(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂フィルム、記録用紙及び記録用ラベル
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20230706BHJP
【FI】
B32B27/20 A
(21)【出願番号】P 2020563310
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050636
(87)【国際公開番号】W WO2020138090
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018242819
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】足利 光洋
(72)【発明者】
【氏名】植松 淳也
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-008992(JP,A)
【文献】特開平02-053995(JP,A)
【文献】特開平07-117332(JP,A)
【文献】特開2012-218350(JP,A)
【文献】特開2016-101679(JP,A)
【文献】特開2017-065246(JP,A)
【文献】特開平11-301096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B41M 5/50-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と、を備え、
前記コート層が、2次凝集軽質炭酸カルシウム及びスメクタイトを含有
し、
コート層中の2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量(Ma)とスメクタイトの含有量(Mb)の質量比(Ma:Mb)は、60:40~99:1である、
熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記コート層に含まれる前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径をd、粒度分布の50%ピーク高さの幅をwと表すと、w/dの値が1.0以上3.5以下である、
請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項3】
前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径が1~10μmである、
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項4】
前記コート層がさらに、平均1次粒径が0.05μm以上かつ前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径より小さい顔料を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
前記コート層中の前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量と前記顔料の含有量の質量比が5:95~70:30である、
請求項4に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項6】
前記コート層が、固形分換算で、10~50質量%の前記2次凝集軽質炭酸カルシウムと、1~10質量%の前記スメクタイトを含有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項7】
前記コート層が、前記スメクタイトとしてヘクトライトを含有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項8】
前記コート層が、さらにバインダーとして、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項9】
前記バインダーが、金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上によって架橋されている、
請求項8に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項10】
前記コート層中の前記バインダーの含有量が、20~50質量%である、
請求項8又は9に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項11】
前記コート層の単位面積あたりの固形分量が、1~15g/m
2である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項12】
前記基材が、前記熱可塑性樹脂と、無機フィラー及び有機フィラーよりなる群から選ばれる1種以上と、を含有する多孔質フィルムである、
請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムと、
前記熱可塑性樹脂フィルムが備えるコート層上に設けられた印刷層と、
を備える記録用紙。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂フィルムと、
前記熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と反対側の他方の表面上に設けられた粘着層と、
を備える記録用ラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルム、記録用紙及び記録用ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
紙又は樹脂フィルムを基材とし、基材の表面に無機フィラーを含有するコート層が設けられた、各種印刷が可能な記録用紙は広く知られている。このような記録用紙は、例えば知事、議員等の公職選挙の投票用紙として用いられることがある。投票用紙は、記名用の枠線、説明文等があらかじめ印刷され、記入時の筆記用具として鉛筆が用いられるため、印刷適性だけでなく鉛筆筆記性が求められる。また、投票用紙の集計作業には専用の計数機が用いられるが、冬場の静電気が発生しやすい低湿度条件下でも、開票しやすく、また計数機での搬送時の重送もなく、開票及び集計作業が容易となるように高い帯電防止性が求められる。
【0003】
鉛筆筆記性を有する記録用紙としては、平均粒径が比較的大きな顔料を用いた耐水性記録用紙が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。一方、5~30の光沢度を有するマットコートを得るために、一般的に、顔料として粒度の大きい重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等を主に含む塗工紙用塗料を用いることが知られている。例えば、粒度の大きい粒子を用いたグラビア印刷用のつや消し塗被紙が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-169685号公報
【文献】特開平8-027694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉛筆筆記性を向上させるには、粒径の大きな粒子を含有することが効果的である。しかし、粒径が大きいと帯電防止性が低下しやすい。帯電防止剤の添加により帯電防止性を付与することもできるが、帯電防止剤は湿度依存性が高い材料が多く、材料選択の自由度が低い。
【0006】
本発明は、印刷適性及び鉛筆筆記性と、低湿度環境下での帯電防止性とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、2次凝集軽質炭酸カルシウムとスメクタイトを含有するコート層を表面に設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1)熱可塑性樹脂を含む基材と、前記基材の少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と、を備え、前記コート層が、2次凝集軽質炭酸カルシウム及びスメクタイトを含有する、熱可塑性樹脂フィルム。
【0009】
