(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ギヤードモータの駆動制御機構
(51)【国際特許分類】
H02K 7/102 20060101AFI20230707BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20230707BHJP
F16D 55/06 20060101ALI20230707BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20230707BHJP
F16D 121/22 20120101ALN20230707BHJP
F16D 129/04 20120101ALN20230707BHJP
F16D 129/06 20120101ALN20230707BHJP
F16D 127/02 20120101ALN20230707BHJP
【FI】
H02K7/102
H02K7/116
F16D55/06 A
F16D65/16
F16D121:22
F16D129:04
F16D129:06
F16D127:02
(21)【出願番号】P 2019045160
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】397001396
【氏名又は名称】ツカサ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博之
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 晃男
(72)【発明者】
【氏名】浦島 佳吾
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159837(JP,A)
【文献】特開2002-267578(JP,A)
【文献】特開昭55-142130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/102
H02K 7/116
F16D 55/06
F16D 65/16
F16D 121/22
F16D 127/02
F16D 129/04
F16D 129/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータ及び当該電動モータの駆動軸を入力軸とする変速部を一体化して形成されるギヤードモータと、前記変速部の出力軸における制動を制御するブレーキ手段とを備えるギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段が、前記電動モータの駆動軸に固着され、当該駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵する回転部と、当該回転部の内側に配設され、前記電動モータのケースに固着される磁性体からなる固定部とを備え、当該回転部若しくは固定部のいずれかの磁性体が永久磁石で形成され
、かつ、前記回転部の磁性体と前記固定部の磁性体との間に生じる磁界による吸引力及び前記回転部と前記固定部との間に作用する接触抵抗で前記回転部を停止させてブレーキ状態とし、前記回転部の回転により発生する遠心力で前記回転部の磁性体を前記固定部の磁性体から離反させて前記ブレーキ状態を解除することを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項2】
前記請求項1に記載のギヤードモータの駆動制御機構において、
前記電動モータの駆動軸の一端側を前記変速部の入力軸とし、前記駆動軸の他端側に前記ブレーキ手段の回転部が固着されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段の回転部が、電動モータの駆動軸に対して軸対称に一対若しくは複数対の磁性体を摺動自在に内蔵することを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段の回転部が、磁性体を摺動自在に収納する収納部の中心軸を、電動モータの駆動軸のラジアル方向に対して偏移して形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載のギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段の回転部が、磁性体を摺動自在に収納する収納部を、収納する磁性体におけるラジアル方向側の左右面との間に間隙を形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項6】
前記請求項1ないし5のいずれかに記載のギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の側面のうち、前記固定部に対向する側面におけるタンジェンシャル方向の一方又は両方の角部を切欠いて形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項7】
