(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】締結装置ならびにそれを用いる衣服およびシート材
(51)【国際特許分類】
A44B 99/00 20100101AFI20230707BHJP
A41D 1/02 20060101ALI20230707BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20230707BHJP
A41F 1/00 20060101ALI20230707BHJP
A44B 1/02 20060101ALI20230707BHJP
A44B 1/06 20060101ALI20230707BHJP
A44B 1/08 20060101ALI20230707BHJP
A44B 1/18 20060101ALI20230707BHJP
A44B 1/44 20060101ALI20230707BHJP
A44B 1/28 20060101ALI20230707BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20230707BHJP
H01F 7/20 20060101ALI20230707BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A44B99/00 611G
A44B99/00 601C
A41D1/02 Z
A41D27/00 Z
A41F1/00 Z
A44B1/02 J
A44B99/00 611L
A44B1/06 F
A44B1/08 610Z
A44B1/08 620Z
A44B1/18 B
A44B1/44 Z
A44B1/28 620B
H01F7/02 G
H01F7/20 Z
A41D13/12 145
(21)【出願番号】P 2019128963
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】514171474
【氏名又は名称】▲廣▼▲瀬▼ 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】▲廣▼▲瀬▼ 幸治
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-85666(JP,A)
【文献】特開2000-217614(JP,A)
【文献】特開平01-270804(JP,A)
【文献】特開2001-210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0125940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B1/00-9/20
A44B11/00-11/28
A44B13/00-18/00
A44B99/00
A41D1/02
A41D13/12
A41D27/00
A41F1/00
H01F7/02
H01F7/20
F16B5/00-5/12
F16B21/00-21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対を成す被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が嵌り込んだ雌の部材の凹所が、緊縮することで前記被着物を締結し、弛緩することで前記被着物の離脱が可能になる締結装置において、
前記雌の部材は、前記凹所の少なくとも一部に、前記突起に臨み、通電の有無によって膨縮する作用部材を備えることを特徴とする締結装置。
【請求項2】
前記作用部材は、人工筋肉から成ることを特徴とする請求項1記載の締結装置。
【請求項3】
前記作用部材は、非通電状態で突起を係止し、通電状態で開放することを特徴とする請求項1または2記載の締結装置。
【請求項4】
前記突起は、先端が膨らんだ棒状体から成り、
前記凹所は、その出口側に、前記棒状体の根元側が通る切り欠きを有し、前記棒状体側に付勢される一対のシャッタ板を備え、
前記作用部材は、前記シャッタ板を駆動することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の締結装置。
【請求項5】
前記雌の部材は、1枚の板バネ部材から成り、前記突起の軸方向断面でU字の両端部が相互に対向するように内側に折返されて形成され、その内側に折返された一対の部分が前記シャッタ板となり、
前記作用部材は、前記U字の対向する2辺の外側で固定位置との間に設けられ、収縮することで前記シャッタ板を開くことを特徴とする請求項4記載の締結装置。
【請求項6】
前記作用部材は、前記突起の両側に設けられ、前記一対のシャッタ板は、それぞれ、
前記作用部材の膨張/収縮で駆動される駆動部と、
前記駆動部に連なり、前記突起の軸直交方向の平面上で、該突起の側方において、一方の作用部材側から他方の作用部材側に延びる連結部と、
前記連結部の先端から、前記突起の裏側に回り込んで延び、該突起の外周部に摺接することができる係止部とを備えて構成されることを特徴とする請求項4記載の締結装置。
【請求項7】
前記一対のシャッタ板は、相互に前記突起の軸方向にずれて配置され、
前記連結部は前記駆動部から二股に分かれて前記突起の両側を通り、
前記係止部は、前記連結部の先端間を結ぶことを特徴とする請求項6記載の締結装置。
【請求項8】
前記突起は棘立った軸から成り、
前記凹所の内周部は、前記棘が刺さる弾性の部材、もしくは前記棘が引掛かる逆の棘立った部材から成り、断面が円弧状のプレートが、その基端側が円盤に揺動自在に枢支されることで、他端側が花弁状に開閉するように構成されており、
前記作用部材は、その収縮/膨張によって前記花弁を開閉することを特徴とする請求項4記載の締結装置。
【請求項9】
対を成す被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が雌の部材の凹所に嵌り込むことで前記被着物を締結する締結装置において、
前記突起の少なくとも一部に、前記凹所の内周に臨み、通電の有無によって膨縮する作用部材を備えることを特徴とする締結装置。
【請求項10】
前記突起および凹所の周囲には、相互に磁気吸着することで前記突起を凹所に誘導する一対の磁石または磁性体を備えることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の締結装置。
【請求項11】
前記一対の磁石または磁性体は、互いの吸着面が、相互に嵌合する凹凸形状に形成されることを特徴とする請求項10記載の締結装置。
【請求項12】
前記磁石は、電磁石であることを特徴とする請求項10または11記載の締結装置。
【請求項13】
前記突起は平板から突出して形成され、前記平板は前記凹所の周縁部に当接し、前記周縁部と平板との間に離脱補助用のバネ部材が介在されることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の締結装置。
【請求項14】
前記請求項1~13の何れか1項に記載の締結装置を、前見頃の釦として備えることを特徴とする衣服。
【請求項15】
