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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】電動工具用モータ及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/26 20060101AFI20230707BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20230707BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
H02K9/26 A
B25F5/00 G
H02K9/06 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019173513
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021052487
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 亮介
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-097570(JP,A)
【文献】特開2011-142801(JP,A)
【文献】特開2013-031901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/26
B25F 5/00
H02K 9/06
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部を有するステータと、
永久磁石を有し、前記永久磁石による磁界と前記コイル部に電流が流れることにより発生する磁界とで回転するロータと、
前記ロータの回転時に回転するファンと、を備え、
前記ファンは、
前記ファンの回転軸と同軸を中心として前記ファンの外周に沿って前記外周よりも内側に設けられ、前記回転軸に沿って前記ファンから前記ロータの方向に突出する壁と、
前記壁の内側に配置される複数のリブと、を有し、
前記複数のリブは、断面視において、前記壁と、絶縁体の一部が形成する固定壁と、で囲まれる空間内を、前記ファンの回転軸を軸として回転し、
前記ファンの回転時において、前記ロータ及び前記ステータが形成する空隙と、前記ファンが生成する気流が通過する排気路と、の間で渦を巻く乱流を発生させる、
電動工具用モータ。
【請求項2】
コイル部を有するステータと、
永久磁石を有し、前記永久磁石による磁界と前記コイル部に電流が流れることにより発生する磁界とで回転するロータと、
前記ロータの回転時に回転するファンと、を備え、
前記ロータ及び前記ステータが形成する空隙と、前記ファンが生成する気流が通過する排気路と、の間に、バッファ室を有し、
前記ファンは、
前記バッファ室に配置される複数のリブと、
前記排気路に配置される複数の羽と、を有し、
前記複数のリブの個数は、前記複数の羽の個数よりも少なく、
前記ファンの回転時に、前記バッファ室と前記排気路との間において、前記バッファ室の気圧が前記排気路の気圧よりも高くなるように気圧差を生じさせる、
電動工具用モータ。
【請求項3】
コイル部を有するステータと、
永久磁石を有し、前記永久磁石による磁界と前記コイル部に電流が流れることで発生する磁界とで回転するロータと、
前記ロータと、前記ロータと前記ステータとの間の空隙とを覆うロータハウジングと、
前記ロータの回転時に回転するファンと、を備え、
前記ファンは、
前記ファンの回転軸と同軸を中心として前記ファンの外周に沿って前記外周よりも内側に設けられ、前記回転軸に沿って前記ファンから前記ロータの方向に突出する壁と、
前記壁の内側に配置される複数のリブと、を有し、
前記複数のリブは、前記ファンが生成する気流が通過する排気路から、前記ロータハウジングへの空気の流れを阻害する、
電動工具用モータ。
【請求項4】
前記複数のリブは、断面視において、前記壁と、絶縁体の一部が形成する固定壁と、で囲まれる空間内を、前記ファンの回転軸を軸として回転する、
請求項3に記載の電動工具用モータ。
【請求項5】
前記固定壁は、
前記壁と入れ子になっており、
かつ、前記複数のリブと対向する、
請求項4に記載の電動工具用モータ。
【請求項6】
前記ファンは、前記壁の外側に配置される複数の羽を、更に有し、
前記複数のリブの個数は、前記複数の羽の個数よりも少ない、
請求項3~5のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項7】
前記複数のリブの各々の断面積は、前記複数の羽の各々の断面積よりも小さい、
請求項に記載の電動工具用モータ。
【請求項8】
前記ロータハウジングは、前記回転軸の方向で前記ロータと対向する面を有し、
前記面の少なくとも一部は、前記ファンの一部で構成されている、
請求項3~7のいずれか1項に記載の電動工具用モータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の電動工具用モータと、
工具本体と、を備える、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電動工具用モータ及び電動工具に関し、より詳細にはファンを備えた電動工具用モータ及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを備えた電動工具が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の電動工具では、ロータ及びステータから成るモータと、モータの回転軸に設けられた冷却ファンと、冷却ファンにより冷却されるモータ及びカーボンブラシ部と、カーボンブラシ部及びモータを収容するハウジングと、ハウジングに設けた冷却風の吸入口及び排出口とを備える。カーボンブラシ部は、吸入口とモータの整流子との間に円筒状側壁をもって配されており、整流子の外径側に位置する円筒状側壁に整流子側に広くコイルエンド側に狭いテーパ部を設け、カーボンブラシ部とコイルエンドとの間にカーボンブラシ部と係合する金属性の放熱板を設けている。
【0004】
特許文献1の電動工具では、冷却風の吸入口及び排出口を備えることで、モータ及びカーボンブラシ部を確実に冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-254337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の電動工具では、モータ等を確実に冷却することができるが、冷却風の吸入口と排出口との間に形成された冷却用風路に鉄粉等の粉塵が入りこむ可能性がある。その結果、粉塵が、電動工具内部、例えばロータとステータとの間の空隙に侵入する可能性がある。
