(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、学習済みモデル生成装置、検査用プログラム、および学習済みモデル生成用プログラム。
(51)【国際特許分類】
G01R 27/02 20060101AFI20230706BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
G01R27/02 R
G01R35/00 J
(21)【出願番号】P 2022018170
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2023-01-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100176371
【氏名又は名称】笹田 健
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌史
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-86460(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147722(WO,A1)
【文献】特開2017-96733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00
G01R 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値とを取得するデータ取得部と、
入力した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値を算出する推定部と、を備え
、
前記学習済みモデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第1モデルと、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2モデルとの和によって表される
検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記第3測定値の推定値に応じて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する補正処理を行う補正部を更に備える
検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において
、
前記補正部は、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第1モデルにしたがって前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分を算出するとともに、前記補正処理として、前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分に基づいて前記第3測定値を補正する
検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において
、
前記第1モデルおよび前記第2モデルは、前記第1測定値および前記第2測定値に前記第3測定値を対応付けた一対のデータ対を機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含む
検査装置。
【請求項5】
請求項
2乃至4の何れか一項に記載の検査装置において
、
前記補正部は、前記推定部によって算出した前記第3測定値の推定値と前記データ取得部によって取得した前記第3測定値との誤差を算出し、前記誤差が閾値より小さい場合に、前記補正処理を行う
検査装置。
【請求項6】
4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値とを取得するデータ取得部と、
前記第1測定値および前記第2測定値と前記第3測定値との対応関係を示す第1モデルを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記第1モデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値を算出する推定部と、
前記推定部によって算出した前記第3測定値の推定値と前記データ取得部によって取得した前記第3測定値との誤差を算出し、前記誤差が閾値より小さい場合に、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する補正処理を行う補正部と、を備える
検査装置。
【請求項7】
請求項6に記載の検査装置において、
前記第1モデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2モデルと、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第3モデルとを含み、
前記補正部は、前記補正処理として、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第2モデルにしたがって前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分を算出するとともに当該2端子法による測定系に起因する抵抗成分に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する
検査装置。
【請求項8】
4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値、および2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値に、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値を対応付けた学習用測定データを取得する学習用測定データ取得部と、
前記学習用測定データを機械学習することにより、前記第1測定値および前記第2測定値を含む入力データに基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成部と、を備え
、
前記学習済みモデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第1回帰モデルと、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2回帰モデルとの和によって表される
学習済みモデル生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の学習済みモデル生成装置において
、
前記学習済みモデル生成部は、前記学習用測定データを機械学習することにより、前記第1回帰モデルおよび前記第2回帰モデルの学習済みパラメータを調整する
学習済みモデル生成装置。
【請求項10】
4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値とを取得する第1ステップと、
入力した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を推定するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルに基づいて、前記第1ステップによって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値を算出する第2ステップと、
前記第3測定値の推定値に応じて、前記第1ステップにおいて取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する第3ステップと、を含
み、
前記学習済みモデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第1モデルと、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2モデルとの和によって表される
検査方法。
【請求項11】
4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値とを取得する第1ステップと、
前記第1測定値および前記第2測定値と前記第3測定値との対応関係を示す第1モデルに基づいて、前記第1ステップにおいて取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値を算出する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて算出した前記第3測定値の推定値と前記第1ステップにおいて取得した前記第3測定値との誤差を算出する第3ステップと、
前記誤差が閾値より小さい場合に、前記第1ステップにおいて取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する第4ステップと、
