(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】搬送型急速液体凍結設備
(51)【国際特許分類】
F25D 13/06 20060101AFI20230707BHJP
B65B 31/02 20060101ALI20230707BHJP
A23L 3/36 20060101ALN20230707BHJP
【FI】
F25D13/06
B65B31/02 B
A23L3/36 A
(21)【出願番号】P 2019065456
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518015088
【氏名又は名称】株式会社光商事
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤島 正憲
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-011302(JP,A)
【文献】特開2003-343964(JP,A)
【文献】特開2006-166736(JP,A)
【文献】特開昭60-164470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 ~ 16/00
F25D 27/00 ~ 31/00
A23L 3/36
B65B 31/02
B65D 81/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結すべき対象物の重量を計測する計量装置と、
容器に収納された前記対象物を、その容器と共に透明樹脂シートで密封包装する密封包装装置と、
前記容器に密封包装された対象物を順次自動搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送経路の中間部に配置され、かつ予め冷却された不凍液を貯留した凍結槽と、
前記凍結槽を通過したあとの前記容器に密封包装された対象物から不凍液を除去する不凍液除去手段と、
前記計量装置の計測値に基づいて前記搬送手段の搬送速度を
自動調節する搬送速度制御手段とを備えており
、
この搬送速度制御手段は、前記凍結槽を通過中の最も重い対象物に対応した速度を選択するように、前記搬送速度を制御することを特徴とする搬送型急速液体凍結設備。
【請求項2】
前記容器は、前記対象物の形状に対応した凹部に該対象物を収納する構造になっていることを特徴とする請求項1に記載の搬送型急速液体凍結設備。
【請求項3】
前記容器は、不活性ガスが充填されていることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送型急速液体凍結設備。
【請求項4】
前記不凍液を冷却するヒートポンプ式冷却装置を更に備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の搬送型急速液体凍結設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材、食品などの対象物を順次、密封包装してから不凍槽に浸漬させることで、対象物を連続的に急速凍結させる搬送型急速液体凍結設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近時においては、食材や食品を極低温に冷却させた不凍液の内部に浸漬して、急速に凍結する技術が開発されているが、このような方法で食材や食品を凍結させるためには、真空パックに封入するなどの前処理が必要となる。
しかしながら、このような真空パックに食材や食品を封入して凍結してしまうと、食品とパックが密着してしまって形状が保持されず、そのために意匠性の高い加工食品、例えば、寿司や刺身の盛り合わせ、弁当、おせち料理、洋菓子や和菓子、ケーキなどのスイーツのような食品の外観デザインを損ない、商品価値を低下させてしまうという問題があるが、このような問題点については、いまだ解決されていない。
【0003】
また、このような食品を密封包装してから凍結させると、お互い同士が固まってしまう、あるいは潰れるという問題が生じる。そこで、次の特許文献1には、容器内で食品を樹脂シートによって分離することによって食品同士が固まった状態で凍結しないようにすることが提案されている。また特許文献2は、大きめのプラスチック容器を用いることで食品が潰れないようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-229813号公報
【文献】特開2000-308474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で生産性の視点から見ると、食品を密封包装して急速凍結させる凍結設備では、その食品を凍結させる作業時間をできる限り短縮することが求められるが、この点についても何ら解決されていない。
