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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】モジュラー構造ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/08 20060101AFI20230706BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B25J9/08
B25J9/10 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022040470
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】514074382
【氏名又は名称】カワダロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 墾
(72)【発明者】
【氏名】富士谷 裕介
(72)【発明者】
【氏名】玉川 迅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一平
(72)【発明者】
【氏名】田邊 博史
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-028529(JP,A)
【文献】特開平11-188678(JP,A)
【文献】特開2006-082200(JP,A)
【文献】特開2016-190282(JP,A)
【文献】特開平04-275888(JP,A)
【文献】特表2002-534284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々機能部分を構成する複数のモジュールを備えるモジュラー構造ロボットにおいて、
前記複数のモジュールのうち互いに隣接する2つのモジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で互いに脱着可能に結合され、
前記2つのモジュールの結合後の相対位置情報の校正のために、前記2つのモジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら2つのモジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合されることを特徴とするモジュラー構造ロボット。
【請求項2】
前記互いに隣接する2つのモジュールは、前記機能部分として基部上に立設された体幹部を構成する体幹部モジュールと、前記機能部分としてその体幹部の側部に取り付けられた腕部を構成する腕部モジュールであることを特徴とする、請求項1記載のモジュラー構造ロボット。
【請求項3】
前記体幹部の左右側部に取り付けられた腕部を構成する2本の腕部モジュールを備え、
前記体幹部モジュールに設けられた位置合わせ部は、前記2本の腕部モジュールに設けられた位置合わせ部の何れとも係合するものであることを特徴とする、請求項2記載のモジュラー構造ロボット。
【請求項4】
前記体幹部モジュールに前記腕部モジュールを取り付けるためのブラケットが前記体幹部モジュールの左右側部に設けられ、
前記ブラケットは、前記体幹部モジュールの胴部に容易に着脱可能なカバーの内側に収められており、前記カバーを取り外すことで外部に露出することを特徴とする、請求項3記載のモジュラー構造ロボット。
【請求項5】
前記体幹部モジュールには、前記腕部モジュールの位置合わせ部としての手首部の形状に対応する形状を持つキャリブレーションポイントが設けられ、
前記キャリブレーションポイントには、前記手首部を嵌合させる際に前記手首部の位置および向きを一意に固定可能な位置決めピンが設けられており、
前記キャリブレーションポイントに前記手首部の位置および向きを合わせて嵌合させた状態で前記腕部モジュールの各関節軸に既定の駆動トルクを加えることで、キャリブレーション結果への前記腕部モジュールの弾性特性の影響が除外されることを特徴とする、請求項2から4までの何れか1項記載のモジュラー構造ロボット。
【請求項6】
前記体幹部モジュールと前記腕部モジュールとの間において電気的接続を中継するコネクタおよび空圧の供給を中継するコネクタは、前記体幹部モジュール側に固定配置され、前記体幹部モジュールの胴部に容易に着脱可能なカバーの内側に収められており、前記カバーを取り外すことで外部に露出することを特徴とする、請求項2から5までの何れか1項記載のモジュラー構造ロボット。
【請求項7】
前記互いに隣接する2つのモジュールは、前記機能部分として基部上に立設された体幹部を構成する体幹部モジュールと、前記機能部分としてその体幹部の上端部に取り付けられた頭部を構成するとともに2台のカメラをステレオビジョンとして対象物の位置情報を取得可能なように配置された頭部モジュールであることを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項記載のモジュラー構造ロボット。
