(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】人孔接合部止水工法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
E02D29/12 D
(21)【出願番号】P 2019095602
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】302059953
【氏名又は名称】株式会社メーシック
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230973
【氏名又は名称】日本工営株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【氏名又は名称】川島 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】今▲崎▼ 雄司
(72)【発明者】
【氏名】保坂 陽
(72)【発明者】
【氏名】谷津 清宏
(72)【発明者】
【氏名】南澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和輝
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-058844(JP,A)
【文献】特開2002-004312(JP,A)
【文献】実開昭62-138747(JP,U)
【文献】実開昭57-091855(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部防水工法であって、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、つぎに、前記周溝部に止水接着剤を充填してシールすることを特徴とする人孔接合部止水工法。
【請求項2】
積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部防水工法であって、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成するとともに、前記コンクリート側塊の壁部に、前記周溝部の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥で、前記バイパス穴の手前或いは跨がる位置に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、つぎに、前記周溝部に止水接着剤を充填してシールし、つぎに、前記コンクリート側塊の壁部に形成した前記バイパス穴にシール材を注入してシールすることを特徴とする人孔接合部止水工法。
【請求項3】
前記コンクリート側塊の壁部に形成する前記バイパス穴は、前記周溝部の周方向に任意の間隔を空けて複数形成することを特徴とする請求項2に記載の人孔接合部止水工法。
【請求項4】
積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部防水工法であって、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成するとともに、前記コンクリート側塊の壁部に、前記コンクリート側塊の外周壁面と前記周溝部の奥部との間に存在する積層された前記コンクリート側塊の接合部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、つぎに、前記周溝部に止水接着剤を充填してシールし、つぎに、前記コンクリート側塊の壁部に形成した前記バイパス穴にシール材を注入してシールすることを特徴とする人孔接合部止水工法。
【請求項5】
前記コンクリート側塊の壁部に形成する前記バイパス穴は、前記コンクリート側塊の外周壁面と前記周溝部の奥部との間に存在する積層された前記コンクリート側塊の接合部の周方向に任意の間隔を空けて複数形成することを特徴とする請求項4に記載の人孔接合部止水工法。
【請求項6】
前記周溝部に充填する止水接着剤は、少なくとも前記コンクリート側塊の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の人孔接合部止水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部止水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の分割人孔にあって、設置された地盤が環境の変化により含水地盤となり、積層されたコンクリート側塊の接合部からの浸水の恐れが発生し、また、浸水が発生する場合がある。
従来、積層されたコンクリート側塊の接合部からの浸水を防ぐ手段として、積層されたコンクリート側塊の接合部を、コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して、コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する高さ方向所定幅の周溝部を形成し、周溝部に弾性接着剤を充填してシールしたり(例えば、特許文献1参照。)、また、積層されたコンクリート側塊の接合部に止水モルタルを配置する(例えば、特許文献2参照。)といったことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-58844号公報
【文献】特開2016-217118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された積層されたコンクリート側塊の接合部からの浸水を防ぐ手段は、既に接合部からの浸水が発生している場合には、コンクリート側塊の接合部に形成した周溝部に弾性接着剤を充填しようとしても、流入する水の水圧が周溝部に充填した弾性接着剤の全周囲に掛かり、弾性接着剤は強い水圧を受けて周溝部から押し出されてしまい止水できないといった問題がある。また、接合部から浸水が発生していなくても、コンクリート側塊の接合部に周溝部を形成する過程で、接合部を通じて周溝部に浸水が発生した場合には、前記と同様に、周溝部に弾性接着剤を充填しようとしても、流入する水の水圧により弾性接着剤が押し出されてしまい止水できないといった問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載された積層されたコンクリート側塊の接合部からの浸水を防ぐ手段は、既に接合部からの浸水が発生している場合には、積層されたコンクリート側塊の接合部に止水モルタルを配置することができず止水できないといった問題がある。
