(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】防水シート施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
E04D5/14 H
E04D5/14 E
E04D5/14 K
(21)【出願番号】P 2020143852
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小畑 治生
【審査官】小林 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-064522(JP,A)
【文献】特開2008-240255(JP,A)
【文献】特開2000-170327(JP,A)
【文献】米国特許第06004645(US,A)
【文献】特開平08-260632(JP,A)
【文献】特開昭60-055158(JP,A)
【文献】特開2012-102562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/14
E04D 11/02
E04D 12/00
E04D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象となる防水下地における外周領域に敷設された第一防水シートを、前記防水下地に全面接着固定する外周工程と、
前記防水下地における前記外周領域よりも内側の内周領域に敷設された第二防水シートの複数個所を、前記外周工程の後に、前記防水下地に点状に固定する内周工程と、を有
し、
前記第二防水シートの端部が前記第一防水シートに重複するように、前記第二防水シートを前記第一防水シートに対して上側から重ね合わせ、
前記第二防水シートにおける重ね合わせ部分を前記第一防水シートの上面に全面接着する防水シート施工方法。
【請求項2】
前記第二防水シートを、前記外周工程の後に、前記内周領域に敷設する請求項1に記載の防水シート施工方法。
【請求項3】
前記第一防水シート及び前記第二防水シートは、長尺状のシートであり、
前記第一防水シートを、前記第一防水シートの長手方向が前記防水下地の外周形状に沿う状態で敷設し、
前記第二防水シートを、前記第二防水シートの長手方向が前記内周領域の何れか一辺に沿う状態で、複数列、並列敷設する請求項1または2に記載の防水シート施工方法。
【請求項4】
前記第二防水シートを、前記防水下地の外周縁よりも内側の位置で敷設し終える請求項
1から3の何れか一項に記載の防水シート施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された防水シート施工方法では、防水シートが風によって膨れ上がらないように、防水下地(文献では「屋根下地」)に防水シートの複数箇所が点状に固定されている。防水下地に風圧が作用する際に、一般的に風圧は、防水下地の内周領域(文献では「他部」)よりも、防水下地の外周領域(文献では「隅部」)に強く作用する。このため、外周領域で防水シートが風圧に耐えられるように、防水下地の外周領域(文献では「隅部」)における点状の固定箇所は、防水下地の内周領域(文献では「他部」)における点状の固定箇所よりも蜜に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の気候変動等の要因によって、特に外周領域では、従来よりも強固に防水シートを固定可能な方法が要求されている。しかし、単に外周領域における点状の固定箇所を従来よりも増やして更に蜜に配置する方法だと、建材コストの増大、施工の煩雑化、施工不良のリスクの増大、という問題が生じる。また、防水下地の全面に亘って防水シートを全面接着する方法も考えられるが、防水下地に埃等が残ったまま防水シートを防水下地に全面接着すると施工不良となってしまうため、事前に防水下地を全面に亘って清掃する必要があり、施工が煩雑化する。
【0005】
本発明は、簡易な方法で、防水下地に対して防水シートを強固に固定可能な防水シート施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による防水シート施工方法は、施工対象となる防水下地における外周領域に敷設された第一防水シートを、前記防水下地に全面接着固定する外周工程と、前記防水下地における前記外周領域よりも内側の内周領域に敷設された第二防水シートの複数個所を、前記外周工程の後に、前記防水下地に点状に固定する内周工程と、を有し、前記第二防水シートの端部が前記第一防水シートに重複するように、前記第二防水シートを前記第一防水シートに対して上側から重ね合わせ、前記第二防水シートにおける重ね合わせ部分を前記第一防水シートの上面に全面接着する。
【0007】