【請求項8】
前記体幹部モジュールと前記頭部モジュールとの間において電気的接続を中継するコネクタおよび空圧の供給を中継するコネクタは、前記体幹部モジュール側に固定配置され、前記体幹部モジュールの胴部に容易に着脱可能なカバーの内側に収められており、前記カバーを取り外すことで外部に露出することを特徴とする、請求項7記載のモジュラー構造ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部分がモジュール(交換可能な構成単位)化されたモジュラー構造ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能部分の脱着が容易なように機能部分がモジュール化されたモジュラー構造ロボットとしては従来、例えば特許文献1にて開示されたものが知られている。
【0003】
このモジュラー構造ロボットは、ウォーム駆動式の駆動モジュールと、その駆動モジュールの軸線に直交して延在するアームジョイントと、その駆動モジュールと同軸に位置してその駆動モジュールからアームジョイントにトルクを伝達する連結モジュールとを、基部に取り付けられた体幹部に相当する1つの駆動モジュールを含めて複数組み合わせて多関節型ロボットを構成しており、組み立てが容易なように、複数の駆動モジュールがそれぞれ共通の仕様とされるとともに、複数の連結モジュールもそれぞれ共通の仕様とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-508635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の如きモジュラー構造ロボットでも、生産ラインにおいて故障やメンテナンスで停止した場合、修理やメンテナンスが完了して再稼働するまで生産ラインを止める必要があり、関連設備も停止してしまうことが多い。故障の際の対応としてはロボットの交換や修理を行うが、ロボットの交換の場合は再教示が必要となり、ロボットの修理の場合は原因究明、復旧および動作検証が必要となって、何れも多くの手間がかかる。
【0006】
しかも、ロボットを交換した場合は、設置場所やロボットの個体差による教示位置のずれが大きく、ロボット交換後の動作復旧のための教示に時間がかかり、カメラ付きロボットの場合はさらにカメラも含めた位置情報の校正作業が必要となる。
【0007】
そして、ロボットをモジュールごとに交換しようとしても、モジュール脱着後のハンドの位置校正等の非常に手間のかかる作業が必要となり、多くのロボットで体幹部から分離可能とされている腕部の上腕接続部においても、それを分離するには電気コネクタを外すためにカバーや体幹部内部の配線を外す等の手間がかかる。
【0008】
それゆえ本発明は、各モジュールの脱着とその後の位置情報の校正作業とを容易に行うことができるモジュラー構造ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を有利に解決するため、本発明は、各々機能部分を構成する複数のモジュールを備えるモジュラー構造ロボットにおいて、
前記複数のモジュールのうち互いに隣接する2つのモジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で互いに脱着可能に結合され、
前記2つのモジュールの結合後の相対位置情報の校正のために、前記2つのモジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら2つのモジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のモジュラー構造ロボットによれば、各々機能部分を構成する複数のモジュール(交換可能な構成単位)のうち互いに隣接する2つのモジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で互いに脱着可能に結合されているので、2つのモジュールを容易に互いに脱着することができ、それら2つのモジュールの結合後は、2つのモジュールの相対位置情報の校正のために、それら2つのモジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら2つのモジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合されるので、それら2つのモジュールを互いに対して高精度に動作させることができる。
【0011】
なお、本発明のモジュラー構造ロボットにおいては、前記互いに隣接する2つのモジュールは、前記機能部分として基部上に立設された体幹部を構成する体幹部モジュールと、前記機能部分としてその体幹部の側部に取り付けられた腕部を構成する腕部モジュールであってもよい。
