(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】照明器具、照明制御方法及び照明制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/20 20200101AFI20230707BHJP
【FI】
H05B47/20
(21)【出願番号】P 2019236864
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】上野山 浩志
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-060806(JP,A)
【文献】特開平8-055684(JP,A)
【文献】特開2016-225183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明負荷の制御データを伝送するチャンネルが複数設けられたDMX信号を受信する受信部と、
前記DMX信号における前記制御データの取得対象とする連続するチャンネルが、複数組設定されるアドレス設定部と、
前記受信部が受信した前記DMX信号の、前記アドレス設定部に設定された各組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する取得部と、
前記受信部が前記DMX信号を正常に受信できない受信異常期間において、前記照明負荷の照明状態を、前記取得部が取得した前記各組の連続するチャンネルの前記制御データにそれぞれ対応する状態間で遷移させる遷移制御部と、
を備える照明器具。
【請求項2】
前記アドレス設定部には、前記各組の連続するチャンネルが、先頭のチャンネルを示す先頭アドレスと前記先頭のチャンネルからの連続するチャンネル数を示すアドレス長との組によってそれぞれ設定される請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記DMX信号は、前記連続するチャンネルとして前記アドレス設定部に設定されるチャンネルの選択範囲外に、前記状態間の遷移に費やす所要時間を示す時間データ用の時間設定チャンネルを有しており、前記取得部は、前記受信部が受信した前記DMX信号の前記時間設定チャンネルから前記時間データをさらに取得し、前記遷移制御部は、前記照明負荷の照明状態を、前記取得部が取得した前記時間データが示す前記所要時間を費やして、前記状態間で遷移させる請求項1又は2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記DMX信号は、前記連続するチャンネルとして前記アドレス設定部に設定されるチャンネルの選択範囲外に、前記状態間の遷移パターンを示すパターンデータ用のパターン設定チャンネルを有しており、前記取得部は、前記受信部が受信した前記DMX信号の前記パターン設定チャンネルから前記パターンデータをさらに取得し、前記遷移制御部は、前記照明負荷の照明状態を、前記取得部が取得した前記パターンデータが示す前記遷移パターンにより、前記状態間で遷移させる請求項1~3のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項5】
前記取得部が取得した各データを記憶する記憶部と、前記受信部が、前記受信異常期間以外の正常受信期間において、前記DMX信号を間欠的に繰り返し受信している間、前記受信部が受信した最新の前記DMX信号中の、前記アドレス設定部に設定された各組のうち特定の単一組の前記連続するチャンネルの前記制御データによって、前記照明負荷の照明状態を制御する通常制御部とをさらに備え、前記記憶部は、前記受信部が前記DMX信号を受信する度に、記憶する前記各データを、前記受信部が受信した最新の前記DMX信号中の前記各データに更新する請求項1~4のいずれか1項に記載の照明器具。
【請求項6】
照明負荷の制御データを伝送するチャンネルが複数設けられたDMX信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した前記DMX信号における、前記制御データの取得対象とされた複数組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する取得ステップと、
前記受信ステップにおいて前記DMX信号を正常に受信できない受信異常期間中に、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得した前記各組の連続するチャンネルの前記制御データにそれぞれ対応する状態間で遷移させる遷移制御ステップと、
を含む照明制御方法。
【請求項7】
前記取得ステップにおいて、先頭のチャンネルを示す先頭アドレスと前記先頭のチャンネルからの連続するチャンネル数を示すアドレス長との組によってそれぞれ定義された、前記各組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する請求項6に記載の照明制御方法。
【請求項8】
前記DMX信号は、前記各組の連続するチャンネルの選択範囲外に、前記状態間の遷移に費やす所要時間を示す時間データを伝送する時間設定チャンネルを有しており、前記取得ステップにおいて、前記受信ステップで受信した前記DMX信号の前記時間設定チャンネルから前記時間データをさらに取得させ、前記遷移制御ステップにおいて、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得した前記時間データが示す前記所要時間を費やして、前記状態間で遷移させる請求項6又は7に記載の照明制御方法。
【請求項9】
前記DMX信号は、前記各組の連続するチャンネルの選択範囲外に、前記状態間の遷移パターンを示すパターンデータを伝送するパターン設定チャンネルを有しており、前記取得ステップにおいて、前記受信ステップで受信した前記DMX信号の前記パターン設定チャンネルから前記パターンデータをさらに取得させ、前記遷移制御ステップにおいて、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得した前記パターンデータが示す前記遷移パターンにより、前記状態間で遷移させる請求項6~8のいずれか1項に記載の照明制御方法。
【請求項10】
前記取得ステップにおいて取得した各データを記憶部に記憶させる記憶ステップと、前記受信異常期間以外の正常受信期間中に、前記受信ステップにおいて前記DMX信号を間欠的に繰り返し受信している間、受信した最新の前記DMX信号中の、前記各組の連続するチャンネルのうち特定の単一組の前記連続するチャンネルの前記制御データによって、前記照明負荷の照明状態を制御する通常制御ステップとをさらに含み、前記受信ステップにおいて前記DMX信号を受信する度に、前記記憶ステップにおいて、前記記憶部に記憶させる前記各データを、前記受信ステップにおいて受信した最新の前記DMX信号から前記取得ステップにおいて取得した前記各データに更新する請求項6~9のいずれか1項に記載の照明制御方法。
【請求項11】
コンピュータに、
照明負荷の制御データを伝送するチャンネルが複数設けられたDMX信号を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した前記DMX信号における、前記制御データの取得対象とされた複数組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する取得ステップと、
