(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】熱感知器、および熱煙複合型火災感知器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/06 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
G08B17/06 K
G08B17/06 F
(21)【出願番号】P 2021525971
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2020020603
(87)【国際公開番号】W WO2020250659
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019111535
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室 直樹
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-352345(JP,A)
【文献】特開2009-211613(JP,A)
【文献】特開平10-188163(JP,A)
【文献】特開2009-230510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0240059(US,A1)
【文献】特開2011-192244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の取り付け面に取り付けられるベースと、
前記ベースに取り付けられる有底筒状の熱感知器本体と、
を備え、
前記熱感知器本体は、
前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間と連通する開口部と、
前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される基板と、
この基板の端部に実装されて、前記外部空間から流入してくる気体の熱を検知する熱検知部と、
前記開口部を通った前記気体が前記熱検知部に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する少なくとも1つの壁体と、
を備え、
前記壁体は、前記気体の流れを、前記外部空間から前記開口部に入ったあとに複数の気体の流れに分断し、該分断後の気体の流れのうち、前記熱感知器本体の内面に近い側に分流される気体の流れを、前記熱検知部に向かわせ、
前記基板は、
前記基板の本体を構成する基板本体部と、
前記基板本体部の端部から前記外部空間に向かって延びた先に、前記熱検知部が実装される延出部と、を有する、
熱感知器。
【請求項2】
前記熱検知部は、前記延出部に実装されるチップサーミスタを備える、
請求項1に記載の熱感知器。
【請求項3】
前記延出部は、前記基板本体部の縁に沿って前記端部から前記外部空間に向かって延びている、
請求項1又は2に記載の熱感知器。
【請求項4】
前記延出部は、
前記基板本体部の前記端部から前記外部空間に向かって延びた第1延出部と、
前記熱感知器本体の中心を通る中心軸と前記基板本体部との交点を基準にして、前記第1延出部と対称となる第2延出部と、
を含み、
前記熱検知部は、
前記第1延出部に配置された第1熱検知部と、
前記第2延出部に配置された第2熱検知部と、
を含み、
前記第1熱検知部及び前記第2熱検知部の各々は、チップサーミスタを備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の熱感知器。
【請求項5】
建物の取り付け面に取り付けられるベースと、
前記ベースに取り付けられる有底筒状の熱感知器本体と、
を備え、
前記熱感知器本体は、
前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間と連通する開口部と、
前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される基板と、
この基板の端部に実装されて、前記外部空間から流入してくる気体の熱を検知する熱検知部と、
前記開口部を通った前記気体が前記熱検知部に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する少なくとも1つの壁体と、
を備え、
前記壁体は、前記気体の流れを、前記外部空間から前記開口部に入ったあとに複数の気体の流れに分断し、該分断後の気体の流れのうち、前記熱感知器本体の内面に近い側に分流される気体の流れを、前記熱検知部に向かわせ、
前記熱感知器本体は、前記ベースと前記基板との間にある蓋体を更に備え、
前記熱感知器本体は、少なくとも2つの前記壁体を備え、
前記ベースと前記熱感知器本体とが並ぶ方向を並び方向とし、
前記熱感知器本体を前記並び方向で見たとき、2つの前記壁体及び前記熱検知部は、前記蓋体の周縁部に沿って配置され、前記熱検知部は、2つの前記壁体の間に位置し、2つの前記壁体の間に前記基板があり、
前記熱感知器本体を前記並び方向で見たとき、2つの前記壁体は、前記基板に近い部分ほど、前記開口部に最も近い位置にある前記壁体の先端同士を結ぶ直線から前記熱検知部側へ離れるようにして傾いている、
熱感知器
。
【請求項6】
建物の取り付け面に取り付けられるベースと、
前記ベースに取り付けられる有底筒状の熱感知器本体と、
を備え、
前記熱感知器本体は、
前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間と連通する開口部と、
前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される基板と、
この基板の端部に実装されて、前記外部空間から流入してくる気体の熱を検知する熱検知部と、
前記開口部を通った前記気体が前記熱検知部に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する少なくとも1つの壁体と、
を備え、
前記壁体は、前記気体の流れを、前記外部空間から前記開口部に入ったあとに複数の気体の流れに分断し、該分断後の気体の流れのうち、前記熱感知器本体の内面に近い側に分流される気体の流れを、前記熱検知部に向かわせ、
前記壁体は、前記開口部に対向する第1面と、前記開口部とは反対側にある第2面とを有し、
前記第2面の面積は、前記第1面の面積と異なり、
前記ベースと前記熱感知器本体とが並ぶ方向を並び方向とし、
前記壁体の断面を前記並び方向で見たとき、前記第1面の長さは、前記第2面よりも大きい、
熱感知器。
【請求項7】
前記第1面は、前記外部空間に向かって凸となる凸面であり、
前記第2面は、平面である、
請求項6に記載の熱感知器。
【請求項8】
前記壁体の断面を前記並び方向で見たとき、前記第1面と前記第2面との間の寸法が最大となる前記第1面の頂点は、前記第2面に沿った方向において前記第2面を2等分する中央よりも前記開口部に近い位置にある、
請求項7に記載の熱感知器。
【請求項9】
前記基板は、
前記基板の本体を構成する基板本体部と、
前記基板本体部の端部から前記外部空間に向かって延びた延出部と、を有し、
前記熱検知部は、前記延出部にあり、
前記第2面の延長線は、前記熱検知部よりも前記基板本体部側にある、
請求項7又は8に記載の熱感知器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の熱感知器と、
前記熱感知器の前記基板のうち、前記熱検知部と前記壁体との妨げにならぬ中央寄りの位置に設けられて、前記気体に含まれて侵入してくる煙成分を迷光減衰用のラビリンス構造内部の空間で感知することで火災の発生を判断する煙検知部と、を備え、
前記煙検知部での検知結果と、前記熱検知部の検知結果との少なくとも一方を用いて火災発生の判断を行なう、熱煙複合型火災感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱感知器および熱煙複合型火災感知器に関する。より詳細には、本開示は、例えば、火災等によって発生する熱を感知する熱感知器および熱煙複合型火災感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、火災時に発生する熱気流から熱を検知する熱検知部と、この熱検知部が設けられた感知器本体と、熱検知部を保護する外カバーとを備える火災感知器が開示されている。そして、外カバーは、熱検知部の周囲に設置された複数の板状フィンを有する。複数の板状フィンは、外カバーの中心に向かう方向に対して所定のオフセット角度を持ち、かつ感知器本体に対して略垂直に立設されている。これにより、火災により発生した熱気流は、複数の板状フィンにより、外カバーの中心に向かう渦状の流れとなって感熱部に集められている。
