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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】色変換素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230707BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20230707BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/26
G02B5/28
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019033358
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020118946
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2019010949
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】平野 徹
(72)【発明者】
【氏名】森住 剛
(72)【発明者】
【氏名】溝上 陽介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利彦
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179688(WO,A1)
【文献】特開2006-003562(JP,A)
【文献】特開2015-121586(JP,A)
【文献】特開2015-038978(JP,A)
【文献】特開2018-077324(JP,A)
【文献】特開平04-121701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02B 5/26
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された蛍光部であって、当該蛍光部に対して前記基板とは反対側から照射されたレーザー光を受光して、当該レーザー光とは異なる色の光を出射する蛍光部と、
前記蛍光部における前記基板とは反対側の第一主面に対して積層された第一平坦化層と、
前記蛍光部における前記基板側の第二主面に対して積層された第二平坦化層と、
前記第二平坦化層における基板側の主面に積層され、誘電体多層膜からなる反射層と、
前記反射層と前記基板との間に介在して、前記反射層と前記基板とを接合する接合部と、
を備え、
前記反射層は、前記蛍光部から出射された前記レーザー光とは異なる色の光と、前記レーザー光とを反射し、
前記接合部は、前記蛍光部における前記レーザー光が照射される照射領域の少なくとも一部に平面視で重なる位置に、前記反射層を露出させる空気層を有する
色変換素子。
【請求項2】
前記第一平坦化層における前記蛍光部とは反対側の主面には、反射抑制層が積層されている
請求項1に記載の色変換素子。
【請求項3】
前記第一平坦化層における前記蛍光部とは反対側の主面は、微細な凹凸構造を有する
請求項1または2に記載の色変換素子。
【請求項4】
前記第一平坦化層は、透光性を有する基体と、前記基体内に分散された複数の粒体とを備え、
前記粒体の屈折率は、前記基体の屈折率よりも小さい
請求項1または2に記載の色変換素子。
【請求項5】
前記粒体は、中空粒体である
請求項4に記載の色変換素子。
【請求項6】
前記第一平坦化層は、前記蛍光部の前記第一主面に積層された第一層と、前記第一層における前記蛍光部とは反対側の面に積層された第二層とを備え、
前記第一層には、前記粒体が含まれておらず、
前記第二層には、複数の前記粒体が分散されている
請求項4または5に記載の色変換素子。
【請求項7】
前記粒体の直径は、前記レーザー光の波長よりも小さい
請求項4~6のいずれか一項に記載の色変換素子。
【請求項8】
前記複数の粒体の濃度は、前記第一平坦化層内において前記蛍光部から離れるにつれて漸増している
請求項4~7のいずれか一項に記載の色変換素子。
【請求項9】
前記第一平坦化層は、複数の層から形成されており、
各層における前記複数の粒体の濃度は、前記第一平坦化層を全体的に見て前記蛍光部から離れるにつれて漸増するように、決定されている
請求項8に記載の色変換素子。
【請求項10】
前記第一平坦化層及び前記第二平坦化層の少なくとも一方は、可視光透過率が90%以上である
請求項1~9のいずれか一項に記載の色変換素子。
【請求項11】
前記第二平坦化層は、屈折率が前記蛍光部の屈折率よりも小さい
請求項1~10のいずれか一項に記載の色変換素子。
【請求項12】
前記第一平坦化層及び前記第二平坦化層の少なくとも一方は、厚みが1.0μm以上である
請求項1~11のいずれか一項に記載の色変換素子。
【請求項13】
前記第一平坦化層及び前記第二平坦化層の少なくとも一方は、SiO により形成されている
請求項1~12のいずれか一項に記載の色変換素子。
【請求項14】
前記第二平坦化層における前記反射層側の主面は、表面粗さRaが20nm以下である
請求項1~13のいずれか一項に記載の色変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に蛍光部が積層された色変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プロジェクタなどの投影装置に用いられる蛍光体ホイール(色変換素子)においては、放熱性を高めるべく、蛍光部と基板とを熱伝導性接着剤で接合した技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、基板における蛍光部側の主面には、反射層が積層されており、これにより、蛍光部からの光を反射層で反射することで変換効率が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-99566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年においては、色変換素子における色変換の変換効率をさらに高めることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、変換効率を向上可能な色変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る色変換素子は、基板と、基板上に配置された蛍光部であって、外部からのレーザー光を受光して、当該レーザー光とは異なる色の光を出射する蛍光部と、蛍光部における基板とは反対側の第一主面に対して積層された第一平坦化層と、蛍光部における基板側の第二主面に対して積層された第二平坦化層と、第二平坦化層における基板側の主面に積層され、誘電体多層膜からなる反射層と、反射層と基板との間に介在して、反射層と基板とを接合する接合部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る色変換素子によれば、変換効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る色変換素子の概略構成を示す模式図である。
図2図1におけるII-II線を含む切断面を見た断面図である。
図3】実施の形態に係る反射層が積層される基材の表面粗さRaと、反射率との関係を示すグラフである。
図4】変形例1に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図5】変形例2に係る色変換素子の概略構成を示す平面図である。
図6】変形例3に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図7】変形例4に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図8】変形例5に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図9】変形例6に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図10】変形例7に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図11】変形例8に係る色変換素子の概略構成を示す断面図である。
図12】変形例9に係る照明装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本発明の実施の形態に係る色変換素子について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである
。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態等は、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図においては、同じ構成部材に対して同じ符号を付している。
【0011】
以下、実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る色変換素子の概略構成を示す模式図である。図2は、図1におけるII-II線を含む切断面を見た断面図である。
【0013】
色変換素子1は、プロジェクタ等の投影装置に用いられる蛍光体ホイールである。投影装置には、光源部として、青紫~青色(430~490nm)の波長のレーザー光Lを色変換素子1に対して放射する半導体レーザー素子が設けられている。色変換素子1は、光源部から照射されたレーザー光Lを励起光として、白色光を放射する。以下、色変換素子1について具体的に説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、色変換素子1は、基板2と、蛍光部3と、第一平坦化層6と、第二平坦化層7と、反射層4と、接合部5とを備えている。なお、以降の説明において、色変換素子1をなす各積層体の光源側の主面を「表面」と称し、その反対側の主面を「背面」と称する。また、図1及び図2においては、レーザー光Lをドットハッチングで図示している。色変換素子1において、レーザー光Lが照射される領域を照射領域Rと称す。照射領域Rは固定されているが、色変換素子1が回転するために、照射領域Rは相対的に色変換素子1上を周方向に移動することになる。
【0015】
基板2は、平面視形状が例えば円形状の基板であり、その中央部に貫通孔21が形成されている。貫通孔21に対して、投影装置内にある回転軸が取り付けられることで、基板2が回転駆動するようになっている。
【0016】
基板2は、蛍光部3よりも熱伝導率の高い基板である。これにより、蛍光部3から伝導した熱を基板2から効率的に放熱できるようになっている。具体的には、基板2は、Al、Al、AlN、Fe、Tiなどの金属材料から形成されている。なお、基板2は、蛍光部3よりも熱伝導率が高いのであれば、金属材料以外から形成されていてもよい。金属材料以外の材料としては、Si、セラミック、サファイア、グラファイトなどが挙げられる。基板2の1つの表面22は平坦状に形成されており、当該表面22側に蛍光部3が配置されている。
【0017】
蛍光部3は、全体として肉厚が均一である。蛍光部3は、例えば、レーザー光Lによって励起されて蛍光を発する蛍光体の粒子(蛍光体粒子34)を分散状態で複数備えており、レーザー光Lの照射により蛍光体粒子34が蛍光を発する。このため、蛍光部3の表面31が発光面となる。表面31は、蛍光部3における基板2とは反対側の第一主面である。また、蛍光部3の背面32は、蛍光部3における基板2側の第二主面である。本実施の形態では、蛍光部3の背面32の法線方向と、蛍光部3に対するレーザー光Lの入射方向とが略一致しているものとする。「略一致」とは、完全に一致しているだけでなく、数%程度の誤差を許容する表現である。また、蛍光部3における表面31及び背面32のそれぞれは、表面粗さRaが100nmよりも大きくなっている。具体的には、蛍光部3の表面31及び背面32のそれぞれの表面粗さRaは、200nm程度である。
【0018】
蛍光部3は、全体として平面視形状が環状に形成されている。この蛍光部3は、肉厚が均一なシート状の個片33が複数、環状に配列されることにより形成されている。複数の個片33は、同一形状であり、同一種類である。具体的には、個片33は平面視台形状に形成されている。なお、個片33はシート状であればその形状は如何様でもよい。個片33のその他の平面視形状としては、矩形状、三角形状、その他の多角形状などが挙げられる。