前記誤差が前記閾値より大きい場合に、前記第1ステップにおいて取得した前記第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する第5ステップと、を含む
検査方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項10または11に記載の検査方法における各ステップを実行させる
検査用プログラム。
【請求項13】
4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値、および2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値に、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値を対応付けた学習用測定データを取得する第1ステップと、
前記第1ステップにおいて取得した前記学習用測定データを機械学習することにより、前記第1測定値および前記第2測定値を含む入力データに基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを生成する第2ステップと、
を含
み、
前記学習済みモデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第1モデルと、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2モデルとの和によって表される
学習済みモデル生成方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項13に記載の学習済みモデル生成方法における各ステップを実行させる
学習済みモデル生成用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査方法、学習済みモデル生成装置、検査用プログラム、および学習済みモデル生成用プログラムに関し、例えば、インダクタ素子を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップインダクタ等の電子部品の電気的特性を測定し、測定結果に基づいて電子部品の良否の判定を行う検査装置が知られている。例えば、特許文献1には、検査対象のインダクタ素子の交流抵抗およびインダクタンスを測定するとともに、それらの測定値を用いてQ値を算出し、算出したQ値に基づいてインダクタ素子の良否を判定する検査装置が開示されている。
【0003】
特許文献1には、インダクタ素子の交流抵抗を測定する手法として、2端子法によって測定した交流抵抗の測定値から、2端子法によって測定する際に使用した測定用プローブの接触抵抗の推定値を減算することによって交流抵抗を算出することが記載されている。また、特許文献1には、4端子法によって測定した直流抵抗の測定値から2端子法によって測定した直流抵抗の測定値を減算することによって接触抵抗の推定値を算出し、接触抵抗の推定値に0以上1以下の係数を乗算した値を用いて交流抵抗の測定値を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された検査装置は、インダクタ素子における直列抵抗と交流抵抗との関係が線形であることを前提に交流抵抗の測定値を補正している。しかしながら、実際のインダクタ素子の直列抵抗と交流抵抗との関係は不明であり、例えば、その関係が非線形であった場合には、交流抵抗の測定値の補正が適切に行われない可能性がある。また、特許文献1に開示された検査装置は、交流抵抗の過補正を回避するために、接触抵抗の推定値に係数を乗算した値を用いて交流抵抗の測定値を補正しているが、その係数が適切でない場合、交流抵抗の補正が適切に行われない可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、電子部品の検査の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係る検査装置は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値とを取得するデータ取得部と、入力した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデルを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値を算出する推定部と、前記第3測定値の推定値に応じて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する補正処理を行う補正部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る検査装置によれば、電子部品の検査の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る学習済みモデル生成装置および検査装置を備えた測定システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態に係る検査システムにおける学習済みモデル生成装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る学習済みモデル生成装置による学習済みモデルの生成の流れを示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る検査装置におけるデータ処理制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る検査装置2による検査の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る検査装置(2)は、4端子法によって測定した測定対象物(DUT)の直流抵抗の第1測定値(Rdc4)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値(Rdc2)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値(Rs)とを取得するデータ取得部(21)と、入力した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル(35)を記憶する記憶部(22)と、前記記憶部に記憶された前記学習済みモデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値(Rse)を算出する推定部(23)と、を備えることを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載の検査装置において、前記第3測定値の推定値に応じて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する補正処理を行う補正部(24)を更に備えてもよい。
【0013】
〔3〕上記〔2〕に記載の検査装置において、前記学習済みモデルは、2端子法による測定系に起因する抵抗成分を表す第1モデル(g(Rdc4,Rdc2))と、前記測定対象物に起因する抵抗成分を表す第2モデル(h(Rdc4))とを含み、前記補正部は、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第1モデルにしたがって前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分(Rc)を算出するとともに、前記補正処理として、前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分に基づいて前記第3測定値を補正してもよい。
【0014】
〔4〕上記〔3〕に記載の検査装置において、前記第1モデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする回帰モデルであり、前記第2モデルは、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする回帰モデルであり、前記第1モデルおよび前記第2モデルは、前記第1測定値および前記第2測定値に前記第3測定値を対応付けた学習用測定データ(34_1~34_n)を機械学習することによって調整された学習済みパラメータを含んでいてもよい。
【0015】
〔5〕上記〔2〕乃至〔4〕の何れかに記載の検査装置において、前記補正部は、前記推定部によって算出した前記第3測定値の推定値と前記データ取得部によって取得した前記第3測定値との誤差(|Rse-Rs|)を算出し、前記誤差が閾値(Rth)より小さい場合に、前記補正処理を行ってもよい。
【0016】