【0007】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、モータを冷却しながら、モータ内部への粉塵の侵入を抑制する電動工具用モータ及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る電動工具用モータは、ステータと、ロータと、ファンと、を備える。前記ステータは、コイル部を有する。前記ロータは、永久磁石を有し、前記永久磁石による磁界と前記コイル部に電流が流れることにより発生する磁界とで回転する。前記ファンは、壁と、複数のリブと、を有する。前記壁は、前記ファンの回転軸と同軸を中心として前記ファンの外周に沿って前記外周よりも内側に設けられ、前記回転軸に沿って前記ファンから前記ロータの方向に突出する。前記複数のリブは、前記壁の内側に配置される。前記複数のリブは、断面視において、前記壁と、絶縁体の一部が形成する固定壁と、で囲まれる空間内を、前記ファンの回転軸を軸として回転する。前記電動工具用モータは、前記ファンの回転時において、前記ロータ及び前記ステータが形成する空隙と、前記ファンが生成する気流が通過する排気路と、の間で渦を巻く乱流を発生させる。
【0009】
本開示の一態様に係る電動工具用モータは、ステータと、ロータと、ファンと、を備える。前記ステータは、コイル部を有する。前記ロータは、永久磁石を有し、前記永久磁石による磁界と前記コイル部に電流が流れることにより発生する磁界とで回転する。前記ファンは、前記ロータの回転時に回転する。前記電動工具用モータは、前記ロータ及び前記ステータが形成する空隙と、前記ファンが生成する気流が通過する排気路と、の間にバッファ室を有する。前記ファンは、複数のリブと、複数の羽と、を有する。前記複数のリブは、前記バッファ室に配置される。前記複数の羽は、前記排気路に配置される。前記複数のリブの個数は、前記複数の羽の個数よりも少ない。前記電動工具用モータは、前記ファンの回転時に、前記バッファ室と前記排気路との間において、前記バッファ室の気圧が前記排気路の気圧よりも高くなるように気圧差を生じさせる。
【0010】
本開示の一態様に係る電動工具用モータは、ステータと、ロータと、ロータハウジングと、ファンと、を備える。前記ステータは、コイル部を有する。前記ロータは、永久磁石を有し、前記永久磁石による磁界と前記コイル部に電流が流れることで発生する磁界とで回転する。前記ロータハウジングは、前記ロータと、前記ロータと前記ステータとの間の空隙とを覆う。前記ファンは、前記ロータの回転時に回転する。前記ファンは、壁と複数のリブとを有する。前記壁は、前記ファンの回転軸と同軸を中心として前記ファンの外周に沿って前記外周よりも内側に設けられ、前記回転軸に沿って前記ファンから前記ロータ方向に突出する。前記複数のリブは、前記壁の内側に配置される。前記複数のリブは、前記ファンが生成する気流が通過する排気路から、前記ロータハウジングへの空気の流れを阻害する。
【0011】
本開示の一態様に係る電動工具は、前記電動工具用モータと、工具本体と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によると、モータを冷却しながら、モータ内部への粉塵の侵入を抑制する電動工具用モータ及び電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るモータを備える電動工具の概略図である。
図2図2は、同上のモータの外観図である。
図3図3は、同上のモータの分解斜視図である。
図4図4は、同上のモータの断面図である。
図5図5は、同上のモータのロータコアの斜視図である。
図6図6は、同上のモータのファンの底面図である。
図7図7は、同上のモータのファンの断面図である。
図8図8は、同上のモータの回転時におけるリブ付近の断面図である。
図9図9は、同上のモータの回転時におけるリブ付近の風量シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する各実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、各実施形態及び変形例に限定されない。これらの実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0015】
以下の説明では、モータ1が図1に示される通り設置された状態での、水平面に対して垂直な(直交する)方向を「上下方向」として説明する。図面中の「上下方向」を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。これらの方向はモータ1の設置状態を限定する趣旨ではない。
【0016】
(実施形態)
以下、本実施形態に係る電動工具及び電動工具用モータについて、図1図9を用いて説明する。
【0017】
(1)電動工具
図1に示すように、電動工具10は、モータ1を備える。また、図1に示すように、電動工具10は、電源101と、駆動伝達部102と、出力部103と、チャック104と、先端工具105と、トリガボリューム106と、制御回路107と、を更に備える。電動工具10は、先端工具105をモータ1の駆動力で駆動する工具である。
【0018】
モータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。モータ1は、例えば、ブラシレスモータである。電源101は、モータ1を駆動する電流を供給する直流電源である。電源101は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。駆動伝達部102は、モータ1の出力(駆動力)を調整して出力部103に出力する。出力部103は、駆動伝達部102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される部分である。チャック104は、出力部103に固定されており、先端工具105が着脱自在に取り付けられる部分である。先端工具105(ビットとも言う)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられて用いられる。
【0019】