【0003】
しかし、特許文献1の場合、板状フィンにより渦状の流れを形成することで、板状フィンよりも内側にある気体の流れる距離が長くなりやすい(以下では、この距離を、気体の流れの長さと称することにする)。このため、感知器本体の内部で熱検知部に向かう気体の熱は板状フィンよりも内側にある部材によって下がりやすくなり、火災が発生していると認定すべき高温の状況であっても、感知する気温が未だ低いので、未だ火災には至っていないものとして誤判定してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の課題は、熱検知部に向かう気体の熱を余計に下げてしまうことを抑えられる熱感知器および熱煙複合型火災感知器を提供することである。
【0006】
本開示に係る一態様は、熱感知器であって、ベースと、熱感知器本体とを備える。前記ベースは、建物の取り付け面に取り付けられる。前記熱感知器本体は、有底筒状であり、前記ベースに取り付けられる。前記熱感知器本体は、開口部と、基板と、熱検知部と、少なくとも1つの壁体とを備える。前記開口部は、前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間と連通する。前記基板は、前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される。前記熱検知部は、前記基板の端部に実装されて、外部空間から流入してくる気体の熱を検知する。前記壁体は、前記開口部を通った前記気体が前記熱検知部に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する。前記壁体は、前記気体の流れを、前記外部空間から前記開口部に入ったあとに複数の気体の流れに分断する。また前記壁体は、該分断後の気体の流れのうち、前記熱感知器本体の内面に近い側に分流される気体の流れを、前記熱検知部に向かわせる。前記基板は、前記基板の本体を構成する基板本体部と、前記基板本体部の端部から前記外部空間に向かって延びた先に、前記熱検知部が実装される延出部と、を有する。
本開示に係る更なる一態様は、熱感知器であって、ベースと、熱感知器本体とを備える。前記ベースは、建物の取り付け面に取り付けられる。前記熱感知器本体は、有底筒状であり、前記ベースに取り付けられる。前記熱感知器本体は、開口部と、基板と、熱検知部と、少なくとも1つの壁体とを備える。前記開口部は、前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間と連通する。前記基板は、前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される。前記熱検知部は、前記基板の端部に実装されて、外部空間から流入してくる気体の熱を検知する。前記壁体は、前記開口部を通った前記気体が前記熱検知部に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する。前記壁体は、前記気体の流れを、前記外部空間から前記開口部に入ったあとに複数の気体の流れに分断する。また前記壁体は、該分断後の気体の流れのうち、前記熱感知器本体の内面に近い側に分流される気体の流れを、前記熱検知部に向かわせる。前記熱感知器本体は、前記ベースと前記基板との間にある蓋体を更に備える。前記熱感知器本体は、少なくとも2つの前記壁体を備える。前記ベースと前記熱感知器本体とが並ぶ方向を並び方向とする。前記熱感知器本体を前記並び方向で見たとき、2つの前記壁体及び前記熱検知部は、前記蓋体の周縁部に沿って配置され、前記熱検知部は、2つの前記壁体の間に位置し、2つの前記壁体の間に前記基板がある。前記熱感知器本体を前記並び方向で見たとき、2つの前記壁体は、前記基板に近い部分ほど、前記開口部に最も近い位置にある前記壁体の先端同士を結ぶ直線から前記熱検知部側へ離れるようにして傾いている。
本開示に係る更なる一態様は、熱感知器であって、ベースと、熱感知器本体とを備える。前記ベースは、建物の取り付け面に取り付けられる。前記熱感知器本体は、有底筒状であり、前記ベースに取り付けられる。前記熱感知器本体は、開口部と、基板と、熱検知部と、少なくとも1つの壁体とを備える。前記開口部は、前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間と連通する。前記基板は、前記熱感知器本体の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される。前記熱検知部は、前記基板の端部に実装されて、外部空間から流入してくる気体の熱を検知する。前記壁体は、前記開口部を通った前記気体が前記熱検知部に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する。前記壁体は、前記気体の流れを、前記外部空間から前記開口部に入ったあとに複数の気体の流れに分断する。また前記壁体は、該分断後の気体の流れのうち、前記熱感知器本体の内面に近い側に分流される気体の流れを、前記熱検知部に向かわせる。前記壁体は、前記開口部に対向する第1面と、前記開口部とは反対側にある第2面とを有する。前記第2面の面積は、前記第1面の面積と異なる。前記ベースと前記熱感知器本体とが並ぶ方向を並び方向とする。前記壁体の断面を前記並び方向で見たとき、前記第1面の長さは、前記第2面よりも大きい。
【0007】
本開示の一態様に係る熱煙複合型火災感知器は、前記熱感知器と、煙検知部と、を備える。前記煙検知部は、前記気体に含まれて侵入してくる煙成分を迷光減衰用のラビリンス構造内部の空間で感知することで火災の発生を判断する。前記煙検知部は、前記熱感知器の前記基板のうち、前記熱検知部と前記壁体との妨げにならぬ中央寄りの位置に設けられている。前記熱煙複合型火災感知器は、前記煙検知部での検知結果と、前記熱検知部の検知結果との少なくとも一方を用いて火災発生の判断を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る熱感知器の断面図である。
【
図2】
図2は、同上の熱感知器を下方から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す断面の一部を拡大した拡大図である。
【
図5】
図5は、同上の熱感知器の概略ブロック構成図である。
【
図6】
図6は、同上の熱感知器における一部を透視化させた平面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る熱煙複合型火災感知器が備える煙検知部の内部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
本実施形態の熱感知器1は、例えば火災感知器であり、火災等によって発生する熱を検知する熱検知部3を備えている。言い換えると、熱感知器1は、少なくとも熱を検知する機能を有した感知器である。以下では一例として、熱感知器1が、煙検知部4(
図1参照)も更に備えた、いわゆる熱煙複合型火災感知器であるものとする(
図1~
図6参照)。熱感知器1は、煙検知部4の代わりに、又は煙検知部4に加えて、炎、ガス漏れ、又は不完全燃焼によるCO(一酸化炭素)の発生等を検知する検知部を備えてもよい。また、熱感知器1の検知部は熱検知部3のみであってもよい。この場合、熱感知器1は、熱だけを検知する機能を有する。
【0011】
熱感知器1は、
図2のように、例えば建物の天井又は壁等の造営材である構造体X1(図示例では天井)の取り付け面X11に、ネジ止めでのねじ込みや、粘着材での貼り付けや、取り付け面X11の孔に係合する突設片のバネ付勢による引っ掛け挟みによるなどして、設置される。ここで取り付け面X11は、例えば天井の下面である。
【0012】
熱感知器1は、