〔6〕本発明の代表的な別の実施の形態に係る検査装置(2)は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値(Rdc4)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値(Rdc2)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値(Rs)とを取得するデータ取得部(21)と、前記第1測定値および前記第2測定値と前記第3測定値との対応関係を示す第1モデル(35)を記憶する記憶部(22)と、前記記憶部に記憶された前記第1モデルに基づいて、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値(Rse)を算出する推定部(23)と、前記推定部によって算出した前記第3測定値の推定値と前記データ取得部によって取得した前記第3測定値との誤差(|Rse-Rs|)を算出し、前記誤差が閾値(Rth)より小さい場合に、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する補正処理を行う補正部(24)と、を備えることを特徴とする。
【0017】
〔7〕上記〔6〕に記載の検査装置において、前記第1モデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2モデルと、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第3モデルとを含み、前記補正部は、前記補正処理として、前記データ取得部によって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第2モデルにしたがって前記2端子法による測定系に起因する抵抗成分を算出するとともに当該2端子法による測定系に起因する抵抗成分に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力してもよい。
【0018】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成装置(3)は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値(Rdc4)、および2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値(Rdc2)に、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値(Rs)を対応付けた学習用測定データ(34_1~34_n)を取得する学習用測定データ取得部(31)と、前記学習用測定データを機械学習することにより、前記第1測定値および前記第2測定値を含む入力データに基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル(35)を生成する学習済みモデル生成部(32)と、を備えることを特徴とする。
【0019】
〔9〕上記〔8〕に記載の学習済みモデル生成装置において、前記学習済みモデルは、前記第1測定値と前記第2測定値とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第1回帰モデル(g(Rdc4,Rdc2))と、前記第1測定値を説明変数とし、前記測定対象物に起因する抵抗成分の値を目的変数とする第2回帰モデル(h(Rdc4))とを含み、前記学習済みモデル生成部は、前記学習用測定データを機械学習することにより、前記第1回帰モデルおよび前記第2回帰モデルの学習済みパラメータを調整してもよい。
【0020】
〔10〕本発明の代表的な実施の形態に係る検査方法は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値(Rdc4)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値(Rdc2)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値(Rs)とを取得する第1ステップ(S11~S14)と、入力した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を推定するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル(35)に基づいて、前記第1ステップによって取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値(Rse)を算出する第2ステップ(S15)と、前記第3測定値の推定値に応じて、前記第1ステップにおいて取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値(Rsr)として出力する第3ステップ(S17,S18)と、を含むことを特徴とする。
【0021】
〔11〕本発明の代表的な別の実施の形態に係る検査方法は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値(Rdc4)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値(Rdc2)と、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値(Rs)とを取得する第1ステップ(S11~S14)と、前記第1測定値および前記第2測定値と前記第3測定値との対応関係を示す第1モデル(35)に基づいて、前記第1ステップにおいて取得した前記第1測定値および前記第2測定値に対応する前記第3測定値の推定値(Rse)を算出する第2ステップ(S15)と、前記第2ステップにおいて算出した前記第3測定値の推定値と前記第1ステップにおいて取得した前記第3測定値との誤差(|Rse-Rs|)を算出する第3ステップ(S16)と、前記誤差が閾値(Rth)より小さい場合に、前記第1ステップにおいて取得した前記第1測定値および前記第2測定値に基づいて前記第3測定値を補正し、補正した第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する第4ステップ(S17,S18)と、前記誤差が前記閾値より大きい場合に、前記第1ステップにおいて取得した前記第3測定値を前記測定対象物の交流抵抗の値として出力する第5ステップ(S19)と、を含むことを特徴とする。
【0022】
〔12〕本発明の代表的な実施の形態に係る検査用プログラムは、コンピュータに、上記〔10〕または〔11〕に記載の検査方法における各ステップを実行させることを特徴する。
【0023】
〔13〕本発明の代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成方法は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の第1測定値(Rdc4)、および2端子法によって測定した前記測定対象物の直流抵抗の第2測定値(Rdc2)に、2端子法によって測定した前記測定対象物の交流抵抗の第3測定値(Rs)を対応付けた学習用測定データ(34_1~34_n)を取得する第1ステップ(S1~S2)と、前記第1ステップにおいて取得した前記学習用測定データを機械学習することにより、前記第1測定値および前記第2測定値を含む入力データに基づいて前記第3測定値を算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル(35)を生成する第2ステップ(S3)と、を含むことを特徴とする。
【0024】
〔14〕本発明の代表的な実施の形態に係る学習済みモデル生成用プログラムは、コンピュータに、上記〔13〕に記載の学習済みモデル生成方法における各ステップを実行させることを特徴とする。
【0025】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0026】
図1は、実施の形態に係る学習済みモデル生成装置3および検査装置2を備えた検査システム1の構成を示す図である。
【0027】
図1に示す検査システム1は、検査対象物(以下、「DUT」とも称する。)の良否を検査するシステムである。
図1に示すように、検査システム1は、DUTの複数の測定結果に基づく学習用測定データを機械学習によって学習して学習済みモデルを生成する学習済みモデル生成装置3と、生成した学習済みモデルを用いてDUTの検査を行う検査装置2とを備えている。
【0028】
検査装置2は、DUTの電気的特性を測定し、その測定結果に基づいてDUTの良否を検査する装置である。例えば、検査装置2は、小型の電子部品(チップ部品)の良否を検査し、良品と判定したチップ部品を出荷可能な状態にパッケージングする装置(所謂チップテーピング機)である。
【0029】
本実施の形態において、DUTがインダクタ素子(例えば、チップインダクタ素子)である場合を例にとり説明するが、これに限定されるものではない。
【0030】
検査装置2は、後述する学習済みモデルを用いて、DUTとしてのインダクタ素子の電気的特性を測定する。具体的に、検査装置2は、