【0019】
隣り合う個片33同士は、互いの隣り合う辺がほぼ一致するように配置されている。個片33には、少なくとも一種類の蛍光体粒子34が含まれている。本実施の形態の場合、個片33は、白色光を放射するものであり、レーザー光Lの照射によって赤色を発光する赤色蛍光体、黄色を発光する黄色蛍光体、緑色を発光する緑色蛍光体の3種類の蛍光体粒子34が適切な割合で含まれている。
【0020】
蛍光体粒子34の種類及び特性は特に限定されるものではないが、比較的高い出力のレーザー光Lが励起光となるため、熱耐性が高いものが望ましい。また、蛍光体粒子34を分散状態で保持する基材35の種類は特に限定されるものではないが、励起光の波長及び蛍光体粒子34から発光する光の波長に対して透明性の高い基材35であることが望ましい。具体的には、ガラス又はセラミックなどからなる基材35が挙げられる。なお、蛍光部3は、1種類の蛍光体による多結晶体又は単結晶体であってもよい。
【0021】
また、各個片33における表面31の全体には、第一平坦化層6が積層されており、各個片33における背面32の全体には、第二平坦化層7が積層されている。
【0022】
第一平坦化層6は、蛍光部3(個片33)の表面31を直接的に覆って表面31の微小な凹みを埋めることで平坦にしている。このため、第一平坦化層6の表面の表面粗さRaは、蛍光部3の表面31の表面粗さRaよりも小さくなっている。
【0023】
第二平坦化層7は、蛍光部3(個片33)の背面32を直接的に覆って背面32の微小な凹みを埋めることで平坦にしている。このため、第二平坦化層7における背面の表面粗さRaは、蛍光部3の背面32の表面粗さRaよりも小さくなっている。具体的には、第二平坦化層7の背面は、表面粗さRaが20nm以下であればよい。また、第二平坦化層7は、屈折率が蛍光部3の屈折率よりも小さい。
【0024】
第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方は、可視光透過率が90%以上である。本実施の形態では、第一平坦化層6及び第二平坦化層7のそれぞれの可視光透過率が90%以上とする。具体的には、第一平坦化層6は、透光性を有する材料により形成されている。透光性を有する材料としては、例えば透明樹脂またはSiOなどが挙げられる。SiOから第一平坦化層6が形成されていれば耐熱性を高めることができる。例えばシロキサンを含むペースト材料を各個片33に塗布して焼き固めることで、SiOからなる第一平坦化層6を形成することができる。第二平坦化層7についても、第一平坦化層6と同様の材料が採用されている。なお、第一平坦化層6と第二平坦化層7とが異なる材料であってもよい。
【0025】
また、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方は、厚みが1.0μm以上である。本実施の形態では、第一平坦化層6及び第二平坦化層7のそれぞれの厚みが同じであることとするが、異なっていてもよい。
【0026】
第一平坦化層6の表面の全体には、例えばARコート層などの反射抑制層8が積層されている。この反射抑制層8によって光取り出し効率が高められている。第一平坦化層6の表面は、蛍光部3の表面31よりも表面粗さRaが小さいために、反射抑制層8も均一な層厚で第一平坦化層6の表面31上に積層されることとなり、反射抑制層8が有する反射抑制性能をより確実に発揮させることができる。
【0027】
第二平坦化層7の背面の全体には、第二平坦化層7を透過した光(レーザー光L及び蛍光体粒子34から放射された光)を反射する反射層4が均一な肉厚で積層されている。
【0028】
反射層4は、誘電体多層膜である。誘電体多層膜は、高屈折率(n=2.0~3.0)の透明誘電体材料と低屈折率(n=1.0~1.9)の透明誘電体材料とを交互に複数層積層したものである。誘電体多層膜は、材料の屈折率や誘電体多層膜の厚みを調整することで所望の反射特性を実現することができる。具体的には、反射層4をなす誘電体多層膜は、レーザー光Lと、蛍光体粒子34から放射された光とに対して反射率が高くなるように、材料の屈折率や誘電体多層膜の厚みが調整されている。反射層4は、例えばスパッタリングまたは蒸着などによって、第二平坦化層7の背面に積層されている。第二平坦化層7の背面は、蛍光部3の背面32よりも表面粗さRaが小さいために、反射層4も均一な層厚で第二平坦化層7の背面上に積層されることとなり、反射層4が有する反射性能をより確実に発揮させることができる。
【0029】
接合部5は、反射層4と基板2との間に介在して、反射層4と基板2とを接合している。具体的には、接合部5は、例えばシリコン樹脂などの樹脂系の接着剤により形成されている。接合部5が基板2の表面22に塗布された後に、各個片33の反射層4が接合部5に貼り付けられることで、各個片33が基板2上で平面視環状の蛍光部3をなす。この状態では、各個片33の反射層4も蛍光部3に倣って平面視環状をなしている。
【0030】
接合部5は、第一接合部51及び第二接合部52を備えている。第一接合部51及び第二接合部52は、均一な肉厚である。第一接合部51及び第二接合部52は、径方向に所定の間隔をあけて配置された同心円環状に形成されている。第一接合部51は、第二接合部52よりも小径であり、当該第二接合部52の内方に配置されている。第一接合部51は、照射領域Rよりも内方に位置する反射層4の内周部と基板2とを接合している。
【0031】
一方、第二接合部52は、第一接合部51よりも大径であり、当該第一接合部51の外方に配置されている。第二接合部52は、照射領域Rよりも外方に位置する反射層4の外周部と基板2とを接合している。
【0032】
第一接合部51と第二接合部52との間には、これら第一接合部51と第二接合部52とに対して同心円環状の空気層53が形成されている。第一接合部51と第二接合部52と空気層53との中心は、色変換素子1の回転中心である。第一接合部51と第二接合部52とはそれぞれ周方向に連続した一体物であるので、第一接合部51と第二接合部52とによって空気層53は密閉されている。
【0033】
空気層53は、反射層4及び基板2を露出させている。つまり、反射層4及び基板2は、空気層53によって空気に触れた状態となっている。