前記受信ステップにおいて前記DMX信号を正常に受信できない受信異常期間中に、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得した前記各組の連続するチャンネルの前記制御データにそれぞれ対応する状態間で遷移させる遷移制御ステップと、
を実行させる照明制御プログラム。
【請求項12】
前記取得ステップにおいて、コンピュータに、先頭のチャンネルを示す先頭アドレスと前記先頭のチャンネルからの連続するチャンネル数を示すアドレス長との組によってそれぞれ定義された、前記各組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得させる請求項11に記載の照明制御プログラム。
【請求項13】
前記DMX信号は、前記各組の連続するチャンネルの選択範囲外に、前記状態間の遷移に費やす所要時間を示す時間データを伝送する時間設定チャンネルを有しており、コンピュータに、前記取得ステップにおいて、前記受信ステップで受信した前記DMX信号の前記時間設定チャンネルから前記時間データをさらに取得させ、かつ、前記遷移制御ステップにおいて、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得させた前記時間データが示す前記所要時間を費やして、前記状態間で遷移させる請求項11又は12に記載の照明制御プログラム。
【請求項14】
前記DMX信号は、前記各組の連続するチャンネルの選択範囲外に、前記状態間の遷移パターンを示すパターンデータを伝送するパターン設定チャンネルを有しており、コンピュータに、前記取得ステップにおいて、前記受信ステップで受信した前記DMX信号の前記パターン設定チャンネルから前記パターンデータをさらに取得させ、かつ、前記遷移制御ステップにおいて、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得させた前記パターンデータが示す前記遷移パターンにより、前記状態間で遷移させる請求項11~13のいずれか1項に記載の照明制御プログラム。
【請求項15】
コンピュータに、前記取得ステップにおいて取得した各データを記憶部に記憶させる記憶ステップと、前記受信異常期間以外の正常受信期間中に、前記受信ステップにおいて前記DMX信号を間欠的に繰り返し受信している間、受信した最新の前記DMX信号中の、前記各組の連続するチャンネルのうち特定の単一組の前記連続するチャンネルの前記制御データによって、前記照明負荷の照明状態を制御する通常制御ステップとをさらに実行させ、かつ、前記受信ステップにおいて前記DMX信号を受信する度に、前記記憶ステップにおいて、前記記憶部に記憶させる前記各データを、前記受信ステップにおいて受信した最新の前記DMX信号から前記取得ステップにおいて取得した前記各データに更新する請求項11~14のいずれか1項に記載の照明制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具、照明制御方法及び照明制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
照明制御は、屋外屋内を問わず様々な施設において行うことができる。屋外の照明制御は、例えば、公共空間、構造物等を夜間にライトアップする照明設備において行うことができる。屋内の照明制御は、例えば、舞台、イベント会場等の照明設備において行うことができる。これらの照明制御に用いられる通信として、例えば、特許文献1に記載された単方向通信方式のDMX(Digital Multiplex )通信が知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたDMX通信では、複数の照明器具がコントローラにデイジーチェーン接続される。コントローラは、512チャンネルのDMXフレームを有するDMX信号を周期的に出力する。DMX信号は、DMXフレームの各チャンネルにおいて、1バイト、即ち8ビットのデータを伝送する。各照明器具には、互いに異なるチャンネルが割り当てられる。1つの照明器具に割り当てるチャンネルは、連続する複数のチャンネルとすることもできる。コントローラは、DMX信号の各照明器具に割り当てたチャンネルを用いて、対応する照明器具の制御内容に応じたデータを送信する。
【0004】
また、特許文献1に記載されたDMX通信では、各照明器具に、それぞれの照明器具に割り当てられたチャンネルを示すアドレスが設定される。各照明器具は、DMX信号を受信すると、自身に設定されたアドレスに対応するチャンネルのデータを取得し、データに対応する制御内容で自身の照明状態を制御する。照明器具が制御する照明状態は、取得したデータのチャンネル毎に、例えば、光源が発光する照明光の発光強度、色温度、焦点、照射方向等とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DMX通信では、44Hz程度のリフレッシュレートでDMX信号を更新することができる。このため、DMX信号による照明制御では、照明器具の制御内容を高速で変化させて、照明器具による照明を動的に変化させることができる。裏を返すと、照明器具がDMX信号を受信できなくなると、照明器具による照明の動的な変化を継続できなくなる。特に、コントローラと照明器具とを無線で接続する場合は、通信環境の変化により照明器具がDMX信号を受信できなくなるケースが発生し易くなる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、照明器具がDMX信号を受信できなくなっても、照明器具による照明の動的な変化を継続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る照明器具は、照明負荷の制御データを伝送するチャンネルが複数設けられたDMX信号を受信する受信部と、前記DMX信号における前記制御データの取得対象とする連続するチャンネルが、複数組設定されるアドレス設定部と、前記受信部が受信した前記DMX信号の、前記アドレス設定部に設定された各組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する取得部と、前記受信部が前記DMX信号を正常に受信できない受信異常期間において、前記照明負荷の照明状態を、前記取得部が取得した前記各組の連続するチャンネルの前記制御データにそれぞれ対応する状態間で遷移させる遷移制御部と、を備える。
【0009】
本発明の第2の態様に係る照明制御方法は、照明負荷の制御データを伝送するチャンネルが複数設けられたDMX信号を受信する受信ステップと、前記受信ステップにおいて受信した前記DMX信号における、前記制御データの取得対象とされた複数組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する取得ステップと、前記受信ステップにおいて前記DMX信号を正常に受信できない受信異常期間中に、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得した前記各組の連続するチャンネルの前記制御データにそれぞれ対応する状態間で遷移させる遷移制御ステップと、を含む。