図1に示すように、データ処理制御装置10、第1測定部11、第2測定部12、操作部13、出力部14、および搬送機構15を備えている。
【0031】
第1測定部11は、DUTとしてのインダクタ素子の電気的特性を4端子法によって測定する装置である。第1測定部11としては、4端子法によるインピーダンスの測定が可能な抵抗計やLCRメータ等のインピーダンス測定器を例示することができる。
【0032】
第2測定部12は、DUTとしてのインダクタ素子の電気的特性を2端子法によって測定する装置である。第2測定部12としては、2端子法によるインピーダンスの測定が可能なLCRメータ等のインピーダンス測定器を例示することができる。
【0033】
なお、第1測定部11および第2測定部12は、DUTのインピーダンス等の電気的特性を測定可能な装置であればよく、上述の例に限定されない。
【0034】
第1測定部11は、データ処理制御装置10からの指示に応じて、DUTとしてのインダクタ素子の直流抵抗を4端子法によって測定する。例えば、第1測定部11は、プローブ61a~61dを移動させる移動機構(不図示)と、電流出力部および電圧検出部(不図示)と、検出結果に基づいて測定値を算出する測定値算出部(不図示)とを有している。
【0035】
第1測定部11は、例えば、データ処理制御装置10から測定実行の指示を受け付けた場合に、第1測定部11の移動機構が、所定の測定位置に搬送されたインダクタ素子の一方の端子にプローブ61a,61cを接触させるとともに、インダクタ素子の他方の端子にプローブ61b,61dを接触させる。次に、第1測定部11の電流出力部が、プローブ61a,61bを介して直流電流をインダクタ素子に供給する。第1測定部11の電圧検出部は、直流電流をインダクタ素子に供給したときのインダクタ端子間の電圧値をプローブ61c,61dを介して検出する。第1測定部11の測定値算出部は、検出した電圧値とインダクタ素子に供給した直流電流の電流値とに基づいて、インダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4を算出する。
【0036】
第2測定部12は、データ処理制御装置10からの指示に応じて、DUTとしてのインダクタ素子の直流抵抗、交流抵抗、およびインダクタンスを2端子法によって測定する。例えば、第2測定部12は、プローブ62a,62bを移動させる移動機構(不図示)と、電流出力部および電圧検出部(不図示)と、検出結果に基づいて測定値を算出する測定値算出部(不図示)とを有している。
【0037】
例えば、第2測定部12は、データ処理制御装置10から測定実行の指示を受け付けた場合に、第2測定部12の移動機構が、所定の測定位置に搬送されたインダクタ素子の一方の端子にプローブ62aを接触させるとともに、インダクタ素子の他方の端子にプローブ62bを接触させる。次に、第2測定部12の電流出力部が、プローブ62a,62bを介して直流電流をインダクタ素子に供給し、第2測定部12の電圧検出部が、インダクタ素子の両端子間の電圧値をプローブ62a,62bを介して検出する。第2測定部12の測定値算出部は、検出した電圧値とインダクタ素子に供給した直流電流の電流値とに基づいて、インダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc2を算出する。
【0038】
また、第2測定部12の移動機構によってインダクタ素子の両端子にプローブ62a,62bをそれぞれ接触させた状態において、第2測定部12の電流出力部が、プローブを介して交流電流をインダクタ素子に供給し、第2測定部12の電圧検出部が、インダクタ素子の両端子間の交流電圧値をプローブ62a,62bを介して検出する。第2測定部12の測定値算出部は、検出した交流電圧値(電圧実効値)と、インダクタ素子に供給した交流電流の交流電流値(電流実効値)と、交流電圧と交流電流との位相差と、に基づいてインダクタ素子の交流抵抗の測定値Rsおよびインダクタンスの測定値Lを算出する。
【0039】
なお、第1測定部11および第2測定部12の一部の機能は、データ処理制御装置10によって実現してもよい。例えば、第1測定部11および第2測定部12の各測定値算出部による上記演算は、データ処理制御装置10が実行してもよい。
【0040】
操作部13は、ユーザが検査装置2を操作するための入力インターフェースである。操作部13としては、各種のボタンやタッチパネル等を例示することができる。例えば、ユーザが操作部13を操作することにより、DUTとしてのインダクタ素子を検査するための各種検査条件等を検査装置2に設定するとともに、検査等の実行および停止を検査装置2に指示することができる。
【0041】
出力部14は、検査装置2における検査条件や検査結果などの各種情報を出力するための機能部である。出力部14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機ELを備えた表示装置である。例えば、出力部14は、ユーザによる操作部13の操作によってDUTの検査の実行が指示された場合に、データ処理制御装置10による制御に応じて検査結果等の情報を画面に表示する。
【0042】
なお、出力部14は、操作部13としての一部の機能を実現するタッチパネルを備えた表示装置であってもよい。また、出力部14は、検査結果等のデータを有線または無線によって外部に出力する通信回路等を含んでいてもよい。
【0043】
搬送機構15は、データ処理制御装置10の制御に応じて、検査装置2内の適切な箇所に検査対象のインダクタ素子を搬送する装置である。例えば、第1測定部11による測定を行う際に、搬送機構15は、検査対象のインダクタ素子を第1測定部11による所定の測定位置まで搬送する。また、例えば、第2測定部12による測定を行う際に、搬送機構15は、検査対象のインダクタ素子を第2測定部12による所定の測定位置まで搬送する。更に、搬送機構15は、検査が終了したインダクタ素子のうち良品と判定されたインダクタ素子をパッケージングするための位置まで搬送し、パッケージングしたインダクタ素子を次の工程における所定の場所まで搬送する。
【0044】
データ処理制御装置10は、検査装置2内の各機能部を統括的に制御するとともに、DUTの検査のための各種のデータ処理を行う機能部である。例えば、データ処理制御装置10は、CPU等のプロセッサと、ROMやRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置と、タイマ等の周辺回路とを有するプログラム処理装置である。プログラム処理装置としては、例えば、MCUやFPGA等を例示することができる。
【0045】
データ処理制御装置10は、第1測定部11および第2測定部12による測定結果を取得し、取得した測定結果に基づいてインダクタ素子の性能を示す指標を算出するとともに、算出した指標に基づいて検査対象のインダクタ素子の良否を判定する。ここで、インダクタ素子の性能を示す指標は、例えば、Q値である。
【0046】
上述したように、2端子法によってインダクタ素子の交流抵抗を測定した場合、その測定値は、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の影響を受ける。そこで、本実施の形態に係る検査装置2のデータ処理制御装置10は、第1測定部11および第2測定部12による測定結果に基づいて検査対象のインダクタ素子の性能を示す指標(Q値)を算出する際に、必要に応じて、予め生成された学習済みモデルを用いて第2測定部12によって測定した交流抵抗の測定値Rsを補正する。
【0047】
ここで、データ処理制御装置10が行う、学習済みモデルを用いた交流抵抗の測定値Rsの補正について詳細に説明する前に、学習済みモデルの生成方法について説明する。
【0048】
図2は、実施の形態に係る検査システム1における学習済みモデル生成装置3の構成の一例を示す図である。
【0049】
学習済みモデル生成装置3は、例えば、サーバやパーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置(コンピュータ)によって実現され、インストールされた学習済みモデル生成用プログラムにしたがって複数の学習用測定データ34_1~34_n(nは2以上の整数)を生成するとともに、生成した学習用測定データを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、学習済みモデル35を生成する装置である。
【0050】
なお、説明の都合上、
図1において学習済みモデル生成装置3と検査装置2とを並べて配置しているが、学習済みモデル生成装置3と検査装置2とは、必ずしも同じ場所に設置されている必要はない。例えば、検査装置2と学習済みモデル生成装置3とが互いに異なる場所に設置され、LANやインターネット等の通信ネットワークを介して接続されていてもよい。この場合、検査装置2と学習済みモデル生成装置3とは、検査装置2による測定データや学習済みモデル35等の各種データを通信ネットワークを介して互いに送受信してもよい。