トリガボリューム106は、モータ1の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガボリューム106を引く操作により、モータ1のオンオフが切替可能である。また、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量で、出力部103の回転速度、つまりモータ1の回転速度が調整可能である。制御回路107は、トリガボリューム106に入力された操作に応じて、モータ1を回転又は停止させ、また、モータ1の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104に取り付けられる。そして、トリガボリューム106への操作によってモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。
【0020】
なお、実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0021】
(モータ)
(2-1)概要
図2を参照して、モータ1の概要について説明する。モータ1は、一例として、6極9スロットの3相ブラシレスモータである。モータ1は、図2に示すように、出力軸20と、ハウジング11と、複数の排気孔12と、複数の吸気孔13と、を備える。出力軸20は、モータ1の出力トルクを外部に伝達する。ハウジング11は、後述するステータ3を固定するケースである。また、ハウジング11の中を磁力線が通り、ハウジング11は永久磁石21とともに磁気回路を形成する。複数(図2では6個の排気孔が2組で合計12個)の排気孔12は、モータ1のハウジング11内部で発生する熱を空気とともに排気及び排熱する。排気孔12は、図2に示すように、ハウジング11に開けた矩形状の孔である。複数(図2では、12個の排気孔が4組で合計48個)の吸気孔13は、モータ1を空冷するために空気を吸気する孔である。吸気孔13は、図2に示すように、ハウジング11に開けた矩形状の孔である。
【0022】
次にモータ1の各要素について、図3を用いて説明する。図3に示すように、モータ1は、第1ベアリング14、ファン15、ロータ2、ステータ3、ホール測定基板4、絶縁体5、第2ベアリング16及び基板6を備える。
【0023】
第1ベアリング14と第2ベアリング16とは、いわゆる軸受であり、ボールベアリング等で形成される。第1ベアリング14と第2ベアリング16とは、回転するロータ2の出力軸20を保持する。第1ベアリング14と第2ベアリング16とは、出力軸20に沿って、ファン15、ロータ2及びホール測定基板4を挟んで対向する。第1ベアリング14は、ファン15の上面の凹部53に、第2ベアリング16は第2絶縁体51の嵌合部52にそれぞれ嵌まる。第1ベアリング14と第2ベアリング16とは、内輪が出力軸20に固定され、外輪はモータ1本体に固定される。第1ベアリング14と第2ベアリング16との内輪は、ロータ2の回転とともに出力軸20と一緒に回転する一方で、第1ベアリング14と第2ベアリング16とのリテーナーに保持されたボールと潤滑油をシールしていることにより、回転は滑らかに行いながら第1ベアリング14と第2ベアリング16との外輪は出力軸20を保持することができる。第1ベアリング14と第2ベアリング16との主な材料は、例えば、高炭素クロム鋼、中炭素鋼、窒化シリコンセラミックスである。
【0024】
ファン15は、モータ1のステータ3及び駆動基板61を空気により冷却するために空気の流れを起こす。ファン15は、回転することで、複数の吸気孔13から空気を吸気し、吸気した空気を複数の排気孔12から排気する。このとき、吸気された空気は、駆動基板61の周囲及びステータ3の外側を通り、複数の排気孔12から排気される。吸気された空気が、駆動基板61の周囲及びステータ3の外側を通ることで駆動基板61及びステータ3が冷却される。つまり、ファン15は、複数の吸気孔13から吸気された空気を、駆動基板61の周囲及びステータ3の外側を通し、複数の排気孔12から排気及び排熱する、という空気の流れを作り出すことによってモータ1を冷却する。ファン15の詳細な構造については後述する。
【0025】
ロータ2は、出力軸20と、複数の永久磁石21と、ロータコア22と、を備える。出力軸20は、ロータコア22の内部に保持され、上述したように出力トルクを外部に伝達する。出力軸20は、第1ベアリング14と第2ベアリング16とにより支持される。
【0026】
永久磁石21は、複数(図3では、6つ)の永久磁石M1~M6で構成される。永久磁石21は直方体状であり、ロータコア22に開けられた孔23にそれぞれ嵌合する。永久磁石21は、図3に示すように、正6角形の周方向に沿って、正6角形の各辺を形成するように永久磁石M1から順番に永久磁石M6まで互いに隣接して配置されている。永久磁石M1と永久磁石M6は隣り合っている。6個の永久磁石21は、ロータ2の径方向に着磁されている。3つの永久磁石M1,M3,M5は、内周にN極、外周にS極となるように着磁されている。残る3つの永久磁石M2,M4,M6は、逆に内周がS極、外周にN極となるように着磁される。6個の永久磁石M1~M6の内周では、N極とS極とは交互に配置される。同様に、6個の永久磁石M1~M6の外周においても、N極とS極とは交互に配置されている。永久磁石21の素材は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等であり、加えてネオジム等との合金あるいは酸化物である。
【0027】
ロータコア22は、円状であり、複数(図3では6個)の永久磁石21を格納する孔23を含む。ロータコア22は、出力軸20とともに回転自在であり、後述するステータ3のコイル部32に電流が流れることにより発生する磁界により回転する。ステータ3のコイル部32に交流電圧を印加すると、ステータ3内に回転磁界が発生する。回転磁界の動きに永久磁石21が吸い寄せられるようにロータ2も同じ速度で同期回転する。つまり、ロータコア22は永久磁石21を有し、永久磁石21による磁界とステータ3のコイル部32に電流が流れることにより発生する磁界とで回転し、発生するトルクを出力軸20に伝える。ロータコア22の材料は、例えば、鉄である。ロータコア22の鉄心は、例えば、珪素が混入された珪素鋼、パーマロイ、フェライトが用いられる。また、ロータコア22は、発生するトルクを出力軸20に伝えるために高強度が求められることから、鉄、ニッケル、銅、炭素等の合金が使用されることもある。
【0028】
