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特許7308557ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル、この製造方法、これの抗癌剤又は抗ウイルス剤としての用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル、この製造方法、これの抗癌剤又は抗ウイルス剤としての用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7056 20060101AFI20230707BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230707BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230707BHJP
   C07H 17/02 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A61K31/7056
A61K9/107
A61P31/12
A61P35/00
C07H17/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021199359
(22)【出願日】2021-12-08
(65)【公開番号】P2023033064
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114230
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520362561
【氏名又は名称】バイオメトリックス テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOMETRIX TECHNOLOGY INC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】キム タイスン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ケムソー
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンフン
【審査官】内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-104047(JP,A)
【文献】Therapie,1976年,Vol.31,pp.505-515
【文献】Chem. Sci.,2013年,4(6),pp.2319-2333
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物と下記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物の混合物
【化1】
【化2】
上記式(1)において、
-NH-R の部位が下記構造のうち一つを有する
【化3】
上記式(1)又は式(1b)において、
ベンゾイミダゾールの部分が下記構造のうち一つを有する
【化4】
上記式(1b)において、
は、酸(H )に対する共役塩基であって、Cl 、Br 、I 、F 、NO 、CH COO 、HCOO 、HCO 、CO 2- 、H PO 、HPO 2- 、HSO 、SO 2- 又はClO から選択される
【請求項2】
前記混合物が、
アルベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminoglucose、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminofructose;
フェンベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminoglucose、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminofructose;
フルベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminoglucose、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminofructose;及び
メベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminoglucose、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminofructose;
からなる群から選択される一つ以上を含む
請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、1:500~500:1のモル比(molar ratio)を有することを特徴とする、
請求項1に記載の混合物
【請求項4】
細胞に投入された後、24~72時間の間に投入された細胞内に残存するベンゾイミダゾールアンモニウム誘導体及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の濃度が、
投入された細胞から排出されるベンゾイミダゾールアンモニウム誘導体及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の濃度よりもさらに高く維持することを特徴とする、
請求項1に記載の混合物
【請求項5】
下記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物に、
下記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を混合する、
請求項1に記載の混合物の製造方法:
【化5】
【化6】
上記式(1)において、
-NH-R の部位が下記構造のうち一つを有する
【化7】
上記式(1)又は式(1b)において、
ベンゾイミダゾールの部分が下記構造のうち一つを有する
【化8】
上記式(1b)において、
は、酸(H )に対する共役塩基であって、Cl 、Br 、I 、F 、NO 、CH COO 、HCOO 、HCO 、CO 2- 、H PO 、HPO 2- 、HSO 、SO 2- 又はClO から選択される
【請求項6】
上記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物は、
下記の式(1a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物に酸を反応させて製造されることを特徴とする、
請求項5に記載の混合物の製造方法:
【化9】
上記式(1a)において、
ベンゾイミダゾールの部分は、上記に定義したとおりである。
【請求項7】
上記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、
下記の式(1a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物に炭水化物を反応させてイミン結合を形成することを特徴とする、
請求項5に記載の混合物の製造方法:
【化10】
上記式(1a)において、
ベンゾイミダゾールの部分は、上記に定義したとおりである。
【請求項8】
式(1a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物におけるイミン反応を行える置換基は、予め保護又は遮蔽することを特徴とする、
請求項7に記載の混合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の混合物を含有する、
薬学組成物。
【請求項10】
微小管の形成を抑制し、炭水化物、又はブドウ糖を含む糖類(sugar compound)の吸収を抑制することを特徴とする、
請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
抗癌又は抗ウイルス活性を示すことを特徴とする、
請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項12】
