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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】可変パッド
(51)【国際特許分類】
   E01B 9/68 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
E01B9/68
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019153829
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021031976
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000162995
【氏名又は名称】興和化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519309924
【氏名又は名称】サンエイワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 理一
(72)【発明者】
【氏名】内沼 一雄
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-028858(JP,A)
【文献】特開2007-197944(JP,A)
【文献】特開2005-282112(JP,A)
【文献】特開2006-233477(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01925734(EP,A1)
【文献】実開昭51-145108(JP,U)
【文献】特開2018-070179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際に軌道パッドの下に設置される可変パッドにおいて、
樹脂を注入する注入部と、当該注入された樹脂を収容し、シート部材から形成された袋体と、前記注入に伴って前記袋体内の空気を排出し、シート部材から形成された空気排出部と、を備え
前記空気排出部が、前記袋体内の空気を排出する孔と、前記樹脂の漏出を防ぎ、空気を排出する面状の多孔質フィルムと、を有し、前記孔を覆うように前記多孔質フィルムが設置されたことを特徴とする可変パッド。
【請求項2】
請求項1に記載の可変パッドにおいて、
前記空気排出部のシート部材と前記多孔質フィルムとの接着部が、前記孔の周囲に形成されたことを特徴とする可変パッド。
【請求項3】
求項2に記載の可変パッドにおいて、
前記多孔質フィルムと前記空気排出部のシート部材とが接着していない非接着部が、前記接着部の内側であって、前記孔の周囲に形成されたことを特徴とする可変パッド。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の可変パッドにおいて、
前記多孔質フィルムが、防水性および通気性のためのボイド有する多孔質フィルム層を有することを特徴とする可変パッド。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可変パッドにおいて、
前記空気排出部の透気抵抗度において、JIS P 8117で規定される透気抵抗度が40秒/100cc~100秒/100ccであることを特徴とする可変パッド。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の可変パッドにおいて、
記空気排出部において、前記孔の大きさと前記孔の数により排気調節するように、前記孔が形成された側の裏面に前記多孔質フィルムが設置され、前記孔の大きさが、孔径0.1mm~2mmであることを特徴とする可変パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際に用いられる可変パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スラブ軌道を施工する際に、タイプレートと軌道パッドとの間に隙間を生じないよう施工精度を高めるために可変パッドが利用されている。例えば、特許文献1には、2層のプラスチックシートの周縁部を封止して形成された略長方形状袋体からなり、逆止弁を備えた注入チューブを袋体の1隅角部に突設し、繊維束を棒状に収束したフィルタを少なくとも全長にわたって内部に設けた排気口を袋体の該隅角部と対向する隅角部に突設すると共に、袋体内に剛性繊維からなる織布状補強材を収容した可変パッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-282112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、フィルタの繊維束には個体差があり、排気口の繊維密度は一定ではなく、また、外側から熱圧を加えて、排気チューブの内側面に融着させるため、同品質の排気口に仕上げることが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、樹脂を注入する際に、安定した排気ができる可変パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際に軌道パッドの下に設置される可変パッドにおいて、樹脂を注入する注入部と、当該注入された樹脂を収容し、シート部材から形成された袋体と、前記注入に伴って前記袋体内の空気を排出し、シート部材から形成された空気排出部と、を備え前記空気排出部が、前記袋体内の空気を排出する孔と、前記樹脂の漏出を防ぎ、空気を排出する面状の多孔質フィルムと、を有し、前記孔を覆うように前記多孔質フィルムが設置されたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可変パッドにおいて、前記空気排出部のシート部材と前記多孔質フィルムとの接着部が、前記孔の周囲に形成されたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、求項2に記載の可変パッドにおいて、前記多孔質フィルムと前記空気排出部のシート部材とが接着していない非接着部が、前記接着部の内側であって、前記孔の周囲に形成されたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の可変パッドにおいて、前記多孔質フィルムが、防水性および通気性のためのボイド有する多孔質フィルム層を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の可変パッドにおいて、前記空気排出部の透気抵抗度において、JIS P 8117で規定される透気抵抗度が40秒/100cc~100秒/100ccであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の可変パッドにおいて、記空気排出部において、前記孔の大きさと前記孔の数により排気調節するように、前記孔が形成された側の裏面に前記多孔質フィルムが設置され、前記孔の大きさが、孔径0.1mm~2mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空気排出部が、注入された樹脂の漏出を防ぎ、空気を排出する面状の多孔質フィルムを有することにより、品質が安定した多孔質フィルムをそのまま設置して、多孔質フィルムから内部の空気を排出するので、樹脂を注入する際に、安定した排気ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る可変パッドを模式的に示す平面図である。
図2図1における可変パッドの空気排出部を模式的に示す平面図である。
図3】可変パッドの部材の一例を示す平面図である。
図4】可変パッドの部材の一例を示す平面図である。
図5】可変パッドの部材の一例を示す平面図である。
図6】空気排出部の部材の断面を模式的に示す断面図である。
図7】空気排出部の変形例を示す平面図である。
図8】空気排出部の変形例を示す平面図である。
図9】空気排出部の変形例を示す平面図である。
図10】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図11】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図12】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図13】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図14】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図15A】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図15B】可変パッドの変形例を示す平面図である。
図16】可変パッドの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、可変パッドに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0015】
[1.可変パッドの構成および機能]
(1.1 可変パッドの構成および機能概要)
まず、本発明の一実施形態に係る可変パッドの構成および概要機能について、図1および図2を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る可変パッドを模式的に示す平面図である。図2は、図1における可変パッドの空気排出部を模式的に示す平面図である。
【0017】
図1に示すように、可変パッド10は、樹脂を注入する注入部11と、注入された樹脂を収容する袋体12と、注入に伴って袋体12内の空気を排出する空気排出部13と、を備える。
【0018】
可変パッド10は、ポリエチレンやポリエチレンとナイロンのシートをラミネートしたシートから形成されている。2枚のシートの周縁が可変パッド10の外形状に接着され、シール部sが形成される。シートの接着は、熱圧着、溶着、接着剤等による接着である。シートの接着は、高周波ウエルダ加工による融着でもよい。
【0019】
長方形の袋体12の対角位置に、対角方向外側に伸びた注入部11と空気排出部13とが形成されている。なお、袋体12の形状は、四角形に限らず、例えば、円形でもよい。
