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特許7308297放射線重合性組成物及びその硬化層、並びに硬化層を含む光ファイバ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】放射線重合性組成物及びその硬化層、並びに硬化層を含む光ファイバ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20230706BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
C08F290/06
G02B6/44 301A
G02B6/44 301B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021571264
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2021001263
(87)【国際公開番号】W WO2021145433
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020005448
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592109732
【氏名又は名称】日本特殊コーティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】望月 大剛
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓海
(72)【発明者】
【氏名】篠原 宣康
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/138968(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/069656(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/026356(WO,A1)
【文献】特開2018-058712(JP,A)
【文献】特開平08-013156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
G02B 6/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(I):
【化1】
[上式中、Rはビニル基であり、*は結合手である]
の構造を含むウレタンオリゴマー;
(B)(i)無水マレイン酸、
(ii)下記式(II):
【化2】
[上式中、Rは、単結合又は1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、又は下記式(II-1)もしくは下記式(II-2):
【化3】
{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
【化4】
{上式中、R4は、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
のいずれかで表される基である]
で表される化合物、
又は、
(iii)下記式(III):
【化5】
[上式中、Rは、1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基である]
で表される化合物
の1以上の化合物
C)放射線重合開始剤;及び、
(D)エチレン性不飽和基を1個含む、成分(A)以外の化合物;
を含有する、光ファイバ第一次被覆層形成用の放射線重合性組成物。
【請求項2】
ウレタンオリゴマー(A)が、式(I)の構造を下記式(I-1):
【化6】
[上式中、Rはビニル基であり、Xは1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基であり、nは0又は1の整数であり、mは0又は1の整数であり、*は結合手である]
の構造の一部として含む、請求項1に記載の放射線重合性組成物。
【請求項3】
ウレタンオリゴマー(A)が、主鎖の少なくとも一方の末端に式(I)の構造を含む、請求項1又は2に記載の放射線重合性組成物。
【請求項4】
ウレタンオリゴマー(A)が、主鎖の両末端に式(I)の構造を含むウレタンオリゴマーと、主鎖の一方の末端に式(I)の構造を含み他方の末端に1~10の炭素原子を含む脂肪族アルコキシ基を含むウレタンオリゴマーとを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項5】
ウレタンオリゴマー(A)が、2-ビニルフェノキシ基、3-ビニルフェノキシ基、4-ビニルフェノキシ基、3-ビニルベンジルオキシ基、又は4-ビニルベンジルオキシ基の1以上の置換基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項6】
成分(B)が、下記式(II-3):
【化7】
[上式中、Yは下記式:
【化8】
の1以上で表される基である。上式中、*は結合手である]
で表される化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項7】
成分(B)が、下記式:
【化9】
の一つで表される化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項8】
成分(B)が、下記式(II-4):
【化10】
で表される化合物を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項9】
成分(A)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して5~95質量%であり、
成分(B)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して0.1~30質量%であり、
成分(C)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して0.1~10質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項10】
成分(D)が、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N-ビニルカプロラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、又はアクリロイルモルホリンの1以上の化合物を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項11】
成分(D)が、少なくともフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項12】
成分(D)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して3~45質量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の放射線重合性組成物の硬化層。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化層を含む、光ファイバ。
【請求項15】
請求項14に記載の光ファイバを2以上含む、光ファイバ集合体。
【請求項16】
(A)下記式(I):
【化11】
[上式中、Rはビニル基であり、*は結合手である]
の構造を含むウレタンオリゴマー;
(B)(i)無水マレイン酸;
(ii)下記式(II):
【化12】
[上式中、Rは、単結合又は1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、又は下記式(II-1)もしくは下記式(II-2):
【化13】
{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
【化14】
{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
のいずれかで表される基である]
で表される化合物、
又は
(iii)下記式(III):
【化15】
[上式中、Rは、1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基である]
で表される化合物
の1以上の化合物
C)放射線重合開始剤;及び、
(D)エチレン性不飽和基を1個含む、成分(A)以外の化合物;
を含有する放射線重合性組成物の、光ファイバ第一次被覆層形成のための使用。
【請求項17】
ガラスファイバの少なくとも一部の表面に、放射線重合性組成物を配置すること、及び
放射線照射により前記放射線重合性組成物を硬化することを含み、
前記放射線重合性組成物が、
(A)下記式(I):
【化16】
[上式中、Rはビニル基であり、*は結合手である]
の構造を含むウレタンオリゴマー;
(B)(i)無水マレイン酸;
(ii)下記式(II):
【化17】
[上式中、Rは、単結合又は1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、又は下記式(II-1)もしくは下記式(II-2):
【化18】
{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
【化19】
{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
のいずれかで表される基である]
で表される化合物、
又は
(iii)下記式(III):
【化20】
[上式中、Rは、1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基である]
で表される化合物
の1以上の化合物
C)放射線重合開始剤;及び、
(D)エチレン性不飽和基を1個含む、成分(A)以外の化合物;
を含有する、
第一次被覆層を含む光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ被覆材、特に光ファイバのプライマリ材として好適でかつ放射線の照射による硬化速度が速い樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、ガラスを熱溶融紡糸して得たガラスファイバに、保護補強を目的として樹脂を被覆して製造されている。この樹脂被覆としては、ガラスファイバの表面にまず柔軟な第一次の被覆層(以下、「第一次被覆層」ともいう。)を設け、その外側に剛性の高い第二次の被覆層(以下、「第二次被覆層」ともいう。)を設けた構造が知られている。1本のガラスファイバに第一次被覆層及び第二次被覆層を設けた構造を有する光ファイバを通常、光ファイバ素線というが、光ファイバ素線は、第二次被覆層の外側にさらに着色されたインキ層やアップジャケット層を有していてもよい。さらに、これらの樹脂被覆を施された複数の光ファイバ素線を結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルもよく知られている。
光ファイバ素線の第一次の被覆層を形成するための樹脂組成物をプライマリ材、第二次の被覆層を形成するための樹脂組成物をセカンダリ材、複数の光ファイバ素線の結束材料として用いられる樹脂組成物をバンドリング材と称している。また、複数のテープ状光ファイバや光ファイバケーブルをさらに結束材料でまとめる場合もあり、このとき用いられる結束材料もバンドリング材と称している。これらの樹脂被覆方法としては、液状硬化性樹脂組成物を塗布し、熱又は光、特に紫外線により硬化させる方法が広く用いられている。
これらの被覆材のうち、プライマリ材においては、外部からの局所的な圧力によりガラスファイバに曲げ等が生じないようにするため、硬化物が柔軟であることが必要とされている。そのため、第一次被覆層は、通常、1~10MPaのヤング率を有している。
特開2012-111674号公報には、光ファイバ素線のプライマリ材として好適な樹脂組成物として、ウレタンオリゴマー及び単官能アクリルモノマーを含有する放射線硬化性樹脂組成物が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
放射線硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂よりも硬化速度が速いため生産性よく光ファイバを製造することができるが、さらに生産性を向上させるために、硬化速度がより速い放射線硬化性樹脂組成物が望まれている。
【0004】
本発明の目的の一つは、光ファイバのプライマリ材として好適でかつ放射線の照射による硬化速度が従来よりも速い放射線硬化性樹脂組成物を提供することである。
本発明の目的の一つは、該放射線硬化性樹脂組成物の硬化層を提供することである。
本発明の目的の一つは、該硬化層を含む光ファイバ及びその製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の一態様は、
(A)下記式(I):

