囲内の厚さを有する、項目1に記載のアセンブリ。
(項目17)
前記オリフィス板の前記少なくとも1つの金属コーティングは、約20ミクロン~約40ミクロンの範囲内の厚さを有する、項目1に記載のアセンブリ。
(項目18)
前記カーテン板および前記オリフィス板のうちのいずれかの前記少なくとも1つの金属コーティングは、金めっきされた銅または銀を備えている、項目1に記載のアセンブリ。
(項目19)
質量分析計であって、前記質量分析計は、
複数のイオンを発生させるためのイオン源と、
前記イオンを受け取るためのカーテン板/オリフィス板アセンブリと、
前記アセンブリを通過するイオンを受け取り、前記イオンの質量電荷比に基づいて前記イオンを分析するために前記カーテン板/オリフィス板アセンブリの下流に配置された質量分析器と
を備え、
前記カーテン板/オリフィス板アセンブリは、
第1のプリント回路基板(PCB)を備えているカーテン板であって、前記第1のPCBは、前記イオン源によって発生させられた前記複数のイオンを受け取るために構成された開口を有し、前記第1のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する、カーテン板と、
前記カーテン板に結合されたオリフィス板と
を備え、
前記オリフィス板は、前記開口と実質的に整列させられたオリフィスを提供する第2のPCBを備え、それによって、前記カーテン板の前記開口を介して前記アセンブリに入射する前記イオンの少なくとも一部は、前記オリフィス板の前記オリフィスを介して前記アセンブリから出射することが可能であり、前記第2のPCBは、その少なくとも一部上に配置された少なくとも1つの金属コーティングを有する、質量分析計。
(項目20)
前記カーテン板および前記オリフィス板の前記金属コーティングのうちのいずれかに電圧を印加するための電圧源をさらに備えている、項目19に記載の質量分析計。
(項目21)
質量分析システムにおける使用のためのイオンレンズアセンブリであって、前記イオンレンズアセンブリは、複数の層を備え、前記複数の層は、
入射イオンに面するように配置された前方面を有する前部キャップ層と、
後部層と、
前記前部キャップ層と前記後部層との間に配置された加熱要素と
を備え、
前記複数の層の各層は、開口部を備え、各層の前記開口部は、実質的に整列させられており、前記イオンレンズアセンブリを通したイオンの通過を可能にするようにサイズを決定されている、イオンレンズアセンブリ。
(項目22)
前記加熱要素は、前記前部キャップ層および前記後部層から電気的に隔離されている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目23)
前記前部キャップ層と前記加熱要素との間に配置された第1の絶縁層と、
前記加熱要素と前記後部層との間に配置された第2の絶縁層と
をさらに備えている、項目22に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目24)
前記第1および第2の絶縁層は、誘電材料:ガラス、プラスチック、セラミック、天然結晶、紙、天然または合成ポリマー材料、石、および/または、非導電性金属酸化物フィルムを備えている、項目23に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目25)
前記複数の層のうちの層は、薄フィルムコーティングを備えている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目26)
前記前部キャップ層および前記後部層は、導電性である、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目27)
前記前部キャップ層と前記後部層とは、同じ電圧を受け取るように構成されている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目28)
前記前部キャップ層および前記後部層は、アルミニウム、セラミック、銅、金、および/または、ステンレス鋼を備えている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目29)
前記加熱要素は、電力を前記加熱要素に印加するように構成された電気接続をさらに備えている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目30)
前記イオンレンズアセンブリは、約0.2mm~約10mmの厚さを有し、前記厚さは、前記前部キャップ層の前方面から前記後部層の後方面までである、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目31)
前記加熱要素は、抵抗性電気トレースまたは可撓性加熱器を備えている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目32)
前記加熱要素は、前記イオンレンズアセンブリを約100℃~約300℃の温度に加熱するように設計および構築されている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目33)
前記複数の層のうちの少なくとも1つの層における前記開口部は、ほぼ円形である、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目34)
各層における前記開口部は、少なくとも1つの寸法において、約0.1mm~約10mmである、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目35)
前記前部キャップ層と前記後部層との間に配置されたフィードバック要素をさらに備え、前記フィードバック要素は、前記イオンレンズアセンブリの温度を測定する、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目36)
前記フィードバック要素は、抵抗性電気トレースを備えている、項目35に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目37)
前記フィードバック要素は、抵抗温度検出器(RTD)を備えている、項目35に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目38)
前記加熱要素は、電気接続のための複数のピンを備えている、項目21に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目39)
前記ピンのうちの少なくとも1つは、前記加熱要素を外部温度センサに接続するように構成されている、項目38に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目40)
質量分析システムであって、前記質量分析システムは、
イオンを発生させるためのイオン源と、
イオンを受け取るために前記イオン源から下流に位置付けられた1つ以上のイオンガイドチャンバであって、前記1つ以上のイオンガイドチャンバは、
前記イオン源から発生させられたイオンを受け取るための入口オリフィスと、
イオンを質量分析器に透過させるための少なくとも1つの出射オリフィスと
を備えている、1つ以上のイオンガイドチャンバと、
前記1つ以上のイオンガイドチャンバのうちの少なくとも1つの前記入口オリフィスから下流に位置付けられたイオンレンズアセンブリと
を備え、
前記イオンレンズアセンブリは、複数の層を備え、前記複数の層は、
入射イオンに面するように配置された前方面を有する前部キャップ層と、
後部層と、
前記前部キャップ層と前記後部層との間に配置された加熱要素と
を備え、
前記複数の層の各層は、開口部を備え、各層の前記開口部は、実質的に整列させられており、前記イオンレンズアセンブリを通したイオンの通過を可能にするようにサイズを決定されている、質量分析システム。
(項目41)
質量分析システムであって、前記質量分析システムは、
イオンを発生させるためのイオン源と、
イオンを受け取るために前記イオン源から下流に位置付けられた1つ以上のイオンガイドチャンバであって、前記1つ以上のイオンガイドチャンバは、
前記イオン源から発生させられたイオンを受け取るための入口オリフィスと、
イオンを質量分析器に透過させるための少なくとも1つの出射オリフィスと
を備えている、1つ以上のイオンガイドチャンバと、
前記1つ以上のイオンガイドチャンバのうちの少なくとも1つから下流に位置付けられた前記項目のいずれかに記載のイオンレンズアセンブリと
を備えている、質量分析システム。
(項目42)
前記加熱要素は、前記イオンレンズアセンブリを約100℃~約300℃の範囲内の温度に加熱するように設計および構築されている、項目41に記載の質量分析システム。
(項目43)
前記イオンレンズアセンブリの加熱要素と通信している加熱器回路をさらに備え、前記加熱器回路は、前記加熱要素に電力を印加するように構成されている、項目42に記載の質量分析システム。
(項目44)
前記加熱要素と通信しているフィードバック要素をさらに備え、前記フィードバック要素は、前記イオンレンズアセンブリの温度を測定するように構成されている、項目43に記載の質量分析システム。
(項目45)
前記フィードバック要素および前記加熱器回路と通信しているコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記フィードバック要素から温度データを受信し、前記イオンレンズアセンブリの温度を所望の温度範囲内に調整する、項目44に記載の質量分析システム。
(項目46)
前記イオンレンズアセンブリは、前記イオンレンズアセンブリが100~300℃の温度にあるとき、前記前部キャップ層の前方面におけるイオンおよび中性種の付着係数が低減させられるように構成されている、項目40に記載の質量分析システム。
(項目47)
イオンレンズアセンブリを作製する方法であって、前記方法は、
後部層を提供するステップと、
加熱要素を前記後部層と結合するステップと、
前部キャップ層を前記加熱要素と結合するステップと
を含み、
前記前部キャップ層は、入射イオンに面するように配置された前方面を有し、
各層は、開口部を備え、各層の前記開口部は、実質的に整列させられ、前記イオンレンズアセンブリを通したイオンの通過を可能にするようにサイズを決定される、方法。
(項目48)
前記加熱要素を前記後部層と結合するステップは、
第1の絶縁層を前記後部層の前方面に適用するステップと、
加熱要素を前記第1の絶縁層と接触させるステップと、
第2の絶縁層を前記加熱要素に適用するステップと、
導電性層を前記第2の絶縁層と接触させるステップと
を含む、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記適用するステップは、堆積させることおよび/またはコーティングすることを含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
加熱器回路を提供するステップと、
前記加熱要素を前記加熱器回路と接続するステップと、
フィードバック要素を提供するステップと、
前記イオンレンズアセンブリの前記前部キャップ層と前記後部層との間に前記フィードバック要素を結合するステップと、
前記フィードバック要素を前記加熱器回路と接続するステップと
をさらに含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
質量分析システムにおけるイオンレンズアセンブリ汚染を低減させる方法であって、前記方法は、
イオンレンズアセンブリを提供するステップであって、前記イオンレンズアセンブリは、加熱要素とフィードバック要素とを有し、前記加熱要素およびフィードバック要素は、前部キャップ層と後部層との間に配置され、前記加熱要素は、加熱器回路に電気的に接続される、ステップと、
前記加熱器回路を使用して電流を前記加熱要素に印加するステップであって、前記加熱要素の少なくとも一部は、前記イオンレンズアセンブリを直接加熱するために、前記印加された電流に応答して熱を発生させる電気抵抗を示す、ステップと、
前記イオンレンズアセンブリの温度を制御するステップと
を含み、
前記制御するステップは、
コントローラを提供するステップと、
前記コントローラが前記加熱要素および前記フィードバック要素と通信するように、前記コントローラを前記加熱器回路および前記フィードバック要素と接続するステップと、
前記コントローラによって、前記フィードバック要素から温度データを受信するステップと、
前記コントローラによって、前記温度データに応答して前記加熱器回路を制御し、前記イオンレンズアセンブリの温度を所望の温度範囲内に調整するステップと
を含む、方法。
(項目52)
前記所望の温度範囲は、約100℃~約300℃である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記加熱要素は、流体のために配管された少なくとも1つの導管を備え、前記流体は、前記少なくとも1つの導管を通して流動する、項目51に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目54)