【0020】
注入部11は、逆流防止弁を備えたチューブtを有する。注入部11は、長方形の袋体12の隅から対角方向外側に伸びている。
【0021】
袋体12は、扁平な略方形をした形状である。袋体12は、注入された樹脂を補強するためのガラス繊維織布等の補強繊維gを、袋体12の内部に挟み込んでいる。
【0022】
空気排出部13は、袋体12において注入部11とは対角位置に形成されている。空気排出部13は、袋体12内の空気を排出するための孔pを有する。空気排出部13の内部は、袋体12の内部と連通している。孔pの裏側に多孔質フィルム15が存在する。袋体12内の空気が、多孔質フィルム15を通して、孔pから排出される。なお、孔pは、可変パッド10を構成するラミネートのシートに形成されている。
【0023】
多孔質フィルム15は、防水性および通気性があるフィルムで、注入された樹脂の漏出を抑えるが、空気をできるだけ早く排出できる面状のフィルムである。
【0024】
多孔質フィルム15は、空気排出部13の孔pのある所の裏面に配置される。
【0025】
多孔質フィルム15は、樹脂の注入圧力に耐えられる強度を有する。例えば、樹脂の注入圧力は、0.3MPaである。
【0026】
多孔質フィルム15の材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂及び、テフロン(登録商標)(PTFE)系樹脂等である。多孔質フィルム15を構成する多孔質フィルム層は、通気性のための、例えば、直径0.1~2000μm程のボイドを有する。このボイドは、多孔質フィルムの表裏面をほぼ直線で貫通する貫通孔や、または、発砲構造の孔である。多孔質フィルム15は、通気性を保って、複数の多孔質フィルム層同士を、接着剤、熱融着等により貼り合わせた構造でもよい。多孔質フィルム層のボイドの大きさや、単位面積当たりのボイドの数は、可変パッド10に注入する樹脂の漏出を防ぎ、空気を効率よく排出できる大きさや数が好ましい。
【0027】
多孔質フィルム15は、フィルムの強度を上げるため、多孔質フィルム層に貼り合わせた不織布層を有してもよい。不織布としては、例えば、ポリエステル製不織布、ポリオレフィン製不織布等が挙げられる。
【0028】
多孔質フィルム15は、所定の面積を所定量の空気が所定圧力の下で通過する時間である透気抵抗度が、所定の範囲であることが好ましい。透気度及び透気抵抗度試験方法の規格、JIS P 8117において、透気抵抗度が、40秒/100cc~400秒/100ccが好ましい。さらに、透気抵抗度が、40秒/100cc~100秒/100ccが好ましい。透気抵抗度が低いと、空気が抜けやすいが、樹脂がしみ出しやすくなる。透気抵抗度が高過ぎると、空気が抜けにくくなり、施工に時間を要するようになる。
【0029】
ここで、透気抵抗度の測定条件はJIS P 8117に準拠してもよい。例えば、
透気度=単位面積、単位圧力差および単位時間当たりに透過する空気の平均流量、
透気抵抗度=一定面積、一定圧力差あたり、規定された体積の空気が透過する際に要する時間である。
【0030】
なお、多孔質フィルム15の一例として、例えば、特開2018-70179号公報で開示された袋体構成部材の多孔質フィルムが挙げられる。
【0031】
次に、孔pの直径は、樹脂注入の圧力で多孔質フィルムが裂けないように、2mm以下が好ましい。多孔質フィルム15の表面に、樹脂が多少浸み出すことがあり、孔pの直径は、2mm以下が好ましい。例えば、孔pの孔径φは、0.1mmから2mmで、1.5mmがより好ましい。
【0032】
孔pが複数ある場合、所定距離の間隔があることが好ましい。例えば、孔pの間隔は、孔pの直径が1.5mmの場合、孔pの中心距離で2mm以上が好ましい。孔pの直径が1.5mmとするならば、孔同士の間隔が中心距離で1mmは不可能なため、中心距離は2mm以上とする。
【0033】
なお、空気排出部13全体の透気抵抗度は、多孔質フィルム15の性質の他に、孔pの大きさ、孔pの数、または、これらの組み合わせにより調節できる。
【0034】
図2に示すように、空気排出部13を形成する一方のシート(例えば、上面シート部材)において、多孔質フィルム15の周縁が圧着され、接着部15sが形成されている。多孔質フィルム15の接着されていない部分が、非接着部15nである。多孔質フィルム15は、シートの裏側から、シートに形成された孔pを塞ぐように配置される。
【0035】
可変パッド10に注入される樹脂は、例えば、液状の樹脂で、硬化剤を添加すると所定時間後に硬化する樹脂である。樹脂の一例として、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、発泡性ウレタン樹脂、メタクリル系樹脂等が挙げられる。
【0036】
(1.2 可変パッド10の部材)
次に、可変パッド10の部材について、図3から図5を用いて説明する。
【0037】
図3から図5は可変パッドの部材の一例を示す平面図である。図6は、空気排出部の部材の断面を模式的に示す断面図である。
【0038】
図3および図4に示すように、可変パッド10は、軌道パッドに接する上面シート10aと、タイプレートに接する下面シート部材10bとの2枚のシート部材から作製されている。上面シート部材10aおよび下面シート部材10bは、例えば、ナイロンポリエチレンラミネート製である。