【0051】
また、DUTの検査時において、検査装置2と学習済みモデル生成装置3とが互いに電気的に接続されていなくてもよい。例えば、検査前または検査後において、検査装置2による測定データや学習済みモデル35等の各種データのやり取りをメモリカード等の記憶媒体を介して行ってもよい。
【0052】
本実施の形態において、学習済みモデル35は、検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の測定値Rsを推定するためのモデルである。なお、学習済みモデル生成装置3によって生成された学習済みモデル35は、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、メモリカード等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0053】
学習済みモデル生成装置3は、学習済みモデル35を生成するための機能ブロックとして、例えば、学習用測定データ取得部31、学習済みモデル生成部32、および記憶部33を有している。これらの各機能ブロックは、学習済みモデル生成装置3としての情報処理装置を構成するCPUやメモリ等のハードウェア資源が、上記情報処理装置にインストールされたソフトウエア(学習済みモデル生成用プログラムを含む各種プログラム)と協働することによって、実現される。
【0054】
学習用測定データ取得部31は、学習済みモデル35の生成に必要な学習用測定データ34_1~34_nを取得する機能部である。
【0055】
ここで、学習用測定データ34_1~34_nは、4端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc4(第1測定値)と、2端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc2(第2測定値)とに、2端子法によって測定したDUTの交流抵抗の測定値Rs(第3測定値)を対応付けたデータ対である。
以下の説明において、各学習用測定データ34_1~34_nを区別しない場合には、単に、「学習用測定データ34」と表記する。
【0056】
学習用測定データ取得部31は、例えば、図示されない無線または有線の通信、またはメモリカード等の記憶媒体を介して、4端子法によって測定されたインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4のデータ41と、2端子法によって測定されたインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc2のデータ42と、2端子法によって測定された交流抵抗の測定値Rsのデータ43とを含むデータ対を取得する。学習用測定データ取得部31は、検査されたインダクタ素子毎にデータ対を取得する。データ対としては、例えば、過去に検査装置2等によって検査されたインダクタ素子の測定結果を用いればよい。
【0057】
学習用測定データ取得部31は、例えば、取得したデータ対に含まれる直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に、当該データ対に含まれる交流抵抗の測定値Rsを正解値として対応付けることにより、一つの学習用測定データ34を生成する。学習用測定データ取得部31は、検査されたインダクタ素子の測定結果毎に学習用測定データ34_1~34_nを生成し、記憶部33に記憶する。
【0058】
なお、学習用測定データ取得部31は、上述したように、自ら学習用測定データ34を生成する代わりに、別の情報処理装置等によって生成された学習用測定データ34を通信または記憶媒体を介して取得してもよい。
【0059】
学習済みモデル生成部32は、学習用測定データ取得部31によって取得した複数の学習用測定データ34_1~34_nを機械学習することにより、学習済みモデル35を生成する機能部である。
【0060】
学習済みモデル35は、所定のアルゴリズムに基づく機械学習によって生成されたプログラムである。所定のアルゴリズムとしては、多項式回帰や重回帰等を例示することができる。
【0061】
本実施の形態において、学習済みモデル35は、4端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc4(第1測定値)と2端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc2(第2測定値)とを含む入力データに基づいて、2端子法によって測定したDUTの交流抵抗の測定値Rsを推定するように、コンピュータ(MPU等)を機能させるための関数である。
【0062】
換言すれば、学習済みモデル35は、入力された測定データ(直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2)に対して、所定の学習済みパラメータに基づく演算を行い、当該測定データに基づく交流抵抗を定量化した値(推定値)を出力するように、情報処理装置(コンピュータ)を機能させるためのプログラムである。
【0063】
例えば、学習済みモデル35は、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを表すモデルと、検査対象物(DUT)に起因する抵抗成分を表すモデルとを含む。
【0064】
ここで、2端子法による測定系に起因する抵抗成分には、例えば、第2測定部12とDUTとの間に存在するケーブルやプローブ等から成る線路の抵抗成分と、プローブとDUTとの接触状態に起因する抵抗成分(所謂接触抵抗)と、が含まれる。
【0065】
2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを表すモデルは、例えば、4端子法による直流抵抗の測定値Rdc4(第1測定値)と2端子法による直流抵抗の測定値Rdc2(第2測定値)とを説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする回帰モデルである。換言すれば、2端子法による測定系に起因する抵抗成分(Rc)を表すモデルは、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2から2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを算出する関数である。
【0066】
DUTに起因する抵抗成分を表すモデルは、例えば、4端子法による直流抵抗の測定値Rdc4(第1測定値)を説明変数とし、DUTに起因する抵抗成分の値を目的変数とする回帰モデルである。換言すれば、DUTに起因する抵抗成分を表すモデルは、4端子法による直流抵抗の測定値Rdc4からDUTに起因する交流抵抗の値を推定する関数である。
【0067】
2端子法による測定系に起因する抵抗成分(Rc)を表すモデルをg(Rdc4,Rdc2)、DUTに起因する抵抗成分を表すモデルをh(Rdc4)としたとき、交流抵抗の測定値の推定値Rseを算出するための関数としての学習済みモデル35は、例えば、Rse=g(Rdc4,Rdc2)+h(Rdc4)と表すことができる。
【0068】
すなわち、交流抵抗の測定値の推定値Rseは、モデルg(Rdc4,Rdc2)によって求めた2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcと、モデルh(Rdc4)によって求めたDUTに起因する抵抗成分との和によって表される。
【0069】
モデルg(Rdc4,Rdc2)およびモデルh(Rdc4)は、学習済みパラメータを含む。学習済みパラメータとは、学習用測定データ34_1~34_nを学習用プログラム(上記所定のアルゴリズムに基づくプログラム)に対する入力として用いて、交流抵抗の測定値の推定値Rseを算出するように機械的に調整された、モデルg(Rdc4,Rdc2)およびモデルh(Rdc4)の係数である。
【0070】
学習済みモデル生成部32は、学習用測定データ34_1~34_nを機械学習することにより、モデルg(Rdc4,Rdc2)およびモデルh(Rdc4)の学習済みパラメータを調整する。
【0071】
例えば、学習済みモデル生成部32は、先ず、学習用測定データ34_1~34_nを回帰モデルにそれぞれ入力することによって算出された交流抵抗の測定値の推定値Rseと、正解値である交流抵抗の測定値Rsとの差(誤差)を算出する。次に、学習済みモデル生成部32は、例えば誤差逆伝搬法によって、算出した誤差が小さくなるように上記回帰モデルの学習済みパラメータ(係数)を逐次更新することにより、上記回帰モデルを生成し、学習済みモデル35として記憶部33に記憶する。
【0072】
記憶部33は、学習済みモデル35を生成するために必要な学習用測定データ34_1~34_nや生成された学習済みモデル35等の各種データを記憶するための機能部である。
【0073】
