(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】係留式の帆と固定局において帆を折り畳むための手段を有する固定局とを含むシステム
(51)【国際特許分類】
B63H 9/071 20200101AFI20230707BHJP
B63H 9/08 20060101ALI20230707BHJP
B63H 9/06 20200101ALI20230707BHJP
【FI】
B63H9/071
B63H9/08
B63H9/06 C
(21)【出願番号】P 2020569911
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 FR2019051388
(87)【国際公開番号】W WO2019239044
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520485893
【氏名又は名称】エアシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・アルイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ブレインズ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・コルテ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ガニェール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク・オルテガ
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・リゴー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアネイ・イヴェール
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-532409(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0099196(US,A1)
【文献】国際公開第2013/164446(WO,A1)
【文献】特表2010-503569(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02940783(FR,A1)
【文献】中国特許出願公開第101786498(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 9/071
B63H 9/08
B63H 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帆(1)と、固定局(22)であって、マスト(23)、およびけん引ケーブル(3)によって前記帆(1)に接続されたウィンチを含む固定局(22)とを含む、とりわけ船のためのけん引システムであって、
前記帆(1)の前縁(7)に沿って互いに離隔されることによって、前記帆(1)の前記前縁(7)に締結された端部をそれぞれが有する、何本かの折り畳み綱(16~18)と、
前記前縁(7)に締結されたこれらの折り畳み綱の前記端部を前記マスト(23)に戻すために、このマスト(23)に沿った少なくとも2つの異なる高さまで、少なくとも3本の折り畳み綱(16~18)を引っ張るための手段と、
を含む、けん引システム。
【請求項2】
前記けん引ケーブル(3)によって担持される基部ユニット(21)であって、各折り畳み綱(16~18)がこの基部ユニット(21)によって担持される端部を有する、基部ユニット(21)と、
前記固定局(22)に取り付けられ、前記帆(1)が前記ウィンチによって戻されるときに前記基部ユニット(21)を受けるソケット(41)と、
前記折り畳み綱(16~18)を受けるために前記マスト(23)に取り付けられた滑車(31~33)またはスナップフックの偏向部材と、
各折り畳み綱の上端を前記マスト(23)に戻すために、偏向部材(31~33)の中に受けられる各折り畳み綱(16~18)を引っ張るための手段と、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各折り畳み綱(16~18)を引っ張るための前記手段が、前記帆(1)を前記ウィンチで戻す前に前記偏向部材(31~33)を通過したことによって前記マスト(23)に並行して進む制御綱(27~29)を含み、
これらの制御綱(27~29)が次いで前記折り畳み綱(16~18)に接続されてこれらの折り畳み綱(16~18)を引き寄せる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記固定局(22)がプレート(26)を含み、