前記請求項1~13の何れか1項に記載の締結装置を、シート体同士の連結に使用することを特徴とするシート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツなどの衣服や、カーテンなどのシート材において、前見頃などの対を成す被着物の締結に用いられる締結装置ならびにそれを用いる衣服およびシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
雄の部材の突起が雌の部材の凹所に嵌り込むことで前記被着物を締結する締結装置の典型的な従来技術は、特許文献1で示されている。それによれば、寝装具に用いられる締結装置で、雄の部材の突起の先端を膨らませておき、雌の部材の孔は、入口側は突起の基端側の径に合せ、奥側は先端の径に合せて段部を形成することで、確実に抜け止めを行い、寝装具を外れなくし、かつ入口側の長さを軸の長さより短くして、遊びを持たせて、生地などを傷め難くしている。
【0003】
したがって、特許文献1は、典型的な突起と凹所との締結装置である。寝装具という、あまり止め外しを行わないもので、そのため外れないことが重視されている。一方、衣服では、手指などの身体の機能に不自由のある使用者が、釦を止めたり外したりすることは、中々難しく、またその止め外しの頻度も高い。そこで、そのような使用者が脱いだり着たりし易い衣服として、たとえば特許文献2~4が提案されている。
【0004】
特許文献2は、指先の不自由な人が脱ぎ着し易いように、衣服の前見頃の合せ面を磁気で吸着するようにしたマグネットボタン付きの衣服であり、吸着を強力にするためにネオジウム磁石を用い、吸着面以外をシールド材で覆っている。そして、薄い円盤状の磁石を、前見頃(前立て)に縫い合わせて、袋状に形成された重ね合わせ部に収納している。
【0005】
特許文献3も、指先の不自由な人が脱ぎ着し易いように、磁気を有する留具を備える衣服で、吸着面に、対応する凹凸が形成されることで、横滑りしないようになっている。
【0006】
また、特許文献4では、電磁ボタンが提案されている。この従来技術によれば、使用者が上着を着て(袖を通して)、前見頃(シャツの場合は前立て)を合せて、前記電磁石を励磁することで係合を行わせている。これによって、片手の不自由な人や、幼児・お年寄り等の細かな作業ができない使用者にも、脱いだり着たりし易い衣服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-217614号公報
【文献】特開2005-28022号公報
【文献】特開平1-270804号公報
【文献】特開2001-210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2~4は、永久磁石または電磁石を用いることで、釦の止め外しが容易になっている。しかしながら、磁力で吸着しているだけであるので、突起と凹所との嵌め合わせである特許文献1のように、機械的に外れなくなっているのではなく、不所望に釦が外れてしまうことがある。また、電磁石で、励磁して吸着する場合、吸着している間は電力消費が発生する。
【0009】
本発明の目的は、不所望に外れ難い突起と凹所との嵌め合わせによる締結装置において、容易に止めたり外したりすることができる締結装置ならびにそれを用いる衣服およびシート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の締結装置は、対を成す被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が嵌り込んだ雌の部材の凹所が、緊縮することで前記被着物を締結し、弛緩することで前記被着物の離脱が可能になる締結装置において、前記雌の部材は、前記凹所の少なくとも一部に、前記突起に臨み、通電の有無によって膨縮する作用部材を備えることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、たとえばシャツの前見頃のような対を成す被着物を止めたり開いたりすることを可能にする、スナップ釦のような締結装置は、前記被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が嵌り込んだ雌の部材の凹所が、緊縮することで前記被着物を締結し、弛緩することで前記被着物の離脱が可能になる。そのような締結装置において、本発明では、特に雌の部材を工夫し、前記突起が嵌り込むための凹所の少なくとも一部に、作用部材(アクチュエータ)を設ける。その作用部材は、前記突起に臨み、後述の電磁石や人工筋肉から成り、通電の有無によって膨張/収縮する。
【0012】
したがって、締結装置を、その雄の部材の突起を雌の部材の凹所に押込んで止めても、引き抜いたりすることなく、通電を制御するだけで、外すことが可能になる。これによって、たとえば釦を釦孔に通したり外したりすることの困難な身障者や高齢者も、容易に釦を止めたり外したりすることができる。これによって、たとえばシャツの場合に、容易に脱いだり着たりすることができる。
【0013】
また、本発明の締結装置では、前記作用部材は、人工筋肉から成ることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、人工筋肉を膨張/収縮することで、雌の部材の凹所の拡がりを変化することができる。このような用途には、圧電体や電磁石が用いられてもよい。しかしながら、人工筋肉は、圧電体に比べて、ストローク、すなわち、膨張時と収縮時との拡がり(膨らみ)の差を大きくすることができ、外し易く、かつ外れ難くすることができる。また、電磁石に比べて、造り込み、すなわち釦周りの構成を小さくすることができる。
【0015】
さらにまた、本発明の締結装置では、前記作用部材は、非通電状態で突起を係止し、通電状態で開放することを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、釦の場合、非通電状態で釦が止まっており、通電で釦を外すので、たとえば前記シャツでは、着ている間は通電不要で、脱ぐ際にだけ通電すればよく、電力消費を抑えることができる。
【0017】
また、本発明の締結装置では、前記突起は、先端が膨らんだ棒状体から成り、前記凹所は、その出口側に、前記棒状体の根元側が通る切り欠きを有し、前記棒状体側に付勢される一対のシャッタ板を備え、前記作用部材は、前記シャッタ板を駆動することを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、雄の部材の突起(頭部)に、茸の傘のように先端が膨らんだ棒状体を用い、雌の部材の凹所には、その出口側に、前記棒状体の根元側が通る切り欠きを有し、前記棒状体側に付勢される一対のシャッタ板を備える。そうすることで、雄の部材を雌の部材側に押込むことで、先端がシャッタ板を押し拡げて嵌り込み、釦の場合、スナップ釦のようにして、該釦を止めることができる。そして、前記作用部材が前記シャッタ板を開く方向に駆動することで、釦を外すことができる。こうして、簡単な構成で、作用部材を使用した締結装置を実現することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の締結装置では、前記雌の部材は、1枚の板バネ部材から成り、前記突起の軸方向断面でU字の両端部が相互に対向するように内側に折返されて形成され、その内側に折返された一対の部分が前記シャッタ板となり、前記作用部材は、前記U字の対向する2辺の外側で固定位置との間に設けられ、収縮することで前記シャッタ板を開くことを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、雌の部材を、断面が略U字の1枚の板バネ部材で構成することができ、そのU字の両端部を相互に対向するように内側に折返して前記のシャッタ板を構成し、作用部材は、その板バネ部材の外側に設けた筐体の内壁などの固定位置との間に設ける。したがって、作用部材が、膨張することで前記U字の対向する2辺を内側に押してシャッタ板を閉じ、収縮することで前記シャッタ板を開くことができる。こうして、雌の部材を1枚の板バネ部材で構成することができる。