(2)前記コート層に含まれる前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径をd、粒度分布の50%ピーク高さの幅をwと表すと、w/dの値が1.0以上3.5以下である、前記(1)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0010】
(3)前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径が1~10μmである、前記(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0011】
(4)前記コート層がさらに、平均1次粒径が0.05μm以上かつ前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径より小さい顔料を含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0012】
(5)前記コート層中の前記2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量と前記顔料の含有量の質量比が5:95~70:30である、前記(4)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0013】
(6)前記コート層が、固形分換算で、10~50質量%の前記2次凝集軽質炭酸カルシウムと、1~10質量%の前記スメクタイトを含有する、前記(1)~(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0014】
(7)前記コート層が、前記スメクタイトとしてヘクトライトを含有する、前記(1)~(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0015】
(8)前記コート層が、さらにバインダーとして、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選ばれる1種以上を含有する、前記(1)~(7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0016】
(9)前記バインダーが、金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上によって架橋されている、前記(8)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0017】
(10)前記コート層中の前記バインダーの含有量が、20~50質量%である、前記(8)又は(9)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0018】
(11)前記コート層の単位面積あたりの固形分量が、1~15g/m2である、前記(1)~(10)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0019】
(12)前記基材が、前記熱可塑性樹脂と、無機フィラー及び有機フィラーよりなる群から選ばれる1種以上と、を含有する多孔質フィルムである、前記(1)~(11)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【0020】
(13)前記(1)~(12)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムと、前記熱可塑性樹脂フィルムが備えるコート層上に設けられた印刷層と、を備える記録用紙が提供される。
【0021】
(14)前記(1)~(12)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムと、前記熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と反対側の他方の表面上に設けられた粘着層と、を備える記録用ラベルが提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印刷適性及び筆記性と、低湿度環境下での帯電防止性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂フィルムの構成例を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の記録用紙の構成例を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の記録用ラベルの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の熱可塑性樹脂フィルム、記録用紙及び記録用ラベルについて詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。また「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0025】
(熱可塑性樹脂フィルム)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を含む基材と、当該基材の少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と、を備える。なお、本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、コート層が最表面であれば、基材とコート層以外の他の層を備えてもよい。他の層としては、例えばデザイン、偽造防止等を目的として設けられる転写箔、ホログラム、セキュリティスレッド等のパターン層、厚み、強度等を調整するための中間層、偏光フィルム等の機能層等が挙げられる。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態の熱可塑性樹脂フィルム10の構成例を示す。
図1に示すように、熱可塑性樹脂フィルム10は、基材1とコート層2とを備える。
図1は、コート層2が基材1の一方の表面上の最表層として設けられた例を示している。
【0027】
(基材)
基材は、熱可塑性樹脂を含むのであれば特に限定されず、熱可塑性樹脂がマトリクス樹脂である樹脂フィルムであってもよいし、樹脂フィルム又は樹脂フィルム以外の基材に熱可塑性樹脂が含侵、塗工又はラミネートされた加工シート材であってもよい。加工シート材としては、例えばパルプ紙、繊維等の織布、スパンボンド等の不織布、天然皮革、人工皮革等のコア材に熱可塑性樹脂が含侵、塗工又はラミネートされたシート基材、レジンコート紙等が挙げられる。
【0028】
基材は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、各層により、白色不透明性、印刷層に用いられるインキとの密着性、断熱性、易剥離性等の各種機能を付与することができる。
【0029】
なかでも、基材は、熱可塑性樹脂と、無機フィラー及び有機フィラーよりなる群から選ばれる1種以上と、を含有する多孔質フィルムであることが好ましい。多孔質フィルムである基材において熱可塑性樹脂は、基材中の含有量が35質量%以上のマトリクス樹脂であると、折り曲げやすく、折り目がつきにくい熱可塑性樹脂フィルムが得られやすい。例えば、本発明の記録用紙を投票用紙として使用する場合は、折り曲げて投票箱に投入された後も開票時に投票用紙を開きやすく、特に好ましい。計数機により投票用紙を処理する場合も、投票用紙の重送を減らして搬送性が向上しやすい。また、空孔により白色度を調整しやすく、目的の白色度が得られやすい。
【0030】
(熱可塑性樹脂)
基材に使用できる熱可塑性樹脂としては特に制限されないが、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のプロピレン系樹脂、ポリ(4-メチルペンタ-1-エン)、エチレン-環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィンコポリマー等のオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の延伸成形が可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
