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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ターンバックルブレース
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
E04B1/58 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019060480
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159091
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304011902
【氏名又は名称】福井ファイバーテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 孝
(72)【発明者】
【氏名】小宮 巌
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸大
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109326(JP,A)
【文献】特開2013-011164(JP,A)
【文献】特開平06-257606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/20
E04B 2/56 - 2/70
E04B 2/88 - 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンバックル胴およびターンバックルボルトを有するブレースからなるターンバックルブレースであって、
可撓性を備えた可撓部をその軸方向の一部に有し、
前記可撓部は、前記軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックの一部であり、
前記繊維強化プラスチックの前記軸方向における両端には、マトリックスポリマーが含浸されていることを特徴とするターンバックルブレース。
【請求項2】
前記可撓部は、前記軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックの軸方向中間部においてマトリックスポリマーから露出する露出繊維部分からなることを特徴とする請求項1に記載のターンバックルブレース。
【請求項3】
ターンバックル胴およびターンバックルボルトを有するブレースからなるターンバックルブレースであって、
可撓性を備えた可撓部をその軸方向の一部に有し、
前記可撓部には、前記軸方向に連続する連続繊維が含まれ、
前記可撓部は、前記軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックにおいてマトリックスポリマーが可撓性を有するポリマーを含むポリマーで構成された部分からなることを特徴とするターンバックルブレース
【請求項4】
前記連続繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アリレート繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のターンバックルブレース。
【請求項5】
ターンバックル胴およびターンバックルボルトを有するブレースからなるターンバックルブレースであって、
可撓性を備えた可撓部をその軸方向の一部に有し、
前記可撓部には、前記軸方向に連続する連続繊維が含まれ、
前記可撓部は、前記軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックの一部であり、
前記ターンバックル胴がパイプ式ターンバックル胴であり、該パイプ式ターンバックル胴に前記繊維強化プラスチックの端部が挿入されており、接着剤、マトリックスポリマー、セメントの少なくとも1種によって前記パイプ式ターンバックル胴に前記繊維強化プラスチックの端部が接続されていることを特徴とするターンバックルブレース
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンバックルブレースに関し、さらに詳しくは、ビル、マンション、木造家屋、橋脚などの既設または新設の建築物に設置されるブレース材として好適なターンバックルブレースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物その他の構造物において、地震力や風力などの水平力に抵抗させる構造要素として、ブレース材が用いられる。ブレース材としては、ターンバックルブレースが知られている。ターンバックルブレースは、通常、ターンバックル胴とロッド状のターンバックルボルトで構成されている。ターンバックルブレースの改良発明としては、ロッド状のターンバックルボルトをワイヤに変更したワイヤ式ブレース(特許文献1)や、ターンバックル胴のロッド挿入口が透孔であり、ロッド挿入口に挿入されたロッド状のターンバックルボルトの端部に、ターンバックル胴内で、減衰部材を挟んでナットが螺合されたターンバックル(特許文献2)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-025786号公報
