(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】長時間持続性のスキンケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20230706BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230706BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230706BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61Q19/00
A61K8/06
(21)【出願番号】P 2021555618
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 US2020022391
(87)【国際公開番号】W WO2020190642
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-10-22
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513161449
【氏名又は名称】イーエルシー マネージメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モハマディ,ファテメウ
(72)【発明者】
【氏名】テジャダ,スンニ エル.
(72)【発明者】
【氏名】クー,リサ
(72)【発明者】
【氏名】クザールノタ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】モウ,ツン-ウェイ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リー,ウィルソン エー.
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0369119(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0161435(US,A1)
【文献】特表2018-512065(JP,A)
【文献】国際公開第2017/174874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7.0重量%~
9.3重量%のアクリレート/VAコポリマー、及び0.2重量%~2重量%のアクリレートコポリマーを含み、
乾燥時に透明なマスクを形成する、化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項2】
アクリレート/VAコポリマーとアクリレートコポリマーとの比が、18:1~22:1の範囲である、請求項1に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項3】
アクリレートコポリマーが、組成物全体の0.33重量%~1.2重量%の範囲である、請求項1に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項4】
水中油型エマルジョン又はゲル懸濁液の形態である、請求項1に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項5】
水懸濁液の形態である、請求項1に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項6】
組成物が、噴霧剤として塗布される、請求項5に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項7】
アスコルビン酸、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸レチニル、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル、リン酸アスコルビルマグネシウム、及びアスコルビルグルコシドから選択される少なくとも1種の有効成分をさらに含む、請求項1に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【請求項8】
サリチル酸、パルミチン酸レチニル、ナイアシンアミド、カフェイン、アルファヒドロキシ酸、及びペプチドから選択される少なくとも1種の有効成分をさらに含む、請求項1に記載の化粧用
