(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】貼り合わせ基板の加工方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/07 20060101AFI20230707BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230707BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20230707BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
C03B33/07
H01L21/78 Q
B28D5/00 Z
B26F3/00 A
(21)【出願番号】P 2021149690
(22)【出願日】2021-09-14
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2020164672
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020164674
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 悠
(72)【発明者】
【氏名】武田 真和
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-191432(JP,A)
【文献】特開昭55-155325(JP,A)
【文献】特開2010-173905(JP,A)
【文献】特開2019-026505(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129252(WO,A1)
【文献】特開2014-089295(JP,A)
【文献】特開2014-048405(JP,A)
【文献】特開2019-175962(JP,A)
【文献】特開2013-025015(JP,A)
【文献】特開2009-237279(JP,A)
【文献】特開2009-116190(JP,A)
【文献】特開2009-069731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00-33/14
B28D 1/00-7/04
B26F 1/00-3/16
G02F 1/1333
H01L 21/78-21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とを貼り合わせてなる貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記貼り合わせ基板が、前記第1の基板と前記第2の基板との間に、前記第1の基板と前記第2の基板とが非接触である帯状の非接触空間を有してなるものであり、
前記第2の基板の前記非接触空間に沿う部分に、前記非接触空間の延在方向に垂直な断面が前記非接触空間に向かうほど幅狭となる除去対象部を設定する除去対象部設定工程と、
前記除去対象部の一対の境界面の少なくとも一方の境界面との交線に沿って前記第2の基板の前記第1の基板が貼り合わされていない面にスクライブラインを形成し、前記スクライブラインから前記境界面に沿ってクラックを伸展させる、スクライブ工程と、
前記スクライブ工程を経た前記貼り合わせ基板の前記第1の基板側にブレークバーを当接させてさらに押し込むことにより、前記クラックを、前記境界面に沿って伸展させ、前記除去対象部を前記境界面のところで前記第2の基板と分断させる、ブレーク工程と、
前記ブレーク工程によって分断された前記除去対象部を除去して、前記第1の基板において前記非接触空間を区画する部分を露出させる除去工程と、
を備えることを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記除去対象部設定工程において、前記除去対象部をテーパー状に設定し、
前記スクライブ工程においては、前記一対の境界面のそれぞれとの交線に沿って前記スクライブラインを形成し、前記スクライブラインから前記一対の境界面のそれぞれに沿ってクラックを伸展させ、
前記ブレーク工程においては、前記クラックを、前記一対の境界面のそれぞれに沿って伸展させることを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記スクライブ工程においては、刃先の稜線をなす2つの刃面のそれぞれの、前記稜線を含む平面に対する傾斜角が相異なるスクライビングホイールを、前記2つの刃面のうち前記平面に対する前記傾斜角が小さい方の刃面が前記除去対象部の側に位置する姿勢にて前記交線に沿って圧接転動させることにより、前記スクライブラインを形成する、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記一対の境界面のそれぞれが前記貼り合わせ基板の厚み方向となす角度が3°~30°であり、
前記2つの刃面のそれぞれの前記平面に対する前記傾斜角のうち小さい方を角度θ1とし、大きい方を角度θ2とするとき、