【0006】
本発明者等は、かかる問題を解決すべく試験を重ねた結果、コンクリート側塊の接合部から流入する水の一部を接合部の途中からバイパスさせて接合部を流れる水量を減少させ、水圧を低下させることに着眼し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、既設の分割人孔の積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止めることができる人孔接合部防水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部防水工法であって、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、つぎに、前記周溝部に止水接着剤を充填してシールすることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、前記止水材を挿入することにより、外部から前記コンクリート側塊の接合部を通じて前記周溝部に流入する水を前記止水材が吸いこみ膨潤又は膨張して前記周溝部の内周に圧接することにより、前記周溝部が堰止めされる。このようにして堰止めした前記周溝部に止水接着剤を充填することにより、前記周溝部を確実にシールすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部防水工法であって、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成するとともに、前記コンクリート側塊の壁部に、前記周溝部の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥で、前記バイパス穴の手前或いは跨がる位置に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、つぎに、前記周溝部に止水接着剤を充填してシールし、つぎに、前記コンクリート側塊の壁部に形成した前記バイパス穴にシール材を注入してシールすることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成するとともに、前記コンクリート側塊の壁部に、前記周溝部の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成することにより、外部からコンクリート側塊の接合部を通じて前記周溝部へ流入する水が前記バイパス穴に流れ、前記周溝部を流れる水量が減少し、水圧が低くなり、水膨潤材又は水膨張材からなる止水材が挿入し易い状態となる。
この状態で、前記周溝部の溝奥で、前記バイパス穴の手前或いは跨がる位置に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入することにより、前記止水材が流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して前記周溝部の内周に圧接する。
前記周溝部の溝奥に挿入した前記止水材が前記バイパス穴の手前である場合、コンクリート側塊の接合部を通じて前記周溝部へ流入する水は前記周溝部の奥部に連通する前記バイパス穴に流れるので、前記周溝部の内周に圧接した前記止水材に掛かる水圧を低く抑えることができ、前記周溝部に流入した水で前記止水材が押し出されることなく、前記周溝部が前記止水材により確実に堰止められる。
また、前記周溝部の溝奥に挿入した前記止水材が前記バイパス穴に跨がっている場合、前記周溝部へ流入した水の圧力が上昇し、水圧により前記周溝部の内周に圧接した前記止水材が前記周溝部の開口側へ押し出されたとしても、前記止水材が前記バイパス穴から離れた時点で前記バイパス穴が開放され、前記周溝部に流入した水は前記バイパス穴に流れ、前記周溝部の内周に圧接した前記止水材に掛かる水圧が低くなり、前記止水材がそれ以上押し出されることなく、前記周溝部が前記止水材により確実に堰止められる。
このようにして堰止めした前記周溝部に止水接着剤を充填することにより、前記周溝部を確実にシールすることができる。
そして、前記周溝部に止水接着剤を充填したら、前記コンクリート側塊の壁部に形成した前記バイパス穴にシール材を注入してシールするが、前記バイパス穴内を流れる水量は少ないので水圧が低く、前記バイパス穴に注入した前記シール材が押し出されることがなく、前記バイパス穴を前記シール材で確実にシールすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の、前記コンクリート側塊の壁部に形成する前記バイパス穴は、前記周溝部の周方向に任意の間隔を空けて複数形成することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記コンクリート側塊の壁部に形成する前記バイパス穴は、前記周溝部の周方向に任意の間隔を空けて複数形成するので、複数形成した前記バイパス穴により、バイパスさせる水量を確保することができるとともに、バイパスする水を分散化することにより個々の前記バイパス穴の小径化が図れ、前記バイパス穴を流れる水の水圧を前記バイパス穴に注入したシール材を押し出さない水圧に抑える径にすることができることから、外部からコンクリート側塊の接合部を通じて前記周溝部へ流入する水量が多い場合であっても、前記周溝部に挿入した前記止水材が押し出されない程度に前記周溝部へ流入する水量を減少させ、水圧を低くすることができるとともに、前記バイパス穴を前記シール材で確実にシールすることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を止める人孔接合部防水工法であって、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成するとともに、前記コンクリート側塊の壁部に、前記コンクリート側塊の外周壁面と前記周溝部の奥部との間に存在する積層された前記コンクリート側塊の接合部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成し、つぎに、前記周溝部の溝奥に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材を挿入して前記周溝部を堰止めし、つぎに、前記周溝部に止水接着剤を充填してシールし、つぎに、前記コンクリート側塊の壁部に形成した前記バイパス穴にシール材を注入してシールすることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、積層された前記コンクリート側塊の接合部を、前記コンクリート側塊の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部に沿って周方向に切削して前記コンクリート側塊の接合部に内周側に開口する周溝部を形成するとともに、前記コンクリート側塊の壁部に、前記コンクリート側塊の外周壁面と前記周溝部の奥部との間に存在する積層された前記コンクリート側塊の前記接合部に連通し内周壁面に開口する前記バイパス穴を形成することにより、外部からコンクリート側塊の接合部へ入った水が前記バイパス穴に流れ、これにより、水膨潤材又は水膨張材からなる前記止水材を挿入し易い状態となる。