前記請求項1ないし6のいずれかに記載のギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の重心をラジアル方向における回転外周側にシフトさせて形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項8】
電動モータ及び当該電動モータの駆動軸を入力軸とする変速部を一体化して形成されるギヤードモータと、前記変速部の出力軸における制動を制御するブレーキ手段とを備えるギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段が、前記電動モータの駆動軸に固着され、当該駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵する回転部と、当該回転部の内側に配設され、前記電動モータのケースに固着される磁性体からなる固定部とを備え、当該回転部若しくは固定部のいずれかの磁性体が永久磁石で形成され、
前記ブレーキ手段の回転部が、磁性体を摺動自在に収納する収納部の中心軸を、電動モータの駆動軸のラジアル方向に対して偏移して形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項9】
電動モータ及び当該電動モータの駆動軸を入力軸とする変速部を一体化して形成されるギヤードモータと、前記変速部の出力軸における制動を制御するブレーキ手段とを備えるギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段が、前記電動モータの駆動軸に固着され、当該駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵する回転部と、当該回転部の内側に配設され、前記電動モータのケースに固着される磁性体からなる固定部とを備え、当該回転部若しくは固定部のいずれかの磁性体が永久磁石で形成され、
前記ブレーキ手段の回転部が、磁性体を摺動自在に収納する収納部を、収納する磁性体におけるラジアル方向側の左右面との間に間隙を形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項10】
電動モータ及び当該電動モータの駆動軸を入力軸とする変速部を一体化して形成されるギヤードモータと、前記変速部の出力軸における制動を制御するブレーキ手段とを備えるギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段が、前記電動モータの駆動軸に固着され、当該駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵する回転部と、当該回転部の内側に配設され、前記電動モータのケースに固着される磁性体からなる固定部とを備え、当該回転部若しくは固定部のいずれかの磁性体が永久磁石で形成され、
前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の側面のうち、前記固定部に対向する側面におけるタンジェンシャル方向の一方又は両方の角部を切欠いて形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【請求項11】
電動モータ及び当該電動モータの駆動軸を入力軸とする変速部を一体化して形成されるギヤードモータと、前記変速部の出力軸における制動を制御するブレーキ手段とを備えるギヤードモータの駆動制御機構において、
前記ブレーキ手段が、前記電動モータの駆動軸に固着され、当該駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵する回転部と、当該回転部の内側に配設され、前記電動モータのケースに固着される磁性体からなる固定部とを備え、当該回転部若しくは固定部のいずれかの磁性体が永久磁石で形成され、
前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の重心をラジアル方向における回転外周側にシフトさせて形成されることを
特徴とするギヤードモータの駆動制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと変速部とを一体化したギヤードモータの制御ブレーキ手段により制御するギヤードモータの駆動制御機構に関し、特にこのブレーキ手段を改良したギヤードモータの駆動制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のギヤードモータの駆動制御機構として、電磁力等の磁気的手段により制動制御を行うもの、又はスプロケットやベルト等の機械的手段により制動を行うものが多数存在する。前記磁気的手段による制動制御としては、特許文献1,2に開示されるものがあり、また、機械的手段による制動制御としては、特許文献3,4に開示されるものがある。
【0003】
この特許文献1に開示されるギヤードモータの駆動制御機構は、ブレーキコイルに通電しない状態ではコイルばねの力によりブレーキディスクがアーマチュアとサイドプレートに押し付けられて拘束され、他方ブレーキコイルに通電すると磁気吸引力によってアーマチュアがフィールドに吸着されてブレーキディスクが回動自在となりブレーキを開放するように構成される。このブレーキディスクは、磁性歯が内周に設けられ、磁性歯が空隙とキャンを介して永久磁石が対向配設されて磁気的に結合している。このブレーキコイルに通電すると磁気吸引力によってアーマチュアがフィールドに吸着され、ブレーキコイルが回転自在となってブレーキを開放する。