【文献】特開2005-264472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ターンバックルブレースは、構造計算上は圧縮力に抵抗しないとして用いられている。しかし、ターンバックルブレースに地震などによる繰り返し力が作用すると、ブレース全体が弧を描くように曲がる変形が生じ、ターンバックルボルトの付け根やターンバックル胴の付け根などに応力が集中し、応力の集中する部分に損傷が生じるおそれがある。
【0005】
特許文献1のワイヤ式ブレースは、ロッド状のターンバックルボルトを用いていないため、ロッドを用いた通常のターンバックルブレースと比較して、接合が難しい。特許文献2のターンバックルは、ロッド挿入口が透孔であるため、圧縮力は作用しないものの、軸方向に直交する方向の曲げ変形を吸収できない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ターンバックルブレースに圧縮力や曲げが発生してもターンバックルボルトやターンバックル胴に圧縮力や曲げが作用しないようにして、地震などによる変形を抑える効果に優れるターンバックルブレースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係るターンバックルブレースは、ターンバックル胴およびターンバックルボルトを有するブレースからなるターンバックルブレースであって、軸方向の一部に、前記軸方向に連続する連続繊維を含み可撓性を備えた可撓部を有することを要旨とするものである。
【0008】
前記可撓部は、前記軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックの軸方向中間部においてマトリックスポリマーから露出する露出繊維部分からなるとよい。あるいは、前記可撓部は、前記軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とする繊維強化プラスチックにおいてマトリックスポリマーが可撓性を有するポリマーを含むポリマーで構成された部分からなってもよい。
【0009】
前記連続繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アリレート繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維の少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0010】
前記ターンバックル胴がパイプ式ターンバックル胴であり、該パイプ式ターンバックル胴に前記繊維強化プラスチック部分が挿入されており、接着剤、マトリックスポリマー、セメントの少なくとも1種によって前記パイプ式ターンバックル胴に前記繊維強化プラスチック部分が接続されているとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るターンバックルブレースによれば、軸方向の一部に軸方向に連続する連続繊維を含み可撓性を備えた可撓部を有することから、ターンバックルブレースに圧縮力や曲げが発生しても、可撓部で変形を吸収するので、ターンバックルボルトやターンバックル胴に圧縮力や曲げが作用しないようにして、地震などによる変形を抑える効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るターンバックルブレースの模式図であり、分解図(a)と連結図(b)である。
図2】ターンバックル胴の一例の断面図である。
図3】露出繊維部分を有する繊維強化プラスチックの一例の模式図である。
図4】建物の壁にターンバックルブレースを設置した状態を示す模式図である。
図5】ターンバックルブレースに圧縮力や曲げが発生したときの作用を説明する模式図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るターンバックルブレースの模式図である。
図7】本発明の他の実施形態に係るターンバックルブレースの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るターンバックルブレース10は、一対の羽子板ボルト(ターンバックルボルト)12,14と、一対のターンバックル胴16,18と、繊維強化プラスチック20と、から構成されている。
【0015】
図1に示すように、羽子板ボルト12は、ガセットプレートなどに固定するための固定部となる平板状の羽根部12aを軸方向の一方に有し、その羽根部12aに連続して軸方向の他方にボルト部12bを有する。ボルト部12bの他方側先端には、雄ねじ12cが形成されている。羽子板ボルト12は、鋼材などの金属材料で構成されている。また、羽子板ボルト14も、羽子板ボルト12と同様に、鋼材などの金属材料で構成され、羽根部14aを軸方向の他方に有し、その羽根部14aに連続して軸方向の一方にボルト部14bを有する。ボルト部14bの一方側先端には、雄ねじ14cが形成されている。
【0016】
図1,2に示すように、ターンバックル胴16は、パイプ式のターンバックル胴からなり、両端の内周面には互いに逆ねじとなる雌ねじ16a,16bが形成されている。ターンバックル胴16において、両端の雌ねじ16a,16bの内径よりも胴部16cの内径が大きくなっており、胴部16cから雌ねじ16aにつながる部分や胴部16cから雌ねじ16bにつながる部分には、漸次径が小さくなるテーパがつけられている。ターンバックル胴16は、鋼材などの金属材料で構成されている。また、ターンバックル胴18も、ターンバックル胴16と同様に、パイプ式のターンバックル胴からなり、両端の内周面には互いに逆ねじとなる雌ねじ18a,18bが形成されている。
【0017】