【0012】
このようにすれば、基部上に立設された体幹部を構成する体幹部モジュールに対して、その体幹部の側部に取り付けられた腕部を構成する腕部モジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で互いに脱着可能に結合されているので、体幹部モジュールに対して腕部モジュールを容易に脱着することができ、しかもそれらのモジュールの結合後は、それら体幹部モジュールに対する腕部モジュールの相対位置情報の校正のために、それら体幹部モジュールおよび腕部モジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら体幹部モジュールおよび腕部モジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合されるので、体幹部モジュールに対して腕部モジュールを高精度に動作させることができる。
【0013】
また、本発明のモジュラー構造ロボットにおいては、前記体幹部の左右側部に取り付けられた腕部を構成する2本の腕部モジュールを備え、
前記体幹部モジュールに設けられた位置合わせ部は、前記2本の腕部モジュールに設けられた位置合わせ部の何れとも係合するものであってもよい。
【0014】
このようにすれば、体幹部モジュールに対する2本の腕部モジュールの相対位置情報の校正を、体幹部モジュール側は1つの位置合わせ部で行うことができるので、その校正によって2本の腕部モジュール同士の相対位置情報の校正も併せて行うことができる。
【0015】
そして、本発明のモジュラー構造ロボットにおいては、前記互いに隣接する2つのモジュールは、前記機能部分として基部上に立設された体幹部を構成する体幹部モジュールと、前記機能部分としてその体幹部の上端部に取り付けられた頭部を構成するとともに2台のカメラをステレオビジョンとして対象物の位置情報を取得可能なように配置された頭部モジュールであってもよい。
【0016】
このようにすれば、基部上に立設された体幹部を構成する体幹部モジュールに対して、その体幹部の上端部に取り付けられた頭部を構成する頭部モジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で脱着可能に結合されているので、体幹部モジュールに対して頭部モジュールを容易に脱着することができ、しかもそれらのモジュールの結合後は、それら体幹部モジュールに対する頭部モジュールの相対位置情報の校正のために、それら体幹部モジュールおよび頭部モジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら体幹部モジュールおよび頭部モジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合されるので、体幹部モジュールに対して頭部モジュールを高精度に動作させることができる。そして、体幹部モジュールに対する相対位置を校正された頭部モジュールの、ステレオビジョンとして対象物の位置情報を取得可能なように配置された2台のカメラが対象物を撮像するので、それらのカメラが撮像した2次元画像から例えば3次元画像化処理や三角測量の原理等によって対象物の位置情報を取得することによって、体幹部モジュールに対する対象物の相対位置も高精度に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態のモジュラー構造ロボットをモジュール同士の分離状態で一部切り欠いて示す斜視図である。
図2】上記実施形態のモジュラー構造ロボットをモジュール同士の結合状態で示す斜視図である。
図3】上記実施形態のモジュラー構造ロボットの腕部モジュールの校正動作を示す正面図である。
図4】(a)は、そのモジュラー構造ロボットの腕部モジュールに設けられた位置合わせ部を示す側面図、(b)は、そのモジュラー構造ロボットの体幹部モジュールと腕部モジュールとにそれぞれ設けられた位置合わせ部の係合状態を示す断面図である。
図5】(a)は、上記実施形態のモジュラー構造ロボットの頭部モジュールの校正動作を示す正面図、(b)は、そのモジュラー構造ロボットの体幹部モジュールと頭部モジュールとにそれぞれ設けられた位置合わせ部の係合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、本発明の一実施形態のモジュラー構造ロボットをモジュール同士の分離状態で一部切り欠いて示す斜視図、また図2は、その実施形態のモジュラー構造ロボットをモジュール同士の結合状態で示す斜視図である。
【0019】
この実施形態のモジュラー構造ロボットは、産業用ロボットやサービスロボットとして用いることができる双腕型上半身ロボットを構成するもので、図1および図2に示すように、基部1と、その基部1上に立設された体幹部2と、その体幹部2の左右側部に取り付けられた多関節型の2本の腕部3と、上記体幹部2の上端部に取り付けられた頭部4と、を備えている。
