(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20230707BHJP
G01S 7/02 20060101ALI20230707BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20230707BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20230707BHJP
【FI】
G01S7/40 160
G01S7/02 218
G01S7/03 220
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2020051566
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】四方 英邦
(72)【発明者】
【氏名】由比 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 健太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤二
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281775(JP,A)
【文献】特開2019-060732(JP,A)
【文献】特開2010-071889(JP,A)
【文献】特開2005-331466(JP,A)
【文献】特開2008-224511(JP,A)
【文献】国際公開第2019/234900(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0246649(US,A1)
【文献】特表2017-521669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信された信号に対して信号処理を行う複数の集積回路と、
前記複数の集積回路にそれぞれ対応する受信アンテナで受信されたリーク電波成分の差分に基づいて、前記複数の集積回路間の偏差を補償する信号処理回路と、
を具備するレーダ装置。
【請求項2】
前記信号処理回路は、前記リーク電波成分の差分に基づいて、前記複数の集積回路それぞれに設定されたパラメータを推定し、推定された前記パラメータに基づいて前記偏差を補償する、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記信号処理回路は、前記複数の集積回路それぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、前記リーク電波成分の差分との関連付けに関する情報に基づいて、前記パラメータを推定する、
請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記情報は、前記複数の集積回路のうち、異なる集積回路に対応する受信アンテナでそれぞれ受信された前記リーク電波成分の異なる受信アンテナの組み合わせにおける複数の差分の平均値と、前記パラメータの組み合わせとの関連付けを示す、
請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記情報は、前記複数の集積回路のうち、異なる集積回路に対応する受信アンテナでそれぞれ受信された前記リーク電波成分の異なる受信アンテナの組み合わせにおける複数の差分のセットと、前記パラメータの組み合わせとの関連付けを示す、
請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記信号処理回路は、前記複数の集積回路それぞれに対して推定された前記パラメータが互いに異なる場合、前記偏差を補償する、
請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記複数の集積回路は、送信される信号に対して信号処理を行い、
前記受信アンテナは、前記複数の集積回路に対応する送受信アンテナによって構成される仮想受信アンテナである、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記差分は、前記リーク電波成分の位相差である、
請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記差分は、前記リーク電波成分の位相及び振幅から構成されるベクトルの差分である、
請求項1に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ミリ波帯といった無線信号を用いたレーダ装置が複数のトランシーバIC(Integrated Circuit:集積回路)を備える構成があり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の性能を向上する方法については検討の余地がある。
【0005】
本開示の非限定的な実施例は、複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の性能を向上できるレーダ装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、受信された信号に対して信号処理を行う複数の集積回路と、前記複数の集積回路にそれぞれ対応する受信アンテナで受信されたリーク電波成分の差分に基づいて、前記複数の集積回路間の偏差を補償する信号処理回路と、を具備する。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施例によれば、複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の性能を向上できる。
【0009】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の一例を示す図
【
図3】複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の一例を示す図
【
図4】実施の形態1に係るレーダ装置の一例を示す図
【
図5】実施の形態1に係るパラメータとリーク成分の位相差との関連付けの一例を示す図
【
図6】実施の形態1に係るパラメータとリーク成分の位相差セットとの関連付けの一例を示す図
【
図7】実施の形態1に係るパラメータとリーク成分のベクトル差分セットとの関連付けの一例を示す図
【
図8】実施の形態2に係るレーダ装置におけるアンテナ及びトランシーバICの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は一例であり、本開示は以下の実施の形態により限定されるものではない。
【0012】
例えば、衝突防止といった安全確保、又は、自動運転を実現するセンサとして、雪又は霧といった悪天候の周囲環境においても検出性能が劣化しにくいミリ波レーダが注目されている。ミリ波レーダは、例えば、交差点又は道路の監視、あるいは不審者の不正侵入を監視するインフラ設備に適用することも期待されており、全天候対応型センサとしての用途が拡大しつつある。これらの適用シーンでは、ミリ波レーダには、例えば、水平方向の方位角に加え、垂直方向の仰角も検出することにより、イメージングを可能とする2次元測角レーダの実現が期待されている。
【0013】