外周領域では、内周領域よりも風圧が強く作用しがちであるため、外周領域で第一防水シートが防水下地に点状に固定されると、第一防水シートは風でバタつき易くなる。一方、内周領域に作用する風圧は、外周領域に作用する風圧よりも弱くなりがちであるため、第二防水シートは、防水下地に点状に固定された場合の第一防水シートと比較して、風でバタつき難い。本発明によると、防水下地のうち、外周領域に第一防水シートが敷設され、内周領域に第二防水シートが敷設される。外周領域に敷設された第一防水シートは全面接着によって固定される。このため、外周領域で内周領域よりも風圧が強く作用する場合であっても、第一防水シートの複数箇所が点状に固定される方法と比較して、第一防水シートは風でバタつくことなく風圧に対して強固に耐えられる。また、第二防水シートが風でバタついても、第二防水シートのバタツキは弱いまま収束し、第二防水シートの防水下地に対する点状固定部分に負荷が掛かり難くなる。
【0008】
一般的に、防水シートを防水下地に全面接着固定する方法は、防水シートを防水下地に点状に固定する方法と比較して、施工性の面で煩雑である。本発明では、防水シートが全面接着によって固定される領域が外周領域だけであって、外周領域における全面接着の施工が内周領域の施工よりも先に行われる。このことから、施工性が多少悪くなっても、作業者は、外周領域に対してのみ第一防水シートを全面接着させれば、その後は外周領域の状態を気にすることなく、内周領域で第二防水シートを点状に固定できる。
【0009】
一枚の防水シートが外周領域と内周領域とに亘って敷設される場合、外周領域と内周領域とで同一の防水シートの固定方法が異なると、施工性が悪くなりがちとなる。本発明では、外周領域と内周領域とで各別の防水シートが敷設されるため、施工性が損なわれる虞はない。このように、本発明であれば、簡易な方法で、防水下地に対して防水シートを強固に固定可能な防水シート施工方法が実現される。
一般的に、作業者が複数の防水シートを上下に重ね合わせて接着させる場合、下側に位置する防水シートが平坦状だと、作業者は上下の防水シートの夫々を互いに隙間なく接着させ易い。本発明では、第一防水シートは外周工程で防水下地に全面接着固定されているため、第一防水シートの上面部分は容易に平坦に形成される。
例えば複数の第二防水シートが並列敷設される場合、隣接する第二防水シート同士が重ね合わせられる部分に凹凸が形成される。このような場合、この凹凸の形成された部分に第一防水シートが上側から重ね合わせられると、この部分が施工不良となって、第一防水シートと第二防水シートとの重ね合わせ部分から防水下地に対して漏水が発生する虞がある。
このような不都合に対して、本構成であれば、第一防水シートの上面部分は容易に平坦に形成されるため、第二防水シートにおいて上述の凹凸が形成される場合であっても、第一防水シートの上面部分に対して上側から第二防水シートが重ね合わせられることによって、第一防水シートと第二防水シートとの接着の施工不良が発生し難くなる。
【0010】
なお、本発明の『接着』は、接着剤による接着であっても良いし、熱による融着であっても良いし、溶着剤による溶着であっても良い。つまり、接着剤による接着、熱による融着、溶着剤による溶着、等が本発明の『接着』に含まれる。
【0011】
本発明において、前記第二防水シートを、前記外周工程の後に、前記内周領域に敷設すると好適である。
【0012】
外周領域における第一防水シートの全面接着固定前に、第二防水シートが敷設されると、第一防水シートの施工性が悪くなりがちである。本構成であれば、外周領域における第一防水シートの全面接着固定時に、第二防水シートが敷設されていないため、作業者は第一防水シートの接着固定を行い易くなる。
【0013】
本発明において、前記第一防水シート及び前記第二防水シートは、長尺状のシートであり、前記第一防水シートを、前記第一防水シートの長手方向が前記防水下地の外周形状に沿う状態で敷設し、前記第二防水シートを、前記第二防水シートの長手方向が前記内周領域の何れか一辺に沿う状態で、複数列、並列敷設すると好適である。
【0014】
一般的に、一般的に長尺状のシートは、敷設前だとロール状に巻かれている。このため、作業者は、防水下地の外周形状に沿って第一防水シートを展開し、内周領域の何れか一辺に沿って第二防水シートを展開することができる。このため、作業者は容易に第一防水シート及び第二防水シートを敷設できる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
本発明において、前記第二防水シートを、前記防水下地の外周縁よりも内側の位置で敷設し終えると好適である。
【0020】
本構成によって、第二防水シートは第一防水シートの敷設された領域よりも内側に位置するため、第一防水シートと第二防水シートとの接着作業が容易になる。また、第一防水シートは外周工程で防水下地に全面接着固定されているため、第一防水シートの上面部分は容易に平坦に形成される。このことから、外周領域よりも外側にパラペットが設けられる場合であっても、パラペットの立上り部分に敷設された防水シートが、外周領域において平坦状の第一防水シートと容易に接着可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】防水シートが敷設された陸屋根を示す平面図である。
【
図2】第一防水シートと第二防水シートとの接着を示す
図1のII-II線断面図である。
【
図6】第一防水シートと第二防水シートとの接着を示す
図1のVI-VI線断面図である。
【
図7】第一防水シートと第二防水シートとの接着を示す
図1のVII-VII線断面図である。
【
図8】パラペット部に亘って第一防水シートが敷設された場合を示す
図1のVIII-VIII線断面図である。
【
図9】別実施形態として第一防水シートが敷設された場合を示す
図1のVIII-VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔防水シートの固定構造について〕
図1に、例えばコンクリート製の陸屋根が示されている。本実施形態では、陸屋根に、水勾配を有する床部1と、床部1よりも外周側のパラペット部2と、が備えられている。
パラペット部2は、陸屋根の四辺に沿って備えられ、平面視において陸屋根の外周部分の全周に亘る。パラペット部2によって囲まれた部分が床部1である。パラペット部2の上下位置は床部1の上下位置よりも高く位置する。パラペット部2に壁面部2aが形成され、壁面部2aは床部1から上方へ立ち上がる。床部1は、本発明の『防水下地』である。
【0023】
床部1のうち、四辺の縁部分の位置する側の領域が外周領域Aであって、外周領域Aよりも内側の領域が内周領域Bである。床部1の上に防水シート3,4が敷設されている。
防水シート3,4は、長尺状のシートである。外周領域Aに防水シート3が敷設され、内周領域Bに防水シート4が敷設される。
【0024】
防水シート3は、本発明の『第一防水シート』である。本実施形態では、防水シート3は床部1の四辺ごとに一枚ずつ敷設されている。作業者は、防水シート3の長手方向が床部1の外周形状に沿う状態で防水シート3を敷設する。防水シート4は、本発明の『第二防水シート』である。作業者は、防水シート4の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿う状態で、内周領域Bに防水シート4を複数列、並列敷設する。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、防水シート3と防水シート4との夫々が重複する部分は、防水シート3と防水シート4との接合部5である。接合部5の位置する領域は、外周領域Aと内周領域Bとの境界領域Cである。作業者は、防水シート4の端部が防水シート3に重複するように、防水シート4を防水シート3に対して上側から重ね合わせる。接合部5では、防水シート3と防水シート4との夫々が相互に接着する。防水シート3のうち防水シート4の位置する側の縁部の上に、防水シート4のうち防水シート3の位置する側の縁部が重なる状態で、防水シート3と防水シート4との夫々の縁部が接着によって接合する。
【0026】
〔防水シートの施工方法について〕
図3乃至
図5に基づいて、防水シート3及び防水シート4の施工方法を説明する。
(1.外周工程)
まず、
図3に示されるように、作業者は、外周領域Aに防水シート3を敷設する。外周領域Aに防水シート3を敷設する工程を『外周工程』と称する。本実施形態では、防水シート3は接着工法によって外周領域Aに敷設される。防水シート3の敷設前に作業者は、外周領域Aの床部1に対してプライマー等の接着剤を塗布する。敷設前の防水シート3はロール状に巻かれており、作業者は、床部1の外周形状に沿ってロール状の防水シート3を展開する。本実施形態では、床部1が四辺であるため、作業者は、4つの防水シート3を外周領域Aに敷設する。敷設された防水シート3は、接着剤を介して床部1に接着する。このように、外周工程で作業者は、施工対象となる床部1における外周領域Aに敷設された防水シート3を床部1に全面接着固定する。
【0027】
(2.金具固定工程)
上述の外周工程によって外周領域Aに防水シート3が敷設された後、
図4に示されるように、作業者は、内周領域Bにおける床部1に、複数の金属製の固定金具6を固定する。
床部1に固定金具6を固定する工程を『金具固定工程』と称する。固定金具6の上面部は略円盤状に形成されている。作業者は、例えばビスを床部1に打ち込むことによって固定金具6を床部1に固定する。なお、金具固定工程は、外周工程よりも前に行われても良い。要するに、金具固定工程は後述の内周工程よりも前に行われれば良い。
【0028】
(3.内周工程)
上述の外周工程によって外周領域Aに防水シート3が敷設され、かつ、上述の金具固定工程によって床部1に全ての固定金具6が固定された後、
