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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
H02K5/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020516159
(86)(22)【出願日】2019-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2019014650
(87)【国際公開番号】W WO2019208126
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018084017
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 保治
(72)【発明者】
【氏名】遠矢 和雄
(72)【発明者】
【氏名】水上 裕文
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-018352(JP,A)
【文献】特開昭51-007406(JP,A)
【文献】特開2007-151210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口された有底筒状のフレームと、前記フレーム内に収容されて固定された固定子と、該固定子と所定の間隔をあけて対向して配置された回転子と、前記回転子の回転軸が挿通される貫通孔を中心に有し、前記フレームの開口を塞ぐように設けられたエンドプレートと、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、を少なくとも備えたモータであって、
前記フレームの底部には、中央に前記軸受を保持する軸受保持部と、前記軸受保持部から放射状に、かつ径方向外側に延びるとともに前記フレームの内側に突出するように形成された複数のリブとがそれぞれ設けられ、
前記複数のリブは、互いに所定の間隔をあけて形成されるとともに、それぞれの径方向外側端部が前記フレームの周壁に達するように形成され
前記複数のリブは、それぞれの径方向外側端部が前記フレームの前記周壁になだらかにつながるように形成され、
前記リブの径方向外側端部と前記フレームの前記周壁とがなす曲面の断面は所定の曲率半径を有し、
前記軸受保持部は、前記フレームの内側に突出する前記周壁によって区画されて前記フレームの前記底部の内側に形成され、
前記周壁の内側に位置する前記フレームの内面である平坦部に前記軸受が載置され、
前記軸受保持部の前記平坦部は、前記フレームの前記底部よりも、前記フレームの内側に入り込むように形成され、
前記軸受保持部の前記周壁と前記平坦部とで形成される曲面の断面の曲率半径は、前記リブの径方向外側端部と前記フレームの前記周壁とがなす曲面の断面の曲率半径である前記所定の曲率半径よりも小さいことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項に記載のモータにおいて、
前記複数のリブは、それぞれの径方向内側端部前記軸受保持部の周壁に達するように形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモータにおいて、
前記フレームの前記底部を内側に窪ませることで前記リブが形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のモータにおいて、
平面視で、前記フレームの前記底部には、前記底部の周縁と前記軸受保持部との間に、前記軸受保持部と同軸に円環状の別のリブが形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のモータにおいて、
エアコンプレッサーを駆動するために用いられることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項に記載のモータにおいて、
前記エンドプレートの上面側に前記エアコンプレッサーの圧縮機構が連結され、
前記エンドプレートには、前記フレームの内部と前記圧縮機構とを連通する通気孔が形成されていることを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに関し、特にエアコンプレッサー駆動用のモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ABS(Anti-lock Brake System)装置等の自動車用油圧ユニットを駆動するのに小型モータが使用されてきた。このようなモータの一例として、例えば、特許文献1,2には、回転軸を有する回転子が、内面に複数の永久磁石が配置された有底筒状のフレームからなるヨーク内に収容されたモータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-018352号公報