なかでも、生産性、加工容易性、耐水性、耐薬品性、リサイクル性及びコストの観点から、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂又はオレフィン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂又は高密度ポリエチレンがより好ましく、プロピレン系樹脂がさらに好ましい。
プロピレン系樹脂としては、例えばアイソタクティック、シンジオタクティック又は種々の立体規則性を示すプロピレン単独重合体、プロピレンを主成分とし、当該プロピレンとエチレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1,4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンとのプロピレン共重合体が挙げられる。共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0032】
基材が多孔質フィルムである場合の基材中の熱可塑性樹脂の含有量は、十分な空孔を確保し、白色度及び不透明度を付与する観点からは、35質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、熱可塑性樹脂フィルムに十分な強度を付与し、延伸成形時の破断を防ぐ観点からは、92質量%以下が好ましく、86質量%がより好ましい。
【0033】
プロピレン系樹脂を用いる場合、延伸性を高める観点から、ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のプロピレン系樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を、プロピレン系樹脂100質量%に対して3~25質量%併用することが好ましい。
【0034】
(フィラー)
基材に使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、紫外光吸収フィラー等が挙げられる。紫外光吸収フィラーとしては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0035】
使用できる有機フィラーとしては、例えば基材のマトリクス樹脂がポリオレフィン樹脂の場合には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィン重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等であって、用いるポリオレフィン樹脂の融点より高い融点、例えば120~300℃の範囲を有するか、ガラス転移温度が例えば120~280℃の範囲を有する樹脂が挙げられる。
上記無機フィラー又は有機フィラーの中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合には、無機フィラーと有機フィラーを混合して使用してもよい。
【0036】
無機フィラー又は有機フィラーの平均粒径は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい一方、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。平均粒径が10μm以下であると、空孔の均一性が高まる傾向がある。また、平均粒径が0.01μm以上であると、所定の空孔が得られやすい傾向がある。
無機フィラー又は有機フィラーの平均粒径は、熱可塑性樹脂フィルムの厚み方向の切断面を電子顕微鏡により観察し、観察領域より無作為に抽出した100個の粒子径の測定値の平均値である。粒子径は、粒子の輪郭上の2点間の距離の最大値(最大径)から決定する。
【0037】
基材中のフィラーの含有量は、8質量%以上が好ましく、14質量%以上がより好ましい一方、65質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
フィラーの含有量が8質量%以上であれば、十分な空孔数が得られやすく、多孔質フィルムに所望の白色度又は不透明度を付与しやすい傾向がある。また、同含有量が65質量%以下であれば、多孔質フィルムの強度が十分得られやすく、延伸成形時に破断しにくい傾向がある。
【0038】
(添加剤)
基材は、必要に応じて他の添加剤を含有することもできる。他の添加剤としては、例えば熱安定剤、紫外線安定剤(光安定剤)、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、粘着防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤等の各種公知の添加剤が挙げられる。熱安定剤としては、例えば立体障害フェノール系、リン系、アミン系等を、通常0.001~1質量%配合できる。光安定剤としては、例えば立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等を、通常0.001~1質量%配合できる。分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はそれらの塩等を、通常0.01~4質量%配合できる。帯電防止剤としては、例えばステアリン酸モノグリセリド、ステアリルジエタノールアミン等の低分子型界面活性剤を、通常0.01~4質量%配合できる。
【0039】
基材は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。基材の剛度を上げる観点からは、基材は、少なくとも一軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましく、二軸方向に延伸された延伸フィルム(以下、二軸延伸フィルムということがある。)であることがより好ましい。二軸延伸フィルムは、二軸方向に延伸されているため、折り曲げたときに伸びにくく、曲げ弾性率が高いため折り癖もつきにくい。よって、例えば本発明の記録用紙を投票用紙として使用する場合、投票者がどの向きに折り曲げても、伸びにくく折り癖がつきにくいため、好ましい。基材が多層構造の場合は、無延伸フィルムの層と延伸フィルムの層を組み合わせることもできるし、各層で延伸軸数が同じ又は異なる延伸フィルム同士を組み合わせることもできるが、上述の観点から少なくとも1層が延伸フィルムであることが好ましい。
【0040】
(表面処理)
基材は、基材の隣接層、例えばコート層との密着性を高める観点から、表面処理が施されて表面が活性化していることが好ましい。
表面処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0041】
コロナ放電処理を実施する場合の放電量は、好ましくは600J/m2(10W・分/m2)以上であり、より好ましくは1,200J/m2(20W・分/m2)以上である。また、同放電量は、好ましくは12, 000J/m2(200W・分/m2)以下であり、より好ましくは10,800J/m2(180W・分/m2)以下である。フレーム処理を実施する場合の放電量は、好ましくは8,000J/m2以上であり、より好ましくは20,000J/m2以上である。また、同放電量は、好ましくは200,000J/m2以下であり、より好ましくは100,000J/m2以下である。
【0042】
(コート層)
コート層は、基材の少なくとも一方側の最表面上に設けられ、優れた印刷適性及び鉛筆筆記性と湿度環境によらない高い帯電防止性を熱可塑性樹脂フィルムに付与する。
コート層は、2次凝集軽質炭酸カルシウム及びスメクタイトを含有する。
【0043】
(2次凝集軽質炭酸カルシウム)
コート層は、2次凝集軽質炭酸カルシウムを顔料として含有する。2次凝集軽質炭酸カルシウムは、軽質炭酸カルシウムを合成する際に微粒の1次粒子が凝集した2次粒子体である。1次粒子がランダムに凝集して2次粒子が形成され、1次粒子間の細かい空隙がコート層全体に広がり、インキの吸収性が良好であるため、インキ転移性及び耐水擦過性の印刷適性が向上する。また、空隙によって表面に細かい凹凸が生じ、鉛筆から黒鉛が削り取られて表面に付着しやすくなるため、鉛筆による筆記性が向上する。
【0044】