本発明は前述したような課題に対応した急速液体凍結設備を提供することを目的としており、意匠性の高い食品も外観上のデザインを損ねることなく、効率よく急速凍結することができる、新規な構成の搬送型急速液体凍結設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による搬送型急速液体凍結設備は、凍結すべき対象物の重量を計測する計量装置と、容器に収納された前記対象物を、その容器と共に透明樹脂シートで密封包装する密封包装装置と、前記容器に密封包装された対象物を順次自動搬送する搬送手段と、
前記搬送手段の搬送経路の中間部に配置され、かつ予め冷却された不凍液を貯留した凍結槽と、前記凍結槽を通過したあとの前記容器に密封包装された対象物から不凍液を除去する不凍液除去手段と、前記計量装置の計測値に基づいて前記搬送手段の搬送速度を自動調節する搬送速度制御手段とを備えており、この搬送速度制御手段は、前記凍結槽を通過中の最も重い対象物に対応した速度を選択するように、搬送速度を自動調節する構成になっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による搬送型急速液体凍結設備は、対象物を容器に収容した状態で、透明樹脂シートで密封包装するので、意匠性の高い食品も外観上のデザインを損ねることなく、急速凍結できる。
また、対象物の重量に基づいて、不凍液内を通過する搬送速度を調節しているので、対象物を凍結させる作業時間が短縮でき、生産効率もよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】搬送型急速液体凍結設備の一例の基本構成図である。
【
図2】(a)は、密封包装される前の食品及び容器の斜視図、(b)は密封包装された後の食品及び容器の斜視図である
【
図3】密封包装装置の一例を示す基本構成図である。
【
図5】凍結槽及び冷却装置の一例を示す基本構成図である。
【
図6】搬送速度制御手段の基本動作の一例を示すグラフである。
【
図7】搬送速度制御手段の基本動作の他例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明に係る搬送型急速液体凍結設備の一例の基本構成図である。
この凍結設備1は、凍結すべき対象物Fの重量を計測する計量装置2と、対象物Fを容器Bと共に透明な樹脂シートSに密封包装する密封包装装置3と、密封包装された対象物Fを自動搬送する搬送手段4と、搬送手段4の搬送経路41の中間部に配置され、かつ予め冷却された不凍液が貯留されている凍結槽5と、凍結槽5を通過したあとの対象物Fから不凍液を除去する不凍液除去手段6と、計量装置2の計測値に基づいて、対象物Fの搬送手段4における搬送速度を調節する搬送速度制御部7とを備えている。
凍結槽5の上方全体は不凍液の飛散、蒸発を抑えるためにカバー部材51によって囲われている。なお凍結槽5の不凍液は、冷却装置8によって、―40度より低い極低温域まで予め冷却されている。
【0010】
計量装置2は、密封包装装置3の上流側に配置されていても、下流側に配置されていてもよいが、少なくとも凍結槽5よりも上流側に配置されている必要がある。計量装置2の構成は特に制限されないが、搬送手段4の作動を中断することなく対象物Fの重量を計測できるようにするとよい。
密封包装装置3は、容器に収容配列された対象物Fを、その容器Bごと透明樹脂シートSによって密封袋詰する。密封の際には袋内を真空引きしてもよいが、真空引きされた状態で隙間があると熱伝導率が悪くなり凍結時間が長くなってしまうので、袋内に窒素等の不活性ガスを封入するとよい。
【0011】
搬送手段4は、ベルトコンベアー式又はクレーン式のいずれでもよく、モーター42によって駆動されるようになっている。
凍結槽5は搬送手段4の搬送経路41の中間部に配置されている。凍結槽5には、予めマイナス40度程度又はそれ以下まで予め冷却された不凍液が貯留されている。不凍液としては人体に安全なエチルアルコール等が適する。搬送手段4によって搬送される対象物Fは凍結槽5で不凍液に完全に浸かった状態で急速凍結される。搬送手段4の搬送速度は対象物Fが完全凍結するのに十分な凍結時間が確保されるように搬送速度制御部7によって調節される。
不凍液除去手段6は、容器Bに密封封入された対象物Fに空気等を吹き付ける等して不凍液を除去すればよい。
【0012】
