(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】吸着装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2020124502
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2020-07-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】201910766111.6
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】520213274
【氏名又は名称】杭州孚亜科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou Fuya Science and Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 1109,1st Building,371 Mingxing rd.,Xiaoshan dist.,Hangzhou,Zhejiang,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 靖
(72)【発明者】
【氏名】黎 ▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 寧寧
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】鈴木 貴雄
【審判官】刈間 宏信
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-119562(JP,A)
【文献】特表2017-502216(JP,A)
【文献】特開平11-90874(JP,A)
【文献】特表2017-500219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を備え、前記本体内には一つの閉鎖端面と一つの開放端面とを有するキャビティが設けられ、ワークを吸着する端面が前記開放端面で形成される吸着装置であって、前記キャビティの側壁面に接線方向ノズルが設けられ、外部流体が前記接線方向ノズルを介して前記キャビティの接線方向に沿って前記キャビティに入り、前記キャビティの前記閉鎖端面には吸引手段と連通する吸引孔が設けられ、前記吸引手段が前記吸引孔を介してキャビティ内の流体を吸引すること
、
前記吸引手段のパワーを調節すること、あるいは、前記吸引手段と前記吸引孔との間に絞り装置を設けることによって、吸引流量
を前記外部流体の流入流量と等しくなるように調節することにより、
前記本体と前記ワークとの間で発生する正圧分布による斥力をなくすこと、を特徴とする吸着装置。
【請求項2】
前記キャビティの横断面は円形又は略円形であることを特徴とする、請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記絞り装置は手動式ボール弁、比例電磁弁、又はサーボ弁であることを特徴とする、請求項1に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記本体にはキャビティ内の流体圧力を監視するための圧力検出手段がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の吸着装置。
【請求項5】
本体を備え、前記本体内には一つの閉鎖端面と一つの開放端面とを有するキャビティが設けられ、ワークを吸着する端面が前記開放端面で形成される吸着装置であって、前記キャビティの側壁面に接線方向ノズルが設けられ、外部流体が前記接線方向ノズルを介して前記キャビティの接線方向に沿って前記キャビティに入り、前記キャビティの前記閉鎖端面には吸引手段と連通する吸引孔が設けられ、前記吸引手段が前記吸引孔を介してキャビティ内の流体を吸引すること、
前記キャビティ内には案内室と少なくとも一つの案内通路とを有する案内手段がさらに設けられ、前記案内室は吸引孔と連通するとともに、案内通路を介して本体のキャビティと連通していること、
前記吸引手段のパワーを調節すること、あるいは、前記吸引手段と前記吸引孔との間に絞り装置を設けることによって、吸引流量を