ステータ3は、ステータコア30と、コイル部32と、絶縁体5と、を備える。ステータコア30は、図5に示すように、外殻33と、複数(ここでは、9つ)のティース301~309と、を有する。外殻33は、円筒状であり、その中心は出力軸20の回転軸Cと一致する。複数のティース301~309は、鉄心31及び円弧形状の面を有する結合部材34を有している。結合部材34は、鉄心31の両端のうちの一端に設けられている。複数のティース301~309は、複数のティース301~309の各々が有する結合部材34が結合するように、環状に配置される。複数の結合部材34が結合されることで、内殻202が形成される。複数のティース301~309の各々が有する結合部材34が結合するように環状に配置することで形成される内殻202から、各鉄心31が内殻202の外周面から突出する。各鉄心31は、均等の角度間隔(例えば、40°)で配置される。内殻202から突出している各鉄心31の先端は、外殻33の内周面と当接している。つまり、内殻202と外殻33とは、各鉄心31を介してつながっている。このとき、内殻202の中心と、外殻33の中心とは一致する。ここで、内殻202の内径は、ロータ2の径よりも大きい。内殻202が形成する円の中心から内殻202の内周面までの長さ(半径)は、ロータ2の半径にロータ2及びステータ3が形成する空隙71を加えた長さである。ここで、ステータコア30の材料は、低損失で飽和磁束密度が高い材料であり、例えば、珪素鋼、電磁純鉄、パーマロイである。
【0029】
絶縁体5は、第1絶縁体50と、第2絶縁体51と、を有する。第1絶縁体50及び第2絶縁体51とは、絶縁体材料、例えば、ゴム、エナメルなどの高分子化合物や樹脂、ガラス繊維などで構成される。第2絶縁体51は、嵌合部52に第2ベアリング16を収容し、更に後述するホール測定基板4を収容する。第1絶縁体50及び第2絶縁体51は、ステータコア30の鉄心31を覆う構造を有する。第1絶縁体50及び第2絶縁体51は、モータ1の回転軸方向において結合し、ステータコア30の鉄心31の一部を覆う。つまり、絶縁体5は、鉄心31と、後述するコイル部32とを電気的に絶縁する。
【0030】
コイル部32は、図3では9つのコイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3を有する。コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3は、モータ1の内部に巻かれる巻線で形成される。巻線の材料は、例えば銅である。なお、巻線の材料は、その一部が一部アルミニウム等であってもよい。表面を絶縁体5が覆った鉄心31の1つずつに巻線が巻回され、コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3が形成されている。コイル部32の9つのコイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3に順次電流を流すことによって磁界が発生し、永久磁石21を有するロータ2は回転する。コイル部32は、巻き数、巻き方、コイルの接続方式等によりモータ1の性質が変化する。例えば、モータ1とコイル部32の巻き数の関係では、巻き数が多いほど無負荷時の最大回転速度が遅くなる。また、巻き数が多いほど同じトルクを得るための電流は少なくなる。つまりトルク定数は大きい。コイル部32の巻き方には、例えば、分布巻と集中巻とがあり、本実施形態では集中巻を採用している。コイルの接続方式には、例えば、星型結線と三角結線とがある。本実施形態では、コイルの接続方式は、星型結線である。
【0031】
ホール測定基板4は、ホール基板40と、ホールIC(Integrated Circuit)41と、を有する。ホール測定基板4は、モータ1の回転位置を検出する。ホールIC41は、回転軸から見てホール基板40の下面に配置される。ホールIC41は、ホール効果を利用した磁気センサと、出力をデジタル化するICと、を有する。ホールIC41は、磁気センサから出力されたホール電圧を増幅し、IC内部の回路、例えば、比較器(コンパレータ)等、で信号処理することにより、磁束密度の大きさに応じた信号を出力する。ホール測定基板4は、第2ベアリング16が収容された第2絶縁体51に、モータ1の出力軸20の回転軸Cを中心として、負荷方向に収容される。また、ロータ2とはわずかな空隙である位置検出用空隙70で隔てられている。
【0032】
基板6は、ポッティング60と、駆動基板61と、駆動回路62と、放熱台63と、を有する。
【0033】
駆動回路62は、モータを駆動するための各種回路から構成されている。各種回路は、少なくともスイッチ回路、PWM(Pulse Width Modulation)制御回路及び演算処理回路を含む。スイッチ回路は、コイル部32の各コイルU1~U3、V1~V3、W1~W3に接続され、各コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3の電流の流れる方向及び通電の入り切りを制御する。このようなスイッチ回路の各スイッチ素子は、例えばパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)を用いて構成することができる。PWM制御回路は、PMW制御されたパルス繰り返し周波数で、スイッチ回路の各スイッチ素子の入り切り動作を繰り返す。演算処理回路は、通電切替タイミングと、回転速度指令と、を含む信号をPWM制御回路に伝達する。駆動回路62は、駆動基板61上に構成される。
【0034】
ポッティング60により、放熱台63と、駆動回路62と、駆動基板61とは結合している。ポッティング60は、振動から基板を保護する場合、湿度や粉塵等の汚れから基板を保護する場合等に用いられる。ポッティング60の材料は、例えば、ウレタン樹脂等である。放熱台63は、駆動基板61を含めたポッティング60からの放熱を担う。駆動回路62は、コイル部32の各コイルU1~U3、V1~V3、W1~W3に流れる大電流の入り切りを実施するため、発熱しやすい。このため、放熱台63は、例えば、窒化アルミニウムセラミックス、アルミナセラミックス、マグネシアセラミックスの放熱材料基板が使用される。
【0035】
(2-2)構成
モータ1の構成について説明する。まず、図6及び図7を用いて、ファン15の構造について説明する。図6は、モータ1のファン15を下から上方向に見た底面図である。図6は、回転軸Cを通り、回転軸Cに平行な面の断面図である。
【0036】
ファン15は、主板150、出力軸孔151、ハブ152、溝部153、第2壁154、複数のリブ155、壁156及び複数の羽157を有する。ファン15は、遠心ファンである。
【0037】
図6を参照して、ファン15の回転軸Cから外側に向かって順番にファン15の構造について説明する。ファン15は回転軸Cを中心とする円状であり、中心に出力軸20を通す出力軸孔151が開いている。
【0038】
ファン15は、出力軸孔151と同軸を中心として円状に、すなわち回転軸Cを中心としてファン15と同心円状のハブ152を有する。ハブ152は、出力軸孔151からハブ152の外周まで同一平面である。ファン15は、ハブ152の端部から、ファン15と同心円状の溝部153を有する。溝部153を介して、ファン15は、ファン15と同心円状であり、出力軸20方向から見てファン15からロータ2方向に突出している第2壁154を有する。ここで、出力軸20から見てファン15からロータ2の方向とは、モータ1からすると、負荷を接続する方向とは反対方向、すなわち反負荷方向である。