【0010】
本発明の第3の態様に係る照明制御プログラムは、コンピュータに、照明負荷の制御データを伝送するチャンネルが複数設けられたDMX信号を受信する受信ステップと、前記受信ステップにおいて受信した前記DMX信号における、前記制御データの取得対象とされた複数組の連続するチャンネルから、前記制御データをそれぞれ取得する取得ステップと、前記受信ステップにおいて前記DMX信号を正常に受信できない受信異常期間中に、前記照明負荷の照明状態を、前記取得ステップにおいて取得した前記各組の連続するチャンネルの前記制御データにそれぞれ対応する状態間で遷移させる遷移制御ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、照明器具がDMX信号を受信できなくなっても、照明器具による照明の動的な変化を継続できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る照明制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1のコントローラ及び照明器具の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の信号出力部から出力されるDMX信号によるDMX通信の通信プロトコルを示す説明図である。
【
図4】
図3のDMX信号のフレーム構成の一例を示す説明図である。
【
図5】
図1のコントローラが
図3のDMX信号の1つのフレームで3つの照明器具に対する制御データを送信する場合を示す説明図である。
【
図6】DMX信号の受信異常期間中の照明器具の照明制御に用いるデータをDMX信号の正常受信期間中に
図4のフレームの空きチャンネルで送信する場合のDMX信号のフレーム構成の一例を示す説明図である。
【
図7】
図5の器具1の照明器具において行われる照明制御方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図6のDMX信号のパターンデータに対応する累乗曲線から時間データの所要時間を費やした照明器具の照明状態の遷移パターンを割り出す過程を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一あるいは同等の部位、又は構成要素には、同一の符号を付している。
【0014】
以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものである。この発明の技術的思想は、各構成要素の材質、形状、構造、配置、機能等を下記のものに特定するものでない。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の照明制御システム1は、系統別の複数の照明器具L11~L1n、L21~L2n、L31~L3nと、コントローラ2とを備える。この照明制御システム1は、屋外屋内を問わず様々な施設において運用することができる。
【0016】
照明器具L11~L1n、L21~L2n、L31~L3n(以下、総称して照明器具Lという場合がある。)は、所定の空間に複数の系統別に配置されている。各照明器具Lはコントローラ2に、DMX信号の伝送路によってデイジーチェーン接続されている。伝送路は、DMX信号を伝送できるものであれば、有線、無線のどちらでもよい。
【0017】
コントローラ2は、DMX信号を各照明器具Lに出力する。DMX信号は、各照明器具Lの照明状態を規定するためのデジタル調光信号の一種である。コントローラ2は、例えば、発光強度、発光色の色温度、照明光の照射角、照射方向等、照明器具Lの照明状態に応じたデータを、DMX信号によって各照明器具Lに伝送することができる。DMX信号のフレーム構成については後述する。
【0018】
次に、コントローラ2及び各照明器具Lの構成について説明する。まず、本実施形態のコントローラ2は、
図2に示すように、信号出力部21、計時部22、記憶部23、制御部24、表示部25、タッチパネル部26及び表示ドライバ部27を有している。
【0019】
信号出力部21は、DMX信号を出力する。DMX信号は、例えば、DMX512Aの通信プロトコルに準拠したフォーマットとすることができる。
図3に示すように、DMX信号Sは、前のフレームFとの間にブレーク期間Bを挟んでフレームFが間欠的に繰り返して配置された信号である。
【0020】
ここで、DMX信号SのフレームFの詳細なフォーマットについて説明する。フレームFは、513のスロットを有している。
図4に示すように、フレームFの先頭のスロットは、DMX信号Sによる制御対象である照明器具Lを定義するスタートコードSCに割り当てられている。また、フレームFの先頭以外の512のスロットは、データ伝送用の512のチャンネルCHに割り当てられている。各チャンネルCHには、先頭のスロット側から順に、1~512のアドレスが割り振られている。
【0021】
DMX信号Sは、各フレームFの512のチャンネルCHにおいて、1バイト、即ち、8ビットずつのデータをそれぞれ送信することができる。各チャンネルCHは、コントローラ2に接続された各照明器具Lに対する制御データ等の伝送に用いることができる。1つのフレームFで複数の照明器具Lに対する制御データを同時に送信することもできる。
【0022】
例えば、
図1に示す系統別の照明器具L11~L1nを器具1、照明器具L21~L2nを器具2、照明器具L31~L3nを器具3として、
図5に示すように、コントローラ2から器具1~3の各照明器具LにDMX信号Sを送信する場合を想定する。この場合、一般的なDMX通信では、コントローラ2から器具1~3の各照明器具Lに送信するDMX信号Sの、互いに異なるアドレスのチャンネルCHを用いて、各照明器具Lに対する制御データD1~D3を1回ずつ送信する。
【0023】
図4に示す例では、フレームFの連続するアドレス5~8の各チャンネルCHで、器具1の照明器具Lに対する4バイトの制御データD1を送信する。また、同じフレームFの連続するアドレス10~15の各チャンネルCHで、器具2の照明器具Lに対する5バイトの制御データD2を送信する。さらに、同じフレームFの連続するアドレス20~30の各チャンネルCHで、器具3の照明器具Lに対する10バイトの制御データD3を送信する。これらの制御データD1~D3は、各照明器具LがDMX信号Sを正常に受信できる正常受信期間中の、各照明器具Lの照明状態の制御に用いられる。
【0024】
DMX512Aの通信プロトコルに準拠する場合、DMX信号Sの最大リフレッシュ周波数は44Hzである。即ち、
図2に示す信号出力部21は、1秒間に最大44回、DMX信号Sの各チャンネルCHにおいて伝送するデータの内容を更新することができる。したがって、各制御データD1~D3は、器具1~3の各照明器具LがDMX信号を正常に受信できる正常受信期間中の、各照明器具Lの照明状態の制御に用いることができる。
【0025】
コントローラ2の構成の説明に話を戻す。
図2に示す計時部22は、クロックパルスを発生して時刻を計測する。計時部22は、例えば、計時専用の独立したIC(集積回路)によって構成することができる。記憶部23は、例えば、各照明器具Lの照明制御のスケジュール情報等を記憶する。記憶部23は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ素子によって構成することができる。