2次凝集軽質炭酸カルシウムは、例えば水酸化カルシウム水懸濁液と石灰焼成キルン排ガスとを反応させ、水酸化カルシウム水懸濁液の濃度、温度及び炭酸ガスの吹き込み量等を調整することにより得ることができる。このように、合成段階で2次凝集させて得られる2次凝集軽質炭酸カルシウムは粒度分布が狭い。このような炭酸カルシウム粒子を含むコート層はその表面粗さが均一になるため、インキ転移性、耐水擦過性及び鉛筆筆記性が良好である。
【0045】
具体的には、コート層に含まれる2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径をd、粒度分布の50%ピーク高さの幅をwと表すと、w/dの値が1.0以上3.5以下であることが好ましい。w/dの値が1.0以上であると、コート層表面が適度に粗いために優れた鉛筆筆記性が得られやすい。w/dの値が3.5以下であると、コート層表面が適度に平滑であるため、優れたインキ転移性及び耐水擦過性が得られやすい。w/dの値としてより好ましくは1.2以上である一方、好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0046】
コート層中のw/dの値は、層の断面観察により求めることができる。すなわち、走査型電子顕微鏡を用いて層の断面の電子顕微鏡写真を撮影し、撮影された画像から任意の100個の2次粒子に対して粒子の投影面積が近似する球形と見なしたときの粒径を平均2次粒径dとして算出する。次いでその平均2次粒径dの分布から50%ピーク高さの幅wを求め、w/dの値を算出する。
【0047】
2次凝集軽質炭酸カルシウムとしては、市販品も使用することができる。市販品としては、例えば白石カルシウム社製の白艶華PZ、TUNEX-E等が挙げられる。2次凝集軽質炭酸カルシウムは、1種を単独で2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径(d)は、鉛筆筆記性付与の観点から、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、コート層からの2次凝集軽質炭酸カルシウムの脱落抑制の観点からは、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
また、2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均1次粒径は、鉛筆筆記時の線の鮮明性の観点からは、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、鉛筆筆記時の線の書きやすさの観点からは、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0049】
上記平均2次粒径又は平均1次粒径は、2次凝集軽質炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真から画像解析することによって求めることができる。平均2次粒径は、走査型電子顕微鏡を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、撮影された画像から任意の100個の2次粒子に対して粒子の投影面積が近似する球形と見なしたときの粒径を平均2次粒径として算出することができる。平均1次粒径は、走査型電子顕微鏡を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、撮影された画像から形状が確認できる任意の100個の1次粒子に対して粒子の投影面積が近似する球形と見なしたときの粒径を平均1次粒径として算出することができる。
【0050】
コート層中の顔料は2次凝集軽質炭酸カルシウムのみであってもよいが、鉛筆筆記性の向上、コスト等の観点から、他の顔料を併用してもよい。併用できる顔料としては、例えばカオリン、ゼオライト、2次凝集していない炭酸カルシウム、2次凝集重質炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、焼成クレイ、タルク、ホワイトカーボン、有機顔料(プラスチックピグメント)等が挙げられる。これらのうち、1種以上を2次凝集軽質炭酸カルシウムと併用できる。なかでも、インキ受容性と低コストの観点から、カオリンが好ましい。また、カオリンは水に分散しやすい点でも好ましい。
【0051】
併用できる顔料の平均1次粒径は、鉛筆筆記性の向上の観点からは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、帯電防止性の向上の観点からは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。顔料が2次凝集軽質炭酸カルシウムの粒子間の隙間を埋めて、コート層中に2次凝集軽質炭酸カルシウムを均一に分散させるとともにコート層からの脱落を抑える観点からは、併用する顔料の平均1次粒径は、2次凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒径(d)より小さいことが好ましく、当該平均2次粒径(d)の1/2以下であることがより好ましい。
【0052】
コート層中の2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量と併用する顔料の含有量の質量比(2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量:顔料の含有量)は、コート層への2次凝集軽質炭酸カルシウムの均一に分散させ、コート層からの脱落を減らす観点から、5:95~70:30が好ましく、10:90~60:40がより好ましい。
【0053】
(スメクタイト)
スメクタイトは、粘土鉱物の1種であり、低湿度環境下でも高い帯電防止性をコート層に付与する。スメクタイトは、例えば構造式〔(Si8-aAla)(Mg6-bAlb)・O20(OH)4〕-・M+
a-bで表される。なお、M+はNa+であることが多く、a-b>0である。
【0054】
使用できるスメクタイトとしては、例えばヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ノントロナイト等が挙げられる。なかでも、ヘクトライトが帯電防止性の観点から好ましい。スメクタイトは、天然スメクタイト及び合成スメクタイトのいずれであってもよいが、一般に粒径が小さい合成スメクタイトの方が粒子同士の接点数が多く、高い帯電防止性を発揮できるため、好ましい。
【0055】
例えば、使用できる合成ヘクトライトとしては、天然ヘクトライトと同じ構造式、すなわち構造式 [(Si8(Mg5.34Li0.66)O20(OH,F)4)]Na0.66で表される、Laporte Industries社製のラポナイトB、S等、(OH,F)4の部分がすべてヒドロキシ基となった構造式、すなわち構造式[(Si8(Mg5.34Li0.66)O20(OH)4)]Na0.66で表される、Laporte Industries社製のラポナイトRD、RDS、XLG、XLS等が挙げられる。
【0056】
スメクタイトの平均粒径は、帯電防止性能の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましい。また、同平均粒径は、コート層からのスメクタイトの脱落防止の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0057】
コート層中の2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量は、鉛筆筆記性の観点からは、固形分換算で、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。コート層からの2次凝集軽質炭酸カルシウムの脱落防止の観点からは、同含有量は、固形分換算で、50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
コート層中のスメクタイトの含有量は、帯電防止性能の観点からは、固形分換算で、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。低コストの観点からは、同含有量は、固形分換算で、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
【0058】