記憶部33は、例えば、外部からアクセス可能に構成されている。例えば、検査装置2が学習済みモデル生成装置3と通信を行うことにより、検査装置2が記憶部33から学習済みモデル35を読み出して取得することが可能となっている。また、例えば、検査装置2が学習済みモデル生成装置3と通信を行うことにより、検査装置2が測定結果のデータ等を記憶部33に書き込むことが可能となっている。
【0074】
図3は、実施の形態に係る学習済みモデル生成装置3による学習済みモデル35の生成の流れを示すフローチャートである。
【0075】
図3に示すように、先ず、学習済みモデル生成装置3において、学習用測定データ取得部31が学習用測定データ34_1~34_nを取得する(ステップS1)。具体的には、上述したように、学習用測定データ取得部31が、過去に検査されたインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2および交流抵抗の測定値Rsを含むデータ対を取得し、取得したデータ対に基づいて、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に交流抵抗の測定値Rsを正解値として付与することにより、学習用測定データ34を生成する。
【0076】
次に、学習済みモデル生成装置3は、学習済みモデル35を生成するために必要な数の学習用測定データ34が生成されたか否かを判定する(ステップS2)。例えば、学習済みモデル生成装置3には、学習済みモデル35を生成するために必要な学習用測定データ34のデータ数が予め設定されており、学習済みモデル生成装置3は、学習用測定データ34を生成する度に、生成回数を+1インクリメントする。そして、学習済みモデル生成装置3は、カウントした生成回数が予め設定されたデータ数に到達したか否かを判定することにより、必要な数の学習用測定データ34が生成されたか否かを判定する。
【0077】
必要な数の学習用測定データ34が生成されてない場合には(ステップS2:NO)、学習済みモデル生成装置3は、ステップS1に戻り、新たなインダクタ素子の測定結果に係るデータ対を取得して、インダクタ素子に関する学習用測定データ34を生成することを繰り返す(ステップS1,S2)。
【0078】
一方、必要な数の学習用測定データ34が生成された場合には(ステップS2:YES)、学習済みモデル生成装置3は、ステップS1で生成した複数の学習用測定データ34を用いて、学習済みモデル35を生成する(ステップS3)。具体的には、学習済みモデル生成部32が、上述した手法により、ステップS1において作成された複数の学習用測定データ34_1~34_nを所定のアルゴリズムに基づいて機械学習することにより、学習済みモデル35を作成する。
【0079】
そして、学習済みモデル生成部32は、学習済みモデル35について充分な精度が得られた場合には、その学習済みモデル35を記憶部33に記憶する。
【0080】
次に、ステップS3において生成された学習済みモデル35を検査装置2に登録する(ステップS4)。例えば、ユーザによる、検査装置2の操作部13または学習済みモデル生成装置3の入力装置(例えば、タッチパネルやキーボード、マウス等)の操作に応じて、学習済みモデル生成装置3が、記憶部33に記憶された学習済みモデル35を検査装置2に送信し、検査装置2が受信した学習済みモデル35をデータ処理制御装置10内の記憶部に記憶する。なお、学習済みモデル35の検査装置2への登録は、上述したように、メモリカード等の記憶媒体を用いて行ってもよい。
【0081】
なお、学習済みモデル生成装置3としてのコンピュータ(情報処理装置)に上述した各ステップ(S1~S4)を実行させるための学習済みモデル生成用プログラムは、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、メモリカード等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0082】
以上説明した手法により、インダクタ素子の検査のための学習済みモデル35が生成される。
【0083】
次に、検査装置2による学習済みモデル35を用いた交流抵抗の測定値Rsの補正について詳細に説明する。
【0084】
図4は、実施の形態に係る検査装置2におけるデータ処理制御装置10の構成の一例を示す図である。
【0085】
図4に示すように、検査装置2のデータ処理制御装置10は、例えば、データ取得部21、記憶部22、推定部23、補正部24、および判定部25を有する。これらの機能部は、例えば、データ処理制御装置10としてのプログラム処理装置において、CPUが、メモリに記憶されたプログラムにしたがって各種演算を実行するとともにカウンタ等の周辺回路を制御することにより、実現される。
【0086】
データ取得部21は、検査対象のインダクタ素子の性能を示す指標(Q値)を算出するために必要な各種データを取得する機能部である。
【0087】
データ取得部21は、例えば、第1測定部11が4端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc4を取得し、記憶部22に記憶する。データ取得部21は、例えば、第2測定部12が2端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc2と、第2測定部12が2端子法によって測定したDUTの交流抵抗の測定値Rsと、第2測定部12が2端子法によって測定したDUTのインダクタンスの測定値Lとをそれぞれ取得し、検査対象の測定データ50として記憶部22に記憶する。また、データ取得部21は、例えば、学習済みモデル生成装置3によって生成された学習済みモデル35を取得し、記憶部22に記憶する。
【0088】
記憶部22は、検査対象のインダクタ素子の性能を示す指標(Q値)を算出するために必要な各種データおよび算出されたQ値等を記憶するための機能部である。
【0089】
上述したように、記憶部22には、データ取得部21によって取得された、インダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2、インダクタ素子の交流抵抗の測定値Rs、インダクタ素子のインダクタンスの測定値L、および学習済みモデル35が、それぞれ記憶される。また、記憶部22には、例えば、後述する、交流抵抗の測定値の推定値Rse、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の推定値Rc、交流抵抗の値Rsr、およびQ値がそれぞれ記憶される。
【0090】
推定部23は、検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の測定値を推定する機能部である。推定部23は、記憶部22に記憶された学習済みモデル35に基づいて、データ取得部21によって取得した検査対象のインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に対応する交流抵抗の測定値の推定値Rseを算出する。具体的には、推定部23は、データ取得部21によって取得した検査対象のインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2を学習済みモデル35(関数)に入力(代入)することによって得られた値を、交流抵抗の測定値の推定値Rseとして記憶部22に記憶する。
【0091】
補正部24は、交流抵抗の測定値Rsを補正するための機能部である。
補正部24は、交流抵抗の測定値の推定値Rseに応じて、データ取得部21によって取得した直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に基づいて交流抵抗の測定値Rsを補正し、補正した交流抵抗の測定値RsをDUTの交流抵抗の値Rsrとして出力する補正処理を行う。
【0092】
より具体的には、補正部24は、先ず、データ取得部21によって取得した検査対象のインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に基づいて、上述したモデルg(Rdc4,Rdc2)にしたがって2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを算出する。算出した抵抗成分Rcのデータは、例えば、記憶部22に記憶される。
【0093】
次に、補正部24は、交流抵抗の測定値の推定値Rseに応じて、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcに基づいて検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の測定値Rsを補正し、補正した交流抵抗の測定値Rsを検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の値Rsrとして出力する。
【0094】