この状態で、前記周溝部の溝奥に前記止水材を挿入することにより、前記止水材が流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して前記周溝部の内周に圧接する。
そして、外部からコンクリート側塊の前記接合部へ入った水は、前記接合部に連通する前記バイパス穴に流れるので、前記周溝部の内周に圧接した前記止水材に掛かる水圧を低く抑えることができ、前記接合部を通って前記周溝部に流入した水で前記止水材が押し出されることなく、前記周溝部が前記止水材により確実に堰止められる。
このようにして堰止めした前記周溝部に止水接着剤を充填することにより、前記周溝部を確実にシールすることができる。
そして、前記周溝部に止水接着剤を充填したら、前記コンクリート側塊の壁部に形成した前記バイパス穴にシール材を注入してシールするが、前記バイパス穴内を流れる水量は少ないので水圧が低く、前記バイパス穴に注入した前記シール材が押し出されることがなく、前記バイパス穴を前記シール材で確実にシールすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の、前記コンクリート側塊の壁部に形成する前記バイパス穴は、前記コンクリート側塊の外周壁面と前記周溝部の奥部との間に存在する積層された前記コンクリート側塊の接合部の周方向に任意の間隔を空けて複数形成することを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、前記コンクリート側塊の壁部に形成する前記バイパス穴は、前記コンクリート側塊の外周壁面と前記周溝部の奥部との間に存在する積層された前記コンクリート側塊の接合部の周方向に任意の間隔を空けて複数形成するので、複数形成した前記バイパス穴により、バイパスさせる水量を確保することができるとともに、バイパスする水を分散化することにより個々の前記バイパス穴の小径化が図れ、前記バイパス穴を流れる水の水圧を前記バイパス穴に注入したシール材を押し出さない水圧に抑える径にすることができることから、外部からコンクリート側塊の接合部へ入る水量が多い場合であっても、前記周溝部に挿入した前記止水材が押し出されない程度に前記周溝部へ流入する水量を減少させ、水圧を低くすることができるとともに、前記バイパス穴を前記シール材で確実にシールすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の、前記周溝部に充填する止水接着剤は、少なくとも前記コンクリート側塊の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤であることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、前記周溝部に充填する止水接着剤は、少なくとも前記コンクリート側塊の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤であるので、地震によってコンクリート側塊の接合部が水平方向にずれたとき、水平方向にかかる応力は、コンクリート側塊の接合部に沿って周方向に切削された周溝部に充填された接合部全周にある弾性接着剤層全体に均等にかかることになるから、前記応力に対する耐力の向上が図れ、また、コンクリート側塊の接合部の水平方向へのずれが周溝部に充填された弾性接着剤で形成された弾性接着剤層の伸び率を超えた場合、コンクリート側塊に先んじて弾性接着剤層が剪断し、コンクリート側塊の破壊を防止することができるので、地震にも対応することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明に係る人孔接合部止水工法によれば、既設の分割人孔の積層されたコンクリート側塊の接合部から流入する水を容易に且つ確実に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る人孔接合部止水工法の実施の形態の第1例を実施した人孔を示す縦断面図である。
【
図2】本発明に係る人孔接合部止水工法の第1例を実施する工程で、積層されたコンクリート側塊の接合部に周溝部を形成した状態を示す要部縦断説明図である。
【
図3】本発明に係る人孔接合部止水工法の第1例を実施する工程で、周溝部の周溝部内に止水材を挿入して周溝部を堰止めした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図4】本発明に係る人孔接合部止水工法の第1例を実施する工程で、周溝部に止水接着剤を充填してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図5】本発明に係る人孔接合部止水工法の実施の形態の第2例を実施した人孔を示す縦断面図である。
【
図6】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、積層されたコンクリート側塊の接合部に周溝部を形成した状態を示す要部縦断説明図である。
【
図7】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に、周溝部の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成した状態を示す要部縦断説明図である。
【
図8】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴の他例を示す要部縦断説明図である。
【
図9】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴の他例を示す要部縦断説明図である。
【