2次元測角レーダにて水平方向及び垂直方向の双方の分解能を向上するための構成として、例えば、多数の送受信アンテナ構成が挙げられる。ここで、送受信アンテナと接続されるトランシーバICが多数の送受信回路によって構成されると、発熱、信頼性の低下又は歩留まりが発生する可能性がある。このため、例えば、1次元測角レーダに使用されるアンテナ数に対応するトランシーバICを複数用いて2次元測角レーダを実現することが検討されている。
【0014】
また、例えば、レーダ装置が備えるトランシーバICは、自動的にキャリブレーション(以下、自動キャリブレーションとも呼ぶ)を行ってよい。トランシーバICは、例えば、温度変化といった環境変動に応じて、特性変動を補償するための自動キャリブレーションを行ってよい。
【0015】
例えば、レーダ装置が複数のトランシーバICを備える場合、複数のトランシーバIC間で同期されるために、同一のローカル信号もしくはチャープ信号が外部から入力される構成があり得る。
【0016】
その一方で、例えば、複数のトランシーバICが同一基板上に実装される場合でも、複数のトランシーバICそれぞれの周囲に配置された他の回路(例えば、電源IC)による発熱の影響度合いは、トランシーバIC毎に異なり得る。このため、トランシーバIC毎に,適切な設定パラメータが異なることが想定され得る。よって、自動キャリブレーション機能に関しては、複数のトランシーバICそれぞれが独立して適応的に実施する方式があり得る。換言すると、複数のトランシーバICにて自動キャリブレーションが一律に動作されないことが想定され得る。
【0017】
温度変動といった環境変動に追従する自動キャリブレーションが複数のトランシーバIC毎に独立して行われる場合、例えば、複数のトランシーバICそれぞれに接続された各アンテナ間の位相差(例えば、相対位相)に変動が生じる可能性がある。このアンテナ間の位相差の変動によって、レーダ装置では、例えば、到来方向推定の誤差、又は、検出性能の劣化といった影響が生じる可能性がある。
【0018】
このような影響を低減する方法として、例えば、同一チップ(例えば、トランシーバIC)に接続されるアンテナ(例えば、アレイアンテナ)間の複数の位相差を求め、それら複数の位相差がほぼ一定であり、かつ、ターゲットの数が一つとみなせる場合に、異なるチップに接続されているアンテナ間の位相差と、同一チップに接続されているアンテナ間の位相差との差が閾値以上の場合に、それぞれのチップの特性が不一致であると判断して、補償を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0019】
しかしながら、この方法では、例えば、レーダ装置におけるレーダ送信部及びレーダ受信部の何れか一方が単一チップで構成されることを前提としているため、レーダ送信部及びレーダ受信部の両方とも複数のトランシーバICである構成には適用することが困難な場合がある。
【0020】
また、この方法では、例えば、トランシーバIC間の特性の不一致により、補償動作の際に複数のトランシーバICに接続されたアンテナ(例えば、アレイアンテナ)によるデジタルビームフォーミングの利得が低下している可能性がある。また、この方法では、レーダ装置は、ターゲットを検出することにより補償処理を行う。よって、この方法では、例えば、複数のアンテナによるデジタルビームフォーミングによって利得を向上した場合に検出可能なターゲット(例えば、反射強度の小さいターゲット)には適用することが困難な場合がある。
【0021】
換言すると、この方法は、例えば、デジタルビームフォーミングによる利得に相当するような反射強度の大きいターゲットへの適用を前提としており、反射強度の小さいターゲットに対する検出性能は劣化し得る。さらに、この方法では、例えば、反射強度が十分でないと雑音の影響を受けやすくなるため、各アレイアンテナ間の位相差の測定精度が劣化し、想定する補償動作を行えない可能性がある。
【0022】
そこで、本開示の一実施例では、複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の性能を向上する方法の一例について説明する。本開示の一実施例によれば、レーダ装置は、例えば、複数のトランシーバICから構成され、個々のトランシーバICが独立して自動キャリブレーションを行う構成でも安定動作が可能になる。
【0023】
なお、レーダ装置は、例えば、車両といった移動物体に搭載されてもよく、道路の路側装置又は監視用装置に搭載されてもよい。
【0024】
(実施の形態1)
[到来方向推定]
図1は、レーダ装置のレーダ受信部が備えるアレイアンテナ(例えば、受信アレイアンテナと呼ぶ)を用いた到来方向推定に関する概念を説明する図である。
【0025】
図1において、受信アレイアンテナは、例えば、受信アンテナ(又は、アンテナ素子とも呼ぶ)101,102,103及び104を備える。受信アンテナ101,102,103及び104は、例えば、レーダ装置にて使用される電波の中心周波数における波長をλとした場合に0.5λ間隔で配置されてよい。なお、アンテナ間隔は0.5λに限定されない。
【0026】
例えば、レーダ装置のレーダ送信部(図示せず)から送信された信号が物体(例えば、ターゲット)において反射した反射波が、
図1に示す受信アレイアンテナに対して角度θの方向から入力される場合、各受信アンテナに対応する光路長の違いによって位相回転が生じ得る。例えば、
図1に示すように、受信アンテナ101を基準とした場合、各受信アンテナ102,103及び104に入力される電波に対して、θ,2θ及び3θの位相回転がそれぞれ生じ得る。レーダ装置は、例えば、各受信アンテナの位相回転量に基づいて、反射波の方向を推定可能である。
【0027】
[複数のトランシーバICを備えるレーダ装置の構成例]
図2及び
図3は、レーダ装置のレーダ受信部の構成例を示すブロック図である。レーダ受信部では、例えば、受信アレイアンテナに複数のトランシーバICが接続されてよい。
【0028】
図2及び
図3では、例えば、受信アレイアンテナに2個のトランシーバIC201(又は、IC1とも呼ぶ)及びトランシーバIC202(又は、IC2とも呼ぶ)が接続される。例えば、
図2及び
図3では、受信アンテナ101及び受信アンテナ102がトランシーバIC201に接続され、受信アンテナ103及び受信アンテナ104がトランシーバIC202に接続される。
【0029】
図2及び
図3において、トランシーバIC201及びトランシーバIC202は、例えば、少なくとも一つの系統(又はチャネルとも呼ぶ)の受信器(receiver)を備えてよい。また、トランシーバIC201及びトランシーバIC202は、例えば、少なくとも一つの系統の送信器(transmitter)を備えてよい。
【0030】
トランシーバIC201及びトランシーバIC202は、受信アレイアンテナ(例えば、複数の受信アンテナ)にて受信した信号に対して、例えば、増幅、ミキシング、AD変換といった受信信号処理を行う。また、トランシーバIC201及びトランシーバIC202は、例えば、温度変化と言った環境変動に応じて自動キャリブレーションを行い、各トランシーバICに設定されるパラメータを設定(例えば、調整)してよい。
【0031】
トランシーバICに設定されるパラメータには、例えば、レーダ装置のレーダ送信部における電力増幅器(PA:Power Amplifier)の利得、及び、レーダ受信部における低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)の利得といった自動キャリブレーションに関する情報が含まれてよい。