【0026】
制御部24は、各照明器具Lの照明制御の内容に応じたデータを各照明器具Lに対応するチャンネルCHに配置したDMX信号を、信号出力部21から出力させる。制御部24は、例えば、メモリを内蔵したワンチップマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0027】
表示部25及びタッチパネル部26は、コントローラ2のマンマシンインタフェースを構成することができる。表示部25は、表示ドライバ部27により駆動されて、各種の情報等の表示を行う。タッチパネル部26は、表示部25上に表示された操作ボタン等のタッチ操作を検出し、検出信号を制御部24に出力する。
【0028】
次に、本実施形態の各照明器具Lは、照明負荷31、信号受信部32、点灯回路部33、制御部34及び記憶部35を有している。
【0029】
照明負荷31は、例えば、発光色が異なる複数種のLED又は有機EL素子等を組み合わせた光源(図示せず)を有している。光源は調光機能を有している。光源は、調光機能により、RGBWの各発光強度を個別に調整することができる。したがって、光源は、照明光の発光強度及び色温度を、それぞれ調整することができる。
【0030】
また、照明負荷31は、光源が発光する照明光を光学的に加工する光学ユニット(図示せず)をさらに有していてもよい。光学ユニットは、例えば、フォーカス調整機構、チルトパン調整機構等の光路調整機能を有するものとすることができる。光路調整機能を有する光学ユニットは、例えば、照明光の焦点及び照射方向、即ち、フォーカス、チルト及びパンの各角度等を調整することができる。
【0031】
信号受信部32は、コントローラ2の信号出力部21が出力したDMX信号を、DMX信号の伝送路から受信する。点灯回路部33は、商用電源を点灯回路部33で用いられる所定電流の電力に変換する電源部と、電源部で変換された電力を照明負荷31に供給する給電回路部と(いずれも図示せず)を有する。
【0032】
制御部34は、例えば、汎用の照明制御用マイクロコンピュータによって構成することができる。制御部34は、信号受信部32が受信したDMX信号SのフレームFにおける、自身の照明器具Lに対応するチャンネルCHのデータを取得する。また、制御部34は、信号受信部32がDMX信号Sを正常に受信している正常受信中に、取得したデータの一部を用いて、点灯回路部33が照明負荷31に供給する電力を制御する。
【0033】
記憶部35は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ素子によって構成することができる。記憶部35には、DMX信号SのフレームFにおける、制御部34が自身の照明器具Lに対応したデータを取得するチャンネルCHの設定情報が記憶される。
【0034】
例えば、
図5に示す器具1の照明器具Lの記憶部35には、
図4に示す制御データD1を送信するチャンネルCHのアドレス5~8(複数組の連続するチャンネル、特定の単一組の連続するチャンネルに相当)が、設定情報として記憶される。制御データD1の各チャンネルCHのデータは、例えば、器具1の照明器具Lの照明負荷31における、光源のRGBWの各色に対する8ビットの画素値として、照明制御に用いることができる。
【0035】
また、
図5に示す器具2の照明器具Lの記憶部35には、
図4に示す制御データD2を送信するチャンネルCHのアドレス10~15(複数組の連続するチャンネルに相当)が、設定情報として記憶される。制御データD2の各チャンネルCHのデータは、例えば、器具2の照明器具Lの照明負荷31における、光源のRGBWの各色に対する8ビットの画素値、及び、光学ユニットのフォーカス調整機構の制御値として、照明制御に用いることができる。
【0036】
さらに、
図5に示す器具3の各照明器具Lの記憶部35には、
図4に示す制御データD3を送信するチャンネルCHのアドレス20~30(複数組の連続するチャンネルに相当)が、設定情報として記憶される。制御データD3の各チャンネルCHのデータは、例えば、器具3の照明器具Lの照明負荷31における、光源のRGBWの各色に対する8ビットの画素値、光学ユニットのフォーカス調整機構及びチルトパン調整機構の制御値として、照明制御に用いることができる。
【0037】
これらの設定情報は、例えば、各制御データD1~D3に対応する連続するアドレスのうち先頭のアドレスと、先頭のアドレスからの連続するチャンネル数を示すアドレス長との組によって構成してもよい。特に、制御データD1~D3のデータ量が多く、制御データD1~D3を送信するのに多数のチャンネルCHを必要とする場合は、先頭のアドレスとアドレス長との組によって設定情報を構成することで、設定情報のデータ量の増大を抑制することができる。
【0038】
なお、先頭のアドレスとアドレス長との組によって設定情報を構成する場合、制御データD1を送信するチャンネルCHの設定情報は、先頭のアドレス=5と、アドレス長=4とで構成される。制御データD2,D3をそれぞれ送信するチャンネルCHの設定情報は、先頭のアドレス=10,20と、アドレス長=5,10とでそれぞれ構成される。
【0039】
設定情報は、例えば、制御部34に接続した不図示の設定用デバイスから制御部34に入力し、記憶部35に記憶させることができる。設定用デバイスは、例えば、ディップスイッチ等のメカスイッチを利用したものでもよく、ディスプレイを有するタッチパネル等の入力デバイスでもよい。
【0040】
コントローラ2の信号出力部21と照明器具Lの信号受信部32とが、RDM(Remote Device Management)通信プロトコルに対応する仕様である場合は、コントローラ2からの遠隔操作で設定情報を制御部34に入力し、記憶部35に記憶させてもよい。この場合は、DMX信号の伝送路を双方向通信方式のRDM通信の伝送路として利用して、コントローラ2から照明器具LにRDM信号を送信すればよい。
【0041】
コントローラ2は、各照明器具Lに、DMX信号Sを最大リフレッシュ周期毎に間欠的に繰り返し送信する。したがって、コントローラ2が、DMX信号Sの制御データD1~D3の内容を時間の経過と共に変化させることで、各照明器具Lの制御部34が点灯回路部33を介して制御する照明負荷31の照明状態を、動的に変化させることができる。
【0042】
但し、例えば、各照明器具Lがコントローラ2からのDMX信号Sを通信異常により正常に受信できなくなると、制御データD1~D3の内容を時間の経過と共に変化させても、各照明器具Lの制御部34が制御データD1~D3を取得できなくなる。すると、各照明器具Lの制御部34は、予め決めておいたエラー時の照明状態とする制御を行う。
【0043】
エラー時の照明状態は、制御データD1~D3を取得できないので、例えば、消灯、半点灯、全点灯等の静的な照明状態となるのが一般的である。したがって、DMX信号Sを正常に受信できない受信異常期間中の照明器具Lは、照明状態を動的に変化させることができなくなる。なお、DMX信号Sのブレーク期間Bは、DMX信号Sの受信異常期間には含まれない。
【0044】