図1のように、ベース1bと、熱感知器本体1aとを備える。ベース1bは、建物の取り付け面X11に取り付けられる。熱感知器本体1aは、有底筒状であり、ベース1bに取り付けられる。熱感知器本体1aは、基板2と、開口部7と、熱検知部3と、少なくとも1つの壁体522とを備える。開口部7は、熱感知器本体1aの有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間SP2と連通する。基板2は、熱感知器本体1aの有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される。熱検知部3は、基板2の端部に実装されて、熱感知器本体1aの外部空間SP2から流入してくる気体の熱を検知する。壁体522は、開口部7を通った気体が熱検知部3に向かって流れるように、気体の流れ64を制御する。壁体522は、気体の流れ63を、外部空間SP2から開口部7に入ったあとに複数の気体の流れ64、65に分断する(
図3参照)。また壁体522は、分断後の気体の流れ64、65のうち、熱感知器本体1aの内面に近い側に分流される気体の流れ64を、熱検知部3に向かわせる。
【0013】
このような熱感知器1によれば、壁体522に向かう気体の流れ63は、壁体522により制御されて熱検知部3に向かう気体の流れ64となる。しかも壁体522と熱検知部3との間で熱検知部3に向かう気体の流れ64の長さを短くすることができる。したがって、壁体522から熱検知部3に向かう気体の熱を下げにくくすることができ、熱感知器1が火災の発生を感知するまでの期間を短くすることができる。
【0014】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る熱感知器1の全体構成について詳しく説明する。
図1に示す熱感知器1は、上述の通り、熱及び煙を検知する、いわゆる熱煙複合型火災感知器である。
【0015】
以下では、
図2の例の通り、熱感知器1が天井面(取り付け面X11)に設置されていることを想定する。このため、ベース1bと熱感知器本体1aとが並ぶ方向である並び方向D1を上下方向とし、並び方向D1と直交する直交方向D2を左右方向とし、この方向D2と直交する方向を前後方向とする。上下方向、左右方向、及び前後方向は、単に説明を補助する目的で記載しているに過ぎず、実体を伴わない。またこれらの方向は、熱感知器1の使用方向を限定する趣旨ではない。なお、方向D1、D2、D3をそれぞれ、第1方向、第2方向、及び第3方向としてもよい。
【0016】
熱感知器1は、
図1のように、ベース1bと、熱感知器本体1aとを備える。
【0017】
熱感知器本体1aは、ベース1bに取り付けられた状態で取り付け面X11から離れた位置にあるものであって、筐体5と、基板2と、熱検知部3と、煙検知部(光電式であり、迷光減衰用途のラビリンス込み)4と、複数の取付部10と、熱検知部3と、を備える(
図1参照)。熱感知器本体1aは、壁体522を更に備える(
図2及び
図3参照)。またさらに、熱感知器本体1aは、制御部9、及び通信部11を更に備える(
図5参照)。通信部11は、熱感知器1が少なくとも熱を感知したときに、熱の発生を知らせる信号を外部の警報器等(図示せず)へ送信し、また警報器等からの信号を受信する。熱感知器1は、取付部10を介して商用電源による電力が供給されてもよい。なお、通信部11が無線式のものである場合には、電力で駆動される部品へ電力を供給すべく、商用電源からの電源供給ではなく電池を電力源とするものであってもよい。このように2台以上の火災感知器を無線式にすれば、これら2台以上の火災感知器が、互いに、無線の強度が充分に得られる相対位置に配置されるのであれば、商用電源からの電線を配線する必要が無いので、既築の建物に後付けで設置するときに設置しやすい火災感知器となる。
【0018】
(2.2)ベース
ベース1bは、
図1のように、ねじ等で構造体X1の取り付け面X11に取り付けられる円板状のものである。そして、取り付け面X11にベース1bが取り付けられた状態で、このベース1bに熱感知器本体1aが取り付けられる。このため、ベース1bは取付ベースとも呼ばれる。また、ベース1bは熱感知器本体1aと脱着可能である。このようなベース1bに熱感知器本体1aが取り付けられた状態で、筐体5の上端部はベース1bの側面に接し、かつ取付部10はベース1bに取り付けられる。取付部10をベース1bに取り付けるにあたって、ベース1bは取付部10との接続を可能にする接続部を有することが好ましい。この接続部は、有線による電源供給方式であれば、商用電源と電気的に接続し、取付部10にも電気的に接続してもよい。
【0019】
(2.3)熱感知器本体
熱感知器本体1aは、上記の通り、筐体5を備える。この筐体5は、熱感知器本体1aの外形状を構成するものであって、その内部に、基板2と、熱検知部3と、煙検知部4と、壁体522と、内部空間SP1と、を有する(
図1及び
図3参照)。筐体5は、
図3のように、内部空間SP1と、筐体5の外部空間SP2とを連通する複数(例えば、6つ)の開口部7を有する。そして、熱検知部3は、基板2の端部(後述の延出部24)に実装されている。
【0020】
本実施形態において、火災等により気体が熱せられて壁体522に向かう流れ63が生じると、壁体522は、
図3のように、開口部7を通った気体が熱検知部3に向かって流れるようにして、流れ63を制御する。さらに、壁体522は、外部空間SP2から開口部7に入ったあとの流れ63を複数の気体の流れ64、65に分断する。これにより、内部空間SP1において、熱検知部3に向かう気体の第1の流れ64と、煙検知部4等の他の部材に向かう気体の第2の流れ65とが生じる。言い換えると、気体63は、壁体522の位置から見て、熱感知器本体1aの有底筒状の内面(内部空間SP1に臨む面)に近い位置を流れる第1の流れ64と、遠い位置を流れる第2の流れ65とに分断される。そして、壁体522により分断された気体64、65のうち、第1の流れ64は、第2の流れ65よりも、熱感知器本体1aの内面に近い位置を流れて熱検知部3に向かって誘導されやすい。また壁体522により分断された気体64、65のうち、第2の流れ65は、第1の流れ64よりも、熱感知器本体1aの内面から遠い位置を流れて熱検知部3に向かいにくい。
【0021】
以下、火災等により熱せられた気体を熱気と称することにする。
図3では、熱気の流れを理解し易くするために、流れ63、64、65を模式的に矢印線で図示している。内部空間SP1における第1及び第2の流れ64、65のうち、第1の流れ64は、熱検知部3に向かって直線的に形成されるため、壁体522と熱検知部3との間の第1の流れ64の長さを短くすることができる。したがって、第1の流れ64の熱気は壁体522と熱検知部3との間で冷却されにくくなり、熱感知器1が火災の発生を感知するまでの期間を短くすることができる。すなわち、熱感知器1が火災の発生を感知する精度を高めることができる。なお、第2の流れ65の熱気は煙検知部4等の他の部材により冷却されてしまう可能性があるが、上記の他の部材が障害となって第2の流れ65の熱気は熱検知部3に向かいにくい。
【0022】
筐体5は、基板2、熱検知部3、煙検知部4、壁体522、制御部9、通信部11、及びその他の回路モジュール等を、内部に収容する。
【0023】
筐体5は、合成樹脂製であり、例えば難燃性ABS樹脂製である。筐体5は、
図1に示すように、一面(図示例では上面)が開放された有底筒状の表カバー51と、円板状の蓋体(裏カバー)52と、を有している。ここで、表カバー51は、具体的には円筒状である。裏カバー52は、並び方向D1においてベース1bと基板2との間にあるものであって、表カバー51とは反対側で、基板2、熱検知部3、煙検知部4、及び壁体522等を覆う。裏カバー52は、第1面52aと、第1面52aと平行な第2面52bとを有する。第1及び第2面52a、52bは、並び方向D1と交差する。第1面52aは上面であり、第2面52bは下面である。また、第1面52aは、熱感知器本体1aがベース1bに取り付けられた状態で、ベース1bと対向する(
図1参照)。
【0024】
壁体522は、表カバー51の基部511と裏カバー52との間に設けられている(
図2参照)。例えば、壁体522の上端は裏面カバー52に対向し、下端は基部511に対向する。また、壁体522の上端は裏面カバー52に接してもよく、下端は基部511に接してもよい。
【0025】
熱感知器本体1aを並び方向D1で見たとき、壁体522及び熱検知部3は、裏カバー52の周縁部520に沿った位置にあり(