各制御綱(27~29)が、前記帆(1)を前記ウィンチで戻す前に保留されてこのプレート(26)に締結される接続部材(47~49)を装着された端部を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記固定局(22)が、各制御綱(27~29)を引き寄せるためのウィンチを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
各制御綱(27~29)が、折り畳み綱(16~18)の端部において接続部材(47~49)を装着された端部を有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
各制御綱(27~29)が、前記折り畳み綱(16~18)の前記端部の間に位置された折り畳み綱部(16~18)に対する接続部材(47~49)を装着された端部を有する、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記マスト(23)が、それを取り囲むことによって前記折り畳み綱(16~18)の前記端部の間に位置する折り畳み綱部(16~18)に接続可能な偏向部材をそれぞれが担持するスライダ(61~63)を装着され、
各スライダが、前記マストに沿って移動可能であり、
折り畳み綱(16~18)を引っ張るための手段が、接続部材の中に受けられる、請求
項1または2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帆を固定局に戻してこの帆を折り畳むための手段を有する、係留式の帆(tethered sail)が接続された固定局を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、より詳細には、固定局と、カイトサーフィンまたはパラグライディングに使用される帆のタイプの帆とを含むシステムに関し、その帆は、係留されている、すなわちけん引ケーブルによってこの固定局に接続されているといわれる。実際には、固定局は、それが緊密に固定される船のデッキの上に設置され、けん引ケーブルにおいて異なる制御綱および接続綱を有する柔軟な翼を含む帆が、船を曳航するためにこの固定局に取り付けられることによって配備される。
【0003】
そのようなけん引システムは、エネルギー変換器としても使用され得、固定局は、ひいては、地上に設置され、帆は、風の影響下の帆のけん引によるケーブルの移動によって回転する発電機を駆動する。
【0004】
そのような設備が、船に装備することを意図されるとき、この船は、この船の原動機付き推進システムに加えて船にけん引力を与えるために、一般的に貨物タイプの商船であり、それは、燃料消費を大幅に低減することを可能にする。
【0005】
そのような設備に伴って、風が満足できる風向と風力とを有するときに、帆を容易に配備することができ、たとえば気象条件がもはや適切でないときに、帆を戻して帆を折り畳むことができることが必要となる。
【0006】
この構成では、固定局は、帆を自動的に取り出して戻すことを可能にするウィンチを装着され、固定局は、帆が戻されたときに帆がそれに沿って収容され(placed)なければならない垂直マストも含む。
【0007】
そのような帆は、それが貨物タイプの船に適する大きさであるときには大きいサイズを有し、帆をマストに沿って容易に、速やかにかつ安全に折り畳むための手段を設けることが必要である。実際に、そのような帆が50メートル以上の帆幅を有するとき、その帆幅(span)およびその質量が、帆を折り畳むことに問題を生じ、その問題は、商船にはそのような動作を遂行するために十分な数の有能な乗組員がいないという事実によってさらに際立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、帆がこの固定局に戻されたときに、そのような帆を固定局のマストの上に折り畳むことを簡素化するための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この趣旨に対して、本発明は、目的のために、帆と、固定局であって、マスト、およびけん引ケーブルによって帆に接続されたウィンチを含む固定局とを含む、とりわけ船のためのけん引システムを有し、けん引システムは、
-帆の前縁に沿って互いに離隔されることによって帆の前縁に締結された端部をそれぞれが有する何本かの折り畳み綱と、
-前縁に締結されたこれらの折り畳み綱の端部を、このマストに沿った少なくとも2つの異なる高さにおいてマストに戻すために、少なくとも3本の折り畳み綱を引っ張るための手段と、を含む。
【0010】
この配列によって、大サイズの帆が固定局に戻されたとき、この帆の翼の上に恒久的に設置される折り畳み綱は、帆をデッキから折り畳むことを可能にする。
【0011】
本発明は、
-けん引ケーブルによって担持される基部ユニットであって、各折り畳み綱がこの基部ユニットによって担持される端部を有する、基部ユニットと、