【0021】
また、本発明の締結装置では、前記作用部材は、前記突起の両側に設けられ、前記一対のシャッタ板は、それぞれ、前記作用部材の膨張/収縮で駆動される駆動部と、前記駆動部に連なり、前記突起の軸直交方向の平面上で、該突起の側方において、一方の作用部材側から他方の作用部材側に延びる連結部と、前記連結部の先端から、前記突起の裏側に回り込んで延び、該突起の外周部に摺接することができる係止部とを備えて構成されることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、作用部材を突起の両側に設けて、それぞれに駆動される一対のシャッタ板で前記突起の抜け止めを行うにあたって、シャッタ板が、たとえば中央に切り欠きを有し、突起の両側に配置されて、作用部材が膨張したら前記シャッタ板が閉じて切り欠きの間に突起を挟み込むような単純な構造ではなく、シャッタ板を、前記作用部材の膨張/収縮を受ける駆動部から、前記突起の軸直交方向の平面上で、該突起の側方を迂回して、一方の作用部材側から他方の作用部材側に連結部を伸ばし、その連結部の先端から、前記突起の裏側に回り込み、該突起の外周部に摺接することができる係止部を設けて構成する。
【0023】
したがって、作用部材が膨張すると係止部は突起から離反し、収縮すると摺接すると言う、上記の単純な構造とは逆の動作を実現することができる。これによって、通電によって膨らむ作用部材(アクチュエータ)の場合に、通電によって締結を外すことができ、消費電力を削減することができる。
【0024】
さらにまた、本発明の締結装置では、前記一対のシャッタ板は、相互に前記突起の軸方向にずれて配置され、前記連結部は前記駆動部から二股に分かれて前記突起の両側を通り、前記係止部は、前記連結部の先端間を結ぶことを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、前記一対のシャッタ板を、相互に前記突起の軸方向にずれて、すなわち、段違いに配置し、それによって連結部を二股にして突起の両側を通し、その先端間を係止部で連結することができる。
【0026】
したがって、作用部材の収縮時に係止部が突起に摺接しても、板状の係止部や連結部の変形を抑え、係止力を高める、すなわちたとえば釦を外れ難くすることができる。
【0027】
また、本発明の締結装置では、前記突起は棘立った軸から成り、前記凹所の内周部は、前記棘が刺さる弾性の部材、もしくは前記棘が引掛かる逆の棘立った部材から成り、断面が円弧状のプレートが、その基端側が円盤に揺動自在に枢支されることで、他端側が花弁状に開閉するように構成されており、前記作用部材は、その収縮/膨張によって前記花弁を開閉することを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、突起の凹所からの抜け止めを実現するにあたって、前述のように突起の先を膨らませておくのではなく、突起は棘の立った軸としておき、それを花弁や巾着袋のようにして外周から締めて、前記棘と弾性の部材もしくは逆の棘で引掛けて、抜け止めを行うようにする。
【0029】
したがって、作用部材が膨張すると花弁や巾着袋が閉じて抜け止めを行い(釦を止め)、収縮すると花弁や巾着袋が開いて取外しを行う(釦を外す)ことができる。
【0030】
さらにまた、本発明の締結装置は、対を成す被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が雌の部材の凹所に嵌り込むことで前記被着物を締結する締結装置において、前記突起の少なくとも一部に、前記凹所の内周に臨み、通電の有無によって膨縮する作用部材を備えることを特徴とする。
【0031】
上記の構成によれば、たとえばシャツの前見頃のような対を成す被着物を止めたり開いたりすることを可能にする、スナップ釦などの締結装置は、前記被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が雌の部材の凹所に嵌り込むことで前記被着物を締結する。そのような突起と凹所との嵌め合わせによる不所望に外れ難い締結装置において、本発明では、特に雄の部材を工夫し、前記凹所に嵌り込む突起の少なくとも一部に、作用部材(アクチュエータ)を設ける。その作用部材は、前記凹所の内周に臨み、後述の電磁石や人工筋肉から成り、通電の有無によって膨張/収縮する。
【0032】
したがって、突起を凹所内で膨らませて抜け止め(釦を止め)を行い、縮めて取外す(釦を外す)ことが可能になり、釦の場合に、該釦を釦孔に通したり外したりすることの困難な身障者や高齢者も、容易に釦を止めたり外したりすることができる。これによって、たとえばシャツの場合に、容易に脱いだり着たりすることができる。
【0033】
また、本発明の締結装置では、前記突起および凹所の周囲には、相互に磁気吸着することで前記突起を凹所に誘導する一対の磁石または磁性体を備えることを特徴とする。
【0034】
上記の構成によれば、磁石または磁性体の磁力によって、突起を、凹所に誘導することができる。
【0035】
したがって、磁石または磁性体で仮固定を行い、締結装置によって本固定を行うことができる。また、前記釦として用いる場合、前記身障者や高齢者が、簡単に釦を止めることができる。
【0036】
さらにまた、本発明の締結装置では、前記一対の磁石または磁性体は、互いの吸着面が、相互に嵌合する凹凸形状に形成されることを特徴とする。
【0037】
上記の構成によれば、磁石または磁性体の磁力によって、雌雄の部材が吸着し、凹凸形状が噛合うことで、中々位置合わせし難い突起を、正確に凹所に誘導することができる。
【0038】
また、本発明の締結装置では、前記磁石は、電磁石であることを特徴とする。
【0039】
上記の構成によれば、電磁石を励磁することで、突起を凹所に誘導し、また雌雄の部材を仮固定することができる。さらに、作用部材の通電の有無を制御する回路と、励磁の回路との2回路を併設することで、回路構成を効率化することができる。
【0040】
さらにまた、本発明の締結装置では、前記突起は平板から突出して形成され、前記平板は前記凹所の周縁部に当接し、前記周縁部と平板との間に離脱補助用のバネ部材が介在されることを特徴とする。
【0041】
上記の構成によれば、突起の基端部を平板に固定し、突起の高さと凹所の深さとが適宜に設定されていると、この平板は凹所の周縁部に当接することになる。そこで、それらの間に、1または複数のコイルバネや板バネ、或いはゴムシートなどのバネ部材を介在しておく。
【0042】