図5に示されるように、作業者は、外周領域Aよりも内側の内周領域Bの床部1に防水シート4を敷設する。内周領域Bの床部1に防水シート4を敷設する工程を『内周工程』と称する。敷設前の防水シート4はロール状に巻かれており、作業者は、床部1の水勾配の方向に沿ってロール状の防水シート4を展開する。なお、作業者は、防水シート4を床部1の外周縁よりも内側の位置で敷設し終える。全ての防水シート4の展開が完了したら、複数の防水シート4が並列に並び、防水シート4の夫々の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿う。作業者は、固定金具6の位置する箇所の夫々に、誘導加熱装置(不図示)を防水シート4の上方から押し当てて、固定金具6を加熱させる。固定金具6が所定の温度に加熱すると、防水シート4のうち固定金具6と接触する部分の温度が融点に到達し、防水シート4における固定金具6との接触部分が固定金具6に融着する。このように、内周工程で作業者は、床部1における外周領域Aよりも内側の内周領域Bに敷設された防水シート4の複数個所を、外周工程の後に、床部1に点状に固定する。
【0029】
(4.シート接着工程)
上述の内周工程によって内周領域Bに防水シート4が敷設された後、作業者は、防水シート3,4の夫々を相互に接着する。防水シート3,4の夫々を相互に接着する工程を『シート接着工程』と称する。具体的には、作業者は、隣接する防水シート4の夫々の短手方向の縁部を相互に接着する。防水シート4の夫々の短手方向の縁部は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤によって相互に溶着しても良いし、接着剤によって相互に接着しても良い。また、作業者は、防水シート3のうち防水シート4の位置する側の縁部と、防水シート4のうち防水シート3の位置する側の縁部と、を接着する。つまり、シート接着工程で作業者は、境界領域Cにおいて防水シート3と防水シート4とを接合し、接合部5を形成する。防水シート3は、既に外周工程で、接着剤によって全面に亘って床部1と接着している。このため作業者は、防水シート4における重ね合わせ部分を防水シート3の上面に全面接着する。境界領域Cにおける防水シート3と防水シート4との夫々の重ね合わせ部分は、例えば熱風機や溶接機によって相互に融着しても良いし、溶着剤によって相互に溶着しても良いし、接着剤によって相互に接着しても良い。
【0030】
隣接する防水シート4同士が重ね合わせられる部分に凹凸が形成されるため、この凹凸の形成された部分に防水シート3が上側から重ね合わせられると、この部分で施工不良が発生し易い。これに対して本実施形態では、
図6及び
図7に示されるように、防水シート4の敷設前に防水シート3が全面に亘って接着固定されており、防水シート3の上面部分は平坦面となっている。この状態で、上側から防水シート4が重ね合わせられるため、防水シート3と防水シート4との接着の施工不良が発生し難く、防水シート3と防水シート4との重ね合わせ部分、即ち接合部5から防水下地に対して漏水が発生し難くなる。
【0031】
また、防水シート4が、床部1の外周縁よりも内側の位置で敷設し終えられていることから、防水シート3の平坦な上面部分が多く露出する。このため、
図8に示されるように、パラペット部2に防水シート7が敷設された場合、防水シート7は、床部1と、パラペット部2の壁面部2aと、の間で折り返し、防水シート7の下端部は防水シート3の上に重なり合う。この状態で作業者は、防水シート7の下端部と、防水シート3の上面部分と、の重ね合わせ部分を、容易に施工不良なく全面接着できる。なお、作業者は、防水シート7の敷設前に壁面部2aに対してプライマー等の接着剤を塗布し、その後、壁面部2aに防水シート3を敷設する。
【0032】
外周領域Aでは、内周領域Bよりも風圧が強く作用しがちであるため、外周領域Aで防水シート3が床部1に点状に固定されると、防水シート3は風でバタつき易くなる。一方、内周領域Bに作用する風圧は、外周領域Aに作用する風圧よりも弱くなりがちであって、防水シート4は、床部1に点状に固定された場合の防水シート3と比較して風でバタつき難い。本実施形態であれば、外周領域Aで防水シート3が全面接着されることによって、防水シート3のバタツキは殆ど発生しなくなる。また、防水シート4が風でバタついても、防水シート4のバタツキは弱いまま収束し、防水シート4の防水下地に対する点状固定部分(固定金具6の位置する部分)に負荷が掛かり難くなる。
【0033】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0034】
(1)
図1に、例えばコンクリート製の陸屋根が示されているが、陸屋根に断熱材が敷設され、防水シート3,4は断熱材の上に敷設されても良い。また、陸屋根はコンクリート製でなくても良く、例えば金属製の屋根(折板、デッキプレート等)であっても良い。また、屋根は、垂木、野地板、等からなる木製下地を有する木造屋根であっても良い。
【0035】
(2)上述した実施形態では、防水シート4が外周領域Aに敷設されていないが、防水シート4が防水シート3の上に位置する状態であれば、防水シート4が内周領域Bと外周領域Aとに亘って敷設されても良い。要するに作業者は、防水シート4を、床部1の外周縁よりも内側の位置で敷設し終えると良い。