図1,3に示すように、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、FRP)20は、炭素繊維などの繊維(強化繊維)をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料である。繊維強化プラスチック20の両端部は、断面が丸や四角形などの棒状に成形されている。繊維強化プラスチック20において、強化繊維は、繊維強化プラスチック20の一端から他端まで軸方向に連続する連続繊維となっている。繊維強化プラスチック20の軸方向中間部には、強化繊維の一部がマトリックスポリマーから露出する露出繊維部分20aが形成されている。軸方向中間部とは、軸方向端部を除いた部分である。この露出繊維部分20aが、ターンバックルブレース10における可撓性を備えた可撓部となる。露出繊維部分20a以外の部分20b,20cは、強化繊維とマトリックスポリマーが複合されている部分であるため、曲がりにくい(可撓性を備えていない)部分である。露出繊維部分20a以外の部分20b,20cは、後述するように、ターンバックル胴の雌ねじに挿入され接着剤などで固定される部分であり、挿入および接着に必要な長さが確保されていればよい。
【0018】
繊維強化プラスチック20の強化繊維は、単繊維の束からなるフィラメントを複数本束ねたものから構成される。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アリレート繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維などを挙げることができる。アリレート繊維は、芳香族ポリエステル繊維である。ポリエチレン繊維は、分子量を100万~700万まで高めた超高分子量ポリエチレンである。これらは、繊維強化プラスチック20の強化繊維として1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、鋼材などの金属材料よりも同じ太さにおいて引張強度に優れる、同じ太さにおいてより軽量であるなどの観点から、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アリレート繊維がより好ましい。
【0019】
繊維強化プラスチック20のマトリックスポリマー(母材)としては、強度や剛性の高い熱硬化性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂やゴム、エラストマーなどであってもよい。マトリックスポリマーとしては、強度や剛性に優れる、強化繊維の単繊維間に浸潤しやすいなどの観点から、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂がより好ましく、繊維強化プラスチック20の端部20b、20cをターンバックル胴の雌ねじに挿入した後注入する接着剤との接着性に優れるなどの観点から、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0020】
繊維強化プラスチック20は、引抜法により断面が丸や四角形などの棒状に成形することができる。繊維強化プラスチック20において、露出繊維部分20aを形成する方法としては、次のような方法がある。第一には、引抜法で棒状とした繊維強化プラスチック20の軸方向中間部を局所的に加熱処理し、その部分のマトリックスポリマーを気化させることにより、その部分において強化繊維のみを残す方法を挙げることができる。第二には、引抜法を行う段階で、マトリックスポリマーを含む含浸液が貯蔵される含浸槽に連続繊維を沈めるディッパーを連続的に上下動させ、移動中の連続繊維を含浸槽に沈めたり含浸槽から引き上げたりすることで、連続繊維に対しマトリックスポリマーを間欠的に含浸させないようにし、連続繊維に対しマトリックスポリマーを含浸させた部分と含浸させていない部分とを交互に配置する方法を挙げることができる。また、ハンドレイアップ成形によっても露出繊維部分20aを形成可能である。
【0021】
図1に示すように、ターンバックルブレース10は、次のようにして、組み立てることができる。まず、羽子板ボルト12の雄ねじ12cをターンバックル胴16の雌ねじ16aに螺合する。同様に、羽子板ボルト14の雄ねじ14cをターンバックル胴18の雌ねじ18bに螺合する。次いで、ターンバックル胴16の雌ねじ16bに繊維強化プラスチック20の端部20bを挿入し、接着剤で固定する。同様に、ターンバックル胴18の雌ねじ18aに繊維強化プラスチック20の端部20cを挿入し、接着剤で固定する。以上により、軸方向に、羽子板ボルト12、ターンバックル胴16、繊維強化プラスチック20、ターンバックル胴18、羽子板ボルト14が順次接続されてなるターンバックルブレース10が得られる。
【0022】
繊維強化プラスチック20の端部20bは、ターンバックル胴16の雌ねじ16bに雌ねじ16bの長さ以上に挿入され、胴部16cまでその先端が配置されることが好ましい。また、繊維強化プラスチック20の端部20bを固定する接着剤には、鋼球を混入させ、雌ねじ16bを超えて胴部16cまで注入されることが好ましい。雌ねじ16bの奥まで繊維強化プラスチック20の端部20bと接着剤が一体化されていると、テーパ部分で引っかかりが形成され、雌ねじ16bから繊維強化プラスチック20の端部20bが抜けにくく、接続強度が向上する。なお、接着剤は、ターンバックル胴16の内部全体に注入されていてもよいし、雌ねじ16bの周囲にのみ注入されていてもよい。繊維強化プラスチック20の端部20cおよびターンバックル胴18の雌ねじ18aについても同様である。