-固定局に取り付けられ、帆がウィンチによって戻されるときに基部ユニットを受けるソケットと、
-折り畳み綱を受けるためにマストに取り付けられた滑車またはスナップフックなどの偏向部材(deflection member)と、
各折り畳み綱の上端をマストに戻すために、偏向部材の中に受けられる各折り畳み綱を引っ張るための手段と、を含むようなシステムにも関する。
【0012】
本発明は、各折り畳み綱を引っ張るための手段が、帆をウィンチで戻す前に偏向部材を通過したことによってマストに並行して進む制御綱を含み、これらの制御綱が、次いで、折り畳み綱に接続されてこれらの折り畳み綱を引き寄せるようなシステムにも関する。
【0013】
本発明は、固定局がプレートを含み、各制御綱が、帆をウィンチで戻す前にこのプレートに締結されて保留される接続部材を装着された端部を含むようなシステムにも関する。
【0014】
本発明は、固定局が、各制御綱を引き寄せるためのウィンチを含むようなシステムにも関する。
【0015】
本発明は、各制御綱が、折り畳み綱の端部において接続部材を装着された端部を有するようなシステムにも関する。
【0016】
本発明は、各制御綱が、この折り畳み綱の端部の間に位置する折り畳み綱部に対する接続部材を装着された端部を有するようなシステムにも関する。
【0017】
本発明は、マストが、それを取り囲むことによってこの折り畳み綱の端部の間に位置する折り畳み綱部に接続可能な偏向部材をそれぞれが担持するスライダを装着され、各スライダがマストに沿って移動可能であり、折り畳み綱を引っ張るための手段が接続部材の中に受けられるようなシステムにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明による、固定局に接近する帆の概観図である。
【
図3】本発明による、固定局に戻される帆の概観図である。
【
図4】本発明による、折り畳み動作の開始における帆の概観図である。
【
図5】本発明による、折り畳み動作の間の帆の図である。
【
図7】本発明による、システムの中のプレートだけでなく、ソケットおよび接近中の基部ユニットも示す外観図である。
【
図8】本発明による、システムの中のプレートだけでなく、所定位置におけるソケットおよび基部ユニットも示す外観図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態による、折り畳み動作の開始における帆の概観図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態による、折り畳み動作の間の帆の概観図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態による、固定局に接近する帆の概観図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態による、固定局に戻された帆の概観図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態による、折り畳み動作の開始における帆の概観図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態による、折り畳み動作の間の帆の図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態による、折り畳まれた帆の図である。
【
図16】この帆を収納空間の中に戻し始める時点に示される、そのマストの下に収納空間を装着された、本発明によるシステムの外観図である。
【
図17】この帆を収納空間に戻している間に示される、マストの足元に収納空間を装着された、本発明によるシステムの外観図である。
【
図18】帆が収納空間の中に完全に戻されたときに示される、そのマストの下に収納空間を装着された、本発明によるシステムの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1では、本発明による帆1は、翼2の下面6に接続された端部と、けん引ケーブル3の端部に接続された別の端部とをそれぞれが有するハンガー4のセットによってけん引ケーブル3に接続された柔軟な翼2を含む。
【0020】
翼2は、この翼の左側9から右側11に延びる前縁7および後縁8を含むおおむね楕円形を有し、右側および左側は、
図1におけるものとして、すなわち、風を背中に受けながら帆に面して位置する観察者に対するものと見なされる。この翼が気流の中にあるときに適切な揚力を取得するのに好適なプロファイルおよびアーチを有するように組み立てられた帆布または布地のいくつかの部分から、この翼は形成される。この帆1は、同じく、翼の左側9および右側11にそれぞれ締結されたそれらの端部を有する2つの横シート12、13を装着され、それらの他の端部は、けん引ケーブル3によって担持される制御部材14によって保持される。