【0020】
基部1は、体幹部2を取り付ける環状のフランジ1aを上端部に有するとともに、そのフランジ1aを介して体幹部2をその中心軸線周りに水平に回動させる通常のモータ式駆動機構を持つ1自由度の腰関節部を内部に有し、例えば人手または自走で移動可能な図示しない台車上に固定支持されている。なお、上記台車はその内部に、予め与えられた作業プログラムに基づいてこの実施形態のモジュラー構造ロボットを作業動作させる通常の制御用コンピュータを搭載している。
【0021】
体幹部2は、基部1の環状のフランジ1aに下端部を取り付けられた筒状のフレーム2aを有するとともに、そのフレーム2aの上部に設けられて内部に腕部3や頭部4の各関節部の動作を制御する制御回路を収容するケーシング状の胴部2bを有しており、フレーム2aの左右側部には、腕部3を取り付けるコ字状のブラケット2cが、腕部3の取付け面を僅かに斜め下向きにして固設され、フレーム2aの上端部には、頭部4を取り付ける環状のフランジ2dが、頭部4の取付け面を上向きにして固設されている。
【0022】
2本の腕部3は左右対称に構成されている以外は基本的に互いに同一の構成を有している。即ち各腕部3は、上腕部3aと、前腕部3bと、手首部3cとを有するとともに、体幹部2のフレーム2aの左右側部のブラケット2cに上腕部3aを取り付けてそのブラケット2cに対し上腕部3aを概略垂直方向軸線周りの左右方向および概略水平方向軸線周りの上下方向に揺動させる2自由度の肩関節部3dと、上腕部3aに対し前腕部3bを概略水平軸線周りの上下方向に揺動させる1自由度の肘関節部3eと、前腕部3bに対し手首部3cをその延在方向のひねり軸線とそれと直交する曲げ軸線とそれらに直交する回し軸線との周りに回動させる3自由度の手首関節部3fとを有する。すなわち、腕部3からなる腕部モジュール(理解を容易にするため元の部分と同一の符号3で示す)は合計6自由度を有している。肩関節部3d,肘関節部3e,手首関節部3fは各々、通常のモータ式駆動機構を持っている。
【0023】
頭部4は前部に、ステレオビジョンとして対象物の位置情報を取得可能なように配置した例えばビデオカメラからなる2台のカメラ4aを有していて、それらのカメラ4aが撮像した2次元画像から制御用コンピュータは、例えば多数の画像を断層として面直方向に重ね合わせる3次元画像化処理およびその3次元画像に対する三角測量の原理の適用等により、撮影対象から頭部4までの距離と撮影対象の方向とを撮影対象の位置情報として演算で求めることができる。また頭部4は、2台のカメラ4aをフレーム2aの上端部のフランジ2dに取り付けてそのフランジ2dに対し2台のカメラ4aを垂直方向軸線周りの左右方向および概略水平方向軸線周りの上下方向に揺動させる通常のモータ式駆動機構を持つ2自由度の首関節部4bを有している。
【0024】
かかるこの実施形態のモジュラー構造ロボットによれば、台車内の制御用コンピュータに予め与えた作業プログラムに基づき各関節部を動作させて、手首部3cに装着した図示しないハンド等のエンドエフェクタを使い、例えば梱包箱の組立てや検査、その梱包箱内への製品の収納および、製品を収納した梱包箱の搬出等の作業を行うことができる。
【0025】
この実施形態のモジュラー構造ロボットはさらに、基部1と体幹部2とが互いに脱着可能なモジュール(交換可能な構成単位)とされ、また各腕部3と頭部4とがそれぞれ体幹部2に対して脱着可能なモジュール(交換可能な構成単位)とされてモジュラー構造を構成しており、具体的には、体幹部2からなる体幹部モジュール(理解を容易にするため元の部分と同一の符号2で示す)はフレーム2aの下端部に、基部1からなる基部モジュール(理解を容易にするため元の部分と同一の符号1で示す)のフランジ1aに対応する環状のフランジ2eを固設され、基部モジュール1のフランジ1aと体幹部モジュール2のフランジ2eはそれぞれ、互いに向き合うボルト穴とピン穴とを形成され、図ではフランジ1aの直径方向に互いに離間した2つのピン穴1bに位置決めピン5が立設され、それらのピン穴1bを周方向に挟む4つのボルト穴1cに雌ねじが形成されており、フランジ1aの2つのピン穴に向き合うフランジ2eの2つのピン穴は、位置決めピン5が公差の範囲内の僅かな遊びを持って嵌合できる大きさに形成され、またフランジ2eの残る4つのピン穴は、ボルト穴1cの雌ねじと螺合する固定ボルト6が挿通可能な大きさに形成されている。
【0026】