【0039】
ファン15の第2壁154の回転軸Cから見た外側には、第2壁154の周方向に沿って、主板150と複数のリブ155で構成される領域であるリブ部158が存在する。リブ部158には、第2壁154の周方向に沿って、主板150と、リブ155と、が交互に現れる。リブ155は、主板150から見て反負荷方向に突出している。リブ155の高さは、図7に示すように、第2壁154よりも低く、また壁156よりも低い。リブ155は、第2壁154から後述する壁156までつながっている。リブ155は、第2壁154の周方向の接線と垂直に交差し、複数のリブ155から第2壁154へのそれぞれの垂線の延長線は、ファン15の中心(回転軸C)で交わる。すなわち、複数のリブ155の各々はファン15の中心から見て放射状に配置される。また、リブ155は回転軸Cから見て放射状に角度間隔は均等に配置されている。リブ155は、第2壁154から壁156へとつながっている。リブ155は壁156ともファン15の周方向における接線とリブ155は垂直に交わる。リブ155は、ファン15の強度を補強するために導入されている。
【0040】
壁156は、ファン15の外周や第2壁154に沿って同心円状に、主板150から見て反負荷方向に突出している。壁156の高さは、主板150から反負荷方向を見て、後述する羽157と同等の高さである。また、リブ155よりも高く、第2壁154よりも低い。壁156は、後述するロータ2とステータ3とが形成する空隙71に、粉塵等が侵入することを抑制する。また、後述する固定壁501とラビリンス構造を形成している。ここで、ラビリンス構造とは、気体の流路が長くなるよう絞りを設けたもので、気体の流路が迷路状になる構造である。
【0041】
ファン15の壁156の外側には、壁156の周方向に沿って外側に、主板150と複数の羽157で構成される領域である羽部159が存在する。つまりファン15は壁156の外側に配置される複数の羽157を更に有する。羽部159は、壁156の外周からファン15の外周までの領域である。羽157と壁156とが交わる点において、壁156の周方向の接線と、羽157とは垂直に交わる。すなわち、羽157の延長線上には回転軸Cがあり、羽157は回転軸Cから見て放射状に広がっている。また、羽157は回転軸Cから見て放射状に角度間隔は均等に配置されている。羽157の高さは、主板150から出力軸20の反負荷方向に突出している。また、羽157の高さは、図7に示すように、壁156と同等である。羽157は、ファン15の回転時において、空気をファン15の回転軸Cから見て外側に排出する。
【0042】
ここで、ファン15のリブ155と羽157の関係について説明する。図7に示すように、ファン15の回転軸Cを通り、出力軸20に平行な面での断面視において、リブ155の断面積は、羽157の断面積よりも小さい。また、ファン15において、リブ155の数は、羽157の数よりも少ない。
【0043】
次に、図4の断面図を参照して、モータ1の構造の主要部であるロータ2とステータ3と、について説明する。
【0044】
ロータコア22と、ステータコア30とは、モータ1の出力軸20の回転軸Cを中心として、わずかな空隙71によって隔てられている。この空隙71に鉄粉等の粉塵が侵入すると、モータがロックし、モータ1の故障につながる可能性がある。このため、空冷しつつ、空隙71に鉄粉等が入らないようにする必要がある。
【0045】
ロータ2は、ロータハウジング200によって覆われる。ロータハウジング200はロータ2よりもわずかに大きい。ロータハウジング200は、複数の部材によって形成されている。ロータハウジング200は、ロータ2と空隙7を形成する。ここで空隙7は、位置検出用空隙70、ロータ2とステータ3が形成する空隙71及び通気孔72により形成されている。
【0046】
上下方向におけるロータ2の下面と対向するロータハウジングの面201は、図4に示すように、ロータ2から位置検出用空隙70を介して、ホール測定基板4、第2ベアリング16及び第2絶縁体51で形成される。ロータ2の回転軸Cから見て周方向と対向するロータハウジング200の面202は、図4に示すように、ロータコア22とステータコア30とが形成する空隙71を介して、ステータコア30の結合部材34によって形成される。結合部材34は連結されており、結合部材34がロータハウジング200の面202を形成しているので、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71を気密性良く覆うことができる。このため、側面からの粉塵の侵入を抑制することができる。上下方向におけるロータ2の上面と対向するロータハウジング200の面203は、図4に示すように、ファン15により覆われる。ファン15と固定壁501が形成する通気孔72が排気路9を介してファン15の外部へとつながっている。つまり、ロータハウジング200は、回転軸Cの方向でロータ2と対向する面203を有し、面203の少なくとも一部は、ファン15の一部で構成されている。
【0047】
(3)動作
(3-1)概要
モータ1とファン15の動作について説明する。モータ1は、U相、V相、W相の3相からなり、永久磁石21は6つの永久磁石M1~M6からなる6極であり、コイル部32は9つのコイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3からなる9スロットのモータである。すなわち、6極9スロットの3相ブラシレスモータである。3相ブラシレスモータは、永久磁石21で構成されたロータ2の周りに、コイル部32を配置する。コイル部32には通電を入り切りするスイッチ回路が接続される。スイッチ回路は、ロータ2の回転に応じて、各コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3の通電の切替を実施する。スイッチ回路は、ホール測定基板4が発生する位置検出信号に基づいて、9個のコイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3に対する通電の切替タイミングを切替える。ホール測定基板4は、位置センサを用いてロータ2の回転位置に対応して位置情報を発生する。
【0048】
(3-2)動作