顔用マスク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーブオン型マスク、ピールオフ型マスク、及び目に見えない噴霧型マスクを含む長時間持続性のフェイスマスクの形態のスキンケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の顔用ピールオフ型マスクはポリビニルピロリドン(PVP)又はポリビニルアルコール(PVA)を含むことが多く、これは特に敏感な皮膚を持つ消費者にとって不快な場合がある。それらはまた除去することが困難でもある。多くのいわゆるリーブオン型マスクの、長期間例えば8時間等にわたり着用することを意図したマスクは、耐移り性ではない。これは、例えば枕への製品の移行が起こり得る終夜処置マスクに当てはまる場合がある。それはまた、美観的に有益で、人前で一日中着用することを意図したマスクにも当てはまる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
同時係属中の出願、US2018-0369119(その全体が本明細書に参照により組み込まれる)において、化粧用に許容可能な基剤又は送達ビヒクル内のアクリレート/VAコポリマー(組成物全体の20~30重量%)及びアクリレートコポリマー(組成物全体の0.5~2.5重量%)の特定の組合せが開示されている。そのような組成物は、可撓性があり約43℃より低い温度において耐水性である高光沢なカラー化粧用組成物として有用であった。組成物は化粧持ちが良く、移行し、にじみ及び剥がれに耐性でありかつ耐油性であり、高光沢で長時間持続性の化粧品として非常に好適である。これらの組成物の1つの独特で有利な特徴は、組成物が使用前及び使用中は親水性であるが、乾燥すると疎水性になることである。これは単一相の水性化粧用組成物にとって稀少である。また、これらの組成物は、ある一定の温度より高い水温でこすり洗いされると容易に除去されるが、その温度より低い水温では除去するのが困難である。これは、2種のポリマーの濃度及び比のさらなる精密化がさらなる用途及び利点をもたらした本発明とは異なる。本明細書に開示されるマスク組成物は、耐移り性及び可撓性であり、つや消し効果又は輝き効果を加え、経表皮水分蒸散量(TEWL)を低減し、有効物質を皮膚に送達するためのビヒクルをもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の実施形態は、アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの組合せを含むスキンケア組成物を提供する。スキンケア組成物は、約5重量%~30重量%のアクリレート/VAコポリマー、及び約0.2重量%~2重量%のアクリレートコポリマーを含む。アクリレート/VAコポリマーとアクリレートコポリマーとの比は、15:1~25:1の範囲である。これらの組成物は単一相であることが多いが、エマルジョンもまた可能性がある。組成物は、クリーム、ローション、ゲル、セラム(serum)又は噴霧型マスクの形態であり得る。マスクは、乾燥すると目に見えない(invisible)場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】TEER皮膚モデルにより測定された、PM2.5に対する実施例7の組成物の効果のグラフである。
【
図2】TEWL皮膚モデルにより測定された、PM2.5に対する実施例7の組成物の効果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
操作時及び比較例を除き、又は別段明記されない限り、材料の量若しくは比、又は反応条件、材料の物理的特性及び/又は使用を示す本明細書に記載のすべての数字は、「約」という語により修正して理解されるべきである。別段指定されない限り、すべての量は、最終組成物の重量パーセントで示される。
【0007】
本明細書を通して「被膜形成剤」等は、例えば被膜形成剤に付随する溶媒が蒸発し、基材中に吸収され、及び/又は基材上に分散した後で、塗布(適用)された基材上に被膜を残すポリマーを指す。
【0008】
「耐移り性」又は「移り防止性」とは、本明細書で使用される場合、別の物質、例えば衣服又は水との接触によって容易に除去されない組成物を指す。耐移り性は、当技術分野で公知の任意の方法によって評価することができる。例えば、組成物は、装着者(それを身に付ける者)の皮膚又は毛髪から他の何らかの基材、例えば、衣服に移行した製品の量に基づいて評価することができる。例えば製品の大部分が装着者の皮膚又は毛髪上に残っていれば、組成物は、耐移り性であり得る。さらに、移行した量は、他の組成物、例えば市販で入手可能な組成物から移行した量と比較することができる。