これによって、作用部材を作用させ、凹所による突起の締付けが緩むと、或いは突起の膨張が収まると、バネ部材の弾発力で、突起は凹所から飛出すことになる。こうして、利用者は、格別、何もしなくても、スイッチを押すなどして作用部材を作用させるだけで、締結の解除と一対の被着物の離脱とを同時に行うことができる。
【0043】
また、本発明の衣服は、前記の締結装置を、前見頃の釦として備えることを特徴とする。
【0044】
上記の構成によれば、釦の止め外しが困難な身障者や高齢者が、簡単に脱いだり着たりすることができる衣服を実現することができる。
【0045】
さらにまた、本発明のシート材は、前記の締結装置を、シート体同士の連結に使用することを特徴とする。
【0046】
上記の構成によれば、釦などの締結装置の止め外しが困難な身障者や高齢者が、簡単にシート体を繋ぎ合わせたり外したりすることができるカーテンや、建設現場の防塵・防音シートなどのシート材を実現することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の締結装置ならびにそれを用いる衣服およびシート材は、以上のように、シャツの前見頃のような対を成す被着物を止めたり開いたりすることを可能にするもので、前記被着物にそれぞれ雌雄の部材が取付けられ、雄の部材の突起が嵌り込んだ雌の部材の凹所が、緊縮することで前記被着物を締結し、弛緩することで前記被着物の離脱が可能になるスナップ釦のような締結装置において、特に雌の部材を工夫し、前記突起が嵌り込むための凹所の少なくとも一部に、作用部材(アクチュエータ)を設け、その作用部材は、前記突起に臨み、電磁石や人工筋肉から成り、通電の有無によって膨張/収縮する。
【0048】
それゆえ、締結装置を、その雄の部材の突起を雌の部材の凹所に押込んで止めても、引き抜いたりすることなく、通電を制御するだけで、外すことが可能になる。これによって、たとえば釦を釦孔に通したり外したりすることの困難な身障者や高齢者も、容易に釦を止めたり外したりすることができる。これによって、たとえばシャツの場合に、容易に脱いだり着たりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の実施の第1の形態に係る締結装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1の締結装置の動作を説明するための断面図である。
【
図3】
図1の締結装置の動作を説明するための断面図である。
【
図4】前記の締結装置の一適用例である衣服の正面図である。
【
図5】本発明の実施の第2の形態に係る締結装置の分解斜視図である。
【
図6】
図5の締結装置の動作を説明するための断面図である。
【
図7】
図5の締結装置の動作を説明するための断面図である。
【
図8】本発明の実施の第3の形態に係る締結装置の一部分の分解斜視図である。
【
図9】
図8の締結装置の他の例の分解斜視図である。
【
図10】
図8の締結装置のさらに他の例の分解斜視図である。
【
図11】本発明の実施の第4の形態に係る締結装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の第1の形態に係る締結装置1の分解斜視図であり、
図2および
図3はその動作を説明するための断面図である。この締結装置1は、所謂スナップ釦のようにして利用されるものであり、対を成す雄部材2と雌部材3とを備えて構成される。それらの雄部材2および雌部材3は、対を成す被着物として、たとえばシャツの前見頃41,42の合せ面に、縫い糸43,44によって縫付けられて固定される。
【0051】
雄部材2は、基板21の中央部から、突起22が立設されて構成されている。突起22は、軸部221と、その先端の頭部222とを有し、茸の傘のように先端が膨らんだ棒状体である。本実施形態では、基板21は矩形に形成され、その隅角部には、前記前見頃41に縫付けるための縫い糸43を通す孔23が形成されている。
【0052】
前記雌部材3は、前記雄部材2の突起22が凹所30に嵌り込んだ状態で、緊縮することで前見頃41,42間を締結し、弛緩することで前見頃41,42相互間の離脱を可能にするものである。雌部材3は、大略的に、筐体31と、緊縮機構32と、離脱補助機構34と、通電機構35とを備えて構成される。
【0053】
筐体31は、前記基板21よりも大きな矩形の基板311と、矩形の帽状に形成され、前記基板311に重ね合わされて、前記帽状の内部空間に前記緊縮機構32を収容するカバー312とを備えて構成される。前記内部空間に前記緊縮機構32を収容した後、前記帽状のカバー312の鍔の部分と基板311の周縁部とが、ネジ止め、溶着、接着などで相互に固定される。それらの基板311およびカバー312の鍔の部分の隅角部には、前記前見頃42に縫付けるための縫い糸44を通す孔3114,3124が連通して形成されている。
【0054】
カバー312の天面中央には、前記凹所30への導入孔となり、前記突起22の頭部222よりも径の大きい開口3123が形成されている。この開口3123の周囲には、複数(本実施形態では4つ)のコイルバネ341が設けられており、そのコイルバネ341によって環状の押し返し部材342が支持されている。これらのコイルバネ341および押し返し部材342は、離脱補助機構34を構成する。離脱補助機構としては板バネや、弾発性を有するシートなどが用いられてもよい。
【0055】
緊縮機構32は、
図2および
図3の断面において、大略U字の先端が内側に折返されて成る板バネ部材321と、作用部材(アクチュエータ)としての2本の人口筋肉322,323と、取付け部材324,325;326,327とを備えて構成される。人口筋肉322,323は、たとえば電気性高分子人工筋肉から成る細長い人工筋繊維3221,3231が多数本束ねられて構成されている。そして、膨縮の刺激としては、電場(電圧の印加)であり、両端の電極3222,3223;3232,3233間に、電圧を印加することで拡径および短縮もしくは縮径および伸長する。本実施形態では、電圧を印加することで、縮径および伸長するものを用いている。たとえば、シート状の誘電性高分子を電極で挟み、それを円筒状に巻いた円筒型やコイル状に巻いた巻き型の人工筋肉で実現することができる。
【0056】
板バネ部材321は、帯状の金属材料が、前記U字から、その先端が内側に折返されるようにして構成され、前記基板311に皿ビス313によって固定される基部3211と、その基部3211から立上がる前記U字の両側部3212,3213と、両側部3212,3213の先端から互いの近接方向に折返されるシャッタ板3214,3215とを備えて構成される。シャッタ板3214,3215の幅方向の中央部には、前記突起22の軸部221の径より若干大きい切り欠き3216が形成される。この板バネ部材321の内側の空間が、前記凹所30となる。
【0057】
板バネ部材321の前記U字の両側部3212,3213の外側には、取付け部材324,325によって、人口筋肉322,323が括り付けられる。また、帽状のカバー312の一対の側部3121,3122の内側には、取付け部材326,327によって、人口筋肉322,323が括り付けられる。取付け部材324,325;326,327は、所定の張力を発生している。取付け部材324,325;326,327に代えて、人口筋肉322,323は、その外表面が、U字の両側部3212,3213と一対の側部3121,3122の内側とに、接着などによって貼付けられてもよい。