【0021】
この帆は、同じく、中心上部折り畳み綱16と、横折り畳み綱17a、17bの中央ペアと、横折り畳み綱18a、18bの下部ペアとを装着される。上部折り畳み綱16は、前縁7の中央に締結された上端と、けん引ケーブル3によってそれ自体を担持される基部ユニット21によって担持される下端とを含む。
【0022】
中央横折り畳み綱17aは、前縁7の中央端部と左端部との間の中ほどで締結された上端と、基部ユニット21によって担持される下端とを含む。中央横折り畳み綱17bは、前縁の中央端部と右端部との間の中ほどで締結された端部と、基部ユニット21によって担持される別の端部とを含むことによって綱17aと対称である。
【0023】
下部横折り畳み綱18aは、前縁7の左の端部に締結された上端と、基部ユニット21によって担持される下端とを含む。下部横折り畳み綱18bは、前縁7の右の端部に締結された端部と、基部ユニット21によって担持される別の端部とを有し、綱18aと対称である。
【0024】
この帆1は、
図2の参照符号22によって示される固定局にケーブル3によって接続され、固定局は、たとえば、図示されないこの船に取り付けられた推進システムに加えて船を曳航することができるユニットを形成するために、船のデッキに取り付けられる。
【0025】
固定局22は、垂直に延びるマスト23を含み、マスト23は、けん引ケーブル3が取り付けられた、図示されないウィンチをその基部に装着され、このケーブル3は、マストの基部の近傍に位置する滑車24を通過する。この固定局22は、マストの基部および滑車24の近傍に位置するプレート26だけでなく、帆をマスト23に沿って折り畳むことを可能にする、それぞれ上部、中央および下部と呼ばれる3本の制御綱27、28および29も含む。
【0026】
上部制御綱27は、マストの基部の近傍に位置する図示されないウィンチタイプの制御部材に接続された端部を含み、上部制御綱27は、このマスト23に並行して進み、偏向部材、ここではマストの上端によって担持される上部滑車31を通過し、上部制御綱27の他端を保持するプレート26まで延びる。
【0027】
中央制御綱28は、同じく、図示されない別のウィンチに接続され、マストの基部の近傍に位置する端部を含む。中央制御綱28は、このマスト23に並行して進み、偏向部材、ここではマストの高さの約3/4にマストによって担持される中央滑車32を通過し、中央制御綱28の他端を保持するプレート26まで延びる。
【0028】
下部制御綱29は、同じく、マストの基部の近傍に位置する、図示されないウィンチタイプの別の制御部材に接続された端部を含む。下部制御綱29は、このマスト23に並行して進み、偏向部材、ここではマストの高さの約半分にマストによって担持される下部滑車33を通過し、下部制御綱29の他端を保持するプレート26まで延びる。
【0029】
帆1を固定局22に戻すことは、
図3に示すように、この帆の基部ユニット21がプレート26の高さになるまで、
図2の状況に対応する、けん引ケーブル3のウィンチの作動によってもたらされる。
【0030】
図7に見られるように、基部ユニット21は、プレート34の中心領域を貫通するおおむね円筒形のシース36に緊密に固定されたプレート34を含み、このシース36は、プレート34に直角に向けられ、シース36が緊密に固定されるけん引ケーブル3によってシース自体を貫通される。
【0031】
各折り畳み綱16、17a、17b、18a、18bは、端部によって担持され、プレート34の中に形成される対応する穴に係合されるスナップフックによって基部ユニット21において保持されるその端部を有する。
図7の例では、プレート34は正方形の外形を有し、その縁部のうちの1つに沿って3つの穴を含み、これらの穴は、それぞれ、折り畳み綱の端部によってそれぞれ担持される3つのスナップフック37、38、39を受ける。
【0032】
第1のスナップフック37は、上部折り畳み綱16の端部によって担持され、第2のスナップフック38は、折り畳み綱17aおよび17bの端部によって担持され、第3のスナップフック39は、折り畳み綱18aおよび18bの端部によって担持される。
【0033】
17として示される折り畳み綱の中央ペアの折り畳み綱17aおよび17bは、ここでは、第2のスナップフック38に接続されたそれらの端部を有し、この中央ペア17はまた、Y字型のケーブルの形状を有することができる。上記は同じく、それらの端部が第3のスナップフック39に接続される、18で示される折り畳み綱の下部ペアの綱18aおよび18bに適用される。
【0034】
図7および
図8に見られるように、局22はまた、基部ユニット21を受けるための固定ソケット41を装着される。このソケット41は、その中心を貫通され、その上面においてチューブチャネラ43を担持する支持プレート42を含む。プレート42およびチャネラ43は、ソケットの中で滑動することができるけん引ケーブル3によって貫通される。