【0034】
空気層53は、照射領域Rの少なくとも一部に平面視で重なる位置に配置されている。本実施の形態では、空気層53は、平面視で照射領域Rの全体が収まる位置及び大きさに形成されている。上述したように空気層53は、色変換素子1の回転中心を中心とした円環状であるので、色変換素子1が回転した場合には、常に空気層53が照射領域Rに対して平面視で重なることとなる。
【0035】
[投影装置の動作]
次に、投影装置の動作について説明する。
【0036】
投影装置の光源からレーザー光Lが照射される際には、色変換素子1は回転駆動しながら反射抑制層8及び第一平坦化層6を介して蛍光部3でレーザー光Lを受光する。このとき、反射抑制層8によってレーザー光Lの反射が抑制されているので、大半のレーザー光Lを確実に蛍光部3内に進入させることができる。
【0037】
蛍光部3では、一部のレーザー光Lが直接蛍光体粒子34に当たる。また、蛍光体粒子34に直接当たらなかった一部のレーザー光Lは、第二平坦化層7を介して反射層4で反射され、蛍光体粒子34に当たる。蛍光体粒子34に到達したレーザー光Lは、蛍光体粒子34によって白色光に変換されて、放射される。蛍光体粒子34から放射された白色光の一部は、蛍光部3から、第一平坦化層6及び反射抑制層8を介して直接外方に放出される。また、蛍光体粒子34から放射された光のその他の一部は、反射層4で反射されることで、蛍光部3から第一平坦化層6及び反射抑制層8を介して外方へ放出される。
【0038】
ここで、誘電体多層膜からなる反射層4では、僅かではあるが当該反射層4を透過する光がある。この対策のために、接合部5には空気層53が設けられている。詳細に説明すると、上述したように照射領域Rでは、反射層4の直下に空気層53が配置されている。この場合の臨界角θcは、スネルの法則により以下の式(1)で表される。
【0039】
θc=arcsin(n2/n1)・・・(1)
【0040】
ここで、入射元である蛍光部3の屈折率n1を1.8とし、進行先である空気層53の屈折率n2を1.0とすると、臨界角θcは33.8度となる。なお、第二平坦化層7及び反射層4の厚さは、蛍光部3の厚さまたは空気層53の厚さと比べると非常に薄く影響がわずかであるため、臨界角θcの算出では無視している。
【0041】
一方、接合部5に空気層53が設けられていない場合を想定する。つまり、照射領域Rでは、反射層4の直下に接合部5が配置されて、反射層4が露出していない場合である。この場合には、入射元である蛍光部3の屈折率n1を1.8とし、進行先である接合部5の屈折率n2を1.4(接合部5がシリコン樹脂であるときの屈折率)とすると、臨界角θcは51.1度となる。
【0042】
このように、本実施の形態では、接合部5に空気層53が設けられていない場合と比べても、臨界角θcを小さくすることができる。換言すると全反射する入射角度の範囲(90度-θc)を大きくすることができる。上述したように、反射層4へは、レーザー光Lが直接入射するだけでなく、各蛍光体粒子34から放出された白色光も入射する。この白色光における反射層4への入射角度は多様であるが、全反射する入射角度の範囲が大きくなっていれば、より多くの白色光を全反射することができる。したがって、誘電体多層膜である反射層4での反射率を高めることができる。特に、前述したように、反射層4が第二平坦化層7の背面上に積層されているのであれば、その反射性能を確実に発揮することができる。
【0043】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る色変換素子1は、基板2と、基板2上に配置された蛍光部3であって、外部からのレーザー光Lを受光して、当該レーザー光Lとは異なる色の光を放出する蛍光部3と、蛍光部3における基板2とは反対側の第一主面(表面31)に対して積層された第一平坦化層6と、蛍光部3における基板2側の第二主面(背面32)に対して積層された第二平坦化層7と、第二平坦化層7における基板側の主面(背面)に積層され、誘電体多層膜からなる反射層4と、反射層4と基板2との間に介在して、反射層4と基板2とを接合する接合部5と、を備えている。
【0044】
これによれば、蛍光部3の表面31には、第一平坦化層6が積層されている。第一平坦化層6の表面の表面粗さRaを蛍光部3の表面31の表面粗さRaよりも小さいために、レーザー光Lが乱反射することを抑制することができ、レーザー光Lの大半を確実に蛍光部3内に進入させることができる。つまり、漏れ光を抑制することができる。
【0045】
一方、蛍光部3の背面32と、反射層4の表面との間には第二平坦化層7が介在している。第二平坦化層7の背面は、蛍光部3の背面32よりも表面粗さRaが小さいために、反射層4も均一な層厚で第二平坦化層7の背面上に積層されることとなる。これにより、反射層4が有する反射性能をより確実に発揮させることができる。
【0046】
このように漏れ光を抑制するとともに、反射層4での反射率を高めることができることで、色変換素子1の変換効率を高めることができる。
【0047】
ここで、蛍光部3の表面31及び背面32のそれぞれに対して研磨処理を施すことで、その平坦性を高めることも可能である。しかしながら、蛍光部3に対する研磨処理は、大幅なコストアップにつながり好ましくない。上記実施の形態のように第一平坦化層6及び第二平坦化層7を蛍光部3に積層する方式であれば、研磨処理も不要となり、製造コストを抑制することが可能となる。
【0048】
また、接合部5は、蛍光部3におけるレーザー光Lが照射される照射領域Rの少なくとも一部に平面視で重なる位置に、反射層4を露出させる空気層53を有する。
【0049】
これによれば、空気層53が照射領域Rの少なくとも一部に平面視で重なっているので、空気層53が設けられていない場合と比べても、全反射する入射角度の範囲(90度-θc)を大きくすることができる。したがって、誘電体多層膜である反射層4での反射率を高めることができ、変換効率を高めることができる。
【0050】
特に、本実施の形態では、空気層53が、平面視で照射領域Rの全体が収まる位置及び大きさに形成されているので、照射領域Rの全体に対して反射率を高めることができる。つまり、変換効率をより高めることができる。