また、頭部4からなる頭部モジュール(理解を容易にするため元の部分と同一の符号4で示す)も、体幹部モジュール2の場合と同様、首関節部4bの下端部に、体幹部モジュール2のフランジ2dに対応する環状のフランジ4cを固設され、体幹部モジュール2のフランジ2dと頭部モジュール4のフランジ4cはそれぞれ、互いに向き合うボルト穴とピン穴とを形成され、図ではフランジ2dの直径方向に互いに離間した2つのピン穴に位置決めピン5が立設され、それらのピン穴を周方向に挟む4つのボルト穴に雌ねじが形成されており、フランジ2dの2つのピン穴に向き合うフランジ4cの2つのピン穴は、位置決めピン5が公差の範囲内の僅かな遊びを持って嵌合できる大きさに形成され、またフランジ4cの残る4つのピン穴は、フランジ2dのボルト穴の雌ねじと螺合する固定ボルト6が挿通可能な大きさに形成されている。
【0027】
そして腕部モジュール3は、体幹部モジュール2の側部に向く肩関節部3dの側面に、体幹部モジュール2のブラケット2cに対応するコ字状のブラケット3gを固設され、体幹部モジュール2のフランジ2cと腕部モジュール3のブラケット3gはそれぞれ、互いに向き合うボルト穴とピン穴とを形成され、図ではブラケット2cの横方向に互いに離間した2つのピン穴に位置決めピン5が立設され、それらのピン穴を周方向に挟む4つのボルト穴に雌ねじが形成されており、ブラケット2cの2つのピン穴に向き合うブラケット3gの2つのピン穴は、位置決めピン5が公差の範囲内の僅かな遊びを持って嵌合できる大きさに形成され、またブラケット3gの残る4つのピン穴は、ブラケット2cのボルト穴の雌ねじと螺合する図示しない固定ボルトが挿通可能な大きさに形成されている。
【0028】
ここで、図2に示すように、体幹部モジュール2と腕部モジュール3との間および体幹部モジュール2と頭部モジュール4との間を電気的に接続する配線8並びに、体幹部モジュール2と腕部モジュール3との間および体幹部モジュール2と頭部モジュール4との間で空圧を供給するホース等の配管は外部に露出しているが、配線8による電気的接続を中継するコネクタ並びに、配管による空圧の供給を中継するコネクタは、全て体幹部モジュール2側に固定配置されて、体幹部モジュール2の胴部2bに容易に着脱可能な前面側カバー2fおよび背面側カバー2gの内側に収められており、前面側カバー2fおよび背面側カバー2gを取り外すことで外部に露出する。また、体幹部2のフレーム2aの左右側部のブラケット2cも、体幹部モジュール2の前後方向および上方から見ると前面側カバー2fおよび背面側カバー2gの内側に収められており、前面側カバー2fおよび背面側カバー2gを取り外すことで腕部モジュール3の固定ボルト6等を着脱可能なように外部に露出する。さらに、体幹部2のフレーム2aの上端部のフランジ2dも、体幹部モジュール2の前後方向から見ると前面側カバー2fおよび背面側カバー2gの内側に収められており、前面側カバー2fおよび背面側カバー2gを取り外すことで頭部モジュール4の固定ボルト6等を着脱可能なように外部に露出する。これにより、腕部モジュール3および頭部モジュール4の着脱時に取り外す必要のあるカバーは体幹部モジュール2側のみとなるため、各モジュールの脱着作業を容易に行うことができる。加えて、腕部モジュール3および頭部モジュール4に付属するオプション機器用配線の有無やモジュール自体の搭載の有無といった異なる構成への変更の際に、使用しない配線をカバー内に格納する必要が無いため、その構成変更を容易に行うことができる。
【0029】
なお、本発明の他の一実施形態として、基部モジュール1のフランジ1aおよびそれに対応する体幹部モジュール2のフランジ2eにも、体幹部モジュール2のフランジ2dおよびそれに対応する頭部モジュール4のフランジ4cにも各々中央部に穴を持たせ、そして体幹部モジュール2のブラケット2cおよびそれに対応する腕部モジュール3のブラケット3gにも各々中央部に至る切欠きを持たせ、これらの穴および切欠き内に、基部モジュール1と体幹部モジュール2との間並びに体幹部モジュール2と腕部モジュール3および頭部モジュール4との間を電気的に接続する配線やその配線のコネクタ、基部モジュール1と体幹部モジュール2との間並びに体幹部モジュール2と腕部モジュール3および頭部モジュール4との間で空圧を供給するホース等の配管やその配管のためのコネクタを配置してもよい。これらの穴および切欠き内に、モジュール間を接続する電気配線やその配線のコネクタや、空圧を供給する配管やその配管のためのコネクタを配置することで、モジュール交換時に、モジュール間の電気配線や空圧配管を、短時間で容易に取外しおよび再接続することができる。
【0030】
さらに、この実施形態のモジュラー構造ロボットは、体幹部モジュール2の胴部2bの前面側カバー2fを外すと、体幹部モジュール2の前部の胴部2b上に支持板7が前向きに配置され、その支持板7は両側部を体幹部モジュール2の左右のブラケット2cに固定されるとともに、中央部に腕部モジュール3の手首部3cの動作位置校正用の円盤状のキャリブレーションポイント7aを突設され、さらに、そのキャリブレーションポイント7aの近傍の所定位置にピン穴7bを形成されている。なお、キャリブレーションポイント7aおよびピン穴7bは、体幹部モジュール2の胴部2bに容易に着脱可能な前面側カバー2fの内側に収まられており、前面側カバー2fを取り外すことで外部に露出する。