前記角度θ1が45°~75°であり、
前記角度θ2が55°~80°であり、
角度差θ2-θ1が5°~25°である、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記角度差θ2-θ1が10°~20°である、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記ブレーク工程においては、前記第1の基板の前記第2の基板が貼り合わされていない面に保持テープを貼付し、前記保持テープの上に前記ブレークバーを当接させる、こと
を特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
遅くとも前記除去工程の開始までに前記第1の基板の前記第2の基板が貼り合わされていない面にエキスパンドテープを貼付する貼付工程、
をさらに備え、
前記除去工程においては、前記エキスパンドテープを貼り合わせ基板の径方向に伸張させた状態で、前記除去対象部を前記貼り合わせ基板から除去する、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記除去工程においては、端部に粘着性部材を備えた治具の前記粘着性部材に前記除去対象部を付着させることにより、前記除去対象部を前記貼り合わせ基板から除去する、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項9】
請求項8に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記粘着性部材の幅が前記除去対象部の幅よりも小さい、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板がそれぞれ異なる材料からなる、
ことを特徴とする、貼り合わせ基板の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合わせ基板に対する加工に関し、特に、分断によって得られる個々の個片がそれぞれに貼り合わせ基板として用いられる母基板(貼り合わせ母基板)に対する加工に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶パネル用の基板その他に用いられる貼り合わせ基板を得る手法として、所定の封入部材を封入してなる部分とシール部材による封止部分とを規則的に設けつつ該シール部材にて2枚の大判のガラス基板を貼り合わせてなる母基板(貼り合わせ母基板)を、所定の位置にて分断する手法が、広く用いられている。
【0003】
そうした貼り合わせ基板を作製する過程において、個々の貼り合わせ基板を構成する2枚のガラス基板の一方の端部(端材部分)を除去して、他方のガラス基板のうち係る端材部分に対向する部分を露出させる加工が行われることがある。多くの場合、露出させられる部分には電気的接続用の端子部が設けられていることから、係る加工は端子出しとも称される。
【0004】
このような端子出し加工は、従来、母基板を分断して小片化(個々の貼り合わせ基板を得るための個片化)する過程の一貫として行われていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0005】
また、左右の刃角が異なるカッターホイールを用いてガラス単板から閉曲線で囲まれる部分を切断する方法も、すでに公知である(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-214053号公報
【文献】特開2014-214054号公報
【文献】特開平7-223828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に開示されているような、従来の端子出し加工は、母基板を構成する2枚の基板それぞれを縦横2方向に分断するいわゆるクロスカットの後に行われていた。
【0008】
しかしながら、近時、母基板の状態を維持したまま、つまりは、母基板の少なくとも一方の基板をクロスカットすることなく、該母基板において個々の貼り合わせ基板の端子部となる部分を露出させたいという技術的なニーズがある。
【0009】
一方、特許文献3に開示されているのはあくまで、単板から閉曲線で囲まれる部分を切断する方法に過ぎず、貼り合わせ基板の端子部を露出させる態様について、何らの開示も示唆もなされてはいない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、母基板の状態において個々の貼り合わせ基板の端子部となる部分を露出させることが可能な貼り合わせ基板の加工方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせてなる貼り合わせ基板の加工方法であって、前記貼り合わせ基板が、前記第1の基板と前記第2の基板との間に、前記第1の基板と前記第2の基板とが非接触である帯状の非接触空間を有してなるものであり、前記第2の基板の前記非接触空間に沿う部分に、前記非接触空間の延在方向に垂直な断面