【0004】
また、特許文献2に開示されるギヤードモータの駆動制御機構は、電磁コイルと圧縮バネとで制動力を発生させ、無励磁状態の非通電時に圧縮バネのバネ力でアーマチュアをロータに圧接してアーマチュアと固定プレートとの間でロータを挟持してブレーキ作動を行い、他方励磁状態の通電時にアーマチュアを吸着してロータから引き離してブレーキ作動を解除するものである。
【0005】
また、特許文献3に開示されるギヤードモータの駆動制御機構は、シャッターカーテン等の巻取軸とスプロケットホイールとが一体化された回転部材で形成されるラチェットギヤの歯に係合することにより制御する構成である。
【0006】
さらに、特許文献4に開示されるギヤードモータの駆動制御機構は、可撓性カーテンの落下防止保護装置として用いられ、この可撓性カーテンの駆動シャフトに固着されるプーリにバンドブレーキを接触させて制御する構成である。
【0007】
さらにまた、特許文献5に開示されるギヤードモータの駆動制御機構は、シャッターの巻取シャフトと電動モータとの間に駆動連結機構として配設され、巻取シャフトの内部空間内に収容されており、巻取シャフトとモーターシャフトをスプリングの弾性力により連結すべく構成される。駆動連結機構には、巻取シャフトの内径と略同一の外径を有する第一軸が設けられており、第一軸と固定帯が巻取シャフトを挟んで連結されることで、第一軸が巻取シャフトに対して連結される構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-144852
【文献】特開2007-77719
【文献】特開2010-189913
【文献】特表2013-500413
【文献】特開2010-24752
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の各ギヤードモータの駆動制御機構は、以上のように構成されていたことから、いずれも外部から制御の信号若しくは駆動力を入力しなければ駆動範囲の始点から終点までの間で停止し且つこの停止状態の維持及びこの停止状態からの始動を円滑且つ確実に実行できないという課題を有していた。
【0010】
特に、特許文献1に記載のギヤードモータの駆動制御機構は、電動モータを駆動する電流に加えて、ブレーキコイルを励磁する電流を供給しなければならず、消費電流が大きくなり、特に始動時にコイルばねの力及び永久磁石の磁力に抗した磁気吸引力を生じる電流量を必要とするという課題を有していた、
【0011】
また、特許文献2に記載のギヤードモータの駆動制御機構は、前記特許文献1と同様に電動モータの駆動電流の他に電磁コイルを励磁する電流を別途に供給しなければならず、制御動作が複雑化し、消費電流も増大するという課題を有していた。
【0012】
さらに、特許文献3ないし5に記載の各ギヤードモータの駆動制御機構は、いずれも機械的な構成を複雑化させ、装置の製造コストを低減できないという課題を有していた。
【0013】
本発明は前記各課題を解消するためになされたものであり、電動モータの回転出力を変速部で減速してギヤードモータの駆動力として出力し、この駆動力を駆動範囲の始点から終点までの間で停止動作を実行し、この停止動作を維持し、且つこの停止状態から始動する各動作を、電動モータの駆動入力以外の外力を付与することなく円滑且つ確実に実行できるギヤードモータの駆動制御機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るギヤードモータの駆動制御機構は、電動モータ及び当該電動モータの駆動軸を入力軸とする変速部を一体化して形成されるギヤードモータと、前記変速部の出力軸における制動を制御するブレーキ手段とを備えるギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段が、前記電動モータの駆動軸に固着され、当該駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵する回転部と、当該回転部の内側に配設され、前記電動モータのケースに固着される磁性体からなる固定部とを備え、当該回転部若しくは固定部のいずれかの磁性体が永久磁石で形成されるものである。
【0015】
このように本発明においては、ギヤードモータを変速部と一体的に形成する電動モータの駆動軸に固着される回転部がこの駆動軸のラジアル方向に摺動自在に移動する磁性体を内蔵して形成され、この回転部の内側で電動モータのケースに固着される固定部が磁性体から形成されこの回転部と固定部との各磁性体のいずれかを永久磁石として形成するブレーキ手段としているので、電動モータに駆動電流を供給する制御のみで回転部の磁性体に対して電動モータの回転速度に応じた遠心力を加えて固定部から離反・吸着を制御できることとなり、電動モータの駆動範囲の始点から終点での起動・停止及びこの始点から終点までの間での停止・停止維持・再始動の各動作を極めて簡略な機構構成で円滑且つ確実に実行できるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係るギヤードモータの駆動制御機構は、必要に応じて、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記電動モータの駆動軸の一端側を前記変速部の入力軸とし、前記駆動軸の他端側に前記ブレーキ手段の回転部が固着されるものである。