【0031】
かかるこの実施形態のモジュラー構造ロボットによれば、図1に示すように、基部モジュール1に対して体幹部モジュール2が、また体幹部モジュール2に対して左右の腕部モジュール3と頭部モジュール4とが、それらのモジュールに設けられたピン5とピン穴とからなる嵌合部によって公差の範囲内で概略位置決めされた状態で脱着可能にボルト6により結合されるので、体幹部モジュール2を基部モジュール1に対して容易に脱着することができるとともに、腕部モジュール3と頭部モジュール4を体幹部モジュール2に対して容易に脱着することができる。
【0032】
図3は、上記実施形態のモジュラー構造ロボットの腕部モジュールの校正動作を示す正面図、図4(a)は、そのモジュラー構造ロボットの両腕部モジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部を示す側面図、図4(b)は、そのモジュラー構造ロボットの体幹部モジュールと腕部モジュールとにそれぞれ設けられた位置合わせ部の係合状態を示す断面図であり、上述した体幹部モジュール2への両腕部モジュール3の結合後は、図3および図4(b)に示すように、体幹部モジュール2に対する各腕部モジュール3の校正動作によって、体幹部モジュール2に設けられた位置合わせ部としての円盤状のキャリブレーションポイント7aに、腕部モジュール3に設けられた位置合わせ部としての手首部3cの対応する形状の凹部3iが位置および姿勢を合わせられて嵌合され、さらに、手首部3cに突設されたピン3hがキャリブレーションポイント7aに対する軸線周りの向きを合わせられて、支持板7のキャリブレーションポイント7aの近傍のピン穴7bに嵌合され、その状態で体幹部モジュール2と腕部モジュール3との相対位置情報が校正される。
【0033】
すなわち、キャリブレーションポイント7aおよびピン穴7bに手首部3cの凹部3iおよびピン3hがそれぞれ嵌合されて手首部3cの位置および向きが固定されることで、上述の通り6自由度(6軸)を持つ腕部モジュール3の自由度が非冗長となり、腕部モジュール3の備える各関節軸の角度が一義的(一意)に決定される。ただし、腕部モジュール3は弾性特性(例えば、減速機に生じる応力による歪みなど)を持っているため、キャリブレーション時に腕部モジュール3の各関節軸にその関節軸のモータで既定の駆動トルクを加えることで、キャリブレーション結果への腕部モジュール3の弾性特性の影響を除外する。
【0034】
従ってこの実施形態のモジュラー構造ロボットによれば、体幹部モジュール2に対して左右の腕部モジュール3を高精度に動作させることができるとともに、キャリブレーションポイント7aおよびピン穴7bが左右の腕部モジュール3で共通なので、左右の腕部モジュール3同士についても互いに高精度に動作させることができる。なお、図1では体幹部モジュール2に対して左右の腕部モジュール3を電気的に接続する上述の露出した配線およびコネクタの図示を省略しているが、その配線およびコネクタは、上述のように体幹部モジュール2のブラケット2cおよびそれに対応する腕部モジュール3のブラケット3gの各々の中央部に至る切欠き内に配置してもよく、このようにすれば、腕部モジュール3の脱着の際にその配線も容易に脱着することができる。
【0035】
図5(a)は、上記実施形態のモジュラー構造ロボットの頭部モジュールの校正動作を示す正面図、図5(b)は、そのモジュラー構造ロボットの体幹部モジュールと頭部モジュールとにそれぞれ設けられた位置合わせ部の係合状態を示す断面図であり、この実施形態のモジュラー構造ロボットはさらに、図3および図5(a),(b)に示すように、頭部モジュール4の首関節部4bの前面に位置合わせ部としてのI形のキャリブレーション治具7cの基端部が取り付けられるとともに、体幹部モジュール2のフレーム2aの上端部付近の前側に上記キャリブレーション治具7cの先端部と嵌合する位置合わせ部としての短片状のキャリブレーションポイント7dが前向きに突設されている。
【0036】
そしてこの実施形態のモジュラー構造ロボットにあっては、図5(a),(b)に示すように、頭部モジュール4の首関節部4bの前面に取り付けられた位置合わせ部としてのキャリブレーション治具7cの先端部の中央の凹部が、体幹部モジュール2に対する頭部モジュール4の正面向きで真下に向く校正動作によって、体幹部モジュール2に設けられた位置合わせ部としてのキャリブレーションポイント7dに嵌合され、その状態で体幹部モジュール2と頭部モジュール4との頭部左右回転および上下回転の2自由度(2軸)の相対位置情報が校正される。
【0037】