が前記非接触空間に向かうほど幅狭となる除去対象部を設定する除去対象部設定工程と、前記除去対象部の一対の境界面の少なくとも一方の境界面との交線に沿って前記第2の基板の前記第1の基板が貼り合わされていない面にスクライブラインを形成し、前記スクライブラインから前記境界面に沿ってクラックを伸展させる、スクライブ工程と、前記スクライブ工程を経た前記貼り合わせ基板の前記第1の基板側にブレークバーを当接させてさらに押し込むことにより、前記クラックを、前記境界面に沿って伸展させ、前記除去対象部を前記境界面のところで前記第2の基板と分断させる、ブレーク工程と、前記ブレーク工程によって分断された前記除去対象部を除去して、前記第1の基板において前記非接触空間を区画する部分を露出させる除去工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記除去対象部設定工程において、前記除去対象部をテーパー状に設定し、前記スクライブ工程においては、前記一対の境界面のそれぞれとの交線に沿って前記スクライブラインを形成し、前記スクライブラインから前記一対の境界面のそれぞれに沿ってクラックを伸展させ、前記ブレーク工程においては、前記クラックを、前記一対の境界面のそれぞれに沿って伸展させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記スクライブ工程においては、刃先の稜線をなす2つの刃面のそれぞれの、前記稜線を含む平面に対する傾斜角が相異なるスクライビングホイールを、前記2つの刃面のうち前記平面に対する前記傾斜角が小さい方の刃面が前記除去対象部の側に位置する姿勢にて前記交線に沿って圧接転動させることにより、前記スクライブラインを形成する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記一対の境界面のそれぞれが前記貼り合わせ基板の厚み方向となす角度が3°~30°であり、前記2つの刃面のそれぞれの前記平面に対する前記傾斜角のうち小さい方を角度θ1とし、大きい方を角度θ2とするとき、前記角度θ1が45°~75°であり、前記角度θ2が55°~80°であり、角度差θ2-θ1が5°~25°である、ことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項4に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記角度差θ2-θ1が10°~20°である、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記ブレーク工程においては、前記第1の基板の前記第2の基板が貼り合わされていない面に保持テープを貼付し、前記保持テープの上に前記ブレークバーを当接させる、ことを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、遅くとも前記除去工程の開始までに前記第1の基板の前記第2の基板が貼り合わされていない面にエキスパンドテープを貼付する貼付工程、をさらに備え、前記除去工程においては、前記エキスパンドテープを貼り合わせ基板の径方向に伸張させた状態で、前記除去対象部を前記貼り合わせ基板から除去する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記除去工程においては、端部に粘着性部材を備えた治具の前記粘着性部材に前記除去対象部を付着させることにより、前記除去対象部を前記貼り合わせ基板から除去する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項9の発明は、請求項8に記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記粘着性部材の幅が前記除去対象部の幅よりも小さい、ことを特徴とする。
【0020】
請求項10の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の貼り合わせ基板の加工方法であって、前記第1の基板と前記第2の基板がそれぞれ異なる材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1ないし請求項10の発明によれば、2枚の基板が貼り合わされてなる貼り合わせ(母)基板において2枚の基板の間に設けられた帯状の非接触空間のところで、該非接触空間を区画する貼り合わせ母基板の一方の基板を除去して、同じく非接触空間を区画する貼り合わせ基板の他方の基板を露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】貼り合わせ母基板1の部分模式断面図である。
【
図3】貼り合わせ母基板1の加工位置を示す模式平面図である。
【
図4】貼り合わせ母基板1の加工位置を示す部分模式断面図である。
【
図6】スクライブ処理後の貼り合わせ母基板1を示す図である。
【
図8】ブレーク処理後の貼り合わせ母基板1を示す図である。
【
図9】エキスパンドピックアップの様子を段階的に示す図である。