【0051】
また、第一平坦化層6における蛍光部3とは反対側の主面(表面)には、反射抑制層8が積層されている。
【0052】
これによれば、第一平坦化層6の表面に反射抑制層8が積層されているので、レーザー光Lの反射を抑制することができる。これにより、大半のレーザー光Lを確実に蛍光部3内に進入させることができる。
【0053】
また、第一平坦化層6の表面は、蛍光部3の表面31よりも表面粗さRaが小さいために、反射抑制層8も均一な層厚で第一平坦化層6の表面31上に積層されることとなり、反射抑制層8が有する反射抑制性能をより確実に発揮させることができる。
【0054】
また、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方は、可視光透過率が90%以上である。
【0055】
これによれば、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方の可視光透過率が90%以上である。このため、色変換素子1が取り込む光(レーザー光L)及び色変換素子1が放出する光(白色光)を第一平坦化層6及び第二平坦化層7が吸収することを抑制することができる。したがって、色変換素子1の変換効率をより高めることができる。
【0056】
また、第二平坦化層7は、屈折率が蛍光部3の屈折率よりも小さい。
【0057】
これによれば、第二平坦化層7の屈折率が蛍光部3の屈折率よりも小さいので、反射層4の反射率を高めることができる。したがって、色変換素子1の変換効率をより高めることができる。
【0058】
また、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方は、厚みが1.0μm以上である。
【0059】
蛍光部3の表面31及び背面32のそれぞれにおいて、凸部の頂点と凹部の頂点との厚み方向の間隔は、概ね1.0μm以下である。第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方の厚みが1.0μm以上であれば、蛍光部3の表面31及び背面32のそれぞれの凹部を埋めることができ、平坦化を確実に図ることができる。
【0060】
また、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方は、SiOにより形成されている。
【0061】
これによれば、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の少なくとも一方が、SiOにより形成されているので、第一平坦化層6及び第二平坦化層7の耐熱性を高めることができる。したがって、長期的に安定した色変換素子1を実現することができ、結果的に変換効率も超規定に安定させることができる。
【0062】
また、第二平坦化層7における反射層4側の主面(背面)は、表面粗さRaが20nm以下である。
【0063】
これによれば、第二平坦化層7の背面の表面粗さRaが20nm以下であるので、反射率の低下を抑制することができる。図3は、実施の形態に係る反射層4が積層される基材の表面粗さRaと、反射率との関係を示すグラフである。図3に示すように、波長450nm~800nmの範囲においては、基材の表面粗さRaが小さくなるほど、反射率の低下が小さくなることがわかる。このため、反射層4が積層される第二平坦化層7の背面の表面粗さRaを20nm以下としている。なお、第二平坦化層7の背面の表面粗さRaは、10nm以下であればより反射率の低下を抑制することができ、5nm以下であればさらに反射率の低下を抑制することができ、2nm以下であればより一層反射率の低下を抑制することができる。
【0064】
また、蛍光部3は、少なくとも一種類の蛍光体(蛍光体粒子34)を含むシート状の複数の個片33が面状に配列されることにより形成されている。
【0065】
これによれば、蛍光部3が、面状に配列された複数の個片33によって形成されているので、加熱時に作用する応力を分散させることができる。これにより、レーザー光Lの受光時における蛍光部3の変形を抑制することができる。したがって、蛍光部3と空気層53との位置関係を安定化することができ、安定した反射特性を維持することができる。
【0066】
ここで、全体として一体的に形成された蛍光部の場合、その平面視形状が環状であると、応力集中に弱く、上記した不具合が生じやすい。しかしながら、本実施の形態のように、複数の個片33が環状に配置されることで形成された蛍光部3であれば、応力を分散させることができるので、高い応力緩和効果を得ることができる。
【0067】
なお、上記実施の形態では、蛍光部3が複数の個片33から形成されている場合を例示
した。しかし、蛍光部は全体として一体成型された一体物であってもよい。
【0068】
[変形例1]
次に、変形例1について説明する。図4は、変形例1に係る色変換素子1Aの概略構成を示す断面図であり、具体的には図2に対応した図である。なお、以降の説明においては、実施の形態に係る色変換素子1と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
上記実施の形態では、第一平坦化層6の表面に反射抑制層8が積層されている場合を例示した。この変形例1では、第一平坦化層6aの表面には反射抑制層が設けられておらず、当該表面が露出している。第一平坦化層6aの表面には、微小な複数の凹部61a及び凸部62aからなる凹凸構造63aが全体にわたって形成されている。表面に凹凸構造63aを有さない第一平坦化層6aに対して、例えばウェットブラスト処理を施すことにより、凹凸構造63aが形成される。第一平坦化層6aは、上述したように透明樹脂またはSiOから形成されている。これらの材料よりも、蛍光部3の基材35をなす材料(ガラスまたはセラミック)は脆いために、蛍光部3に対してウェットブラスト処理を施してしまうと、蛍光部3が砕けるおそれがある。第一平坦化層6aに対してウェットブラスト処理を施すのであれば、蛍光部3自体を保護することが可能である。
【0070】
このように、第一平坦化層6aにおける蛍光部3とは反対側の主面(表面)は、微細な凹凸構造63aを有する。
【0071】
これによれば、第一平坦化層6aの表面に微細な凹凸構造63aが形成されているので、当該表面の反射率を低くすることができ、光の取り出し効率及び取り込み効率を高めることができる。