【文献】特開2002-204548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、自動車等に搭載されるエアコンプレッサーの小型化が進んでおり、それに伴い、エアコンプレッサー駆動用モータもさらに小型・軽量化することが要求されている。また、エアコンプレッサー駆動用モータでは、圧縮機構の駆動時にフレーム内で圧力変動が生じ、この圧力変動に応じて、フレームの底部は回転軸方向に変位する。このため、フレーム自体に所定以上の強度が必要であった。
【0005】
しかし、特許文献1,2に開示される従来のモータでは、フレームの底部と周壁とで構成されるコーナー部に応力が集中しやすく、上記のような変位が長期に亘って繰り返されると、コーナー部から疲労破壊が生じやすいという問題があった。また、フレームの底部が比較的平らであるため、モータ自身の駆動やフレーム内の圧力変動により、フレームの底部が振動し、騒音が発生していた。このような問題は、フレームの剛性を高めることで解消されうるが、例えば、フレームの板厚を厚くすると、モータ自体が重くなり、また、コストが上昇する等の問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その目的はフレームの剛性を高め、また、振動による騒音を低減可能なモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るモータは、一端が開口された有底筒状のフレームと、前記フレーム内に収容されて固定された固定子と、該固定子と所定の間隔をあけて対向して配置された回転子と、前記回転子の回転軸が挿通される貫通孔を中心に有し、前記フレームの開口を塞ぐように設けられたエンドプレートと、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、を少なくとも備えたモータであって、前記フレームの底部には、中央に前記軸受を保持する軸受保持部と、前記軸受保持部から放射状に、かつ径方向外側に延びるとともに前記フレームの内側に突出するように形成された複数のリブとがそれぞれ設けられ、前記複数のリブは、互いに所定の間隔をあけて形成されるとともに、それぞれの径方向外側端部が前記フレームの周壁に達するように形成され、前記複数のリブは、それぞれの径方向外側端部が前記フレームの前記周壁になだらかにつながるように形成され、前記リブの径方向外側端部と前記フレームの前記周壁とがなす曲面の断面は所定の曲率半径を有し、前記軸受保持部は、前記フレームの内側に突出する前記周壁によって区画されて前記フレームの前記底部の内側に形成され、前記周壁の内側に位置する前記フレームの内面である平坦部に前記軸受が載置され、前記軸受保持部の前記平坦部は、前記フレームの前記底部よりも、前記フレームの内側に入り込むように形成され、前記軸受保持部の前記周壁と前記平坦部とで形成される曲面の断面の曲率半径は、前記リブの径方向外側端部と前記フレームの前記周壁とがなす曲面の断面の曲率半径である前記所定の曲率半径よりも小さいことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、フレームの底部の剛性を高め、フレームの底部が軸方向に変位するのを抑制することができる。このことにより、フレームの疲労破壊を抑制することができる。また、フレームから騒音が発生するのを防止できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るモータによれば、フレームの底部の剛性を高め、フレームの疲労破壊を抑制することができる。また、フレームから騒音が発生するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るモータを上から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るエアコンプレッサーの断面図である。
図3図3は、フレームを下から見た斜視図である。
図4図4は、フレームの上面図である。
図5図5は、図4のV-V線での断面図である。
図6A図6Aは、比較のためのフレーム底部の変位を示す模式図である。
図6B図6Bは、本発明の一実施形態に係るフレーム底部の変位を示す模式図である。
図7図7は、変形例に係るフレームの下面図である。
図8図8は、別のフレームの底部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0012】
(実施形態)
[エアコンプレッサー及びモータの構成]
図1は、本実施形態に係るモータを上から見た斜視図を、図2は、本実施形態に係るエアコンプレッサーの断面図をそれぞれ示す。図3は、フレームを下から見た斜視図を示し、図4は、フレームの上面図を示す。なお、説明の便宜上、図2において、モータ100のみ断面を示し、圧縮機構200は外観の細部及び内部の図示を省略している。また、以降の説明において、モータ100の回転子50の一部をなす回転軸54の長手方向を軸方向と呼び、フレーム20の半径方向を径方向と呼び、円周方向を周方向と呼ぶことがある。また、軸方向において、モータ100から見て圧縮機構200が配設された側を「上」と、その反対側であるフレーム20の底部側を「下」と呼ぶことがある。