【
図10】エキスパンドピックアップの様子を段階的に示す図である。
【
図11】エキスパンドピックアップの様子を段階的に示す図である。
【
図12】エキスパンドピックアップの様子を段階的に示す図である。
【
図13】エキスパンドピックアップを行うことの効果について説明するための図である。
【
図14】全ての除去対象部9を除去した後の貼り合わせ母基板1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<貼り合わせ母基板の概要>
図1は、本実施の形態において加工の対象とされる貼り合わせ母基板1の模式平面図であり、
図2は、貼り合わせ母基板1の部分模式断面図である。
【0024】
貼り合わせ母基板1は、概略、互いの主面が対向配置された第1の脆性材料基板2と第2の脆性材料基板3との間に設けられた封入領域4において、所定の封入部材(例えば液晶や樹脂)からなる封止部5を所定のシール部材(例えばエポキシ樹脂等の樹脂)からなるシール部6にて封止した構成を有する。なお、封止部5内に電極7などが設けられていてもよい。
【0025】
第1の脆性材料基板2の脆性材料としては、シリコンや無アルカリガラス、石英ガラスなどのガラス材料が例示される。第2の脆性材料基板3の脆性材料としては、無アルカリガラスなどのガラス材料が例示される。第1の脆性材料基板2の厚みは、例えば0.1mm~1.0mm程度であり、第2の脆性材料基板3の厚みは0.1mm~1.0mm程度である。また、両者の平面サイズ(矩形であれば一辺、円形であれば直径)はおおよそ200mm~500mm程度である。
【0026】
より詳細には、
図1に示すように、シール部6にて周囲を封止された封止部5は、貼り合わせ母基板1の面内の互いに直交する2つの方向(第1の方向と第2の方向)に、配置が可能な範囲で繰り返し設けられている。
図1および以降の図面においては、第1の方向をX軸方向とし、第2の方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とする、右手系のXYZ座標を付している。
【0027】
また、本実施の形態においては、個々の封止部5およびその周囲を封止するシール部6を併せて単位封止領域と称する。そして、少なくとも第1の方向については隣り合う単位封止領域は(実際にはシール部6は)連続するものの、係る第1の方向に直交する第2の方向においては、隣り合う単位封止領域は所定の間隔にて離隔しているものとする。換言すれば、隣り合う単位封止領域の間はX軸方向に延在する直線状の(帯状の)非接触空間8となっている。
【0028】
なお、非接触空間8においては、第1の脆性材料基板2と第2の脆性材料基板3も、Z軸方向において単位封止領域を介さず離隔している。以降、第1の脆性材料基板2のうち、係る非接触空間8に露出する部分を特に、非接触領域2fと称する。
【0029】
以上のような構成を有する貼り合わせ母基板1においては、それぞれの単位封止領域と、第1の脆性材料基板2と第2の脆性材料基板3とのうち少なくとも当該単位封止領域を挟む所定の範囲とが、個々の貼り合わせ基板の構成単位となっている。換言すれば、係る構成単位が互いに直交する2つの方向にて繰り返し存在する。そして、それら構成単位が個々別々となるように、貼り合わせ母基板1が分断される(個片化される)ことで、多数の貼り合わせ基板が得られるようになっている。
【0030】
換言すれば、貼り合わせ母基板1は、後工程において分断されることが想定された一種の貼り合わせ基板である。ただし、区別の容易のため、本実施の形態ではこのように分断が想定されている貼り合わせ基板を貼り合わせ母基板と称する。
【0031】
貼り合わせ母基板1の分断によって得られる貼り合わせ基板が液晶基板である場合(封止部5に封入部材として液晶が封入される場合)であれば、非接触領域2fには通常、該液晶基板と外部との電気的接続を確保するための端子部が設けられる。
【0032】
<加工の概要>
図3は、本実施の形態に係る加工方法における貼り合わせ母基板1の加工位置を示す模式平面図であり、
図4は、係る加工位置を示す貼り合わせ母基板1の部分模式断面図である。
【0033】
本実施の形態においては、概略、
図4に示すように、第2の脆性材料基板3のうち、Z軸方向において第1の脆性材料基板2の非接触領域2fと対向する位置に設定された除去対象部9を除去する加工を行う。係る除去対象部9は、
図3に示すように、貼り合わせ母基板1を平面視した場合にはX軸方向に延在する直線状の(帯状の)領域である。
【0034】
ただし、
図4に示すように、除去対象部9は、それぞれがX軸方向に延在するその一対の境界面9a、9bの間隔が、非接触空間8に向かうほど狭くなるように、設定される。換言すれば、除去対象部9は、YZ断面においてテーパー状となるように(断面視台形状に)設定される。境界面9a、9bが貼り合わせ母基板1の厚み方向(Z軸方向)となす角(傾斜角)は、3°~30°程度であればよい。これは例えば、第2の脆性材料基板3の厚みが0.5mm~0.7mm程度であるときに、第2の脆性材料基板3の上下面における境界面9a、9bの端部位置の差(ソゲ量とも称する)が30μm以上となる範囲である。