GLUT(glucose transporter)チャネルを介して吸収されることを特徴とする、
請求項9に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル(micelle)、この製造方法、これの抗癌剤又は抗ウイルス剤としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾイミダゾール(benzimidazole)は、ベンゼン環にイミダゾール環の付いた化合物であって、様々な生活性及び生理作用があり、種々の薬物の母核として関心を集めている。このようなベンゾイミダゾール構造を有している化合物は、置換基によって様々な疾病に効果を奏することが報告されており、例えば、消炎鎮痛剤、抗真菌剤、抗癌剤、駆虫剤、抗ヒスタミン剤などに開発されている。
【0003】
ベンゾイミダゾールは、細胞膜を介して細胞内に入り込み、微小管(microtubule)の形成を抑制する特性が多くの論文に発表されている(参照:Chem Biol Drug Des.,2017 Jul;90(1):40-51;Scientific REPORTS,2018,8:11926;and ANTICANCER RESEARCH,29:3791-3796,2009)。しかし、ベンゾイミダゾールは、正常細胞と非正常細胞(つまり、癌発現細胞及びウイルス感染細胞)を区分せずに進入し、これによって、正常細胞及び非正常細胞においても同様、微小管の形成を抑制すると知られている。このため、正常細胞にも相当の副作用を示すことが報告されている(参照:Vojnosanit Pregl.2008 Jul;65(7):539-44,Infect Chemother 2018;50(1):1-10)。
【0004】
また、癌細胞及びウイルス感染細胞などは、ブドウ糖を大量吸収する特性を示すが、GLUTチャネルを細胞膜へ移動させるために必ず微小管(microtubule)を利用し、癌細胞の場合には、正常細胞に比べて1000倍程のGLUTチャネルを生成すると報告されている(参照:L.Quan et al./Journal of Molecular Structure 1203(2020)127361)。
【0005】
そのため、ベンゾイミダゾール誘導体を正常細胞よりも癌細胞又はウイルス感染細胞に集中して吸収するようにして、微小管の形成を抑制させると、GLUTチャネルの生成が抑制され、ブドウ糖の吸収を遮断することができ、その結果、癌細胞の増殖やウイルス感染細胞内のウイルスの増殖が顕著に抑制され得、これによって、体内免疫システムが、上記のように、増殖の抑制された癌細胞又はウイルス感染細胞等を攻撃して、抗癌効果又は抗ウイルス効果を奏すると知られている(参考:EXPERIMENTAL AND THERAPEUTIC MEDICINE 13:595-603,2017)。
【0006】
駆虫剤として用いられるアルベンダゾールとフェンベンダゾールは、ベンゾイミダゾールカルバメート(benzimidazole carbamate)系化合物であり、細胞に吸収される際に細胞膜を介して吸収されるため、ウイルス感染細胞と正常細胞に同様に吸収される。そのため、これら化合物を癌細胞やウイルス感染細胞のみに選択的に吸収させにくい。
【0007】
一方、全細胞のエネルギー源であるグルコースは、細胞のGLUTチャネルを介して吸収されるが、ウイルスに感染した細胞は、正常細胞よりも多量のグルコースをエネルギー源として用いると多くの文献に既に報告されている(参考:BMC Biology(2019)17:59)、(J Virol 89:2358-2366.)、(Virology.2013;444(1-2):301-9)。のみならず、ウイルス感染細胞は、正常細胞よりも多量のグルコースをエネルギー源として用いるために宿主細胞のエネルギー代謝を変形させ、GLUTチャネルを正常細胞よりも活性化させて、グルコースをGLUTチャネルを介して速やかに吸収し、ウイルスの増殖を行うと報告されている(参考:Mol Cancer Ther.2012 January;11(1):14-23)。
【0008】
結論として、癌細胞及びウイルスに感染した細胞は、ブドウ糖を含む糖化合物を正常細胞やウイルスに感染していない細胞に比べて相対的に非常に多く吸収すると言える。
【0009】
以上のような点を考慮して、癌細胞及びウイルスに感染した細胞が、ブドウ糖を含む糖化合物(sugar compound)を正常細胞やウイルス感染していない細胞に比べて過量吸収する現象を利用して、ベンゾイミダゾール誘導体を利用して製造される新しいミセル(micelle)の設計に活用し、このような新しいミセル(micelle)を簡単な工程かつ経済的なコストで提供できる方法を開発しようとした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際特許公開第1998/051304号
【文献】国際特許公開第2005/058870号
【文献】国際特許公開第1998/056761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述の問題点を解決できるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル(micelle)、この製造方法、これの抗癌剤又は抗ウイルス剤としての用途を提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、以上に言及した課題に制限されず、言及していないさらに他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を解決するために本発明は、下記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル(micelle)を提供する。
【0014】
【化1】
(1)
【0015】
上記式において、
は、炭水化物の残基であって、前記炭水化物は、四炭糖アルドース(例:エリトロース、トレオース)、五炭糖アルドース(例:リボース、アラビノース、キシロース、リキソオース)、六炭糖アルドース(例:アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、四炭糖ケトース(例:エリトルロース)、五炭糖ケトース(例:リブロース、キシルロース)、六炭糖ケトース(例:プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例:2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例:N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グリコシド)、又はこれらの二糖類から選択され得、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース又はキシロースから選択され得、
及びRは、同一又は異なり、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換され得、及び、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-N(R)-、-CH-、-CH(R)-、-CO-からなる群から選択され得る。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、下記の式(2)で表される化合物であってもよい:
【0017】
【化2】
(2)
【0018】
上記式において、R、R及びXは、上記に定義したとおりである。
【0019】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1)又は式(2)において、-NH-Rの部位が下記構造のうちの一つを有し得る:
【0020】
【化3】
【0021】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1)又は式(2)において、ベンゾイミダゾールの部位が下記構造のうち一つを有し得る:
【0022】
【化4】
【0023】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、下記の化合物の中で選択され得る:
【0024】
アルベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminoglucose、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminofructose、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminogalactose、及び6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminomannose;
フェンベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminoglucose、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminofructose、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminogalactose、及び6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminomannose;
フルベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminoglucose、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminofructose、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminogalactose、及び6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminomannose;
メベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminoglucose、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminofructose、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminogalactose、及び6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminomannose。
【0025】
本発明の一実施例によれば、前記ミセル(micelle)は、下記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物をさらに含んでいてもよい:
【0026】
【化5】
(1b)
【0027】
上記式において、
及びRは、同一又は異なり、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換され得、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-N(R)-、-CH-、-CH(R)-、-CO-からなる群から選択され得、
は、酸(H)に対する共役塩基であって、Cl、Br、I、F、NO 、CHCOO、HCOO、HCO 、CO 2-、HPO 、HPO 2-、HSO 、SO 2-又はClO から選択され得る。
【0028】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物は、下記の式(2b)で表される化合物から選択され得る:
【0029】
【化6】
(2b)
【0030】
上記式において、R、X及びYは、上記に定義したとおりである。
【0031】
本発明の一実施例によれば、ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、1:500~500:1のモル比(molar ratio)を有し得る。
【0032】
本発明の一実施例によれば、前記ミセル(micelle)は、細胞に投入された後、24~72時間の間に投入された細胞内に残存するベンゾイミダゾールアンモニウム誘導体及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の濃度が、投入された細胞から排出されるベンゾイミダゾールアンモニウム誘導体及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の濃度よりもさらに高く維持し得る。
【0033】
上記目的を解決するために本発明は、下記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物に、下記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を混合するミセル(micelle)の製造方法を提供する。
【0034】
【化7】
(1b)
【0035】
【化8】
(1)
【0036】
上記式において、
は、炭水化物の残基であって、前記炭水化物は、四炭糖アルドース(例:エリトロース、トレオース)、五炭糖アルドース(例:リボース、アラビノース、キシロース、リキソオース)、六炭糖アルドース(例:アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、四炭糖ケトース(例:エリトルロース)、五炭糖ケトース(例:リブロース、キシルロース)、六炭糖ケトース(例:プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例:2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例:N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グリコシド)、又はこれらの二糖類から選択され得、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース又はキシロースから選択され得、
及びRは、同一又は異なり、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換され得、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-N(R)-、-CH-、-CH(R)-、-CO-からなる群から選択され得、及び、
は、酸(H)に対する共役塩基であって、Cl、Br、I、F、NO 、CHCOO、HCOO、HCO 、CO 2-、HPO 、HPO 2-、HSO 、SO 2-又はClO から選択され得る。
【0037】
本発明の一実施例によれば、前記ミセル(micelle)の製造方法は、下記の式(2b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物に、下記の式(2)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を混合するものであってもよい:
【0038】
【化9】
(2b)
【0039】
【化10】
(2)
【0040】
上記式において、R、R、X及びYは、上記に定義したとおりである。
【0041】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1b)又は式(2b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物は、下記の式(1a)又は式(2a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物に酸を反応させて製造され得る:
【0042】
【化11】
(1a)
【0043】
【化12】
(2a)
【0044】
上記式において、R、R及びXは、上記に定義したとおりである。
【0045】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1)又は式(2)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、上記の式(1a)又は式(2a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物に炭水化物を反応させてイミン結合を形成したものであってもよい。