前記外部流体の流入流量と等しくなるように調節することにより、
前記本体と前記ワークとの間で発生する正圧分布による斥力をなくすこと、
を特徴とする吸着装置。
【請求項6】
前記案内手段は円柱状であり、案内通路は案内手段の円柱状側壁に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の吸着装置。
【請求項7】
前記案内手段は円柱状であり、案内通路は案内手段の下端面に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体動力学の技術分野に属し、特に吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の自動生産ラインでは、吸着チャックによりワークを吸着して移動させることがある。ワークには、表面が粗い、又はでこぼこなもの(例えば金属鋳物)もあれば、柔らかいもの(例えば食材)もある。これらのワークを吸着し移動するために、
図1の(a)と(b)に示されるように、旋回流を利用した吸着チャックが日本特許出願公開公報2005-51260号に開示されている。当該技術では、円柱状キャビティAの円周壁に二つの接線方向ノズルBが加工されており、図中の矢印に示されるように、流体が接線方向ノズルBから吐出された後、キャビティAの円形壁面に沿って流れることで旋回流が出来る。旋回流による遠心力でキャビティA内において負圧が形成され、それにより、キャビティ下方のワークCに対する吸着が実現する。しかしながら、当該技術は以下の欠陥がある。
【0003】
(1)ノズルBからキャビティAに入った流体はこの吸着チャックの下方から排出されるため、この吸着チャックは下方のワークCを吸着しながらそれらの間に一定の距離が発生し、流体がこのスリットに流れ込んでここから排出される(以下、リリーフ流れと称される)。それにより、この吸着チャックとワークCは接触しないため、この吸着チャックにより横方向の摩擦力をワークCに対して提供することが不可能になる。横方向の摩擦力がなければ、吸着チャックにより横方向にワークCを移動させることができない。
【0004】
(2)流体が吸着チャックの外縁とワークCとの間のスリット流路を流れる場合、
図2に示されるように、粘性が原因で正圧分布が出来る。外縁での正圧分布により、下方のワークCへの斥力が発生するばかりか、キャビティ内の負圧分布が正圧の方向へと移動することにもなり、それらを原因として、吸着チャックの吸引力が低下してしまう。
【0005】
(3)下方のワークCが表面が粗い、又はでこぼこなものである場合、ワークC表面と吸着チャックの外縁との間に形成されるスリット流路のリリーフ流動抵抗は向上しながら円周方向において不整になる。つまり、流路の一部では流動抵抗は大きく、他の部分では流動抵抗は小さくなる。そして、このような流路を流れる流体が乱れるようになってしまう(
図3の(a)と(b)を参照)。これらの原因で、吸引力が急激に低下し不安定なものになった。検討したところ、キャビティA内の負圧は吸着チャックの外縁での圧力分布に連動するものである。つまり、外縁での圧力分布が乱れると、キャビティA内の負圧分布も乱れ、それにより、吸着チャックの吸引力が不安定なものになり、また、ワークCの表面が粗い場合、リリーフ流路の流動抵抗が向上し、吸着チャックの外縁での正圧分布が大きくなり、ワークCに作用する斥力が向上し、さらに、キャビティA内の負圧分布が正圧の方向へと移動し、最終的に、吸着チャックの吸引力が急激に低下してしまうことが分かった。
【0006】
(4)ワークCが柔らかい材質である場合、吸着チャックのキャビティ内の負圧でワークCが変形することで、ワークCの中央部分がキャビティに吸い込まれるようになる。このような変形では、