【0032】
また、
図2及び
図3において、信号処理部300は、例えば、複数のトランシーバIC201,202から出力される信号を用いて信号処理(例えば、デジタル信号処理)を行ってよい。
【0033】
例えば、信号処理部300は、トランシーバIC201,202から出力されるビート信号に基づいて、デジタルビームフォーミングによる到来方向推定を行ってよい。なお、ビート信号は、例えば、トランシーバIC201,202において、レーダ送信部(図示せず)からのチャープ信号(換言すると、レーダ送信信号)と受信信号(換言すると、反射波信号)とをミキシングして生成されてよい。
【0034】
例えば、トランシーバIC201及びトランシーバIC202は、各トランシーバIC内の温度を測定できる機能を有してよい。例えば、トランシーバIC201及びトランシーバIC202は、温度変化に応じて、利得の変動を補償するように、利得に関するパラメータの制御(換言すると、自動キャリブレーション)を行ってよい。
【0035】
ここで、トランシーバICにおける利得の制御に伴い、例えば、信号の振幅及び位相の少なくとも一方が変化し得る。例えば、
図2及び
図3に示すトランシーバIC201及びトランシーバIC202では、設定されるパラメータpに依存した位相回転φが生じ得る。
【0036】
例えば、
図2に示すように、トランシーバIC201及びトランシーバIC202に設定されるパラメータが共通である場合(例えば、パラメータp1の場合)、トランシーバIC201及びトランシーバIC202にて生じる位相回転も同様の値(例えば、位相回転φ1)になりやすい。このため、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間(換言すると、アレイアンテナ出力系統間)において、位相差は生じにくい。
【0037】
その一方で、
図3に示すように、トランシーバIC201及びトランシーバIC202に設定されるパラメータが異なる場合(例えば、パラメータp1≠p2)、トランシーバIC201及びトランシーバIC202にて生じる位相回転も異なりやすい(例えば、位相回転φ1≠φ2)。
【0038】
このため、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間にはΔφ=(φ1-φ2)の位相誤差が生じ得る。例えば、
図3では、トランシーバIC201に接続される受信アンテナ101で受信される信号と、トランシーバIC202に接続される受信アンテナ103及び受信アンテナ104それぞれで受信される信号との間に、光路長の違いによる位相回転θに関する位相差に加え、トランシーバIC間の位相差Δφが生じ得る。なお、同一のトランシーバICに接続される受信アンテナで受信される信号間には、上述した位相差Δφは生じにくい。
【0039】
よって、
図3では、信号処理部300に入力される信号の位相差は、例えば、受信アンテナ101を基準とした場合、各受信アンテナ102,103及び104に入力される電波に対してθ、2θ-Δφ、3θ-Δφとなり得る。このため、信号処理部300では、到来方向推定において誤差が発生する可能性がある。
【0040】
[本開示の一実施例に係るレーダ装置の構成例]
図4は、本開示の一実施例に係るレーダ装置10が備えるレーダ受信部の構成例を示す図である。
図4に示すレーダ受信部において、
図2又は
図3と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
図4に示す信号処理部400(例えば、信号処理回路に相当)は、例えば、
図2又は
図3に示す信号処理部300と同様の処理に加え、トランシーバIC201及びトランシーバIC202にて生じ得る位相誤差成分(例えば、Δφ)を補償する構成(換言すると、打ち消す構成)を備えてよい。
【0042】
例えば、信号処理部400は、トランシーバIC201及びトランシーバIC202それぞれに設定されるパラメータp(例えば、自動キャリブレーションによって調整され得る値)を推定する。そして、信号処理部400は、例えば、トランシーバIC201の推定パラメータとトランシーバIC202の推定パラメータとが互いに異なる場合、トランシーバIC間の偏差を補償する処理を行ってよい。
【0043】
例えば、
図4に示す信号処理部400は、補償部401,402,403及び404、及び、相関演算部405を備えてよい。
【0044】
補償部401,402,403及び404は、例えば、各受信アンテナ101,102,103及び104それぞれのアンテナ系統の出力に対して位相回転の補償(換言すると、トランシーバIC間の偏差の補償)を行う。
【0045】
図4では、一例として、トランシーバIC201を位相回転の基準とする。換言すると、補償部401,402,403及び404は、例えば、トランシーバIC201に対するトランシーバIC202の偏差(例えば、位相及び振幅の少なくとも一方の差分)を補償してよい。この場合、トランシーバIC201に対応する補償部401及び402は、補償処理を行わなくてよい(換言すると、位相誤差成分0の位相回転補償を行ってよい)。その一方で、トランシーバIC202に対応する補償部403及び404は、例えば、トランシーバIC201とトランシーバIC202とのパラメータ設定値の違いに基づいて、位相誤差成分Δφを補償する位相回転を行ってよい。
【0046】
なお、信号処理部400における補償方法の一例については後述する。
【0047】
また、
図4において、位相回転の基準となるトランシーバIC(例えば、代表チップとも呼ぶ)は、トランシーバIC201に限らず、トランシーバIC202でもよい。
【0048】
相関演算部405は、例えば、補償部401,402,403及び404それぞれから入力される信号(位相補償された信号)と、到来方向推定用のアレイベクトルとの相関演算を行い、到来方向推定処理を行ってよい。例えば、相関演算部405は、相関結果が最も高い方向を、到来波が入力される到来方向と推定してよい。相関演算部405は、到来方向の推定結果を出力する。
【0049】
[補償方法]
以下、上述したレーダ装置10におけるトランシーバIC間の偏差(例えば、位相差)を補償する方法の一例について説明する。
【0050】
例えば、温度変化といった環境変動に追従する自動キャリブレーション機能の一例として、レーダ装置10が、測定した温度に応じて、トランシーバIC201又はトランシーバIC202に設定されるパラメータを離散的に切替える制御を行うことが挙げられる。レーダ装置10は、例えば、自動キャリブレーションにて設定されているパラメータを外部から読み出し可能である。ただし、パラメータの切替えが頻繁に発生するような環境では、レーダ装置10がパラメータを外部から読み出す間にも、自動キャリブレーションによってパラメータが他の設定値に切り替わる可能性がある。換言すると、レーダ装置10は、自動キャリブレーションによるパラメータの切り替えに追従することが困難な場合がある。また、レーダ装置10がパラメータ設定値を外部から読み出す場合には、一旦、レーダ送受信機能を停止することも想定され得る。
【0051】