【0009】
本明細書で使用される場合、「優れた化粧持ち(good wear)」又は「長時間持続性」とは、硬化後に皮膚への接着性を維持する組成物を指す。
【0010】
「可撓性」の組成物は、意図された使用目的で皮膚に塗布された場合に、装着(wear)のある規定された期間、例えば、4時間又は8時間又はそれ以上の間、ひび割れ又は剥がれがない組成物である。組成物が十分に可撓性でない場合、その組成物は「硬い(rigid)」。
【0011】
「単一相」によって、組成物は、不均一な油中水型又は水中油型エマルジョンの形態ではなく、安定した均一な形態であることが意図される。
【0012】
「含む」等は、列挙された要素が明白に記載された要素に限定され得ないことを意味する。
【0013】
本明細書の組成物は、化粧用に許容可能な水性基剤又は送達ビヒクル内にアクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの特定の組合せを含む。多くの水溶性成分は、組成物の基本的性能に悪影響を及ぼすことなく組成物に容易に組み込まれる。本明細書の組成物は、親水性状態で塗布され、疎水性状態まで乾燥され、水及びシアー(shear)で容易に除去されるか、又は水を用いて若しくは水を用いず剥離される。組成物は容易に製造される。
【0014】
アクリレート/VAコポリマー
本発明の第1の主要な成分は、アクリレート/VAコポリマー(INCI名)、C15H26O4であり、エテニルアセテート又は2-エチルヘキシルプロパ-2-エノエート(IUPAC名)、CAS番号25067-02-1としても公知である。詳細な情報に関しては、PubChem化合物データベース、CID=168269を参照されたい。
【0015】
【0016】
化粧品では、この物質は、結合剤、被膜形成剤、接着剤及び/又は毛髪固定剤として機能することが多い。アクリレート/VAコポリマーは、水性化粧品系に導入されると皮膚又は毛髪上に被膜を付与することができる。純粋なアクリレート/VAコポリマー被膜は、約40℃以上の温度の水ですすぐと、被膜が分解され表面から容易に除去することができるが、通常の皮膚温度(すなわち36.5~37.5℃)以下の温度ではその完全性を保持する温度依存性を特徴とする。
【0017】
本明細書の実施形態は、典型的には組成物の総重量の5%~30%のアクリレート/VAコポリマーを含む。アクリレート/VAコポリマーは、例えば、大東化成工業株式会社からのVinysol 2140L、及びVinysol 2140LHとして市販で入手できる。Vinysol 2140L及びVinysol 2140LHの両方とも、アクリレート/VAコポリマーの46.6%水性混合物を含む。したがって、Vinysol 2140L又はVinysol 2140LHを使用する場合は、上記のアクリレート/VAコポリマーの濃度を得るために、Vinysol 2140L及び/又はVinysol 2140LHの濃度は、組成物の総重量の約10.7%~64.4%、例えば15%~60%、例えば20%~55%、例えば25%~50%であるべきである。本発明のマスク製品に関して、広範囲の上端(50%~60%)及び下端(15%~20%)は、求められる用途及び効果に応じて特に有用であることが証明された。
【0018】
Vinysol 2140Lは、pH4.5、粘度2,000mPa-s、ガラス転移温度計算値(Tg)-9℃を有すると報告されているが、被膜は、1,200%の破断伸度及び1.2MPaの破断強度(0.1mmの厚さに延展の場合)を示す。その材料の強度によって、組成物は、薄く塗布されても容易にひび割れ又は剥がれのないリーブオン型化粧品にとって好適となる。しかしながら、比較的高濃度でのプロトタイプの配合は、硬すぎるか又は美観的に不快であり、商業的に有用ではなかった。必要なことは、化粧品系の有利な特性(例えば、有効物質送達の促進、湿潤の場合の親水性、乾燥の場合の疎水性、優れた化粧持ち等)を損なわずに、組成物の可撓性及び塗布の快適さを向上させることであった。
【0019】
アクリレートコポリマー