【0072】
[変形例2]
次に、変形例2について説明する。図5は、変形例2に係る色変換素子1Bの概略構成を示す断面図であり、具体的には図2に対応した図である。なお、以降の説明においては、実施の形態に係る色変換素子1と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0073】
上記実施の形態では、第一平坦化層6の表面に反射抑制層8が積層されている場合を例示した。この変形例2では、第一平坦化層6bの表面には反射抑制層が設けられておらず、当該表面が露出している。第一平坦化層6bは、透光性を有する基体65bと、基体65b内に分散された複数の中空粒体64bとを備えている。つまり、第一平坦化層6bには、複数の中空粒体64bが分散された状態で埋設されている。
【0074】
基体65bは、前述した透光性を有する材料により形成されている。中空粒体64bは、外殻が透光性を有する材料から形成されており、その内部が空気を含む空洞となっている。中空粒体64bの外殻の形成する材料としては、SiOなどが挙げられる。つまり、中空粒体64bは、中空シリカと称すこともできる。中空シリカは、他の中空粒体よりも容易に製造できる点で好ましい。
【0075】
中空粒体64bは、全体として基体65b内に埋設されていることがよいため、中空粒体64bの直径は、基体65bの厚みよりも小さくなっている。さらに、中空粒体64bの直径は、レーザー光Lの波長よりも小さいことがよい。上述したようにレーザー光Lの波長は、430nm~490nmの範囲に収まる値であるので、中空粒体64bの直径はそれ以下の値となる。これにより、レーザー光Lと中空粒体64bとの干渉を抑制することができる。例えば、レーザー光Lの波長が450nmである場合には、中空粒体64bの直径は450nmよりも小さければよい。さらに、中空粒体64bの直径は、レーザー光Lの波長の1/10以下とすれば、より含有量を増やすことができるため屈折率をより下げることができ、フレネルロスの低減効果を高めることができる。具体的には、中空粒体64bの直径は40nm以下である。
【0076】
このように、第一平坦化層6bは、分散された複数の中空粒体64bを含んでいる。これにより、第一平坦化層6bの屈折率を低下させることができ、蛍光部3から放出された光が第一平坦化層6bで散乱されることを抑制することができる。
【0077】
[変形例3]
次に、変形例3について説明する。図6は、変形例3に係る色変換素子1Cの概略構成を示す断面図であり、具体的には図2に対応した図である。なお、以降の説明においては、実施の形態に係る色変換素子1と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0078】
上記実施の形態では、接合部5が空気層53を有している場合を例示した。この変形例3では、接合部5cが空気層を有していない場合を例示する。つまり、接合部5cは、反射層4の背面を全体的に覆っている。これにより、接合部5cは、蛍光部3における照射領域Rの全体に対して平面視で重なる位置に配置されている。ここで、接合部5cは、酸化物及び窒化物の少なくとも一方を含有するシリコン樹脂から形成されている。酸化物としては、例えばTiO、ZnO、Alなどが挙げられる。
【0079】
このように、接合部5cは、酸化物及び窒化物の少なくとも一方を含有するシリコン樹脂から形成されており、蛍光部3におけるレーザー光Lが照射される照射領域Rの全体に平面視で重なる位置に配置されている。
【0080】
これにより、蛍光部3における照射領域Rに対して直接、接合部5cが接触するために、蛍光部3の最も発熱する箇所(照射領域R)からの熱を、接合部5cを介して、基板2に伝導することができる。したがって、放熱性を高めることができる。特に、接合部5cは、酸化物及び窒化物の少なくとも一方を含有するシリコン樹脂から形成されているので、接合部5c単体の熱伝導性が高められており、より高い放熱効果を発揮することができる。
【0081】
なお、接合部5cは、蛍光部3における照射領域Rの少なくとも一部に対して平面視で重なっていたとしても、一定の放熱効果を得ることができる。
【0082】
[変形例4]
次に、変形例4について説明する。図7は、変形例4に係る色変換素子1Dの概略構成を示す断面図であり、具体的には図4に対応した図である。なお、以降の説明においては、変形例2に係る色変換素子1Aと同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0083】
上記変形例2では、接合部5が空気層53を有している場合を例示した。この変形例4では、接合部5dが空気層を有していない場合を例示する。つまり、接合部5dは、反射層4の背面を全体的に覆っている。これにより、接合部5dは、蛍光部3における照射領域Rの全体に対して平面視で重なる位置に配置されている。ここで、接合部5dは、酸化物及び窒化物の少なくとも一方を含有するシリコン樹脂から形成されている。
【0084】
この変形例4においても、蛍光部3における照射領域Rに対して直接、接合部5dが接触するために、蛍光部3の最も発熱する箇所(照射領域R)からの熱を、接合部5dを介して、基板2に伝導することができる。したがって、放熱性を高めることができる。なお、接合部5dは、蛍光部3における照射領域Rの少なくとも一部に対して平面視で重なっていたとしても、一定の放熱効果を得ることができる。
【0085】
[変形例5]
次に、変形例5について説明する。図8は、変形例5に係る色変換素子1Eの概略構成を示す断面図であり、具体的には図5に対応した図である。なお、以降の説明においては、変形例3に係る色変換素子1Bと同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0086】
上記変形例3では、接合部5が空気層53を有している場合を例示した。この変形例5では、接合部5eが空気層を有していない場合を例示する。つまり、接合部5eは、反射層4の背面を全体的に覆っている。これにより、接合部5eは、蛍光部3における照射領域Rの全体に対して平面視で重なる位置に配置されている。ここで、接合部5eは、酸化物及び窒化物の少なくとも一方を含有するシリコン樹脂から形成されている。