【0039】
上面シート部材10aは、上面注入部11aと、上面袋体12aと、上面空気排出部13aと、を有する。下面シート部材10bは、下面注入部11bと、下面袋体12bと、下面空気排出部13bと、を有する。
【0040】
上面シート部材10aおよび下面シート部材10bは、例えば、上下2枚のナイロンポリエチレンラミネートのシートが、補強繊維g、チューブt等とを挟み、熱圧着等により接着されて、シール部sが形成された後、型抜き、または、レーザ等で切り抜きされて作製される。
【0041】
上面空気排出部13aは、例えば2つの孔pを有する。例えば、ナイロンポリエチレンラミネートのシートstの上面空気排出部13aが形成される部分に、孔pが、型抜き、または、レーザ等で穿孔されて形成される。
【0042】
図5に示すように、上面シート部材10aは、上面空気排出部13aにおいて多孔質フィルム15を備えている。図6に示すように、上面シート部材10aが形成されるシートstの裏面、すなわち、下面シート部材10bの周縁と接着される側の上面空気排出部13aにおいて、多孔質フィルム15が設置されている。
【0043】
図5および図6に示すように、孔pを覆うように、多孔質フィルム15が設置され、多孔質フィルム15の接着部15sが、熱圧着、溶着、接着剤等により、上面シート部材10aが形成されるシートstと接着されている。多孔質フィルム15のシートstと接着していない部分が非接着部15nである。なお、上面シート部材10aとの接着面は、多孔質フィルム15の多孔質フィルム層面でもよいし、不織布層がある場合、多孔質フィルム15の不織布層面でもよい。
【0044】
下面シート部材10bが形成されるシートstの上に、袋体12が形成される部分に補強繊維gが設置され、注入部11が形成される部分にチューブtが設置される。それらの上に、多孔質フィルム15が接着された面を下にして、上面シート部材10aが形成されるシートstが、位置合わせして重ねられる。なお、多孔質フィルム15が接着された面を上にして、上面シート部材10aが形成されるシートstの上に、補強繊維gとチューブtとが設置され、下面シート部材10bが形成されるシートstが重ねて被せられてもよい。
【0045】
多孔質フィルム15が接着された上面シート部材10aと下面シート部材10bとの間に補強繊維gとチューブtとが挟まれ、上面シート部材10a(下面シート部材10b)の形状に、熱圧着、溶着等に接着される。チューブtの部分は、上面注入部11aと下面注入部11bとが形成される部分と、注入された樹脂が漏れ出ないように、リング状に圧着される。
【0046】
接着後、上面シート部材10a(下面シート部材10b)の形状に、シール部分sを残して、打ち抜かれ、または、切り抜かれて、可変パッド10が作製される。
【0047】
(1.3 可変パッド10の使用例)
次に、可変パッド10の使用例について説明する。
【0048】
鉄道レールを敷設してスラブ軌道を施工する際、可変パッド10を、軌道パッドの下に設置して、注入器により、硬化剤を添加した液状の樹脂を、注入部11のチューブtから注入する。注入器が、例えば、0.3MPaの圧力で樹脂を注入する。
【0049】
液状の樹脂は、樹脂は、袋体12の補強繊維gの表裏面側に分かれながら、注入部11から空気排出部13の方向に流入していく。袋体12内に存在した空気が、空気排出部13の多孔質フィルタ15を通して、孔pから抜けていく。
【0050】
樹脂が、空気排出部13に達し、樹脂が袋体12の中に満たされたら、注入を中止する。例えば、注入圧力に依存するが、15秒ほどで、注入が終わる。
【0051】
樹脂が、空気排出部13に達しても、多孔質フィルタ15により、液体の樹脂の漏出を防止するが、空気を排出する。
【0052】
注入後、例えば、硬化剤により発熱して、樹脂が硬化する。
【0053】
樹脂が硬化したら、注入部11および空気排出部13が切り取られ、施工が完了する。
【0054】
以上、本実施形態によれば、空気排出部13が、注入された樹脂の漏出を防ぎ、空気を排出する面状の多孔質フィルム15を有することにより、品質が安定した多孔質フィルム15をそのまま設置して、多孔質フィルム15から内部の空気を排出するので、樹脂を注入する際に、安定した排気ができる。
【0055】
また、多孔質フィルム15が、表裏面を貫通する貫通孔を含む多孔質フィルム層を有する場合、空気を排出するが液体の漏出を防ぐ大きさの貫通孔を有する多孔質フィルム層により、空気を排出するが、水や樹脂等の液体の漏出を防止することができる。
【0056】
また、空気排出部13の透気抵抗度が、40秒/100cc~100秒/100ccである場合、樹脂の漏出を防止し、かつ、空気が抜けやすいため、施工時間が短縮できる。
【0057】
また、空気排出部13が、多孔質フィルム15を通して抜けた空気を排出する孔pを有する場合、孔pにより、空気排出部13の透気抵抗度を調整できる。孔pのみから空気を排出することにより、たとえ樹脂が漏れ出しても、孔pからの漏出により、樹脂の漏出を最小限にすることができる。
【0058】