搬送速度制御部7は、マイコン基板等で構成されており、対象物Fの重量に基づいて搬送手段4の搬送速度、すなわちモーター42の回転速度を自動調節する。詳細に云えば、食品Fの種別が一つで、その重量が常に一定であれば搬送速度を調節する必要はないのであるが、種別が一つでない、あるいは種別が一つであっても、重量のばらつきが大きい対象物を扱う場合には搬送速度を調節した方が全体としての作業時間が短縮できる。そして対象物Fを凍結するのに要する時間は、その対象物Fの重量に概ね比例すると考えられるから、対象物Fの重量に基づいて、すなわち対象物Fの重量に基づいて搬送速度を調節すればよい。
【0013】
図2(a)は、密封包装される前の食品及び容器の斜視図、(b)は密封包装された後の食品の斜視図である。
容器Bは、ポリエチレン、ポロプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ABS等の樹脂によって形成されている。
図示の食品Fは、ショートケーキを例示しているが、本発明に好適な食品Fは、常温で長期保存ができず、外観、見栄えが重視されるような生ケーキ類や、おせち料理等である。
そのため容器Bは食品Fの形状を保持することが重要であり、鍔部B1を設け、切取部B2によって切り離し可能なように食品Fの形状に対応した凹部B1を設け、該食品Fを凹部B1に収納する形状になっている。また、容器Bは、食品Fが高級品に見えるように見栄えも重要である。なお、食品Fおよび容器Bを包み込む樹脂袋は、ポリエチレン、ナイロン等の透明樹脂シートSで形成されているが、食品Fが外部から視認できるように透明なものになっている。容器Bに食品Fを収容してから、筒状の透明樹脂シートSに容器Bの全体を入れて、真空引した後、透明樹脂シートSの両端を熱溶着S1すれば、透明樹脂シートSを容器Bに密着させた状態で密封封入できるので、食品Fは容器Bによって形崩れを生じることなく密封できる。また、食品Fの全体も、透明樹脂シート越しに凹所B3の窓から見えるので、食品の外観を損ねることもない。
【0014】
図3は、計量装置の一例の基本構成図である。
この計量装置2は、凍結槽5よりも上流側で搬送手段4に組み込まれている。具体的には、当該地点において搬送手段4の搬送ベルト44を支持するローラー43に対する荷重を計測するように構成されている。このような構成では、搬送されている食品Fの重量を逐次計測できるので、搬送速度をリアルタイムに調節することが可能になる。
【0015】
図4は密封包装装置の一例の基本構成図である。
この密封包装装置3はチャンバー型のものであって、基台31とカバー部32とによってシーラー33の周りにチャンバーを形成してその内側を真空(減圧)又は不活性ガス雰囲気とし、そこで食品F及び容器Bを密封包装する仕組みである。
チャンバーを減圧する手段やチャンバー内に不活性ガスを供給する手段は図示を省略しているが、カバー部32は下面が開放された長方体形状の箱体であって、図示しない手段によって昇降可能である。
シーラー33は、透明樹脂シートSを短時間で封止するためインパルス式、あるいは超音波式のものにするとよい。
【0016】
食品F及びボックスBを入れた透明樹脂シートSをシーラー33にセットして、カバー部32を基台31に密着させた状態としてチャンバー内を真空又は不活性ガス雰囲気にし、そこでシーラー33を作動させれば食品Fを密封包装あるいは不活性ガス封入包装できる。
【0017】
図5は、凍結槽及び冷却装置の一例の基本構成図である。
凍結槽5は、スレンレス等の金属や発泡ウレタン等の断熱材とで構成された水密な槽である。
凍結槽5の不凍液を冷却する冷却装置8は、冷媒の循環路として、蒸発器81と圧縮機82と凝集器83とが管路84によって接続されている。蒸発器81の出口近傍には、乾燥フィルター85が設けられている。
管路84は、銅、スチール或いはアルミ等の金属管又は樹脂管で構成されている。
蒸発器81は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成され、金属管の壁面を介してその内側の冷媒と外側の不凍液とが熱交換、すなわち不凍液から吸熱する作用をなす。
圧縮機82は、その種別に特段の制限はなく、ターボ型、スクリュー型、レスプロ型等を用いることができる。なお冷媒の種別に応じた圧縮圧を得るため圧縮機82は多段構成にしてもよい。
凝集器83は、基本的には銅、スチール或いはアルミ等の金属管で形成されており、金属管の壁面を介してその内部の冷媒と外部の空気とが熱交換できるようになっている。凝集器83には複数のフィン83aが固着されており、フィン83aに空気を送るためのブロアー83bが付設されている。凝集器83は、冷媒の熱を外気に対して放熱する。
乾燥フィルター85は、冷媒に混じっている異物、水分等を捕集するフィルターである。
膨張弁86は、開度調節可能な電磁弁又は機械弁であって、図示しない制御手段によって開度等が制御され、当該部分にオリフィスを形成する。