図3に示すように、コイル部32は、コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3の9つのコイルを含む。コイルU1~U3はそれぞれ接続され、U相コイルを形成する。コイルV1~V3はそれぞれ接続され、V相コイルを形成する。同様に、コイルW1~W3はそれぞれ接続され、W相コイルを形成する。各コイルU1~U3、V1~V3、W1~W3には、通電によって電流が流れると、磁界が発生する。駆動回路62のスイッチ回路は、電流の流れる向き、通電の入り切りを切替えることにより、発生する磁界の向き、大きさを変えることができる。また、駆動回路62は、ロータ2の回転位置に応じて駆動電流を供給する。このことにより、ロータ2は、回転位置に応じた駆動力を得ることができる。
【0049】
コイルU1~U3,V1~V3,W1~W3は、回転軸Cを中心として、同一円周上に、互いに等しい角度間隔で配置される。本実施形態では、コイル部32は9つのコイルU1~U3,V1~V3,W1~W3で構成されているため、角度間隔は40°である。コイルU1~U3は、ステータコア30のティース301,304,307に巻かれている。コイルU1~U3は、それぞれ互いに120°の角度間隔で配置される。コイルV1~V3は、ステータコア30のティース302,305,308に巻かれている。コイルV1~V3は、それぞれ互いに120°の角度間隔で配置される。コイルW1~W3は、ステータコア30のティース303,306,309に巻かれている。コイルW1~W3は、それぞれ互いに120°の角度間隔で配置されている。
【0050】
モータ1は、9スロットであるので、角度間隔は上述したように40°であるが、ロータ2が6極であるので、コイルU1~U3、コイルV1~V3、コイルW1~W3は、ロータ2が20°回転する毎に通電を切替えることにより、ロータ2の回転を維持している。
【0051】
ロータ2が回転する毎に、出力軸20が回転し、同様にファン15も回転する。ファン15が回転すると、モータ1はハウジング11の複数の吸気孔13から空気を吸気する。吸気された空気は、ファン15によって移動し、駆動基板61、ロータ2、ステータ3を冷却する。最後にファン15が生成する気流が通過する複数の排気路9からハウジング11の排気孔12を通じてモータ1の外へ排気される。ステータ3のコイル部32は、通電するために発熱する。このことから、ステータ3の回転軸Cから見て径方向のステータ3の外側を空冷するとともに、ステータ3の内側も冷却する必要がある。
【0052】
しかしながら、回転軸Cから見て径方向のステータ3の内側を空冷するために、空気を通すと、粉塵が侵入する可能性がある。しかしながら、ロータ2の出力軸20の反負荷方向は、第2絶縁体51で覆われているために、粉塵等が侵入する可能性は低い。さらに、ロータ2の回転軸Cから見て径方向は、ステータ3の結合部材34が連結されることで、ロータハウジング200の一部を形成し、ロータ2とステータ3との間の空隙71を気密性良く覆うことができ、粉塵の侵入を防止することができる。一方、空気の排気部分(通気孔73)では、通気しているために粉塵が侵入する可能性がある。
【0053】
このため、第1絶縁体50の一部を形成する固定壁501は、粉塵侵入防止壁として設けられる。また、固定壁501は、ファン15の壁156とラビリンス構造を構成し、外部からの粉塵の侵入を抑制する。図6に示すファン15のX1-X1断面図において、複数のリブ155は、壁156とモータ1の絶縁体5が形成する固定壁501と、主板150で囲まれる空間内を、ファン15の回転軸Cを軸として回転する。また、固定壁501は、壁156と入れ子になっており、かつ複数のリブ155と対向する。
【0054】
次にロータ2の回転時の動作について説明する。図8及び図9は、回転軸Cを通り、出力軸20に平行な断面図を示している。図8は、気流の流れを省略した図であり、図9はファン15のある時点における気流の流れを示す図である。
【0055】
ロータ2が回転すると、ファン15も回転する。ファン15が回転すると、吸気孔13から吸気し、排気孔12から排気する空気の流れが生じる。ファン15の複数のリブ155が通過するリブ部158、すなわち、第2壁154と、壁156と、固定壁501と、主板150で囲まれたバッファ室8では、リブ155が通過することにより乱流が発生する。乱流は壁156の内側に存在する複数のリブ155が空気を掻き出す羽の役割を果たし、空気を掻き出そうとすると壁156及び固定壁501に空気が衝突して乱流が起こる。つまり、モータ1は、ファンの回転時において、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71と、ファン15が生成する気流が通過する排気路9と、の間で乱流を発生させる。図9の矢印は風の向きを表しており、風の流れが大きい箇所ほど矢印が密になる。図8図9とを参照すると、羽157が配置されている空間(排気路9)では矢印が密に、つまり空気の流れが大きくなっている。一方で、図8図9とを参照すると、リブ155が配置されている空間(バッファ室8)では、矢印が羽部159よりも疎に、つまり空気の流れが小さくなっている。さらに、リブ155が配置されている空間では、渦を巻くような乱流が発生している。つまり、排気路9と空隙71との間のバッファ室8では、乱流が発生している。このため、外部から複数の排気孔12を介して進入した空気がバッファ室8を経由してロータ2及びステータ3で形成される空隙71に流れ込みにくくなる。この結果、粉塵がロータ2及びステータ3が形成する空隙71に入り込むことを抑制することができる。
【0056】
ファン15のリブ155は、図4に示す回転軸Cを通り、出力軸20に平行な面での断面視において、リブ155の断面積は、羽157の断面積よりも小さい。また、ファン15において、リブ155の数は、羽157の数よりも少ない。このため、ファン15の回転時においてリブ155の空気を掻き出す仕事量よりも羽157の空気を掻き出す仕事量は大きくなる。つまり、断面積が小さく枚数も少ないリブ部158の気圧は、断面積が大きく枚数も多い羽部159の気圧よりも高くなる。このため、図4に示すように、ファン15の回転時において、バッファ室8と排気路9との気圧差は、ファン15のリブ155と羽157との仕事量の差に依存し、バッファ室8の気圧は排気路9の気圧よりも高くなる。よって、モータ1はファン15の回転時に、バッファ室8と排気路9との間において、バッファ室8の気圧が排気路9の気圧よりも高くなるように気圧差を生じさせる。気圧差は気圧の高い方から低い方へと気流の流れを生じさせるため、バッファ室8から排気路9へと気流が向かうようになる。この結果、粉塵がロータ2とステータ3が形成する空隙71に入り込むことを抑制することができる。また、リブ155は壁156の内側の圧力変動を引き起こしており、リブ155がない場合には壁156の内側には空気を掻き出すものが何もないので気圧は大気圧である。このことから、複数のリブ155は、ファン15が生成する気流が通過する排気路9からロータハウジング200への空気の流れを阻害している、と言える。