[上式中、Rはビニル基であり、*は結合手である]
の構造を含むウレタンオリゴマー;
(B)(i)無水マレイン酸、
(ii)下記式(II):

[上式中、Rは、単結合又は1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、又は下記式(II-1)もしくは下記式(II-2):

{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}

{上式中、R4は、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
のいずれかで表される基である]
で表される化合物、
又は
(iii)下記式(III):

[上式中、Rは、1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基である]
で表される化合物
の1以上の化合物;
並びに、
(C)放射線重合開始剤;
を含有する、光ファイバ第一次被覆層形成用の放射線重合性組成物である。
本発明の他の態様は、放射線重合性組成物の硬化層である。
本発明の他の態様は、放射線重合性組成物の硬化層を含む光ファイバ、及びその集合体である。
本発明の他の態様は、ガラスファイバの少なくとも一部の表面に、放射線重合性組成物を配置すること、及び放射線照射により前記放射線重合性組成物を硬化することを含む、第一次被覆層を含む光ファイバの製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0007】
本実施形態の放射線重合性組成物は、(A)所定の構造を含むウレタンオリゴマー、(B)無水マレイン酸及び所定の式で表される化合物から選択される1以上の化合物、及び(C)放射線重合開始剤、を含有する、光ファイバ第一次被覆層形成用の放射線重合性組成物である。
好ましい一実施形態では、本組成物は、成分(D)として、上記成分(A)以外の、エチレン性不飽和基を1個以上有する化合物をさらに含む。
【0008】
本明細書において、「放射線重合性組成物」とは、放射線の照射により重合反応し硬化する組成物と理解される。放射線としては、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、及びγ線等があげられ、特に紫外線が好ましい。
【0009】
「光ファイバ第一次被覆層」とは、ガラスファイバに設けられる被覆層のうちガラスファイバに最も近い位置に配置される被覆層であると理解される。第一次被覆層は、ガラスファイバ表面の少なくとも一部を覆うように設けられていてもよい。「光ファイバ第一次被覆層形成用」とは、光ファイバの第一次被覆層の形成に使用され得ること、又は光ファイバの第一次被覆層を形成するためのものであると理解される。
【0010】
「ウレタンオリゴマー」とは、主鎖の繰返し単位中にウレタン結合(-NHCOO-)を含むオリゴマーと理解される。ウレタン結合は、一般的に、ジオールとジイソシアネートとの反応により形成され得る。使用可能なジオール及びジイソシアネートについては後述する。
【0011】
ウレタンオリゴマー(A)は、下記式(I):