【0087】
この変形例5においても、蛍光部3における照射領域Rに対して直接、接合部5eが接触するために、蛍光部3の最も発熱する箇所(照射領域R)からの熱を、接合部5eを介して、基板2に伝導することができる。したがって、放熱性を高めることができる。なお、接合部5eは、蛍光部3における照射領域Rの少なくとも一部に対して平面視で重なっていたとしても、一定の放熱効果を得ることができる。
【0088】
[変形例6]
次に、変形例6について説明する。図9は、変形例6に係る色変換素子1Fの概略構成を示す断面図であり、具体的には図5に対応した図である。なお、以降の説明においては、変形例2と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0089】
上記変形例2では、第一平坦化層6bが単層構造である場合を例示した。この変形例6では、第一平坦化層6fが複数層構造である場合を例示する。
【0090】
図9に示すように、第一平坦化層6fは、蛍光部3の表面31に積層された第一層610fと、第一層610fにおける蛍光部3とは反対側の面(表面)に積層された第二層620fとを備えている。
【0091】
第一層610fは、蛍光部3の表面31を直接的に覆って表面31の微小な凹みを埋めることで平坦にしている。このため、第一層610fの表面の表面粗さRaは、蛍光部3の表面31の表面粗さRaよりも小さくなっている。第二層620fは、第一層610fの表面を直接的に覆っており、その表面の表面粗さRaは、第一層610と同等以上となっている。
【0092】
第一層610fには、中空粒体64bが含まれておらず、第二層620fには、複数の中空粒体64bが分散されている。
【0093】
第一層610fと、第二層620fの基体65bとは、それぞれSiO系の材料から形成されていればよい。第一層610fをなす材料と、第二層620fの基体65bをなす材料とは、完全に同一な材料であってもよいし、SiO系であればその添加物が異なっていてもよい。さらに、第二層620fの基体65bをなす材料は、第一層610fをなす材料よりも屈折率が低いことが、フレネルロスを低減するうえで望ましい。
【0094】
以上のように、変形例6に係る色変換素子1Fによれば、第一平坦化層6fは、蛍光部3の表面31に積層された第一層610fと、第一層610fにおける蛍光部3とは反対側の面に積層された第二層620fとを備え、第一層610fには、粒体が含まれておらず、第二層620fには、複数の粒体(中空粒体64b)が分散されている。
【0095】
これにより、蛍光部3の表面31には、粒体が含まれていない第一層610fが積層されており、当該第一層610fによって平坦化が図られている。つまり、第一層610fの表面の表面粗さRaを蛍光部3の表面31の表面粗さRaよりも小さいために、第二層620fを通過したレーザー光Lが乱反射することを抑制することができ、レーザー光Lの大半をより確実に蛍光部3内に進入させることができる。したがって、蛍光部3内に多くの光が取り込まれるために、蛍光部3から放出される光も増加させることができる。
【0096】
[変形例7]
次に、変形例7について説明する。図10は、変形例7に係る色変換素子1Gの概略構成を示す断面図であり、具体的には図9に対応した図である。なお、以降の説明においては、変形例6と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0097】
上記変形例6では、第一平坦化層6fが二層構造である場合を例示した。この変形例7では、第一平坦化層6gが四層構造である場合を例示する。
【0098】
図10に示すように、第一平坦化層6gは、第一層610fと、第一層610fにおける蛍光部3とは反対側の面(表面)に積層された第二層620gと、第二層620gにおける蛍光部3とは反対側の面(表面)に積層された第三層630gと、第三層630gにおける蛍光部3とは反対側の面(表面)に積層された第四層640gと、を備えている。
【0099】
ここで、第一層610fには、中空粒体64bは含まれていないが、第二層620g、第三層630g及び第四層640gには、複数の中空粒体64bが分散されている。具体的には、中空粒体64bの濃度(密度)は、第二層620g<第三層630g<第四層640gという関係性である。このように、各層(第一層610f~第四層640g)における複数の中空粒体64bの濃度は、第一平坦化層6gを全体的に見て蛍光部3から離れるにつれて漸増するように、決定されている。これにより、第一平坦化層6g内においては、屈折率が蛍光部3から離れるにつれて減少することとなる。つまり、第一平坦化層6gの屈折率は、蛍光部3から離れるにつれて空気に近づくこととなる。例えば、第一層610fの屈折率は1.5、第二層620gの屈折率は1.4、第三層630gの屈折率は1.3、第四層640gの屈折率は1.2であり、蛍光部3から離れるにつれて空気の屈折率に近づく。
【0100】
また、各層の基体をなす材料は、それぞれSiO系の材料から形成されていればよい。各層の基体をなす材料は、完全に同一な材料であってもよいし、SiO系であればその添加物が異なっていてもよい。この場合においても、各層の基体がなす屈折率が、蛍光部3から離れるにつれて、徐々に低くなるような材料が選択されているとよい。
【0101】
第一平坦化層6gの製造方法としては、例えば、SiO系の粉末材料に対して、各層の濃度に応じた量の中空粒体64bを添加することで、各層に対応した複数の準備材料を作成する。その後、蛍光部3の表面31に対して第一層610fをなす準備材料を配置し焼結することで、第一層610fを形成する。次いで、第一層610fの表面に、第二層620gをなす準備材料を配置し焼結することで、第二層620gを形成する。次いで、第二層620gの表面に、第三層630gをなす準備材料を配置し焼結することで、第三層630gを形成する。次いで、第三層630gの表面に、第四層640gをなす準備材料を配置し焼結することで、第四層640gを形成する。これにより、第一平坦化層6gが形成される。
【0102】
以上のように、変形例7に係る色変換素子1Gによれば、複数の粒体(中空粒体64b)の濃度は、第一平坦化層6g内において蛍光部3から離れるにつれて漸増している。