【0035】
帆の接近の終わりにおいて、シース36は、基部ユニット21が次いでプレート26の高さに、すなわちプレート26に面して正確に配置されるように、その下部によってチャネラ43の中に係合される。この状況では、基部ユニット21はまた、シース36の下部を半径方向に超えて、シースがこのチャネラの中に組み込まれる(nest)ときにチャネラの対応する切り欠き46に係合する突起44によって、プレート26に対して正確に方向付けられる。
【0036】
図7および
図8に見られるように、制御綱27、28および29は、3つの他のスナップフック47、48および49によってプレート26において保持されるそれらの端部を有する。このプレート26は、ここでは、基部ユニット21のプレート34に面して配置されるその縁部に沿った3つの穴を含むおおむね長方形のプレートを有し、これらの3つの穴はスナップフック47~49を受ける。
【0037】
上部制御綱27は第4のスナップフック47に接続されたその端部を有し、中央制御綱28は第5のスナップフック48に接続されたその端部を有し、下部制御綱29は、第6のスナップフック49に接続されたその端部を有する。
【0038】
加えて、固定局22は、それらの端部が、それぞれ、スナップフック47、48および49に接続された上部戻り綱51、中央戻り綱52および下部戻り綱53をさらに含む。各戻り綱は、対応する滑車の中を通り、図示されないウィンチタイプの制御部材に接続されたその対向する端部を有する。これらの滑車54、56および57は、プレート26によって担持される。
【0039】
帆1の基部ユニットが完全に戻されたとき、折り畳み綱16~18の端部は、それぞれ、スナップフック47~49によって制御綱27~29の端部に接続される。具体的には、操作者または装置が、そのスナップフック37から上部折り畳み綱16の端部を切り離し、操作者または装置は、この端部をスナップフック47の中に通す。同じ動作が、折り畳み綱のペア17および18の端部をそれぞれ制御綱28および29に接続するために、折り畳み綱のペア17および18に対して遂行され、その動作は、
図8に示す状況に対応する。
【0040】
制御綱27~29がそれぞれスナップフック47~49によって折り畳み綱16~18に接続されると、ウィンチが作動してすべて帆の下降が完了し、マスト23に沿った翼2の折り畳み動作を開始することができる。
【0041】
次いで、上部折り畳み綱16に接続された上部制御綱27が、
図4に示すようにマスト23の基部から引っ張られ、綱16が締結されている前縁の中央が上部滑車31、すなわちマスト23の上端に近づくようにし、それは
図5の状況に対応する。
【0042】
理解されるように、綱27が引っ張られるとき、スナップフック47は、上部滑車31が形成する偏向部材を通過し、次いで、上部折り畳み綱16が係合される。
【0043】
この段階において、上部制御綱27が、たとえばタペットでブロックされ、次に、
図5に示すように、折り畳み綱17aおよび17bの中央ペア17に接続されている中央制御綱28が、マスト23の基部から引っ張られる。これは、前縁の左部分および右部分を中央滑車32、すなわちマストに戻すことを可能にする。次いで、この綱28がブロックされる。ここでも、スナップフック48が、中央滑車32が形成する偏向部材を通過し、次いで、ペア17の折り畳み綱が係合される。
【0044】
次いで、折り畳み綱18aおよび18bの下部ペア18に接続される下部制御綱29が、次に、この綱29をブロックする前に翼2の左端部および右端部を下部滑車33に戻すために引っ張られる。ここでも、スナップフック49が、下部滑車33が形成する偏向部材を通過し、次いで、ペア18の折り畳み綱が係合される。
【0045】
図6に示すこの状況では、翼2は、マスト23に折り畳まれ、すなわちその前縁の中心で2つにマスト23の上端に折り畳まれ、その前縁の左半分および右半分は、滑車31~33に対してマスト23に保持されることによって、マスト23に沿って互いに対して平行に延びる。
【0046】
折り畳みについて直前に行った説明では、3本の制御綱は、プロセスの理解を容易にするために、順々に作動されたが、これらの綱は、同じく、翼をマストに折り畳むために、同時に、またはそれらの制御綱のすべてを引っ張ることを主に構成する異なるシーケンスに従って作動され得る。
【0047】
図2~
図4に示す本発明の第1の実施形態では、制御綱27~29の端部は、前縁がマスト23に折り畳まれることをもたらすために折り畳み綱16~18の端部に接続されるが、制御綱は、同じく、本発明の第2の実施形態の場合のように異なって使用され得る。
【0048】
図9および
図10に示すこの第2の実施形態では、折り畳み綱16~18は、翼を折り畳むために基部ユニット21から切り離されない。