【0017】
このように本発明においては、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記電動モータの駆動軸の一端側を前記変速部の入力軸とし、前記駆動軸の他端側に前記ブレーキ手段の回転部が固着されることから、ぎやーどモータからの出力である変速部による大きなトルク出力の制御を電動モータからの拘束回転で小さなトルク出力の駆動軸に対してブレーキ手段が駆動制御できることとなり、極力簡易な機械構成で起動・停止及び停止状態維持の各動作を円滑且つ確実に実行できるという効果を有する。
【0018】
本発明に係るギヤードモータの駆動制御機構は、必要に応じてギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、電動モータの駆動軸に対して軸対称に一対若しくは複数対の磁性体を摺動自在に内蔵するものである。
【0019】
このように本発明においては、ギヤードモータの駆動制御機構は、必要に応じてギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、電動モータの駆動軸に対して軸対称に一対若しくは複数対の磁性体を摺動自在に内蔵するように構成されることから、電動モータの駆動軸をラジアル方向に対を成す一又は複数対の永久磁石の磁力で挟持できることとなり、極力簡易な機械構成で起動・停止及び停止状態維持の各動作を円滑且つ確実に実行できるという効果を有する。
【0020】
本発明に係るギヤードモータの駆動制御機構は必要に応じて、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、磁性体を摺動自在に収納する収納部を、収納する磁性体におけるラジアル方向側の左右面との間に間隙を形成されるものである。
【0021】
このように本発明においては、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、磁性体を摺動自在に収納する収納部を、収納する磁性体におけるラジアル方向側の左右面との間に間隙を形成されることから、駆動範囲での始点及びこの中間における指導・再始動時に回転部に収納される磁性体が収納部内の間隙で微小回転して始動・再始動時の始動エネルギーを抑制できりこととなり、極力簡易な機械構成で起動・停止及び停止状態維持の各動作を円滑且つ確実に実行できるという効果を有する。
【0022】
本発明に係るギヤードモータの駆動制御機構は必要時応じて、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の側面のうち、前記固定部に対向する側面におけるタンジェンシャル方向の一方又は両方の角部を切欠いて形成されるものである。
【0023】
このように本発明においては、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の側面のうち、前記固定部に対向する側面におけるタンジェンシャル方向の一方又は両方の角部を切欠いて形成されることから、駆動範囲での始点及びこの中間における指導・再始動時に回転部に収納される磁性体が収納部内の間隙で微小回転して始動・再始動時の始動エネルギーを抑制できりこととなり、極力簡易な機械構成で起動・停止及び停止状態維持の各動作を円滑且つ確実に実行できるという効果を有する。
【0024】
本発明に係るギヤードモータの駆動制御機構は必要に応じて、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の重心をラジアル方向における回転外周側にシフトさせて形成されるものである。
【0025】
このように本発明においては、ギヤードモータの駆動制御機構において、前記ブレーキ手段の回転部が、摺動自在に移動する磁性体の重心をラジアル方向における回転外周側にシフトさせて形成されることから、電動モータの回転速度に応じてより大きな遠心力を回転部の磁性体に対して生じさせることができることから、この磁性体を固定部からの始動後の離反動作をより迅速且つ確実に実行できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構を自動昇降カーテンに適用した場合の全体斜視図である。
【
図2】
図1に記載のギヤードモータの駆動制御機構におけるギヤードモータの部分断面図である。
【
図3】
図2に記載のギヤードモータの駆動制御機構におけるブレーキ手段の正面図及び当該正面図におけるA-A線断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構におけるブレーキ手段の正面図及びその動作態様図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構におけるブレーキ手段の正面図及びその動作態様図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構におけるブレーキ手段の鉄片の各拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構を自動昇降カーテンに適用した場合について