また、コート層中の2次凝集軽質炭酸カルシウムの含有量(Ma)とスメクタイトの含有量(Mb)の質量比(Ma:Mb)は、60:40~99:1が好ましく、70:30~98:2がより好ましい。質量比が上記範囲内であれば、帯電防止性能が発現しやすい。
【0059】
(バインダー)
コート層は、さらにバインダーを含有することが好ましい。バインダーにより、2次凝集軽質炭酸カルシウムとスメクタイトをコート層中に均一に存在させることができる。また、2次凝集軽質炭酸カルシウムと基材との密着性も向上させることができ、印刷適性及び鉛筆筆記性がより向上する。
【0060】
バインダーとしては、従来公知のバインダーを使用することができ、例えばスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ブタジエン-メチルメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル-ブチルアクリレート系共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸-メチルメタクリレート系共重合体等の各種共重合体を挙げることができる。これらのうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、これらのうちのいずれのバインダーであっても好適に用いることができるが、基材とコート層の密着性の観点から、コート層は、バインダーとして、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体よりなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0061】
コート層におけるバインダーの含有量は、2次凝集炭酸カルシウムと基材との密着性の観点からは、20質量%以上が好ましく、23質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、同含有量は、コート層中に2次凝集軽質炭酸カルシウムとスメクタイトを均一に分散させる観点からは、50質量%以下が好ましく、47質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。
【0062】
(架橋剤)
コート層はさらに架橋剤を含有し、コート層中のバインダーが架橋剤によって架橋されていることが好ましい。バインダーの架橋により、コート層表面の印刷部分における耐水擦過性が向上しやすい。
【0063】
架橋剤としては、従来公知の架橋剤を使用することができる。使用できる架橋剤としては、例えば炭酸ジルコニウムアンモニウム等の金属系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物等のエピクロロヒドリン系架橋剤、オキサゾリン基含有ポリマー等のオキサゾリン系架橋剤等が挙げられる。上記コート層表面の耐水擦過性の向上の観点からは、バインダーは、上記金属系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エピクロロヒドリン系架橋剤及びオキサゾリン系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上によって架橋されていることが好ましい。なかでも、コート層の耐水密着性向上の観点から、コート層は、金属系架橋剤を含むことが好ましく、炭酸ジルコニウムアンモニウムがより好ましい。
【0064】
コート層は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加剤を含有してもよい。使用できる添加剤としては、例えば分散剤、低分子型又は高分子型の帯電防止剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤、防腐剤等が挙げられる。分散剤としては、例えばポリカルボン酸等を、通常0.05~5質量%配合することができる。
【0065】
コート層の単位面積あたりの乾燥後の固形分量(質量)は、コート層表面の印刷部分における耐水擦過性の向上の観点からは、1g/m2以上が好ましく、2g/m2以上がより好ましく、印刷適性、なかでもインキ転移性と鉛筆筆記性の観点からは、15g/m2以下が好ましく、10g/m2以下がより好ましい。したがって、コート層の単位面積あたりの乾燥後の固形分量は、1~15g/m2であることが好ましく、2~10g/m2がより好ましい。
上記コート層の単位面積あたりの質量は、一定面積の熱可塑性樹脂フィルムの質量を測定後に、コート層を削り取った残りの熱可塑性樹脂フィルムの質量を測定し、その質量差を面積で除算することにより測定される。
【0066】
(熱可塑性樹脂フィルムの製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、基材の少なくとも一方の表面上にコート層を形成することで製造できる。
【0067】
基材が熱可塑性樹脂の加工シート材である場合、基材に熱可塑性樹脂を他の成分とともに含侵する、塗工する又はラミネートする等の加工を施すことで基材が得られる。基材が多孔質フィルムである場合は、熱可塑性樹脂をフィラー等の他の成分と混合した後、フィルム成形することにより得ることができる。使用できるフィルム成形方法としては特に限定されず、公知の種々の成形方法を単独でも又は組み合わせることができる。フィルム成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等が挙げられる。熱可塑性樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することによっても、フィルム成形できる。多層構造の基材のフィルム成形方法としては、例えばフィードブロック又はマルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等が挙げられ、各方法を組み合わせることもできる。
【0068】
延伸フィルムを製造するときの延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。複数の延伸フィルムを含む多層構造の基材を製造する場合は、各層を積層する前に個別に延伸しておいてもよいし、積層した後にまとめて延伸してもよい。また、延伸した層を積層後に再び延伸してもよい。
【0069】
延伸を実施するときの延伸温度は、基材に使用する熱可塑性樹脂が、非結晶性樹脂の場合は当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、具体的には熱可塑性樹脂の融点よりも2~60℃低い温度が好ましい。
【0070】
フィルムの延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20~350m/分の範囲内であることが好ましい。
また、フィルムの延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができる。 例えば、プロピレンの単独重合体又は共重合体を含むフィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、通常は約1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は12倍以下であり、好ましくは10倍以下である。また、二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは10倍以上である一方、通常は60倍以下であり、好ましくは50倍以下である。
【0071】
また、ポリエステル系樹脂を含むフィルムを一軸延伸する場合、その延伸倍率は、通常は1.2倍以上であり、好ましくは2倍以上である一方、通常は10倍以下であり、好ましくは5倍以下である。二軸延伸する場合の延伸倍率は、面積延伸倍率で通常は1.5倍以上であり、好ましくは4倍以上である一方、通常は20倍以下であり、好ましくは12倍以下である。
上記延伸倍率の範囲内であれば、目的の空孔率が得られて不透明性が向上しやすい。また、フィルムの破断が起きにくく、安定した延伸成形ができる傾向がある。
【0072】
基材を形成後、基材上にコート層を形成する。