【0013】
図1から図4に示すように、エアコンプレッサー300は、モータ100と圧縮機構200とを備え、モータ100の回転軸54に、圧縮機構200の駆動部(図示せず)が連結されている。モータ100が駆動されて、回転軸54が回転することで、圧縮機構200に設けられたシリンダ(図示せず)内に空気が吸入され、さらに、圧縮、外部に吐出されるという一連のサイクルを繰り返す。
【0014】
モータ100は、フレーム20とエンドプレート30と軸受40,41と回転子50と固定子60とブラシ70とを備えている。
【0015】
フレーム20は、上部に設けられた開口21の周りに径方向外側に張り出したフランジ22を有する有底半筒状の金属部材である。フランジ22には周方向にねじ孔22aが形成されており、ねじ孔22aに挿通された図示しないねじにより、フレーム20と圧縮機構200とが締結され、モータ100が圧縮機構200に位置決め固定される。フレーム20の底部23の内側には軸受40を保持する軸受保持部24が形成されている。軸受保持部24はフレーム20の内側に突出する周壁24aによって区画され、平坦部24b、つまり、周壁24aの内側に位置するフレーム20の内面に軸受40が載置される。また、軸受保持部24の平坦部24bは、フレーム20の底部23よりも、フレーム20の内側に入り込むように形成されている。また、コーナー部27とは、フレーム20の周壁26とフレーム20の底部23とが突き合わされる部分をいう。このコーナー部27の断面の曲率を大きくすることにより、コーナー部27への応力集中を防止することができる。
【0016】
また、フレーム20の底部23には、軸受保持部24から放射状に、かつ径方向外側に延びるとともに、フレーム20の内側に突出する複数のリブ25が形成されている。また、リブ25は周方向に所定の間隔をあけて形成されており、平面視で、リブ25を径方向外側に延長した直線上にねじ孔22aが位置している。ただし、特にこれに限定されず、平面視で、隣り合うリブ25とリブ25との間にねじ孔が位置するようにしてもよい。また、リブ25は、リブ25の径方向内側端部25aが軸受保持部24の周壁24aに、リブ25の径方向外側端部25bがフレーム20の周壁26にそれぞれ達するように延びている。また、リブ25の径方向外側端部25bはフレーム20の周壁26になだらかにつながっている。このことについてさらに説明する。
【0017】
図5は、図4のV-V線での断面図を示し、具体的には、リブ25の径方向外側端部25bとフレーム20の周壁26とがなす曲面を示している。
【0018】
図5に示すように、リブ25の径方向外側端部25bとフレーム20の周壁26とがなす「なだらかな曲面」の断面は所定の曲率半径Rを有している。リブ25とフレーム20の周壁26とはなだらかにつながっており、フレーム20のコーナー部27において、リブ25の径方向外側端部25bが達している部分での応力集中は緩和されている。
【0019】
なお、上記のなだらかな曲面の断面は、本実施形態のように所定の曲率半径Rを有していなくてもよく、楕円曲線の一部をなすようにしてもよい。また、渦巻き曲線の一部をなすようにしてもよい。リブ25の径方向外側端部25bとフレーム20の周壁26とがなす曲面の断面は、フレーム20の内部方向に連続的に曲がっている曲線であって尖った角部がなければ、どのような曲線でもよい。
【0020】
なお、リブ25はフレーム20の底部23を内側に向けて窪ませるように成形することで形成されている。
【0021】
エンドプレート30は、樹脂材料を成形してなる板状部材であり、略円板状の基部31と、基部31の中心に設けられた貫通孔32と、基部31の内面に形成されたブラシ保持部33と、基部31に設けられた通気孔34(図1参照)と、基部31の外面に形成された軸受保持部35と、モータ100に外部から電力を供給するための電線が引き出された電線引出口36(図1参照)とを有している。なお、電線引出口36から引き出された電線については、説明の便宜上、図示を省略している。
【0022】
エンドプレート30は、フレーム20との位置決めを行った上で、フレーム20の開口21に圧入され、開口21を覆うようにフレーム20に配設されている。フレーム20とエンドプレート30とで区画される空間に回転子50が収容されている。また、回転軸54はエンドプレートト30の貫通孔32に挿通されてエンドプレート30から外側に突出しており、フレーム20の軸受保持部24に設けられた軸受40と、貫通孔32を塞ぐように設けられた軸受41とによって回転自在に支持されている。
【0023】
通気孔34は、基部31を貫通し、フレーム20の内部と圧縮機構200とを連通している。通気孔34を設けることで、エアコンプレッサー300の駆動時の圧力変動によって、エンドプレート30のみに圧力が加わるのを回避し、エンドプレート30が変形したり、あるいは破損したりするのを防止している。また、通気孔34を介して、エアコンプレッサー300の駆動時に生じる空気の圧力変動がフレーム20の内部に伝達される。なお、本実施形態では、通気孔34を2つ設けているが、特にこれに限定されず、その個数や、個々の大きさは適宜変更されうる。