前記流体は、予熱された流体である、項目53に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目55)
前記流体は、2つ以上の試薬であり、前記2つ以上の試薬は、接触時、および/または混合時、熱を発熱的に発生させる、項目53に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目56)
前記加熱要素は、熱電性デバイスを備えている、項目51に記載のイオンレンズアセンブリ。
(項目57)
前記前部キャップ層または前記後部層に搭載された少なくとも1つの温度センサをさらに備えている、項目51に記載のイオンレンズアセンブリ。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本教示のある実施形態による、カーテン板と、オリフィス板とを有するカーテン板/オリフィスアセンブリを図式的に描写する(板は、容易な説明のために非組立構成において示される)。
【
図2A】
図2Aは、本教示のある実施形態による、カーテン板の前面を図式的に描写する。
【
図2B】
図2Bおよび2Cは、本教示のある実施形態による、後面に適用される金属化のパターンを実証するためのカーテン板の後面の2つの概略図を描写する。
【
図2C】
図2Bおよび2Cは、本教示のある実施形態による、後面に適用される金属化のパターンを実証するためのカーテン板の後面の2つの概略図を描写する。
【
図3A】
図3Aは、本教示のある実施形態による、オリフィス板の前面を図式的に描写する。
【
図3B】
図3Bは、本教示のある実施形態による、オリフィス板の後面を図式的に描写する。
【
図4A】
図4Aは、いくつかの実施形態による、カーテン板またはオリフィス板のうちのいずれかが、実質的に正方形の形状を有し得ることを図式的に描写する。
【
図4B】
図4Bは、いくつかの実施形態による、カーテン板またはオリフィス板のうちのいずれかが、それから複数のフィンガが半径方向に延びているディスク様部分を有し得ることを図式的に描写する。
【
図4C】
図4Cは、いくつかの実施形態による、カーテン板またはオリフィス板のうちのいずれかが、いかなる半径方向に延びているフィンガも伴わないディスク様形状を有し得ることを図式的に描写する。
【
図5A】
図5Aおよび5Bは、本教示のある実施形態による、抵抗性加熱要素がオリフィス板の表面上に配置されるカーテン板/オリフィス板アセンブリを図式的に描写する。
【
図5B】
図5Aおよび5Bは、本教示のある実施形態による、抵抗性加熱要素がオリフィス板の表面上に配置されるカーテン板/オリフィス板アセンブリを図式的に描写する。
【
図6】
図6は、本教示のある実施形態によるカーテン板/オリフィス板が組み込まれる質量分析計を図式的に描写する。
【
図7】
図7は、標準的カーテン板/オリフィス板アセンブリを使用して取得された質量スペクトル、および本教示のある実施形態によるカーテン板/オリフィス板アセンブリを使用して取得された質量スペクトルを示す。
【
図8】
図8は、本開示の種々の実施形態による、質量分析システムを概略図において図示する。
【
図9】
図9は、本開示の種々の実施形態の一側面による、導電性後部層とともに示されるイオンレンズアセンブリの分解図を概略図において図示する。
【
図10】
図10は、本開示の種々の実施形態の一側面による、非導電性後部層とともに示される別のイオンレンズアセンブリの分解図を概略図において図示する。
【
図11】
図11は、本開示の種々の実施形態の一側面による、イオンレンズアセンブリを概略図において図示する。
【
図12】
図12は、本開示の種々の実施形態の一側面による、レンズの後部層を示す、イオンレンズアセンブリのサブアセンブリを概略図において図示する。
【
図13】
図13は、後部層、後部層の前方面と接触する絶縁層、および絶縁層の前方面上に配置される抵抗性トレースの形態における加熱要素を示すイオンレンズアセンブリのサブアセンブリを概略図において図示する。
【
図14】
図14は、加熱要素と接触する後部層の前方面を示すイオンレンズアセンブリのサブアセンブリを概略図において図示し、温度センサが、誘電体層の後方面上に配置される。
【
図15】
図15は、その加熱要素がその中に配置される流体チャネルを含む後部層を示す、イオンレンズアセンブリのサブアセンブリを概略図において図示する。
【
図16】
図16は、温度センサおよびフィードバック回路を使用して、所望の範囲内に本教示によるイオンレンズアセンブリの温度を維持するためのシステムの例示的実装を図式的に図示する。
【
図17】
図17は、以下の事例、すなわち、(A)イオンレンズアセンブリが加熱されなかった、(B)イオンレンズアセンブリが100℃の温度に加熱された、および、(C)イオンレンズアセンブリが130℃の温度に加熱された事例に関して、本教示によるイオンレンズアセンブリが組み込まれる質量分析計の性能に関する比較データを描写する。
【
図18】
図18は、以下の事例、すなわち、(A)イオンレンズアセンブリが加熱されなかった、(B)イオンレンズアセンブリが100℃の温度に加熱された、および、(C)イオンレンズアセンブリが130℃の温度に加熱された事例に関して、本教示によるイオンレンズアセンブリが組み込まれるイオンレンズアセンブリの給電および/またはランピングに関する比較データを描写する。
【
図19】
図19は、以下の事例、すなわち、(A)イオンレンズアセンブリが加熱されなかった、(B)イオンレンズアセンブリが約100℃の温度に加熱された、および、(C)イオンレンズアセンブリが約130℃の温度に加熱された事例に関して、質量分析システム内に組み込まれる本教示によるイオンレンズアセンブリの給電および/またはランピングに関する比較データを描写する。
【
図20】
図20は、以下の事例、すなわち、(A)イオンレンズアセンブリが加熱されなかった、(B)イオンレンズアセンブリが約100℃の温度に加熱された、および、(C)イオンレンズアセンブリが約130℃の温度に加熱された事例に関して、ロバスト性試験後の本教示によるイオンレンズアセンブリの画像を描写する。
【
図21】
図21は、接触角データを描写する。
図21は、パネル(A)において、イオンレンズアセンブリが加熱されたときのイオンレンズアセンブリの動作後の本教示によるイオンレンズアセンブリの露出面上の水滴の画像を描写する(差し込み図は、同じ動作条件後の従来のレンズ上の水滴を示す)。
図21は、パネル(B)において、表面上の水滴の接触角を決定するための方法を図示する概略図を描写する。
【
図22】
図22は、本教示による加熱されたイオンレンズアセンブリが、レンズの洗浄後に、およびレンズの洗浄を伴わずに、IQ1レンズとして使用される質量分析システムの性能に関する例示的比較データを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(定義)
本開示がより容易に理解されるために、ある用語が、最初に、下で定義される。以下の用語および他の用語に関する追加の定義が、本明細書全体を通して記載される。
【0040】
本明細書に使用されるように、用語「約」および「およそ」は、均等物として使用される。約/およその有無を問わず、本願に使用されるいかなる数字も、当業者によって理解される任意の通常の変動を対象とすることを意味する。ある実施形態において、用語「およそ」または「約」は、別様に記載されない限り、または別様に文脈から明白ではない限り、記載される基準値のいずれかの方向において(それを上回る、または下回る)、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満内に該当する値の範囲を指す(そのような数字が可能な値の100%を超えるであろう場合を除く)。
【0041】
本明細書に使用されるように、別様に文脈から明白ではない限り、用語「a」は、「少なくとも1つ」を意味するように理解され得る。本願に使用されるように、用語「または」は、「および/または」を意味するように理解され得る。本願において、用語「~を備えている」および「~を含む」は、それだけで提示されるか、または1つ以上の追加の構成要素またはステップとともに提示されるかにかかわらず、項目化された構成要素またはステップを包含するように理解され得る。
【0042】
「実質的に」:本明細書で使用されるように、用語「実質的に」および文法的均等物は、着目特性または性質の合計またはほぼ合計範囲または程度を示す定性的条件を指す。当業者は、生物学的および化学的現象が、あるにしても、完了まで進むこと、および/または完全に進行すること、または絶対的結果を達成すること、または回避することが殆どないことを理解するであろう。
【0043】
明確化のために、以下の議論は、そうすることが便利または適切であるときは常に、ある具体的詳細を省略しながら、本出願者の教示の実施形態の種々の側面を詳述するであろうことを理解されたい。例えば、代替実施形態における同様または類似する特徴の議論は、若干略記され得る。周知の構想または概念も、簡潔にするために、詳細には議論されないこともある。当業者は、本出願者の教示のいくつかの実施形態が、あらゆる実装において具体的に説明される詳細のうちのあるものを要求しないこともあり、それが実施形態の徹底的な理解を提供するためにのみ本明細書に記載されることを認識するであろう。同様に、説明される実施形態は、本開示の範囲から逸脱することなく、共通の一般的知識に従って、改変または変動を受けやすくあり得ることが明白であろう。実施形態の以下の詳細な説明は、いかなる様式でも本出願者の教示の範囲を限定すると見なされるものではない。
【0044】
(詳細な説明)
図1、2A、2B、2C、3A、および3Bを参照すると、質量分析システムにおける使用のための統合カーテン板/オリフィス板アセンブリ10が、開示され、それは、オリフィス板14に結合されるカーテン板12を含む。カーテン板12は、入射イオン(これらの図に図示せず)に面する前面18と、反対の後面20とを有するプリント回路基板(PCB)16を含む。プリント回路基板16は、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリ10が組み込まれる質量分析計の上流イオン源からイオンを受け取るために、前面18から後面20まで延びている中心開口22を含む。開口の形状および/またはサイズは、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリの意図される用途に基づいて選択されることができる。例として、カーテン板の開口は、例えば、約1~約6mmの範囲内の直径を伴う円形であり得る。さらに、いくつかの実施形態において、オリフィス板の開口(オリフィス)は、例えば、約100ミクロン(μm)~約2ミリメートル(mm)の範囲内の直径を伴う円形であり得る。
【0045】
カーテン板およびオリフィス板の各々は、それへの所望の電圧の印加を可能にする少なくとも金属化された表面を有するプリント回路基板(PCB)から形成される。例として、カーテン板またはオリフィス板のうちのいずれかを製作するために採用されるPCBは、ガラス補強炭化水素/セラミックを含むRogers Corporation(U.S.A.)によって販売されるRO4350B積層材料等の好適なポリマー材料から作製されることができる。種々の異なる金属が、PCBを金属化するために採用されることができ、典型的に、金めっきされた銅が、本明細書に議論されるように、採用される。
【0046】
図1および2A-2Cを特に参照すると、カーテン板12の前面18は、その上に配置されるディスク形金属コーティング24を含み、それは、中心開口22を包囲する。本実施形態において、金属コーティングは、金めっきされた銅から形成されるが、他の金属も、採用されることができる。一般に、金属は、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリを通過するイオンとのその反応を最小化し、好ましくは、排除するように選択されるべきである。
【0047】
反対の後面20は、ガス流のための通路を提供する複数のチャネル25を含む。より具体的に、本実施形態において、チャネル25は、その入口ポート25’aにおいてガスの供給を受け取り得る周辺螺旋形チャネル25’を含む。螺旋チャネルは、その出口25’bにおいて円形チャネル27に結合され、円形チャネル27は、順に、カーテン板12の中心開口22に向かって延びている複数の半径方向チャネル29と連通する。
【0048】
金属コーティング28が、チャネル25の底面および側面を含むチャネル25の露出面、および半径方向チャネル29の間に配置される楔形部分32の上面を被覆する。前面18上に配置される金属コーティング24と同様、本実施形態において、金属コーティング28は、金めっきされた銅から形成されるが、上でリストアップされるもの等の他の金属も、使用されることができる。
【0049】
継続して