図10】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、周溝部の周溝部内に止水材を挿入して周溝部を堰止めした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図11】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、周溝部に止水接着剤を充填してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図12】本発明に係る人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴にシール材を注入してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図13】本発明に係る人孔接合部止水工法の実施の形態の第3例を実施した人孔を示す縦断面図である。
【
図14】本発明に係る人孔接合部止水工法の第3例を実施する工程で、積層されたコンクリート側塊の接合部に周溝部を形成した状態を示す要部縦断説明図である。
【
図15】本発明に係る人孔接合部止水工法の第3例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に、積層されたコンクリート側塊の接合部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成した状態を示す要部縦断説明図である。
【
図16】本発明に係る人孔接合部止水工法の第3例を実施する工程で、周溝部の周溝部内に止水材を挿入して周溝部を堰止めした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図17】本発明に係る人孔接合部止水工法の第3例を実施する工程で、周溝部に止水接着剤を充填してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【
図18】本発明に係る人孔接合部止水工法の第3例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴にシール材を注入してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る人孔接合部止水工法を実施するための形態の一例を詳細に説明する。
図1乃至
図4は本発明に係る人孔接合部止水工法の実施の形態の第1例を示すものであり、
図1は第1例の人孔接合部止水工法を実施した人孔を示す縦断面図、
図2は第1例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、積層されたコンクリート側塊の接合部に周溝部を形成した状態を示す要部縦断説明図、
図3は第1例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、周溝部の周溝部内に止水材を挿入して周溝部を堰止めした状態を示す要部縦断説明図、
図4は第1例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、周溝部に止水接着剤を充填してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【0023】
第1例の人孔接合部止水工法は、既設の人孔1における上下に積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3から流入する水を止める人孔接合部止水工法である。
【0024】
まず、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3を、コンクリート側塊2,2の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部3に沿って周方向に切削してコンクリート側塊2,2の接合部3に内周側に開口する周溝部4を形成する(
図2参照。)。
【0025】
つぎに、周溝部4の溝奥に水膨潤止水材又は水膨張止水材からなる止水材5を環状に挿入する。本例では、紐状の止水材5を周溝部4に沿って挿入し環状としている。
周溝部4内に挿入された環状の止水材5は、流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4の内周に圧接し、そして、周溝部4の内周に圧接した止水材に掛かる水圧は低くなっているので、流入した水で押し出されることなく周溝部4を堰止める(
図3参照。)。
なお、止水材5の形状は、周溝部4に沿って挿入することができれば特に限定されないが、本例のように紐状に形成すると周溝部4に沿った止水材5の挿入を容易にすることができるので好適である。また、予め周溝部4の溝奥の周長に合わせた長さに形成した紐状の止水材5の両端を接合して環状の止水材5としてもよい。環状の止水材5によれば、周溝部4の所定位置への止水材5の挿入を素早く且つ容易に行うことができる。
【0026】
ここで使用される止水材5となる水膨潤止水材、水膨張止水材としては、吸水性ゴム、吸水性ポリマー、親水性ポリマーなどがあげられる。本例では吸水性ポリマーを使用している。
【0027】
本例では、周溝部4内に水膨潤止水材又は水膨張止水材の一方を止水材5として挿入しているが、水膨潤止水材と水膨張止水材を併せて止水材5として周溝部4内に挿入してもよい(図示せず。)。この場合、挿入する水膨潤止水材と水膨張止水材の後先については特に限定されない。
【0028】
つぎに、周溝部4に止水接着剤6を充填してシールする(
図4参照。)。
止水接着剤6にあっては、樹脂系接着剤、セメント型接着剤などが使用される。樹脂系接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム系樹脂などがあげられる。セメント型接着剤としては、ポリマーセメントモルタルがあげられる。
【0029】
第1例では、止水接着剤6は、少なくともコンクリート側塊2,2の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤を使用している。弾性接着剤としては、弾性エポキシ樹脂、シリコンエラストマー、ゴムフィラー、ポリウエアを使用した熱硬化性樹脂等を使用することができ特に限定されないが、接着性、コンクリート側塊2,2の変位に対する追従性、更には耐薬品性、耐水性といった点から弾性エポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