例えば、補正部24は、推定部23によって算出した交流抵抗の測定値の推定値Rseと、データ取得部21によって取得した交流抵抗の測定値Rs(第3測定値)との誤差|Rse-Rs|を算出し、誤差|Rse-Rs|を評価する。具体的には、補正部24は、誤差|Rse-Rs|と閾値Rthとを比較する。閾値Rthは、予め設定された任意の値である。
【0095】
ここで、誤差|Rse-Rs|が閾値Rthより小さい場合、検査対象のインダクタ素子の測定結果に対して、学習済みモデル35による交流抵抗の推定精度が高いと考えることができる。すなわち、学習済みモデル35に含まれるモデルg(Rdc4,Rdc2)による、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcの推定精度が高いと考えられる。
【0096】
そこで、誤差|Rse-Rs|が閾値Rthより小さい場合には、補正部24は、補正処理を行う。具体的には、補正部24は、モデルg(Rdc4,Rdc2)を用いて2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを算出し、算出した2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを用いて交流抵抗の測定値Rs(第3測定値)を補正する。
【0097】
例えば、補正部24は、先ず、検査対象のインダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2をモデルg(Rdc4,Rdc2)に入力(代入)することによって得られた値を、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcとする。次に、算出部24は、データ取得部21によって取得した交流抵抗の測定値Rs(第3測定値)から2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを減算することによって得られた値を、交流抵抗の値Rsr(=Rs-Rc)として出力する。
【0098】
一方、誤差|Rse-Rs|が閾値Rthより大きい場合には、検査対象のインダクタ素子に対して、学習済みモデル35による交流抵抗の推定精度が低いと考えられる。すなわち、学習済みモデル35に含まれるモデルg(Rdc4,Rdc2)による、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcの推定精度が低いと考えられる。
この場合に、仮に、モデルg(Rdc4,Rdc2)を用いて2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを算出し、算出した2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを用いて交流抵抗の測定値Rs(第3測定値)を補正したとすると、誤った補正となり、適切に交流抵抗の値Rsrを求めることができないおそれがある。
【0099】
そこで、誤差|Rse-Rs|が閾値Rthより大きい場合には、補正部24は、補正処理を行うことなく、データ取得部21によって取得した交流抵抗の測定値Rsを検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の値Rsr(=Rs)として出力する。
【0100】
判定部25は、DUT(インダクタ素子)の良否を判定するための機能部である。
判定部25は、補正部23から出力された検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の値Rsrと、検査対象のインダクタ素子のインダクタンスの測定値Lとに基づいて、検査対象のインダクタ素子の性能を表す指標であるQ値(Q=ωL/Rsr)を算出する。
【0101】
判定部25は、例えば、算出したQ値を予め定められている基準値と比較することによって検査対象のインダクタ素子の良否判定を行う。判定部25は、搬送機構15を制御することにより、良品と判定したDUTを図外のパッケージング装置によって出荷可能な状態にパッケージングする。
【0102】
次に、検査装置2によるDUTの検査処理の流れについて説明する。
【0103】
図5は、実施の形態に係る検査装置2による検査の流れを示すフローチャートである。
【0104】
例えば、ユーザが検査装置2の操作部13を操作してDUT(インダクタ素子)の検査の実行を指示した場合、データ処理制御装置10が、検査対象のインダクタ素子の検査を開始する。
【0105】
先ず、データ処理制御装置10が、第1測定部11を制御することにより、検査対象のインダクタ素子の直流抵抗を4端子法によって測定させる(ステップS11)。例えば、データ処理制御装置10は、操作部13からの指示信号に応じて搬送機構15を制御することにより、検査対象のインダクタ素子を第1測定部11における所定の測定位置に搬送させる。その後、データ処理制御装置10は、第1測定部11を制御して、4端子法により、検査対象のインダクタ素子の直流抵抗を測定させ、直流抵抗の測定値Rdc4を取得する。
【0106】
次に、データ処理制御装置10が、第2測定部12を制御することにより、検査対象のインダクタ素子の直流抵抗を2端子法によって測定させる(ステップS12)。例えば、データ処理制御装置10は、搬送機構15を制御することにより、検査対象のインダクタ素子を第2測定部12における所定の測定位置に搬送させる。その後、データ処理制御装置10は、第2測定部12を制御して、2端子法により検査対象のインダクタ素子の直流抵抗を測定させ、直流抵抗の測定値Rdc2を取得する。
【0107】
次に、データ処理制御装置10が、第2測定部12を制御することにより、検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の測定値Rsおよびインダクタンスの測定値Lを2端子法によって測定させる(ステップS13)。例えば、検査対象のインダクタ素子をステップS12と同様の測定位置に配置した状態において、データ処理制御装置10が、第2測定部12を制御して、検査対象のインダクタ素子の交流抵抗を測定させ、交流抵抗の測定値Rsおよびインダクタンスの測定値Lをそれぞれ取得する。
【0108】
次に、データ処理制御装置10が、第2測定部12を制御して、ステップS12と同様の手法により、検査対象のインダクタ素子の直流抵抗を2端子法によって測定させる(ステップS14)。
【0109】
ステップS11~S14においてデータ処理制御装置10が取得した、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2、交流抵抗の測定値Rs、およびインダクタンスの測定値Lは、検査対象のインダクタ素子の測定データ50として記憶部22に記憶される。
【0110】
次に、データ処理制御装置10が、検査対象のインダクタ素子の測定データ50に基づいて、検査対象のインダクタ素子の交流抵抗の測定値の推定値Rseを算出する(ステップS15)。具体的には、推定部23が、上述した手法により、ステップS11およびステップS12(S14)において取得した直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2を学習済みモデル35に入力することにより、学習済みモデル35から出力された交流抵抗の測定値の推定値Rseを得る。
【0111】
このとき、推定部23は、例えば、ステップS12において測定した直流抵抗の測定値Rdc2とステップS14において測定した直流抵抗の測定値Rdc2とを比較し、小さい方の直流抵抗の測定値Rdc2を用いて交流抵抗の測定値の推定値Rseを算出してもよい。
【0112】
次に、補正部24が、ステップS15において算出した交流抵抗の測定値の推定値RseとステップS13において取得した交流抵抗の測定値Rsとの差|Rse-Rs|が閾値Rthよりも小さいか否かを判定する(ステップS16)。
【0113】
差|Rse-Rs|が閾値Rthよりも小さい場合(ステップS16:YES)、補正部24は、モデルg(Rdc4,Rdc2)を用いて、2端子法による2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを算出する(ステップS17)。具体的には、補正部24は、ステップS11およびステップS12(S14)において取得した直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2をモデルg(Rdc4,Rdc2)に入力することにより、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを得る。
【0114】
次に、補正部24は、ステップS17において算出した2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを用いて、ステップS13において取得した交流抵抗の測定値Rsを補正し、補正した値を交流抵抗の値Rsrとして出力する補正処理を行う(ステップS18)。具体的には、補正部24は、ステップS13において取得した交流抵抗の測定値RsからステップS17において算出した2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを減算して得られた値を交流抵抗の値Rsr(=Rs-Rc)として出力する。