の構造を含む。
上式(I)中、Rはビニル基であり、*は結合手である。
【0012】
「構造を含む」とは、ウレタンオリゴマーがその構造中に上記式(I)の構造を少なくとも一つ含むと理解される。ウレタンオリゴマーは、好ましくは、主鎖の少なくとも一方の末端に式(I)の構造を含む。
【0013】
*は、種々の原子と結合し得る。好ましくは、*は、アルカンジイル基を介して又はアルカンジイル基を介さずに、酸素原子と結合(-O-)する。式(I)の構造は、好ましくは、該酸素原子との結合(-O-)を介して、ウレタンオリゴマーの主鎖(好ましくは、ウレタンオリゴマーを構成するジイソシアネート由来の構成単位)と結合し得る。
アルカンジイル基としては、1~6の炭素原子を含む(炭素数1~6の)アルカンジイル基等が挙げられる。1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基は、後述する式(I-1)で述べるものと同じであるからここでは記載を省略する。
【0014】
ウレタンオリゴマー(A)は、式(I)の構造を、好ましくは、下記式(I-1):

の構造の一部として含む。
上式中、Rはビニル基であり、Xは1~6の炭素原子を含む(炭素数1~6の)アルカンジイル基であり、nは0又は1の整数であり、mは0又は1の整数であり、*は結合手である。*は、ウレタンオリゴマーの主鎖と結合する。*は、好ましくは、ウレタンオリゴマーを構成するジイソシアネート由来の構成単位とウレタン結合する。nは、ウレタンオリゴマーの主鎖との結合しやすさの観点から、好ましくは1である。mは、好ましくは1である。
【0015】
炭素数1~6のアルカンジイル基としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-2,2-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等が挙げられる。アルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。
炭素数1~6のアルカンジイル基としては、さらに好ましくは、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基又はプロパン-2,2-ジイル基であり、特に好ましくは、メタン-1,1-ジイル基である。
【0016】
式(I-1)の構造を満たす置換基としては、2-ビニルフェノキシ基、3-ビニルフェノキシ基、4-ビニルフェノキシ基、3-ビニルベンジルオキシ基、4-ビニルベンジルオキシ基、3-ビニルフェネチルオキシ基、4-ビニルフェネチルオキシ基、3-ビニルフェニル-1-プロポキシ基、3-ビニルフェニル-2-プロポキシ基、4-ビニルフェニル-1-プロポキシ基、4-ビニルフェニル-2-プロポキシ基等を挙げることができる。
【0017】
一実施形態では、ウレタンオリゴマー(A)は、2-ビニルフェノキシ基、3-ビニルフェノキシ基、4-ビニルフェノキシ基、3-ビニルベンジルオキシ基、及び4-ビニルベンジルオキシ基からなる群から選択される1以上の置換基を含むことが好ましく、3-ビニルベンジルオキシ基及び4-ビニルベンジルオキシ基から選択される1以上の置換基を含むことがより好ましい。
【0018】
ウレタンオリゴマー(A)は、主鎖の少なくとも一方の末端に式(I)の構造を有することが好ましく、主鎖の両末端に式(I)の構造を有するウレタンオリゴマーを含むことがより好ましい。主鎖の両末端に式(I)の構造を有するウレタンオリゴマーを含むことで、放射線の照射による硬化速度をより容易に高めることができる。
一実施形態では、ウレタンオリゴマー(A)は、主鎖の両末端に式(I)の構造を有するウレタンオリゴマー(A-1)と、主鎖の一方の末端に式(I)の構造を有し他方の末端に炭素数1~10の脂肪族アルコキシ基を有するウレタンオリゴマー(A-2)とを含む。主鎖の両末端に式(I)の構造を有するウレタンオリゴマー(A-1)と、主鎖の一方の末端に式(I)の構造を有し他方の末端に炭素数1~10の脂肪族アルコキシ基を有するウレタンオリゴマー(A-2)とを含むことにより、放射線の照射による硬化速度をより高めつつ、ヤング率の調整が容易となる。
【0019】
ウレタンオリゴマー(A-2)の他方の末端に有することができる炭素数1~10の脂肪族アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1-プロポキシ基、2-プロポキシ基、1-ブトキシ基、2-ブトキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、2-エチル-1-ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。ウレタンオリゴマー(A-2)は、これらから選択される置換基を含むことができる。ウレタンオリゴマー(A)は、末端構造が異なる複数種類のウレタンオリゴマー(A-2)を含有していてもよい。
これらのうち、メトキシ基、エトキシ基、1-プロポキシ基、2-プロポキシ基、及び2-エチル-1-ヘキシルオキシ基から選択される官能基を含むことがより好ましく、メトキシ基及び2-エチル-1-ヘキシルオキシ基から選択される官能基を含むことがさらに好ましい。
【0020】
ウレタンオリゴマー(A)のウレタン結合を形成するジオールとしては、特に限定されないが、脂肪族ポリエーテルジオールが好ましく、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール及び二種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られる脂肪族ポリエーテルジオールなどが好ましい。
【0021】
上記イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステルなどの環状エーテル類が挙げられる。
【0022】
二種以上の上記イオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオールの具体例としては、例えばテトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン-1-オキシドとエチレンオキシドなどの組み合わせより得られる二元共重合体;テトラヒドロフラン、ブテン-1-オキシド及びエチレンオキシドの組み合わせより得られる三元重合体などを挙げることができる。
【0023】
また、上記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミンなどの環状イミン類;β-プロピオラクトン、グリコール酸ラクチドなどの環状ラクトン酸;あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。