図9ように、帆の基部ユニットが固定局に戻されたとき、上部制御綱27の下端は、上部折り畳み綱16の端部によって基部ユニット21に締結されたままの上部折り畳み綱16の周りに送られるために、プレート26から切り離される。言い換えれば、制御綱27を終端させる第4のスナップフック47は、基部ユニットから上部折り畳み綱16を切り離すことなく、上部折り畳み綱16の周りに送られるために、プレート26から切り離される。
【0049】
次いで、
図10におけるように、上部制御綱27は、翼の前縁の中央を上部滑車31に戻すように作動される。理解されるように、綱27が引っ張られるとき、スナップフック47は、上部滑車31によって形成される偏向部材を通過し、次いで、2つに折り畳まれた上部折り畳み綱16が係合される。
【0050】
同様に、次いで、中央制御綱28を終端する第5のスナップフック48が、プレート26から切り離され、基部ユニットから中央折り畳み綱17を切り離すことなく、中央折り畳み綱17のペアの周りに送られる。次いで、
図10に示すように、中央制御綱は、前縁の両側部をマストに戻すために引っ張られ得る。ここでも、スナップフック48が、中央滑車32が形成する偏向部材を通過し、次いで、中央ペア17の折り畳み綱が係合される。
【0051】
最後に、下部制御綱29を終端する第6のスナップフック49が、プレート26から切り離され、基部ユニットから下部折り畳み綱18のペアを切り離すことなく、下部折り畳み綱18のペアの周りに送られる。次いで、下部制御綱は、翼の両端部をマストに戻すために引っ張られ得る。ここでも、スナップフック49が、下部滑車33が形成する偏向部材を通過し、次いで、下部ペア18の折り畳み綱が係合される。
【0052】
綱29が完全に引っ張られたとき、帆は、
図6の構成と同一の構成に従ってマストに折り畳まれる。
【0053】
図11~
図15に示す第3の実施形態では、マストが、このマスト23に沿ってずらすことができる上部スライダ61、中央スライダ62および下部スライダ63を装着される。各スライダ61~63は、ここではスナップフックである偏向部材を装着され、折り畳みは、折り畳み綱のみによってのみもたらされる。この第3の実施形態では、折り畳み綱16~18は、帆をマストに折り畳むために基部ユニット21から切り離されない。
【0054】
これらのスライダ61~63は、たとえば、
図11におけるように翼が接近する間など、翼を折り畳む前には、マスト23の下部に配置される。これらのスライダは、
図12におけるように帆が固定局に戻されるとき、基部ユニット21に面するように、より特別に配置される。
【0055】
この段階において、上部スライダの端部に取り付けられたスナップフックは、上部折り畳み綱16の周りに送られ、スナップフックは、それがマストの頂部に到達するまで、マストに沿ってずらされる。加えて、
図13に示すように、上部折り畳み綱16は、その下端によって引きずり降ろされる。たとえば、綱16の下端は、基部ユニット21を通過して、基部ユニット21に固定されるが、依然として、この基部ユニット21の下面から、基部ユニット21を通して滑動するように引っ張られ得る。
【0056】
図14におけるように、スライダ61がその高い位置に到達して、綱16が完全に引っ張られると、翼2の前縁の中心が、マストの上端にブロックされる。
【0057】
この段階において、マスト23の高さの3/4に位置するその基準位置までこのスライダ62を上にずらす前に、中央スライダ62のスナップフックが、折り畳み綱17aおよび17bのペア17の周りに送られる。
図14に示すように、綱17のペアは、ここでも、基部ユニット21の下に引きずり降ろされ、翼の前縁の左および右の部分をマストに戻す。
【0058】
次いで、下部スライダ63のスナップフックが、下部折り畳み綱18a、18bのペア18の周りに送られ、この下部スライダ63は、マストの中央の高さに位置するその基準位置までずらされる。加えて、綱18のペアは、基部ユニット21の下に引きずり降ろされ、
図15に従って帆の折り畳みを終了するように、翼の左および右の端部をマストに戻される。
【0059】
折り畳みは、ここでも、スライダ61、62、63および綱16、17、18を逐次的に操作することによって説明されたが、スライダおよび綱は、このシーケンスが、3つのスライダをそれらの基準位置に設置することおよび綱16~18を完全に引っ張ることにおいて終了するときには、任意の好適なシーケンスに従って作動されてもよい。
【0060】
翼が折り畳まれると、そのサイズをマストに垂直の方向に沿って低減するように、翼が巻き付けられてよく、すなわち、その後縁ができるだけマスト23の近くに戻されてよい。この巻き付け動作は、ジグザグタイプのパターンに従って翼2の前縁7をその後縁に接続する、図示されない専用の巻き付け綱を使用して遂行され得る。次いで、巻き付け動作は、厳密に言うと、後縁8全体をできるだけ前縁7の近くに、すなわちできるだけマスト23の近くに戻すように巻き付け綱を引っ張ることから成る。図示されない巻き付け綱の操作、すなわちけん引は、折り畳み綱の操作と同様であり、これらの巻き付け綱は、有利なことに、基部ユニットによって担持される端部を有する。