図3参照)、壁体522は並び方向D1と直交する直交方向D2と平行な直線L4に対して熱検知部3側に傾いている(
図4参照)。この直線L4と直交する直線は、熱検知部3を通る。壁体522が直線L4に対して熱検知部3側に傾くことにより、壁体522は、開口部7のうち、一部を並び方向D1で塞ぎ、かつ残りの部分で内部空間SP1と外部空間SP2とを繋ぐ形状を有する(
図2参照)。
【0026】
壁体522は、開口部7に対向する第1面523と、開口部7とは反対側にある第2面524とを有する(
図4参照)。第2面524の面積は、第1面523の面積と異なる。すなわち、第1面523の面積は、第2面524の面積よりも大きい。このため、壁体522の断面を並び方向D1で見たとき、第1面523の長さは、第2面524の長さよりも大きい。このため、火災等で壁体522に向かう熱気の流れ63が生じると、第1面523に沿って熱気が流れる熱流の長さは、第2面524に沿って熱気が流れる熱流の長さよりも大きくなる。なお、本実施形態では、第1面523と第2面524とは、壁体522の側面を構成する。
【0027】
第1面523は、開口部7と対向し、かつ外部空間SP2に向かって凸となる凸面である。第1面523は、具体的には、凸曲面である。また、第2面524は、平面であり、この平面の延長線L2は、熱検知部3よりも基板本体部200側にある。すなわち、延長線L2は、並び方向D1で熱感知器本体1aを見て、熱検知部3よりも煙検知部4に近い位置にある。このため、壁体522により分断された第1及び第2の流れ64、65の間隔が大きくなる。これにより、第1及び第2の流れ64、65を熱検知部3付近で合流しにくくなる。このため、第1の流れ64の熱気は冷却されにくくなる。しかも第1面523が凸面であり、かつ第2面524が平面であることで、第1面523に沿って熱気が流れる熱流の長さは、第2面524に沿って熱気が流れる熱流の長さよりも大きくなる。
【0028】
第1面523に沿って熱気が流れる熱流の長さが、第2面524に沿って熱気が流れる熱流の長さよりも大きくなると、第1面523では、第2面524と比べて、熱気の動圧が大きく、静圧が小さくなる。このため、第1の流れ64の熱気を熱検知部3に引き込ませることができ、しかも外部空間SP2の熱気も内部空間SP1に引き込ませることもできる。
【0029】
壁体522は、長軸を有する。壁体522の長軸方向は、延長線L2と平行である。第2面524は、この長軸方向において中央526の位置で2等分される。言い換えると、第2面524に沿った方向において、第2面524は、中央526の位置で2等分される。そして、第1面523の頂点525は中央526よりも開口部7に近い位置にある(
図4参照)。ここで、頂点525により、第1面523と第2面524との間の寸法が最大となる。また、第2面524に沿った方向は、延長線L2に位置する。頂点525が中央526よりも開口部7に近い位置にあることで、壁体522により分断された第1及び第2の流れ64、65の間隔が大きくなる。これにより、第1及び第2の流れ64、65を熱検知部3付近で合流させにくくできる。
【0030】
また、第1面523及び熱検知部3は接線L3に接する。そして、接線L3と第1面523との接点は、並び方向D1で熱感知器本体1aを見たとき、頂点525よりも開口部7に近い位置にあることが好ましい。しかも壁体522の先端部分は、開口部7に近い位置にあることが好ましい。なお、本実施形態における壁体522の形状は、平底翼状とも呼ばれる。
【0031】
壁体522は、
図3のように、第1壁体522aと、第2壁体522bとを備える。
図3の例では2つの第1壁体522aと、2つの第2壁体522bとが設けられているが、1つの第1壁体522aと、1つの第2壁体522bとが設けられていてもよい。本実施形態では、熱感知器本体1aは少なくとも2つの壁体を備えるが、熱感知器本体1aは壁体522を1つだけ備えてもよい。第1壁体522aと、第2壁体522bとは、各々、外部空間SP2から開口部7に入ったあとの気体の流れ63を複数の気体の流れ64、65に分断する。
【0032】
図3のように、熱感知器本体1aを並び方向D1で見たとき、第1及び第2壁体522a、522b、並びに熱検知部3は裏カバー52の周縁部520に沿って配置されている。そして、熱検知部3は、第1及び第2壁体522a、522bの間に位置する。言い換えると、裏カバー52の周縁部520に沿った位置において、熱検知部3の両脇に、それぞれ第1及び第2壁体522a、522bがある。加えて、熱感知器本体1aを並び方向D1で見たとき、第1及び第2壁体522a、522bは、基板2に近い部分ほど、開口部7に最も近い位置にある壁体522の先端同士を結ぶ直線L4から熱検知部3側へ離れるようにして傾いている。ここで、第1及び第2壁体522a、522bの間に基板2があり、直線L4は本体部200の幾何学形状の一辺に相当する縁と交差する(
図3及び
図4参照)。
【0033】
第1及び第2壁体522a、522bが熱検知部3側に向かって傾いていることで、第1及び第2壁体522a、522bのうち、少なくとも一方の壁体522に向かう熱気の流れ63が火災等で発生すると、この熱気を第1の流れ64により熱検知部3に向けることができる。これにより、熱感知器1は火災の位置に影響されずに熱を感知できるため、熱感知器1が火災の発生を感知する精度を高めることができる。ここで本実施形態の一例として、熱感知器本体1aが2つの熱検知部3(第1及び第2熱検知部301、302)を備える場合、裏カバー52の周縁部520に沿った位置において、第1熱検知部301の両脇にそれぞれ第1及び第2壁体522a、522bがある。そして、第2熱検知部302の両脇にそれぞれ第1及び第2壁体522a、522bがある(
図3参照)。また、
図3に示す例では、桟部512(第1桟部512a)を間にして隣り合う第1及び第2壁体522a、522bの間の距離は、基板2に近いほど大きくなり、開口部7に近いほど小さくなっている。
【0034】
開口部7は、
図1及び
図2のように、熱感知器本体1aの有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間SP2と連通する。具体的には、開口部7は、表カバー51の側面に開口している。この表カバー51は、
図1及び
図2に示すように、上下の両端が開放されたへん平な円筒体510と、円筒体510の下方にある円板状の基部511と、円筒体510及び基部511を繋ぐ複数本(例えば6本)の桟部512と、から構成されている。円筒体510、基部511、及び複数の桟部512は、一体となって形成されている。複数の桟部512は、基部511の周縁部において周方向に沿って並んでいる(
図3参照)。そして、桟部512は、この周縁部から円筒体510の開放された下縁部に向かって突出している。桟部512は、円筒体510と基部511との間の距離を規定距離に保つ。開口部7は、このように構成された表カバー51の周壁において、その周方向に沿って並んでいる。
【0035】
各開口部7は、表カバー51の側壁を径方向に貫通する、略矩形状の貫通孔であり、内部空間SP1と外部空間SP2とを繋ぐ口となる。言い換えると、開口部7は、煙検知部4が位置する内部空間SP1と、熱感知器本体1aの外部空間SP2とを繋ぐ。なお、
図3に示す一例では、筐体5は6つの開口部7を有している。これらの開口部7は、複数の桟部512により区切られている。
【0036】
桟部512は、複数(例えば2つ)の第1桟部512aと、複数(例えば4つ)の第2桟部512bとを備える。そして、熱感知器本体1aの周方向において、各第1桟部512aの両脇に第1及び第2壁体522a、522bがある(
図3参照)。各熱検知部3は、隣り合う第2桟部512b同士の間に介在する開口部7に対向する。
【0037】
また、開口部7と熱検知部3との間に一対の保護部516が設けられている(
図4参照)。この保護部516は、裏カバー52から基部511に向かって突出している。ここで、保護部516の下端は基部511に接していなくてもよい。
【0038】
保護部516を設けることにより、保護部516は、熱感知器1の設置時などで作業者の指が熱検知部3に触れることを抑制する。すなわち、保護部516は、作業者の指から熱検知部3を保護する。熱検知部3が保護部516により保護されることで、熱検知部3が破損しにくくなる。
【0039】
