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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】造粒セメント用圧縮混練装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/14 20060101AFI20230707BHJP
   B01F 27/09 20220101ALI20230707BHJP
   B01F 27/701 20220101ALI20230707BHJP
   B01J 2/10 20060101ALI20230707BHJP
   C04B 7/00 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
B28C5/14
B01F27/09
B01F27/701
B01J2/10 Z
C04B7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020169529
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061552
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000177483
【氏名又は名称】三和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】和田 恵男
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-536792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C1/00-9/04
B01F25/00-35/95
C04B7/00-7/60
B01J2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントに油脂類を混練した複合材料を圧縮混練する造粒セメント用圧縮混練装置であって、複合材料を投入する受皿体を有するケーシング機構と、受皿体内に投入した複合材料を圧縮混練する圧縮混練具を有する圧縮混練機構と、を備え、ケーシング機構は、受皿体を水平移動するように構成され、圧縮混練機構は、水平移動する受皿体内の複合材料を混練用圧縮混練具で圧縮混練するように構成されたことを特徴とする造粒セメント用圧縮混練装置。
【請求項2】
前記圧縮混練具は、前記複合材料を撹拌する切換羽根体と、撹拌された前記複合材料を押圧する押圧ローラーとを備え、前記受皿体内で前記複合材料の撹拌と押圧を交互に繰り返して圧縮混練するように構成した請求項1記載の造粒セメント用圧縮混練装置。
【請求項3】
前記圧縮混練具は、前記切換羽根体と前記押圧ローラーとが前記受皿体の移動方向に対して直交するように配設され、且つ、前記切換羽根体と前記押圧ローラーとが並設された請求項2記載の造粒セメント用圧縮混練装置。
【請求項4】
前記圧縮混練機構は、前記圧縮混練具を支持する支持脚体と、前記圧縮混練具を回転せしめる回転用モーターとを備えた請求項1乃至3いずれか記載の造粒セメント用圧縮混練装置。
【請求項5】
前記ケーシング機構は、前記受皿体を載置支持する支持台と、支持台上の前記受皿体を水平移動せしめる移動歯車と、移動歯車を回転せしめる移動用モーターとを備え、前記圧縮混練具による複合材料の混練位置を水平移動するように構成した請求項1記載の造粒セメント用圧縮混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モルタル又はコンクリートの強度や流動性が向上する造粒セメントを製造する際に、セメントに油脂類を混練した複合材料を均一に混練する造粒セメント用圧縮混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートは、骨材、セメントに水を混練しながら生コン車により現場まで運搬するのが一般的であるが、混練直後から水和反応が進行して徐々に流動性が無くなることになる。そのため、生コン車からポンプに圧送して打設する過程で、ホース内で固化してしまうことが頻繁に発生していた。そこで、この不具合を解消するため、所謂、造粒セメントが使用される。
【0003】
この造粒セメントは、モルタル又はコンクリートの流動化及び強度が向上し、更に各セメント粒子の表面が変成されていないため、養生硬化後の強度低下を防止することができる特殊な構造を成している。そして、この造粒セメントの製造法が特許文献1に記載されている。
【0004】
この造粒セメントの製造法は、セメント及び油脂類を含む複合材料を混練して圧縮造粒体としての造粒セメントを製造する方法である。すなわち、複合材料の混合撹拌工程と、該混合撹拌工程による1次処理材料の粉砕・解砕工程と、該粉砕・解砕工程による2次処理材料の圧縮造粒工程と、前記圧縮造粒工程で製造された造粒セメントの焼成工程とを有する製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6067656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の製造方法では、セメント及び油脂類を含む複合材料を混練する際に、均一に混練するのに多くの時間や手間を要するものであった。すなわち、セメント及び油脂類を含む複合材料を混練する際に、一般のコンクリートミキサーで混練すると複合材料を均一にするまでに極めて多くの時間がかかる課題があった。