図4に示されるように、ワークCと吸着チャックとの局所接触が発生する可能性がある。局所接触が発生した箇所では流体は排出できなくなり、その排出が円周方向において乱れて大きく非対称になる。このような乱れや非対称の排出により、吸着チャックのキャビティ内の旋回流は破壊され、さらに吸着チャックの吸引力が大きく低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ワーク表面による吸引力への影響を抑え、より大きな吸引力を発生させることが可能になる吸着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本体を備え、前記本体内には一つの閉鎖端面と一つの開放端面とを有するキャビティが設けられ、ワークを吸着する端面が前記開放端面で形成される吸着装置であって、キャビティの側壁面に接線方向ノズルが設けられ、外部流体が接線方向ノズルを介してキャビティの接線方向に沿ってキャビティに入り、前記キャビティの閉鎖端面には吸引手段と連通する吸引孔が設けられ、前記吸引手段が吸引孔を介してキャビティ内の流体を吸引する吸着装置を提供する。
【0009】
さらには、前記キャビティの閉鎖端面には少なくとも一つの吸引孔が設けられている。
【0010】
さらには、前記吸引手段は、流体を吸引する機能を有する真空ポンプ又は噴流式真空発生装置である。
【0011】
さらには、前記キャビティの横断面は円形又は略円形である。
【0012】
さらには、吸引手段と吸引孔との間に絞り装置が設けられている。
【0013】
さらには、前記絞り装置は手動式ボール弁、比例電磁弁、又はサーボ弁である。
【0014】
さらには、前記本体にはキャビティ内の流体圧力を監視するための圧力検出手段がさらに設けられている。
【0015】
さらには、前記キャビティ内には少なくとも一つの案内通路と案内室とを有する案内手段がさらに設けられ、前記案内室は吸引孔と連通するとともに、案内通路を介して本体のキャビティと連通している。
【0016】
さらには、前記案内手段は円柱状であり、案内通路は案内手段の円柱状側壁に設けられている。
【0017】
さらには、前記案内手段は円柱状であり、案内通路は案内手段の下端面に設けられている。
【0018】
さらには、前記案内手段はキャビティの開放端面から突出しない高さとされている。
【0019】
さらには、前記本体にリリーフ通路が設けられている。
【発明の効果】
【0020】
従来技術に比べて、本発明にかかる吸着装置は、吸着装置のキャビティにおいて旋回流となる流体による負圧と吸引による負圧の両者によりワークを吸着することで、ワーク表面による吸引力への影響を抑え、より大きな吸引力を発生させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)は、従来技術にかかる吸着チャックの断面模式図であり、(b)は(a)の従来技術にかかる吸着チャックの平面図である。
【
図2】流体がワークと
図1の吸着チャックの底面外縁との間の流路を流れることによる正圧分布の模式図である。
【
図3】(a)は、
図1の吸着チャックが表面が粗い、又はでこぼこなワークを吸着する場合の流体の流動状態の模式図であり、(b)は(a)の局所拡大模式図である。
【
図4】
図1の吸着チャックが柔らかいものを吸着する場合の模式図である。
【
図5】(a)は、本発明にかかる吸着装置の第一実施例の断面模式図であり、(b)は、本発明にかかる吸着装置の第一実施例の平面断面模式図である。
【
図6】吸着装置の圧力分布の模式図及び従来の吸着チャックとの圧力比較の模式図である。
【
図7】
図5の吸着装置の吸引流量がノズル流量と等しく及びノズル流量よりも大きい場合の圧力比較の模式図である。
【
図8】本発明にかかる吸着装置の第二実施例の断面模式図である。
【
図9】本発明にかかる吸着装置の第三実施例の断面模式図である。
【
図10】本発明にかかる吸着装置の第三実施例の断面模式図であり、
図9に示す装置に圧力検出手段がさらに設けられている。
【
図11】(a)は、本発明にかかる吸着装置の第四実施例の断面模式図であり、案内手段の円柱状側壁に案内通路が設けられており、(b)は、本発明にかかる吸着装置の第四実施例の断面模式図であり、案内手段の下端面に案内通路が設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明らかにするために、図面及び実施例の組合せにより、以下において本発明をさらに詳細に説明する。ここで述べられる具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことは理解されたい。
【実施例1】
【0023】
図5(a)及び