保護部516及び第2桟部512bは、第1桟部512aよりも細いことが好ましい。この場合、方向D3(例えば、前後方向)において外部空間SP2から保護部516同士の間を通った熱気は熱検知部3に向かって流れやすくなる。しかも、内部空間SP1におけるこの熱気の流れ長さは短いため、熱検知部3周辺の部材により冷却されにくくなる。これにより、熱感知器1が火災の発生を感知する精度を高めることができる。
【0040】
表カバー51は、基部511の上面側に、基板2を位置決めするための位置決め構造を有している。位置決め構造の例としては、基部511の上面側に位置決め用の凹所が設けられていて、基板2に突設された爪片が当該凹所に嵌入されてもよい。基部511の平面形状は、基板2よりも大きい(
図6参照)。
【0041】
また表カバー51は、その基部511に、3つの縦孔56を有している。この3つの縦孔56のうち2つは、方向D3において基部511の周縁部に配置され、もう1つは、基部511の中央に配置されている。各縦孔56は、表カバー51の基部511を並び方向D1に貫通している。基部511の周縁部にある2つの縦孔56は、略矩形状の開口を有し、基部511の中央にある縦孔56は、略円形状の開口を有している。そして、基板2が備える第1及び第2延出部241、242(後述)は、それぞれ2つの縦孔56と対向する(
図6参照)。また、基板2の中央部は、中央の縦孔56と対向する。その結果、第1延出部241、第2延出部242及び基板2の中央部は、
図6に示すように、対応する縦孔56から露出している。したがって、上昇してくる熱気は、縦孔56を通って筐体5内に入り、さらに貫通孔31を通って第1面21と第2面52bとの間の空間に流れ込む。よって、熱検知素子30は、開口部7から流入してくる熱気だけでなく、縦孔56から流入してくる熱気にも曝され易くなる。
【0042】
裏カバー52は、基板2と対向する第2面52bにおいて、基板2に配置された煙検知部4の上端部を収容する収容凹部521を有する(
図1参照)。これにより、煙検知部4は、収容凹部521により安定的に位置決めされる。
【0043】
また、裏カバー52には、基板2に固定された取付部10を構成する複数(例えば2つ)の接続片101が嵌入される(
図1参照)。複数の接続片101は、金属等の導電性材料からなり、基板2上に設けられている回路モジュールと電気的に接続されている。複数の接続片101は、その先端が裏カバー52の第1面52aから十分に突出する程度にまで差し込まれている。複数の接続片101は、構造体X1に固定されたベース1bが備える接続部に対して、機械的及び電気的に接続され得る。要するに、取付部10は、単にベース1bへの機械的な接続だけではなく、構造体X1の裏側にある電線(給電線及び信号線)との電気的な接続、さらに裏カバー52に対する基板2の安定的な位置決めも兼ねた部位である。この位置決めとは、基板2の径方向の位置決めだけではなく、基板2の上下方向の位置決めも含む。
【0044】
(2.4)基板
基板2は、熱感知器本体1aの有底筒状の外形のうち底面の近くにあり、この底面に対向するように熱感知器本体1a内に収容される。具体的には、基板2は、表カバー51の底面(基部511の上面)の近くにあり、この底面と対向するようにして熱感知器本体1a内に収容されている。基板2は、プリント基板である。基板2には、熱検知部3、煙検知部4、制御部9、通信部11、及びその他の回路モジュール(不図示)等が実装されている。その他の回路モジュールとは、煙検知部4の光学素子41を点灯させる点灯回路、並びに、商用電源等より供給される電力を用いて各種回路の動作電力を生成する電源回路等を含む。基板2は、基板2を並び方向D1で見たとき、幾何学形状を有する。ここで、「幾何学形状」とは、3つ以上の辺を有する多角形状、円形状又は楕円形状を意味する。基板2は、例えば略菱形状に形成されている(
図3参照)。
【0045】
本実施形態では、2つの熱検知部3が、基板2の第1面21に表面実装されている(
図1参照)。第1面21は、上面である。ここでは一例として、煙検知部4も、第1面21に実装されている。煙検知部4は、その下端部に複数の爪片を有している。そして爪片は、これらの間に基板2を挟むことにより、基板2を位置決めしている。
【0046】
制御部9、及び回路モジュールを構成する複数の電子部品は、基板2の第1面21又は第2面22に実装されている。制御部9、及び回路モジュールを構成する複数の電子部品は、基板2のみに実装されていなくてもよく、例えば、基板2の周辺に別の実装基板が配置されていて、当該実装基板に、それらの一部又は全部が実装されてもよい。
【0047】
以下、基板2は、第1面21と略平行で、かつ基部511に対向する第2面22も有する(
図1参照)。第2面22は下面である。
図6では、基板2は、透視化されており、その第2面22が見えている。また
図6では、煙検知部4内に配置される光学素子41及び受光素子42を点(ドット)により簡略化して図示している。
【0048】
以下、基板2の構造について詳しく説明する。基板2は、
図3に示すように、基板本体部(本体部)200と、複数(例えば2つ)の延出部24とを有する。本体部200は、基板2の本体を構成し、幾何学形状を有する。本体部200は、例えば、略菱形状である(
図3参照)。延出部24は、本体部200の端部から外部空間SP2に向かって延びている。このため、第1の流れ64の熱気だけでなく、延出部24に向かう熱気の熱を熱検知部3が検知することができる。ここで
図3では、本体部200の端部を点線(仮想線)で示している。このような延出部24に熱検知部3があり、熱検知部3は熱検知素子30を備える。熱検知素子30はチップサーミスタである。
【0049】
熱検知部3がチップサーミスタを備えると、内部空間SP1において熱検知部3に要する体積を小さくできるため、熱感知器1全体としての小型化(特に薄型化)を図ることができる。
【0050】
また、熱感知器本体1aを並び方向D1で見たとき、延出部24は、本体部200の縁に沿って本体部200の端部から外部空間SP2に向かって延びている。具体的には、延出部24は、本体部200の幾何学形状の一辺に相当する縁に沿って本体部200の端部から外部空間SP2に向かって延びている。このような延出部24の先に熱検知部3が実装されている。このため、延出部24に実装された熱検知部3で火災時の熱気を検知することができる。しかも、熱検知部3の両脇に2つの壁体522も設けられていることで、熱気が外部空間SP2から内部空間SP1に入り込む角度に影響されずに熱気が熱検知器3に向く流れを生じさせることができる。
【0051】
複数の延出部24は、第1延出部241と、第2延出部242とを備える。第1延出部241は、本体部200の端部から外部空間SP2に向かって延びている。第2延出部242は、熱感知器本体1aの中心を通る中心軸C3と本体部200との交点P2を基準にして、第1延出部241と対称となる。そして、第1延出部241に第1熱検知部301が配置され、第2延出部242に第2熱検知部302が配置されている。ここで、中心軸C3は、並び方向D1と平行であり、煙検知器4の中心P1と、熱感知器本体1aの中心とを通る。煙検知器4の中心P1は、裏カバー52の下面と基部511の上面との間の距離を2等分する位置にある。このため熱感知器本体1aの中心は、中心P1と同じ位置にあり、
図3のように、基板2を並び方向D1で見たときに、中心P1は交点P2と重なって見える。
【0052】
第1延出部241と、第2延出部242とが交点P2を基準にして対称となることで、第1及び第2熱検知部301、302のうち一方又は両方で火災時の熱気を検知することができる。しかも、第1壁体522a及び第2壁体522bも設けられていることで、熱気が外部空間SP2から内部空間SP1に入り込む角度に影響されずに熱気が熱検知器3に向く流れを生じさせることができる。また、熱感知器1が薄型化することで開口部7の高さが小さくなっても、第1壁体522a及び第2壁体522bにより外部空間SP2の熱気を内部空間SP1に引き込む作用が生じやすい。しかも内部空間SP1に入った熱気が、第1壁体522a及び第2壁体522bにより、熱検知器3に向く流れを生じさせることができる。
【0053】
また、第1及び第2延出部241、242の各々には、矩形状の開口を有した貫通孔31(
図3及び
図4参照)が設けられている。
図4は、