図2A-2Cを参照すると、本実施形態において、カーテン板12は、複数の半径方向に延びているフィンガ30a、30b、および30cを伴うディスクの形状である。フィンガ30a、30b、および30cは、カーテン板の金属化部分への電圧の印加を可能にするために、下で議論される様式で金属化される。より具体的に、本実施形態において、フィンガ30bおよび30cは、それぞれ、その後面上に配置される金属コーティング33bおよび33cを有し、金属コーティング33bおよび33cは、カーテン板の後面上に配置される金属コーティング28に電気的に結合され、それへの電圧の印加を可能にする。フィンガ30bおよび30cは、それぞれ、それらの前面上に配置される金属部分35bおよび35cを有し、金属部分35bおよび35cは、PCB内のビア(図に図示せず)を通して、後部金属コーティング33bおよび33cに電気的に接続される。フィンガ30aは、その前面上に配置される金属部分35aを含み、それは、PCB内のビア(図に図示せず)を通して、その後面上に配置される金属部分33aに電気的に結合される。
【0050】
いくつかの実施形態において、例えば、-800ボルト(DC)~約+800ボルト(DC)の範囲内の電圧が、カーテン板に印加されることができる。電圧の符号は、統合オリフィス板/カーテン板アセンブリが組み込まれる質量分析計によって処理されるイオンの電荷に応じて、正または負であり得る。例として、分光計が正イオンモードにおいて動作しているとき、カーテン板に印加される電圧は、カーテン板とオリフィス板との間の界面において勾配を形成するために、正である。
【0051】
本実施形態において、半径方向に延びているフィンガ30bは、それを通してガスがガス流チャネル25に導入され得る入口ポート31を含む。カーテン板がオリフィス板に結合されると、チャネル25は、2つの板の間のガスの流動を促進し、ガスは、カーテン板の中心開口22を通して退出する。
【0052】
図3Aおよび3Bを参照すると、オリフィス板14は、それから3つのフィンガ15、17、および19が延びているディスクの形態である。カーテン板12と同様、オリフィス板14は、その前面および後面が下で議論される様式で金属化されるプリント回路基板(PCB)から形成される。オリフィス板14は、カーテン板とオリフィス板とが組み立てられると、カーテン板の中心開口22と実質的に整列させられる中心開口40(本明細書において、オリフィスまたは中心オリフィスとも称される)を含む。下でより詳細に議論されるように、その中心開口22を介してカーテン板に入射するイオンは、オリフィス板の開口40を介してカーテン板/オリフィス板アセンブリから出射し、質量分析計の1つ以上の下流分析器の中に導入される。
【0053】
図3Aを参照すると、オリフィス板14の前面50(すなわち、カーテン板の後面に面する表面)は、金属化される。特に、中心ディスク形金属コーティング52が、オリフィス板の開口40を包囲する。切頭環状金属コーティングの形態における周辺金属コーティング54が、PCBの非金属化円形部分53によって中心金属コーティング52から半径方向に分離され、したがって、周辺金属コーティング54から電気的に絶縁される。周辺コーティング54は、中心開口52の周囲を部分的に包囲し、2つの端部54aと54bとの間に延びている。さらに、PCBの非金属化部分55が、金属化部分52および54を包囲する。
【0054】
図3Bを参照すると、中心金属部分42および周辺金属部分44が、オリフィス板の後面45、すなわち、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリが組み込まれる質量分析計の下流構成要素に面する表面上に配置される。中心金属部分42は、オリフィス板の中心開口40を完全に包囲し、PCBを通してオリフィス板の前面上の金属部分52まで延びているディスク形金属コーティングの形態であり、それによって、金属部分42と52とは、それに電圧が印加され得る1つの連続的金属セグメントを形成する。周辺金属部分44は、環状リングの形態であり、中心金属部分42から半径方向に分離され、PCBの円形非金属化部分43によって中心金属部分42から電気的に絶縁される。
【0055】
継続して
図3Aおよび3Bを参照すると、フィンガ15、17、および19は、オリフィス板の前面および/または後面上に配置される金属コーティングのうちの少なくともいくつかへの電圧の印加を可能にするために、下で議論される様式で金属化される。特に、金属部分15aが、フィンガ15の前面上に配置される。金属ストリップ15bが、周辺金属コーティング54の2つの端部54aおよび54b間を通過し、金属部分15aを中心ディスク様金属コーティング52に電気的に接続する。フィンガ15の後面は、金属部分15cを含み、それは、フィンガ15の前面と後面との間に延びているビア(これらの図に図示せず)を通して金属部分15aに電気的に接続される。したがって、中心ディスク様金属コーティング52は、金属化フィンガ15を介して電圧源に結合されることができる。
【0056】
図3Aを参照すると、フィンガ17も、フィンガの遠位端から周辺金属コーティング54まで延び、したがって、それへの電圧の印加を可能にする金属コーティング17aをその前面上に含む。しかしながら、フィンガ17の後面は、金属化されていない。金属コーティング17aは、カーテン板のフィンガ30bの金属コーティング、および33bおよび33cの両方(
図3Aおよび3B参照)と電気接触し、それによって、電圧が、フィンガ30bの金属コーティング、および33bおよび33cの両方を介して金属コーティング17aに印加され、その結果、金属コーティング54に印加されることができる。フィンガ19は、その前面上の金属部分19aと、その後面上の金属部分19bとをさらに含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、約-300ボルト(DC)~約+300ボルト(DC)の範囲内の電圧が、オリフィス板に印加されることができる。そのような実施形態において、オリフィス板に印加される電圧は、オリフィス板と下流イオン光学系との間に確立された電圧差が、イオンが大気圧から真空に移動するとき、イオンのデクラスタリングを促進し得るように選択される。
【0058】
カーテン板と同様、オリフィス板の金属コーティングは、種々の異なる金属から形成されることができる。例として、本実施形態において、金属コーティングは、金めっきされた銅から形成されることができるが、他の好適な金属も、採用されることができる。一般に、金属は、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリを通過するイオンとのその反応を最小化し、好ましくは、排除するように選択されるべきである。さらに、カーテン板の金属コーティングと同様、オリフィス板の金属コーティングは、任意の好適な厚さを有することができる。例として、金属コーティングが、銅の上にニッケルの層を堆積させ、ニッケルを金を用いてコーティングすることによって形成される一実施形態において、銅層は、例えば、約35ミクロンの厚さを有することができ、ニッケル層の厚さは、例えば、約3ミクロン~約6ミクロンの範囲内であり得、金層の厚さは、例えば、約0.075ミクロン~約0.125ミクロンの範囲内であり得る。
【0059】
カーテン板とオリフィス板とは、種々の異なる方法で互いに結合されることができる。例として、カーテン板は、オリフィス板に融合または接合されることができる。代替として、または加えて、複数の留め具が、カーテン板をオリフィス板に結合するために採用されることができる。
【0060】
カーテン板および/またはオリフィス板は、種々の異なる形状および構成を有することができる。例として、
図4Aに示されるように、いくつかの実施形態において、カーテン板またはオリフィス板400aは、実質的に正方形の形状を有することができる。
図4Bは、別の実施形態において、カーテン板またはオリフィス板400bが、ディスク様部分401と、ディスク様部分の周辺の周囲に分布させられた3つのフィンガ402a/402b/402cとを有し得ることを図式的に描写する。本実施形態において、フィンガの間の角度分離は、実質的に均一である。また別の実施形態において、
図4Cに図式的に示されるように、カーテン板またはオリフィス板400cは、いかなるフィンガも伴わない実質的に円形の形状を有することができる。他の形状および構成も、例えば、特定の用途に応じて採用されることができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、オリフィス板は、加熱要素を含むことができる。例として、
図5Aおよび5Bは、カーテン板102と、オリフィス板104とを含むカーテン板/オリフィス板アセンブリ100を図式的に描写する。前述の実施形態と同様、オリフィス板およびカーテン板は、互いに結合され、統合カーテン板/オリフィス板アセンブリを形成することができる。カーテン板102およびオリフィス板104は、上で議論されるカーテン板12およびオリフィス板14と同様に構成される。しかしながら、本実施形態において、オリフィス板104は、その前面104a(すなわち、カーテン板に面する表面)上に配置される抵抗性加熱要素106を含む。抵抗性要素106への電圧の印加は、その加熱を引き起こし、それによって、オリフィス板とカーテン板との間の空間内で流動するガスを加熱することができる。本実施形態において、抵抗性加熱要素は、ディスク様金属コーティング108を包囲し、それは、オリフィス板のオリフィス110を包囲する。オリフィス板104の後面は、オリフィス板14と関連して上で説明されるものと類似する金属化のパターンを有することができる。
【0062】
本教示によるカーテン板およびオリフィス板は、当技術分野で公知の方法を使用して製作されることができる。例えば、PCB基板は、種々の異なる製造業者から取得されることができる。金属化の所望のパターンが、当業者に公知の標準的技法を使用して、PCB基板の前面および/または後面上に堆積させられることができる。
【0063】
上記のように、本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリは、種々の異なる質量分析計において採用されることができる。例として、
図6は、本教示による統合カーテン板/オリフィス板アセンブリ602が組み込まれる質量分析計660を図式的に描写する。カーテン板/オリフィス板アセンブリ602は、アセンブリを形成するように互いに結合される上で議論されるもの等のカーテン板602aと、オリフィス板602bとを含む。例示的質量分析計660は、上記の開口22等のカーテン板602aの開口を介してアセンブリ602によって受け取られるイオンを発生させるように構成されるイオン源604をさらに含む。窒素等のガス606の源が、カーテン板のガス入力ポートに結合され、カーテン板内のチャネルによって提供されるカーテン板とオリフィス板との間の空間内にガス流を導入する。上で議論されるように、ガス流は、それに沿ってイオンがアセンブリに入射する方向と実質的に反対の方向において、カーテン板の開口を介してアセンブリ602から退出する。カーテン板の開口から外へのガス流は、有利なこととして、中性種または他の汚染物質がカーテン板/オリフィス板アセンブリ、その結果、質量分析計の下流構成要素に進入することを低減させ、好ましくは、それを防止することができる。
【0064】
電圧源608が、選択された電圧をカーテン板およびオリフィス板に、例えば、上で議論される様式で印加する。カーテン板およびオリフィス板に印加される電圧は、イオンをカーテン板/オリフィス板アセンブリに誘引し、アセンブリを通したそれらの通過を促進することに役立つ。一般的に、正イオン発生に関して、カーテン板/オリフィス板アセンブリを通したイオンの通過を促進するために、エレクトロスプレーエミッタは、約2,000V~5,000Vに保持され、カーテン板は、約200V~1,000Vに保持され、オリフィス板は、10V~150Vに保持される。
【0065】
本実施形態において、カーテン板/オリフィス板アセンブリから出射するイオンは、それらの質量電荷(m/z)比に基づいてイオンを分析し得る下流質量分析器610に入射する。質量分析器を通過するイオンは、イオン検出器612によって検出されることができる。種々の質量分析器およびイオン検出器が、採用されることができる。例えば、質量分析器610は、とりわけ、1つ以上の四重極分析器、飛行時間分析器、微分イオン移動度分析器であり得る。さらに、イオン検出器は、例えば、電子増倍器/電子増倍器HEDまたは他の好適な検出器の任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、分析器610は、複数の段階の質量分析を提供するタンデム質量分析器である。例として、質量分析器610は、2つの四重極質量分析器と、これらの2つの四重極質量分析器の間に配置される衝突セルとを有するMS/MS分析器であり得る。いくつかの実施形態において、そのようなMS/MS分析器は、多重反応モニタリング(MRM)モードにおいて動作させられることができる。例えば、そのようなモードにおいて、第1の四重極分析器は、m/z比の規定された範囲内の前駆体イオンを選択するように構成されることができる。選択された前駆体イオンは、衝突セルに入射し、背景ガスとの衝突に起因してフラグメント化されることができる。第2の四重極分析器は、m/z比の規定された範囲内のフラグメントイオンを選択するように構成されることができる。このように、親/娘イオン対が、選択的に検出されることができる。
【0066】