図5(b)は、本発明にかかる吸着装置の第一の好適な実施例を示しており、本体1を備え、前記本体1内には一つの閉鎖端面3と一つの開放端面4とを有するキャビティ2が設けられている。吸着装置のワークCを吸着する端面が開放端面4で形成される。キャビティ2の側壁面に2個の接線方向ノズル5が設けられ、外部流体が接線方向ノズル5を介してキャビティ2の接線方向に沿ってキャビティ2に入る。
キャビティ2の閉鎖端面3に吸引孔6が設けられている。吸引孔6は接続管7を介して吸引手段8と連通している。吸引手段8は接続管7と吸引孔6を介してキャビティ2内の流体を吸引している。前記吸引手段8は、流体を吸引する機能を有する真空ポンプ、又はエジェクタ等の噴流式真空発生装置である。キャビティ2の横断面は円形又は略円形である。本実施例では円形とされている。吸引孔6はキャビティ2の中央に対応する箇所に設けられている。
【0024】
本発明にかかる吸着装置内部の流体の流れについて説明する。流体が接線方向ノズル5を介してキャビティ2の接線方向に沿って高速でキャビティ2に吐出された(矢印F1で示す。)後、キャビティ2の壁面に沿って流れることで旋回流F2ができる。旋回流F2が存在することにより、キャビティ2の外周部に低圧が形成される。
一方、吸引手段8による吸引により、内向き旋回流F3は形成される。内向き旋回流F3は、旋回流F2の旋回の流速成分を維持しながら吸入孔6に集められる。
そして、内向き旋回流F3は、キャビティ2から流れ出て、接続管7を通して吸引手段8まで流れ出る。旋回の流速成分を有する内向き旋回流F3により、キャビティ2の中心部分に負圧領域が形成される。
【0025】
接線方向ノズル5からキャビティ2に入る流量はQ、吸引孔6から流れ出る流量はQ’とされる。吸引手段8の吸引流量はQ’=Qとされており、つまり、接線方向ノズル5からキャビティ2に入った流体のすべては吸引手段8に吸引されている。
【0026】
本発明は以下のような特性を有する。
【0027】
(1)吸着装置とワークCとの間にリリーフ流れがなく、スリット流路もないため、吸着装置とワークCは接触可能になり、そして接触摩擦力が発生する。吸着装置によりワークCを吸着して横方向に移動させようとする場合、接触摩擦力により、ワークCが吸着装置に追従して移動することが確保されている。さらに、吸引手段8の吸引流量はQ’=Qとされているので、外から吸着装置に流れ込む流れも発生しない。よって、粉塵や汚物などのある環境においても、粉塵や汚物などは吸着装置に入らなくなり、吸引手段8が目詰まりすることを防止することができる。
【0028】
(2)開放端面4の外縁41とワークCとの間の領域においては、流れによる粘性で正圧分布が出来ないため、正圧分布による斥力がなく、キャビティ2内の負圧分布への影響もない。
【0029】
(3)ワークCは表面が粗い、又はでこぼこなものである場合でも、開放端面4の外縁41とワークCとの間において乱れた流れや不安定な圧力分布がないため、吸着装置のキャビティ2内の負圧分布も非常に安定する。
【0030】
(4)ワークCが柔らかい材質である場合、吸着装置のキャビティ2内の負圧でワークCが変形することで、ワークCの中央部分がキャビティに落ちるようになり、ワークCと吸着装置との局所接触が発生する。ただし、リリーフ流れがないため、ワークCの変形により流れが乱れて非対称になることはなく、キャビティ内の旋回流状態が柔らかいワークCからの影響を受けることもない。
【0031】
(5)高速で旋回している流体は、旋回流F2、内向き旋回流F3として、旋回流F2の旋回流速成分をそのまま維持しながら流れるので、高速で旋回している流体はキャビティ2全体に亘っている(
図5(b)を参照)。つまり、キャビティ2内の流体は十分に旋回しており、このため、旋回流体の遠心慣性作用でキャビティ内において非常に顕著な負圧分布が出来、吸着装置の吸引力は大きく向上している。
図6は、吸引孔6がキャビティ2の中央に対応する位置に設けられる場合のキャビティ内の圧力分布を示している。それに対して、従来技術による圧力曲線は中央部に平坦な領域があり、中央部の流体は旋回流とならない、又は十分な旋回流となっていないことが分かった。
【0032】
吸引孔6を中央位置に設けると、対称的かつ安定的な旋回流をより良好に形成することができる。実験により検討したところ、吸引孔6が中央位置からずれる場合でも、上記の有益な効果をある程度得られることが分かった。そして、吸引孔6はキャビティ2の中央に対応するように位置づけられることに限らない。吸引手段8は吸引孔6を介してキャビティ2内の流体を吸引可能であれば、上記の有益な効果を得ることができる。