【0024】
回転子50は、電機子コア51と複数の突極52と電機子巻線53と回転軸54と整流子55とインシュレータ56とを有している。電機子コア51には径方向外側に突出する複数の突極52が周方向に所定の間隔をあけて配設されており、複数の突極52のそれぞれに絶縁性の樹脂であるインシュレータ56を介して電機子巻線53が巻回され、整流子55には電機子コア51から引き出された電機子巻線53の引出線が接続されている。回転軸54は回転子50の軸心に設けられ、電機子コア51及び整流子55の中心を貫通してこれらに連結されている。また、回転子54のうち、エンドプレート30から外側に突出した部分にはねじ溝が形成されており、圧縮機構200の図示しない駆動部が締結されて、モータ100と圧縮機構200とが連結されている。
【0025】
固定子60は、フレーム20と、周方向に所定の間隔でフレーム20の周壁26の内面に配設された複数の永久磁石61とで構成されており、周方向に隣り合う永久磁石61は互いに極性が異なるように配設されている。フレーム20は、永久磁石61と磁気回路を構成するヨークとしても機能する。
【0026】
一対のブラシ70は、黒鉛等のカーボンブラシ材へ固体潤滑剤を含む組成で構成されており、エンドプレート30の内面に設けられたブラシ保持部33内に保持されるとともに、ブラシバネ(図示せず)によって整流子55へと押圧されている。
【0027】
次に、モータ100の動作について説明する。エンドプレート30に設けられた電線引出口36から引き出された電線を介して外部からモータ100に電力を供給する。これにより、電機子電流がブラシ70及び整流子55を介して電機子巻線53に流れる。固定子60で発生した磁束と、電機子巻線53を流れる電機子電流との間でトルクが発生し、回転軸54が軸受40,41に支持されて回転する。また、回転軸54の回転に応じて、ブラシ70と整流子55とは接触と離間とを周期的に繰り返し、この周期に対応して電機子巻線53を流れる電機子電流の向きが変更される。
【0028】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係るモータ100は、上側に開口21を有する有底筒状のフレーム20と、フレーム20内に収容されて固定された固定子60と、固定子60と所定の間隔をあけて対向して配置された回転子50と、回転子50の回転軸54が挿通される貫通孔32を中心に有し、フレーム20の開口21を塞ぐように設けられたエンドプレート30と、回転軸54を回転自在に支持する軸受40,41と、を備えている。
【0029】
フレーム20の底部23には、中央に軸受40を保持する軸受保持部24と、軸受保持部24から放射状に、かつ径方向外側に延びるとともにフレーム20の内側に突出するように形成された複数のリブ25とがそれぞれ設けられている。
【0030】
複数のリブ25は、互いに所定の間隔をあけて形成されるとともに、それぞれのリブ25の径方向外側端部25bがフレーム20の周壁26に達するように形成されている。
【0031】
モータ100をこのように構成することで、フレーム20、特にその底部23の剛性を高め、エアコンプレッサー300の駆動時にフレーム20の内部に生じる圧力変動によって、フレーム20の底部23が軸方向に変位するのを抑制することができる。このことにより、フレーム20の疲労破壊を抑制することができる。これについて、さらに説明する。
【0032】
図6Aは、比較のためのフレーム底部の変位の模式図を、図6Bは、本実施形態に係るフレーム底部の変位の模式図をそれぞれ示す。なお、説明の便宜上、図6A,6Bでは、軸受保持部24の図示を省略している。加えて、図6Bでは、リブ25の図示も省略している。また、図6Aに示すフレーム20の底部23には、リブ25は形成されていない。
【0033】
図6Aに示すように、リブ25が形成されておらず、底部23の平坦部分が連続しているフレーム20では、内部の圧力変動が生じると、底部23が軸方向に上下に変位する。また、コーナー部27が固定端となるため、その変位量H1は大きい。
【0034】
一方、本実施形態によれば、フレーム20の底部23に複数のリブ25が放射状に形成されており、また、リブ25の径方向外側端部25bがフレーム20の周壁26に達している。隣り合うリブ25の間に挟まれた底部23の周縁が固定端となり、その部分がそれぞれ軸方向に変位するため、図6Bに示すように、フレーム20の底部23の変位量H2は図6Aに示す場合に比べて小さくなる。見方を変えれば、フレーム20の底部23に複数のリブ25を設けることで、底部23の剛性が高められ、変位しにくくなっている。
【0035】
このことにより、コーナー部27におけるフレーム20の疲労破壊を抑制することができる。また、フレーム20の底部23が周期的に変位することで、フレーム20が振動し騒音が発生するが、本実施形態によれば、フレーム20の底部23の変位量H2を抑制できるため、この変位量に比例した音量の騒音を抑制することができる。また、フレーム20自体の板厚を厚くしてフレーム20の剛性を高める必要が無く、モータ100の重量化やコストの上昇を抑制できる。