図3に示す基板2の一部を拡大した拡大図である。貫通孔31は、熱検知部3よりも内側に配置されている。言い換えると、貫通孔31は、熱検知部3と本体部200との間に配置されている。そして、熱検知部3と貫通孔31とは、互いに隣接して配置されている。このような貫通孔31が、各熱検知部3の傍に設けられていることで、熱検知部3の周囲において基板2が占める領域を減らすことができ、熱検知部3における熱が基板2を伝達して熱検知部3の温度が低くなってしまうことを抑制できる。すなわち、貫通孔31によって熱絶縁性が向上される。貫通孔31の開口面積は、熱検知素子30の表面積(例えば基板2の上側から見た表面積)よりも大きいことが望ましい。
【0054】
(2.5)熱検知部と煙検知部
熱検知部3は、上述の通り、基板2の第1面21に実装された2つの熱検知素子30を有している(
図3参照)。熱検知素子30の数は、特に限定されず、1つでもよいが、少なくとも2つ以上であることが好ましい。そして、本実施形態における熱検知素子30は、開口部7を通って外部空間SP2から流入してくる熱気の熱を検知するチップサーミスタであり、基板2の延出部24に表面実装されている。各熱検知素子30は、互いに異なる1つの開口部7と対向するように配置されている。このため、熱検知素子30は、開口部7を通って外部空間SP2から流入してくる熱気の熱を検知することができる。なお、開口部7に対する熱検知素子30の位置関係については、後の「(2.7)熱検知部の配置構造」の欄で詳しく説明する。
【0055】
熱検知部3は、基板2が有するパターン配線等を介して、制御部9と電気的に接続されている。各熱検知素子30は、制御部9に電気信号(検知信号)を出力する。言い換えると、制御部9は、各熱検知素子30から出力される電気信号を通じて、温度上昇に依存して変化し得る各熱検知素子30の抵抗値を監視している。
【0056】
熱検知部3は、熱検知素子30以外に、熱検知素子30からの電気信号を増幅する増幅回路、及びアナログ-デジタル変換する変換回路等を更に有してもよいし、あるいは増幅及び変換は、回路モジュール側で行われてもよい。
【0057】
煙検知部4は、内部空間SP1の中央部に配置されている。具体的には、煙検知部4は、本体部200の第1面21に配置されて、かつその上端部が裏カバー52の収容凹部521に収められている。煙検知部4は、例えば煙を検知する光電式のセンサである。煙検知部4は、
図5及び
図7のように、光を放射する光学素子41と、光学素子41から放射された光を受光する受光素子42と、ラビリンス部43と、を有している。光学素子41は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。受光素子42は、例えばフォトダイオードである。ラビリンス部43は、へん平な略円筒形状の外郭を有しているケースの内部に形成されている。ラビリンス部43は、煙検知部4のケースの内側面に沿って並ぶ複数の小片44の集合体である(
図7参照)。ラビリンス部43は、これら複数の小片44の間を通して煙を通過させる。煙検知部4のケースは、その外周面において気体をラビリンス部43内に導入する複数の口を有して、かつ外光が内部に入射することを抑制する構造を有している。なお、煙検知部4の内部形状、例えば光学素子41及び受光素子42の位置、並びにラビリンス部43の形状及び位置等は、煙の流入の特性に応じて適宜設計されるべきものである。
【0058】
光学素子41及び受光素子42は、煙検知部4内において、互いに対向しないように配置される。言い換えると、受光素子42の受光面が、光学素子41の照射光の光軸C1(
図6参照)上から外れるように配置されている。
【0059】
火災等の発生時には、煙が筐体5の開口部7を通じて筐体5内に入り、煙検知部4内に導入され得る。煙検知部4内に煙が存在しない場合、光学素子41の照射光は、受光素子42の受光面にほとんど到達しない。一方、煙検知部4内に煙が存在する場合、光学素子41の照射光が煙によって散乱し、散乱した光の一部が受光素子42の受光面に到達する。つまり、煙検知部4は、煙によって散乱された光学素子41の照射光を受光素子42で受光する。
【0060】
受光素子42は、制御部9と電気的に接続されている。煙検知部4は、受光素子42で受光された光量に応じた電圧レベルを示す電気信号(検知信号)を制御部9に送信する。制御部9は、煙検知部4から受け取った検知信号の光量を煙濃度に換算して火災の判定を行う。制御部9は、光量をそのまま閾値判定に用いてもよい。煙検知部4は、受光素子42で受光された光量を煙濃度に換算してから煙濃度に応じた電圧レベルを示す検知信号を制御部9に送信してもよい。
【0061】
煙検知部4は、受光素子42からの電気信号を増幅する増幅回路、及びアナログ-デジタル変換する変換回路等を更に有してもよいし、あるいは増幅及び変換は、回路モジュール側で行われてもよい。また光学素子41の数は、1つに限定されず、複数でもよい。
【0062】
(2.6)制御部
制御部9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、制御部9は、CPU及びメモリを有するコンピュータにて実現されており、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータが制御部9として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0063】
制御部9は、通信部11、及び回路モジュール(点灯回路及び電源回路等)を制御するように構成されている。
【0064】
また制御部9は、熱検知部3及び煙検知部4からの検知信号を受信し、火災が発生したか否かを判定するように構成されている。具体的には、制御部9は、各熱検知部3からの検知信号を個別に監視し、検知信号に含まれている信号レベル(抵抗値に相当)が閾値を上回る(又は下回る)熱検知素子30が1つでも見つかると、火災が発生した判定する。また制御部9は、煙検知部4からの検知信号も監視し、検知信号に含まれている信号レベル(受光素子42で受光された光量又は煙濃度に相当)が閾値を超えると、火災が発生したと判定する。
【0065】
制御部9は、熱検知の信号レベルに基づいて、又は煙検知の信号レベルに基づいて、火災が発生したと判定すると、通信部11を介して、火災の発生を知らせる信号を、自動火災報知システムの受信機及び火災警報器等へ送信する。通信部11は、例えば有線により、受信機及び火災警報器等と通信するための通信インターフェイスである。通信部11は、取付部10の接続片101、ベース1bの接続部、及び構造体X1の裏側に配線されている信号線を介して、受信機及び火災警報器等と通信可能に接続されている。
【0066】
(2.7)熱検知部の配置構造
ここで本実施形態の熱検知部3の配置構造について説明する。
【0067】
本実施形態では、上述の通り、熱検知素子30は、基板2の第1面21に実装されるチップサーミスタである。そのため、熱感知器1全体としての小型化(特に薄型化)を図ることができる。またリードタイプのサーミスタに比べて、サーミスタ自体のコスト、及びその実装コストについても、安価に抑えることができる。
【0068】
さらに本実施形態では、外部空間SP2で壁体522に向かう熱気の流れ63が生じると、この流れ63を壁体522が分散して、内部空間SP1で熱検知部3に向かう熱気の第1の流れ64が生じる。このため、延出部24の第1面21の少なくとも一部は、第1の流れ64に露出する。
【0069】
このように延出部24の第1面21が第1の流れ64に露出していることで、延出部24にある4つの熱検知素子30が、チップサーミスタでありながらも、第1の流れ64の熱気に曝される可能性をより高めることができる。
【0070】
すなわち、例えば火災等の発生に起因する熱気が下から上昇すると、この熱気は、複数の開口部7から筐体5内に導入され、かつ熱検知部3に向かって流れる。その時に、熱検知素子30が、火災に相当する温度の熱を検知して、熱感知器1は、速やかに火災が発生していると判定できる。その結果、熱感知器1における熱の検知性能をより向上させつつ、熱感知器1の小型化を図ることができる。
【0071】
ここで本実施形態の熱感知器1は、内部空間SP1の中央部にある煙検知部4も更に備える。複数の開口部7から筐体5内に導入された気体が規定以上の煙濃度を有していれば、熱感知器1は煙の検知も行える。したがって、火災の感知性能を高めつつ、熱感知器1全体としての小型化を図ることができる。
【0072】