以上のように構成される第1例の人孔接合部止水工法によれば、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部を、コンクリート側塊2,2の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部3に沿って周方向に切削してコンクリート側塊2,2の接合部3に内周側に開口する周溝部4を形成し、周溝部4の溝奥に水膨潤止水材又は水膨張止水材からなる止水材5を環状に挿入することにより、止水材5が流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4の内周に圧接し、周溝部4が堰止めされる。このようにして堰止めした周溝部4に止水接着剤6を充填することにより、周溝部4を確実にシールすることができ、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3から人孔1内への水の流入を確実に止めることができる
【0031】
第1例では、止水接着剤6は、少なくともコンクリート側塊2,2の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤が使用されているので、地震によってコンクリート側塊2,2の接合部3が水平方向にずれたとき、水平方向にかかる応力は、コンクリート側塊2,2の接合部3に沿って周方向に切削された周溝部4に充填された接合部3全周にある弾性接着剤層全体に均等にかかることになるから、応力に対する耐力の向上が図れ、また、コンクリート側塊2,2の接合部3の水平方向へのずれが周溝部4に充填された弾性接着剤で形成された弾性接着剤層の伸び率を超えた場合、コンクリート側塊2,2に先んじて弾性接着剤層が剪断し、コンクリート側塊2,2の破壊を防止することができるので、地震にも対応することができる。
【0032】
図5乃至
図12は本発明に係る人孔接合部止水工法の実施の形態の第2例を示すものであり、
図5は第2例の人孔接合部止水工法を実施した人孔を示す縦断面図、
図6は第2例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、積層されたコンクリート側塊の接合部に周溝部を形成した状態を示す要部縦断説明図、
図7は第2例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に、周溝部の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成した状態を示す要部縦断説明図、
図8は第2例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴の他例を示す要部縦断説明図、
図9は第2例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴の他例を示す要部縦断説明図、
図10は第2例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、周溝部の周溝部内に止水材を挿入して周溝部を堰止めした状態を示す要部縦断説明図、
図11は第2例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、周溝部に止水接着剤を充填してシールした状態を示す要部縦断説明図、
図12は第2例の人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴にシール材を注入してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【0033】
第2例の人孔接合部止水工法は、第1例と基本構成において変わるところが無く、第1例と同一の構成については同一の符号を付して説明する。
第2例は、第1例と同様に、既設の人孔1における上下に積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3から流入する水を止める人孔接合部止水工法であり、特に、コンクリート側塊2,2の接合部3から流入する水量が多い場合に適した人孔接合部止水工法であって、第1例で、周溝部4に挿入した止水材5が周溝部4に流入する水の水圧により開口側に押し出されるおそれがある場合に、止水材5の押出しを防止できるようにしたものである。
【0034】
第2例では、第1例と同様に、まず、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3を、コンクリート側塊2,2の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部3に沿って周方向に切削してコンクリート側塊2,2の接合部3に内周側に開口する周溝部4を形成する(
図6参照。)。
【0035】
つぎに、コンクリート側塊2,2の壁部に、周溝部4の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴7を形成する。バイパス穴7は、周溝部4へ挿入した後述する水膨潤止水材又は水膨張止水材からなる止水材5が周溝部4へ流入する水の水圧により押し出されないように、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水をバイパスさせ人孔1内へ排出させるものであり、そして、後述するように、周溝部4に止水接着剤6を充填して周溝部4をシールした後にシールされるものである。
【0036】
第2例では、周溝部4を形成してからバイパス穴7を形成しているが、バイパス穴7を形成してから周溝部4を形成してもよい。
【0037】
バイパス穴7は、バイパス穴7を流れる流量がバイパス穴7に挿入した後述するシール材を押し出さない水圧となる流量に制限する径であることを要する。従って、バイパス穴7へバイパスさせる水量が多い場合は、バイパス穴7を周溝部4の周方向に任意の間隔を空けて複数形成することが好ましい。
本例では、バイパス穴7を周溝部4の周方向に任意の間隔を空けて複数形成している(
図7参照。)。バイパス穴7の間隔や個数は、バイパス穴7へバイパスさせる水量やバイパス穴7へ挿入するシール材の材質などにより適宜設定する。
【0038】
また、本例では、バイパス穴7は接合部3を挟んで下側のコンクリート側塊2に形成しているが、これに限られるものではなく、
図8に示すように、上側のコンクリート側塊2に形成してもよく、また、
図9に示すように、下側と上側の両方のコンクリート側塊2,2に形成してもよい。
【0039】
つぎに、周溝部4の溝奥で、周溝部4内に開口するバイパス穴7の手前或いは跨がる位置に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材5を環状に挿入する。本例では、バイパス穴7に跨がる位置に止水材5を挿入する。また、周溝部4に挿入する環状の止水材5は、第1例と同様に、紐状の止水材5を周溝部4に沿って挿入し環状としている。