また、袋体12の内部に連通する空気排出部13において、孔pが形成された側の裏面に、多孔質フィルム15が設置された場合、注入圧力に対して多孔質フィルム15が、空気排出部13内部から外への圧力を受けても、孔pの周りで多孔質フィルム15を支えて、多孔質フィルム15の破損を防ぐことができる。
【0059】
[2.変形例]
次に変形例について、説明する。
【0060】
(2.1 空気排出部の変形例)
次に、空気排出部の変形例について、図を用いて説明する。
【0061】
図7から図9は、空気排出部の変形例を示す平面図である。
【0062】
図7に示すように、空気排出部13において、小さめの孔pを多数設けてもよい。孔pの直径と孔pの数とにより、透気抵抗度を調整できる。また、小さい孔pにより、多孔質フィルム15の非接着部15nを、注入圧力から保護できる。また、網目のような孔でもよい。
【0063】
図8に示すように、各孔pの周りに、多孔質フィルム15の接着部15sを形成してもよい。多孔質フィルム15と上面空気排出部13aとの密着度が増加し、空気排出部13から樹脂が破れ出ることが、より防止される。非接着部15nの面積を変えることで、透気抵抗度を調整できる。
【0064】
図9に示すように、孔pの形状は、円に限らず、例えば、楕円、または、切りかけの形状でもよい。
【0065】
また、孔pの大きさと、孔pの数とにより、空気排出部13の透気抵抗度を調節する場合、空気排出部13の透気抵抗度をより調整しやすくなる。
【0066】
(2.2 可変パッドの変形例)
次に、可変パッドの変形例について、図を用いて説明する。
【0067】
図10から図16は、可変パッドの変形例を示す平面図である。
【0068】
図10に示すように、可変パッド10Aは、空気排出部13Aを、袋体12の隅にさらに有してもよい。空気が袋体12により残りにくくなる。
【0069】
空気排出部を袋体12から突出させず、図11に示すように、可変パッド10Bは、注入部11と対角の位置の袋体12の隅に空気排出部13Bを有してもよい。この場合、樹脂が硬化後、空気排出部を切り取る手間が省ける。
【0070】
図12に示すように、可変パッド10Cは、袋体12の各隅に、空気排出部13Cと、空気排出部13Cと、を有してもよい。この場合、袋体12の隅に、空気が残りにくくなり、硬化後の可変パッド10Cがより頑健になる。なお、多孔質フィルム15の形状は、長方形に限らず、例えば、円形や正方形でもよい。
【0071】
また、注入部11と対角の位置の空気排出部13Cと、他の隅の空気排出部13Dとの透気抵抗度を変えてもよい。例えば、空気排出部13Dの1つの孔pに対して、空気排出部13Cは、2つの孔pにすることで、透気抵抗度を低くする。そのため、空気排出部13Dが設置された、袋体12の隅に残った空気を排出すると共に、注入部11から注入された樹脂が、対角方向の空気排出部13Cに達しやすくなる。
【0072】
図13に示すように、可変パッド10Dは、注入部11とは反対側の袋体12の短辺側に、空気排出部13Eを有してもよい。図13に示すように、所定数の孔pの周りに接着部15sを設けてよい。
【0073】
図14に示すように、可変パッド10Eは、袋体12から空気排出部を、注入部11とは反対側の袋体12の短辺側に突出させた、空気排出部以外のシール部sを太くした、空気排出部13Fを有してもよい。
【0074】
また、多孔質フィルム15は、上面シート部材10aの面と、下面シート部材10bとの面に、それぞれ接着して、可変パッドの上面および下面の両面に、空気排出部を設けてもよい。この場合、可変パッドの面の向きを気にせず、可変パッドを施工できる。
【0075】
次に、空気排出部13が形成される位置の変形例について図15Aから図16を用いて説明する。
【0076】
図15Aに示すように、可変パッド20の四角形の袋体22において、空気排出部13が、注入部11と対角の位置でなく、注入部11が形成されている角と隣の角に形成されてもよい。また、図15Aに示すように、空気排出部13が、袋体22に対して対角線方向に伸びるように形成されてもよい。
【0077】
図15Bに示すように、可変パッド20Aの四角形の袋体22Aにおいて、空気排出部13が複数形成されてもよい。例えば、空気排出部13が、四角形の袋体22Aの2カ所の角に形成される。複数の空気排出部13により、空気がより抜けやすくなる。
【0078】
図16に示すように、可変パッド30の四角形の袋体32において、空気排出部13が3カ所形成されてもよい。例えば、図16に示すように、注入部11と、3つの空気排出部13が、袋体32に対して分散されるように形成される。なお、注入部11および空気排出部13が突出する向きは、四角形の袋体32の対角方向でも、対角方向でなくてもよい。
【0079】
なお、上述の空気排出部の各変形例を、図10から図16の可変パッドの変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10、10A、10B、10C、10D、10E、20、20A、30:可変パッド
11:注入部
12:袋体
13、13A、13B、13C、13D、13E、13F:空気排出部
15:多孔質フィルム
p:孔


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16