【0024】
上記脂肪族ポリエーテルジオールは、例えばPTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学株式会社製)、PPG400、PPG1000、PPG3000、EXCENOL720、1020、2020(以上、AGC株式会社製)、PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日油株式会社製)、PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土谷化学工業株式会社製)、Z-3001-4、Z-3001-5、PBG2000A、PBG2000B、EO/BO4000、EO/BO2000(以上、第一工業製薬株式会社製)、Acclaim2200、2220、3201、3205、4200、4220、8200、12000(以上、住友バイエルウレタン株式会社製)等の市販品としても入手することができる。
【0025】
これらの脂肪族ポリエーテルジオールのうち、1種又は2種以上の炭素数2~4のイオン重合性環状化合物の開環重合体であって、平均分子量1000~5000のジオールを用いるのが、樹脂液の高速塗布性と被覆材の柔軟性の両立の点から好ましい。このような好ましいジオール化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド及びイソブテンオキシドから選ばれる1種又は2種以上のオキシドの開環重合体であって、平均分子量1000~4000のものが挙げられる。特に平均分子量1000~3000のプロピレンオキシドの開環重合体が好ましい。
【0026】
ウレタンオリゴマー(A)のウレタン結合を形成するジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートとして、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアネートエチル)フマレート、6-イソプロピル-1,3-フェニルジイソシアネート、4-ジフェニルプロパンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネートとして、例えば、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,6-ヘキサンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
このうち経済性及び安定した品質の組成物が得られる点から、芳香族ジイソシアネートがより好ましく、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートが特に好ましい。これらのジイソシアネートは単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0028】
成分(A)の含有量は、放射線重合性組成物全量に対して、好ましくは5~95質量%である。成分(A)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して、5~95質量%である場合、放射線の照射による硬化速度をより容易に向上させることができる。成分(A)の含有量は、放射線の照射による硬化速度をより容易に向上させることができる観点から、より好ましくは10~95質量%であり、さらに好ましくは35~90質量%であり、特に好ましくは50~85質量%である。
【0029】
ウレタンオリゴマー(A)の合成は、ジオール成分とジイソシアネート成分とを反応させた後に、式(I)の構造を含む一価の芳香族アルコール化合物を反応させて行うことが好ましい。このような反応により、好ましくは、両末端が式(I)の構造を含む芳香族アルコール化合物で封止されたウレタンオリゴマーが得られる。
【0030】
一実施形態において、ウレタンオリゴマー(A)の合成は、ジオール成分とジイソシアネート成分とを反応させた後に、式(I)の構造を含む一価の芳香族アルコール化合物を反応させ、さらに炭素数1~10の脂肪族アルコール化合物を反応させて行うことができる。このような反応により、好ましくは、一方の末端が式(I)の構造を含む芳香族アルコール化合物で封止され、他方の末端が炭素数1~10の脂肪族アルコール化合物で封止されたウレタンオリゴマーが得られる。
【0031】
式(I)の構造を含む一価の芳香族アルコール化合物としては、2-ビニルフェノール、3-ビニルフェノール、4-ビニルフェノール、3-ビニルベンジルアルコール、4-ビニルベンジルアルコール、3-ビニルフェネチルアルコール、4-ビニルフェネチルアルコール、3-ビニルフェニル-1-プロパノール、3-ビニルフェニル-2-プロパノール、4-ビニルフェニル-1-プロパノール、4-ビニルフェニル-2-プロパノール等を挙げることができ、これらからなる群から選択される1以上の化合物を用いることができる。
炭素数1~10の脂肪族アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノールなどの1価の脂肪族アルコール等が挙げられる。これらのうち、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、及び2-エチル-1-ヘキサノールから選択される1以上を用いることが好ましく、メタノール及び2-エチル-1-ヘキサノールから選択される1以上を用いることがより好ましい。
【0032】
ウレタンオリゴマー(A)を合成するときのジオール、ジイソシアネート、式(I)の構造を含む一価の芳香族アルコール化合物、及び任意選択的に使用する炭素数1~10の脂肪族アルコール化合物の使用割合は、ポリオールに含まれる水酸基1当量に対してジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1.1~3当量、式(I)の構造を含む一価の芳香族アルコール化合物のヒドロキシ基が0.2~1.5当量、炭素数1~10の脂肪族アルコールのヒドロキシ基が0.01~1当量となるようにするのが好ましい。
【0033】
ウレタンオリゴマー(A)の合成において、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,6,7-トリメチル-1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等から選ばれるウレタン化触媒を、反応物の総量に対して0.01~1質量%を用いるのが好ましい。また、反応温度は、通常5~90℃、特に10~80℃で行うのが好ましい。
【0034】
成分(B)は、
(i)無水マレイン酸、
(ii)下記式(II):