【0058】
人口筋肉322,323の電極3222,3223;3232,3233には、ソケット3522,3523;3532;3533がそれぞれ嵌め込まれ、人口筋肉322,323には、スイッチ351を導通することで、電池354から電圧が印加されて、該人口筋肉322,323は縮径および伸長する。スイッチ351、電池354、ソケット3522,3523;3532;3533およびそれらを接続する配線355は、通電機構35を構成する。配線355は、雌部材3から引出されて、スイッチ351や電池354が、複数の雌部材3で共用されてもよい。雌部材3の単体に通電機構35の総ての構成が内蔵される場合、スイッチ351に関連してコントローラが設けられ、外部からの無線LANや近距離無線通信によって、通電が制御されてもよい。
【0059】
上述のように構成される締結装置1において、スイッチ351が開かれている非通電時には、人口筋肉322,323は拡径および短縮しており、したがって
図1および
図2で示すように、シャッタ板3214,3215は閉じている。この状態で、突起22の尖鋭な頭部222から開口3123に該突起22が押込まれると、コイルバネ341の弾発力、板バネ部材321の弾発力および人口筋肉322,323の反発力に抗して、前記頭部222はシャッタ板3214,3215を押し拡げつつ、凹所30内に進入してゆくことができる。
【0060】
頭部222がシャッタ板3214,3215を通過した時点で、該シャッタ板3214,3215が閉まり、軸部221が切り欠き3216に嵌り込み、
図2のように、大径の頭部222がシャッタ板3214,3215で抜け止めされて、雄部材2が雌部材3に締結される。こうして、雄部材2の突起22が嵌り込んだ雌部材3の凹所30が、緊縮することで被着物である前見頃41,42間を締結する。
【0061】
これに対して、スイッチ351が導通されると、電池354から人口筋肉322,323に電圧が印加され、該人口筋肉322,323は、板バネ部材321の弾発力に抗して、縮径および伸長し、シャッタ板3214,3215が相互に離反して、頭部222が後退可能になる。この時、コイルバネ341の弾発力によって、基板21が押し返されて突起22が凹所30から飛出し、前見頃41,42を開くことが可能になる。
【0062】
このように構成することで、雄部材2の突起22が嵌り込んだ雌部材3の凹所30が、緊縮することで被着物(41,42)を締結し、弛緩することで前記被着物(41,42)の離脱が可能になる締結装置1において、前記凹所30の少なくとも一部に、人工筋肉322,323から成り、通電の有無によって膨張/収縮する作用部材(32)を設けることで、締結装置1を、その雄部材2の突起22を雌部材3の凹所30に押込んで止めても、引き抜いたりすることなく、通電を制御するだけで、外すことが可能になる。これによって、たとえば釦を釦孔に通したり外したりすることの困難な身障者や高齢者も、容易に釦を止めたり外したりすることができる。これによって、たとえばシャツの場合に、容易に脱いだり着たりすることができる。
【0063】
また、前記作用部材(32)としては、同様に電池351を使用する圧電体や電磁石なども使用可能である。しかしながら、本実施形態のように、人工筋肉322,323を用い、それを膨張/収縮することで雌部材3の凹所30の拡がりを変化することで、圧電体に比べて、ストローク、すなわち、膨張時と収縮時との拡がり(膨らみ)の差を大きくすることができ、釦を外し易く、かつ外れ難くすることができる。また、電磁石では、コイルなど、或る程度の容積が必要で、小さな釦の筐体31内で、板バネ部材321の両側部3212,3213とカバー312の側部3121,3122との間に介挿するのは困難であるのに対して、人工筋肉322,323を用いることで、造り込み、すなわち釦周りの構成を小さくすることができる。
【0064】
さらにまた、本実施形態の締結装置1では、作用部材(32)は、非通電状態で突起22を係止し、通電状態で開放するので、本実施形態の締結装置1を釦に用いる場合、非通電状態で釦が止まっており、通電で釦を外すことになる。これによって、たとえば前記シャツでは、着ている間は通電不要で、脱ぐ際にだけ通電すればよく、電力消費を抑えることができる。
【0065】
また、本実施形態の締結装置1では、雄部材2の突起22として頭部222が茸の傘のように膨らんだ棒状体を用い、雌部材3の凹所30は、その出口側に、前記棒状体の根元側の軸部221が通る切り欠き3216を有し、前記棒状体側に付勢される一対のシャッタ板3214,3215を備えて構成するので、雄部材2を雌部材3側に押込むことで、頭部222がシャッタ板3214,3215を押し拡げて嵌り込み、釦の場合、スナップ釦のようにして、該釦を止めることができる。そして、作用部材(322,323)が前記シャッタ板3214,3215を開く方向に駆動することで、釦を外すことができる。こうして、簡単な構成で、作用部材(322,323)を使用した締結装置1を実現することができる。
【0066】
さらにまた、本実施形態の締結装置1では、雄部材2の突起22を緊縮/弛緩する雌部材3として、帯状の金属板を突起22の軸方向断面でU字の両端部が相互に対向するように内側に折返して形成する板バネ部材321を用い、その内側に折返した一対の部分を前記突起22の頭部222を引掛けるシャッタ板3214,3215として使用し、作用部材としての人工筋肉322,323を前記U字の対向する2辺(3212,3213)の外側で固定位置(3121,3122)との間に設け、収縮することで前記シャッタ板3214,3215を開くようにする。これによって、雌部材3を、1枚の板バネ部材321で構成することができる。
【0067】
さらにまた、本実施形態の締結装置1では、突起22の基端部を平板の基板21に固定し、この突起22の高さと凹所30の深さとが適宜に設定されていると、この基板21が凹所30の周縁部に当接することになるので、それらの間に、1または複数のコイルバネ341や板バネ、或いはゴムシートなどのバネ部材を介在しておく。これによって、作用部材(322,323)を作用させ、凹所30による突起22の締付けが緩むと、前記バネ部材の弾発力で、突起22は凹所30から飛出すことになる。こうして、利用者は、格別、何もしなくても、スイッチ351を押すなどして作用部材(322,323)を作用させるだけで、締結の解除と一対の被着物(41,42)の離脱とを同時に行うことができる。
【0068】
図4は、上述のような締結装置1の一適用例である衣服91の正面図である。この衣服91は、本件発明者が、特許第6377875号で提案したものである。
図4は、上着であるシャツを模式的に示しているが、上半身に着用する衣服だけでなく、ズボンなどの下半身に着用する衣服であってもよい。この衣服91は、身体の少なくとも一部を筒状に被包することができる衣服である。
図4の場合、使用者92の胴部93および腕部94を筒状に被包する。したがって、そのままでは、使用者92は、前記筒に、首95や腕部94を通したりして着用する必要のある衣服である。
【0069】