コート層の形成方法は特に限定されないが、例えばコート層の各種成分を水に分散又は溶解させた塗工液を調製し、当該塗工液を基材上に塗工して乾燥することにより、コート層を形成することができる。塗工液の塗工装置としては公知の装置を用いることができ、例えばエアーナイフコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、チャンプレックスコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター等が挙げられる。
【0073】
(熱可塑性樹脂フィルムの特性)
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、印刷適性、特にインキ転移性及び耐水擦過性に優れるとともに、鉛筆筆記性にも優れる。インキ又は鉛筆の文字等を明確に表示でき、水に濡れた状態でも印刷内容が維持されやすいため、各種記録用紙の他、あらかじめ枠線等が印刷され、投票時に鉛筆で筆記する投票用紙、印刷又は筆記が可能な記録用ラベル等として本発明の熱可塑性樹脂フィルムを好適に使用することができる。また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムは湿度環境によらず帯電防止性が高いため、冬場等の低湿度環境下でもフィルム同士の貼り付きが少ない。印刷装置、投票用紙の計数機等での搬送性に優れ、取り扱いが容易である。
【0074】
(厚み)
基材及び熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、搬送に適したコシを得る観点からは、60μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましく、折り曲げやすさの観点からは、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましく、120μm以下がさらに好ましい。
【0075】
(表面抵抗率)
熱可塑性樹脂フィルムのコート層の表面抵抗率は、低湿度環境下においても熱可塑性樹脂フィルム同士の貼り付きを抑える観点から、5×1012Ω以下であることが好ましく、1×1012Ω以下であることがより好ましい。また、同表面抵抗率は、通常は7×109Ω以上であり、9×109Ω以上であることがより好ましい。
上記表面抵抗率は、温度20℃、相対湿度30%の条件下でJIS K6911:1995に準拠して測定される。
【0076】
(記録用紙)
本発明の記録用紙は、上述した本発明の熱可塑性樹脂フィルムと、当該熱可塑性樹脂フィルムのコート層の表面上に設けられた印刷層と、を備える。本発明の記録用紙を投票用紙として使用する場合、その種類は問わず、選挙投票用紙、国民投票用紙、住民投票用紙等の各種の投票用紙として、本発明の熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。印刷適性及び鉛筆筆記性に優れ、帯電防止性が高い本発明の熱可塑性樹脂フィルムを使用することにより、コート層上に印刷によって又は鉛筆の筆記によって枠線、文字等を明確に表示できるとともに水に濡れても印刷内容を維持しやすく、屋外で使用しやすい記録用紙を提供できる。また、この記録用紙は静電気による貼り付きが少なく、冬場の低湿度環境下でも印刷装置又は計数機での搬送性が良好で取り扱いが容易であるため、開票及び集計作業が容易となる。
【0077】
図2は、本発明の一実施形態の記録用紙20の構成例を示す。
図2に示すように、記録用紙20は、熱可塑性樹脂フィルム10及び印刷層3を備える。熱可塑性樹脂フィルム10は、基材1と基材1の一方の表面上に設けられたコート層2を備え、印刷層3はコート層2上に設けられる。
【0078】
(印刷層)
印刷層は、文字、枠線、絵柄等の印刷によって形成される層である。
印刷方法としては特に限定されず、グラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シール印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法を使用することができる。印刷層は、インクジェット方式、電子写真方式、液体トナー方式等の各種プリンタによる印字、ホットスタンプ、コールドスタンプ等の箔押し、転写箔、ホログラム等の従来公知の装飾を含むこともできる。
【0079】
印刷には、印刷方法に合わせて、油性インキ、酸化重合硬化型インキ、紫外線硬化型インキ、水性インキ、粉体トナー、液体トナー(エレクトロインキ)等の各種インキを使用することができる。
【0080】
(記録用ラベル)
本発明の記録用ラベルは、上述した本発明の熱可塑性樹脂フィルムと、当該熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも一方の表面上に設けられたコート層と反対側の他方の表面上に設けられた粘着層と、を備える。印刷適性及び鉛筆筆記性に優れ、帯電防止性が高い本発明の熱可塑性樹脂フィルムを使用することにより、コート層上に印刷によって又は鉛筆の筆記によって枠線、文字等を明確に表示できるとともに水に濡れても印刷内容を維持しやすく、屋外での耐久性に優れた記録用ラベルを提供できる。また、この記録用ラベルは静電気による貼り付きが少なく、冬場の低湿度環境下でも印刷装置等における搬送性が良好で取り扱いが容易である。
【0081】
なお、熱可塑性樹脂フィルムのコート層は一方の表面だけでなく他方の表面にも設けられていてもよく、この場合、粘着層と基材の間にコート層が位置する。
本発明の記録用ラベルは、コート層上に上記記録用紙と同様の印刷層を備えていてもよい。
また、本発明の記録用ラベルは、被着体に貼着する以前の取り扱いを容易とするために、必要に応じて粘着層上に剥離紙を備えてもよい。
【0082】
図3は、本発明の一実施形態の記録用ラベル30の構成例を示す。
図3に示すように、記録用ラベル30は、
図1に示す熱可塑性樹脂フィルム10と粘着層4を備える。粘着層4は、熱可塑性樹脂フィルム10のコート層2が設けられた面と反対側の基材1の面上に設けられている。
【0083】
(粘着層)
粘着層に使用できる粘着剤としては、例えばゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。ゴム系粘着剤の具体例としては、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム又はこれらの混合物に、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の有機溶剤を配合して溶解させた組成物、アビエチン酸ロジンエステル、テルペン-フェノール共重合体、テルペン-インデン共重合体等の粘着付与剤を配合した組成物等が挙げられる。アクリル系粘着剤の具体例としては、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸n-ブチル共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート・アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体等のガラス転移点が-20℃以下のアクリル系共重合体を有機溶剤で溶解した組成物、同一組成のアクリル系共重合体のエマルジョン系粘着剤等を用いることができる。なかでも、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤としては、溶液型、エマルジョン型、ディレード型、ホットメルト型等の各種形態の粘着剤を使用することができる。なかでも、成形の容易性の観点から、溶液型又はエマルジョン型が好ましく、溶液型がより好ましい。
【0084】
粘着層は、上記粘着剤を熱可塑性樹脂フィルムの表面に直接塗工し、必要により乾燥を行って形成することができる。また、粘着層は、後述する剥離紙へ上記粘着剤を塗工し、必要に応じて乾燥を行って粘着層を一旦形成した後、この粘着層を熱可塑性樹脂フィルムの表面に接するように積層することでも形成できる。粘着層を一旦形成する後者の方法の方が、粘着層の乾燥時に、熱可塑性樹脂フィルムの各層が高温下におかれることがないため、好ましい。
【0085】