【0057】
以上から、複数のリブ155が壁156の内部に存在すること、バッファ室8と排気路9との間の気圧差が存在すること、バッファ室8の内部に乱流が発生することにより、バッファ室8から排気路9へと気流が流れ、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71へ粉塵が侵入することを抑制する。
【0058】
(4)利点
本実施形態の電動工具用モータ1は、ステータ3と、ロータ2と、ファン15と、を備える。ステータ3はコイル部32を有する。ロータ2は永久磁石21を有し、永久磁石21による磁界とコイル部32に電流が流れることにより発生する磁界とで回転する。ファン15はロータ2の回転時に回転する。ファンの回転時において、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71と、ファン15が生成する気流が通過する排気路9と、の間で乱流を発生させる。この結果、モータを冷却しながら、モータ内部への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0059】
本実施形態の電動工具用モータ1は、ステータ3と、ロータ2と、ファン15と、を備え、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71とファン15が生成する気流が通過する排気路9と、の間にバッファ室8を有する。電動工具用モータ1は、ファン15の回転時に、バッファ室8と排気路9との間において、バッファ室8の気圧が排気路9の気圧よりも高くなるように気圧差を生じさせる。気圧差のために、バッファ室8から排気路9へと気流が向かうようになり、モータを冷却しながら、モータ内部への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0060】
本実施形態の電動工具用モータ1は、ステータ3と、ロータ2と、ロータハウジング200と、ファン15と、を備える。ステータ3はコイル部32を有する。ロータ2は、永久磁石21を有し、永久磁石21による磁界とコイル部32に電流が流れることで発生する磁界とで回転する。ロータハウジング200は、ロータ2と、ロータ2とステータ3との間の空隙71とを覆う。ファン15は、ロータ2の回転時に回転する。ファン15は、壁156とリブ155とを有する。壁156は、ファン15の回転軸Cと同軸を中心としてファン15の外周にそって外周よりも内側に設けられ、回転軸Cに沿ってファン15からロータ2方向に突出する。複数のリブ155は、壁156の内側に配置される。複数のリブ155は、ファン15が生成する気流が通過する排気路9からロータハウジング200への空気の流れを阻害する。この結果、排気路9からロータハウジング200への空気の流れが阻害され、ロータ2とステータ3とが形成する空隙71への粉塵の侵入を抑制することができる。
【0061】
(5)変形例
以下に、変形例について列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0062】
ファン15が有する壁156の形状は、回転軸Cを中心とする円状に限定されない。例えば、回転軸Cを中心とする円状であって、切り欠きを含む形状であってもよい。部分的に切り欠きが入っていても、壁156と、固定壁501と、複数のリブ155の効果により、ファン15の回転時において、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71と、ファン15が生成する気流が通過する排気路9と、の間に乱流が発生する。
【0063】
また、ファン15が有する壁156の形状は、回転軸Cを重心とする多角形であってもよい。この場合も壁156と、固定壁501と、複数のリブ155の効果により、ファン15の回転時において、ロータ2及びステータ3が形成する空隙71と、ファン15が生成する気流が通過する排気路9と、の間に乱流が発生する。
【0064】
ファン15のリブ155は、回転軸Cから見て放射状に角度間隔は均等に配置されているとしたが、必ずしも均等に配置されていなくてもよい。角度均等に配置されたリブ155の一部が欠落していたり、リブ155が角度均等ではなく配置されていてもよい。
【0065】
ファン15には複数のリブ155が配置されているとしたが、必ずしも複数のリブ155が配置されていなくてもよい。すなわち、リブ155は1つであってもよい。この場合においても、リブ155がバッファ室8を通過するたびに乱流が発生する。また、バッファ室8と排気路9においてバッファ室8の圧力が高くなるように圧力差が生じるため、乱流と圧力差により、粉塵がロータ2及びステータ3が形成する空隙71に侵入することを抑制することができる。
【0066】
ステータ3は、内殻202から径方向に沿って外殻33に向かって9つのティース301~309が形成されている、としたが、この形状に限定されない。例えば、9つのティース301~309が別個に形成され、コイル部32が形成されたのちに外殻33が取り付けられる構造であってもよい。分割した鉄心構造では、スロット内におけるコイルU1~U3、V1~V3、W1~W3が専有する面積の割合を高めることができ、永久磁石21を有するモータ1の性能を上げることができる。
【0067】
また、外殻33から内殻202に向かって、鉄心31が突出した構造であってもよい。この場合も実施形態と同様に、9つのティース301~309の径方向の延長線上には回転軸Cが存在する。つまり、放射状に角度間隔40°でティース301~309は存在する。
【0068】
(まとめ)
以上、説明したように、第1の態様の電動工具用モータ(1)は、ステータ(3)と、ロータ(2)と、ファン(15)と、を備える。ステータ(3)はコイル部(32)を有する。ロータ(2)は、永久磁石(21)を有し、永久磁石(21)による磁界と、コイル部(32)に電流が流れることにより発生する磁界と、で回転する。ファン(15)は、ロータ(2)の回転時に回転する。電動工具用モータ(1)は、ファン(15)の回転時において、ロータ(2)及びステータ(3)が形成する空隙(71)と、ファン(15)が生成する気流が通過する排気路(9)と、の間で乱流を発生させる。
【0069】
この構成によると、モータ(1)を冷却しながら、モータ(1)の内部への粉塵の侵入を防止する電動工具用モータ(1)及び電動工具(10)を提供することができる。ロータ(2)及びステータ(3)が形成する空隙(71)と、ファン(15)が生成する気流が通過する排気路(9)と、の間で乱流が発生すると、外部からの気流がロータ(2)及びステータ(3)が形成する空隙(71)に入り込みにくくなる。このため、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0070】