図1ないし
図3に基づいて説明する。
前記各図において本実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構は、昇降カーテン100における昇降動作の駆動に要する回転力を生じさせる電動モータ1と、この電動モータ1における駆動軸11の一端側11aを入力軸21として回転力の速度を減速し、この減速した回転力を出力軸22から昇降用カーテン100の昇降動作に対応するトルクを生じさせる変速部2と、前記電動モータ1における駆動軸11の他端側11bに配設され、前記変速部2の出力軸22における制動を制御するブレーキ手段3とを備え、このブレーキ手段3が、電動モータ1の駆動軸11に固着され、この駆動軸11のラジアル方向(半径方向)に摺動自在に移動する磁性体からなる鉄片32を内蔵する回転部30と、この回転部30の内側に配設され、前記電動モータ1のケース10に固着される永久磁石33からなる固定部31とを備える構成である。
【0028】
前記回転部30は、非磁性材の円盤状体からなり、この円板状体の中心から放射状に等間隔(各90°)で配設される両端を開放された複数の筒状体からなる収納部34を備え、この各収納部34に前記対応する鉄片32を各々内蔵する構成である。また、前記回転部30は、円板状体の中心を電動モータ1の駆動軸11に軸支され、駆動軸11の回動に伴って回動するように固着される構成である。
【0029】
前記固定部31は、前記回転部30と同心円のドーナツ形状からなり、外周縁部と内周円部との極性を異ならせた永久磁石33を回転部30の各収納部34に対向して配設し、この永久磁石33の外周表面に非磁性材で形成されるシール部35を被着して形成される。このシール部35は、樹脂材等の接触抵抗が大きい材料で形成することが望ましく、前記各収納部34内を摺動自在に移動する鉄片32との吸着・離反の各動作を円滑にできる構成となる。
【0030】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構を昇降カーテン100を自動的に動作させる制御動作について説明する。
まず、昇降カーテン100を自動的に動作させる制御動作について説明する。
【0031】
まず、昇降カーテン100が開放状態にある場合は、カーテン下端部103が駆動範囲Wの最上部100Hに位置し、電動モータ1への電流供給がなく停止状態であり、且つブレーキ手段3の回転部30における鉄片32が固定部31の永久磁石33の磁界により吸引され、この鉄片32シール部35を介して永久磁石33に吸着固定して電動モータ1の回動を阻止して昇降カーテン100の開放状態を維持している。
【0032】
この昇降カーテン100による開放状態にあるカーテン下端部103が駆動範囲Wの最上部100Hに位置している場合から遮蔽動作を駆動制御部200から指示すると、電動モータ1に電源部(図示を省略)から駆動電流が供給される。この駆動電流の供給により電動モータ1が回転駆動を開始し、この電動モータ1の駆動軸11と共に回転する回転部30の鉄片32に遠心力を発生させ、この回転部30の各収納部34内で鉄片32を円周方向に摺動自在に移動させて、固定部31の永久磁石33から離反させ、ブレーキ手段3のブレーキ状態を解除する。
【0033】
このブレーキ手段3のブレーキ状態の解除により電動モータ1の駆動軸11がフリー状態となり、電動モータ1の駆動回転が駆動軸11を介して入力軸21から入力され、この入力された回転力を減速し、且つ昇降カーテン100の昇降動作に必要なトルクに変換する。この変換された回転力により、昇降カーテン100の昇降軸102を回転させてカーテン101を巻き出して遮蔽する。
【0034】
この遮蔽動作の途中で中間部100Mで停止させて、カーテン101による半開放状態を維持する旨を駆動制御部200から指示すると、電源部(図示を省略)から電動モータ1への電流供給がなくなり、電動モータ1の電動モータ1における回転速度が減衰してブレーキ手段3に生じていた遠心力も急激に減少して永久磁石33に鉄片32が吸引されてシール部35を介して接触してブレーキ手段3のブレーキが機能する。
【0035】
このブレーキ手段3のブレーキが機能すると、カーテン下端部103が中間部100Mで停止状態を維持して昇降カーテン100を半開放状態とすることができる。
【0036】
さらに、この半開放状態から全開放状態に移行する旨を駆動制御部200から指示すると、電源部(図示を省略)から電動モータ1への電流供給が開始し、前記駆動範囲Wの最上部100Hからの始動動作と同様に最下部100Lまで駆動制御される。
【0037】
なお、前記昇降カーテン100を駆動範囲Wの最上部100Hから中間部100M、この中間部100Mから最下部100Lへの開放動作について説明したが、前記駆動範囲Wの最下部100Lから中間部100M、この中間部100Mから最上部100Hへの遮蔽動作も同様に実行して制御できることとなる。
【0038】