粘着剤を塗工する装置としては、例えばダイコーター、バーコーター、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、リバースコーター、エアーナイフコーター等が挙げられる。なかでも、塗工性の観点から、コンマコーター又はグラビアコーターが好ましく、グラビアコーターがより好ましい。これらの塗工装置によって粘着剤を塗工した後に、必要に応じてレベリング又はスムージングを行い、乾燥することで粘着層を形成する。
【0086】
粘着剤の塗工量は、特に限定されないが、乾燥後の固形分量として通常は3g/m2以上であり、好ましくは5g/m2以上であり、より好ましくは10g/m2以上である一方、通常は60g/m2以下であり、好ましくは40g/m2以下であり、より好ましくは30g/m2以下である。
粘着層の厚みは、アクリル系粘着剤の場合は10~50μmであることが好ましく、ゴム系粘着剤の場合は80~150μmであることが好ましい。
【0087】
(剥離紙)
剥離紙は、粘着層との接着力が、熱可塑性樹脂フィルムと粘着層との接着力よりも低いシート材であれば限定されず、慣用される剥離紙のなかから任意の剥離紙を適宜選択して用いることができる。剥離紙としては、例えば上質紙、クラフト紙等のパルプ紙、該パルプ紙をカレンダー処理した加工紙、パルプ紙に樹脂を塗工又は含浸した加工紙、パルプ紙に樹脂フィルムをラミネートした加工紙、グラシン紙、コート紙、樹脂フィルム等にシリコーン処理を施した加工紙等が挙げられる。剥離紙としては、粘着層との剥離性を調整する観点から、粘着層に接触する面にシリコーン処理を施した加工紙が好適に用いられる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
った。
【0089】
各実施例及び比較例では、コート層に下記原料を使用した。
(分散剤)
・ポリカルボン酸:商品名「ポイズ520」、花王社製
(2次凝集軽質炭酸カルシウム)
・PZ:商品名「白艶華PZ」、白石カルシウム社製、平均1次粒径(D50):0.08μm、平均2次粒径(D50):4μm
・TUNEX-E:商品名「TUNEX-E」、白石カルシウム社製、平均1次粒径(D50):0.3μm、平均2次粒径(D50):6μm
(軽質炭酸カルシウム)
・TP-123CS:商品名「TP-123CS」、奥多摩工業社製、平均1次粒径(D50):0.2μm
(顔料)
・カオリン:商品名「カオブライト90」、THIELE社製、平均1次粒径(D50):0.4μm
(スメクタイト)
・ラポナイトS482:合成ヘクトライト、商品名「ラポナイトS482」、BYK社製
・ラポナイトRD:合成ヘクトライト、商品名「ラポナイトRD」、BYK社製
・ラポナイトRDS:合成ヘクトライト、商品名「ラポナイトRDS」、BYK社製
・スメクトンSA:合成スメクタイト、商品名「スメクトンSA」、クニミネ工業社製
【0090】
(バインダー)
・St-Bg共重合体:スチレン-ブタジエン共重合体、商品名「LX407G51」、日本ゼオン社製)
・St-Ac共重合体:スチレン-アクリル共重合体、商品名「ZE-1425」、星光PMC社製
・Et-AcOH共重合体:エチレン-酢酸ビニル共重合体、商品名「スミカフレックスS483HQ」、住化ケムテックス社製
(架橋剤)
・5800MT:炭酸ジルコニウムアンモニウム、商品名「AZコート5800MT」、サンノプコ社製
・EX-521:ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、商品名「デナコールEX-521」、ナガセケムテックス社製
【0091】
(実施例1)
(基材の作製)
(I)プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)67質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)10質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)23質量部を混合して、樹脂組成物aを調製した。
【0092】
(II)次いで、樹脂組成物aを260℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりシート状に押出し、このシートを冷却ロールにより冷却して、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃にまで再度加熱した後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向(MD)に4.8倍の延伸を行って縦一軸延伸樹脂フィルムを得た。
【0093】
(III)これとは別に、プロピレン単独重合体(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)51.5質量部、高密度ポリエチレン樹脂(商品名:ノバテックHD HJ580N、日本ポリエチレン社製)3.5質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)45質量部を混合して、樹脂組成物bを調製した。
【0094】
これを250℃に設定した押出機で溶融混練し、上記一軸延伸フィルムの片面にダイよりフィルム状に押し出し、積層して、表面層/コア層の積層体(b/a)を得た。
さらに、別の押出機を用い、上記樹脂組成物bを250℃に設定した押出機で溶融混練し、ダイよりフィルム状に押し出し、上記積層体(b/a)のコア層(a)側の面に積層して、表面層/コア層/裏面層の3層構造の積層体(b/a/b)を得た。
【0095】
この3層構造の積層体をテンターオーブンに導き、155℃に加熱した後、テンターを用いて横方向に8倍延伸し、次いで164℃で熱セット(アニーリング)して、さらに55℃まで冷却し、耳部をスリットして厚さ80μmの熱可塑性樹脂フィルムを基材1として得た。
【0096】
(コート層用塗工液の調製)
ポリカルボン酸(商品名:ポイズ520、花王社製)0.5質量部、2次凝集軽質炭酸カルシウム(商品名:白艶華PZ、白石カルシウム社製、1次粒子径(D50):0.08μm、2次粒子径(D50):4μm)30質量部、カオリン(商品名:カオブライト90、THIELE社製、粒子径(D50):0.4μm)70質量部、スメクタイトとして合成ヘクトライト(商品名:ラポナイトS482、BYK社製)5質量部、バインダーとしてスチレン-ブタジエン共重合体(商品名:LX407G51、日本ゼオン社製)30質量部、架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウム(商品名:AZコート5800MT、サンノプコ社製)5質量部、及び水250質量部からなる組成物を混合及び撹拌してコート層用塗工液を得た。
【0097】
(コート層を備える熱可塑性樹脂フィルムの製造)
上記基材1の片面上に、コート層用塗工液を、乾燥後の単位面積あたりの固形分量が4.0g/m2となるように、バーコーターでコート及び乾燥して、コート層を備える熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0098】
(2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値測定)
上記コート層を備える熱可塑性樹脂フィルムの断面を切削し、走査型電子顕微鏡を用いて電子顕微鏡写真を撮影した。撮影された画像から任意の100個の2次粒子に対して粒子の投影面積が近似する球形と見なしたときの粒径を平均2次粒径dとして算出した。またその粒度分布の50%ピーク高さの幅wを求めて、w/d値を算出した。
【0099】
(実施例2~7)
表2の実施例2~7に記載のように、2次凝集軽質炭酸カルシウムの種類、併用するカオリンとの配合比等を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0100】
(実施例8~10)
表2の実施例8~10に記載のように、スメクタイトの配合量等を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0101】
(実施例11~14)
表3の実施例11~14に記載のように、バインダー及び架橋剤の配合量を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0102】
(実施例15~17)
表3の実施例15~17に記載のように、スメクタイトの種類を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0103】