熱検知素子30は、外部空間SP2から開口部7を見たときに、熱検知素子30は開口部7の高さの中央付近に位置する。この位置は、例えば、表カバー51の基部511の裏側から突出して基板2と接触しているリブ514(
図1参照)の突出量等によって調整される。このため、熱検知素子30が開口部7の一端寄り(上端寄り又は下端寄り)に位置する場合に比べて、熱検知素子30が、開口部7から入り込んだ気体に曝される可能性を更に高めることができる。
【0073】
ところで、並び方向D1と平行な直線(中心軸C3)上に、煙検知部4の内部空間の中心P1と、熱感知部本体1aの中心とが配置されていることが好ましい(
図1及び
図6参照)。
図6では、煙検知部4内に配置されている光学素子41及び受光素子42を模式的に点(ドット)で図示している。本実施形態では、光学素子41及び受光素子42の高さは、互いに同じであり、光学素子41の光軸C1と受光素子42の光軸C2との交点は、一例として、中心P1と略一致する。
【0074】
光学素子41及び受光素子42の高さ位置、並びに光軸C1及びC2の向きは、光軸C1が、受光素子42の受光面と交わらない限り、特に限定されない。例えば、光学素子41及び受光素子42のうちのいずれか一方の高さは、他方の高さよりも低くてもよい。また光軸C1と光軸C2は、互いに交わらなくてもよい。この場合、煙検知部4を側方から見た光軸C1と光軸C2との間の中点が、中心P1と略一致してもよい。
【0075】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る熱感知器1と同様の機能は、熱感知器1の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0076】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0077】
本開示における熱感知器1の制御部9は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における熱感知器1の制御部9としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0078】
また、熱感知器1の制御部9における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは熱感知器1に必須の構成ではなく、熱感知器1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、熱感知器1の少なくとも一部の機能、例えば、熱感知器1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、基本例のように、熱感知器1の複数の機能が1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0079】
(3.1)その他の変形例
基本例の熱感知器1(熱煙複合型火災感知器)は2つの熱検知部3を備えているが、本変形例では熱検知部3の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。特に熱検知部3の数は6個以上であってもよい。本変形例の場合でも、1つの熱検知部3の両脇にそれぞれ第1壁体522aと第2壁体522bとを設けることができる。
【0080】
基本例では1つの熱検知部3の両脇にそれぞれ第1壁体522aと第2壁体522bとを設けているが、第1壁体522a又は第2壁体522bを設けてもよい。
【0081】
基本例では第1面523は曲面であるが、第1面523は平面が途中で折れ曲がった面であってもよい。
【0082】
基本例では壁体522は筐体5の一部を構成しているが、壁体552は別部材に設けられていてもよい。この場合、壁体522を備える別部材を筐体5内に収容することができる。
【0083】
基本例の基板2は菱形状であるが、三角形及び円形等の任意の形状であってもよい。この形状は、例えば延出部24の数に応じて設定できる。
【0084】
基本例では熱感知器1が作動している状態を示す表示部を備えていないが、この表示部を基部511等に設けてもよい。
【0085】
基本例の熱感知器1は電池を備えていないが、この電池を裏カバー52とベース1bとの間に設けてもよい。この場合、電池は基板2に電気的に接続されている。このため、停電時に熱感知器1の周辺で火災が生じても、熱感知器1は電池の電力で駆動することができる。
【0086】
基本例の熱感知器1は取付部10を備えているが、取付部10の代わりに電池を備えてもよい。
【0087】
基本例の熱検知素子30はチップサーミスタであるが、リードタイプサーミスタであってもよい。この場合、リードタイプサーミスタを覆う形状に表カバー51を変更できる。
【0088】
基本例では、基板2の第1面21に熱検知素子30が実装されている。しかし、熱検知素子30は、基板2の第2面22に実装されてもよい。あるいは、複数の熱検知素子30のうちの一部が第1面21に、残りが第2面22に、分かれて実装されてもよい。また、例えば熱検知素子30と煙検知部4の両方が、基板2の第2面22に実装されてもよい。
【0089】
基本例では、1つの熱検知素子30に対して隣接する貫通孔31の数は1つであるが、2つ以上であってもよい。例えば1つの熱検知素子30の周囲を囲むように複数の貫通孔31が設けられてもよい。
【0090】
基本例では、基板2は、1枚のプリント基板から構成されている。しかし、基板2は、2枚以上のプリント基板に分割されて構成されてもよい。ただし、分割された複数のプリント基板は、同一平面上に配置されることが望ましい。
【0091】
(4)まとめ
上記の通り、第1態様は、熱感知器(1)であって、ベース(1b)と、熱感知器本体(1a)とを備える。ベース(1b)は、建物の取り付け面(X11)に取り付けられる。熱感知器本体(1a)は、ベース(1b)に取り付けられる有底筒状のものであって、開口部(7)と、基板(2)と、熱検知部(3)と、少なくとも1つの壁体(522)とを備える。開口部(7)は、熱感知器本体(1a)の有底筒状の外形のうち、側面に開口して外部空間(SP2)と連通する。基板(2)は、熱感知器本体(1a)の有底筒状の外形のうち底面の近くに、当該底面に対向するように収容される。熱検知部(3)は、基板(2)の端部に実装されて、外部空間(SP2)から流入してくる気体の熱を検知する。壁体(522)は、開口部(7)を通った前記気体が熱検知部(3)に向かって流れるように、前記気体の流れを制御する。壁体(522)は、前記気体の流れを、外部空間(SP2)から開口部(7)に入ったあとに複数の気体の流れに分断する。また壁体(522)は、分断後の気体の流れのうち、熱感知器本体(1a)の内面に近い側に分流される気体の流れを、熱検知部(3)に向かわせる。
【0092】
第1態様によれば、壁体(522)に向かう気体の流れ(63)は、壁体(522)により制御されて熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)となる。しかも壁体(522)と熱検知部(3)との間で熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)長さを短くすることができる。したがって、壁体(522)から熱検知部(3)に向かう気体の熱を下げにくくすることができ、熱感知器(1)が火災の発生を感知するまでの期間を短くすることができる。
【0093】
第2態様は、第1態様の熱感知器(1)であって、基板(2)は、基板本体部(200)と、延出部(24)と、を有する。基板本体部(200)は、基板(2)の本体を構成する。延出部(24)では、基板本体部(200)の端部から外部空間(SP2)に向かって延びた先に、熱検知部(3)が実装される。
【0094】
第2態様によれば、流れ(64)の気体だけでなく、延出部(24)に向かう気体の熱を熱検知部(3)が検知することができる。
【0095】
第3態様は、第2態様の熱感知器(1)であって、熱検知部(3)は、延出部(24)に実装されるチップサーミスタ(熱検知素子30)を備える。
【0096】
第3態様によれば、内部空間(SP1)において熱検知部(3)に要する体積を小さくできるため、熱感知器(1)全体としての小型化を図ることができる。
【0097】