DMX信号Sの通信異常は、例えば、各照明器具Lをコントローラ2にデイジーチェーン接続するDMXケーブル(図示せず)の接続不良によって生じる可能性がある。また、DMX信号Sの伝送路が無線である場合は、各照明器具Lの信号受信部32による無線のDMX信号Sの受信不良によって、DMX信号Sの通信異常が生じる可能性がある。さらに、有線であるか無線であるかを問わず、DMX信号Sにノイズが重畳されることで、DMX信号Sの通信異常が生じる可能性もある。
【0045】
そこで、本実施形態の照明制御システム1では、フレームFの空きチャンネルCHを利用して、各照明器具Lの照明状態の動的な変化をDMX信号Sの受信異常期間中にも継続するためのデータを、制御データD1~D3と一緒にDMX信号Sで送信する。例えば、
図4に示すDMX信号Sでは、フレームFのアドレス31以降が空きチャンネルCHとなっている。この空きチャンネルCHを利用して、DMX信号Sの受信異常期間中における照明器具Lの照明制御に用いるデータをDMX信号Sの正常受信期間中に送信し、照明器具Lの記憶部35に記憶させておく。
【0046】
図6に示す例では、器具1の照明器具Lについて、1つ目の4バイトの制御データD1と一緒に、フレームFのアドレス35~38の各空きチャンネルCHで、2つ目の4バイトの制御データD4を送信する。また、フレームFの最後に近いアドレス509,510の各空きチャンネルCHで、器具1の照明器具Lの照明状態を遷移させる際に用いる1バイトずつの時間及びパターンの各データD5,D6を、制御データD1~D4と一緒に送信する。
【0047】
このうち、アドレス35~38の各空きチャンネルCHで送信する2つ目の制御データD4は、アドレス5~8のチャンネルCHで送信する1つ目の制御データD1に対応する照明状態とは異なる内容とする。2つ目の制御データD4の各チャンネルCHのデータは、例えば、制御データD1と同じく、器具1の照明器具Lの照明負荷31における、光源のRGBWの各色に対する8ビットの画素値として、照明制御に用いることができる。
【0048】
なお、制御データD1は、器具1の照明器具LがDMX信号を正常に受信できる正常受信期間中に、各照明器具Lの照明状態の制御に用いる。一方、制御データD4は、器具1の照明器具LがDMX信号Sを正常に受信できない受信異常期間中に、制御データD1と一緒に、各照明器具Lの照明状態の制御に用いる。2つの制御データD1,D4は、各照明器具Lの照明状態を1つ目の制御データD1に対応する状態と2つ目の制御データD4に対応する状態との間で遷移させる制御に用いる。
【0049】
また、アドレス509の空きチャンネルCH(時間設定チャンネルに相当)で送信する時間データD5は、照明器具Lの照明状態の遷移に費やす所要時間tを決定するために用いる。時間データD5は、例えば、照明状態の遷移に費やす所要時間tを8ビットで表す値とすることができる。
【0050】
さらに、アドレス510の空きチャンネルCH(パターン設定チャンネルに相当)で送信するパターンデータD6は、制御データD1に対応する状態と制御データD4に対応する状態との間で照明器具Lの照明状態を遷移させるパターンを決定するために用いる。本実施形態では、乗数(n)が異なる複数の累乗曲線(例、Y=X^n)を、遷移パターンの候補としている。そして、各候補の累乗曲線にそれぞれ対応付けた個別のアドレスを、パターンデータD6の値としている。
【0051】
パターンデータD6により、照明状態の遷移パターンとする累乗曲線が特定されたら、制御部34は、特定された累乗曲線の
図8に示すグラフから、所要時間t中の照明状態の遷移パターンを特定することができる。
図8のグラフは、特定された累乗曲線が2.7乗曲線である場合を示している。
【0052】
図8のグラフの縦軸は、制御データD1に対応する状態と制御データD4に対応する状態との一方から他方に照明器具Lの照明状態を遷移させる際の、遷移後の他方の照明状態における照明負荷31の光源の点灯レベルである。
図8のグラフの横軸は、制御データD1に対応する状態と制御データD4に対応する状態との一方から他方に照明器具Lの照明状態が遷移し始めてからの経過時間である。
【0053】
遷移後の照明状態における光源の点灯レベルが100%となる遷移の終了時点は、照明状態の遷移の開始時点から、DMX信号Sのリフレッシュ周期、即ち、DMX信号Sのリフレッシュ周波数の逆数の時間が経過した時点である。例えば、経過時間がt0(0≦t0≦t)の時点における、遷移後の照明状態における光源の点灯レベルは、
図8に示すように、P(t0)%となる(0≦P(t0)≦100)となる。
【0054】
なお、時間データD5の所要時間tがDMX信号Sのリフレッシュ周期よりも短い場合は、制御部34は、所要時間tとリフレッシュ周期との比率に応じて、光源の点灯レベルを調整してもよい。また、DMX信号Sにおいて時間データD5が定義されていない場合は、制御部34は、パターンデータD6により特定された累乗曲線通りの特性で、照明器具Lの照明状態を遷移させてもよい。さらに、DMX信号SにおいてパターンデータD6が定義されていない場合は、制御部34は、例えば、Y=Xの直線による特性で、照明器具Lの照明状態を遷移させてもよい。
【0055】
本実施形態の照明制御システム1では、
図2のコントローラ2が各照明器具Lに、
図6に示すDMX信号Sを、
図4に示すDMX信号Sと同じく最大リフレッシュ周期毎に間欠的に繰り返し送信する。各照明器具Lの照明状態を動的に変化させる場合に、
図2のコントローラ2は、
図6に示すDMX信号Sの制御データD1~D3を、時間の経過と共に変化させる。
【0056】
図6に示すDMX信号Sの制御データD4の内容は、制御データD1の内容と異なっていれば、必ずしも時間の経過と共に変化させなくてもよい。
【0057】
また、本実施形態の照明制御システム1では、
図2の各照明器具Lのうち、
図5の器具1の照明器具Lの記憶部35に、
図6に示すDMX信号Sの2つ目の制御データD4を送信するチャンネルCHのアドレスが、設定情報として記憶される。この設定情報も、制御データD1~D3の設定情報と同じく、例えば、制御データD4に対応する連続するアドレスのうち先頭のアドレスとアドレス長との組によって構成してもよい。先頭のアドレスとアドレス長との組によって設定情報を構成する場合、制御データD4を送信するチャンネルCHの設定情報は、先頭のアドレス=35と、アドレス長=4とで構成される。
【0058】
さらに、
図5の器具1の照明器具Lの記憶部35には、
図6に示すDMX信号Sの時間データD5及びパターンデータD6を送信するチャンネルCHのアドレスの情報も記憶される。これらのアドレス情報は、DMX信号SのフレームFにおける、器具1の照明器具Lの制御部34が自身の照明器具Lに対応したデータを取得するチャンネルCHとして、記憶部35に記憶される。
【0059】
各データD5,D6を送信するチャンネルCHのアドレス情報も、制御データD1~D3の設定情報と同じく、例えば、各データD5,D6にそれぞれ対応するアドレスのうち先頭のアドレスとアドレス長との組によって構成してもよい。先頭のアドレスとアドレス長との組によってアドレス情報を構成する場合、時間データD5を送信するチャンネルCHのアドレス情報は、先頭のアドレス=509と、アドレス長=1とで構成される。パターンデータD6を送信するチャンネルCHのアドレス情報は、先頭のアドレス=510と、アドレス長=1とでそれぞれ構成される。