【0036】
(3)上述の実施形態では、防水シート4の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿う状態で、内周領域Bに複数の防水シート4が並列敷設されているが、防水シート4の長手方向が床部1の水勾配の方向に沿っていなくても良い。要するに作業者は、防水シート4を、防水シート4の長手方向が内周領域Bの何れか一辺に沿う状態で、複数列、並列敷設すれば良い。
【0037】
(4)上述の実施形態では、内周領域Bにおいて、防水シート4は固定金具6に融着固定されているが、防水シート4は、例えば増張り工法(パッチ工法)によって固定されても良い。増張り工法(パッチ工法)とは、例えば、固定金具6が防水シート4の上方に位置し、かつ、固定金具6の上方に防水シート4と別の増張シート(不図示)が覆い被さる構成によって、固定金具6が防水シート4を下方へ押し付けて固定する工法を意味する。また、内周領域Bにおいて、防水シート4が固定金具6に融着固定される領域と、防水シート4が増張り工法(パッチ工法)によって固定される領域と、が混在しても良い。つまり、内周工程で作業者は、床部1における外周領域Aよりも内側の内周領域Bに敷設された防水シート4の複数個所を、外周工程の後に、床部1に点状に固定すれば良い。
【0038】
(5)上述の実施形態において作業者は、外周工程の後に、防水シート4を内周領域Bに敷設するが、作業者は、外周工程の前に、防水シート4を内周領域Bに敷設しても良い。また、作業者は、金具固定工程の前に防水シート4を内周領域Bに敷設しても良いし、金具固定工程と同時並行で防水シート4を内周領域Bに敷設しても良い。更に、防水シート4の敷設と、固定金具6に対する防水シート4の融着と、が同時並行で行われても良い。
【0039】
(6)上述の外周工程で、防水シート3の敷設前に作業者は、外周領域Aの床部1に対して接着剤を塗布するが、この実施形態に限定されない。例えば、防水シート3の敷設と、接着剤の塗布と、が同時並行で行われても良い。また、防水シート3の敷設後に、防水シート3の裏面部分と床部1との少なくとも一方に接着剤が塗布されて、防水シート3の裏面部分と床部1とが接着されても良い。
【0040】
(7)上述の実施形態で作業者は、外周工程で床部1における外周領域Aに敷設された防水シート3を、床部1に全面接着固定しているが、この実施形態に限定されない。床部1における外周領域Aのうち、パラペット部2と隣接する入隅部分は、特に風の影響を受け易い部分である。また、当該入隅部分は、壁面部2aが立ち上がる領域の近傍に位置するため、施工性が悪くなり易い箇所でもある。このため、当該入隅部分で防水シート3が接着剤で床部1と接着するだけであると、時間の経過とともに防水シート3が浮き上がり易くなり、防水シート3の床部1に対する防水性が低下する虞がある。
【0041】
このような不都合を回避するため、
図9に示されるように、床部1における外周領域Aのうち、パラペット部2と隣接する入隅部分に、長尺状の固定金具8が備えられても良い。平面視において固定金具8の長手方向はパラペット部2に沿って延びる。固定金具8は、外周領域Aのうちのパラペット部2と隣接する外周縁の入隅部分に、ビス8aによって固定されている。これにより、固定金具8は床部1に強固に固定され、床部1と固定金具8とが一体的な防水下地を構成する。作業者は、固定金具8の上に防水シート3が位置する状態で、床部1の外周形状に沿ってロール状の防水シート3を展開する。そして作業者は、誘導加熱装置(不図示)を用いて、防水シート3のうち、パラペット部2の位置する側の縁部分を、防水シート3の長手方向両端に亘って固定金具8に融着させる。また、作業者は、防水シート3のうち、固定金具8と融着する部分よりも内周側の部分、即ち床部1と接する部分を、接着剤を介して床部1に接着する。
【0042】
このように、外周工程で作業者は、防水シート3を固定金具8に熱で融着させ、かつ、防水シート3を床部1に接着剤で接着させることによって、防水シート3を防水下地(床部1及び固定金具8)に全面接着固定しても良い。これにより、防水シート3が接着剤で床部1と接着する構成と比較して、防水シート3は固定金具8と強固に接着している。また、固定金具8は床部1にビス8aで固定されている。その結果、当該入隅部分に風が強く作用する場合であっても、防水シート3は固定金具8から剥がれ難く、防水シート3と防水下地との接着状態が長期に亘って保持される。また、防水シート3の防水下地に対する防水性が長期に亘って保持される。
【0043】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
当該防水シート施工方法は、防水シートの新設に限らず、改修工事にも利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 :床部(防水下地)
3 :防水シート(第一防水シート)
4 :防水シート(第二防水シート)
A :外周領域
B :内周領域