【0046】
本発明の一実施例によれば、式(1a)又は式(2a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物におけるイミン反応を行える置換基は、予め保護又は遮蔽することができる。
【0047】
上記目的を解決するために本発明は、上記の式(1)又は式(2)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルを含有する薬学組成物を提供する。
【0048】
本発明の一実施例によれば、前記薬学組成物は、微小管の形成を抑制し、炭水化物、好ましくはブドウ糖を含む糖類(sugar compound)の吸収を抑制することができる。
【0049】
本発明の一実施例によれば、前記薬学組成物は、抗癌又は抗ウイルス活性を示し得る。
【0050】
本発明の一実施例によれば、前記薬学組成物は、GLUT(glucose transporter)チャネルを介して吸収され得る。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、ベンゾイミダゾール-アンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルは、抗癌又は抗ウイルス活性を有する。
【0052】
本発明の効果は、上記の効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明又は特許請求の範囲に記載した発明の構成から推論可能なすべての効果を含むと理解しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の一実施例によるアルベンダゾール-アンモニウム(Al-NH )化合物及びアルベンダゾール-グルコース(Al-G)化合物を含むミセルがGLUTチャネルを介して細胞内に進入する模式図。
図2】本発明の一実施例によるアルベンダゾール-グルコース(Al-G)化合物を含むミセルに対して、GLUTチャネルが容易に開かず、進入しにくいことを示す模式図。
図3】本発明の一実施例によるアルベンダゾール-アンモニウム(Al-NH )化合物を含むミセルに対して、GLUTチャネルが容易に開かず、進入しにくいことを示す模式図。
図4】本発明の一実施例によるミセル5001の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図5】本発明の一実施例によるミセル10001の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図6】本発明の一実施例によるミセル20001の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図7】本発明の一実施例によるミセル50001の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図8】本発明の一実施例によるミセル100001の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図9】本発明の一実施例によるミセル200001の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図10】本発明の一実施例によるアルベンダゾール-アンモニウム(Al-NH )化合物を含むミセルの濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図11】本発明の一実施例によるアルベンダゾールグルコース(Al-G)化合物を含むミセルの濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図12】癌細胞及び正常細胞でのドキソルビシン(doxorubicin)化合物の濃度による癌細胞及び正常細胞での生存力(viability)を示したグラフ。
図13】アルベンダゾール-D-炭水化物結合体の化学構造式と名称を示した図面。
図14】フェンベンダゾール-D-炭水化物結合体に化学構造式と名称を示した図面。
図15】フルベンダゾール-D-炭水化物結合体に対する化学構造式と名称を示した図面。
図16】メベンダゾール-D-炭水化物結合体に対する化学構造式と名称を示した図面。
図17】アルベンダゾール-D-炭水化物結合体に対するNMRスペクトラムを示した図面。
図18】フェンベンダゾール-D-炭水化物結合体に対するNMRスペクトラムを示した図面。
図19】フルベンダゾール-D-炭水化物結合体に対するNMRスペクトラムを示した図面。
図20】メベンダゾール-D-炭水化物結合体に対するNMRスペクトラムを示した図面。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使われた用語や単語は、必ずしも通常的であるか辞書的な意味に限定して解釈してはならず、本発明の発明者が自己の発明を最も最善の方法により説明するために、各種用語の概念を適宜定義して使用することができ、さらにはこれら用語や単語は、本発明の技術的思想に符合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0055】
すなわち、本明細書で使われた用語は、本発明の好ましい実施例を説明するために使われるだけであり、本発明の内容を具体的に限定しようとする意図で使われたものではなく、これら用語は、本発明の色んな可能性を考慮して定義された用語である。
【0056】
また、本明細書において、単数の表現は、文脈上明確に他の意味を示さない以上、複数の表現を含んでいてもよく、同じように複数に表現されているとしても、単数の意味を含んでいてもよい。
【0057】
本明細書の全体におけるある構成要素が他の構成要素を「含む」と記載する場合には、特に逆の意味に記載されていない限り、任意の他の構成要素を除くものではなく、任意の他の構成要素をさらに含んでいてもよいことを意味し得る。
【0058】
また、以下では、本発明を説明するにおいて、本発明の要旨を曖昧にすると判断される構成、例えば、従来技術を含む公知技術に対する詳説は省略し得る。
【0059】
先ず、本発明を理解するために、本明細書で使われる用語について下記のように簡単に定義する。しかし、本発明は、このような用語や用語の定義によって限定されない。
【0060】
用語「抗癌剤」は、癌細胞の発育や増殖を抑制する物質又はそのような薬物を意味する。
【0061】
用語「抗ウイルス」は、ウイルスに感染した細胞の増殖を抑制することを意味し、「抗ウイルス剤」は、ウイルスに感染した細胞の増殖を抑制する物質又はそのような薬物を意味する。
【0062】
用語「炭水化物(carbohydrate)」は、糖(sugar)からなる有機化合物の総称として使われる。
【0063】
用語「糖化合物の吸収阻害」とは、糖化合物が細胞内に吸収されるか進入することを阻害することを意味する。
【0064】
用語「チューブリン(tubulin)」は、生物のほとんどの細胞に存在する微小管(microtubule)を構成するタンパク質を意味する。
【0065】
用語「微小管(microtubule)」は、チューブリンというタンパク質の重合体からなっており、細胞骨格を構成して、細胞内の物質が移動する管を意味する。
【0066】
用語「細胞分裂(cell division)」は、生物の一つの母細胞が核分裂と細胞質分裂を経て2つの細胞に分けられる現象を意味する。
【0067】
用語「ミセル(micelle)」は、水溶液において、親水性と親油性を同時に示す両親媒性分子が自発に集まって形成されたものを意味する。親水性部分は、ミセルの外部表面を形成して水に露出し、親油性部分は、ミセルの内部に位置し、水から保護される。
【0068】
以下、本発明をさらに詳説する。
【0069】
(1)ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル
本発明の第一目的は、下記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル(micelle)を提供することである:
【0070】