本明細書の実施形態は、上述のアクリレート/VAコポリマーと、アクリレート/VAコポリマーよりも低いTgを有するアクリレートコポリマーを組み合わせるが、これはアクリレート/VAコポリマーを単独で使用することに関連する高硬度の問題を解決するのに役立つ。総じて、より低いTgは、生じたマスクにより高い可撓性を与える。より低いTgはまた、組成物の粘着性を高め、より長い乾燥時間を有するが、本発明においてはより長い乾燥時間は望ましくあり得る。アクリレート/VAコポリマーは、それ自体が早く乾燥しすぎるため、塗布の時間及びグルーミングを必要とする消費者環境において有用ではない。しかしながら、乾燥するのに時間がかかり過ぎる組成物もまた(例えば、20分以上又は30分以上)、商業的に望ましくない。本明細書の実施形態は、アクリレートコポリマー、C14H22O6であり、エチルプロパ-2-エノエート、メチル2-メチルプロパ-2-エノエート又は2-メチルプロパ-2-エン酸(IUPAC名)、CAS番号25133-97-5としても公知の第2の主成分を利用することによって、好適な乾燥時間及び乾燥組成物における適切な程度の可撓性を提供する。詳細な情報に関しては、PubChem化合物データベースCID=168299を参照されたい。種々のタイプの化粧品配合物において、アクリレートコポリマーは、被膜形成剤、毛髪固定剤、結合剤、及び懸濁剤、増粘剤、帯電防止剤、及び接着剤を含む、多様な用途を有する。本明細書に記載の濃度及び比におけるアクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの組合せは、消費者に好適な乾燥時間を有する一方、粘着性の上昇は、消費者の使用にとって許容可能と考えられる。
【0020】
本明細書の実施形態では、アクリレートコポリマーの有用な濃度は、組成物の総重量に基づいて0.2%~2%、例えば0.33%~1.2%である。アクリレートコポリマーは、例えば、大東化成工業株式会社からのDaitosol 5000ADとして市販で入手可能である。Daitosol 5000ADは、アクリレートコポリマーの50%水性混合物である。したがって、上記のアクリレートコポリマーの濃度を得るために、Daitosol 5000ADの濃度は、組成物の総重量の約0.4%~4%、例えば0.75%~3%、例えば1.0%~2.5%であるべきである。Daitosol 5000ADは、pH5.5~7.5、粘度50~100mPa-s、ガラス転移温度(Tg)約-14℃を有することが報告されている。
【0021】
したがって、本明細書の実施形態は、典型的には組成物の総重量の5%~30%のアクリレート/VAコポリマー、及び組成物の重量の約0.2%~2%のアクリレートコポリマーを含む。さらに、これらの範囲内で、本明細書に記載される組成物中のアクリレート/VAコポリマーとアクリレートコポリマーとの比が、15:1~25:1、好ましくは18:1~22:1の範囲、最も好ましくは20:1である場合、優れた結果が見出された。
【0022】
組成物の形態
本発明の実施形態は、典型的には水懸濁液、ゲル懸濁液又は油中水型エマルジョンであり得る。本発明のすべての組成物は、皮膚に塗布され乾燥させて(例えば5分~20分)、マスクを形成する。
【0023】
ゲル懸濁液及びエマルジョンは、典型的にはセラム及びローションである。マスクを取り外したい場合は、マスクは1枚又は数枚の連続シートで皮膚から取り外すことができる。この方法では、水の適用が助けとなり得る。水の使用により、被膜の完全性を維持しながら皮膚接着が断たれるため、マスクは、皮膚をはがすことなく1枚のシート又はほんの数枚のシートで快適に剥離する。有利には、本明細書のピールオフ型マスクは、ポリビニルピロリドン(PVP)又はポリビニルアルコール(PVA)を含まない水性ピールオフ型マスクである。
【0024】
透明の目に見えない噴霧型マスク
本発明の水懸濁液の実施形態は、ポリマーブレンドの濃度範囲の下端(約10%未満のアクリレート/VAコポリマー)において、乾燥して目に見えないマスクを形成する噴霧型製品として特に好適である。組成物は、可塑剤又は低粘稠化剤の補助を伴わない場合でさえ、十分に剪断可能である。「十分に剪断可能」とは、化粧品及びパーソナルケア産業において一般的であるタイプの噴霧システムにより噴霧することができることを意味する。これらのマスクは非常に薄くかつ軽量であり、セッケン、温水及びシアーで洗い落とすが、必ずしもシート状ではない。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、噴霧剤は、環境的攻撃に対する遮蔽物(シールド)として作用する軽量マスクを提供するのに有用である。皮膚に噴霧した後、乾燥マスクは物理的バリアとして作用し、2.5μm以下の直径を有する微粒子(いわゆるPM2.5)から皮膚を保護することができ、TEWLから皮膚を保護する。これらの効果に関するデータを以下に示す。
【0026】