周溝部4内に挿入された止水材5は、流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4内周に圧接し、その結果、周溝部4へ流入した水の水圧が上昇し、水圧により周溝部4の内周に圧接した止水材5に高い水圧が掛かることになるが、
このとき、止水材5に周溝部4の内周に圧接した圧接力を超える水圧が掛かり、この水圧により止水材5が周溝部4の開口側へ押し出されたとしても、止水材5がバイパス穴7から離れた時点でバイパス穴7が開放され、周溝部4に流入した水はバイパス穴7に流れ、周溝部4の内周に圧接している止水材5に掛かる水圧が低くなり、止水材5がそれ以上押し出されることなく周溝部4を堰止める(
図10参照。)。
【0040】
また、図示しないが、バイパス穴7の手前の位置に止水材5を挿入した場合、周溝部4内に挿入された止水材5は、流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4内周に圧接し、そして、外部からコンクリート側塊2,2,の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水がバイパス穴7に流れ、周溝部3を流れる水量が減少し、周溝部4の内周に圧接した止水材5に掛かる水圧は低くなっているので、流入した水で押し出されることなく周溝部4を堰止めることになる。
【0041】
ここで使用される止水材5となる水膨潤止水材、水膨張止水材としては、第1例と同様、吸水性ゴム、吸水性ポリマー、親水性ポリマーなどがあげられる。第2例では吸水性ポリマーを使用している。
【0042】
また、本例では、周溝部4内に水膨潤止水材又は水膨張止水材の一方を止水材5として挿入しているが、第1例と同様に、水膨潤止水材と水膨張止水材を併せて止水材5として周溝部4内に挿入してもよい(図示せず。)。この場合、挿入する水膨潤止水材と水膨張止水材の後先については特に限定されない。
【0043】
つぎに、周溝部4に止水接着剤6を充填してシールする(
図11参照。)。
止水接着剤6にあっては、樹脂系接着剤、セメント型接着剤などが使用される。樹脂系接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム系樹脂などがあげられる。セメント型接着剤としては、ポリマーセメントモルタルがあげられる。
【0044】
第2例では、止水接着剤6は第1例と同様に、少なくともコンクリート側塊2,2の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤を使用している。弾性接着剤としては、弾性エポキシ樹脂、シリコンエラストマー、ゴムフィラー、ポリウエアを使用した熱硬化性樹脂等が使用されるが特に限定されないが、接着性、コンクリート側塊2,2の変位に対する追従性、更には耐薬品性、耐水性といった点から弾性エポキシ樹脂が好ましい。
【0045】
つぎに、コンクリート側塊2,2の壁部に形成したバイパス穴7にシール材8を注入してシールする(
図12参照。)。
第2例では、ゴム等の弾性体からなる栓9をバイパス穴7の奥に圧入して止水してからシール材8を注入してシールしている。
シール材8として、エポキシ樹脂、ポリマーセメントモルタルがあげられる。本例ではポリマーセメントモルタルを使用している。
【0046】
以上のように構成される第2例の人孔接合部止水工法によれば、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部を、コンクリート側塊2,2の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部3に沿って周方向に切削してコンクリート側塊2,2の接合部3に内周側に開口する周溝部4を形成するとともに、コンクリート側塊2,2の壁部に、周溝部4の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴7を形成することにより、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水がバイパス穴7に流れ、周溝部4を流れる水量が減少し、水圧が低くなり止水材5が挿入し易い状態となる。
【0047】
この状態で、周溝部4の溝奥で、周溝部4内に開口するバイパス穴7の手前或いは跨がる位置に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材5を環状に挿入することにより、止水材5が流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4の内周に圧接する。
本例では、バイパス穴7に跨がる位置に止水材5を挿入したので、周溝部4内に挿入された止水材5は、流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4内周に圧接し、その結果、周溝部4へ流入した水の水圧が上昇し、水圧により周溝部4の内周に圧接した止水材5に高い水圧が掛かることになるが、この水圧により止水材5が周溝部4の開口側へ押し出されたとしても、止水材5がバイパス穴7から離れた時点でバイパス穴7が開放され、周溝部4に流入した水はバイパス穴7に流れ、周溝部4の内周に圧接している止水材5に掛かる水圧が低くなり、止水材5がそれ以上押し出されることなく周溝部4が止水材5により確実に堰止められる。
【0048】
また、バイパス穴7の手前の位置に止水材5を挿入した場合は、コンクリート側塊2,2の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水は周溝部4の奥部に連通するバイパス穴7に流れるので、周溝部4の内周に圧接した止水材5に掛かる水圧を低く抑えることができ、周溝部4に流入した水で止水材5が押し出されることなく、周溝部4が止水材5により確実に堰止められる。
【0049】
また、本例では、バイパス穴7は接合部3を挟んで下側のコンクリート側塊2に形成しているが、
図8に示すように、バイパス穴7が上側のコンクリート側塊2に形成されていても、外部からコンクリート側塊2,2,の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水がバイパス穴7に流れ、周溝部3を流れる水量が減少し、周溝部4の内周に圧接した止水材5に掛かる水圧を低くすることができる。
また、