[上式中、Rは、単結合又は1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基であり、
は、水素原子、ヒドロキシ基、又は下記式(II-1)もしくは下記式(II-2):

{上式中、Rは、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}

{上式中、R4は、水素原子、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基であり、*は結合手である}
のいずれかで表される基である]
で表される化合物、
又は
(iii)下記式(III):

[上式中、Rは、1~6の炭素原子を含むアルカンジイル基である]
で表される化合物
の1以上の化合物、を含む。
【0035】
式(II)において、Rを構成することができる1~6の炭素原子を含む(炭素数1~6の)アルカンジイル基としては、メタン-1,1-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-2,2-ジイル基、ペンタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等が挙げられる。アルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~3である。
【0036】
式(II-1)及び式(II-2)において、R及びRを構成することができるアルキル基としては、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチル-ブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。R及びRを構成することができるアルコキシ基としては、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルコキシ基が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基等の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0037】
式(II-1)及び式(II-2)において、*は、いずれも、Rとの結合手である。なお、式(II)中のRが単結合の場合は、式(II-1)及び式(II-2)における*は、式(II)中のNと結合する部位となる。
式(III)において、Rは、炭素数1~6のアルカンジイル基である。炭素数1~6のアルカンジイル基としては、式(II)におけるRを構成することができる炭素数1~6のアルカンジイル基と同じものを挙げることができる。
【0038】
一実施形態において、成分(B)は、下記式(II-3):

[上記中、Yは下記式:

の1以上で表される基である。]
で表される化合物を含む。上記式中、*は結合手である。
【0039】
一実施形態において、成分(B)は、下記式:

の一つで表される化合物を含む。
一実施形態において、成分(B)は、下記式(II-4):