本発明の他の実施形態では、噴霧剤は、視覚的な真珠光沢の使用を伴うことなく皮膚に明るい輝きを提供するのに有用である。皮膚に噴霧した後、製品は乾燥して、従来の化粧用の真珠光沢材料を使用することなく、光を散乱して自然な輝き効果を与えることができる透明の被膜となる。乾燥製品は透明で非常に澄んでいるため、製品はメークアップの上に塗布され、メークアップを落ち着かせる助けともなりながら、輝きのある仕上がりをもたらすことができる。
【0027】
つや消し効果マスク
他の実施形態では、快適で少なくとも8時間持続し、皮膚に完全な/ぼかした仕上がりを消費者にもたらすことができる製品は、本明細書に記載されるコポリマーブレンドを使用して達成することができる。上記のように、アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの組合せは、本明細書に記載されるように自然に高光沢の仕上がりを提供する。しかしながら、コポリマーブレンドを含有する組成物にポリアクリル酸ナトリウム(例えば、Kobo ProductsからのKobogaurd(登録商標)SPとして市販で入手可能)を添加することにより、本明細書に記載される他の有用な特性に著しく影響を及ぼすことなく、コポリマーブレンドの高光沢特徴を克服し又は消すことを本発明者は発見した。ポリアクリル酸ナトリウムの濃度は、所望される程度のつや消し効果を達成するために、組成物の重量の約0.1%~5.0%に調節されるべきである。ポリアクリル酸ナトリウムの添加により、長時間持続性の製品を依然として提供しながら、つや消し/完全な外観を皮膚に与えるスキンケアゲル処方物が作製される。有利には、つや消し/ぼかし効果を皮膚に与えるために従来から使用されている粉末を添加することなく、皮膚へのつや消し/ぼかし効果を達成することができる。
【0028】
有効物質
本明細書の実施形態は終夜処置製品(オーバーナイトトリートメント)として使用され、有効成分を皮膚に送達することができる。本明細書に記載されるポリマーの組合せを使用して、組成物は、表面処理、分子修飾又はカプセル化の必要性がなくなる。例示的な有効物質には、ナイアシンアミド、カフェイン、ビタミンC及びビタミンC誘導体(アスコルビン酸、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸レチニル、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルグルコシド等)、アルファグルコシルヘスペリジン、並びに任意の他の好適な水溶性有効物質が含まれるが、これらに限定されない。油溶性有効物質、例えばビタミンA(すなわちパルミチン酸レチニル)、及びビタミンE(すなわち酢酸トコフェリル)もまた、有効物質の送達促進のために本明細書の実施形態に含まれ得る。アルファ-ヒドロキシ酸、ベータ-ヒドロキシ酸及びペプチドもまた含まれ得る。
【0029】
[実施例]
以下の実施例では、Vinysol 2140Lはアクリレート/VAコポリマーの46.6%水性混合物である。Daitosol 5000ADはアクリレートコポリマーの50%水性混合物である。
【0030】
[実施例1]
ピールオフ型マスク
【0031】
【表1】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、ゲル懸濁液を形成した。
【0032】
[実施例2]
有効物質を有するフェイスマスク
【0033】
【表2】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、ゲル懸濁液を形成した。
【0034】
[実施例3]
目に見えないスポット処置マスク
【0035】
【表3】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、ゲル懸濁液を形成した。
【0036】
[実施例4]
終夜トーンアップ型マスク
【0037】
【表4】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、ゲル懸濁液を形成した。
【0038】
[実施例5]
アイマスク
【0039】
【表5】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、水中油型エマルジョンを形成した。
【0040】
[実施例6]
つや消しマスク
【0041】
【表6】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、ゲル懸濁液を形成した。
【0042】
[実施例7]
輝き噴霧剤(スプレー)
【0043】
【表7】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、噴霧可能な組成物である水懸濁液を形成した。