しかしながら、この衣服91は、身体の機能に不自由がある使用者や、ギブスを嵌めた使用者にでも着用できるように、前記の筒を破断して、胴部93や腕部94を衣服91の中を通さず、つまり体を大きく動かさなくても、該胴部93や腕部94に周囲から巻付けるようにして、着用できるようになっている。前見頃41,42(シャツの場合は前立て)の部分の縦方向への破断面を参照符号45で示し、胸部96での横方向への破断面を参照符号46で示し、袖97の前腕部での破断面を参照符号47で示している。
【0070】
この衣服91は、そのように筒を切り開いて使用者92が着用することが可能になっているので、着用した後には、破断面45,46,47を閉じて、脱げ難くする必要がある。そこで、破断面45,46,47を跨いで、ファスナーユニット11が設けられている。このファスナーユニット11は、帯状の連結片12の一端が前記破断面45,46,47の一端側に縫い目13によって縫付けられており、他端側に、上述の締結装置1が設けられて構成されている。
【0071】
したがって、この衣服91を使用者92に、先ずは肩部98を載せて、首元(破断面45の上部側)のファスナーユニット11で突起22を凹所30に嵌め込んで、スナップ釦のように止め、次に胴部93から前見頃41,42(破断面45の下部側)を合せて同様にファスナーユニット11を止め、さらに胸部96の破断面46および袖97の破断面を合せて同様にファスナーユニット11を止めることで、着用させることができる。そして、突起22の頭部222がシャッタ板3214,3215で係止されることで、簡単には外れない(脱げない)。
【0072】
これに対して、スイッチ351を閉じることで、各ファスナーユニット11の締結装置1間で引き回されていた配線355によって、人工筋肉322,323が一斉に作動し、離脱補助機構34によって突起22が凹所30から飛出し、たとえば使用者92が前屈みになっていると、破断面45,46,47を一斉に開くことができる。このように前記の締結装置1を、前見頃41,42の釦として用いることで、該釦の止め外しが困難な身障者や高齢者が、簡単に脱いだり着たりすることができる衣服を実現することができる。特に、介護の用途では、容易に脱がせることができる。また、使用者92は、通常の釦孔に釦を通したりするような作業では無く、突起22を凹所30に押込んでゆく、スナップ釦のような操作で止めることができ、片手でも着用することができる。
【0073】
スイッチ351および配線355は、締結装置1の総てを並列に接続するものでなく、たとえば3つの破断面45,46,47をそれぞれ操作可能なように締結装置1をユニット(グループ)化するように構成されていてもよい。
【0074】
また、スイッチ351の制御に遠隔制御を用いてもよい。具体的には、たとえばポケット99に制御基板357を設け、その制御基板357には、前記スイッチ351の代りとなるリレーや、前記電池354および制御回路などを搭載しておく。そして、たとえばスマートフォン358から、無線LANや近距離無線通信359によって、前記制御回路に指令を与え、前記リレーをONさせることで、締結装置1を開放させることができる。
【0075】
(実施の形態2)
図5は本発明の実施の第2の形態に係る締結装置5の分解斜視図であり、
図6および
図7はその動作を説明するための断面図である。この締結装置5は、上述の締結装置1に類似し、
図5~7はそれぞれ
図1~3に対応し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。この締結装置5において、雄部材2ならびに雌部材6における離脱補助機構34および通電機構35は、締結装置1と同一である。
【0076】
注目すべきは、本実施形態の締結装置5では、緊縮機構62が異なることである。そのため、筐体61のカバー312も同一であるが、基板611は若干異なる。上述の締結装置1では、人口筋肉322,323は、通電され、縮径する時に板バネ部材321の両側部3212,3213を引張らなければならず、そのため取付け部材324,325で前記両側部3212,3213に取付けられ、取付け部材326,327でカバー312の側部3121,3122に取付けられている。したがって、取付け作業に困難さがある。そこで本実施形態の締結装置5の緊縮機構62では、作用部材(アクチュエータ)として、突起22の両側に設けられ、非通電時に縮径および伸長しており、通電時に拡径および短縮する2本の人口筋肉622,623を用いている。
【0077】
これに対応して、帯状の板バネ部材を、打抜きおよび折曲げ形成して成る一対のシャッタ板620,621が、前記の板バネ部材321に代えて用いられる。シャッタ板620,621は、基板611に皿ビス313によって固定される基部6201,6211と、その基部6201,6211から立上がる駆動部6202,6212と、駆動部6202,6212に連なり、突起22の軸直交方向の平面上で、該突起22の側方において、一方の人口筋肉622,623側から他方の人口筋肉623,622側に延びる連結部6203,6204;6213,6214と、前記連結部6203,6204;6213,6214の先端から、前記突起22の裏側に回り込んで延び、該突起の外周部に摺接することができる係止部6205,6215とを備えて構成される。係止部6205,6215の幅方向の中央部には、前記突起22の軸部221の径より若干大きい切り欠き6206,6216が形成される。
【0078】
カバー312は締結装置1と同一であるが、基板611は、基部6201,6211を、それぞれ1本の皿ビス313によって固定するために、前記基部6201,6211の両側部を支持して周り止めを行う一対の突条6111,6112が設けられている。基部6201,6211上には、取付け部材324,325によって人工筋肉622,623が括り付けられる。
【0079】
このように構成することで、作用部材(アクチュエータ)である人口筋肉622,623を突起22の両側に設けて、それぞれに駆動される一対のシャッタ板620,621で前記突起22の抜け止めを行うにあたって、通電によって拡径および縮小する人口筋肉622,623によって駆動部6202,6212を押圧することで、該駆動部6202,6212は、
図6から
図7で示すように、反対側のシャッタ板621,620の方へ倒れ込み、連結部6203,6204;6213,6214および係止部6205,6215がズレて、該係止部6205,6215に設けた切り欠き6206,6216が突起22の軸部221から外れる。したがって、離脱補助機構34の弾発力によって、突起22が凹所30から飛出す。
【0080】
こうして、緊縮機構62は、緊縮機構32と逆の動作を実現することができる。これによって、通電によって膨らむ人口筋肉622,623を用いても、通電によって締結を外すことができ、消費電力を削減することができるとともに、該人口筋肉622,623の取付けは非常に容易になる。すなわち、駆動部6202,6212とカバー312の側部3121,3122との間に、人口筋肉622,623を嵌め込んでおけばよく、製作が容易である。このような人口筋肉622,623は、たとえば前記電気性高分子人工筋肉から成り、中空円筒状のエラストマーの内壁に螺旋状の電極対を挿入した螺旋型の人工筋肉で実現することができる。
【0081】