【0035】
このような除去対象部9を貼り合わせ母基板1から除去するための加工は、概略、スクライブ処理、ブレーク処理、およびピックアップ処理という手順にて行われる。以下、それらを順次に説明する。
【0036】
<スクライブ処理>
図5は、本実施の形態において行うスクライブ処理の様子を示す図である。スクライブ処理は、スクライブ装置100を用いて行う。
図6はスクライブ処理後の貼り合わせ母基板1を示す図である。
【0037】
スクライブ処理の実行にあたっては、はじめに、貼り合わせ母基板1をスクライブ装置100のステージ101の上に載置固定する。貼り合わせ母基板1は、第1の脆性材料基板2がステージ101と接触する被載置面となり、第2の脆性材料基板3が上面となる姿勢にて、ステージ101に載置固定される。なお、
図5および以降の図では、図示の簡単のため、封入領域4を簡略化して示すことがある。
【0038】
スクライブ装置100においては、あらかじめ貼り合わせ母基板1においてX軸に沿って定められた除去対象部9の境界面9a、9bを対象とするスクライブ処理を行う。
【0039】
より具体的には、スクライビングホイール(カッターホイール)102を、境界面9a、9bと第2の脆性材料基板3の表面(第1の脆性材料基板2が貼り合わされていない面)との交線9a1、9b1に沿って圧接転動させることにより、第2の脆性材料基板3にスクライブラインSLを形成する。
【0040】
スクライビングホイール102は、外周端部が断面視三角形状をなす刃先102eとなった円盤状の部材である。係るスクライビングホイール102は、図示しないホルダーに垂直姿勢にて回転自在に保持される。そして、その刃先102eを交線9a1、9b1のそれぞれに当接させられた状態で、ホルダーが移動させられることで、刃先102eが交線9a1、9b1に沿って圧接転動させられ、スクライブラインSLが形成される。
【0041】
ただし、本実施の形態においては、スクライビングホイール102として、刃先102eの断面形状が非対称な(不等辺三角形状をなす)ものを用いるようにする。具体的には、刃先102eの稜線102rをなす2つの刃面102aと102bのそれぞれと、稜線102rを含む平面とのなす角として表される刃面102aと102bのそれぞれの傾斜角θ1とθ2の値が相異なる(θ1<θ2であるとする)スクライビングホイール102を、用いる。
【0042】
このように刃先102eの断面形状が非対称なスクライビングホイール102を圧接転動させると、スクライブラインSLから第2の脆性材料基板3の内部に向けて、クラックCRが伸展(浸透)する。ただし、クラックCRは、鉛直下方ではなく、スクライビングホイール102刃面の傾斜角が小さい方に傾斜する態様にて伸展する。本実施の形態においては、この性質を利用して、クラックCRがそれぞれの除去対象部9の境界面9a、9bに沿って伸展するよう、傾斜角θ1の刃面102aが除去対象部9側に位置し、傾斜角θ2の刃面102bがその反対側に位置する姿勢にて、スクライビングホイール102がX軸方向に沿って圧接転動させるようにする。
【0043】
より詳細には、境界面9aと境界面9bとでは傾斜の向きが反対であるため、
図5に矢印AR1にて示す境界面9aを対象とするスクライブ処理と、矢印AR2にて示す境界面9bを対象とするスクライブ処理とでは、スクライビングホイール102の水平姿勢が180°違えられる。
【0044】
なお、通常は一の貼り合わせ母基板1に複数の除去対象部9が設定される。それゆえ、単一のスクライビングホイール102にて全ての境界面9aおよび9bに対するスクライブを行うのであれば、全ての除去対象部9の一方の境界面(例えば境界面9a)を対象とするスクライブ処理が完了した後、スクライビングホイール102の水平姿勢を180°反転させ、全ての除去対象部9の他方の境界面(例えば境界面9b)を対象とするスクライブ処理を行うようにするのが、スクライブの効率性や安定性の点から好適である。ただし、係るスクライビングホイール102の水平姿勢を都度180°反転させることにより、一の境界面9aを対象とするスクライブ処理と一の境界面9bを対象とするスクライブ処理とが交互に行われる態様であってもよい。
【0045】
あるいは、スクライブ装置100が、互いの水平姿勢が180°異なる2つのスクライビングホイール102の組を少なくとも1つ備えており、それら2つのスクライビングホイール102にて境界面9aを対象とするスクライブと境界面9bを対象とするスクライブとを同時並行的に行う態様であってもよい。
【0046】
図6は、全ての境界面9aおよび境界面9bを対象とするスクライブ処理が完了した後の貼り合わせ母基板1の様子を示している。
【0047】
スクライビングホイール102の傾斜角θ1は45°~75°であるのが好ましく、傾斜角θ2は55°~80°であるのが好ましく、両者の角度差θ2-θ1は5°~25°であるのが好ましい。また、角度差θ2-θ1は10°~20°であるのがより好ましい。なお、角度差θ2-θ1が大きいほど最終的な除去対象部9の分離は容易となるが、角度差θ2-θ1が25°を上回ると、分離前に除去対象部9と接触していた第2の脆性材料基板3の端部に、欠け、チッピング、水平クラックの伸展などの品質劣化が生じやすくなる傾向があるため、好ましくない。