【0044】
[実施例8]
試験用の有効物質送達の基剤
【0045】
【表8】
上記の順序を、当業者に公知の手法で合わせて、ゲル懸濁液を形成した。
【0046】
実験データ及び結果
有効物質送達試験
上記の実施例8に示した有効物質送達の基剤を使用して、基剤中で、本明細書に記載されるコポリマーブレンド(例えば、アクリレート/VAコポリマー及びアクリレートコポリマーの組合せ)を用いて及び用いず、3種の親水性有効物質の試験を行った。プラセボ処方物は、コポリマーブレンドが基剤から除去され、水で適量にした点で実施例8と異なった。
【0047】
【0048】
方法
本研究において、異なる親水性値を有する例示的な有効物質を選択した。Pは分配係数であり、Pが小さくなるほど(より負のlog P)、親水性が大きくなることを示す。Strat-M(登録商標)膜を使用して透過試験を実施し、次に、収集した試料を超高速高分離液体クロマトグラフィー(UPLC)により分析した。フランツセルのレセプターチャンバー内に、収集相として5.00mLのインキュベーション培地を加えた。レセプターチャンバーの上部にStrat-M(登録商標)膜を載せた。次に、Strat-M(登録商標)膜の上部にドナーチャンバーを加え、ドナーチャンバーに0.80mLのクリームを加えた。フランツセルを室温下で48時間(例えば、AA2G及びカフェインに対して)又は72時間(例えば、ナイアシンアミド)放置した。その時間の最後に、試料採取ポートから試料溶液として1.00mLの収集相を取り出した。0.45マイクロメートル(μm)のシリンジフィルターを通して試料溶液を濾過し、次に2.0ミリリットル(mL)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)バイアルに入れた。Waters CorporationからのACQUITY H UPLCを使用して、フランツセル研究から収集した試料を分析した。UPLCパラメータを以下の表2に示す。
【0049】
【0050】
結果及び考察
収集相中の有効物質の量を、上述の方法に従ってUPLCにより分析した。データを以下の表3に要約する。
【0051】
【0052】
カフェインの透過率は100%を越え、これは系中にカフェインから分離されなかったいくらかの干渉分子があることを意味する。上に示すように、コポリマーブレンドを含有することにより、Log P値に基づくと非常に親水性であるAA2Gの送達が促進された。ナイアシンアミドは親水性がより低く、コポリマーブレンドはこの有効成分の送達を促進しなかった。コポリマーブレンドの添加により、親水性有効物質の皮膚への送達が促進されると考えられる。
【0053】
被膜完全性試験
実施例6に示す処方物のバリエーションを、アクリレートコポリマーのレベルは一定に保ちながら、アクリレート/VAコポリマーの濃度を変化させて試験を行った。これらを表4に示す。
【0054】
方法
接触角、曲げ力及び接着力を測定することにより、組成物の硬化被膜の完全性を決定した。質感分析器(Texture Technologies Corp.からのTA XT Plusとして入手可能)、及びゴニオメーター(Future Digital Scientificから入手可能な接触角装置)を使用した。接触角は疎水性の尺度である(はっ水性)。接触角が大きくなるほど、被膜の疎水性は大きくなる。曲げ力は乾燥被膜の弾性及び可撓性を表し、装着の快適さに直接影響を及ぼす。接着力は装着の持続時間を表す。これらの試験の結果を表4に示す。
【0055】
【0056】
最良の性能を発揮する処方物は、組成物の総重量により、60%Vinysol 2140L(27.96%アクリレート/VAコポリマー)及び3%Daitosol 5000AD(1.5%アクリレートコポリマー)(18.64:1の比)を有する試料4であった。乾燥すると、この処方物は、最高の曲げ力を実証して快適さを加え、最大の接着力を実証して長時間持続性の最良の選択肢となる。また、この処方物は最も疎水性であり、水分による意図していない劣化に最も耐性があった。次に最良の性能を発揮したのは、30%Vinysol 2140L及び3%Daitosol 5000ADを有する試料3であった。この組成物において、アクリレート/VAコポリマーとアクリレートコポリマーとの比は9.3であり、かつ曲げ力及び接着力の真に著しい低下があったので、この比は本明細書に記載される用途に有用ではないことを示唆している。湿っている場合、すべての試験被膜は、ガラス基材から1枚又は数枚のシートで見事に剥離した。
【0057】
バリア特性試験