図9に示すように、バイパス穴7が下側と上側の両方のコンクリート側塊2,2の両方に形成した場合には、外部からコンクリート側塊2,2,の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水が上下のバイパス穴7に流れるので、多くの量の水をバイパスさせることができ、周溝部4へ流入する水の量が多くても周溝部3を流れる水量が減少し、周溝部4の内周に圧接した止水材5に掛かる水圧を低くすることができる。また、流入する水の量が少ない場合には、上側のバイパス穴7が通気穴となって下側のバイパス穴7内の水の流れをスムーズにすることができる。
【0050】
このようにして堰止めした周溝部4に止水接着剤6を充填することにより、周溝部4を確実にシールすることができる。
第2例では第1例と同様に、止水接着剤6は、少なくともコンクリート側塊の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤が使用されているので、地震によってコンクリート側塊の接合部が水平方向にずれたとき、水平方向にかかる応力は、コンクリート側塊の接合部に沿って周方向に切削された周溝部に充填された接合部全周にある弾性接着剤層全体に均等にかかることになるから、応力に対する耐力の向上が図れ、また、コンクリート側塊の接合部の水平方向へのずれが周溝部に充填された弾性接着剤で形成された弾性接着剤層の伸び率を超えた場合、コンクリート側塊に先んじて弾性接着剤層が剪断し、コンクリート側塊の破壊を防止することができるので、地震にも対応することができる。
【0051】
そして、周溝部4に止水接着剤6を充填したら、コンクリート側塊2,2の壁部に形成したバイパス穴7にシール材8を注入してシールするが、バイパス穴7内を流れる水量は少ないので水圧が低く、バイパス穴7に注入したシール材8が押し出されることがなく、バイパス穴7をシール材8で確実にシールすることができる。特に、
図8に示すように、バイパス穴7が上側のコンクリート側塊2に形成されていると、バイパス穴7へのシール材8の注入を容易に行うことができる。
【0052】
第2例では、バイパス穴7を周溝部4の周方向に間隔を空けて複数形成しているので、複数形成したバイパス穴7により、バイパスさせる水量を確保することができるとともに、バイパスする水を分散化することにより個々のバイパス穴7の小径化が図れ、バイパス穴7を流れる水の水圧をバイパス穴7に注入したシール材8を押し出さない水圧に抑える径にすることができる。
【0053】
これにより、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水量が多い場合であっても、周溝部4に挿入した止水材5が押し出されない程度に周溝部4へ流入する水量を減少させ、水圧を低くすることができるとともに、バイパス穴7をシール材8で確実にシールすることができる。
また、第2例では、ゴム等の弾性体からなる栓9をバイパス穴7の奥に圧入して止水してからシール材8を注入してシールしているので、バイパス穴7の水の流れが無い状態でシール材8を注入することができ、シール材8の注入作業を容易に行うことができる。
【0054】
図13乃至
図18は本発明に係る人孔接合部止水工法の実施の形態の第3例を示すものであり、
図13は第3例の人孔接合部止水工法を実施した人孔を示す縦断面図、
図14は第3例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、積層されたコンクリート側塊の接合部に周溝部を形成した状態を示す要部縦断説明図、
図15は第3例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に、周溝部の奥部に連通し内周壁面に開口するバイパス穴を形成した状態を示す要部縦断説明図、
図16は第3例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、周溝部の周溝部内に止水材を挿入して周溝部を堰止めした状態を示す要部縦断説明図、
図17は第3例の人孔接合部止水工法を実施する工程で、周溝部に止水接着剤を充填してシールした状態を示す要部縦断説明図、
図18は第3例の人孔接合部止水工法の第2例を実施する工程で、コンクリート側塊の壁部に形成したバイパス穴にシール材を注入してシールした状態を示す要部縦断説明図である。
【0055】
第3例の人孔接合部止水工法は、第2例と基本構成において変わるところが無く、第2例と同一の構成については同一の符号を付して説明する。
第3例は、第2例と同様に、既設の人孔1における上下に積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3から流入する水を止める人孔接合部止水工法である。
【0056】
第3例では、第2例と同様に、まず、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3を、コンクリート側塊2,2の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部3に沿って周方向に切削してコンクリート側塊2,2の接合部3に内周側に開口する周溝部4を形成する(
図14参照。)。
【0057】
つぎに、コンクリート側塊2,2の壁部に、コンクリート側塊2,2の外周壁面と周溝部4の奥部との間に存在する積層されたコンクリート側塊2,2の接合部3に連通し内周壁面に開口するバイパス穴7を形成する。バイパス穴7は、周溝部4へ挿入した後述する水膨潤止水材又は水膨張止水材からなる止水材が周溝部4へ流入する水の水圧により押し出されないように、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3に入った水の一部をバイパスさせるものである。
【0058】
第3例では、周溝部4を形成してからバイパス穴7を形成しているが、バイパス穴7を形成してから周溝部4を形成してもよい。
【0059】
バイパス穴7は、バイパス穴7を流れる流量がバイパス穴7に挿入した後述するシール材を押し出さない水圧となる流量に制限する径であることを要する。従って、バイパス穴7へバイパスさせる水量が多い場合は、バイパス穴7は、コンクリート側塊2,2の接合部3の周方向に任意の間隔を空けて複数形成することが好ましい。
本例では、バイパス穴7を接合部3の周方向に任意の間隔を空けて複数形成している(
図15参照。)。バイパス穴7の間隔や個数は、バイパス穴7へバイパスさせる水量やバイパス穴7へ挿入するシール材の材質などにより適宜設定する。
【0060】
また、本例では、バイパス穴7は接合部3を挟んで下側のコンクリート側塊2に形成しているが、これに限られるものではなく、図示しないが、第2例と同様に、上側のコンクリート側塊2に形成してもよく、また、下側と上側の両方のコンクリート側塊2,2に形成してもよい。
【0061】