【0048】
また、スクライブ荷重は6N~35N程度であればよく、スクライブ速度は10mm/s~300mm/s程度であればよい。
【0049】
<ブレーク処理>
図7は、本実施の形態において行うブレーク処理の様子を示す図である。ブレーク処理は、ブレーク装置200を用いて行う。
図8はブレーク処理後の貼り合わせ母基板1を示す図である。
【0050】
ブレーク処理の実行にあたっては、はじめに、貼り合わせ母基板1の第1の脆性材料基板2の露出面(封入領域4と接する面の反対面)の全体を覆うように、エキスパンドテープETを貼付する。より詳細には、エキスパンドテープETは図示を省略する保持リングに張設されており、該リングの内側において露出しているエキスパンドテープETの粘着面に第1の脆性材料基板2が貼付固定される。エキスパンドテープETは、ブレーク処理以降における貼り合わせ母基板1の保持の確実のために貼付される保持テープの一態様であるが、後述するエキスパンドピックアップを実行する場合には、エキスパンドの対象とされる。
【0051】
そして、少なくとも表面部分が弾性体からなるブレーク装置200のステージ201の上に、係るエキスパンドテープETが貼付された貼り合わせ母基板1を載置固定する。その際、貼り合わせ母基板1は、第2の脆性材料基板3がステージ201と接触する被載置面となり、第1の脆性材料基板2が上面となる姿勢にて、換言すれば、貼付されたエキスパンドテープETが最上位置となる姿勢にて、ステージ201に載置固定される。
【0052】
ブレーク装置200においては、概略、除去対象部9の境界面9a、9bに沿って第2の脆性材料基板3の一方の面から内部にまで形成されたクラックCRをさらに伸展させ、非接触空間8を区画する他方の面にまで貫通させる、ブレーク処理を行う。
【0053】
より具体的には、ブレークバー202の鉛直下方に備わる断面視三角形状の刃先202eが、クラックCRの鉛直上方位置においてクラックCRの延在する第1の方向に沿って位置するように、貼り合わせ母基板1の載置固定とブレークバー202の位置決めとを行う。そのうえで、矢印AR3にて示すようにブレークバー202を下降させ、クラックCRの鉛直上方位置において、ブレークバー202をエキスパンドテープETを介して貼り合わせ母基板1に当接させ、さらに所定距離だけ押し込み、その後直ちに上昇させて、初期位置にまで退避させる。
【0054】
ブレークバー202を押し込むことによって、弾性を有するステージ201から貼り合わせ母基板1に対しクラックCRの両サイドを押し拡げる力が作用する。これにより、クラックCRが境界面9a、9bに沿ってさらに伸展し、第2の脆性材料基板3を貫通する。換言すれば、クラックCRの伸展に伴い、それまで境界面9a、9bが規定された箇所にて、第2の脆性材料基板3が分断される。
【0055】
なお、ブレークバー202が当接する位置と境界面9a、9bとの第1の方向における相対的な位置関係については、貼り合わせ母基板1を構成する第1の脆性材料基板2および第2の脆性材料基板3の材質や厚み、さらには、スクライブ処理の際のクラックCRの伸展の程度などに応じて、適宜に調整されてよい。
【0056】
ブレークバー202の刃先角θ3は15°~90°程度であればよい。また、ブレークの際のブレークバー202の押し込み量は0.02mm~0.3mm程度であればよく、下降速度は5mm/s~100mm/s程度であればよい。
【0057】
全てのクラックCRに対して順次に係るブレーク処理を行うことで、
図8に示すように、全ての除去対象部9は、それまで境界面9a、9bが規定されていた箇所に形成された分断面9sにて第2の脆性材料基板3と接触しつつも、第2の脆性材料基板3とは分断された状態となる。
【0058】
<ピックアップ処理>
上述のように、ブレーク処理後の貼り合わせ母基板1においては、全ての除去対象部9は分断面9sのところで第2の脆性材料基板3と分断されている。また、
図4に示すように、除去対象部9はそもそも、封入領域4の非接触空間8を介して第1の脆性材料基板2の非接触領域2fと対向しているので、第2の脆性材料基板3以外との接触はない。
【0059】
それゆえ、ブレーク処理後の除去対象部9は、外力によって第2の脆性材料基板3から容易に除去することが可能な状態となっている。本実施の形態においては、係る状態にある除去対象部9を第2の脆性材料基板3から除去することを、ピックアップ処理と称する。
【0060】
本実施の形態においては、係るピックアップ処理の好ましい一態様として、エキスパンドテープETを貼り合わせ母基板1の径方向に伸張させたうえで、ピックアップ処理を行うようにする。係るピックアップ処理を特に、エキスパンドピックアップと称する。エキスパンドテープETの伸張は、除去対象部9の分断面9sとこれに隣り合う第2の脆性材料基板3との間に作用する力を弱める目的で行われる。
【0061】