【0023】
繊維強化プラスチック20の端部20b,20cを固定するための接着剤は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂系接着剤や膨張コンクリートなどを用いることができる。接着剤がエポキシ樹脂である場合、繊維強化プラスチック20のエポキシ樹脂を含むマトリックスポリマーと接着性に優れる。
【0024】
ターンバックルブレース10においては、羽子板ボルト12の雄ねじ12cに螺合されているターンバックル胴16の雌ねじ16aと、羽子板ボルト14の雄ねじ14cに螺合されているターンバックル胴18の雌ねじ18bと、が互いに逆ねじとなっており、ターンバックル胴16と繊維強化プラスチック20とターンバックル胴18を軸中心に一体に回転させることにより、ターンバックルブレース10の長さを軸方向に伸縮させることができる。
【0025】
以上の構成のターンバックルブレース10は、例えば、ビル、マンション、木造家屋、橋脚などの既設または新設の建築物に設置されるブレース材として好適に用いることができる。
【0026】
図4には、ターンバックルブレース10の設置例を示している。図4において、ターンバックルブレース10は、建物1の梁2と柱3で構成される架構(壁)にたすき掛けするように張設されている。図4に示すように、例えば矢印の方向に建物に水平力が作用すると、ターンバックルブレース10a(10)には引張力が作用し、ターンバックルブレース10b(10)には圧縮力や曲げの力が作用する。このとき、ターンバックルブレース10a(10)が引張力の作用に抵抗することで、建物1の剛性や耐力を確保することができる。一方で、ターンバックルブレース10b(10)は、図5に示すように、圧縮力や曲げの力に対し、繊維強化プラスチック20の露出繊維部分20aが撓むことで変形を吸収し、羽子板ボルト12,14やターンバックル胴16,18などの金属部分には圧縮力や曲げの力が作用しない。これにより、羽子板ボルト12,14の付け根やターンバックル胴16,18の付け根などに損傷が生じるのを抑えることができる。通常のターンバックルブレースは、露出繊維部分20aのような変形を吸収できる部分がないため、圧縮力や曲げの力により羽子板ボルトやターンバックル胴などの金属部分が撓んだ後、羽子板ボルトの付け根やターンバックル胴の付け根などに損傷が生じるおそれがある。
【0027】
したがって、本発明に係るターンバックルブレース10によれば、軸方向の一部に軸方向に連続する連続繊維を含み可撓性を備えた可撓部を有することから、ターンバックルブレース10に圧縮力や曲げが発生しても、可撓部で変形を吸収するので、ターンバックルボルト(羽子板ボルト12,14)やターンバックル胴16,18に圧縮力や曲げが作用しないようにしてターンバックルブレース10の損傷を抑えつつ、地震などによる建物の変形を抑える効果に優れる。
【0028】
そして、本発明に係るターンバックルブレース10は、既存建築物であってもボルトの取り外しのみで部材自体を簡単に取り替えることができる。その重量も数kgであることから、取り替え作業に重機等を必要としない。
【0029】
繊維強化プラスチック20における炭素繊維などの各繊維は、鋼材などの金属材料よりも比強度(比重当たりの引張強度)が数倍高いため、同程度の太さにおいて、金属材料よりも強度に優れ、かつ、軽量である。このため、引張力の作用に対し、繊維露出部分20aよりも金属材料部分で破壊させることができる。したがって、金属材料部分の強度を基準に耐力を設計することができる。また、羽子板ボルト12,14やターンバックル胴16,18など、接合部の破壊より先に金属材料部分が降伏するように設計すれば、変形性能により優れるものとできる。
【0030】
JISにおけるターンバックルブレースのサイズは、ねじの呼び径M6~M33まで存在する。この範囲内のサイズでターンバックルブレースを構成することができる。
【0031】
ターンバックルブレース10において、強化繊維は、鋼材などの金属材料よりも比強度(比重当たりの引張強度)が数倍高いため、可撓部となる繊維露出部分20aの太さは、羽子板ボルト12,14のボルト部12b,14bよりも細くしても十分に強度が得られる。ただし、繊維露出部分20aの強度を十分に確保するなどの観点から、繊維露出部分20aの太さは、羽子板ボルト12,14のボルト部12b,14bの1/2倍以上1倍以下とすることが好ましい。
【0032】
以上、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能なものである。
【0033】
例えば上記実施形態では、可撓部が繊維強化プラスチック20の露出繊維部分20aからなるが、本発明における可撓部は、この構成に限定されるものではない。
【0034】
図6には、他の実施形態に係るターンバックルブレースを示している。図6に示すターンバックルブレース30は、図1に示すターンバックルブレース10と比較して、繊維強化プラスチック22の部分の構成が異なるのみであり、それ以外の構成については図1に示すターンバックルブレース10と同様であり、その説明については省略する。
【0035】
ターンバックルブレース30において、繊維強化プラスチック22は、軸方向に連続する連続繊維を強化繊維とし、強化繊維の軸方向の全長にわたってマトリックスポリマーが含浸されている。そして、そのマトリックスポリマーが、可撓性を有するポリマーを含むポリマーで構成されている。したがって、ターンバックルブレース30において、可撓部は、マトリックスポリマーが可撓性を有するポリマーを含むポリマーで構成された部分からなる。マトリックスポリマーは、マトリックスポリマー全体が可撓性を有するのであれば、可撓性を有するポリマーのみで構成されていてもよいし、可撓性を有するポリマーと可撓性を有さないポリマーの混合物で構成されていてもよい。