【0007】
仮に、複合材料の混練工程が不十分で複合材料が均一に混練されていない場合、流動化及び強度が阻害されてしまい、造粒されたセメントの表面側から中心側へ徐々に水が浸透する作用が損なわれ、圧縮造粒工程で造粒できなくなるおそれもある。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、油脂類を含むセメントにて製造される造粒セメントにおいて、セメント及び油脂類を混練した複合材料を、あたかも、練り込んだうどんや蕎麦のごとく均一な状態に圧縮混練することができる造粒セメント用圧縮混練装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、セメントに油脂類を混練した複合材料を圧縮混練する造粒セメント用圧縮混練装置であって、複合材料を投入する受皿体11を有するケーシング機構10と、該受皿体11内に投入した複合材料を圧縮混練する圧縮混練具21を有する圧縮混練機構20と、を備え、ケーシング機構10は、受皿体11を水平移動するように構成され、圧縮混練機構20は、水平移動する受皿体11内の複合材料を混練用圧縮混練具21で圧縮混練するように構成されたことにある。
【0010】
第2の手段の前記圧縮混練具21は、前記複合材料を撹拌する切換羽根体22と、撹拌された前記複合材料を押圧する押圧ローラー23とを備え、前記複合材料の撹拌と押圧を交互に繰り返して圧縮混練するように構成している。
【0011】
第2の手段の前記圧縮混練具21は、前記切換羽根体22と前記押圧ローラー23とが前記受皿体11の移動方向に対して直交するように配設され、且つ、前記切換羽根体22と前記押圧ローラー23とが並設されている。
【0012】
第3の手段の前記圧縮混練機構20は、前記圧縮混練具21を支持する支持脚体24と、前記圧縮混練具21を回転せしめる回転用モーター25とを備え、
水平移動する前記受皿体11の内部で前記圧縮混練具21を回転させて前記受皿体11内の前記複合材料を圧縮混練するように構成したものである。
【0013】
第4の手段の前記ケーシング機構10は、前記受皿体11を載置支持する支持台12と、該支持台12上の前記受皿体11を水平移動せしめる移動歯車13と、を備え、前記圧縮混練具21による複合材料の混練位置を水平移動するように構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載のごとく、ケーシング機構10は、受皿体11を水平移動するように構成され、圧縮混練機構20は、水平移動する受皿体11内の複合材料を混練用圧縮混練具21で圧縮混練するように構成されたことにより、セメント及び油脂類を混練した複合材料をあたかも、練り込んだうどんのように、極めて効率良く均一に圧縮混練することができる。
【0015】
請求項2のように、圧縮混練具21は、複合材料を撹拌する切換羽根体22と、撹拌された複合材料を押圧する押圧ローラー23とを備え、複合材料の撹拌と押圧を交互に繰り返して圧縮混練するように構成しているので、複合材料のセメントと油脂類とを合理的に圧縮混練することが可能になった。
【0016】
請求項3によると、換羽根体22と押圧ローラー23とを並設しているので、複合材料の撹拌と押圧とを集中的に繰り返すことになり、セメント及び油脂類を含む複合材料を極めて効率良く均一に圧縮混練することができる。しかも、圧縮混練具21は、切換羽根体22と押圧ローラー23とが受皿体11の移動方向に対して直交するように配設されているので、受皿体11の水平移動に沿って受皿体11内部の複合材料を全体に圧縮混練することが可能になる。
【0017】
請求項4のごとく、水平移動する前記受皿体11の内部で圧縮混練具21を回転させて受皿体11内の複合材料を圧縮混練するように構成しているので、圧縮混練具21の位置にある受皿体11内の複合材料を、圧縮混練機構20で効率よく、集中的に圧縮混練することができる。
【0018】
請求項5のように、ケーシング機構10は、圧縮混練具21による複合材料の混練位置を水平移動するように構成しているので、受皿体11内の複合材料を全体的に効率良く圧縮混練することが可能になった。
【0019】
このように本発明によると、造粒セメントを製造する際に、セメント及び油脂類を含む複合材料を極めて効率良く均一に圧縮混練することができるといった当初の目的を達成した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施例を示す平面図である。
図3】本発明の一実施例を示す側面図である。
図4】本発明の混練用回転羽根体を示す斜視図である。
図5】本発明の混練用回転羽根体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、セメントに油脂類を混練した複合材料を、あたかも、練り込んだうどんや蕎麦のごとく均一な状態に圧縮混練する圧縮混練装置であり、ケーシング機構10と連結体20とを備えるものである(図1参照)。
【0022】
ケーシング機構10は、受皿体11と、支持台12と、移動歯車13と、移動用モーター14とを備えた構成である(図2参照)。
【0023】