エキスパンドピックアップは、エキスパンド装置300を用いて行う。
図9ないし
図12は、本実施の形態において行うエキスパンドピックアップの様子を段階的に示す図である。
【0062】
エキスパンド装置300は、上面にエキスパンドテープETが貼付された状態の貼り合わせ母基板1を水平に載置固定可能とされており、かつ、鉛直方向に昇降自在に設けられてなるステージ301と、貼り合わせ母基板1がステージ301に固定された状態においてエキスパンドテープETの外周端部が固定される(より詳細にはエキスパンドテープETを張設固定してなる図示しない保持リングが固定される)固定部材302とを備える。エキスパンド装置300には、例えば半導体素子用の母基板をダイシング等で個片化することで得られる多数のチップを分離させるためのエキスパンド処理に用いる装置を、利用することができる。また、ブレーク処理の時点から貼付されているエキスパンドテープETについても、係るエキスパンド処理用のものを用いることができる。
【0063】
エキスパンドピックアップの実行にあたっては、ブレーク処理後の貼り合わせ母基板1を、エキスパンドテープETが貼付された状態のまま、除去対象部9が備わる第2の脆性材料基板3の側を上面としてステージ301の上に載置固定する。その際には併せて、エキスパンドテープETの外周端部を固定部材302にて固定する。
【0064】
続いて、
図10にて矢印AR4にて示すようにステージ301を所定距離だけ上昇させたうえで、矢印AR5にて示すように、除去対象部9の上面9fに向けて鉛直上方からピックアップ治具303を接近させる。ピックアップ治具303は、平坦な下端面303eにテープ状の粘着性部材ATを付設してなる治具である。そして、
図11に示すように、粘着性部材ATを除去対象部9の上面9fに接触させる。係る接触は、第1の方向(
図11においては紙面に垂直な方向)に延在する除去対象部9の長手方向の相当範囲(全範囲または一部範囲)において、除去対象部9の幅(
図10においてはY軸方向におけるサイズ)の範囲内においてなされる。
【0065】
この状態でピックアップ治具303を鉛直上方に上昇させると、
図12に示すように、除去対象部9に付着した粘着性部材ATの粘着力により除去対象部9もピックアップ治具303と一体となって上昇する。これにより、除去対象部9は第2の脆性材料基板3から除去され、第1の脆性材料基板2の非接触領域2fが露出する。
【0066】
より詳細には、粘着性部材ATは、係る除去対象部9の除去を好適に行うという観点から、除去対象部9の幅よりもわずかに小さい幅にてピックアップ治具303の下端面303eに付設される。例えば、除去対象部9の幅が3.2mmであれば、粘着性部材ATの幅は3mm程度であればよい。そして、粘着性部材ATは、除去対象部9の幅の範囲内にてその上面9fに接触させられる。
【0067】
一方、幅方向と直交する粘着性部材ATの長手方向のサイズは、除去対象部9の除去が良好にかつ確実に行えるのであれば、特に限定されない。例えば、
図3に示したように、一の貼り合わせ母基板1における個々の除去対象部9の長手方向のサイズが異なる場合であれば、全ての除去対象部9について除去が良好に行えるサイズとされればよい。
【0068】
なお、ピックアップ治具303はエキスパンド装置300の一部である必要はなく、別体であってよい。それゆえ、
図10ないし
図12に示したその一連の除去動作が機械的に行われる必要もなく、作業者がピックアップ治具303を保持して係る除去動作を実行する態様であってもよい。ただし、除去対象部9の除去を確実に行うという点からは、水平に載置固定された貼り合わせ母基板1に対して垂直にピックアップ治具303を接近させて除去対象部9に粘着性部材ATを付着させ、係る付着がなされた後は、垂直にピックアップ治具303を上昇させる必要がある。これらの動作に際してピックアップ治具303が傾斜していると、除去対象部9の除去に際して第2の脆性材料基板3に欠けなどが生じてしまい好ましくない。
【0069】
図13は、エキスパンド装置300を用いたエキスパンドピックアップを行うことの効果について説明するための図である。
【0070】
上述したように、除去対象部9は分断面9sのところで第2の脆性材料基板3と接触しているだけであるので、原理的には、エキスパンド装置300にてエキスパンドテープETを伸張させずとも、ピックアップ治具303による除去対象部9の除去は行い得る。
【0071】
しかしながら、仮にブレーク処理後の貼り合わせ母基板1を単に平坦な面上に載置し、エキスパンドテープETを伸張させないようにした場合、全体として一様な第1の脆性材料基板2と周囲から分断された除去対象部9が周期的に存在する第2の脆性材料基板3との面内方向における構造上の違いに起因して、貼り合わせ母基板1は
図13(a)に曲線Laにて示すように下に凸に反った状態となり、除去対象部9に対しては、第2の方向においてこれを挟む第2の脆性材料基板3から応力Faが作用する。また、第1の脆性材料基板2と第2の脆性材料基板3とが異なる材料である場合、第1の脆性材料基板2と第2の脆性材料基板3の線膨張係数の違いにより貼り合わせ母基板1が