本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリは、いくつかの利点を提供することができる。例えば、それは、従来のカーテンおよびオリフィス板を使用することによって取得される質量スペクトルと類似するピーク形状および安定性および/または感度を有する質量スペクトルを提供しながら、低費用において製作されることができる。ある場合、本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリは、使い捨てアイテムとして使用されることができる。例えば、分光計の1回以上の工程後にカーテン板/オリフィス板アセンブリを洗浄するのではなく、本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリは、廃棄されることができ、新しいアセンブリが、使用されることができる。
【0067】
以下の例は、本発明の種々の側面のさらなる例証のために提供され、必ずしも本発明を実践する最適な方法または取得され得る最適な結果を示すことを意図していない。
【0068】
(実施例)
アセンブリ10と関連して上で議論される設計に基づくプロトタイプカーテン板/オリフィス板アセンブリが、製作された。プロトタイプアセンブリは、三連四重極質量分析計内に組み込まれた。質量分析計は、レセルピンの質量スペクトルを取得するために使用された。比較の目的のために、レセルピンの質量スペクトルは、従来の金属円錐形カーテン板および標準的オリフィス板を伴う同じ質量分析計も使用して取得された。同じ処理パラメータが、それぞれの質量スペクトルを取得するために、両方の事例において採用された。
【0069】
図7は、本教示によるプロトタイプカーテン板/オリフィス板アセンブリを使用して取得された質量スペクトル、および従来のカーテンおよびオリフィス板を使用して取得された質量スペクトルを描写する。特に、Aと標識化された質量スペクトルは、従来のカーテンおよびオリフィス板を使用して取得され、Bと標識化された質量スペクトルは、本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリを使用して取得された。
【0070】
質量スペクトルの比較は、本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリの使用が、標準的カーテンおよびオリフィス板を使用して取得されたものに匹敵するピーク形状および安定性をもたらすことを示す。しかしながら、上記のように、本教示によるカーテン板/オリフィス板アセンブリは、はるかに低い費用で製作されることができる。
【0071】
さらに、大気圧におけるイオン化は、概して、サンプル内の分子をイオン化する非常に効率的な手段である。大気圧イオン化の例は、例えば、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化、光イオン化等を含む。大気圧イオン化は、着目分析物のイオンおよび多量の干渉/汚染イオンおよび中性分子を発生させ得る。本開示は、分析の観点から、イオンガイドに入射する着目イオンの数を最大化し、それによって、質量分析システムの感度を潜在的に高めることが望ましくあり得るという認識を包含する。しかしながら、そのような最大化は、不要な分子が、下流真空チャンバおよび潜在的に下流質量分析器ステージに入射することをもたらし得る。
【0072】
着目イオンの伝送および軌道は、電場によって精密に制御される。しかしながら、所望されないイオンおよび中性分子等の高真空チャンバの内側に位置する他の分子の伝送は、これらの下流要素を汚損/汚染させ得る。
【0073】
イオンレンズの開口の近傍の領域は、汚染に敏感になる。開口に接近するイオンは、概して、例えば、単位電荷あたり約1ボルトの比較的に低い運動エネルギーを有する。イオンレンズの開口の近傍の汚染された表面は、例えば、少なくとも約1ボルトまたはそれよりも高い電位を有し得、それは、イオン軌道を改変し、したがって、質量分析システムの性能の低下につながり得る。
【0074】
レンズ表面上に堆積するイオンまたはレンズの汚染は、質量分光分析に干渉し、および/または、それは、高真空チャンバ内の重要な構成要素の洗浄の必要性の結果として、費用の増加または処理能力の減少につながり得る。イオンレンズの表面上のイオンおよび場合によっては中性種の堆積は、レンズを汚染させ得、質量分析システムの性能の低下を引き起こし得る。
【0075】
性能の低下は、例えば、イオン伝送の低減またはイオン空間速度相関変化において現れ得、それは、分解能の低下またはチャネル整列の変化につながり得る。現在の大気圧イオン化源を用いて分析されている生物学的ベースのサンプルのより高いサンプル負荷および汚染性質により、清浄な質量分析器を維持することは、重要な懸念事項のままである。
【0076】
本開示は、質量分析システムにおいて、そのような質量分析システムの表面に衝突し得るイオンおよび中性種からの汚染が、種々の異なる方法でイオンの伝送および/または質量分析システムの動作を妨げ得るという認識を包含する。レンズが、電場を生成するために使用される。この目的のために、それらは、表面上の電圧が制御され得るように、導電性材料から成る。それらが汚染された状態になり、汚染物質が導電性ではないとき、表面は、未知の制御できない電圧を帯び得、イオン挙動は、制御または予測されることができない。イオンは、それらが意図される場所に進まず、失われる。したがって、イオンレンズ上の堆積物からの汚染は、質量分析システムにおける性能の低下を引き起こし得る。本開示は、質量分析システムにおいて、レンズ表面に衝突し得るイオンおよび/または中性種からの汚染および/または堆積物を制御、阻止、および/または低減させるように構成されるイオンレンズの必要性があるという認識をさらに包含する。
【0077】
とりわけ、いくつかの実施形態において、本開示は、質量分析システムにおける使用のためのイオンレンズアセンブリを含む。いくつかの実施形態において、本開示のイオンレンズアセンブリは、レンズ表面に衝突するイオンおよび/または中性種からの汚染および/または堆積物を制御、阻止、および/または低減させながら、電場を使用して着目イオンの伝送および/または軌道を導くように構成される。いくつかの実施形態において、本開示は、イオンを発生させるためのイオン源と、イオンを受け取るためにイオン源から下流に位置付けられるイオンガイドチャンバ、フィルタ、衝突セル等の1つ以上の構成要素とを含み得る質量分析システムを提供する。いくつかの実施形態において、そのような下流構成要素は、イオン源から発生させられたイオンを受け取るための入口オリフィスと、イオンを質量分析器に透過させるための少なくとも1つの出射オリフィスとを含むことができる。いくつかの実施形態において、下でより詳細に議論されるように、本明細書に開示されるようなイオンレンズアセンブリは、そのような下流構成要素の入口ポートまたは出射ポートのうちのいずれかに近接して位置付けられることができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリは、イオンレンズアセンブリ、特に、イオンにさらされるイオンレンズアセンブリのそれらの表面を加熱するためにその中に組み込まれる加熱要素を含むことができる。いくつかの実施形態において、これらの表面のそのような加熱は、それらの温度を高い温度、例えば、約100℃~約300℃の範囲内の温度まで上昇させることによって、それらの表面上の汚染物質の堆積を低減または排除すること、および/または、そのような汚染された堆積物のそのような脱離を引き起こすことができる。いくつかのそのような実施形態において、温度センサも、アセンブリまたは少なくともその選択された部分の温度を測定するために、イオンレンズアセンブリの中に組み込まれることができる。測定された温度は、コントローラとともに、所望の範囲内でイオンレンズアセンブリの温度を維持するために、加熱要素に印加される電圧を調節するために採用されることができる。高い温度は、付着係数の変化を引き起こし、イオンまたは中性粒子が、高温表面に衝突した後にそれらの上に留まるであろう可能性をかなりより低くする。
【0079】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、入射イオンに面するように配置された前方面を有する前部キャップ層と、後部層と、前部キャップ層と後部層との間に配置された加熱要素とを含む複数の層を含むことができる。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの各層は、それを通したイオンの通過を可能にするための開口部を含むことができる。種々の層の開口部は、イオンがレンズアセンブリを通過し得るように、実質的に整列させられる。
いくつかの実施形態において、本開示の装置、システム、および方法は、着目イオンを下流質量分析器に導き、および/または集中させ、不要なイオンおよび/または中性種を除外するためのレンズとして有用である。いくつかの実施形態において、質量分析システムにおいて採用される少なくとも1つのレンズは、高い温度まで直接加熱される。例えば、いくつかの実施形態において、質量分析システムにおいて採用される少なくとも1つのレンズは、レンズ表面に衝突するイオンおよび/または中性種からの汚染および/または堆積物を制御、阻止、および/または低減させるように、約100℃~約300℃の温度まで直接加熱される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのイオンレンズは、その部分の直接抵抗加熱を引き起こし、それによって、レンズ温度を上昇させるように、電流がレンズの少なくとも一部に通され得るように形成されることができる。いくつかの実施形態において、レンズの直接加熱は、イオンおよび/または中性種からの堆積物による汚染に関する少なくとも1つのレンズ表面の付着係数が低減させられるまで、または排除されさえする点までその温度値を上昇させることができる。いくつかの実施形態において、直接加熱されたレンズは、イオンおよび/または中性種からのいかなる先の汚染および/または堆積物も脱離させる。
【0080】
上記のように、いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、複数の層を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数の層は、いくつかの異なる構成を含むことができる。いくつかの実施形態において、複数の層は、入射イオンに面するように配置された前方面を有する前部キャップ層と、後部層と、前部キャップ層と後部層との間に配置された抵抗性加熱要素等の加熱要素とを含むことができる。前部キャップ層、後部層および加熱要素内の複数の実質的に整列させられた開口部は、レンズアセンブリを通したイオンの通過を可能にすることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、前部キャップ層は、入射イオンビームに面する前方面と、加熱要素と少なくとも部分的に熱接触する後方面とを含むことができる。さらに、そのような実施形態において、後部層は、加熱要素と少なくとも部分的に熱接触する前方面と、質量分析システムの下流構成要素に面する対向する後方面とを含む。前部キャップ層および後部層の前方面および後方面は、種々の異なる形状および外形を有することができる。いくつかの実施形態において、そのような表面のうちの1つ以上のものは、略平坦であり得る。さらに、いくつかの実施形態において、そのような表面は、円形、正方形、長方形、または多角形形状、例えば、五角形または六角形を有することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの前部層または後部層のうちのいずれかの少なくとも一部は、金属から形成されることができる。例として、そのような金属は、限定ではないが、アルミニウム、アルミニウム合金、ベリリウム、黄銅、クロム、銅、金、インジウム、鉄、モリブデン、ニッケル、ニオブ、白金、パラジウム、ステンレス鋼、タンタル、チタン、タングステン、および/またはジルコニウムであり得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、前部キャップ層は、別々の要素および/または分離可能要素であり得る。すなわち、いくつかの実施形態において、例えば、前部キャップ層は、容易に据え付けられること、および/または除去されることができる。例えば、いくつかの実施形態において、前部キャップ層は、コーティングの形態であり得るか、または、加熱要素の少なくとも一部の上に堆積させられることができる。いくつかの実施形態において、前部キャップ層は、例えば、電着を介して、加熱要素上に搭載される絶縁層の表面上に金属層を堆積させることによって形成されることができる。例として、堆積させられた金属層は、約0.020mm~約1mmの範囲内の厚さを有することができる。種々の異なる金属が、採用されることができる。いくつかの好適な金属は、限定ではないが、ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅、モリブデン、導電性ポリマー、または炭素繊維を含む。一定の均質な電圧に保持されることを可能にするために十分に高い導電率を伴う任意の材料が、この目的のための候補材料である。