【0036】
また、フレーム20の内側に突出するようにリブ25を形成することで、底部23における段差が大きくならないようにすることができる。ただし、フレーム20の外側に突出するようなリブであっても同様の効果が得られる。また、リブ25の径方向外側端部25bがフレーム20の周壁26に達するようにリブ25を形成することで、フレーム20の底部23において、連続した平坦部分が形成されるのを防止できる。このような連続した部分が形成されると、圧力変動によって、この部分が一様に変位してしまうが、本実施形態によれば、これを防止して、フレーム20の底部23の変位量を確実に低減することができる。
【0037】
同様の考え方によれば、リブ25の径方向内側端部25aを、軸受保持部24の周壁24aに達するように形成するのが好ましい。なお、軸受保持部24の周壁24aの周辺に、連続した平坦部分があっても、その面積は、底部23の周縁近傍に連続した平坦部分がある場合よりも小さいため、底部23の変位量を低減する効果は、リブ25の径方向外側端部25bをフレーム20の周壁26に達するように形成する場合よりも小さい。
【0038】
また、複数のリブ25は、それぞれのリブ25の径方向外側端部25bがフレーム20の周壁26になだらかにつながるように形成されていることが好ましい。具体的には、リブ25の径方向外側端部25bとフレーム20の周壁26とがなす曲面が所定の曲率半径Rを有している。
【0039】
このようにすることで、前述したように、コーナー部27におけるリブ25が達している部分で応力を集中させずに、コーナー部27におけるフレーム20の疲労破壊を確実に抑制することができる。
【0040】
また、リブ25は、フレーム20の底部23を内側に窪ませることで形成されている。このことにより、フレーム20の板厚を特に変更することなく、公知のプレス加工等でリブ25を形成でき、モータ100の製造コストが上昇するのを抑制できる。
【0041】
また、本実施形態に係るモータ100は、エアコンプレッサー200を駆動するのに用いられ、エンドプレート30の上面側に圧縮機構200が連結されている。また、エンドプレート30には、フレーム20の内部と圧縮機構200とを連通する通気孔34が形成されている。
【0042】
モータ100をこのように構成することで、エアコンプレッサー300の駆動時の圧力変動によって、エンドプレート30のみに圧力が加わるのを回避し、エンドプレート30が変形したり、あるいは破損したりするのを防止できる。また、フレーム20の内部に生じる圧力変動の影響は、フレーム20の底部23にリブ25を設けることにより抑制できるため、高信頼性のモータ100を実現できる。
【0043】
<変形例>
図7は、変形例に係るフレームの下面図を示す。本変形例に示す構成と、実施形態に示す構成とでは、平面視で、フレーム20の底部23の周縁と軸受保持部24との間に、軸受保持部24と同軸に円環状のリブ28が形成されている点で異なる。
【0044】
円環状のリブ28をこのように設けることで、フレーム20の底部23において、平坦な部分の面積をさらに小さくでき、軸方向の変位に対する剛性をさらに高めることができる。このことにより、フレーム20のコーナー部27における疲労破壊の発生をさらに抑制するとともに、騒音もさらに低減できる。なお、図7では、円環状のリブ28をフレーム20のコーナー部27と軸受保持部24との間に1本設ける構成を示したが、特にこれに限定されない。フレーム20のサイズや要求される底部23の剛性等に応じて適宜変更されうる。
【0045】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態において、リブ25はフレーム20の底部を内側に向けて窪ませるように成形することで形成されているが、他の構成であってもよい。例えば、図8に示すように、フレーム20の底部において、リブ25とそれ以外の部分との厚みが異なるようにしてもよい。また、モータ100は、エアコンプレッサー300以外にも適用可能であり、例えば、ABS装置等の油圧駆動の装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のモータは、フレーム内で圧力変動が生じる場合に、フレームの変形及びそれに伴う疲労破壊を抑制できるため、エアコンプレッサー駆動用モータに適用する上で有用である。
【符号の説明】
【0047】
20 フレーム
21 開口
23 フレームの底部
24 軸受保持部
24a 周壁
24b 平坦部
25 リブ
25a リブの径方向内側端部
25b リブの径方向外側端部
26 フレームの周壁
27 コーナー部
28 円環状のリブ
30 エンドプレート
34 通気孔
40,41 軸受
50 回転子
51 電機子コア
52 突極
53 電機子巻線
54 回転軸
55 整流子
60 固定子
61 永久磁石
70 ブラシ
100 モータ
200 圧縮機構
300 エアコンプレッサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8