これに対して、本実施の形態に係るレーダ装置10は、例えば、トランシーバIC201及びトランシーバIC202に設定されるパラメータを推定する。換言すると、本実施の形態では、レーダ装置10は、トランシーバIC201及びトランシーバIC202に設定されるパラメータを外部から読み出さなくてよい。この構成により、レーダ装置10は、例えば、トランシーバIC201又はトランシーバIC202に設定されるパラメータの切り替えが頻繁に発生する環境でも、自動キャリブレーションによるパラメータに切り替えに追従してパラメータ設定値を推定できる。また、レーダ装置10は、例えば、パラメータを外部から読み出さないので、レーダ送受信機能を停止せずに継続可能である。
【0052】
<パラメータの推定方法>
以下、トランシーバIC201及びトランシーバIC202に設定されるパラメータの推定方法の一例について説明する。
【0053】
例えば、レーダ装置10は、レーダ性能として、より遠方のターゲットの検出に加え、より近傍のターゲットの検出が期待されている。一例として、レーダ装置10が車両のバンパー内に設置される場合が想定され得る。この場合、例えば、レーダ装置10が車両に寄りかかっている人といったターゲットの存在の有無を検出可能であれば、安全性を向上できる。また、例えば、駐車スペースが限られている場合に、レーダ装置10が、近接する他の車両又は壁といったターゲットと車両との距離を正確に測定することにより、駐車支援が可能となる。
【0054】
ところで、レーダの場合、レーダ送信部とレーダ受信部との結合を除去しにくく、例えば、レーダ送信部からレーダ受信部へ直接漏れ込んでしまう電波(又は信号成分)、いわゆる、リーク電波成分(以下、リーク成分と呼ぶこともある)が存在し得る。リーク成分は、例えば、送信アンテナから受信アンテナに漏れ込む経路の他に、トランシーバICの内部(例えば、送信器から受信器への経路)で漏れ込む経路も存在し得る。
【0055】
また、リーク成分は、レーダ装置10の近傍にターゲット(換言すると、反射物)が存在しない場合には、例えば、温度変化の他の要因では変化しにくい。換言すると、レーダ装置10におけるリーク成分は、例えば、トランシーバIC201,202の温度変化(換言すると、設定されるパラメータ)に応じて変化し得る成分と云える。
【0056】
なお、例えば、温度変化によって、リーク成分の絶対的な位相又は振幅が変化する場合でも、同一のトランシーバIC内のアンテナ系統間であれば、当該リーク成分における相対的な位相差又は振幅差による影響は無視可能である。その一方で、異なるトランシーバICのアンテナ系統間では、リーク成分の絶対的な位相又は振幅が変化する場合に、当該リーク成分における相対的な位相差又は振幅差による影響を受けやすい。
【0057】
そこで、本実施の形態では、レーダ装置10(例えば、信号処理部400)は、例えば、複数のトランシーバIC(例えば、トランシーバIC201,202)にそれぞれ対応する受信アンテナで受信されたリーク成分の差分に基づいて、トランシーバIC間の偏差を補償してよい。例えば、複数のトランシーバICそれぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、トランシーバIC間のリーク成分の差分に関する情報(例えば、位相差)とが関連付けられてよい。
【0058】
例えば、レーダ装置10は、複数のトランシーバICに設定され得るパラメータ(換言すると、パラメータの設定候補)におけるトランシーバIC間のリーク成分の偏差(例えば、位相差)を測定してよい。そして、レーダ装置10は、例えば、パラメータの組み合わせとリーク成分の差分との関連付けに関する情報を、レーダ装置10の実運用(例えば、レーダ送受信処理)の前に予め生成してよい(一例は後述する)。
【0059】
本実施の形態では、レーダ装置10は、実運用中に、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間のリーク成分の差分(例えば、リーク成分の位相差)をモニタリング(換言すると、測定)する。そして、レーダ装置10は、例えば、パラメータの組み合わせとリーク成分の差分との関連付けに関する情報を参照して、モニタリングしたリーク成分の差分に関連付けられたパラメータの組み合わせを、各トランシーバIC201,202に設定されたパラメータの推定値に設定してよい。
【0060】
また、レーダ装置10は、パラメータの推定値に基づいて、位相誤差成分を補償してよい(一例は後述する)。
【0061】
<パラメータとリーク成分との関連付けの例>
リーク成分の測定は、例えば、恒温槽内で行われてよい。また、恒温槽の側壁からの反射の影響を極力抑えるために、恒温槽の側面は電波吸収体で覆われてもよい。
【0062】
また、複数のトランシーバICは、例えば、同一基板上の異なる場所に実装されることが想定され得る。また、各トランシーバICの内部の温度差は、トランシーバIC間の温度差と比較して小さいことを前提としてよい。また、トランシーバICに設定され得るパラメータの範囲(例えば、最適値)は、例えば、各温度領域に依存し得る。
【0063】
そこで、例えば、レーダ装置10は、各温度領域にて想定される範囲のパラメータの組み合わせについてリーク成分の差分を測定してよい。換言すると、レーダ装置10は、例えば、各温度領域にて想定される範囲と異なる範囲のパラメータの組み合わせについてリーク成分の差分を測定しなくてよい。なお、トランシーバIC間の温度差が大きいほど、例えば、パラメータ設定値の組み合わせを増やして測定を実施してもよい。
【0064】
図5は、トランシーバIC201及びトランシーバIC202それぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、各パラメータ設定時に測定されるリーク成分の位相差との関連付け(換言すると、偏差特性の一覧)の一例を示す図である。トランシーバICに設定されるパラメータと測定されたリーク成分の位相差との関連付けに関する情報は、例えば、
図5に示すようなテーブルによって表されてよい。
【0065】
例えば、レーダ装置10は、基準となるトランシーバIC201に設定されるパラメータの前後の値をトランシーバIC202のパラメータに設定し、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間のリーク成分の位相差Δφを測定してよい。
【0066】
例えば、
図5に示すトランシーバIC201に設定されるパラメータを「p
x」とし、トランシーバIC201に設定されるパラメータを「p
y」とし、パラメータp
x及びパラメータp
yの組み合わせにて測定されるリーク成分の位相差を「Δφ
xy」と表す。
【0067】
なお、
図5では、パラメータの種類を3ビット(p1~p8の8種類)とする例を示す。なお、パラメータの種類は8種類に限定されず、他の数でもよい。また、
図5では、トランシーバIC201に設定されるパラメータの前後1つずつのパラメータがトランシーバIC202に設定される場合について示すが、これに限定されない。例えば、トランシーバIC201に設定されるパラメータの前後2つ以上のパラメータがトランシーバIC202に設定されてもよい。
【0068】
以下、リーク成分の位相差(
図5に示す位相差Δφ
xy)の算出例について説明する。
【0069】
例えば、レーダ装置10は、トランシーバIC201及びトランシーバIC202それぞれに対してパラメータを設定した後、各受信アンテナ101,102,103及び104間の相対位相を算出してよい。
【0070】