なお、前記電動モータ1の駆動トルクF1と、昇降カーテン100の巻上げ(若しくは巻出し)の駆動トルクF2と、ブレーキ手段3の固定部31と鉄片32との間の吸引トルクF3との関係は、次式で表すことができる。
F1>F3>F2
【0039】
この駆動トルクF1、駆動トルクF2、吸引トルクF3の関係が維持される範囲で本実施形態に係るギヤードモーターの駆動制御機構は、駆動制御部200からの電動モータ1の供給電流のON・OFF制御のみで、昇降カーテン100の駆動範囲Wにおけるいかなる開放・遮蔽の各動作を制御できることとなる。
【0040】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るギヤードモータ―の駆動制御機構を
図4(A),(B)に基づいて説明する。
同図において本実施形態に係るギヤードモータ―の駆動制御機構は、前記第1の実施形態の場合と同様に電動モータ1、変速部2、ブレーキ手段3を備え、このブレーキ手段3が回転部30の各収納部34に鉄片32を内蔵すると共に固定部31の永久磁石33とシール部35が回転部30と同心円内に配設される構成を共通して備え、前記鉄片32及び各収納部34の平面配置を電動モータ1の駆動軸11を中心とするラジアル軸から微小に偏移αして配設する構成を第1の実施形態と異にする。
【0041】
このように鉄片32及び各収納部34をラジアル軸から偏移する独自な構成により、電動モータ1駆動による駆動軸11の回動方向Rに伴って各収納部34内で鉄片32が転倒方向Qへ傾斜し、鉄片32の項端部32aに形成されるテーパー状の間隙βへ前記鉄片32の転倒動作を誘引させることができ、電動モータ1の始動時における静止摩擦を最小限に抑制して駆動軸11の回転動作に円滑に移行できることとなる。
【0042】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構を
図5(A)、(B)に基づいて説明する。
同図において本実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構は、前記第1の実施形態と同様に、前記第1の実施形態の場合と同様に電動モータ1、変速部2、ブレーキ手段3を備え、このブレーキ手段3が回転部30の各収納部34に鉄片32を内蔵すると共に固定部31の永久磁石33とシール部35が回転部30と同心円内に配設される構成を共通して備え、回転部30の各収納部34が鉄片32との間に間隙34a、34bを形成される構成を第1の実施形態と異にする。
【0043】
このように鉄片32と各収納部34との間に間隙34a、34bを形成するように鉄片32を収納するように構成されることから、
図5(B)に示すように電動モータ1駆動による駆動軸11の回動方向Rに伴って、各収納部34内で鉄片32が転倒方向Qへ傾斜し、鉄片32の前端部32d側にテーパー状の間隙γが形成されることから、始動前及び中間部100Mの保持状態において鉄片32の先端面全体で永久磁石33(シール部35)に押圧支持できると共に、解放・遮蔽への移行時においては間隙γを形成して押圧支持する面積を極力小さくでき、電動モータ1の始動時における静止摩擦を最小限に抑制して駆動軸11の回転動作に円滑に移行できることとなる。
【0044】
(本発明のその他の実施形態)
本発明のその他の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構を
図6(A)、(B)を参照して説明する。
同図(A),(B)において他の実施形態に係るギヤードモータの駆動制御機構は、前記第1の実施形態の場合と同様に電動モータ1、変速部2、ブレーキ手段3を備え、このブレーキ手段3が回転部30の各収納部34に鉄片32を内蔵すると共に固定部31の永久磁石33とシール部35が回転部30と同心円内に配設される構成を共通して備え、鉄片32の先端角部の形状をラウンド状若しくは隅切状に形成する構成が前記各実施形態と異にする。
【0045】
このように鉄片32の先端角部をラウンド状若しくは隅切状に形成することにより、電動モーター1の駆動により駆動軸11が回動するとこの回動方向に加わる応力を鉄片32におけるラウンド状若しくは隅切状の先端角部で受け取ることができることとなり、電動モータ1の始動時における静止摩擦を最小限に抑制して駆動軸11の回転動作に円滑に移行できることとなる。
【0046】
なお、前記各実施形態においては、電動モーター1に一体的に連結された変速部2の反対側となる駆動軸11の他端側11bにブレーキ手段3を配設する構成としたが、電動モータとの間で駆動軸11の一端側11aに介装する構成とすることもできる。この一端側11aに介装する構成の場合には、電動モーター1、変速部2の製作時に一体的に形成されることとなる。
【0047】
また、前記各実施形態においては、本発明のギヤードモータの駆動制御機構を自動昇降カーテンに適用する場合について説明したが、他に開口部の開閉装置、例えば自動シャッター、自動スクリーン等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 電動モータ
2 変速部
3 ブレーキ手段
30 回転部
31 固定部
32 鉄片
33 永久磁石
34 各収納部
35 シール部