で表される化合物を含む。
【0040】
成分(B)の含有量は、放射線重合性組成物全量に対して、好ましくは0.1~30質量%である。成分(B)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して、0.1~30質量%である場合、放射線の照射による硬化速度をより容易に向上させることができる。成分(B)の含有量は、放射線の照射による硬化速度をより容易に向上させることができる観点から、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは0.5~25質量%であり、さらに好ましくは0.5~20質量%であり、特に好ましくは1~15質量%である。
【0041】
成分(C)は、放射線重合開始剤である。「放射線重合開始剤」とは、放射線の照射によりラジカルを生成する化合物と理解される。放射線重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;IRGACURE184、369、651、500、907、GI1700、CGI1750、CGI1850、CG24-61、DAROCUR1116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製);LUCIRIN TPO(BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0042】
放射線重合開始剤には、任意選択的に、光増感剤を添加することができる。光増感剤としては、例えばトリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル;ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0043】
成分(C)の含有量は、放射線重合性組成物全量に対して、好ましくは0.1~10質量%である。成分(C)の含有量が、放射線重合性組成物全量に対して、0.1~10質量%である場合、放射線の照射による硬化を効率的に開始させることができる。成分(C)の含有量は、放射線の照射による硬化を効率的に開始させることができる観点から、より好ましくは0.1~7質量%であり、さらに好ましくは0.3~7質量%である。
【0044】
好ましい一実施形態において、樹脂組成物は、(D)エチレン性不飽和基を1個以上含む、上記成分(A)以外の化合物をさらに含むことができる。成分(D)を含む樹脂組成物は、硬化物のヤング率を光ファイバのプライマリ材(第一次被覆層形成材)として好適な範囲内に調整することが容易である。
【0045】
成分(D)としては、例えば単官能アクリルモノマーが挙げられる。単官能アクリルモノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル基含有ラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造含有(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等が挙げられる。さらに、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0046】
これらの成分(D)の中では、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N-ビニルカプロラクタム、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びアクリロイルモルホリンから選択される1以上の化合物を含むのが、硬化物のヤング率の観点から好ましい。
【0047】
成分(D)の市販品として、アロニックスM-111、M-113、M-114、M-117(以上、東亞合成株式会社製);KAYARAD、TC110S、R629、R644(以上、日本化薬株式会社製);IBXA、ビスコート3700(大阪有機化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0048】
成分(D)の含有量は、好ましくは、放射線重合性組成物全量に対して3~45質量%であり、より好ましくは5~30質量%である。
【0049】
一実施形態において、放射線硬化性樹脂組成物に、成分(E)として、エチレン性不飽和基を2個以上含む化合物を配合することができる。成分(E)は、典型的にはエチレン性不飽和基を2個以上含むモノマーである。成分(E)の具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体のジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。また、市販品としては、例えばユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学株式会社製);ビスコート700(大阪有機化学工業株式会社製);KAYARAD R-604、DPCA-20、-30、-60、-10、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬株式会社製);アロニックスM-210、M-215、M-315、M-325(以上、東亞合成株式会社製)等が挙げられる。
【0050】
成分(E)の含有量は、硬化物のヤング率を光ファイバのプライマリ材(第一次被覆層形成材)として好適な範囲内に調整することが容易である観点から、樹脂組成物全量に対して、好ましくは2質量%以下(0~2質量%)でり、より好ましくは1.5質量%以下(0~1.5質量%)である。
【0051】
一実施形態において、発明の効果を阻害しない範囲内で、放射線硬化性樹脂組成物に、シランカップリング剤(F)を配合することもできる。成分(F)としては、特に限定されず、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。また、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド等を用いることもできる。その市販品としては、SH6062、SZ6030(以上、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)、KBE903、603、403(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、被覆とガラスとの密着力の観点から、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0052】
シランカップリング剤(F)の含有量は、放射線重合性組成物全量に対して、硬化物とガラスファイバとの密着力の維持の点から好ましくは0.01~2質量%であり、より好ましくは0.1~1.5質量%であり、特に好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0053】
一実施形態において、上記成分以外に各種添加剤、例えば酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤、塗面改良剤等を必要に応じて配合することができる。
【0054】
酸化防止剤としては、例えばIRGANOX1010、1035、1076、1222(以上、BASFジャパン株式会社製)、ANTIGENE P、3C、Sumilizer GA-80、GP(住友化学工業株式会社製)等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えばTINUVIN P、234、320、326、327、328、329、213(以上、BASFジャパン株式会社製)、Seesorb102、103、501、202、712、704(以上、シプロ化成株式会社製)等が挙げられる。光安定剤としては、例えばTINUVIN 292、144、622LD、サノールLS-770、765(以上、BASFジャパン株式会社製)、TM-061(住友化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0055】
また、界面活性剤としては、特に限定されないが、脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が、光ファイバ素線を温水に浸漬した場合の欠損発生を効果的に抑制するため好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビトール脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤が特に好ましい。