【0061】
翼2が巻き付けられると、翼2は、マスト23の足元に位置する収納空間の中に戻され、
図16~
図18においてEで示されるこの空間は、マスト23の下または隣に位置する構造64によって取り囲まれる。
【0062】
より詳細には、スライダ61~63がレール66の中に搭載され、レールの直線部がマスト23に取り付けられ、レールはそれ自体の湾曲部によってこのマスト23の下に延ばされ、収納空間Eの上部に位置する水平延長部によって延ばされる。
【0063】
従って、各スライダ61~63は、マストに沿ってその基準位置からマスト23の下に位置するレールに対する水平延長部まで、レールに沿ってずらされ得る。
【0064】
翼2が折り畳まれてマスト23に巻き付けられると、システムは、スライダ61~63をそれらのレールに沿って下方にずらすように制御される。この移動の間に、折り畳まれた帆の下部は、最初に、
図16におけるようにマスト23の足元に到達し、次いで、
図17に見られるように湾曲部に係合され、このレールの水平部に沿って、すなわち収納空間Eの中に全体的に配置される。
【0065】
図16および
図18に見られるように、翼2が空間Eの中に収納されると、翼2は、それがマストに沿って折り畳まれるときのその長さより十分に短い長さを空間Eの中で占有するように、ひだ状にされる。マストに沿って折り畳まれた翼の長さは、その翼幅の半分に相当し、翼が空間Eの中にあるときに占有する長さは、図の例ではこの長さの約1/3である。
【0066】
スライダ61~63は、翼が折り畳まれるときにマストに沿ってスライダを離隔する間隔と比較して、スライダが空間Eの中にあるときにはより緊密な間隔である。
【0067】
スライダ61~63は、このレールの中を進む、たとえば図示されないチェーンのコンベヤの手段によってレールの中で保持することおよびずらすことができ、スライダ61~63の最大間隔を互いに対して限定するように、およびスライダ61~63がレールの水平部に配置されるときにそれらが互いにより接近することを可能にするように配列される。レールの下部は、スライダを離隔するチェーンの部分がレールから離れて移動することを可能にするように設けられ、それにより、このチェーンは、スライダを互いにより接近させることを可能にするサーペンタイン構成を占有することができる。
【0068】
第3の実施形態のスライダに関して直前に説明された配列は、第1および第2の実施形態の場合と同様であり、その結果、滑車31~33は、同じく、必要なときに滑車31~33をずらすことを可能にするチェーンによって互いに保持されることによって、レールの中を滑動するように設けられる。
【0069】
その上、説明された例では、折り畳み綱は、折り畳む前に基部ユニットに保持された折り畳み綱の下端を有するが、これらの折り畳み綱は、第1の実施形態の場合に制御綱の端部に簡単に把持されて接続されるように、それらの自由な下端を有することができる。
【0070】
さらに、折り畳み綱は、説明された例では専用綱であるが、これらの折り畳み綱は、翼のハンガーを形成することもでき、この場合には2つの追加の機能を有する。
【0071】
一般に、翼を広げることは、翼の折り畳みに対するシーケンスと同じシーケンスを逆順に遂行することによって得られる。プレート26と基部ユニット21との間で綱の接続を切る前に、戻り綱51~53は、スナップフック47~49をプレートおよび基部ユニットの近傍に戻すことを可能にする。
【符号の説明】
【0072】
1 帆
2 翼
3 けん引ケーブル
4 ハンガー
6 翼の下面
7 前縁
8 後縁
9 翼の左側
11 翼の右側
12 横シート
13 横シート
14 制御部材
16 中心上部折り畳み綱
17 横折り畳み綱の中央ペア
17a 中央横折り畳み綱
17b 中央横折り畳み綱
18 横折り畳み綱の下部ペア
18a 下部横折り畳み綱
18b 下部横折り畳み綱
21 基部ユニット
22 固定局
23 マスト
24 滑車
26 プレート
27 制御綱
28 制御綱
29 制御綱
31 上部滑車
32 中央滑車
33 下部滑車
34 プレート
36 シース
37 第1のスナップフック
38 第2のスナップフック
39 第3のスナップフック
41 固定ソケット
42 支持プレート
43 チャネラ
44 突起
46 切り欠き
47 第4のスナップフック
48 第5のスナップフック
49 第6のスナップフック
51 上部戻り綱
52 中央戻り綱
53 下部戻り綱
54 滑車
56 滑車
57 滑車
61 上部スライダ
62 中央スライダ
63 下部スライダ
64 構造
66 レール