第2の態様の電動工具用モータ(1)は、ステータ(3)と、ロータ(2)と、ファン(15)と、を備える。ステータ(3)は、コイル部(32)を有する。ロータ(2)は、永久磁石(21)を有し、永久磁石(21)による磁界と、コイル部(32)に電流が流れることにより発生する磁界と、で回転する。ファン(15)は、ロータ(2)の回転時に回転する。電動工具用モータ(1)は、ロータ(2)及びステータ(3)が形成する空隙(71)と、ファン(15)が生成する気流が通過する排気路(9)と、の間にバッファ室(8)を有する。電動工具用モータ(1)は、ファン(15)の回転時に、バッファ室(8)と排気路(9)との間において、バッファ室(8)の気圧が排気路(9)の気圧よりも高くなるように気圧差を生じさせる。
【0071】
この構成によると、モータ(1)を冷却しながら、モータ(1)内部への粉塵の侵入を防止する電動工具用モータ(1)及び電動工具(10)を提供することができる。バッファ室(8)の圧力が排気路(9)の圧力よりも高くなれば、空気の流路はファン(15)の内側から外側に向かうようになり、モータ(1)の内部に流れ込みにくくなる。このため、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0072】
第3の態様の電動工具用モータ(1)は、ステータ(3)と、ロータ(2)と、ロータハウジング(200)と、ファン(15)と、を備える。ステータ(3)は、コイル部(32)を有する。ロータ(2)は、永久磁石(21)を有し、永久磁石(21)による磁界と、コイル部(32)に電流が流れることで発生する磁界と、で回転する。ロータハウジング(200)は、ロータ(2)と、ロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)と、を覆う。ファン(15)は、ロータ(2)の回転時に回転する。ファン(15)は、壁(156)と複数のリブ(155)と、を有する。壁(156)は、ファン(15)の回転軸(C)と同軸を中心としてファン(15)の外周に沿って外周よりも内側に設けられ、回転軸(C)に沿ってファン(15)からロータ(2)方向に突出する。複数のリブ(155)は、壁(156)の内側に配置される。複数のリブ(155)は、ファン(15)が生成する気流が通過する排気路(9)から、ロータハウジング(200)への空気の流れを阻害する。
【0073】
この構成によると、複数のリブ(155)が発生させる気流が壁(156)と固定壁(501)とに衝突して乱流が発生する。乱流により、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0074】
第4の態様の電動工具用モータ(1)では、第3の態様において、複数のリブ(155)は、断面視において、壁(156)と、モータ(1)の絶縁体(5)が形成する固定壁(501)と、で囲まれる空間内を、ファン(15)の回転軸(C)を軸として回転する。
【0075】
この構成によると、壁(156)と、固定壁(501)と、で囲まれる空間内を複数のリブ(155)がファン(15)の回転軸(C)を軸として回転することで乱流が発生する。乱流が発生することにより、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0076】
第5の態様の電動工具用モータ(1)では、第4の態様において、固定壁(501)は、壁(156)と入れ子になっており、かつ、複数のリブ(155)と対向する。
【0077】
この構成によると、固定壁(501)と壁(156)とが入れ子になることにより、固定壁(501)と壁(156)とがラビリンス構造を形成し、粉塵が入りにくい構造となる。また、固定壁(501)が複数のリブ(155)と対向することで乱流が発生する。このため、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0078】
第6の態様の電動工具用モータ(1)では、第3~5のいずれかの態様において、ファン(15)は、壁(156)の外側に配置される複数の羽(157)を更に有する。複数のリブ(155)の個数は、複数の羽(157)の個数よりも少ない。
【0079】
この構成によると、複数のリブ(155)の個数は、複数の羽(157)の個数よりも少ないことにより、空気を掻き出す仕事量に差が発生し、複数の羽(157)が存在する羽部(159)の圧力は、複数のリブ(155)が存在するリブ部(158)の圧力よりも低くなる。圧力差が発生することで、空気の流路はリブ部(158)から羽部(159)に向かうようになり、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0080】
第7の態様の電動工具用モータ(1)では、第3~6のいずれかの態様において、複数のリブ(155)の各々の断面積は、複数の羽(157)の各々の断面積よりも小さい。
【0081】
この構成によると、複数のリブ(155)の個数は、複数の羽(157)の個数よりも少ないことにより、空気を掻き出す仕事量に差が発生し、複数の羽(157)が存在する羽部(159)の圧力は、複数のリブ(155)が存在するリブ部(158)の圧力よりも低くなる。圧力差が発生することで、空気の流路はリブ部(158)から羽部(159)に向かうようになり、粉塵がロータ(2)とステータ(3)との間の空隙(71)に入り込むことは抑制される。
【0082】
第8の態様の電動工具用モータ(1)では、第3~7の態様のいずれかにおいて、ロータハウジング(200)は、回転軸(C)の方向でロータ(2)と対向する面(203)を有する。面(203)の少なくとも一部は、ファン(15)の一部で構成されている。
【0083】
この構成によると、ロータハウジング(200)の少なくとも一部をファン(15)の一部で構成することで、電動工具(10)の出力軸(20)方向の長さを短くすることができる。
【0084】
第9の態様の電動工具は、第1~8のいずれかの態様の電動工具用モータ(1)と、工具本体と、を備える。
【0085】
この構成によると、粉塵がステータ(3)とロータ(2)との間の空隙(71)に入り込むことで、モータ(1)がロックし、電動工具(10)が故障することは抑制される。
【符号の説明】
【0086】
1 モータ
2 ロータ
3 ステータ
5 絶縁体
200 ロータハウジング
8 バッファ室
9 排気路
10 電動工具
15 ファン
21 永久磁石
32 コイル部
71 ロータ及びステータが形成する空隙
155 リブ
156 壁
157 羽
501 固定壁
C 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9