第4態様は、第2又は第3態様の熱感知器(1)であって、熱感知器本体(1a)を並び方向(D1)で見たとき、延出部(24)は、熱感知器本体(1a)の縁に沿って前記端部から外部空間(SP2)に向かって延びている。
【0098】
第4態様によれば、流れ(64)の気体だけでなく、延出部(24)に向かう気体の熱を熱検知部(3)が検知することができる。
【0099】
第5態様は、第2~第4態様のいずれか1つの熱感知器(1)であって、延出部(24)は、第1延出部(241)と、第2延出部(242)とを含む。第1延出部(241)は、基板本体部(200)の端部から外部空間(SP2)に向かって延びている。第2延出部(242)は、熱感知器本体(1a)の中心を通る中心軸(C3)と基板本体部(200)との交点(P2)を基準にして、第1延出部(241)と対称となる。熱検知部(3)は、第1熱検知部(301)と、第2熱検知部(302)とを含む。第1熱検知部(301)は、第1延出部(241)に配置されている。第2熱検知部(302)は、第2延出部(242)に配置されている。第1熱検知部(301)及び第2熱検知部(302)の各々は、チップサーミスタ(熱検知素子30)を備える。
【0100】
第5態様によれば、内部空間(SP1)において第1及び第2熱検知部(301、302)に要する体積を小さくできるため、熱感知器(1)全体としての小型化を図ることができる。
【0101】
第6態様は、第1~第5態様のいずれか1つの熱感知器(1)であって、熱感知器本体(1a)は、ベース(1b)と基板(2)との間にある蓋体(52)を更に備える。熱感知器本体(1a)は、少なくとも2つの壁体(522)を備える。熱感知器本体(1a)を並び方向(D1)で見たとき、2つの壁体(522)及び熱検知部(3)は、蓋体(52)の周縁部(520)に沿って配置されている。熱検知部(3)は、2つの壁体(522)の間に位置する。2つの壁体(522)の間に基板(2)がある。熱感知器本体(1a)を並び方向(D1)で見たとき、2つの壁体(522)は、基板(2)に近い部分ほど、開口部(7)に最も近い位置にある壁体(522)の先端同士を結ぶ直線(L4)から熱検知部(3)側へ離れるようにして傾いている。
【0102】
第6態様によれば、壁体(522)に向かう気体の流れ(63)は、壁体(522)により制御されて熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)となる。しかも壁体(522)と熱検知部(3)との間で熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)の長さを短くすることができる。したがって、壁体(522)から熱検知部(3)に向かう気体の熱を下げにくくすることができ、熱感知器(1)が火災の発生を感知するまでの期間を短くすることができる。
【0103】
第7態様は、第1~第6態様のいずれか1つの熱感知器(1)であって、壁体(522)は、開口部(7)のうち、一部を並び方向(D1)で塞ぎ、かつ残りの部分で内部空間(SP1)と外部空間(SP2)とを繋ぐ形状を有する。
【0104】
第7態様によれば、壁体(522)に向かう気体の流れ(63)は、壁体(522)により制御されて熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)となる。しかも壁体(522)と熱検知部(3)との間で熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)長さを短くすることができる。したがって、壁体(522)から熱検知部(3)に向かう気体の熱を下げにくくすることができ、熱感知器(1)が火災の発生を感知するまでの期間を短くすることができる。
【0105】
第8態様は、第1~第7態様のいずれか1つの熱感知器(1)であって、壁体(522)は、開口部(7)に対向する第1面(523)と、開口部(7)とは反対側にある第2面(524)とを有する。第2面(524)の面積は、第1面(523)の面積と異なる。壁体(522)の断面を並び方向(D1)で見たとき、第1面(523)の長さは、第2面(524)の長さよりも大きい。
【0106】
第8態様によれば、第1面(523)では、第2面(524)と比べて、熱気の動圧が大きく、静圧が小さくなるため、流れ(64)の気体を熱検知部(3)に引き込ませることができ、しかも外部空間(SP2)の気体も内部空間(SP1)に引き込ませることもできる。
【0107】
第9態様は、第8態様の熱感知器(1)であって、第1面(523)は、外部空間(SP2)に向かって凸となる凸面である。第2面(524)は、平面である。
【0108】
第9態様によれば、第1面(523)では、第2面(524)と比べて、熱気の動圧が大きく、静圧が小さくなるため、流れ(64)の気体を熱検知部(3)に引き込ませることができ、しかも外部空間(SP2)の気体も内部空間(SP1)に引き込ませることもできる。
【0109】
第10態様は、第9態様の熱感知器(1)であって、壁体(522)の断面を並び方向(D1)で見たとき、第1面(523)の頂点(525)は、第2面(524)に沿った方向において第2面(524)を2等分する中央(526)よりも開口部(7)に近い位置にある。頂点(525)において、第1面(523)と第2面(524)との間の寸法が最大となる。
【0110】
第10態様によれば、壁体(522)と熱検知部(3)との間で熱検知部(3)に向かう気体の流れ(64)の長さを短くすることができる。したがって、壁体(522)から熱検知部(3)に向かう気体の熱を下げにくくすることができ、熱感知器(1)が火災の発生を感知するまでの期間を短くすることができる。
【0111】
第11態様は、第9又は第10態様の熱感知器(1)であって、基板(2)は、基板本体部(200)と、延出部(24)と、を有する。基板本体部(200)は、基板(2)の本体を構成する。延出部(24)は、基板本体部(200)の端部から外部空間(SP2)に向かって延びている。熱検知部(3)は、延出部(24)にある。第2面(524)の延長線(L2)は、熱検知部(3)よりも基板本体部(200)側にある。
【0112】
第11態様によれば、壁体(522)により流れ(64)と分断された気体の流れは、熱検知部(3)付近で合流しにくくなる。このため、流れ(64)の気体の熱は下がりにくくなる。
【0113】
第12態様は、熱煙複合型火災感知器である。熱煙複合型火災感知器は、前記気体に含まれて侵入してくる煙成分を迷光減衰用のラビリンス構造内部の空間で感知することで火災の発生を判断する煙検知部(4)をさらに備える。煙検知部(4)は、熱感知器(3)の基板(2)のうち、熱検知部(3)と壁体(522)との妨げにならぬ中央寄りの位置に設けられている。熱煙複合型火災感知器は、煙検知部(4)での検知結果と、熱検知部(3)の検知結果との少なくとも一方を用いて火災発生の判断を行なう。
【0114】
第12態様によれば、煙検知部(4)と熱検知部(3)との少なくとも一方を用いて火災発生の判断を行なうことができ、火災発生が判断しやすくなる。
【0115】
なお、上記の基本例及び変形例では、熱検知部(3)、煙検知部(4)、及びガス検知部などの事例を挙げた。しかし、熱感知器(1)が備える検知部が熱検知部(3)だけであることに限定されない。熱感知器(1)が熱煙複合型火災感知器である場合には、この熱煙複合型火災感知器は、熱検知部(3)と壁体(522)との妨げにならぬ中央寄りの位置に、外部空間(SP2)からの気体に含まれて侵入してくる煙成分を迷光減衰用のラビリンス構造内部の空間(SP3)で検知することで火災の発生を判断する煙検知部(4)が設けられて、煙検知部(4)での検知結果と、熱検知部(3)の検知結果との少なくとも一方を用いて火災発生の判断を行なう設計とされたものであってもよい。このような熱煙複合型火災感知器の火災感知の動作の一例として、特許第4066761号に開示した火災判断アルゴリズムを採用することが考えられる。
【符号の説明】
【0116】
1 熱感知器
1a 熱感知器本体
1b ベース
2 基板
200 基板本体部
21 一表面
24 延出部
241 第1延出部
242 第2延出部
3 熱検知部
301 第1熱検知部
302 第2熱検知部
30 熱検知素子
63 流れ
64 流れ
7 開口部
52 蓋体
522 壁体
523 第1面
524 第2面
525 頂点
D1 並び方向
L2 延長線
P2 交点
SP1 内部空間
SP2 外部空間
X11 取り付け面