【0036】
可撓性を有するポリマーとしては、ゴム、エラストマーなどを挙げることができる。また、柔軟性に優れるエポキシ樹脂を挙げることができる。柔軟性に優れるエポキシ樹脂としては、脂肪族骨格を分子構造内に有するエポキシ樹脂、ポリブタジエンや水添ポリブタジエン骨格を分子構造内に有するエポキシ樹脂などを挙げることができる。柔軟性に優れるエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂であり、炭素繊維などの繊維との密着性に優れる点でより好ましい。
【0037】
繊維強化プラスチック22は、軸方向の全長にわたって強化繊維がマトリックスポリマーに含浸されており、軸方向の全長にわたって強化繊維がマトリックスポリマーによって一体化されている。このため、強化繊維を構成する各フィラメントが引張力によって個々に断線するのが抑えられ、引張強度により優れる。
【0038】
なお、繊維強化プラスチック22は、軸方向の全長にわたって可撓性を有するポリマーを含むポリマーでマトリックスポリマーが構成されているが、軸方向中間部のみ可撓性を有するポリマーを含むポリマーでマトリックスポリマーが構成され、軸方向の両端部は可撓性を有さないマトリックスポリマーが構成されていてもよい。
【0039】
また、図1に示すターンバックルブレース10では、ターンバックル胴16と繊維強化プラスチック20とターンバックル胴18を軸中心に一体に回転させることにより、ターンバックルブレース10の長さを軸方向に伸縮させるものとなっているが、本発明は、この構成に限定されるものではない。
【0040】
図7には、他の実施形態に係るターンバックルブレースを示している。図7に示すターンバックルブレース40は、図1に示すターンバックルブレース10と比較して、両ねじボルト24とターンバックル胴26が追加されている点が相違し、それ以外の構成については、図1に示すターンバックルブレース10と同様である。
【0041】
両ねじボルト24は、鋼材などの金属材料で構成され、両端部に雄ねじ24a,24bが形成されている。ターンバックル胴26は、ターンバックル胴16,18と同様に、鋼材などの金属材料で構成され、パイプ式のターンバックル胴からなり、両端の内周面には互いに逆ねじとなる雌ねじ26a,26bが形成されている。
【0042】
ターンバックルブレース40は、次のようにして、組み立てることができる。まず、羽子板ボルト12の雄ねじ12cをターンバックル胴16の雌ねじ16aに螺合する。また、羽子板ボルト14の雄ねじ14cをターンバックル胴26の雌ねじ26bに螺合する。そして、ターンバックル胴26の雌ねじ26aには、両ねじボルト24の雄ねじ24bを螺合する。次いで、両ねじボルト24の雄ねじ24aに、ターンバックル胴18の雌ねじ18bを螺合する。次いで、ターンバックル胴16の雌ねじ16bに、繊維強化プラスチック20の端部20bを挿入し、接着剤で固定する。また、ターンバックル胴18の雌ねじ18aに、繊維強化プラスチック20の端部20cを挿入し、接着剤で固定する。以上により、軸方向に、羽子板ボルト12、ターンバックル胴16、繊維強化プラスチック20、ターンバックル胴18、両ねじボルト24、ターンバックル胴26、羽子板ボルト14が順次接続されてなるターンバックルブレース40が得られる。
【0043】
ターンバックルブレース40においては、羽子板ボルト14の雄ねじ14cに螺合されているターンバックル胴26の雌ねじ26bと、両ねじボルト24の雄ねじ24bに螺合されているターンバックル胴26の雌ねじ26aと、が互いに逆ねじとなっており、ターンバックル胴26を軸中心に一体に回転させることにより、ターンバックルブレース40の長さを軸方向に伸縮させることができる。また、羽子板ボルト12の雄ねじ12cに螺合されているターンバックル胴16の雌ねじ16aと、両ねじボルト24の雄ねじ24aに螺合されているターンバックル胴18の雌ねじ18bと、が互いに逆ねじとなっており、ターンバックル胴16と繊維強化プラスチック20とターンバックル胴18を軸中心に一体に回転させることにより、ターンバックルブレース40の長さを軸方向に伸縮させることもできる。
【0044】
また、図1に示すターンバックルブレース10では、露出繊維部分20aを有しているが、可撓性の熱収縮チューブなどでこの露出繊維部分20aを覆い、露出繊維部分20aを一体化してもよい。
【0045】
また、図1に示すターンバックルブレース10では、繊維強化プラスチック20の一部が露出繊維部分20aとなっているが、マトリックスポリマーに含浸されていない連続繊維のみをターンバックル胴16の雌ねじ16bとターンバックル胴18の雌ねじ18aの間に配置し、かしめや接着剤によって連続繊維の両端部をターンバックル胴16の雌ねじ16bやターンバックル胴18の雌ねじ18aに固定するものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10,30,40 ターンバックルブレース
12,14 羽子板ボルト
16,18,26 ターンバックル胴
20,22 繊維強化プラスチック
20a 露出繊維部分
24 両ねじボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7