【0060】
記憶部35に記憶させる各データD4~D6の設定情報又はアドレス情報は、制御データD1~D3の設定情報と同様に、例えば、制御部34に接続した不図示の設定用デバイスから制御部34に入力し、記憶部35に記憶させることができる。また、コントローラ2の信号出力部21と照明器具Lの信号受信部32とが、RDM通信プロトコルに対応する仕様である場合は、コントローラ2からの遠隔操作で各データD4~D6の設定情報又はアドレス情報を制御部34に入力してもよい。
【0061】
次に、コントローラ2がリフレッシュ周期毎に間欠的に繰り返し送信する
図6のDMX信号Sを受信する、器具1の各照明器具Lにおいてそれぞれ行われる、本実施形態に係る照明制御方法について説明する。
図7のフローチャートに示すように、本実施形態の照明制御方法は、受信、取得、記憶、通常制御及び遷移制御の各ステップ(ステップS1~S9)を含んでいる。
【0062】
このうち、ステップS1の受信ステップは、コントローラ2が間欠的に送信する
図6のDMX信号Sを、器具1の各照明器具Lにおいて信号受信部32が受信するステップである。
【0063】
図7のステップS3の取得ステップは、
図6のDMX信号Sの正常受信期間中に、器具1の各照明器具Lにおいて、制御部34が、信号受信部32が受信したDMX信号Sから、データをそれぞれ取得するステップである。このとき、制御部34は、DMX信号Sの、記憶部35に記憶された設定情報及びアドレス情報に対応するアドレスから、データをそれぞれ取得する。
【0064】
図7のステップS5の記憶ステップは、器具1の各照明器具Lにおいて、制御部34が、
図6のDMX信号Sから取得したデータを記憶部35に記憶させるステップである。
【0065】
ここで、制御部34は、DMX信号Sの5~8のアドレスの各チャンネルCHから取得した制御データD1と、35~38のアドレスの各チャンネルCHから取得した制御データD4とを、互いに区別して記憶部35にそれぞれ記憶させる。過去の制御データD1,D4が記憶部35に記憶されている場合は、記憶部35の制御データD1,D4を過去のものから今回取得したものに更新する。
【0066】
また、制御部34は、DMX信号Sの509,510のアドレスの各チャンネルCHから取得した時間データD5及びパターンデータD6を、互いに区別し、かつ、制御データD1,D4とも区別して、記憶部35にそれぞれ記憶させる。
【0067】
図7のステップS7の通常制御ステップは、
図6のDMX信号Sの正常受信期間中に、器具1の各照明器具Lにおいて、制御部34が、記憶部35に記憶された最新の制御データD1により、照明器具Lの照明負荷31の照明状態を制御するステップである。この通常制御ステップは、器具1の各照明器具Lにおいて、信号受信部32がDMX信号Sを正常に受信できない受信異常期間中は実行されない。
【0068】
図7のステップS9の遷移制御ステップは、
図6のDMX信号Sの受信異常期間中に、器具1の各照明器具Lにおいて、制御部34が、記憶部35に記憶された最新の制御データD1,D4により、照明器具Lの照明負荷31の照明状態を制御するステップである。
【0069】
ここで、制御部34は、記憶部35に記憶された最新の時間データD5及びパターンデータD6の内容に応じて、照明状態の遷移の所要時間t、照明状態の遷移パターンを決定し、決定した内容で、器具1の照明器具Lの照明状態を遷移させる。これにより、
図6のDMX信号Sを正常に受信できなくなっても、器具1の照明器具Lの照明状態が動的に変化する状態を継続することができる。この通常制御ステップは、器具1の各照明器具Lにおいて、信号受信部32がDMX信号Sを正常に受信できる正常受信期間中は実行されない。
【0070】
以上の説明からも明らかなように、本実施形態の照明制御システム1では、
図7のステップS1の処理を実行することで、第2の態様に係る照明制御方法及び第3の態様に係る照明制御プログラムにおける受信ステップが実現される。即ち、
図7のステップS1は、第1の態様に係る照明器具の受信部に対応する処理となっている。
【0071】
また、本実施形態では、
図7のステップS3の処理を実行することで、第2の態様に係る照明制御方法及び第3の態様に係る照明制御プログラムにおける取得ステップが実現される。即ち、
図7のステップS3は、第1の態様に係る照明器具の取得部に対応する処理となっている。
【0072】
さらに、本実施形態では、
図7のステップS5の処理を実行することで、第2の態様に係る照明制御方法及び第3の態様に係る照明制御プログラムにおける記憶ステップが実現される。そして、
図7のステップS5において、
図6のDMX信号Sから取得したデータを記憶させる記憶部35が、第1の態様に係る照明器具の記憶部に相当している。
【0073】
また、本実施形態では、
図7のステップS7の処理を実行することで、第2の態様に係る照明制御方法及び第3の態様に係る照明制御プログラムにおける通常制御ステップが実現される。即ち、
図7のステップS7は、第1の態様に係る照明器具の通常制御部に対応する処理となっている。
【0074】
さらに、本実施形態では、
図7のステップS9の処理を実行することで、第2の態様に係る照明制御方法及び第3の態様に係る照明制御プログラムにおける遷移制御ステップが実現される。即ち、
図7のステップS9は、第1の態様に係る照明器具の遷移制御部に対応する処理となっている。
【0075】
以上に説明した照明制御システム1では、コントローラ2が各照明器具Lに、正常受信期間中の照明制御に用いる制御データD1~D3と一緒に、受信異常期間中の器具1の照明制御に用いる制御データD4を、DMX信号Sによって送信する。また、正常受信期間中にDMX信号Sを受信した器具1の照明器具Lの制御部34が、制御データD1,D4を取得して記憶部35に記憶する。そして、受信異常期間中に、制御部34が、照明器具Lの照明状態を、記憶部35の制御データD1,D4に対応する状態間で遷移させる。制御データD1,D4の内容が互いに異なるので、制御データD1,D4に対応する状態間で照明器具Lの照明状態を遷移させると、照明器具Lの照明状態は動的に変化する。
【0076】
このため、制御データD1の内容が変化するDMX信号Sを信号受信部32が間欠的に繰り返して受信することができなくても、制御部34が照明負荷31を制御データD1,D4に対応する状態間で遷移させて、照明状態を動的に変化させることができる。したがって、DMX信号Sの受信異常期間中にも、正常受信期間中と同様に、照明負荷31の照明状態を動的に変化させることができる。
【0077】
また、本実施形態の照明制御システム1では、器具1の照明器具Lの記憶部35に記憶させる制御データD1,D4の設定情報を、対応するチャンネルCHの先頭アドレス及びアドレス長の組とした。このため、制御データD1,D4のデータ量が多く、制御データD1,D4を送信するのに多数のチャンネルCHを必要とする場合は、先頭のアドレスとアドレス長との組によって設定情報を構成することで、設定情報のデータ量の増大を抑制することができる。
【0078】