【0084】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリの後部層は、少なくとも部分的にセラミックから形成されることができる。いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、例えば、少なくとも部分的に誘電材料、ガラス、プラスチック、セラミック、天然結晶、紙、天然または合成ポリマー材料、石、および/または非導電性金属酸化物フィルムから形成されることができる。いくつかの実施形態において、セラミックは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、サファイア、窒化ケイ素、および/またはジルコニアを含むことができる。
【0085】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、イオンレンズアセンブリから出射するイオンが入口ポートを介してイオンガイドチャンバに入射し得るように、イオンガイドチャンバの入口ポートに近接して位置付けられることができる。いくつかのそのような実施形態において、質量分析器が、イオンガイドチャンバの下流に配置されることができる。上記のように、前部キャップ層および後部層および加熱要素は、種々の形状およびサイズを有することができる。いくつかの実施形態において、前部キャップ層および後部層および加熱要素を通した開口部は、種々の形状およびサイズを有することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の開口部は、円形であり得る。いくつかのそのような実施形態において、円形開口部は、約0.1mm、約0.15mm、約0.2mm、約0.25mm、約0.3mm、約0.35mm、約0.4mm、約0.45mm、約0.5mm、約0.55mm、約0.6mm、約0.65mm、約0.7mm、約0.75mm、約0.8mm、約0.85mm、約0.9mm、約1mm、約1.05mm、約1.1mm、約1.15mm、約1.2mm、約1.25mm、約1.3mm、約1.35mm、約1.4mm、約1.45mm、約1.5mm、約1.55mm、約1.6mm、約1.65mm、約1.7mm、約1.75mm、約1.8mm、約1.85mm、約1.9mm、約1.95mm、または約2mmの半径を有することができる。いくつかの実施形態において、開口部は、他の形状を有することができる。
【0086】
いくつかの実施形態において、誘引電圧が、例えば、後部層を電力供給源および/またはコントローラ、例えば、直流(dc)源に結合することによって、イオンレンズアセンブリの前部層に印加されることができる。いくつかの実施形態において、そのような電圧は、約0.1V、約0.2V、約0.3V、約0.4V、約0.5V、約0.6V、約0.7V、約0.8V、約0.9V、約1V、約2V、約3V、約4V、約5V、約6V、約7V、約8V、約9V、約10V、約15V、約20V、約25V、約30V、約35V、約40V、約45V、約50V、約55V、約60V、約65V、約70V、約75V、約80V、約85V、約90V、約95V、または約100V、またはそれを上回るものであり得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、イオンレンズアセンブリは、イオンビームアセンブリの前方面がイオンビームに対して鋭角に位置付けられるように、入射イオンビームに対して位置付けられることができる。いくつかの実施形態において、角度は、前部キャップ層の前方面の法線に対する角度である。いくつかの実施形態において、そのような角度は、少なくとも約85°、少なくとも約86°、少なくとも約87°、少なくとも約88°、少なくとも約89°、少なくとも約90°、少なくとも約91°、少なくとも約92°、少なくとも約93°、少なくとも約94°、少なくとも約95°、少なくとも約96°、少なくとも約97°、少なくとも約98°、少なくとも約99°、または少なくとも約100°である。
【0088】
種々の加熱要素が、イオンレンズアセンブリ内に組み込まれることができる。例えば、いくつかの実施形態において、加熱要素は、例えば、セラミック加熱器、ケーブルおよび/またはコイル加熱器、伝導加熱器、繊維加熱器、ポリイミド加熱器、シリコーンゴム可撓性加熱器、厚フィルム伝導加熱器、薄フィルム伝導加熱器、厚フィルム抵抗加熱器、薄フィルム抵抗加熱器、または管状加熱器であり得る。いくつかの実施形態において、加熱要素は、それを電力供給源、コントローラ、および/またはドライバに結合および/または接続するために構成される1つ以上のピンを含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、前部キャップ層と後部層との間に配置される加熱要素は、層を少なくとも約50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、225℃、230℃、235℃、240℃、245℃、250℃、255℃、260℃、265℃、270℃、275℃、280℃、285℃、290℃、295℃、300℃、またはそれを上回る温度まで加熱するように構成される。
【0090】
いくつかの実施形態において、温度センサは、抵抗温度検出器(RTD)であり得る。いくつかの実施形態において、温度センサは、その加熱のためにそれに電圧が印加され得る抵抗性電気トレースとして実装されることができる。例として、温度センサは、サーミスタまたはサーモカップルでもあり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、温度センサは、それを電力供給源、コントローラ、および/またはドライバに結合するために構成された1つ以上のピンを含むことができる。いくつかの実施形態において、温度センサは、イオンレンズアセンブリの温度を制御するために使用され得るフィードバックモジュールの部分であり得る。例えば、加熱要素に結合される温度センサは、温度データをフィードバック回路(例えば、コントローラ)に提供することができ、フィードバック回路は、順に、電圧源によって加熱要素に印加される電圧のレベルを制御することができる。例えば、測定された温度が所定の上限閾値を上回る場合、フィードバック回路は、加熱要素に印加される電圧を電圧源に低減させることができ、測定された温度が所定の下限閾値を下回る場合、フィードバック回路は、加熱要素に印加される電圧を電圧源に増加させることができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、加熱要素は、前部キャップ層と後部層との間に配置される一方、フィードバック回路は、イオンレンズアセンブリの温度を制御するためにイオンレンズアセンブリの外部に位置付けられる。いくつかの実施形態において、加熱要素および/またはフィードバック回路は、電力供給源、コントローラ、および/またはドライバに結合される。
【0093】
いくつかの実施形態において、複数の層は、前部キャップ層と加熱要素との間に配置される絶縁層を含むことができる。例えば、絶縁層は、誘電材料、ガラス、プラスチック、セラミック、天然結晶、紙、天然または合成ポリマー材料、石、および/または非導電性金属酸化物フィルムから形成されることができる。いくつかの実施形態において、絶縁層は、良好な熱伝導性を示す誘電材料から形成される。そのような材料のいくつかの例は、限定ではないが、窒化ケイ素、アルミナ、ダイヤモンド、または雲母を含む。
【0094】
本教示によるイオンレンズアセンブリは、種々の異なる質量分析システムにおいて組み込まれることができる。例として、
図8は、イオンを発生させるためのイオン源1100を含む本教示のある実施形態による質量分析システム1000を図式的に描写する。界面1150が、イオン源1100と質量分析計の下流構成要素との間に配置され、界面1150は、それを通してイオンが下流構成要素に入射し得る開口部を含む。
【0095】
イオン源1100は、イオンを発生させるための任意の公知または以降に開発されるイオン源であり、本教示に従って修正されることができる。本教示との使用のために好適なイオン源の非限定的例は、とりわけ、大気圧化学イオン化(APCI)源、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源、連続イオン源、パルスイオン源、誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、マトリクス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)イオン源、グロー放電イオン源、電子衝撃イオン源、化学イオン化源、または光イオン化イオン源を含む。いくつかの実施形態において、イオン源領域は、大気圧付近の圧力に維持されるか、または維持されることができる。
【0096】
質量分析システム1000は、質量分析システム内の下流にイオンを送り、および/または集中させる1つ以上のイオンガイドを含むことができる。いくつかの実施形態において、例えば、イオンガイドは、ガス力学と無線周波数場との組み合わせを使用して、イオンを捕捉し、集中させるために使用されることができる。いくつかの実施形態において、1つ以上のイオンガイドは、細長いロッドセット、例えば、四重極構成において配置される4つのロッドを含む四重極ロッドセットを含むことができるが、細長いロッドセットは、任意の他の好適な多重極構成、例えば、六重極、八重極等であり得る。いくつかの実施形態において、短太ロッドのセット(この図において可視ではない)も、四重極ロッドセットの間のイオンの縦断を促進するために、四重極ロッドセットの隣り合う対の間に提供されることができる。短太ロッドは、Brubakerレンズとしての役割を果たすことができ、例えば、レンズがオフセット電位に維持されている場合、隣接するレンズの近傍に形成されていることもある任意のフリンジング場との相互作用を最小化することに役立つことができる。
【0097】
質量分析システム1000は、第1のイオンガイドチャンバ1200内に格納されるイオンガイド1220を含む。別のイオンガイド1320、例えば、四重極ロッドセットが、イオンチャンバ130内にイオンガイド1220の下流に位置付けられる。本教示による第1のイオンレンズアセンブリ1250が、イオンガイド1220とイオンフィルタ1320との間に配置される。
【0098】
質量分析システム1000は、質量分析システムにおいて第1および第2のイオンレンズアセンブリから下流に格納され得る1つ以上の質量分析器1420と、衝突セル1520と、別の質量分析器1620とをさらに含む。例示的下流要素(1420、1520、および1620)が、質量分析システム1000とともに示されるが、より多いまたはより少ない下流要素が、本開示に従って、質量分析システムとともに含まれ得ることを理解されたい。便宜上、1つ以上の質量分析器1420、1620および衝突セル1520は、細長いロッドセット、例えば、四重極構成において配置される4つのロッドを含むことができるが、細長いロッドセットは、任意の他の好適な多重極構成、例えば、六重極、八重極等であり得る。1つ以上の質量分析器が、全て非限定的例として、三連四重極、線形イオントラップ、四重極飛行時間、オービトラップ、または他のフーリエ変換質量分析システムのうちのいずれかであり得ることも理解されたい。
【0099】
質量分析器1420、1520、および1620は、それぞれ、隣接するチャンバ1400、1500、および1600内に配置されることができる。質量分析システム1000は、単一の真空チャンバとして動作するように構成されることができる。単一の真空チャンバは、約5×10-3トル未満の圧力において維持されることができる。非限定的例として、単一の真空チャンバは、約5×10-5トル~約1×10-8トルの圧力において維持されることができるが、他の圧力も、この目的または他の目的のために使用されることができる。当業者が理解するであろうように、圧力は、サンプル負荷に応じて変動するであろう。
【0100】
質量分析システム1000は、出射レンズ1650と、偏向器1640と、検出器1680とをさらに含むことができる。出射レンズ1650は、検出器1680の中へのイオン流を制御するために、質量分析器1620と検出器1680との間に位置付けられることができる。
【0101】
図8に示されるように、例示的質量分析システム1000は、加えて、コントローラ1850によって制御され得る1つ以上の電力供給源(例えば、RF電力供給源1900、上で開示されるDC電力供給源1800)を含むことができる。1つ以上の電力供給源1800および1900は、特定の用途に応じて、種々の異なる動作モードのために質量分析システム100の要素を構成するために、RF、AC、および/またはDC成分を伴う電位を、例えば、四重極ロッドおよび/または種々のレンズに印加するようにコントローラ1850によって制御され得ることを理解されたい。コントローラ1850が、実行されるタイミングシーケンスに対する共同制御を提供するための種々の要素にも連結され得ることをさらに理解されたい。故に、コントローラ1850は、本明細書に別様に議論されるように質量分析システム1000を制御するために、調整された方式で種々の構成要素に電圧(電力)を供給する電源1800および1900に制御信号を提供するように構成されることができる。