また、本実施形態の締結装置5では、一対のシャッタ板620,621の連結部6203,6204;6213,6214および係止部6205,6215は、相互に前記突起22の軸方向にずれて、すなわち段違いに配置され、前記連結部6203,6204;6213,6214は駆動部6202,6212から二股に分かれて前記突起22の両側を通り、係止部6205,6215はその連結部203,6204;6213,6214の先端間を結ぶ。したがって、人口筋肉622,623が、その非通電時に縮径して係止部6205,6215が突起22に摺接しても、板状の係止部6205,6215や連結部6203,6204;6213,6214の変形を抑え、係止力を高める、すなわち、たとえば釦を外れ難くすることができる。
【0082】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の第3の形態に係る締結装置7の分解斜視図である。この締結装置7は、上述の締結装置1,5に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。この締結装置7では、雄部材2aおよび雌部材8における緊縮機構82が大きく異なる。離脱補助機構34および通電機構35は、締結装置1,5と同一であり(そのため通電機構35は省略している)、また人工筋肉322,323も締結装置1と同一である。
【0083】
注目すべきは、本実施形態の締結装置8では、雄部材2aの突起24が、棘241の立った軸から成り、前記凹所30の内周部は、それを受けるチャック部材821が配置されることである。突起24は、おろし金を、棘241を外側にして、かつ、すりおろし方向を軸方向にして円筒状に巻いたような形状を有する。
【0084】
対応して、チャック部材821は、円盤8211の周縁部に、複数(
図8の例では4つ)に分割された円弧状のプレート8212~8215の基端側が揺動自在に枢支されることで、該プレート8212~8215の他端側が花弁状に開閉するように構成されて成る。各プレート8212~8215の内周面には、前記棘241が引掛かる逆の棘8216が立設されている。したがって、各プレート8212~8215は、前記おろし金を、棘8216を内側にして、かつ、すりおろし方向を軸方向にして円筒状に巻いて、周方向に等分割したような形状を有することになる。突起24において、棘241の立つ方向は、遊端側から基端側に高くなる方向で、各プレート8212~8215において、棘8216は、基端側から他端側に高くなる方向である。
【0085】
緊縮機構82は、このチャック部材821と、通電により縮径および伸長する人工筋肉320と、それを固定する取付け部材324~327とを備えて構成される。筐体81は、円板状の基板811と円形で帽状のカバー812とを備えて構成される。基板811およびカバー812は、それぞれ基板311およびカバー312のように、矩形であってもよい。基板811には、皿ビス313によって、チャック部材821の円盤8211が固定される。本実施形態では、人工筋肉322,323は2本ずつ軸方向に設けられ、取付け部材324,325によって各プレート8212~8215の外周面に、取付け部材326,327によってカバー812の内周面に取付けられる。
【0086】
上述のように構成される締結装置8では、非通電時に人工筋肉322,323は拡径および短縮しており、チャック部材821は、前記の花弁が閉じた(円筒に近い)状態となっている。そこへ開口3123から突起24が押込まれると、コイルバネ341および人工筋肉322,323の弾発力に抗して、棘241がプレート8212~8215を押し拡げつつ、棘8216を乗越えてゆき、棘241,8216同士が係合して、凹所30からの抜け止めが実現される。
【0087】
これに対して、作用部材(アクチュエータ)である人工筋肉322,323に通電されると、該人工筋肉322,323は縮径および伸長し、チャック部材821は、前記の花弁が開いた(円筒が割れた)状態となる。これによって、棘241,8216同士の係合が外れ、コイルバネ341による弾発力によって、突起24が凹所30から飛出す。こうして、突起24の凹所30からの抜け止めを実現するにあたって、締結装置1,5のように突起22の頭部222を膨らませておくのではなく、突起24は一定の太さ(径)で、外周に棘241の立った軸としておき、それをチャック部材821によって、花弁や巾着袋のようにして外周から締めて、棘241を逆の棘8216で引掛けて、抜け止めを行うようにする。このように構成してもまた、釦の止め外しを容易に行うことができる。
【0088】
図9および
図10は、上述の第3の実施形態に係る締結装置7の他の例の一部分の分解斜視図である。これらの実施形態は、雄部材2b,2cの突起25,28および雌部材のチャック部材825,826が異なり、筐体81や人工筋肉322,323およびその取付け部材324,325等は、締結装置7と同一である。
【0089】
先ず
図9の突起25では、基板21に立設される軸251に、スポンジ等の棘が刺さる弾性の部材から成る筒状体252が嵌め込まれている。本実施形態では、軸251は、ネジ27によって、基板21にネジ止めされている。一方、チャック部材825は、チャック部材821と同様に、円盤8251の周縁部に、複数(
図9の例では4つ)に分割された円弧状のプレート8252~8255の基端側が揺動自在に枢支されることで、該プレート8252~8255の他端側が花弁状に開閉するように構成されている。各プレート8252~8255の内周面には、前記スポンジ等の筒状体252に引掛かる棘8256が立設されている。
【0090】
したがって、釦としての係止力は、突起2bとチャック部材825との組合わせよりも弱くなるものの、筒状体252やプレート8252~8255の取付け方向が任意であったり、製作が容易である。スポンジの筒状体252と、前述のチャック部材821との組合わせであってもよい。
【0091】
また、
図10の雄部材2cおよびチャック部材826の組合わせでは、突起28の外周面に、軸方向に複数段の波形281が形成され、チャック部材826の内周面において、その逆の波形8266が形成される点で異なる。チャック部材82は、チャック部材821,825と同様に、円盤8261の周縁部に、複数に分割された円弧状のプレート8262~8265の基端側が揺動自在に枢支されることで、該プレート8262~8265の他端側が花弁状に開閉するように構成されている。各プレート8252~8255の内周面には、前記波形8266が形成されている。波形281および波形8266は、軸方向の断面で、三角波状に形成される。
【0092】
このように構成してもまた、スナップ釦のような押込むだけで止め、スイッチをONするだけで簡単に外すことができる釦を実現することができる。波形281および波形8266は、樹脂成型などで作成することができ、棘8256とスポンジの筒状体252との組合わせよりも係止力が高く、また棘241,8216同士の組合わせに比べて、特に外す際の動作を安定させることができる。
【0093】
(実施の形態4)
図11は本発明の実施の第4の形態に係る締結装置11の分解斜視図であり、
図12はその断面図である。この締結装置11は、上述の締結装置1,5,7に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。この締結装置11では、雄部材12における突起121および雌部材13における緊縮機構131が大きく異なる。注目すべきは、本実施形態の締結装置11では、雄部材12の突起121が膨張/収縮することで、雄部材12が、雌部材13に係止され、或いは雌部材13から離脱を行うことである。