なお、器具1の照明器具Lの記憶部35に記憶させる時間データD5及びパターンデータD6のアドレス情報についても、対応するチャンネルCHの先頭アドレス及びアドレス長の組としたので、制御データD1,D4の設定情報と同様の効果を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態の照明制御システム1では、制御データD4と一緒に、受信異常期間中に器具1の照明器具Lの照明状態を遷移させる際の所要時間t及び遷移パターンを定義する時間データD5及びパターンデータD6を、DMX信号Sによって送信する。また、正常受信期間中にDMX信号Sを受信した器具1の照明器具Lの制御部34が、制御データD1,D4と一緒に時間データD5及びパターンデータD6を取得して記憶部35に記憶する。そして、受信異常期間中に、制御部34が、記憶部35の時間データD5及びパターンデータD6に対応する所要時間t及び遷移パターンで、照明器具Lの照明状態を遷移させる。
【0080】
このため、受信異常期間中に器具1の照明器具Lの照明状態を遷移させる際の照明状態の遷移に費やす所要時間t及び遷移パターンを設定できる自由度を持たせて、受信異常期間における照明状態の動的な変化のバリエーションを増やすことができる。
【0081】
なお、時間データD5及びパターンデータD6のうちいずれか一方又は両方を、DMX信号Sによって送信する対象から除外してもよい。
【0082】
また、本実施形態の照明制御システム1では、正常受信期間中に器具1の照明器具Lの信号受信部32がDMX信号Sを受信する度に、照明負荷31の照明状態の制御に用い、かつ、制御部34が制御データD1を取得して記憶部35に記憶させた。そして、受信異常期間中に、制御データD4と一緒に、制御部34の制御により照明器具Lの照明状態を遷移させるために用いるようにした。
【0083】
このため、正常受信期間中に照明器具Lの照明状態を動的に変化させるために用いる制御データD1を、さらに、受信異常期間中に照明器具Lの照明状態を動的に変化させるために有効活用することができる。
【0084】
そして、以上に説明した実施形態によって、以下に示す各態様の発明が開示される。
【0085】
まず、第1の態様による発明として、受信部32、アドレス設定部35、取得部34及び遷移制御部34を備える照明器具Lが開示される。
【0086】
ここで、受信部32は、照明負荷31の制御データD1~D4を伝送するチャンネルCHが複数設けられたDMX信号Sを受信する。アドレス設定部35には、DMX信号Sにおける制御データD1,D4の取得対象とする連続するチャンネルCHが、複数組設定される。取得部34は、受信部32が受信したDMX信号Sの、アドレス設定部35に設定された各組の連続するチャンネルCHから、制御データD1,D4をそれぞれ取得する。遷移制御部34は、照明負荷31の照明状態を、取得部34が取得した各組の連続するチャンネルCHの制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で遷移させる。遷移制御部34は、受信部32がDMX信号Sを正常に受信できない受信異常期間において、照明負荷31の照明状態を遷移させる。
【0087】
また、第2の態様による発明として、受信ステップS1、取得ステップS3及び遷移制御ステップS9を含む照明制御方法が開示される。さらに、第3の態様による発明として、コンピュータに、受信ステップS1、取得ステップS3及び遷移制御ステップS9を実行させる照明制御プログラムが開示される。
【0088】
ここで、受信ステップS1では、照明負荷31の制御データD1~D4を伝送するチャンネルCHが複数設けられたDMX信号Sを受信する。取得ステップS3では、受信ステップS1において受信したDMX信号Sにおける、制御データD1,D4の取得対象とされた複数組の連続するチャンネルCHから、制御データD1,D4をそれぞれ取得する。遷移制御ステップS9では、照明負荷31の照明状態を、取得ステップS3において取得した各組の連続するチャンネルCHの制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で遷移させる。この遷移は、受信ステップS1においてDMX信号Sを正常に受信できない受信異常期間中に行う。
【0089】
第1~第3の態様による発明では、DMX信号Sを正常に受信できない受信異常期間になると、DMX信号Sから取得部34が取得した各制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で、照明負荷31の照明状態が遷移される。よって、制御データD1の内容が変化するDMX信号Sを受信部32が間欠的に繰り返して受信することができなくても、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間での遷移により、遷移制御部34が照明負荷31の照明状態を動的に変化させることができる。したがって、DMX信号Sの受信異常期間中にも、正常受信期間中と同様に、遷移制御部34により照明負荷31の照明状態を動的に変化させることができる。
【0090】
また、受信部32がDMX信号Sを正常に受信できなくなった場合だけでなく、各照明器具Lに対するコントローラ2の接続を外した後でも、遷移制御部34が照明負荷31の照明状態を動的に変化させることができる。このため、DMX信号Sを送信するために配線を張り巡らさなくても、照明負荷31の照明状態が動的に変化するシステムを実現することができる。
【0091】
なお、第1の態様による発明の照明器具Lにおいて、アドレス設定部35には、各組の連続するチャンネルCHが、先頭アドレスとアドレス長との組によってそれぞれ設定されていてもよい。ここで、先頭アドレスは、例えば、先頭のチャンネルCHを示すアドレスとすることができる。また、アドレス長は、例えば、先頭のチャンネルCHからの連続するチャンネル数とすることができる。
【0092】
また、第2の態様による発明の照明制御方法では、取得ステップS3において、制御データD1,D4をそれぞれ取得する各組の連続するチャンネルCHは、先頭アドレスとアドレス長との組によってそれぞれ定義されてもよい。ここで、先頭アドレスは、例えば、先頭のチャンネルCHを示す先頭アドレスとすることができる。また、アドレス長は、例えば、先頭のチャンネルCHからの連続するチャンネル数とすることができる。第3の態様による発明の照明制御プログラムについても同様である。
【0093】
制御データD1,D4のデータ量が多く、制御データD1,D4を送信するのに多数のチャンネルCHを必要とする場合は、先頭のアドレスとアドレス長との組によって設定情報を構成することで、設定情報のデータ量の増大を抑制することができる。
【0094】
さらに、第1の態様による発明の照明器具Lにおいて、DMX信号Sは、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間の遷移に費やす所要時間tを示す時間データD5用の時間設定チャンネルCHを有していてもよい。時間設定チャンネルCHは、例えば、連続するチャンネルCHとしてアドレス設定部35に設定されるチャンネルCHの選択範囲外のチャンネルCHに配置されていてもよい。DMX信号Sが時間データD5用の時間設定チャンネルCHを有する場合、取得部34は、受信部32が受信したDMX信号Sの時間設定チャンネルCHから時間データD5をさらに取得してもよい。また、遷移制御部34は、照明負荷31の照明状態を、取得部34が取得した時間データD5が示す所要時間tを費やして、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で遷移させてもよい。