【0102】
質量分析システム1000の動作中、パルス化イオン、中性物、および他のガスが、イオン源1100によって発生させられ得る。イオンは、界面1150を通過し、第1のイオンガイドチャンバ1200に入射し、第2のイオンガイドチャンバ1300の1つ以上の追加の真空チャンバおよび/または四重極を通過する。これらの段階を通して、イオンは、コヒーレントなイオンビームを形成し、それは、ガス力学と無線周波数場との組み合わせを使用して、イオンビームの追加の集中およびイオンビームに対するより微細な制御を提供することができる。いくつかの実施形態において、第1のイオンガイド1220は、それによって受け取られたイオンをそれらの間に配置されるイオンレンズ1250を通して第2のイオンガイド1320等の後続イオン光学系に移す。第2のイオンガイド1320は、イオンをイオンレンズ1350を通して質量分析器1420に輸送および送達する。
【0103】
第2のイオンガイドチャンバ1300から伝送された後、m/z分離イオンは、隣接する四重極ロッドセット1420に入射することができる。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセット1420は、着目イオンおよび/または一連の着目イオンを選択するように動作させられ得る従来の透過RF/DC四重極質量フィルタとして動作させられることができる。例として、四重極ロッドセット1420は、質量分解モードにおける動作のために好適なRF/DC電圧を提供されることができる。いくつかの実施形態において、質量分析器1420の物理的および電気的性質を考慮して、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータは、質量分析器1420が選択されたm/zイオンに特定の透過窓を確立するように選定されることができ、それによって、これらのイオンは、大きく混乱させられずに質量分析器1420を縦断し得る。しかしながら、窓から外れるm/z比を有するイオンは、四重極内で安定した軌道を達成せず、質量分析器1420を縦断することを防止されることができる。
【0104】
質量分析器1420を通過するイオンは、開口レンズ1450を通過し、隣接する衝突セル1520の中に入ることができ、衝突セル1520は、示されるように、加圧コンパートメント内に配置されることができ、概算で約1ミリトル~約10ミリトルの範囲内の圧力において動作するように構成されることができるが、他の圧力も、この目的または他の目的のために使用されることができる。好適な衝突ガス、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が、イオンビーム中のイオンを熱運動化および/またはフラグメント化するために、ガス入口(この図において可視ではない)を経由して提供されることができる。いくつかの実施形態において、四重極ロッドセット1520および入射および出射レンズ1450および1550への好適なRF/DC電圧の印加は、随意の質量フィルタ処理を提供することができる。
【0105】
1520によって透過させられるイオンは、隣接する四重極ロッドセット162の中に通過することができ、四重極ロッドセット162は、開口レンズ1550によって上流に限定され、出射レンズ1660によって下流に限定される。当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセット1620は、1520のそれに対して減少させられた動作圧力において動作させられることができる。当業者によって理解されるであろうように、質量分析器1620は、いくつかの様式で、例えば、走査型RF/DC四重極として、または線形イオントラップとして動作させられることができる。1620を通した処理または透過に続いて、イオンは、出射レンズ1660を通して検出器1640の中に透過させられることができる。検出器1640は、次いで、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に照らした当業者に公知の様式で動作させられることができる。当業者によって理解されるであろうように、本明細書の教示に従って修正された任意の公知の検出器が、イオンを検出するために使用されることができる。
【0106】
図9は、本開示の種々の実施形態の一側面によるイオンレンズアセンブリ2000の分解図を概略図において図示する。分解図において示されるイオンレンズアセンブリ2000は、前部キャップ層2700と、後部層2100と、前部キャップ層2700と後部層2100との間に配置されたイオンレンズアセンブリ2000の直接加熱を提供するための加熱要素2400とを含む。前部キャップ層2700、後部層2100、および加熱要素2400は、それぞれ、中心開口部2750、2150、および2450を含み、中心開口部2750、2150、および2450は、イオンレンズアセンブリ2000を通したイオンビームの通過を可能にするために実質的に整列させられる。
【0107】
本実施形態において、加熱要素2400は、2つの絶縁層2200と2600との間に挟まれ、2つの絶縁層は、加熱要素2400を前部キャップ層2700および後部層2100から電気的に絶縁する。本教示によるイオンレンズアセンブリの他の実施形態は、下でより詳細に議論されるように、そのような絶縁層を含まないこともある。
【0108】
前部キャップ層2700は、イオンレンズアセンブリが質量分析システムの中に組み込まれるとき、上流イオン源によって発生させられる入射イオンビームに面する前方面2720を含む。さらに、後部層2100は、絶縁層2200と接触する前方面2120と、前方面2120に対向しイオンレンズアセンブリ2000が組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する後方面(この図において可視ではない)とを含む。イオンがイオンレンズアセンブリ2000に入射し、イオンレンズアセンブリを通して縦断し、イオンレンズアセンブリ2000から出射するときのイオンの軌道は、イオンレンズアセンブリの種々の表面、特に、前部キャップ層2700の前方面2720および後部層2100の後方面(この図において可視ではない)上に、特に、開口部2750および2150に近接する表面領域内に堆積させられる汚染の影響を受けやすい。加熱要素2400を介したイオンレンズアセンブリ2000(特に、これらの表面)の加熱は、少なくとも部分的にそのような汚染を除去し、および/または低減させ、したがって、質量分析システムの性能を改良することができる。
【0109】
本実施形態において、前部キャップ層2700は、上で議論されるそれら等の材料から形成される。本実施形態において、導電性前部キャップ層は、例えば、電着を介して、加熱要素と接触する絶縁層の表面と反対の絶縁層2600の表面上に金属層を堆積させることによって形成されることができる。さらに、本実施形態において、後部層2100は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属から形成される。絶縁層2200および2600は、順に、セラミック等の誘電材料から形成されることができる。
【0110】
本実施形態において、加熱要素は、可撓性加熱器を含む。加熱要素は、可撓性加熱器を電圧源、例えば、
図8に描写されるdc電圧源1800等のdc電圧源に接続するために採用され得る少なくとも2つのピン2420を含む。いくつかの実施形態において、加熱要素へのdc電圧の印加は、イオンレンズアセンブリの温度を高い温度、例えば、約100℃~約130℃の範囲内の温度まで上昇させる熱を発生させる。イオンレンズアセンブリ、特に、入射イオンに面する前部キャップ層の前方面およびイオンレンズアセンブリが組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する後部層の後方面の温度の上昇は、これらの表面上に堆積させられる汚染の脱離を引き起こし、および/または、これらの表面上の汚染イオンおよび/または中性種の堆積を阻止し、それによって、質量分析システムの性能を強化することができる。
【0111】
継続して
図9を参照すると、本実施形態において、加熱要素2400は、電気抵抗性トレース2500の形態における温度センサを含み、電気抵抗性トレース2500は、測定デバイス(この図において可視ではない)に取り付けられ得る2つの端子を含み、測定デバイスは、抵抗性トレースの測定された抵抗を温度に変換し得る。
【0112】
上で議論されるように、前部キャップ層および後部層は、種々の異なる材料から形成されることができる。例えば、
図9に描写される実施形態において、後部層は、導電性金属層から形成される。他の実施形態において、後部層は、誘電体、セラミック、ガラス等の非導電性材料から形成されることができる。具体的に、
図10は、本開示の種々の実施形態の一側面によるイオンレンズアセンブリ3000の分解図を概略図において図示する。分解図において示されるイオンレンズアセンブリ3000は、前部キャップ層3500と、後部層3100と、イオンレンズアセンブリ3000の直接加熱を提供するために前部キャップ層3500と後部層3100との間に配置された加熱要素3200とを含む。前部キャップ層3500、後部層3100、および加熱要素3200は、それぞれ、中心開口部3550、3150、および3450を含み、中心開口部3550、3150、および3450は、イオンレンズアセンブリ3000を通したイオンビームの通過を可能にするために実質的に整列させられる。
【0113】
前部キャップ層3500は、イオンレンズアセンブリが質量分析システムの中に組み込まれるとき、上流イオン源によって発生させられる入射イオンビームに面する前方面3520を含む。さらに、後部層3100は、加熱要素3200と接触する前方面3120と、イオンレンズアセンブリ3000が組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する前方面3120に対向する後方面(この図において可視ではない)とを含む。イオンがイオンレンズアセンブリに入射し、イオンレンズアセンブリを縦断し、イオンレンズアセンブリ3000から出射するときのイオンの軌道は、前部キャップ層3500の前方面3520および後部層3100の後方面(この図において可視ではない)等のイオンレンズアセンブリの種々の表面上に、特に、開口部3550および3150に近接する表面領域内に堆積させられる汚染の影響を受けやすい。加熱要素3200を介した、イオンレンズアセンブリ3000(特に、これらの表面)の加熱は、少なくとも部分的にそのような汚染を除去し、および/または低減させ、したがって、質量分析システムの性能を改良することができる。
【0114】
本実施形態において、前部キャップ層3500は、電気絶縁層2600の表面上に堆積させられる金属コーティングから形成されるが、他の実施形態において、前部キャップ層3500は、上で議論されるそれら等の他の材料から形成されることができる。さらに、本実施形態において、後部層3100は、誘電体、セラミック、ガラス等の非導電性材料から形成される。
【0115】
本実施形態において、加熱要素は、可撓性加熱器を含む。加熱要素は、可撓性加熱器を電圧源、例えば、dc電圧源(この図において可視ではない)に接続するために採用され得る少なくとも2つのピン3220を含む。いくつかの実施形態において、加熱要素へのdc電圧の印加は、イオンレンズアセンブリの温度を高い温度、例えば、約100℃~約130℃の範囲内の温度まで上昇させる熱を発生させる。イオンレンズアセンブリ、特に、入射イオンに面する前部キャップ層の前方面およびイオンレンズアセンブリが組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する後部層の後方面の温度の上昇は、これらの表面上に堆積させられる汚染の脱離を引き起こし、および/または、これらの表面上の汚染イオンおよび/または中性種の堆積を阻止し、それによって、質量分析システムの性能を強化することができる。
【0116】
継続して
図10を参照すると、前述の実施形態と同様、本実施形態において、加熱要素3200は、電気抵抗性トレース3300の形態における温度センサを含み、電気抵抗性トレース3300は、測定デバイス(この図において可視ではない)に取り付けられ得る2つの端子を含み、測定デバイスは、抵抗性トレースの測定された抵抗を温度に変換し得る。
【0117】
図11は、本開示の種々の実施形態の一側面によるイオンレンズアセンブリ4000を概略図において図示する。イオンレンズアセンブリ4000は、(上記の分解図ではなく)組み立てられたユニットとして示される。イオンレンズアセンブリ4000は、前部キャップ層4700と、後部層4100と、イオンレンズアセンブリ4000の直接加熱を提供するために前部キャップ層4700と後部層4100との間に配置される加熱要素2400とを含む。前部キャップ層4700、後部層4100、および加熱要素4400は、アセンブリを通したイオンの通過を可能にする中心開口部4750、4150を含む(加熱要素は、イオンレンズアセンブリを通したイオンの通過を妨げないように、層の間に配置される)。