【0033】
上記の説明では、吸引流量がQと等しい場合を例として説明を行った。実際に、吸引流量が零よりも大きいものであれば、上記の有益な効果をある程度得ることができる。吸引流量がQよりも小さくなる場合(Q’<Q)、開放端面4の外縁41とワークCとの間にリリーフ流れが出来る。ただし、リリーフ流量がQよりも小さいため、やはりリリーフ流れによる粘性に起因した正圧を抑えたり(例えば特性(2))、ワークCの粗い表面での流体の乱れを抑えたり(例えば特性(3))、不均一なリリーフ流れによる流体の乱れや非対称を軽減したり(例えば特性(4))、キャビティ内の旋回流れと負圧分布を強くしたり(例えば特性(5))することができる。さらに、塵や汚物などのある環境においても、粉塵や汚物などはリリーフ流れに吹き飛ばされ、吸引手段8が目詰まりすることを防止することができる。
【0034】
吸引流量はQより大きくなってもよく(Q’>Q)、外部環境から吸着装置に流れ込む、流量がQ’-Qとなる吸入流れが発生する。
図7は、吸着装置により表面の粗いワークを吸着する場合の模式図及びそれに対応する圧力分布図であり、粗い表面と吸着装置の外縁41との間のスリットにおいて吸入流れが発生している。
図7の圧力分布に示されるように、このような場合では、吸引手段8による吸引でキャビティ内の負圧分布全体は下へ移るとともに、吸入流れにより吸着装置の外縁41とワークCとの間には徐々に変化する負圧分布が出来る。このため、吸引流量がQより大きくなる場合、吸着装置の吸着力は非常に大きく向上している。
【実施例2】
【0035】
図8は、本発明にかかる吸着装置の第二の好適な実施例を示している。本実施例は、前記閉鎖端面に複数の吸引孔6が設けられている点で、第一実施例と異なる。
【0036】
本実施例の他の構造や効果は第一実施例と同様であり、ここでは省略する。
【実施例3】
【0037】
図9と
図10は、本発明にかかる吸着装置の第三の好適な実施例を示している。本実施例は、吸引手段8と吸引孔6との間に絞り装置9が設けられている点で、第一実施例と異なる。本実施例では、絞り装置9は接続管7の途中に設けられている。前記絞り装置9は、吸引する流体の流量を調節するためのものである。前記絞り装置9は手動式ボール弁、比例電磁弁又はサーボ弁である。
【0038】
吸引流量の大きさは吸着装置の圧力分布と性能に影響している。このため、実際の応用の需要に応じて吸引流量を調節することは非常に必要である。例えば、ワークCが軽い場合、吸引流量Q’を接線方向ノズル5の流量Qと等しくしてもよく、非常に重いワークCを吸着しようとする場合、接線方向ノズル5の流量Qよりも大きくするように吸引流量Q’を高めてもよく、粉塵や汚れのある環境にて作業する場合、吸引流量Q’を接線方向ノズル5の流量Qより小さくするように設定してもよく、それにより、接線方向ノズル5の流量Qの一部は吸着装置とワークCとの間のスリットから排出されることで、外部環境からの粉塵や汚れが吸着装置に入るのを防止することが可能になる。
【0039】
吸引流量の調節を図るために、吸引手段8のパワーを調節することができる。パワーが大きいほど、吸引流量が大きくなるのが一般的である。
図9に示されるように、絞り装置9を設けることで吸引流量を調節することもできる。絞り装置9は手動式ボール弁であってもよく、実際の需要に応じて操作者が手動式ボール弁の開度を調節することで、吸引流量の調節が図られている。絞り装置9は自動絞り弁(例えば比例電磁弁、サーボ弁等)であってもよく、入力電圧を設定することで弁の開度を調整することにより、吸引流量の自動制御が図られている。
【0040】
図10を参照すると、前記本体1にはキャビティ2内の流体圧力を監視するための圧力検出手段10がさらに設けられている。
【0041】
キャビティ内の圧力分布はキャビティ2内の吸引流量の大きさに影響されることから、キャビティ2内の圧力変化を監視することによりその吸引流量を判断することができる。吸着装置に少なくとも一つの圧力検出手段10が設けられ、圧力検出手段10はキャビティ内の指定位置での圧力を検出することができる。圧力検出手段10は圧力センサであってもよく、圧力ゲージであってもよい。