【0103】
これにより、第一平坦化層6g内においては、屈折率が蛍光部3から離れるにつれて減少することとなる。したがって、フレネルロスを大幅に低減することができる。
【0104】
また、第一平坦化層6gは、複数の層(第一層610f、第二層620g、第三層630g及び第四層640g)から形成されており、各層における複数の粒体(中空粒体64b)の濃度は、第一平坦化層6gを全体的に見て蛍光部3から離れるにつれて漸増するように、決定されている。
【0105】
これによれば、中空粒体64bの濃度の異なる複数の層から第一平坦化層6gが形成されているので、製造上、各層の中空粒体64bの濃度をコントロールしやすい。したがって、各層の屈折率もコントロールすることが容易である。
【0106】
なお、第一平坦化層は、三層構造であってもよいし、五層以上の層構造であってもよい。
【0107】
[変形例8]
次に、変形例8について説明する。図11は、変形例8に係る色変換素子1Hの概略構成を示す断面図であり、具体的には図5に対応した図である。なお、以降の説明においては、変形例2と同等の部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0108】
上記変形例7では、第一平坦化層6gが複数の層から形成されており、各層における複数の中空粒体64bの濃度が異なっている場合について例示した。この変形例8では、第一平坦化層6hが単層であり、その層内において中空粒体64bの濃度が異なっている。具体的には、第一平坦化層6h内では、複数の中空粒体64bの濃度が、蛍光部3から離れるにつれて漸増している。これにより、第一平坦化層6h内においては、屈折率が蛍光部3から離れるにつれて減少することとなる。したがって、フレネルロスを大幅に低減することができる。
【0109】
[変形例9]
上記実施の形態では、色変換素子1が投影装置に適用される場合を例示して説明したが、色変換素子は照明装置に用いることも可能である。その場合、色変換素子は回転しないために、ホイール状でなくともよい。以下、照明装置に用いられる色変換素子の一例について説明する。
【0110】
図12は、変形例9に係る照明装置100の概略構成を示す模式図である。図12に示すように、照明装置100は、光源部101と、導光部材102と、色変換素子1Iとを備える。なお、図12においては、色変換素子1Iに備わる第一平坦化層、第二平坦化層及び反射抑制層の図示は省略している。
【0111】
光源部101は、レーザー光L1を発生させ、導光部材102を介して色変換素子1Iにレーザー光L1を供給する装置である。例えば、光源部101は、青紫~青色(430~490nm)の波長のレーザー光L1を放射する半導体レーザー素子である。導光部材102は、光源部101が放射したレーザー光L1を色変換素子1Iまで導く導光部材であり、例えば光ファイバーなどである。
【0112】
色変換素子1Iの基板2iは、平面視矩形状であり、その一つの表面22iには、接合部5iを介して、反射層4i及び蛍光部3iが積層されている。蛍光部3iは平面視矩形状に形成されており、その基板2i側の主面の全体に、誘電体多層膜からなる反射層4iが積層されている。接合部5iは、蛍光部3iの外周縁に対して連続した枠状に形成されている。これにより、接合部5iの内方には、反射層4iを露出させる空気層53iが形成されている。空気層53iは、レーザー光L1の照射領域R1に対して平面視で重なる位置に配置されている。
【0113】
このように変形例9に係る照明装置100においても、空気層53iが、蛍光部3iにおける照射領域R1の少なくとも一部に平面視で重なる位置に、反射層4iを露出させている。このため、空気層53iが設けられていない場合と比べても、全反射する入射角度の範囲(90度-θc)を大きくすることができる。したがって、誘電体多層膜である反射層4iでの反射率を高めることができ、変換効率を高めることができる。
【0114】
なお、照明装置に用いられる色変換素子においても、蛍光部が複数の個片から形成されていてもよい。
【0115】
[その他の実施の形態]
以上、本発明に係る照明装置について、上記実施の形態及び各変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び各変形例に限定されるものではない。
【0116】
例えば、上記実施の形態では、蛍光部3が全体として白色光を放射する個片33から形成されている場合を例示した。しかしながら、蛍光部が複数色の光を発する場合においては、蛍光部における各色を放射する部位が、同一種類の個片によって形成されていればよい。例えば、赤色蛍光部、緑色蛍光部及び青色蛍光部の3層が面状に配列された蛍光部の場合を想定する。赤色蛍光部は、赤色蛍光体を含む同一種類の複数の個片によって形成される。青色蛍光部は、青色蛍光体を含む同一種類の複数の個片によって形成される。緑色蛍光部は、緑色蛍光体を含む同一種類の複数の個片によって形成される。
【0117】
また、変形例2などでは中空粒体64bなどを例示した。しかしながら、第一平坦化層の基体に分散される粒体は中実な粒体であってもよい。中実な粒体である場合、当該粒体の屈折率は、第一平坦化層の基体の屈折よりも小さければよい。これにより、第一平坦化層の屈折率を低下させることができ、照射されるレーザー光Lの第一平坦化層表面でのフレネル反射を抑制することができる。
【0118】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施の形態及び各変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I 色変換素子
2、2i 基板
3、3i 蛍光部
4、4i 反射層
5、5c、5d、5e、5i 接合部
6、6a、6b、6f、6g、6h 第一平坦化層
7 第二平坦化層
8 反射抑制層
31 表面(第一主面)
32 背面(第二主面)
53、53i 空気層
63a 凹凸構造
64b 中空粒体(粒体)
65b 基体
610f 第一層
620f、620g 第二層
630g 第三層
640g 第四層
L、L1 レーザー光
R、R1 照射領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12