例えば、受信アンテナ101、102、103及び104の絶対位相をそれぞれ、θa、θb、θc及びθdとした場合に、レーダ装置10は、受信アンテナ101を基準として、受信アンテナ103との位相差Δφac=θc-θa、及び、受信アンテナ104との位相差Δφad=θd-θaを、相対位相として算出してよい。
【0071】
レーダ装置10は、例えば、トランシーバIC202に対してトランシーバIC201と同一のパラメータpxを設定した場合の相対位相と、トランシーバIC202に対してトランシーバIC201と異なるパラメータpyを設定した場合の相対位相と、に基づいて、リーク成分の位相差Δφxyを算出してよい。
【0072】
一例として、
図5に示すトランシーバIC201にパラメータp1が設定され、トランシーバIC202にパラメータp2が設定される場合について説明する。
【0073】
レーダ装置10は、例えば、トランシーバIC201とトランシーバIC202とに同じパラメータ(例えば、p1)が設定される場合の相対位相Δφac_r1、及び、Δφad_r1を算出する。
【0074】
また、レーダ装置10は、例えば、トランシーバIC201にパラメータp1が設定され、トランシーバIC202にパラメータp2が設定される場合の相対位相をΔφac_m2、及び、Δφad_m2を算出する。
【0075】
また、レーダ装置10は、相対位相Δφac_r1、Δφad_r1及び相対位相Δφac_m2、Δφad_m2に基づいて、リーク成分の位相差Δφ12を、以下のように算出してよい。
Δφ12={(Δφac_m2-Δφac_r1)+(Δφad_m2-Δφad_r1)}/2
【0076】
レーダ装置10は、Δφ12と同様にして、基準となるトランシーバIC201に設定されるパラメータpx(例えば、p2~p8のそれぞれ)及び他のトランシーバIC202に設定されるパラメータpyの組み合わせにおけるリーク成分の位相差Δφxyを算出してよい。
【0077】
このように、
図5に示すパラメータの組み合わせとリーク成分の差分との関連付けに関する情報は、複数のトランシーバICのうち、異なるトランシーバICに対応する受信アンテナでそれぞれ受信されたリーク成分の異なる受信アンテナの組み合わせ(
図5では、受信アンテナ101,103の組み合わせ、及び、受信アンテナ101,104の組み合わせ)における複数の差分の平均値Δφ
xyと、パラメータの組み合わせ(p
x及びp
y)との関連付けを示す。
【0078】
例えば、レーダ装置10(又は、レーダ装置10を搭載する製品)の工場出荷時に、レーダ装置10は、自動キャリブレーション対象の設定パラメータセットに対するトランシーバIC間(又は、アレイアンテナ間)のリーク成分の偏差特性を測定し、
図5に示す情報(例えば、テーブル)を記憶してよい。
【0079】
<位相誤差成分の補償方法>
レーダ装置10は、例えば、実運用中において、受信アレイアンテナを構成する受信アンテナ101,102,103及び104におけるリーク成分の位相を測定し、各トランシーバIC201,202間のアレイアンテナ系統におけるリーク成分の位相差Δφを算出してよい。
【0080】
そして、レーダ装置10は、例えば、
図5に示すパラメータ設定値の組み合わせとリーク成分の位相差との関連付けを参照して、各トランシーバIC201,202に設定されたパラメータを推定してよい。例えば、レーダ装置10は、
図5に示すリーク成分の位相差Δφ
xyのうち、モニタリングしたリーク成分の位相差Δφに最も近い位相差に関連付けられたパラメータ(例えば、p
x及びp
y)を、各トランシーバIC201,202に設定されたパラメータの推定値に設定してよい。
【0081】
例えば、レーダ装置10は、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間で推定されるパラメータが異なるか否かを判断してよい。例えば、レーダ装置10は、測定(又は、モニタリング)したリーク成分の位相差が、
図5に示すリーク成分の位相差の何れかに相当する場合、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間で推定されるパラメータが異なると判断してよい。その一方で、例えば、レーダ装置10は、測定したリーク成分の位相差が、
図5に示すリーク成分の位相差の何れにも相当しない場合(例えば、位相差成分が0付近)、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間で推定されるパラメータが同一と判断してよい。
【0082】
なお、
図5に示すテーブルには、更に、トランシーバIC201及びトランシーバIC202のパラメータが同一の場合のリーク成分の位相差が含まれてもよい。このようにすることで、例えば、レーダ装置10は、測定したリーク成分の位相差が、パラメータが同一の場合のリーク成分の位相差に近いかどうか判断することが可能となり、パラメータが同一であることの判断が容易となる。
【0083】
レーダ装置10は、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間で推定されるパラメータが異なる場合、トランシーバIC201に対するトランシーバIC202の偏差を補償してよい。
【0084】
例えば、レーダ装置10は、トランシーバIC201(基準となるトランシーバIC)に設定されるパラメータを、他のトランシーバIC202に設定する場合の特性に合わせるための補償ベクトルを、トランシーバIC202に対応する受信信号に乗算することにより、位相誤差成分を補償してよい。
【0085】
その一方で、レーダ装置10は、トランシーバIC201とトランシーバIC202との間で推定されるパラメータが同一の場合、トランシーバIC201に対するトランシーバIC202の偏差を補償しなくてよい。
【0086】
そして、レーダ装置10は、例えば、補償後の受信信号に基づいて、信号処理(例えば、到来方向推定)を行ってよい。
【0087】
以上、レーダ装置10におけるトランシーバIC間の偏差(例えば、位相差)を補償する方法の一例について説明した。
【0088】
このように、レーダ装置10は、受信された信号に対して信号処理を行う複数のトランシーバICにそれぞれ対応する受信アンテナで受信されたリーク成分の差分に基づいて、複数のトランシーバIC間の偏差を補償する。例えば、レーダ装置10は、パラメータの組み合わせとリーク成分の位相差との関連付けに基づいて、各トランシーバICに設定されているパラメータを推定し、推定されたパラメータに基づいて、トランシーバIC間の偏差を補償する。
【0089】
上述したように、レーダ装置10にて事前に測定されるリーク成分の位相差は、トランシーバIC202に対してトランシーバIC201と同一のパラメータpxが設定される場合(換言すると、温度環境が同様の場合)に対する、トランシーバIC202に対してトランシーバIC201と異なるパラメータpyが設定される場合(換言すると、温度環境が異なる場合)のリーク成分の差分に相当する。換言すると、レーダ装置10にて事前に測定されるリーク成分の位相差は、トランシーバIC202周辺の温度変化に応じて変動する値(換言すると、パラメータの変更に伴う値)である。
【0090】
よって、レーダ装置10は、レーダ装置10にて事前に測定されるリーク成分の位相差に基づいて、トランシーバICの温度変化に追従して、複数のトランシーバICそれぞれに設定されるパラメータに応じた補償処理を行うことができる。
【0091】