図10は、圧力検出孔を介して圧力検出手段10によりキャビティ2の径方向外側部の圧力を検出する例である。仮に吸引流量がノズル流量と等しい(Q’=Q)場合の圧力P
1は既知であるとき、検出された圧力PがP
1よりも大きいと、吸引流量がノズル流量より小さくなり(Q’<Q)、検出された圧力PがP
1よりも小さいと、吸引流量がノズル流量より大きくなる(Q’>Q)ことが分かった。流量の情報があれば、吸引流量を適時調整でき、吸着装置が適切な状態にて作動するようになる。
【0042】
本実施例の他の構造や効果は第一実施例と同様であり、ここでは省略する。
【実施例4】
【0043】
図11(a)及び
図11(b)は、本発明にかかる吸着装置の第四の好適な実施例を示している。本実施例は、前記キャビティ2内には少なくとも一つの案内通路14と案内室13とを有する案内手段11がさらに設けられ、前記案内室13は吸引孔6と連通するとともに、案内通路14を介して本体のキャビティ2と連通している点で、第一実施例と異なる。
【0044】
以下、二種の案内手段11の構造を挙げる。
図11(a)を参照すると、前記案内手段11は円柱状であり、案内通路14は案内手段11の円柱状側壁に設けられている。
図11(b)を参照すると、前記案内手段11の下端面に案内通路14が設けられている。案内通路14は円孔状であってもよく、スリット状であってもよい。
【0045】
実験とシミュレーション分析を行ったところ、
図5の構造では、流体は接線方向ノズル5から高速に吐出された後、その一部が直ちに吸引孔6へ流れる、つまり、この部分の流体はキャビティ2内において十分に旋回していないことが分かった。これは、キャビティ2内の負圧分布の形成と吸引力の発生に悪影響を与えている。流体をキャビティ2内において十分に旋回させるために、キャビティ2内に案内手段11が増設されるようになる。案内手段11は少なくとも一つの案内通路14と案内室13とを有し、案内室13は吸引孔6と連通するとともに、案内通路14を介して本体のキャビティ2と連通している。
【0046】
図11(a)では、中空円柱状の案内手段を採用している。円柱状壁面に複数の案内通路14が分布している。吸引手段8による吸引で、キャビティ2内において旋回する流体は案内孔14から案内手段11に入ってから、吸引孔6へ流れる。案内手段11により、吸引孔6への旋回流体の流れは妨げられるため、キャビティ2内において流体が旋回する期間は長くなり、旋回流れが一層十分なものとなり、より低い負圧を発生可能になる。
【0047】
図11(b)では、案内手段11はその下端面に大きな案内通路14が一つ設けられている。キャビティ2内の流体はこの下端部にまで旋回した場合にのみ案内手段11に入るように吸引され、つまり、流体はキャビティ2内において十分に旋回するようになり、負圧の発生に役立つ。
【0048】
他の構造や効果は第一実施例と同様であり、ここでは省略する。
【実施例5】
【0049】
図12は、本発明にかかる吸着装置の第五の好適な実施例を示している。本実施例は、本体にリリーフ通路15が設けられている点で、第一実施例と異なる。リリーフ通路15はキャビティ2と外部環境を連通させるものである。接線方向ノズル5からキャビティ2に入った流体のすべて又は一部はリリーフ通路15から流れ出ることができる。リリーフ通路15は円孔状であってもよく、スリット状であってもよい。
【0050】
実施例1では、吸着装置とワークを接触させるために、吸引手段8により接線方向ノズル5の流量のすべてを吸引する、つまりQ=Q’としなければならない。これにより、吸引手段8の電力消費が大きくなった。本実施例では、本体にリリーフ通路15を設けることで一部の流量を排出し、吸引手段8の吸引流量を低下させるので、吸引手段8による吸引に要する電力消費は低下し、省エネルギが図られている。リリーフ通路15はキャビティ2の側壁面に設けられてもよく、流体が旋回した後にリリーフ通路15に流れ込んで外部へ流れるようになる。
【0051】
上記は本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を制限するためのものではなく、本発明の精神や原則の範囲においてなされたあらゆる変更や等価取替及び改良等は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。