つぎに、周溝部4の溝奥に水膨潤材又は水膨張材からなる止水材5を環状に挿入する。周溝部4に挿入する環状の止水材5は、第1例と同様に、紐状の止水材5を周溝部4に沿って挿入し環状としている。
周溝部4内に挿入された止水材5は、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3へ入り、周溝部4内に流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4内周に圧接する。そして、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3へ入った水は、接合部3に連通するバイパス穴7に流れるので、周溝部4の内周に圧接している止水材5に掛かる接合部3を通って周溝部4に流入した水の圧力を低く抑えることができる。これにより、接合部3を通って周溝部4に流入した水で止水材5が押し出されることなく、周溝部4が止水材5により確実に堰止められる(
図16参照。)。
【0062】
ここで使用される止水材5となる水膨潤止水材、水膨張止水材としては、第2例と同様、吸水性ゴム、吸水性ポリマー、親水性ポリマーなどがあげられる。第2例では吸水性ポリマーを使用している。
【0063】
また、本例では、周溝部4内に水膨潤止水材又は水膨張止水材の一方を止水材5として挿入しているが、第1例と同様に、水膨潤止水材と水膨張止水材を併せて止水材5として周溝部4内に挿入してもよい(図示せず。)。この場合、挿入する水膨潤止水材と水膨張止水材の後先については特に限定されない。
【0064】
つぎに、周溝部4に止水接着剤6を充填してシールする(
図17参照。)。
止水接着剤6にあっては、樹脂系接着剤、セメント型接着剤などが使用される。樹脂系接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーンゴム系樹脂などがあげられる。セメント型接着剤としては、ポリマーセメントモルタルがあげられる。
【0065】
第3例では、止水接着剤6は第2例と同様に、少なくともコンクリート側塊2,2の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤を使用している。弾性接着剤としては、弾性エポキシ樹脂、シリコンエラストマー、ゴムフィラー、ポリウエアを使用した熱硬化性樹脂等が使用されるが特に限定されないが、接着性、コンクリート側塊2,2の変位に対する追従性、更には耐薬品性、耐水性といった点から弾性エポキシ樹脂が好ましい。
【0066】
つぎに、コンクリート側塊2,2の壁部に形成したバイパス穴7にシール材8を注入してシールする(
図18参照。)。
第2例では、ゴム等の弾性体からなる栓9をバイパス穴7の奥に圧入して止水してからシール材8を注入してシールしている。
シール材8として、エポキシ樹脂、ポリマーセメントモルタルがあげられる。本例ではポリマーセメントモルタルを使用している。
【0067】
以上のように構成される第3例の人孔接合部止水工法によれば、積層されたコンクリート側塊2,2の接合部を、コンクリート側塊2,2の内周側から外周壁面を超えない範囲の所定の位置までの深さで、接合部3に沿って周方向に切削してコンクリート側塊2,2の接合部3に内周側に開口する周溝部4を形成するとともに、コンクリート側塊2,2の壁部に、コンクリート側塊2,2の接合部3に連通し内周壁面に開口するバイパス穴7を形成することにより、接合部3を通じて周溝部4へ流入する水がバイパス穴7に流れ、周溝部4を流れる水量が減少し、水圧が低くなり止水材5が挿入し易い状態となる。
【0068】
この状態で、周溝部4の溝奥に止水材5を挿入することにより、止水材5が流入する水を吸いこみ膨潤又は膨張して周溝部4の内周に圧接する。
そして、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3へ入った水は、接合部3に連通するバイパス穴7に流れるので、周溝部4の内周に圧接した止水材5に掛かる水圧を低く抑えることができ、接合部3を通って周溝部4に流入した水で止水材5が押し出されることなく、周溝部4が止水材5により確実に堰止められる。
【0069】
このようにして堰止めした周溝部4に止水接着剤6を充填することにより、周溝部4を確実にシールすることができる。
第3例では第2例と同様に、止水接着剤6は、少なくともコンクリート側塊の破壊より弱い力で剪断する弾性接着剤が使用されているので、地震によってコンクリート側塊の接合部が水平方向にずれたとき、水平方向にかかる応力は、コンクリート側塊の接合部に沿って周方向に切削された周溝部に充填された接合部全周にある弾性接着剤層全体に均等にかかることになるから、応力に対する耐力の向上が図れ、また、コンクリート側塊の接合部の水平方向へのずれが周溝部に充填された弾性接着剤で形成された弾性接着剤層の伸び率を超えた場合、コンクリート側塊に先んじて弾性接着剤層が剪断し、コンクリート側塊の破壊を防止することができるので、地震にも対応することができる。
【0070】
そして、周溝部4に止水接着剤6を充填したら、コンクリート側塊2,2の壁部に形成したバイパス穴7にシール材8を注入してシールするが、バイパス穴7内を流れる水量は少ないので水圧が低く、バイパス穴7に注入したシール材8が押し出されることがなく、バイパス穴7をシール材8で確実にシールすることができる。
【0071】
第3例では、バイパス穴7を接合部3の周方向に任意の間隔を空けて複数形成しているので、複数形成したバイパス穴7により、バイパスさせる水量を確保することができるとともに、バイパスする水を分散化することにより個々のバイパス穴7の小径化が図れ、バイパス穴7を流れる水の水圧をバイパス穴7に注入したシール材8を押し出さない水圧に抑える径にすることができる。
【0072】
これにより、外部からコンクリート側塊2,2の接合部3を通じて周溝部4へ流入する水量が多い場合であっても、周溝部4に挿入した止水材5が押し出されない程度に周溝部4へ流入する水量を減少させ、水圧を低くすることができるとともに、バイパス穴7をシール材8で確実にシールすることができる。
また、第3例では、第2例と同様に、ゴム等の弾性体からなる栓9をバイパス穴7の奥に圧入して止水してからシール材8を注入してシールしているので、バイパス穴7の水の流れが無い状態でシール材8を注入することができ、シール材8の注入作業を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
1 人孔
2,2 コンクリート側塊
3 接合部
4 周溝部
5 止水材
6 止水接着剤
7 バイパス穴
8 シール材
9 栓