また、レーダ装置10は、例えば、トランシーバIC間のリーク成分に基づいて、トランシーバIC間の偏差を補償する。換言すると、レーダ装置10は、トランシーバIC間の偏差を補償する際に、ターゲットの検出結果に基づかなくてよい。これにより、レーダ装置10は、例えば、ターゲットの有無(又は、ターゲットの数、ターゲットの反射強度)に依らずトランシーバIC間の偏差を補償できる。
【0092】
また、レーダ装置10は、事前に測定したリーク成分に基づいて、トランシーバICに設定されたパラメータを推定するため、例えば、トランシーバICに設定されたパラメータを外部から読み出さなくてもよい。これにより、レーダ装置10は、例えば、トランシーバICの環境変動(換言すると、自動キャリブレーションによるパラメータ設定)に追従して、補償処理を行うことができる。また、レーダ装置10は、例えば、レーダ送受信処理(例えば、ターゲット検出処理)を中断せずに、補償処理を行うことができる。
【0093】
以上より、本実施の形態によれば、レーダ装置10は、例えば、複数のトランシーバICから構成され、個々のトランシーバICが独立して自動キャリブレーションを行う構成でもレーダ性能の劣化を抑制して、安定動作が可能になる。換言すると、レーダ装置10は、例えば、複数のトランシーバICを備えて(例えば、経済合理性に即して)、レーダ性能の劣化を抑制し、高分解能なレーダ処理を実現できる。
【0094】
よって、本実施の形態によれば、複数のトランシーバICを備えるレーダ装置10の性能を向上できる。
【0095】
(実施の形態1の変形例1)
図5では、基準となるトランシーバIC201に対して、他のトランシーバIC202に接続される受信アンテナ103及び受信アンテナ104における相対位相に基づいて1つの位相差Δφ
xy(換言すると、各アレイアンテナ系統における位相差の平均値)を用いる場合について説明したが、これに限定されない。
【0096】
例えば、レーダ装置10は、
図6に示すように、トランシーバIC201,202それぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、異なるトランシーバIC間の受信アンテナの組み合わせにおけるリーク成分の位相差Δφのセットとの関連付けを示す情報(例えば、テーブル)を保持してもよい。
【0097】
換言すると、
図6に示すパラメータの組み合わせとリーク成分の差分との関連付けに関する情報は、複数のトランシーバICのうち、異なるトランシーバICに対応する受信アンテナでそれぞれ受信されたリーク成分の異なる受信アンテナの組み合わせ(
図6では、受信アンテナ101,103の組み合わせ、受信アンテナ101,104の組み合わせ、受信アンテナ102,103の組み合わせ、及び、受信アンテナ102,104の組み合わせ)における複数の差分のセットと、パラメータの組み合わせ(p
x及びp
y)との関連付けを示す。
【0098】
図6では、一例として、リーク成分の位相差のセットには、受信アンテナ101と受信アンテナ103との間のリーク成分の位相差Δφaxcy、受信アンテナ101と受信アンテナ104との間のリーク成分の位相差Δφaxdy、受信アンテナ102と受信アンテナ103との間のリーク成分の位相差Δφbxcy、及び、受信アンテナ102と受信アンテナ104との間のリーク成分の位相差Δφbxdyが含まれてよい。ここで、xはトランシーバIC201に設定されるパラメータの番号を示し、yはトランシーバIC202に設定されるパラメータの番号を示してよい。例えば、
図6では、x及びyは、1~8の何れかの値でもよい。
【0099】
レーダ装置10は、例えば、
図6に示すリーク成分の位相差セットと、実運用中にモニタリング(換言すると、測定)によって得られるリーク成分の位相差との相関演算を行い、相関値が最も高い位相差セットに関連付けられたパラメータを、各トランシーバICに設定されたパラメータであると推定してよい。
【0100】
例えば、リーク成分には様々な漏れ込みの経路が存在し得るため、受信アンテナ(例えば、アレイアンテナ系統)毎に位相差が異なることも想定される。よって、レーダ装置10は、例えば、
図6に示すリーク成分の位相差セットに基づいて、アレイアンテナ系統毎のリーク成分の位相差に基づいてパラメータを推定することにより、パラメータの推定精度を向上できる。
【0101】
(実施の形態1の変形例2)
レーダ装置は、実運用中のパラメータ推定において、例えば、
図5又は
図6に示すリーク成分の位相差に関する情報に加え、トランシーバICの温度もしくはトランシーバIC周辺の温度といった温度情報に基づいて、基準となるトランシーバIC201が取り得るパラメータを予め設定(例えば、絞り込み)してもよい。
【0102】
例えば、自動キャリブレーション機能が温度に応じて制御される場合には、レーダ装置10は、実運用中の温度を測定(例えば、モニタリング)することにより、トランシーバICに設定されるパラメータの絞り込みが可能となる。これにより、例えば、レーダ装置10は、パラメータ推定処理の演算量を削減できる。
【0103】
(実施の形態1の変形例3)
図5及び
図6では、リーク成分の差分として、リーク成分の位相差に関する情報を用いる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、リーク成分の差分として、リーク成分の位相及び振幅に関する情報に基づくパラメータ推定が適用されてもよい。例えば、レーダ装置10は、リーク成分の位相及び振幅から構成される「ベクトル差分」に基づいてパラメータ推定を行ってもよい。
【0104】
例えば、リーク成分の振幅はアンテナ系統毎に異なり得る。このため、レーダ装置10は、例えば、リーク成分のベクトル差分に基づいて、パラメータを推定することにより、パラメータの推定精度を向上できる。
【0105】
図7は、トランシーバIC201,202それぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、リーク成分のベクトル差分セットとの関連付けの一例を示す図である。
【0106】
図7では、例えば、パラメータの組み合わせと各受信アンテナ101,102,103,104間の個別のリーク成分のベクトル差分から構成されるベクトル差分セットと、が関連付けられている。
【0107】
また、
図7には、例えば、トランシーバIC201及びトランシーバIC202に設定されるパラメータが同一の場合のリーク成分のベクトル差分セットが含まれる。これにより、例えば、レーダ装置10の実運用中において、トランシーバIC201及びトランシーバIC202のパラメータが同一(換言すると、一致)している場合に、推定されるパラメータ間の相関が高くなる。レーダ装置10は、例えば、トランシーバIC201及びトランシーバIC202の推定パラメータが同一の場合、位相回転補償を行わないと判断してよい。
【0108】
なお、
図7に示す関連付けは一例であり、これに限定されない。例えば、
図7において、トランシーバIC201及びトランシーバIC202のパラメータが同一の場合の関連付けは含まれなくてもよい。または、
図7に示すリーク成分のベクトル差分セットの代わりに、リーク成分のベクトル差分セットに含まれる複数のベクトル差分の平均値が用いられてもよい。
【0109】
(実施の形態1の変形例4)
例えば、レーダ装置10の近傍に反射物が存在する場合、レーダ装置10にて検出された反射物(例えば、反射波信号)に、リーク成分が影響を受やすくなる。この場合、レーダ装置10にて事前に測定し、記憶したリーク成分(例えば、