【0094】
雄部材12は、非磁性の材料から成る基体122と、前記突起121を構成する複数(
図11では4つ)のプレート123と、ヨーク127と、前記各プレート123に取付けられる人工筋肉129とを備えて構成される。基体122は、帯状の本体1221と、その中央からオフセットして立設される取付け筒1222と、端板1223と、ボルト1224とを備えて構成される。
【0095】
プレート123は、円筒を複数(
図10では4つ)に分割した断面が円弧状に形成され、その外表面に、前記の棘8256と同様の棘1231が植設されて構成されている。このプレート123の内側には、前記人工筋肉322,323と同様の人工筋肉129が括り付けられる。その人工筋肉129がまた、取付け筒1222の周囲に括り付けられ、取付け筒1222の先端に、円盤状の端板1223がボルト1224で取付けられる。こうして、人工筋肉129の膨張/収縮によって、プレート123が、半径方向外方に突出/内方に後退する突起121が構成される。
【0096】
雌部材13も、非磁性の材料から成る基体131と、スポンジの筒状体132と、ヨーク137と、コイル138とを備えて構成される。基体131は、基板1311と、該基板1311に組合わせられて、所定の内部空間1312および凹所1313を形成するカバー1314とを備えて構成される。凹所1313は、カバー1314の円筒部1315と、底板1316とによって形成され、前記突起121が嵌り込む円筒状の凹所である。前記円筒部1315には、前記スポンジの筒状体132が内張りされている。
【0097】
したがって、人工筋肉129の、収縮した状態で、プレート123が後退し、突起121が凹所1313に進入或いは脱出自在となり、膨張した状態で、プレート123が進出し、突起121が凹所1313に係止される。そのため、人工筋肉129は、非通電時には拡径および縮小しており、突起121が凹所1313に係止されているか、突起121が凹所1313から離脱している状態である。一方、前述のように、突起121が凹所1313に進入するか、脱出する際は、スイッチ351がONされて、電池354から通電が行われ、人工筋肉129は、縮径および伸長する。こうして、雄部材12側を工夫し、突起121に作用部材(アクチュエータ)である人工筋肉129を設けて、それを膨縮させることで、凹所1313に係止、或いは離脱することができる。
【0098】
なお、上述の例では、外部への露出が多い突起121側のプレート123に棘1231を設け、凹所1313側の筒状体132をスポンジとしているが、逆であってもよい。そうすることで、突起121に触れても、安全で、また糸くずなどのゴミの付着も抑えることができる。
【0099】
また、本実施形態の締結装置11で注目すべきは、突起121および凹所1313の周囲には、相互に磁気吸着することで突起121を凹所1313に誘導する一対の磁石または磁性体が設けられていることである。
図12の例では、ヨーク137とコイル138とから成る電磁石に、磁性体のヨーク127で磁気回路を構成している。コイル138は、スイッチ1391をONすることで、電池1392からの電圧が印加されて、電磁石となる。
図12の例では、ヨーク137はU字状で、一側部にコイル138が巻回され、開放端間をヨーク127で連結するようになる。こうして、電磁石の磁力によって、突起121を、凹所1313に誘導し、電磁石の磁力で仮固定を行い、突起121と凹所1313とによって本固定を行うことができる。また、前記釦として用いる場合、前記身障者や高齢者が、簡単に釦を止めることができる。
【0100】
さらに、磁石ではなく、電磁石を用いることで、凹所1313から突起121を外す際の吸着が無く、外す作業が容易である。また、作用部材(129)の通電の有無を制御する回路(1391,1392)と、励磁の回路(351,354)との2回路を併設することで、回路構成を効率化することができる。
図8の締結装置7のように、雌部材8側に作用部材(322,323)を設けることで、そのような電気的構成は、雌部材8、すなわち前見頃42側にのみ設ければよくなる。
【0101】
また、本実施形態の締結装置11では、一対の磁石または磁性体であるヨーク127,137は、互いの吸着面が、相互に嵌合する凹凸形状に形成されている。
図11の例では、相互に対向するヨーク137,127の端面に、それぞれ突条1371および凹溝1271が形成されており、磁気回路を構成する2つの端面で、それらの突条1371および凹溝1271の対数を異ならせている。このように構成することで、雌雄の部材(13,12)が吸着し、凹凸形状が噛合うことで、中々位置合わせし難い突起121を、正確に凹所1313に誘導することができる。
【0102】
前見頃41,42の場合は、前述の雌雄の部材(13,12)の向きが逆になることは珍しいが、たとえばこの締結装置11を、カーテンや、建設現場の防塵・防音シートなどのシート体同士の連結に使用する場合、逆の向きに嵌らないことで、連結を容易に行うことができる。本実施形態の各締結装置1,5,7,11を、前記の建設現場の防塵・防音シートなどの連結に用いることで、突起22,121を凹所30,1313に差込んで連結することができ、スイッチ351を押して一斉に連結を外すことができるシート体の締結装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0103】
1,5,7 締結装置
2,2a,2b,2c 雄部材
21 基板
22 突起
221 軸部
222 頭部
24 突起
241 棘
3,6,8 雌部材
30 凹所
31,61 筐体
311,611,811 基板
312,812 カバー
3121,3122 側部
3123 開口
32,62,82 緊縮機構
321 板バネ部材
3211 基部
3212,3213 両側部
3214,3215 シャッタ板
3216 切り欠き
322,323;622,623 人口筋肉
3221,3231 人工筋繊維
3222,3223;3232,3233 電極
324,325;326,327 取付け部材
34 離脱補助機構
341 コイルバネ
342 押し返し部材
35 通電機構
351 スイッチ
3522,3523;3532;3533 ソケット
354 電池
355 配線
357 制御基板
358 スマートフォン
41,42 前見頃
43,44 縫い糸
620,621 シャッタ板
6201,6211 基部
6202,6212 駆動部
6203,6204;6213,6214 連結部
6205,6215 係止部
6206,6216 切り欠き
821 チャック部材
8211,8261 円盤
8212~8215,8262~8265 プレート
8216 棘
8266 波形
91 衣服
92 使用者
93 胴部
94 腕部
95 首
96 胸部
97 袖
98 肩部
11 締結装置
12 雄部材
121 突起
122 基体
123 プレート
1231 棘
127 ヨーク
1271 凹溝
129 人工筋肉
13 雌部材
131 緊縮機構
1311 基板
1313 凹所
1314 カバー
132 筒状体
137 ヨーク
1371 突条
138 コイル
1391 スイッチ
1392 電池