【0118】
本実施形態において、加熱要素4400は、加熱要素4400を前部キャップ層4700および後部層4100から電気的に絶縁する2つの絶縁層4200と4600との間に挟まれる。本教示によるイオンレンズアセンブリの他の実施形態は、本開示全体を通してより詳細に議論されるように、そのような絶縁層を含まないこともある。
【0119】
前部キャップ層4700は、イオンレンズアセンブリが質量分析システムの中に組み込まれるとき、上流イオン源によって発生させられる入射イオンビームに面する前方面4720と、絶縁層4600と接触する前方面4720と反対の後方面(この図において可視ではない)とを含む。さらに、後部層4100は、絶縁層4200と接触する前方面4120と、イオンレンズアセンブリ4000が組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する前方面4120と反対の後方面(この図において可視ではない)とを含む。イオンがイオンレンズアセンブリ4000に入射し、イオンレンズアセンブリを通して縦断し、イオンレンズアセンブリから出射するときのイオンレンズアセンブリ4000を通したイオンの軌道は、例えば、前部キャップ層4700の前方面4720および後部層4100の後方面(この図において可視ではない)上に、特に、開口部4750および4150に近接する表面領域内に堆積させられる汚染の影響を受けやすい。加熱要素4400を介した、イオンレンズアセンブリ4000(特に、これらの表面)の加熱は、少なくとも部分的にそのような汚染を除去し、および/または低減させ、したがって、質量分析システムの性能を改良することができる。
【0120】
本実施形態において、前部キャップ層4700は、上で議論されるそれら等の金属から(絶縁層上に堆積させられる金属コーティングではなく)独立型ユニットとして形成される。他の実施形態において、前部キャップ層4700は、例えば、前述の実施形態と関連して議論されるように、金属コーティングとして形成されることができる。さらに、本実施形態において、後部層4100は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属から形成される。本実施形態において、加熱要素は、可撓性加熱器を含む。加熱要素は、可撓性加熱器を電圧源、例えば、dc電圧源(この図において可視ではない)に接続するために採用され得る少なくとも2つのピン4420を含む。いくつかの実施形態において、加熱要素へのdc電圧の印加は、イオンレンズアセンブリの温度を高い温度、例えば、約100℃~約130℃の範囲内の温度まで上昇させる熱を発生させる。イオンレンズアセンブリ、特に、入射イオンに面する前部キャップ層の前方面およびイオンレンズアセンブリが組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する後部層の後方面の温度の上昇は、これらの表面上に堆積させられる汚染の脱離を引き起こし、および/または、これらの表面上の汚染イオンおよび/または中性種の堆積を阻止し、それによって、質量分析システムの性能を強化することができる。
【0121】
継続して
図11を参照すると、本実施形態において、加熱要素4400は、電気抵抗性トレース4500の形態における温度センサを含み、電気抵抗性トレース4500は測定デバイス(この図において可視ではない)に取り付けられ得る2つの端子を含み、測定デバイスは、抵抗性トレースの測定された抵抗を温度に変換し得る。上で解説されるように、いくつかの実施形態において、後部層4100は、電気絶縁材料から形成されることができる。例として、誘電材料および/またはセラミック。そのような実施形態において、最終アセンブリおよびその動作は、同等であろうが、しかしながら、上で示される絶縁層4200は、冗長であり得る。
【0122】
図12は、イオンレンズアセンブリのサブアセンブリを概略図において示し、すなわち、本開示の種々の実施形態の一側面による後部層5100が、示される。パネル(A)における
図12を参照すると、後部層5100は、前方面5120を含むように示される。後部層5100がセラミック等の非導電性材料から形成されるいくつかの実施形態において、前方面5120は、加熱要素(この図において可視ではない)と物理的に接触することができる。後部層5100が金属等の導電性材料から形成されるいくつかの実施形態において、前方面5120は、電気絶縁層(この図において可視ではない)を介して加熱要素から分離されることができる。パネル(B)における
図12を参照すると、後部層5100は、イオンレンズアセンブリが組み込まれる質量分析システムの下流構成要素に面する前方面5120と反対の後面5170を含むように示される。
【0123】
本教示によるイオンレンズアセンブリの中に組み込まれる加熱要素は、種々の異なる方法で構成されることができる。例えば、
図13は、金属から形成され得る後部層6100から加熱要素を分離する絶縁層6200の表面上に堆積させられる抵抗性トレースの形態にある加熱要素6400を概略図において示す。加熱要素6400は、加熱要素を電圧源に結合するために採用され得る2つの端子6420を含む。さらに、本実施形態において、絶縁層の表面上の抵抗性トレース6500は、例えば、前述の実施形態と関連して上で議論される様式で、温度センサとして機能する。
【0124】
上で議論されるように、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリの後部層は、セラミックまたはガラス等の非導電性材料から形成されることができる。
図14は、非導電性材料から形成される後部層7100を含むそのような実施形態のサブアセンブリ7000を概略図において示す。本実施形態において、加熱要素7400は、イオンレンズアセンブリの直接加熱のために後部層7100の前方面7120上に、例えば、抵抗性トレースとして堆積させられることができる。さらに、電気抵抗性トレース7300も、例えば、前述の実施形態と関連して上で議論される様式で、温度センサとして機能するために、後部層7100の前方面7120上に堆積させられる。絶縁層7200が、例えば、絶縁層上の金属コーティングとして形成され得る導電性キャップ層(この図において可視ではない)から加熱要素を分離するために、加熱要素の上に配置される。前述の実施形態と同様、絶縁層7200および後部層7100は、それぞれ、それを通したイオンビームの通過を可能にする中心開口部7250、7150を含む。加熱要素7400は、加熱要素を電圧源、例えば、dc電圧源(この図において可視ではない)に接続するために採用され得る少なくとも2つのピン7220を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、解説されるように、加熱要素は、それを通して配管される流体を用いて加熱されることができる。いくつかの実施形態において、加熱要素は、レンズアセンブリの層内に、および/または、それらの間に延びている1つ以上のチャネル、導管、流体経路、管、トンネル等を含むことができる。例として、そのようなチャネル、導管、流体経路、通路、管、トンネル等は、それを通して流体を輸送し、または流動させるために構成および/または配管されることができる。いくつかの実施形態において、流体は、例えば、アルコール、アンモニア、グリセリン、グリコール、および/または水を含むことができる。いくつかの実施形態において、流体は、予熱されることができる。いくつかの実施形態において、流体は、接触時に発熱的に反応し、熱を発生させる2つ以上の試薬を含むことができる。
【0126】
図式的に示されるように、
図15は、後部層8100を含むそのような実施形態のサブアセンブリ8000を示す。後部層8100は、導電性材料または非導電性材料のいずれかから形成されることができる。本実施形態において、加熱要素は、加熱流体源8200および流体戻り部8300に流体的に結合される一連のチャネル8400Aおよび8400B(破線において示される)を含むことができる。チャネル8400Aおよび8400B(破線において示される)は、後部層8100内、かつ後部層の表面の下、例えば、後部層の前方面8120の下に形成される管または通路である。前述の実施形態のように、後部層8100は、それを通したイオンビームの通過を可能にする中心開口部8150を含む。
【0127】
上記のように、いくつかの実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリは、イオンレンズアセンブリの直接加熱のための加熱要素およびイオンレンズアセンブリの温度を測定するための温度センサを含む。
図16に図式的に示されるように、本実施形態において、本教示によるイオンレンズアセンブリは、電圧源9800からdc電圧を受け取り、電力をイオンレンズアセンブリの直接加熱のための熱に変換する加熱要素(例えば、可撓性加熱器9400)を含むことができる。イオンレンズアセンブリは、温度センサ9500からのイオンレンズアセンブリの温度を示す信号を受信するフィードバックシステム9700と通信するように構成される温度センサ9500をさらに含む。フィードバックシステム9700は、順に、電圧源9800と通信し、所定の範囲内にイオンレンズアセンブリの温度を維持するように、温度センサ9500に印加される電圧を調節することができる。
【0128】
例えば、温度センサ9500が所定の下限閾値を上回る温度を示す場合、フィードバックシステム9700は、可撓性加熱器9400に印加される電圧レベルを電圧源9800に増加させることができ、温度センサ9500が上限閾値を上回る温度を示す場合、フィードバックシステム9700は、可撓性加熱器9400に印加される電圧を電圧源9800に低下させることができる。
【0129】
(例示)
以下の実施例は、本開示のいくつかの実施形態および側面を例証する。種々の修正、追加、代用等が、本開示の精神または範囲を改変することなく実施され得、そのような修正および変形例は、続く請求項に定義されるような本開示の範囲内に包含されることが、当業者に明白であろう。本開示は、これらの例を参照することによってより完全に理解されるであろう。以下の実施例は、本開示または請求される開示をいかようにも限定せず、それらは、範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【0130】
(実施例)
(材料および方法)
(質量分析システム)
イオン駆動源を伴う6500+QTRAP器具が、全ての実験のために使用された。この分光計は、イオンガイド(Q0)を含み、本教示による加熱されたイオンレンズアセンブリが続き、それは、Q0とQ1との間で使用された。レンズアセンブリは、銀パラジウム合金の導電性コーティングから形成される前部層と、Dupont多層誘電体(P/N 5704)から形成される絶縁層とを含んでいた。Heraeus C4082厚フィルムインクから成る抵抗性加熱要素が、レンズアセンブリ内において、前部層と後部層との間に組み込まれた。
【0131】
(化学物質)
標準的抗凍結緩衝液中に調製された10pg/μLのレセルピンが、器具をベースライン設定し、汚染実験中、強度変化を追跡するために使用された。
【0132】
これらの実験において使用される脂質溶液は、エキストラバージンオリーブオイルの原液からの希釈によって調製された。希釈溶媒は、5mMの酢酸アンモニウムを伴う2:1メタノール/クロロホルムを備えていた。
【0133】
高度加速汚染試験が、オリーブオイルサンプルの1,000倍希釈を使用して、約3mMの脂質含有量をもたらすために実行された。
【0134】
(実施例1)
本実施例は、本開示の種々の実施形態の一側面によるイオンレンズアセンブリに関する動作および性能パラメータを開示する。
【0135】
本開示によるイオンレンズアセンブリは、典型的なピーク形状を有する質量ピークを提供するような様式で置かれた。一連の試験が、次いで、加熱されたイオンレンズが標準的性能仕様を満たし得るかどうかを決定するために実施された。具体的に、上記のように、試験が、標準的イオンレンズが本教示による加熱されたイオンレンズアセンブリと切り替えられたときの質量分析システムの性能を査定するために実施された。
【0136】
イオンレンズアセンブリは、ランピング中、100℃に維持された。取得されたランピングデータの形状は、標準的器具上で典型的に観察されるものに匹敵し、それによって、イオンレンズアセンブリが許容可能なランピング性能を提供することを確認した。レセルピンの10pg/μLサンプルが、動作中、質量分析システムの中に漏出された。イオンレンズアセンブリは、このプロセス中に100℃に維持された。サンプル負荷および加熱の両方が適用されるピーク形状は、レンズ性能に影響を及ぼさなかった。加熱されたイオンレンズアセンブリは、レセルピンの10pg/μLサンプルのサンプリングで動作するとき、典型的に観察されるものに匹敵する性能であった。
【0137】
(実施例2)
本実施例は、本開示の種々の実施形態の一側面によるイオンレンズアセンブリに関する加速ロバスト性データを開示する。
【0138】