図5及び
図6に示す位相差、又は、
図7)に基づくパラメータ推定精度が低下する可能性がある。
【0110】
その一方で、レーダ装置10の近傍に反射物が存在する場合には、レーダ装置10は、例えば、到来角度の推定精度が低下しても、距離が推定されればよい。距離の推定方法の一例として、複数のレーダ装置10が一つの車両に搭載され、複数のレーダ装置10は、各レーダ装置10によって近傍で検出された反射物との距離に基づいて三角測量を行うことにより、反射物の位置を推定可能である。
【0111】
そこで、レーダ装置10は、例えば、レーダ装置10の近傍に反射物が存在する場合には、上述した位相回転補償(換言すると、ベクトル補償)を行わなくてもよい(換言すると、無効にしてもよい)。
【0112】
(実施の形態2)
実施の形態1では、レーダ装置のレーダ受信部が複数のトランシーバICを備える例について説明した。本実施の形態では、レーダ装置のレーダ受信部に加えて、レーダ送信部も複数のトランシーバICを備える場合について説明する。
【0113】
図8は、本実施の形態に係るレーダ装置20が備えるトランシーバICの一例を示す図である。
図8において、レーダ装置20は、例えば、トランシーバIC201a(例えば、IC1と示すこともある)、及び、トランシーバIC202a(例えば、IC2と示すこともある)を備える。なお、レーダ装置20は、例えば、
図4に示すレーダ装置10と同様の信号処理部400を備えてもよい。
【0114】
図8に示すトランシーバICは、2系統の送信アンテナで送信される信号に対する送信信号処理、及び、2系統の受信アンテナで受信される信号に対する受信信号処理を行ってよい。例えば、トランシーバIC201aは、送信アンテナA,Bで送信する信号に対する送信処理、及び、受信アンテナa,bで受信された信号に対する受信処理を行い、トランシーバIC202aは、送信アンテナC,Dで送信する信号に対する送信処理、及び、受信アンテナc,dで受信する信号に対する受信処理を行ってよい。
【0115】
よって、レーダ装置20は、
図8に示す2個のトランシーバIC201a及びトランシーバIC202を同期させることにより、2個のトランシーバICに対応する送受信アンテナ(例えば、送信4系統と受信4系統)によって構成される16系統の仮想受信アンテナを含む仮想アレイアンテナを構成可能である。
【0116】
本実施の形態では、レーダ装置20は、例えば、複数のトランシーバIC(例えば、トランシーバIC201,202)にそれぞれ対応する仮想受信アンテナで受信されたリーク成分の差分に基づいて、トランシーバIC間の偏差を補償してよい。例えば、複数のトランシーバICそれぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、トランシーバIC間のリーク成分の差分に関する情報(例えば、位相差)とが関連付けられてよい。
【0117】
そして、レーダ装置20は、例えば、当該関連付けに基づいて、各トランシーバIC201a,202aに設定されるパラメータを推定し、推定されたパラメータに基づいて、トランシーバIC間の偏差を補償してよい。
【0118】
以下では、一例として、送受信アンテナの組み合わせによって構成される仮想アレイアンテナにて受信されるリーク成分のベクトルのうち、送信アンテナA及び受信アンテナaの組み合わせに対応するベクトルを「vAa」と表す。他の送受信アンテナの組み合わせについても同様である。
【0119】
例えば、個々のトランシーバICの独立した自動キャリブレーションによって設定されるパラメータがトランシーバIC間で異なり、ベクトル差分が発生するアンテナ系統の組み合わせは、送受信アンテナの複数の組み合わせのうち、基準となるトランシーバICに接続された送受信アンテナの組み合わせを除く送受信アンテナの組み合わせでよい。
【0120】
図8において、トランシーバIC201を基準とする場合、ベクトル差分が発生する送受信アンテナの組み合わせは、例えば、トランシーバIC201に接続される送受信アンテナの組み合わせ(例えば、送信アンテナA,B及び受信アンテナa,bの2×2=4通りの組み合わせ)を除く、以下の12系統となる。
vAc、vAd、vBc、vBd、vCa、vCb、vCc、vCd、vDa、vDb、vDc、vDd
【0121】
レーダ装置20は、例えば、トランシーバIC202aに対してトランシーバIC201aと同一のパラメータpxを設定した場合の相対ベクトルと、トランシーバIC202aに対してトランシーバIC201aと異なるパラメータpyを設定した場合の相対ベクトルと、に基づいて、リーク成分のベクトル差分Δvを算出してよい。
【0122】
一例として、トランシーバIC201a及びトランシーバIC202aにパラメータp1及びp2の組み合わせが設定される場合について説明する。
【0123】
例えば、トランシーバIC201aとトランシーバIC202aとに同じパラメータp1が設定される場合の、仮想アレイアンテナ系統のベクトルvAa_r1を基準として、ベクトル差分が発生し得る送受信アンテナのベクトルとのベクトル差分である相対ベクトルを、以下のように表してよい。
ΔvAc_r1=vAc_r1-vAa_r1、
ΔvAd_r1=vAd_r1-vAa_r1、
ΔvBc_r1=vBc_r1-vAa_r1、
…
ΔvDd_r1=vDd_r1-vAa_r1
【0124】
また、例えば、トランシーバIC201a,202aのうち、一方のトランシーバICにパラメータp1が設定され、他方のトランシーバICにパラメータp2が設定される場合の、ベクトル差分が発生し得る送受信アンテナのベクトルに対する相対ベクトルを、以下のように表してよい。
ΔvAc_m2=vAc_m2-vAa_m2、
ΔvAd_m2=vAd_m2-vAa_m2、
ΔvBc_m2=vBc_m2-vAa_m2、
…
ΔvDd_m2=vDd_m2-vAa_m2
【0125】
また、上述した他方のトランシーバICにおけるパラメータp1からp2への変更に伴うベクトル差分の平均は、以下のように表してよい。
Δv12={(ΔvAc_m2-ΔvAc_r1)
+(ΔvAd_m2-ΔvAd_r1)
+(ΔvBc_m2-ΔvBc_r1)
+ …
+(ΔvDd_m2-ΔvDd_r1)}/12
【0126】
レーダ装置20は、例えば、パラメータp1及びp2の組み合わせと、当該組み合わせに対応するリーク成分のベクトル差分Δv12との関連付けを記憶してよい。また、レーダ装置20は、パラメータp1及びp2の組み合わせと同様にして、他のパラメータの組み合わせと、リーク成分のベクトル差分との関連付けを記憶してよい。
【0127】
そして、レーダ装置20は、例えば、パラメータの組み合わせとリーク成分のベクトル差分との関連付け(図示せず)を参照して、トランシーバIC201a及びトランシーバIC202aそれぞれに設定されたパラメータを推定してよい。例えば、レーダ装置20は、記憶したリーク成分のベクトル差分のうち、例えば、モニタリングしたリーク成分のベクトル差分に最も近い(相関が最も高い)ベクトル差分に関連付けられたパラメータを、各トランシーバIC201a,202aに設定されたパラメータの推定値に設定してよい。
【0128】
そして、レーダ装置20は、トランシーバIC201aとトランシーバIC202aとの間で推定されるパラメータが異なる場合、トランシーバIC201aに対するトランシーバIC202aの偏差を補償してよい。
【0129】