【0115】
一方、差|Rse-Rs|が閾値Rthよりも大きい場合(ステップS16:NO)には、補正部24は、補正処理を行うことなく、ステップS13において取得した交流抵抗の測定値Rsを交流抵抗の値Rsr(=Rs)として出力する(ステップS19)。
【0116】
次に、判定部25が、ステップS18またはステップS19において補正部24から出力された交流抵抗の値Rsrと、ステップS13において取得したインダクタンスの測定値Lとに基づいて、検査対象のインダクタ素子のQ値を算出する(ステップS20)。その後、判定部25は、ステップS20において算出したQ値に基づいて、検査対象のインダクタ素子の良否判定を行う。良品と判定されたインダクタ素子は、搬送機構15によって搬送され、パッケージングされる。
【0117】
なお、上述した各ステップ(S11~S21)をデータ処理制御装置10としてのコンピュータ(情報処理装置)に実行させるための検査用プログラムは、ネットワークを介して流通可能であってもよいし、メモリカード等のコンピュータが読み取り可能な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)に書き込まれて流通可能であってもよい。
【0118】
以上、本実施の形態に係る検査システム1において、学習済みモデル生成装置3は、2端子法による測定系に起因する抵抗成分を算出するモデルg(Rdc4,Rdc2)と、DUT(インダクタ素子)に起因する抵抗成分を算出するモデルh(Rdc4)とを含む学習済みモデル35を、4端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc4と2端子法によって測定したDUTの直流抵抗の測定値Rdc2に、2端子法によって測定したDUTの交流抵抗の測定値Rsをラベリングして生成された複数の学習用測定データ34_1~34_nを機械学習することによって生成する。
【0119】
これによれば、インダクタ素子の直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2と交流抵抗の測定値Rsとの関係が非線形であっても、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2と交流抵抗の測定値Rsとの関係を適切に表した学習済みモデル35(関数)を得ることができる。
【0120】
また、学習済みモデル35において、モデルg(Rdc4,Rdc2)は、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2を説明変数とし、2端子法による測定系に起因する抵抗成分の値を目的変数とする回帰モデルであり、モデルh(Rdc4)は、直流抵抗の測定値Rdc4を説明変数とし、DUTに起因する抵抗成分の値を目的変数とする回帰モデルである。モデルg(Rdc4,Rdc2)およびモデルh(Rdc4)は、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に交流抵抗の測定値Rsを対応付けた複数の学習用測定データ34_1~34_nを機械学習することによって調整された学習済みパラメータ(係数)を含む。
【0121】
これによれば、より単純な関数によって学習済みモデル35を表すことができるので、機械学習において心配される学習済みモデル35のブラックボックス化を回避することができる。
【0122】
また、本実施の形態に係る検査システム1において、検査装置2は、学習済みモデル生成装置3によって生成された学習済みモデル35を用いてDUTの交流抵抗の測定値を推定するとともに、その推定結果に応じて、学習済みモデル35に含まれるモデルg(Rdc4,Rdc2)を用いて2端子法による2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを算出する。そして、検査装置2は、算出した2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcに基づいて交流抵抗の測定値Rsを補正し、補正後の値をDUTの交流抵抗の値として出力する。
【0123】
これによれば、過去のインダクタ素子の測定結果を機械学習することによって生成した高精度のモデルg(Rdc4,Rdc2)に基づき算出した2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcを用いて、交流抵抗の測定値Rsを補正するので、従来の手法よりも正確に、交流抵抗の値を得ることができる。
【0124】
また、検査装置2は、学習済みモデル35に基づいて推定した交流抵抗の測定値の推定値Rseと、実際に測定した交流抵抗の測定値Rsとの誤差|Rse-Rs|を算出し、誤差|Rse-Rs|が閾値Rthより小さい場合に、2端子法による測定系に起因する抵抗成分Rcに基づいて補正した交流抵抗の測定値Rsを交流抵抗の値Rsr(=Rse-Rc)として出力する。一方、誤差|Rse-Rs|が閾値Rthより大きい場合には、検査装置2は、実際に測定した交流抵抗の測定値Rsを交流抵抗の値Rsr(=Rs)として出力する。
【0125】
これによれば、検査対象の全てのインダクタ素子に対して一律に、交流抵抗の実測値の補正が行われるのではなく、交流抵抗の実測値と学習済みモデル35に基づく推定値との誤差が小さいインダクタ素子、すなわち学習済みモデル35(モデルg(Rdc4,Rdc2))を適用することが妥当と考えられるインダクタ素子に対してのみ、交流抵抗の実測値の補正が行われることになる。これにより、過補正を防止することができ、より正確な交流抵抗の値を得ることができる。
【0126】
このように、本実施の形態に係る学習済みモデル生成装置3および検査装置2によれば、電子部品の検査の信頼性を向上させることができる。
【0127】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0128】
例えば、検査装置2が検査に用いるモデル(学習済みモデル35)は、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2と交流抵抗の測定値Rsとの対応関係を示す関数であればよく、機械学習以外の手法によって生成したモデルであってもよい。例えば、検査装置2は、機械学習以外の手法によって係数を調整したモデルg(Rdc4,Rdc2),h(Rdc4)を含むモデルを用いて、上記と同様の手法により、インダクタ素子の検査を行ってもよい。
【0129】
また、上記実施の形態では、検査装置2が、データ処理制御装置10、第1測定部11、第2測定部12、操作部13、出力部14、および搬送機構15等の構成要素を一体とした装置である場合を例示したが、検査装置2を構成する一部の構成要素が他の構成要素と別体として構成されていてもよい。例えば、データ処理制御装置10、操作部13、および出力部14を第1装置(例えば、PC等の情報処理装置)によって実現し、第1測定部11、第2測定部12、および搬送機構15を、第1装置とは異なる別の第2装置によって実現してもよい。この場合、第1装置と第2装置とは、有線または無線によるネットワークを介して接続されていてもよい。
【0130】
上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1…検査システム、2…検査装置、3…学習済みモデル生成装置、10…データ処理制御装置、11…第1測定部、12…第2測定部、13…操作部、14…出力部、15…搬送機構、21…データ取得部、22…記憶部、23…推定部、24…補正部、25…判定部、31…学習用測定データ取得部、32…学習済みモデル生成部、33…記憶部、34,34_1~34_n…学習用測定データ、35…学習済みモデル、50…測定データ、Rc…2端子法による測定系に起因する抵抗成分、Rdc2…2端子法による直流抵抗の測定値、Rdc4…4端子法による直流抵抗の測定値、Rs…2端子法による交流抵抗の測定値、Rse…2端子法による交流抵抗の測定値の推定値、Rsr…交流抵抗の値、Rth…閾値。
【要約】
【課題】電子部品の検査の信頼性を向上させる。
【解決手段】検査装置2は、4端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の測定値Rdc4および2端子法によって測定した測定対象物の直流抵抗の測定値Rdc2に基づいて2端子法によって測定した測定対象物の交流抵抗の測定値Rsを算出するようにコンピュータを機能させるための学習済みモデル35を用いて交流抵抗の測定値の推定値Rseを算出する。検査装置2は、交流抵抗の測定値の推定値Rseに応じて、直流抵抗の測定値Rdc4,Rdc2に基づいて交流抵抗の測定値Rsを補正する。
【選択図】
図4