いくつかの実施形態において、本開示のイオンレンズアセンブリの据え付け時、器具性能は、標準的イオンレンズと比較したときに本質的に変化しなかった。時折のQ1ピーク形状差が、標準的イオンレンズと本開示のイオンレンズアセンブリとの間に認められた。
【0139】
上記の典型的な機能的パラメータに加えて、本開示のイオンレンズアセンブリは、ロバスト性に関して査定された。
【0140】
希釈されたオリーブオイルを使用して、器具ロバスト性の定量的比較を提供するための長期ロバスト性試験が、質量分析システムの異なるプラットフォームにわたる使用に関して既に説明されている(Schneider BB et al.,「Cross Platform Comparison of Robustness using a Lipid Contamination Protocol」(2015年10月25日)参照)。類似する長期ロバスト性試験が、イオンレンズ、具体的に、本開示のイオンレンズアセンブリのロバスト性を査定するためにここで使用された。
【0141】
加速ロバスト性試験が、種々の持続時間にわたる希釈されたオリーブオイルの汚染溶液を質量分析システムの中に注入する標準的試験を使用して実行された。各試験は、種々の時点でレセルピン標準物を使用してシステム性能を監視しながら、120時間にわたって汚染溶液を注入することを伴った。これらの実験は、3つの異なる温度条件下で実行された。第1に、イオンレンズアセンブリは、据え付けられたが、加熱器要素は、熱放出しなかった。
図17は、パネル(A)において、アセンブリの加熱要素をアクティブにすることなく、本教示によるイオンレンズアセンブリを使用して取得された例示的質量信号データを描写する。このデータは、120時間の脂質注入後のレセルピンイオンに関する3.6倍の合計信号減少を示す。第2に、イオンレンズアセンブリの加熱要素が、アクティブにされ、イオンレンズアセンブリが、100℃の温度に維持された間、
図17のパネル(B)において描写される質量データが、取得された。このデータは、120時間の脂質注入後のレセルピンイオンに関する2.5倍の合計信号減少を示す。第3に、イオンレンズアセンブリが、130℃に維持された間、
図17のパネル(C)に描写される質量データが、取得された。このデータは、120時間の脂質注入後のレセルピンイオンに関する1.7倍の合計信号減少を示す。上記データは、イオンレンズアセンブリの加熱がシステムロバスト性のために有益であったことを示唆する。すなわち、120時間の脂質注入後のレセルピンイオンに関する信号低減は、イオンレンズアセンブリが加熱されなかったとき、100℃まで加熱されたとき、および130℃まで加熱されたとき、それぞれ、3.6倍、2.5倍、および1.7倍であった。
【0142】
図18は、3つの異なる温度に維持されるカスタムイオンレンズアセンブリを使用して、高度加速ロバスト性試験の過程にわたって行われる動作に対するイオンレンズアセンブリの給電および/またはランピングに関する例示的データを描写する。イオンレンズアセンブリに関するランピングデータの比較が、3つの異なる汚染実験の過程にわたって入手された。各場合において、比較のために、垂直線が、データ上にオーバーレイされ、それは、イオンレンズアセンブリ電位(約-10.2V)に関する動作点にほぼ対応する。実験は、3つの異なる温度条件下で実行された。第1に、イオンレンズアセンブリは、据え付けられたが、加熱要素が、イオンレンズアセンブリを加熱するためにアクティブにされなかった間、
図18のパネル(A)に描写されるデータが、取得された。イオンレンズアセンブリランプ形状の実質的変化が、いかなる熱もイオンレンズアセンブリに印加されなかったときに観察され、信号が、動作点において実質的に低下した。第2に、イオンレンズアセンブリの加熱要素が、アクティブにされ、イオンレンズアセンブリが、100℃に維持された間、
図18のパネル(B)に描写されるデータが、入手された。イオンレンズアセンブリの温度を100℃まで増加させることは、性能を若干改良したが、実質的な信号減少が、依然として経時的に観察された。第3に、イオンレンズアセンブリが、130℃に維持された間、
図18のパネル(C)に描写されるデータが、取得された。130℃までのイオンレンズアセンブリ加熱器温度の増加は、高度加速ロバスト性実験の過程にわたって、イオンレンズアセンブリランププロファイルのより小さい変化をもたらした。信号は、標準的動作点においてはるかに小さい範囲だけ低下し、ランプの全体的形状は、120時間の過程にわたってより一定であった。
図17のデータは、少なくともある場合、イオンレンズアセンブリへのより多くの熱の印加が、最適なレンズ値の劇的な変化を排除することを示唆する。
【0143】
一連の実験において、Q1ピーク形状データが、本教示によるイオンレンズアセンブリを使用して、高度加速ロバスト性試験の過程にわたって取得された。実験は、3つの異なる温度条件下で実行された。第1に、イオンレンズアセンブリは、据え付けられたが、加熱要素が、アクティブにされなかった間、
図19のパネル(A)に描写されるデータが、入手された。いかなる熱もイオンレンズアセンブリに印加されないと、Q1ピーク幅は、1Vから0.40Vに減少した。第2に、イオンレンズアセンブリが、100℃に維持された間、
図19のパネル(B)に描写されるデータが、入手された。イオンレンズアセンブリが100℃の温度に維持されると、Q1ピーク幅は、依然として狭化を示したが、しかしながら、最終幅は、0.50Vであった。第3に、イオンレンズアセンブリが、130℃に維持された間、
図19のパネル(C)に描写されるデータが、入手された。イオンレンズアセンブリが130℃に維持されると、Q1ピークの狭化は、観察されなかった。これらの結果は、物質堆積を防止するためのイオンレンズアセンブリの加熱が、Q1ピーク形状を維持することによって、より長い期間にわたって信号を保全し得ることを示唆する。逆に、Q1アセンブリの過剰分解が、破片がイオンレンズアセンブリ上に蓄積し、荷電を引き起こすときに起こり得る。上記のように、このデータは、少なくともある場合において、イオンレンズアセンブリへのより多くの熱の印加が、最適なレンズ値の劇的な変化を排除することをさらに示唆する。
【0144】
一連の実験が、質量分析システム内に組み込まれる本教示によるイオンレンズアセンブリの長期ロバスト性を査定するために実施された。実験は、3つの異なる温度条件下で実行された。イオンレンズアセンブリの各々は、高度加速ロバスト性試験の終了時に視覚的に検査された。第1に、イオンレンズアセンブリは、据え付けられたが、加熱要素は、アクティブにされなかった。
図20は、パネル(A)において、加熱要素がアクティブにされなかったとき、約120時間持続したロバスト性試験の終了時のイオンレンズアセンブリの前方面の画像を描写する。レンズの前方面の開口を包囲する大きい堆積物が、可視であった。この堆積物は、標準的イオンレンズアセンブリの表面上に観察される典型的な堆積物にサイズにおいて匹敵した。第2に、イオンレンズアセンブリは、100℃に維持された。
図20は、パネル(B)において、イオンレンズが約100℃の温度に維持された長期ロバスト性試験の終了時のイオンレンズの画像を描写する。可視である堆積物の直径は、100℃の温度において動作させられたレンズ上ではるかに小さかった。加熱器アセンブリの設計およびステンレス鋼の比較的に不良な熱伝達特性を所与として、開口の周囲の領域は、これらの実験に関して100℃未満の温度にあったであろう可能性が高いと考えられる。第3に、イオンレンズアセンブリは、130℃に維持された。
図20は、パネル(C)において、イオンレンズが約130℃の温度に維持された長期ロバスト性試験の終了時のイオンレンズの画像を描写する。最後に、イオンレンズアセンブリが130℃の温度に維持されたとき、いかなる可視である堆積物も、ロバスト性試験の終了時にレンズの表面上で観察されなかった。イオンレンズアセンブリの表面上の可視である堆積物の直径は、イオンレンズアセンブリがより高い温度に維持されたときに減少した。これらの結果は、少なくともある場合、イオンレンズアセンブリの温度の増加が、イオンレンズアセンブリの表面上の汚染破片の蓄積の減少をもたらし得ることを示唆する。
【0145】
一連の実験において、水滴に関する接触角試験が、イオンレンズアセンブリ開口の周囲の領域内の不可視の疎水性物質の存在を査定するために採用された。
図21(A)は、高度加速汚染試験中に130℃に維持されていたイオンレンズアセンブリの表面上の6つの水滴を示す。全ての場合において、観察された接触角は、これらの液滴に関して小さく、それは、これらのタイプのレンズを洗浄するために濃縮粉末器具洗浄剤を使用するときに典型的に観察されるものと一貫する。比較の目的のために、
図21は、パネル(A-[差し込み図内])において、類似するロバスト性試験の終了時の標準的レンズに関する接触角試験を示す。差し込み図内に示される写真の場合において、急勾配の接触角が、イオンレンズアセンブリ開口の近傍における水滴に関して観察される。そのような急勾配の接触角は、実験の過程にわたる疎水性脂質物質の堆積物と一貫する。
図21は、パネル(B)において、表面上の水滴の概略表現の断面図を示し、接触角を決定するための方法を図示する。概して、表面16上の液体(水等)に関する接触角θを測定するために、表面16と、3相点における液体の液滴面に引かれた接線26との間の角度が、測定される。数学的に、θは、2arctan(A/r)であり、式中、Aは、液滴像の高さであり、rは、基部における半値幅である。いくつかの実施形態において、約150度未満、例えば、約125度未満、約100度未満、約75度未満、またはさらには約50度未満の脱イオン水を使用して測定される接触角θを有することが、望ましくあり得る。他の実施形態において、約35度を上回る、例えば、約40度を上回る、約45度を上回る接触角θを有することが、望ましくあり得る。画像は、イオンレンズアセンブリを加熱することが、高度加速ロバスト性実験の間に汚染物質の堆積を限定することを示唆する。
【0146】
いくつかの実験において、イオンレンズアセンブリが130℃に維持されると、120時間の脂質注入後にイオンレンズアセンブリの表面上に破片のいかなる可視である指示も存在せず、水滴実験も、イオンレンズアセンブリ上に疎水性物質の存在のいかなる指示も示さなかった。さらに、システム性能を復元するためにイオンレンズアセンブリを洗浄することは、必要ではなかった。さらに、システム性能のいかなる有意な改良も、イオンレンズアセンブリを洗浄したときに観察されなかった。
【0147】
図22は、本教示によるイオンレンズアセンブリが組み込まれた質量分析システムによる質量分析信号の収集を示し、汚染実験全体を通して130℃に維持されたイオンレンズアセンブリが清浄なイオンレンズと同じように挙動したことを示す例示的データを描写する。具体的に、汚染は、120時間にわたってチャンバの中に漏出されたレセルピンMRMを含み、洗浄は、IQ1レンズを除き、カーテン板からQ1アセンブリまで約130℃の温度においてイオンレンズを加熱することを含んでいた。一連のベースライン実験が、実施され、次いで、イオンレンズアセンブリは、標準的または典型的に使用される洗浄手順を使用して洗浄され、器具は、再ベースライン設定された。このように、「視覚的に清浄な」イオンレンズアセンブリが清浄なレンズのように挙動するかどうかを決定することが、可能であった。
図22は、パネル(A)において、IQ1レンズを洗浄した後の信号データを描写する。
図22は、パネル(B)において、IQ1レンズの洗浄を伴わない信号データを描写し、信号強度およびカウント値安定性は、区別不可能であった。これらの結果はさらに、適切な温度までイオンレンズアセンブリを加熱することが、そうでなければ質量分析システムの性能の劣化につながるであろう破片の蓄積を防止し得るという前提を支援する。特に、データは、イオンレンズアセンブリが130℃の温度に維持されたとき、120時間の脂質注入後にイオンレンズアセンブリ表面上に破片のいかなる指示も存在せず、したがって、イオンレンズアセンブリを洗浄するいかなる必要性も存在しなかったことを示す。
【0148】
本開示は、上で説明および例示される実施形態に限定されず、添付される請求項の範囲内の変形例および修正が可能である。本明細書に使用される節の見出しは、編成目的のみのためであり、限定的として解釈されるものではない。本出願者の教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本出願者の教示が、そのような実施形態に限定されることは意図していない。それとは反対に、本出願者の教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替物、修正、および均等物を包含する。
【0149】
特許、公開済出願、技術記事、および学術論文を含む種々の刊行物が、本明細書全体を通して引用される。これらの引用される刊行物の各々は、その全体として、あらゆる目的のために、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0150】
当業者は、種々の変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に行われ得ることを理解するであろう。