【0095】
また、第2の態様による発明の照明制御方法において、DMX信号Sは、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間の遷移に費やす所要時間tを示す時間データD5用の時間設定チャンネルCHを有していてもよい。時間設定チャンネルCHは、例えば、各組の連続するチャンネルCHの選択範囲外のチャンネルCHに配置されていてもよい。
【0096】
DMX信号Sが時間データD5用の時間設定チャンネルCHを有する場合、取得ステップS3において、受信ステップS1で受信したDMX信号Sの時間設定チャンネルCHから時間データD5をさらに取得させてもよい。また、遷移制御ステップS9において、照明負荷31の照明状態を、取得ステップS3において取得した時間データD5が示す所要時間tを費やして、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で遷移させてもよい。第3の態様による発明の照明制御プログラムについても同様である。
【0097】
第1~第3の態様による発明で、DMX信号Sの時間設定チャンネルCHから時間データD5をさらに取得すると、受信異常期間において照明負荷31の照明状態を遷移させる際に費やす所要時間tを、時間データD5によって設定することができる。このため、照明状態の遷移に費やす所要時間tを設定できる自由度を持たせて、受信異常期間における照明状態の動的な変化のバリエーションを増やすことができる。
【0098】
さらに、第1の態様による発明の照明器具Lにおいて、DMX信号Sは、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間の遷移パターンを示すパターンデータD6用のパターン設定チャンネルCHを有していてもよい。パターン設定チャンネルCHは、例えば、連続するチャンネルCHとしてアドレス設定部35に設定されるチャンネルCHの選択範囲外のチャンネルCHに配置されていてもよい。
【0099】
DMX信号SがパターンデータD6用の時間設定チャンネルCHを有する場合、取得部34は、受信部32が受信したDMX信号Sの時間設定チャンネルCHからパターンデータD6をさらに取得してもよい。また、遷移制御部34は、照明負荷31の照明状態を、パターンデータD6が示す遷移パターンにより、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で遷移させてもよい。
【0100】
また、第2の態様による発明の照明制御方法において、DMX信号Sは、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間の遷移パターンを示すパターンデータD6を伝送するパターン設定チャンネルCHを有していてもよい。時間設定チャンネルCHは、例えば、各組の連続するチャンネルCHの選択範囲外のチャンネルCHに配置されていてもよい。
【0101】
DMX信号SがパターンデータD6用の時間設定チャンネルCHを有する場合、取得ステップS3において、受信ステップS1で受信したDMX信号Sのパターン設定チャンネルCHからパターンデータD6をさらに取得させてもよい。また、遷移制御ステップS9において、照明負荷31の照明状態を、取得ステップS3において取得したパターンデータD6が示す遷移パターンにより、制御データD1,D4にそれぞれ対応する状態間で遷移させてもよい。第3の態様による発明の照明制御プログラムについても同様である。
【0102】
第1~第3の態様による発明で、DMX信号Sのパターン設定チャンネルCHからパターンデータD6をさらに取得すると、受信異常期間において照明負荷31の照明状態を遷移させる際のパターンを、パターンデータD6の遷移パターンにすることができる。このため、照明状態の遷移パターンを設定できる自由度を持たせて、受信異常期間における照明状態の動的な変化のバリエーションを増やすことができる。
【0103】
さらに、第1の態様による発明の照明器具Lにおいて、記憶部35と通常制御部34とをさらに備える構成としてもよい。記憶部35は、取得部34が取得した各データD1~D6を記憶するものとすることができる。また、通常制御部34は、受信異常期間以外の正常受信期間において、受信部32がDMX信号Sを間欠的に繰り返し受信している間、照明負荷31の照明状態を制御するものとすることができる。
【0104】
ここで、通常制御部34は、受信部32が受信した最新のDMX信号S中の、アドレス設定部35に設定された各組のうち特定の単一組の連続するチャンネルCHの制御データD1によって、照明負荷31の照明状態を制御してもよい。また、記憶部35は、受信部32がDMX信号Sを受信する度に、記憶する各データD1~D6を、受信部32が受信した最新のDMX信号S中の各データD1~D6に更新してもよい。
【0105】
また、第2の態様による発明の照明制御方法において、記憶ステップS5と通常制御ステップS7とをさらに含むものとしてもよい。ここで、記憶ステップS5は、例えば、取得ステップS3において取得した各データD1~D6を記憶部35に記憶させるものとすることができる。また、通常制御ステップS7は、例えば、受信異常期間以外の正常受信期間中に、受信ステップS1においてDMX信号Sを間欠的に繰り返し受信している間、照明負荷31の照明状態を制御するものとすることができる。
【0106】
このとき、照明負荷31の照明状態は、例えば、受信ステップS1において受信した最新のDMX信号S中の、各組の連続するチャンネルCHのうち特定の単一組の連続するチャンネルCHの制御データD1によって制御することができる。なお、受信ステップS1においてDMX信号Sを受信する度に、記憶ステップS5において記憶部35に記憶させる各データD1~D6を、受信した最新のDMX信号Sから取得した各データD1~D6に更新してもよい。
【0107】
第1~第3の態様による発明で、正常受信期間中の照明器具Lの照明制御に用いる制御データD1を記憶部35に記憶させると、受信異常期間中に、照明器具Lの照明状態を遷移させるのに必要な2つの制御データD1,D4のうち1つとして用いることができる。したがって、正常受信期間中に照明器具Lの照明状態を動的に変化させるために用いる制御データD1を、さらに、受信異常期間中に照明器具Lの照明状態を動的に変化させるために有効活用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 照明制御システム
2 コントローラ
21 信号出力部
22 計時部
23 記憶部
24 制御部
25 表示部
26 タッチパネル部
27 表示ドライバ部
31 照明負荷
32 信号受信部(受信部)
33 点灯回路部
34 制御部(取得部、遷移制御部、通常制御部)
35 記憶部(アドレス設定部)
B ブレーク期間
CH チャンネル(時間設定チャンネル、パターン設定チャンネル)
D1~D4 制御データ
D5 時間データ
D6 パターンデータ
F フレーム
L,L11~L1n,L21~L2n,L31~L3n 照明器具
S DMX信号
t 所要時間