【0018】
次いで冷却装置8の基本動作を説明する。冷媒としてはR-404A又はR-410Aを想定している。
圧縮機82及びブロアー83bを作用させると、次のような動作が連続的になされる。なお蒸発器81によって冷却されるべき気体、液体は特に制限されない。
蒸発器81から圧縮機82に送られて来た気体状態の冷媒は、圧縮機82で圧縮されると、高温高圧な状態になって凝集器83に送られる。凝集器83では内側の冷媒と外側の空気との熱交換が行われ、冷やされた冷媒は凝集して高圧な液体状態になる。そして、この高圧な液体状態の冷媒は、膨張弁19を通過したときに圧力損失を受け、蒸発器81の中で断熱膨張して低温低圧な気体状態になる。このとき蒸発器81の内側の冷媒と外側の不凍液との熱交換によって不凍液が冷却され、蒸発器81から排出された低温低圧な気体状態の冷媒は圧縮機82に戻る。ヒートポンプAの基本能力は、圧縮機82の回転数、制御弁18の開弁率等によって調節できる。
【0019】
図6は、搬送速度制御手段の基本動作を示すグラフである。
計量装置2が計測した食品Fの重量は下向きのバーグラフで示しており、バーが下向きに長いほど重量が重いことを示している。
各バーの右下頂点から右に伸びた点線矢印は、その矢印の高さによって搬送速度を、長さによってその速度の継続時間を示している。例えば、時刻T1で食品Fの重量Mが計測された場合、その重量に対応した搬送速度Vと、その速度Vの持続時間Tとが算出される。持続時間Tは、重量Mの食品Fを凍結させるのに十分な凍結時間(凍結槽に漬ける時間)である。同様に時刻T2、T3、…でも食品Fの重量に基づいて、搬送速度とその持続時間が算出される。こうして、食品Fを計量する毎に、搬送速度、継続時間を算出し、各時点で最も遅い搬送速度、すなわち点線矢印の中の最も低い位置にある矢印が示す速度を選択していけば、食品F毎に重量が異なるような状況でも、各食品Fに対して必要な凍結時間が確保される最大の搬送速度が得られる。
この方法によれば、重量が重いほど搬送速度は遅く、重量が軽いほど搬送速度は速くなるが、搬送速度は、重量の最も重い食品Fが凍結槽5を通過するまでは重量の最も重い食品Fに対応した速度になり、重量の最も重い食品Fが凍結槽5を通過した後は、次に重量の
重い食品Fに対応した速度に順次変わって行くので、すべての食品Fを効率よく確実に凍結させることができ、結果として、食品Fを凍結させる作業時間が短縮できる。
搬送速度制御手段は、このような制御方法に限定されるものではなく、連続的に流れて来る食品が凍結するために、必要最小限度な搬送速度に制御されるものであればよい。
【0020】
図7は、搬送速度制御部の基本動作の他例を示すフローチャートである。
この基本動作では、搬送手段4において最大4つの食品Fが搬送状態になることを想定している。フローチャート中のmは計量手段2が計測した食品Fの重量、V0~V4は搬送中の4つの食品Fのそれぞれに対して算出された搬送速度を記憶する速度テーブル、Vmaxは最大速度、Vは実際の搬送速度を表している。
【0021】
フローチャートのステップについて説明すると、ステップS1は速度テーブルV3~V0を最大速度Vmaxに初期化するステップ、ステップS2は速度テーブルV3~V0から最も遅い搬送速度を選択するステップである。ステップ1、2によって、食品Fが搬送開始されるまで搬送速度は最大になる。
ステップS3は1つの食品の重量検知を許容する待ち時間を制限する検知タイマーのセットを行うステップである。
ステップS4は計量手段2が食品Fの重量を検知したか否かを判断するステップ、ステップD5は食品Fの重量mを検知したとき搬送速度Vtを算出するステップである。ここで搬送速度は、定数Aを、重量mの基準重量m0に対する比率で除すことで算出している。例えば基準重量に対して重量mが2倍であれば搬送速度は1/2倍になる。ステップS6は算出した搬送速度によって速度テーブルT0~T3を更新するステップ、ステップS7は速度テーブルV3~V0から最も遅い搬送速度を選択するステップである。
ステップS8は検知タイマーのタイムアップを判断するステップである。ステップS9はタイムアップした場合に、最大速度Vmaxによって速度テーブルT0~T3を更新するステップである。
要するにこのフローチャートは、搬送手段12によって搬送されている直近4つの食品のそれぞれから算出された速度の内から最も遅い搬送速度を選択するが、所定時間内に次の食品の搬送がなければ、搬送速度を徐々に最大速度に戻していくというアルゴリズムになっている。
【符号の説明】
【0022】
1 凍結設備
2 計量装置
3 密封包装装置
4 搬送手段
41 搬送経路
5 凍結槽
6 不凍液除去手段
7 搬送速度制御部
B 容器
F 対象物、食材、食品
S 透明樹脂シート