(実施例18~19)
表3の実施例18~19に記載のように、バインダーの種類を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0104】
(実施例20)
表3の実施例20に記載のように、架橋剤の種類を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0105】
(実施例21)
表4の実施例21に記載のように、架橋剤を除いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0106】
(実施例22~25)
表4の実施例22~25に記載のように、コート層用塗工液の塗工量を変更してコート層の乾燥後の単位面積あたりの固形分量を変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0107】
(比較例1)
表4の比較例1に記載のように、2次凝集軽質炭酸カルシウムを除いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0108】
(比較例2)
表4の比較例2に記載のように、2次凝集軽質炭酸カルシウムの代わりに軽質炭酸カルシウムを配合した以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0109】
(比較例3)
表4の比較例3に記載のように、スメクタイトを除いた以外は、実施例1と同様に熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0110】
(比較例4)
表4の比較例4に記載のように、コート層を形成していない熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0111】
(比較例5)
分散剤を用いないこと以外は、比較例2と同様に比較例5の熱可塑性樹脂フィルムを得た。得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における2次凝集軽質炭酸カルシウムのw/d値を、実施例1と同様に測定した。
【0112】
各実施例及び比較例にて得られた熱可塑性樹脂フィルムにつき、下記評価を行った。表1は、コート層の材料の内容と略号を示す。表2~4は、評価結果を示す。
【0113】
(十点平均粗さRzjis)
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層表面に対し、JIS B0601:2013「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメーター」附属書1の規定に準じて、十点平均粗さ(ten point height of roughness profile)Rzjisを測定した。十点平均粗さの測定装置として、東京精密(株)製の三次元表面粗さ計「サーフコム1500DX3」(機器名)を使用した。測定条件は、測定速度:1mm/sec、測定長さ:5mm、送りピッチ:20μmとした。
【0114】
(印刷適性:インキ転移性)
各実施例、比較例で得られた熱可塑性樹脂フィルムをA2版(420mm×594mm)に断裁し、片面に注意書き、立候補者等の文字情報及び枠線、意匠等を含む図柄をオフセット印刷した。印刷には、オフセット印刷機(商品名「リスロン」、小森コーポレーション社製)と酸化重合型枚葉プロセスインキ「フュージョンG(墨)」((株)DIC製)を用いた。具体的には、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、6000枚/時間の速度で1000枚連続して印刷を行い、オフセット印刷物を得た。得られたオフセット印刷物の文字情報及び枠線のインキの転移具合を画像解析装置(ニレコ社製:型式ルーゼックスIID)で画像処理し、インキ転移部分の面積率を算出し、以下の基準で4段階評価を行った。
A:インキの99%以上が熱可塑性樹脂フィルム上に転写され、良好なレベル
B:インキの98%以上、99%未満が熱可塑性樹脂フィルム上に転写され、概ね良好なレベル
C:インキの95%以上、98%未満が熱可塑性樹脂フィルム上に転写され、実用できるレベル
D:インキの95%未満が熱可塑性樹脂フィルム上に転写され、実用不可のレベル
【0115】
(印刷適性:耐水擦過性)
各実施例及び比較例の熱可塑性樹脂フィルムを用いた上記オフセット印刷物を70mm×110mmのサイズに打抜き、これを23℃のイオン交換水中に24時間浸漬した後、印刷物を水中より取り出した。取り出した印刷物を学振形染色摩擦堅ろう度試験機(商品名「摩擦試験機II形」、スガ試験器社製)にセットして、JIS L0849:2004(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に準拠し、印刷面を白綿布(金巾3号)にて荷重215gを加えて100回擦る摩擦試験を行った。試験前後のインキ部分を画像解析装置(ニレコ社製:型式ルーゼックスIID)で画像処理し、インキ部分の面積の残存率を算出して以下の基準で判定した。
A:インキの95%以上が熱可塑性樹脂フィルム上に残存し、良好なレベル
B:インキの90%以上、95%未満が熱可塑性樹脂フィルム上に残存し、概ね良好なレベル
C:インキの70%以上、90%未満が熱可塑性樹脂フィルム上に残存し、実用できるレベル
D:インキの70%未満が熱可塑性樹脂フィルム上に残存し、実用不可のレベル
【0116】
(鉛筆筆記性)
東洋精機(株)社製の鉛筆硬度計(スクラッチテスター)を用いて、得られた熱可塑性樹脂フィルムに垂直になるようにセットされた硬度HBの鉛筆に、200gの荷重を加えて、5mm/秒の速度で線分を描いた。この線分を目視観察して次のように判定した。
A:はっきりと読みとれる、良好なレベル
B:線の欠けがほとんどない、概ね良好なレベル
C:線が一部欠けるものの、実用できるレベル
D:線がほとんど筆記されていない、実用不可のレベル
【0117】
(表面抵抗率)
JIS K6911:1995に記載の方法に従い、各実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂フィルムのコート層における表面抵抗率を、ディジタル超絶縁/微少電流計(商品名「DSM-8104」、日置電機社製)を用いて、温度20℃、相対湿度30%の条件下で測定した。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
このように、コート層中に2次凝集軽質炭酸カルシウムとともにスメクタイトを含有する各実施例によれば、鉛筆筆記性だけでなく印刷適性にも優れ、かつ30%RHの低湿度環境下での表面抵抗率も1.0×1012以下と小さく、高い帯電防止性も両立できている。
【0123】
一方、比較例1及び4からは、2次凝集軽質炭酸カルシウムがないと良好な鉛筆筆記性が得られず、比較例3及び4からは、スメクタイトがないと表面抵抗率が1.0×1014以上と帯電防止性が低いことが確認できた。また、比較例2からは、軽質炭酸カルシウムだけでは2次凝集軽質炭酸カルシウムのように良好な鉛筆筆記性が得られないことが分かった。なお、バインダーの含有量が0質量%のコート層を形成しようとしたところ、バインダーなしでは塗工できるコート層用塗工液を調製することができず、熱可塑性樹脂フィルムを製造できなかった。
【0124】
本出願は、2018年12月26日に出願された日本特許出願である特願2018-242819号に基づく優先権を主張し、当該日本特許出願のすべての記載内容を援用する。
【符号の説明】
【0125】
10・・・熱可塑性樹脂フィルム、1・・・基材、2・・・コート層、20・・・記録用紙、3・・・印刷層、30・・・記録用ラベル、4・・・粘着層
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、印刷適性、なかでもインキ転移性と耐水擦過性に優れ、鉛筆筆記性も高いため、印刷用紙、ポスター用紙、ラベル用紙、インクジェット記録用紙、感熱記録用紙、熱転写受容紙、感圧転写記録紙等として広く利用できる。また、本発明の記録用紙及び記録用ラベルも同様に、印刷適性に優れ、鉛筆筆記性も高いため、屋外での使用に特に有効に利用することができる。