従ってこの実施形態のモジュラー構造ロボットによれば、体幹部モジュール2を基部モジュール1に対して容易に脱着することができるとともに、腕部モジュール3と頭部モジュール4を体幹部モジュール2に対して容易に脱着することができ、さらに、腕部モジュール3に加えて頭部モジュール4も、体幹部モジュール2に対して高精度に動作させることができる。
【0038】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明のモジュラー構造ロボットは上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で適宜変更することができ、例えば基部モジュール1と体幹部モジュール2との間でも、基部モジュール1上に立設したストッパと、体幹部モジュール2の下端部に水平に突設した当接部とを体幹部モジュール2の回動により当接させた状態で、基部モジュール1に対する体幹部モジュール2の相対回動位置を校正するようにしてもよい。
【0039】
また、この発明においては、各モジュールは、そのロボットの使用目的に応じて異なる構成のものを適宜交換して装着してもよく、嵌合部の形状や位置合わせ部の形状も、そのロボットの使用目的に応じて適宜異なるものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
かくして本発明のモジュラー構造ロボットによれば、各々機能部分を構成する複数のモジュール(交換可能な構成単位)のうち互いに隣接する2つのモジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で互いに脱着可能に結合されているので、2つのモジュールを容易に互いに脱着することができ、それら2つのモジュールの結合後は、2つのモジュールの相対位置情報の校正のために、それら2つのモジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら2つのモジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合されるので、それら2つのモジュールを互いに対して高精度に動作させることができる。
【0041】
それゆえ本発明のモジュラー構造ロボットによれば、モジュールの交換後のロボットの動作の再教示の手間を省力化することができるので、以下の効果を得ることができる。
1)生産ラインに配置したロボットの故障部位の修理や点検等のメンテナンス時に、モジュール毎に交換することで、生産ラインの停止時間を最小限に短縮することができる。
2)ロボットのユーザがモジュールの交換および位置校正を行い得るので、ロボットメーカのメンテナンスマンの出張が必須でなくなり、メンテナンスマンが効率的なサービスを提供することができる。
3)モジュールの取付け部の仕様と配線等の接続コネクタの仕様とをそれぞれモジュール間で合わせることで、モジュール毎のアップデートが可能となり、ロボットに対する機能追加や改良、変更を容易に行うことができる。
4)生産ラインの生産状況に応じて、そこに配置したロボットのモジュール構成を最小限構成と最大限構成との間で変更することができるので、例えば腕部モジュールの本数や自由度を増減したり腕部モジュールに作業対象物の撮影用のカメラを設けたりして、作業に対し適正な構成に変更することで、コストおよび運用において最適なロボットを実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 基部モジュール(基部)
1a フランジ
1b ピン穴
1c ボルト穴
2 体幹部モジュール(体幹部)
2a フレーム
2b 胴部
2c ブラケット
2d フランジ
2e フランジ
2f 前面側カバー
2g 背面側カバー
3 腕部モジュール(腕部)
3a 上腕部
3b 前腕部
3c 手首部
3d 肩関節部
3e 肘関節部
3f 手首関節部
3g ブラケット
3h ピン
3i 凹部
4 頭部モジュール(頭部)
4a カメラ
4b 首関節部
4c フランジ
5 位置決めピン
6 固定ボルト
7 支持板
7a キャリブレーションポイント
7b ピン穴
7c キャリブレーション治具
7d キャリブレーションポイント
8 配線
【要約】
【課題】各モジュールの脱着とその後の位置情報の校正作業とを容易に行うことができるモジュラー構造ロボットを提供する。
【解決手段】各々機能部分を構成する複数のモジュールを備えるモジュラー構造ロボットであって、前記複数のモジュールのうち互いに隣接する2つのモジュールが、それらのモジュールに設けられた嵌合部によって概略位置決めされた状態で互いに脱着可能に結合され、前記2つのモジュールの相対位置情報の校正のために、前記2つのモジュールにそれぞれ設けられた位置合わせ部がそれら2つのモジュールの少なくとも一方の校正動作によって互いに係合される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5