図13(a)に曲線Laにて示すように下に凸に反った状態となり、除去対象部9に対しては、第2の方向においてこれを挟む第2の脆性材料基板3から応力Faが作用する場合がある。
【0072】
係る場合において、ピックアップ治具303により除去対象部9を除去するには、この応力Faに起因した摩擦に打ち勝つ必要が生じる。
【0073】
これに対し、上述のようにエキスパンド装置300を用いてエキスパンドテープETを伸張させた場合、貼り合わせ母基板1は
図13(b)に曲線Lbにて示すように上に凸に反った状態となる。そのため、係る場合に第2の方向において除去対象部9に対しこれを挟む第2の脆性材料基板3から作用する応力Fbは、
図13(a)に示した場合の応力Faに比して小さい。それゆえ、上述したエキスパンドピックアップを行う場合の方が、ピックアップ治具303による除去対象部9の除去を、より容易かつ確実に、行うことができる。
【0074】
図14は、全ての除去対象部9を除去した後の貼り合わせ母基板1を示す図である。係る貼り合わせ母基板1は、所定の後工程に供される。なお、
図14においてはエキスパンドテープETが剥がされた後の様子を示しているが、後工程の内容によっては、エキスパンドテープETが添付されているままの状態であってもよい。
【0075】
図14に示すような貼り合わせ母基板1を得ることで、特に、個々の貼り合わせ基板の構成単位ごとの、非接触領域2fを対象とする所定の工程の実施が、容易に行える。例えば、貼り合わせ母基板1が液晶基板用の母基板である場合であれば、個片化によって個々の液晶基板を得ることを要さず、除去対象部9を除去することで露出した非接触領域2fに設けられてなる個々の液晶基板用の端子部を対象に、電気的な検査などが行われる。
【0076】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、互いの主面が対向配置された2枚の脆性材料基板の間の封入領域に、所定の封入部材からなる封止部を所定のシール部材からなるシール部にて封止してなる単位封止領域を繰り返し備える貼り合わせ母基板の、一方の脆性材料基板から、隣り合う単位封止領域の間の非接触空間を区画する部分を好適に除去して、他方の脆性材料基板の非接触領域を露出させることができる。
【0077】
なお、上述の実施の形態においては貼り合わせ母基板1の境界面9a、9bの両方が傾斜するようにスクライブ処理を行っているが、少なくともいずれかの境界面が傾斜していればよく、もう一方の境界面については傾斜していなくてもよい。このとき、もう一方の境界面については、クラックCRが予め非接触空間8を区画する他方の面にまで貫通するように、スクライブ処理を行うことが好ましい。また、上述の実施の形態においては貼り合わせ母基板1の境界面9a、9bの両方を対象としてスクライブ処理を行っているが、少なくともいずれかの境界面のみをスクライブ処理にて加工すればよく、もう一方の境界面についてはダイシングその他の方法により分断を行ってもよい。
【0078】
さらにまた、スクライブ工程において、除去対象部9の境界面9a、9bと交差するスクライブラインを貼り合わせ母基板1にさらに形成してもよい。
【0079】
また、ピックアップ治具303は、テープ状の粘着性部材ATに代えて吸着部材を付設してなる治具とされてもよい。
【0080】
なお、上述の実施の形態において加工対象とされてなる貼り合わせ母基板1は、第1の脆性材料基板2と第2の脆性材料基板3とが、面内のある一の方向(
図1の場合であれば第2の方向であるY軸方向)において周期的に且つ離散的に設けられた単位封止領域のシール部6にて接合された構成を有していると捉えることもできる。その場合、非接触空間8は、貼り合わせ母基板1の面内のある一の方向において周期的に且つ離散的に設けられた線状の空間と捉えられる。
【0081】
それゆえ、上述の実施の形態に係る加工方法は、2枚の基板が貼り合わされてなる貼り合わせ(母)基板において2枚の基板の間に設けられた帯状の非接触空間のところで、該非接触空間を区画する貼り合わせ母基板の一方の基板を除去して、同じく非接触空間を区画する貼り合わせ基板の他方の基板を露出させることができる方法である、ということもできる。
【符号の説明】
【0082】
1 貼り合わせ母基板
2 第1の脆性材料基板
2f 非接触領域
3 第2の脆性材料基板
4 封入領域
5 封止部
6 シール部
8 非接触空間
9 除去対象部
9a、9b (除去対象部の)境界面
9f (除去対象部の)上面
9s (除去対象部の)分断面
100 スクライブ装置
102 スクライビングホイール
102a、102b (スクライビングホイールの)刃面
102e (スクライビングホイールの)刃先
102r (スクライビングホイールの刃先の)稜線
200 ブレーク装置
202 ブレークバー
202e (ブレークバーの)刃先
300 エキスパンド装置
302 固定部材
303 ピックアップ治具
303e (ピックアップ治具の)下端面
AT 粘着性部材
CR クラック
ET エキスパンドテープ
SL スクライブライン