【0056】
一実施形態において、発明の効果を阻害しない範囲内で、放射線硬化性樹脂組成物に、任意選択的に他のオリゴマー、ポリマー、その他の添加剤等を配合することができる。
【0057】
他のオリゴマー、ポリマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ基を含むシロキサンポリマー、グリシジルメタアクリレート等が挙げられる。
【0058】
放射線硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の攪拌機付き反応容器で溶融ブレンドすることにより行うことができる。
【0059】
放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、ハンドリング性、塗布性の点から25℃において好ましくは0.1~10Pa・sであり、より好ましくは1~8Pa・sである。
【0060】
放射線硬化性樹脂組成物は、従来の組成物よりも放射線の照射による硬化速度を向上させることができる。放射線硬化性樹脂組成物の硬化速度は、ヤング率の上昇速度を指標として評価することができる。
一実施形態では、放射線硬化性樹脂組成物の硬化速度は、25℃において放射線をエネルギー量1.00J/cmで照射して硬化させた試験用フィルムのヤング率に対する、エネルギー量0.02J/cmで硬化させた試験用フィルムのヤング率の割合、又は、25℃において放射線のエネルギー量1.00J/cmで硬化させた試験用フィルムのヤング率に対する、エネルギー量0.03J/cmで硬化させた試験用フィルムのヤング率の割合で評価することができる。
【0061】
すなわち、放射線硬化性樹脂組成物の硬化速度は、以下の式(A),(B)のいずれか又は両方から評価することができる。
硬化速度(%)=Y0.02/Y1.00 (A)
硬化速度(%)=Y0.03/Y1.00 (B)
上記式中、Y0.02は、25℃において放射線をエネルギー量0.02J/cmで照射して硬化させたフィルムのヤング率であり、Y0.03は、25℃において放射線をエネルギー量0.03J/cmで照射して硬化させたフィルムのヤング率であり、Y1.00は、25℃において放射線をエネルギー量1.00J/cmで照射して硬化させたフィルムのヤング率である。
【0062】
放射線硬化性樹脂組成物の硬化速度は、上記式(A)で評価される硬化速度が、好ましくは0.45以上である。式(A)で評価される硬化速度が0.45以上である場合、従来よりも、さらに生産性よく光ファイバの第一次被覆層を形成できる。式(A)で評価される硬化速度は、より好ましくは0.50以上であり、さらに好ましくは0.60以上である。
【0063】
放射線硬化性樹脂組成物の硬化速度は、上記式(B)で評価される硬化速度が、好ましくは0.60以上である。式(B)で評価される硬化速度が0.60以上である場合、従来よりも、さらに生産性よく光ファイバの第一次被覆層を形成できる。式(B)で評価される硬化速度は、より好ましくは0.65以上であり、さらに好ましくは0.70以上である。
【0064】
理論的に限定することを意図しないが、成分(A)は従来の樹脂組成物の構成成分よりも反応速度が遅いと考えられている。しかし、非限定的な実施例において、成分(A)~(C)を含む放射線硬化性樹脂組成物は、驚くべきことに、反応速度に関わらず放射線の照射による硬化速度が高められた。理論的に限定することを意図しないが、式(I)の構造を含む成分(A)と成分(B)とを組み合わせて用いることにより架橋による網目構造を従来よりも早く構成できると考えられる。
【0065】
上記の放射線硬化性樹脂組成物は、従来の樹脂組成物よりも放射線の照射による硬化速度が速くかつ柔軟性を有する硬化物を形成することができるので、光ファイバ第一次被覆層を形成するためのプライマリ材として好適に使用することができる。放射線硬化性樹脂組成物を含むプライマリ材は、放射線の照射による硬化速度が速いので生産性よく光ファイバを製造することができる。
【0066】
放射線硬化性樹脂組成物の硬化層は、光ファイバの第一次被覆層として好適な低いヤング率を有している。放射線硬化性樹脂組成物の硬化物のヤング率は、光ファイバの第一次被覆層として好ましく用いることができる観点から、好ましくは25℃において0.1~0.9MPaである。放射線硬化性樹脂組成物の硬化層のヤング率が25℃において0.1~0.9MPaである場合、光ファイバに局所的に圧力がかかった場合にガラスファイバの曲げが生じる、いわゆるマイクロベンディングを防ぐことができる。放射線硬化性樹脂組成物の硬化層のヤング率は、より好ましくは0.2~0.9MPaであり、さらに好ましくは0.3~0.85MPaである。
【0067】
放射線硬化性樹脂組成物の硬化層を含む光ファイバは、ガラスファイバの表面に第一次被覆層として放射線硬化性樹脂組成物の硬化層が設けられている。光ファイバは、第一次被覆層の外側に接する、ヤング率が1,000MPa以上、好ましくは1,000~2,000MPaである第二次被覆層を含むことが好ましい。ガラスファイバの表面に第一次被覆層及び第二被覆層がこの順で設けられているものは、光ファイバ素線として用いることができる。
【0068】
光ファイバの製造方法は、ガラスファイバの少なくとも一部の表面に、放射線重合性組成物を配置すること、及び放射線照射により前記放射線重合性組成物を硬化することを含み、放射線重合性組成物が上記した放射線重合性組成物を含有する。
【0069】
ガラスファイバの少なくとも一部の表面に放射線重合性組成物を配置する方法は、限定されず、従来公知の方法により、ガラスファイバの表面に放射線重合性組成物を塗布する、ガラスファイバを放射線重合性組成物中に浸漬する等により行うことができる。
【0070】
放射線照射により前記放射線重合性組成物を硬化する方法は、限定されず、赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、及びγ線等から選択される1以上の放射線を放射線重合性組成物に照射する。
【0071】
光ファイバの製造は、一般的には、溶融した石英母材を熱溶融して線引きしつつ、プライマリ材およびセカンダリ材を塗布し、放射線硬化して第一次被覆層及び第二次被覆層を形成することにより製造される。
光ファイバ集合体は、上記した放射線硬化性樹脂組成物の硬化層を含む光ファイバを2以上含む集合体であり、光ファイバを結束材料で固めたテープ状光ファイバや光ファイバケーブルとすることができる。
【実施例
【0072】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0073】
[ウレタンオリゴマーの合成]
(合成例1)ウレタンオリゴマー[VBA-TDI-(PPG3000-TDI)-VBA]の合成
攪拌機付き反応容器に、数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(AGC株式会社製「EXENOL 3020」)を886.98g、2,4-トリレンジイソシアネートを74.35g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.24gを仕込んだ。混合物を撹拌しながら液温度が40℃になるまで加熱した。なお、ポリプロピレングリコール対2,4-トリレンジイソシアネートのモル比は2:3である。ジブチルスズジラウレート0.27gを添加した後、混合物を撹拌しながら15分で55℃になるまでゆっくり加熱した。次いで混合物を60℃で30分撹拌し反応させた。その後、ビニルベンジルアルコール(東レ・ファインケミカル株式会社製、3-ビニルベンジルアルコールと4-ビニルベンジルアルコールとが半々の混合物)を38.16g添加した。混合物を撹拌しながら70℃で2時間反応させた。得られたウレタンオリゴマーは、下記式(1)で表される構造を有する。
VBA-TDI-(PPG3000-TDI)2.0-VBA (1)
[式中、PPG3000は、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコールに由来する構造単位であり、TDIは、2,4-トリレンジイソシアネートに由来する構造単位であり、VBAは、ビニルベンジルアルコールに由来する構造単位である。結合手「-」は、全てウレタン結合である。]
【0074】
(比較合成例1)ウレタンオリゴマー[HEA-TDI-(PPG3000-TDI)-HEA]の合成