以上より、本実施の形態によれば、レーダ装置20は、例えば、レーダ送信部及びレーダ受信部の双方を含む複数のトランシーバICを備え、個々のトランシーバICが独立して自動キャリブレーションを行う構成でもレーダ性能の劣化を抑制して、安定動作が可能になる。
【0130】
なお、レーダ装置20は、リーク成分のベクトル差分(例えば、相対ベクトル)の平均に限らず、リーク成分の個々のベクトル差分のセットを記憶してもよい。レーダ装置20は、例えば、記憶しているリーク成分のベクトル差分セットと、実運用中のモニタリングによって得られるリーク成分のベクトル差分との相関演算を行い、相関値が最も高いベクトル差分セットに関連付けられたパラメータ設定値を、各トランシーバICに設定されたパラメータであると推定してよい。
【0131】
以上、本開示の一実施例について説明した。
【0132】
なお、上述した実施の形態におけるレーダ装置10及び20の構成は一例であり、レーダ装置10及び20の構成及び設定されるパラメータは限定されるものではない。例えば、レーダ装置10又は20が備える送信アンテナ数、受信アンテナ数、トランシーバICの数、又は、各トランシーバICに接続されるアンテナ数(換言すると、チャネル数)は、
図4又は
図8に示す例に限定されない。また、例えば、
図5、
図6及び
図7に示すテーブル内のパラメータ数、又は、パラメータの組み合わせに限定されない。
【0133】
また、上述した実施の形態では、トランシーバICに設定されるパラメータの推定、位相回転補償といった処理をレーダ装置が行う場合について説明したが、これに限定されない。例えば、上述した補償に関する処理は、レーダ装置と異なる場所に配置されたサーバで行われてもよい。また、例えば、レーダ装置のレーダ送信部とレーダ受信部とは物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
【0134】
また、上述した実施の形態において、レーダ装置10は、例えば、パラメータの組み合わせとリーク成分の差分との関連付けに関する情報(例えば、
図5、
図6又は
図7に示すテーブル)を複数個備えてもよい。例えば、レーダ装置10が備える複数のトランシーバICそれぞれが複数のグループにグルーピングされる場合、各グループに対して上記関連付けに関する情報が設定されてもよい。
【0135】
また、上述した実施の形態では、一例として、チャープ信号のような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式の構成について説明したが、レーダ方式は、これに限定されず、例えば、単パルス又は符号化パルスを用いたレーダ方式についても適用可能である。
【0136】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0137】
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
【0138】
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力と出力を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC(Integrated Circuit)、SSI(Small Scale Integration)、MSI(Middle Scale Integration)、システムLSI、スーパーLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0139】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
【0140】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により,LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0141】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0142】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0143】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサ等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサが含まれる。
【0144】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【0145】
以上の説明において、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0146】
(実施の形態のまとめ)
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、受信された信号に対して信号処理を行う複数の集積回路と、前記複数の集積回路にそれぞれ対応する受信アンテナで受信されたリーク電波成分の差分に基づいて、前記複数の集積回路間の偏差を補償する信号処理回路と、を具備する。
【0147】
本開示の一実施例において、前記信号処理回路は、前記リーク電波成分の差分に基づいて、前記複数の集積回路それぞれに設定されたパラメータを推定し、推定された前記パラメータに基づいて前記偏差を補償する。
【0148】
本開示の一実施例において、前記信号処理回路は、前記複数の集積回路それぞれに設定されるパラメータの組み合わせと、前記リーク電波成分の差分との関連付けに関する情報に基づいて、前記パラメータを推定する。
【0149】
本開示の一実施例において、前記情報は、前記複数の集積回路のうち、異なる集積回路に対応する受信アンテナでそれぞれ受信された前記リーク電波成分の異なる受信アンテナの組み合わせにおける複数の差分の平均値と、前記パラメータの組み合わせとの関連付けを示す。
【0150】
本開示の一実施例において、前記情報は、前記複数の集積回路のうち、異なる集積回路に対応する受信アンテナでそれぞれ受信された前記リーク電波成分の異なる受信アンテナの組み合わせにおける複数の差分のセットと、前記パラメータの組み合わせとの関連付けを示す。
【0151】
本開示の一実施例において、前記信号処理回路は、前記複数の集積回路それぞれに対して推定された前記パラメータが互いに異なる場合、前記偏差を補償する。
【0152】
本開示の一実施例において、前記複数の集積回路は、送信される信号に対して信号処理を行い、前記受信アンテナは、前記複数の集積回路に対応する送受信アンテナによって構成される仮想受信アンテナである。
【0153】
本開示の一実施例において、前記差分は、前記リーク電波成分の位相差である。
【0154】
本開示の一実施例において、前記差分は、前記リーク電波成分の位相及び振幅から構成されるベクトルの差分である。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本開示は、ミリ波帯といった無線信号を用いたレーダ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0156】
10,20 レーダ装置
101,102,103,104 受信アンテナ
201,201a,202,202a トランシーバIC
300,400 信号処理部
401,402,403,404 補償部
405 相関演算部