受皿体11は、複合材料を投入する皿状部材であり、投入された複合材料ごと受皿体11を水平移動するように構成している(図1参照)。図示例では、平面長方形状の底板11Aと、この底板11Aの長手方向に沿った側縁部11Bと、底板11Aの長手端部に設けた折返し側縁部11Cとで構成する(図2参照)。更に、この折返し側縁部11C側の底板11Aに、開閉自在な排出口11Aaを設けている。
【0024】
図3参照)
図示の排出口11Aaは、閉塞板11Abにて閉塞されている(図2参照)。そして、この閉塞板11Abは折返し側縁部11Cに揺動自在に設けた排出レバー11Dに連動し、排出レバー11Dの操作で開閉するように設けている(図3参照)。したがって、均一に混練された複合材料は、この排出口11Aaを開口して排出するものである。
【0025】
支持台12は、この受皿体11を載置支持する支持部材である(図1参照)。更に、この支持台12の上部に沿って設けた移動歯車13と、この移動歯車13を回転せしめる移動用モーター14で支持台12上の受皿体11を往復移動するように構成している(図3参照)。図示の移動歯車13は、所謂ラックアンドピニオン機構を使用したものであり、移動用モーター14の回転でピニオンギヤ13Aが回転し、ラックギヤ13Bを固定した受皿体11が往復移動する機構である(図1参照)。
【0026】
尚、図示のケーシング機構10は、受皿体11が水平往復移動する構成であるが、この受皿体11を水平方向に回転移動するようにケーシング機構10を構成することも可能である。そして、回転する受皿体11の上から内部の複合材料を圧縮混練する構成である(図示せず)。
【0027】
一方、圧縮混練機構20は、水平移動する受皿体11内の複合材料を混練する圧縮混練具21を備えている(図1参照)。
【0028】
図示の圧縮混練機構20は、この圧縮混練具21を支持する支持脚体24と、圧縮混練具21を回転せしめる回転用モーター25とで構成している(図2参照)。
【0029】
圧縮混練具21は、複合材料を撹拌する切換羽根体22と、撹拌された複合材料を押圧する押圧ローラー23とを並設したものである(図2参照)。すなわち、切換羽根体22は、複合材料を撹拌する回転部材であり、回転用モーター25による回転で受皿体11内の複合材料を切り起こして撹拌する。
【0030】
図示の切換羽根体22は、回転軸22Aの周側面に、複数の羽根22Bを立設してあり、この羽根22Bが受皿体11内の複合材料を切り刻むように撹拌する(図4参照)。この羽根22Bは、羽根22Bの側面に垂直に立設する支持部22Baに、円弧状に屈曲した帯板形状の撹拌部22Bbを設けたものである(図5参照)。尚、切換羽根体22の構成は図示例に限定されず、任意の変更が可能である。
【0031】
一方、押圧ローラー23は、撹拌された複合材料を受皿体11方向に押圧するローラー部材である(図1参照)。この押圧ローラー23は、自重で回転する。したがって、撹拌された複合材料がこの押圧ローラー23の下を通過する際に押圧され、押圧ローラー23が回転すると複合材料が圧縮される(図3参照)。このように、圧縮混練具21は、複合材料の撹拌と押圧を交互に繰り返して圧縮混練するように構成したものである。
【0032】
図示例では、切換羽根体22と押圧ローラー23とが受皿体11の移動方向に対して直交するように配設されている(図2参照)。また、一対の切換羽根体22の間に押圧ローラー23が近接するように並設されている。このように、受皿体11内で複合材料の撹拌と押圧を近接する位置で繰り返して圧縮混練するように構成したことで、セメント及び油脂類を含む複合材料を極めて効率良く均一に圧縮混練することができる。
【0033】
支持脚体24は、水平移動するケーシング機構10の上に圧縮混練具21を支持する部材である(図1参照)。図示の支持脚体24は、一対の略板体状を成し、圧縮混練具21を構成する切換羽根体22や押圧ローラー23の両端部を回転自在に支持している(図3参照)。
【0034】
また、図示例では、一対の支持脚体24で1台の圧縮混練具21を支持しているが、受皿体11のサイズや形状によって、複数の圧縮混練具21を支持するように構成したり、あるいは支持脚体24の数を増やしたりすることも可能である。
【0035】
本発明において、セメント及び油脂類を含む複合材料とは、少なくとも、セメントに植物性、鉱物性の油脂類を含むものである。更に、複合材料に、水を吸収すると造粒セメントを内側から崩壊させる崩壊材や、混合材料の粘性を向上させて粒状化させ易くする性質を有する増粘材を添加しても良い。そして、本発明圧縮混練装置にて圧縮混練された複合材料を、ロール型圧縮造粒機、打錠機等の圧縮造粒機に投入して所定形状の造粒セメントを連続的に圧縮造粒する。更に、製造された造粒セメントを焼成して、表面を硬化させても良い。
【0036】
尚、本発明は図示の構成に限定されるものではなく、ケーシング機構10や圧縮混練機構20等の構成は、本発明の要旨を変更しない範囲の設計変更は自由に行える。
【符号の説明】
【0037】
10 ケーシング機構
11 受皿体
11A 底板
11Aa 排出口
11Ab 閉塞板
11B 側縁部
11C 折返し側縁部
11D 排出レバー
12 支持台
13 移動歯車
13A ピニオンギヤ
13B ラックギヤ
14 移動用モーター
20 圧縮混練機構
21 圧縮混練
22 切換羽根体
22A 回転軸
22B 羽根
22Ba 支持部
22Bb 撹拌部
23 押圧ローラー
24 支持脚体
25 回転用モーター

図1
図2
図3
図4
図5