ビニルベンジルアルコールに替えて2-ヒドロキシエチルアクリレートを33.22g用いた以外は、合成例1と同じ方法でウレタンオリゴマーを得た。なお、繰り返し数nの値に応じた原料添加量、及びポリプロピレングリコール対2,4-トリレンジイソシアネートのモル比は表1に示される。得られたウレタンオリゴマーは、下記式(2)で表される構造を有する。
HEA-TDI-(PPG3000-TDI)2.0-HEA (2)
[式中、PPG3000は、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコールに由来する構造単位であり、TDIは、2,4-トリレンジイソシアネートに由来する構造単位であり、HEAは、2-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造単位である。結合手「-」は、全てウレタン結合である。]
【0075】
(合成例2)ウレタンオリゴマー[VBA-TDI-(PPG3000-TDI)-エチルヘキサノール]の合成
攪拌機付き反応容器に、数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール(AGC株式会社製「EXENOL 3020」)を887.47g、2,4-トリレンジイソシアネートを74.39g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.24gを仕込んだ。混合物を撹拌しながら液温度が40℃になるまで加熱した。なお、ポリプロピレングリコール対2,4-トリレンジイソシアネートのモル比は2:3である。ジブチルスズジラウレート0.27gを添加した後、混合物を撹拌しながら15分で55℃になるまでゆっくり加熱した。次いで混合物を60℃で30分撹拌し反応させた。その後、ビニルベンジルアルコール(東レ・ファインケミカル株式会社製、3-ビニルベンジルアルコールと4-ビニルベンジルアルコールとが半々の混合物)を19.09g添加した。混合物を撹拌しながら70℃で2時間反応させた。さらに2-エチルヘキサノール18.54gを添加し70℃で2時間反応させた。得られたウレタンオリゴマーは、下記式(3)で表される構造を有する。
VBA-TDI-(PPG3000-TDI)2.0-エチルヘキサノール (3)
[式中、PPG3000は、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコールに由来する構造単位であり、TDIは、2,4-トリレンジイソシアネートに由来する構造単位であり、VBAは、ビニルベンジルアルコールに由来する構造単位であり、エチルヘキサノールは、2-エチルヘキサノールに由来する構造単位である。結合手「-」は、全てウレタン結合である。]
【0076】
(合成例3)ウレタンオリゴマー[VBA-TDI-(PPG3000-TDI)-メタノール]の合成
2-エチルヘキサノールに替えてメタノール4.63gを用いた以外は、合成例2と同じ方法でウレタンオリゴマーを得た。なお、繰り返し数nの値に応じた原料添加量、及びポリプロピレングリコール対2,4-トリレンジイソシアネートのモル比は表1に示される。得られたウレタンオリゴマーは、下記式(4)で表される構造を有する。
VBA-TDI-(PPG3000-TDI)2.0-メタノール (4)
[式中、PPG3000は、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコールに由来する構造単位であり、TDIは、2,4-トリレンジイソシアネートに由来する構造単位であり、VBAは、ビニルベンジルアルコールに由来する構造単位であり、メタノールは、メタノールに由来する構造単位である。結合手「-」は、全てウレタン結合である。]
【0077】
(比較合成例2)ウレタンオリゴマー[HEA-TDI-(PPG3000-TDI)-エチルヘキサノール]の合成
ビニルベンジルアルコールに替えて2-ヒドロキシエチルアクリレートを16.58g用いた以外は、合成例2と同じ方法でウレタンオリゴマーを得た。なお、繰り返し数nの値に応じた原料添加量、及びポリプロピレングリコール対2,4-トリレンジイソシアネートのモル比は表1に示される。得られたウレタンオリゴマーは、下記式(5)で表される構造を有する。
HEA-TDI-(PPG3000-TDI)2.0-エチルヘキサノール (5)
[式中、PPG3000は、数平均分子量が3000のポリプロピレングリコールに由来する構造単位であり、TDIは、2,4-トリレンジイソシアネートに由来する構造単位であり、HEAは、2-ヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造単位である。結合手「-」は、全てウレタン結合である。]
【0078】
【表1】
【0079】
[放射線重合性組成物の製造]
放射線重合性組成物の製造に用いた材料のうちウレタンオリゴマー以外の材料は以下のものを用いた。
成分(B)
MA:無水マレイン酸
CHMI:N-シクロへキシルマレイミド
PMI:N-フェニルマレイミド
成分(C)
TPO-X:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF社製ルシリンTPO-X)
成分(D)
2-フェノキシエチルアクリレート
【0080】
(実施例1~9、比較例1~6)
攪拌機付き反応容器で構成成分を60℃で30分間、溶融ブレンドすることによって、実施例及び比較例の樹脂組成物を得た。各樹脂組成物の組成は表2に示される。
【0081】
[測定及び評価]
(ヤング率)
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の硬化後のヤング率を測定した。354μm厚のアプリケーターバーを用いてガラス板上に樹脂組成物を塗布し、これを空気中で、1.00J/cmのエネルギー量となるように、光強度200mW/cm、ベルトスピード3.3m/min、紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルム(1)を得た。紫外線照射はメタルハライドランプ(オーク製作所製)を用いた。光強度およびエネルギー量は、工業用UVチェッカーUVPF-A1:受光部PD-365(アイグラフィック社製)を用いて測定し、前記のエネルギー量となるようにベルトスピードを前記の値に決定した。
同様にして、0.02J/cmのエネルギー量となるように、光強度150mW/cm、ベルトスピード11.0m/min、紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルム(2)を得た。
さらに、0.03J/cmのエネルギー量となるように、光強度150mW/cm、ベルトスピード7.3m/min、紫外線を照射して硬化させ、試験用フィルム(3)を得た。
この3種類の硬化フィルムから、それぞれ、幅6mm、長さ25mmとなるように短冊状サンプルを作成した。各短冊状サンプルについて、温度23℃、湿度50%の条件下で引張り試験機5542(INSTRON社製)を用い、JIS K7127に準拠して引張試験を行った。引張速度は1mm/minで、2.5%歪みでの抗張力からヤング率を求めた。結果は表2に示される。
【0082】
(硬化速度)
試験用フィルム(2)のヤング率と試験用フィルム(1)のヤング率との比を下記式より算出して、組成物の硬化速度を評価した。結果は表2に示される。
硬化速度(%)=Y0.02/Y1.00
[上記式中、Y0.02は、0.02J/cmのエネルギー量となるように、光強度150mW/cm、ベルトスピード11.0m/minで紫外線を照射して硬化させたフィルムのヤング率であり、Y1.00は、1.00J/cmのエネルギー量となるように、光強度200mW/cm、ベルトスピード3.3m/minで紫外線を照射して硬化させたフィルムのヤング率である。]
【0083】
同様に、試験用フィルム(3)のヤング率と試験用フィルム(1)のヤング率との比を下記式より算出して、組成物の硬化速度を評価した。
硬化速度(%)=Y0.03/Y1.00
[上記式中、Y0.03は、0.03J/cmのエネルギー量となるように、光強度150mW/cm、ベルトスピード7.3m/minで紫外線を照射して硬化させたフィルムのヤング率であり、Y1.00は、1.00J/cmのエネルギー量となるように、光強度200mW/cm、ベルトスピード3.3m/minで紫外線を照射して硬化させたフィルムのヤング率である。]
【表2】
【0084】
表2は、実施例の樹脂組成物が、光ファイバのプライマリ材として好適なヤング率を有するとともに、従来の樹脂組成物よりも放射線の照射による硬化速度が速いことを示している。