実施例7に示す組成物を、微粒子物質(PM2.5)に対する汚染保護及び経上皮水分蒸散量(TEWL)に関して試験を行った。皮膚モデルにおける経表皮電気抵抗(TEER)及びTEWLレベルを48時間にわたり測定し、実験結果をそれぞれ
図1及び
図2に示す。
【0058】
図1では、TEER値が高くなるほど、より効果的なバリアを示している。対照皮膚モデル(試料1)は、実施例7の処方物にもPM2.5にも曝露されなかった。試料2の皮膚モデルは0.1%の2.5PMに48時間曝露され、TEER値は対照試料と比較して有意に低下し、不十分なバリア機能を示している。試料3の皮膚モデルは実施例7の処方物で処理されたが、2.5PMに48時間曝露は行わず、試料4の皮膚モデルは、実施例7の処方物での処理、0.1%の2.5PMに48時間曝露の両方を行った。試料3は、対照と比較してTEER値が減少したが、実験誤差内であった。試料4は、試料3と統計的に同一のTEER値を有し、これは実施例7の処方物がPM2.5に対して高度に効果的なバリアを形成したことを示している。実施例7の処方物は、相対的に低いレベル(7%)のアクリレート/VAコポリマー及び0.375%アクリレートコポリマーを有するので、さらに高い濃度を有する本組成物の実施形態は、2.5PMに対する少なくとも同程度のバリア性能が期待される。
【0059】
図2では、TEWL値が低くなるほど、より効果的なバリアを示している。対照皮膚モデル(試料1)は、実施例7の処方物にもPM2.5にも曝露されなかった。試料2の皮膚モデルは0.1%の2.5PMに48時間曝露され、TEWLは対照試料と比較して有意に増加し、不十分なバリア機能を示している。試料3の皮膚モデルは実施例7の処方物で処理されたが、2.5PMに48時間曝露は行わず、試料4の皮膚モデルは、実施例7の処方物での処理、0.1%の2.5PMに48時間曝露の両方を行った。試料3は、対照と比較してTEWLの増加を示したが、実験誤差内であった。試料4は、試料3と統計的に同一のTEWL値を有し、これは実施例7の処方物がPM2.5に対して高度に効果的なバリアを形成したことを示している。
【0060】
これらの結果は、実施例7の組成物が水分損失(蒸散量)から保護し、かつPM2.5に対するバリア機能の助力となることを示す。
【0061】
上述の本発明の例示的な実施形態は、いくつかの異なる方法で実行され得ることを認識しかつ理解されたい。本明細書で提供される本発明の教示を考慮すると、関連技術分野の当業者は、本発明の他の実装形態を企図することができるであろう。実際に、本発明の例示的な実施形態は、付随する実施例に関連して本明細書に記載されているが、本発明はそれらの正確な実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者は様々な他の変更及び修正を行うことができることが理解されるであろう。
本発明は例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]5重量%~30重量%のアクリレート/VAコポリマー、及び0.2重量%~2重量%のアクリレートコポリマーを含み、アクリレート/VAコポリマーとアクリレートコポリマーとの比が15:1~25:1の範囲である、化粧用マスク組成物。
[実施形態2]アクリレート/VAコポリマーとアクリレートコポリマーとの比が、18:1~22:1の範囲である、実施形態1に記載の化粧用マスク組成物。
[実施形態3]アクリレートコポリマーが、組成物全体の0.33重量%~1.2重量%の範囲である、実施形態1に記載の化粧用マスク組成物。
[実施形態4]水中油型エマルジョン又はゲル懸濁液の形態である、実施形態1に記載の化粧用マスク組成物。
[実施形態5]水懸濁液の形態である、実施形態1に記載の化粧用マスク組成物。
[実施形態6]スキンケア組成物が、噴霧剤として塗布される、実施形態5に記載の化粧用マスク組成物。
[実施形態7]アスコルビン酸、リン酸アスコルビルナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸レチニル、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル、リン酸アスコルビルマグネシウム、及びアスコルビルグルコシドから選択される少なくとも1種の有効成分をさらに含む、実施形態1に記載の化粧用マスク組成物。
[実施形態8]サリチル酸、パルミチン酸レチニル、ナイアシンアミド、カフェイン、アルファヒドロキシ酸、及びペプチドから選択される少なくとも1種の有効成分をさらに含む、実施形態1に記載の化粧用マスク組成物。