【化13】
(1)
【0071】
上記式において、
は、炭水化物の残基であって、前記炭水化物は、四炭糖アルドース(例:エリトロース、トレオース)、五炭糖アルドース(例:リボース、アラビノース、キシロース、リキソオース)、六炭糖アルドース(例:アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、四炭糖ケトース(例:エリトルロース)、五炭糖ケトース(例:リブロース、キシルロース)、六炭糖ケトース(例:プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、これらの異性体、酸化物(CHOが-COOHに変換)、デオキシ誘導体(-OHが-Hに変換、例:2-デオキシリボース、2-デオキシグルコース)、アミノ糖(-OHが-NHに変換、例:N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン)、配糖体(グリコシド)、又はこれらの二糖類から選択され得、好ましくはグルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース又はキシロースから選択され得、
及びRは、同一又は異なり、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換され得、及び、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-N(R)-、-CH-、-CH(R)-、-CO-からなる群から選択され得る。
【0072】
上記の式(1)の化合物は、2-アミノベンゾイミダゾール構造体の2-アミノ基に炭水化物残基が結合している形態又はベンジイミダゾール構造体の2-の位置にアミノ化炭水化物が結合している形態と理解することができる。
【0073】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、下記の式(2)で表される化合物であってもよい:
【0074】
【化14】
(2)
【0075】
上記式において、R、R及びXは、上記に定義したとおりである。
【0076】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1)又は式(2)において、-NH-Rの部位が下記構造のうち一つを有し得る:
【0077】
【化15】
【0078】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1)又は式(2)において、ベンゾイミダゾールの部位が下記構造のうち一つを有し得る:
【0079】
【化16】
【0080】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、下記の化合物の中で選択され得る:
【0081】
アルベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminoglucose、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminofructose、6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminogalactose、及び6-(propylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminomannose;
フェンベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminoglucose、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminofructose、6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminogalactose、及び6-(phenylthio)-1H-benzoimidazol-2-aminomannose;
フルベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminoglucose、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminofructose、6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminogalactose、及び6-(4-fluorobenzoyl)-1H-benzimidazol-2-aminomannose;
メベンダゾール-D-炭水化物の結合体化合物として、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminoglucose、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminofructose、6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminogalactose、及び6-benzoyl-1H-benzimidazol-2-aminomannose。
【0082】
本発明によるミセルに含まれたベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、炭水化物の部分が鎖状構造及び環状構造を両方とも有しており、五炭糖及び六炭糖では、熱力学的に鎖状構造がさらに安定的であるとは言え、溶液内で鎖状構造及び環状構造が平衡を成しており、いずれかのみ薬効を有しているとしても、全体的な薬理学的効果には大きく影響がない。
【0083】
本発明の一実施例によれば、前記ミセルは、下記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物をさらに含んでいてもよい:
【0084】
【化17】
(1b)
【0085】
上記式において、
及びRは、同一又は異なり、水素又は置換可能な炭化水素基であって、例えば、炭素原子数1~10のアルキル基、環原子数3~10のアリール基又はヘテロアリール基を示し、前記アルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、チオール、アミノ、アルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アリール又はヘテロアリール基から選択される置換基に置換され得、
Xは、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NH-、-N(R)-、-CH-、-CH(R)-、-CO-からなる群から選択され得、
は、酸(H)に対する共役塩基であって、Cl、Br、I、F、NO 、CHCOO、HCOO、HCO 、CO 2-、HPO 、HPO 2-、HSO 、SO 2-又はClO から選択され得る。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物は、下記の式(2b)で表される化合物であってもよい:
【0087】
【化18】
(2b)
【0088】
上記式において、R、X及びYは、上記に定義したとおりである。
【0089】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物のモル比(molar ratio)は、500:1~1:500であってもよく、好ましくは500:1~1:1、200:1~1:1、200:1~10:1、100:1~1:1又は100:1~5:1であってもよい。
【0090】
図1は、ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルを示したものであり、図2は、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体単一化合物を含むミセルを示したもので、図3は、ベンゾイミダゾールアンモニウムの単一化合物を含むミセルを示したものである。
【0091】
図4図11を参照すると、ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル(図1)が、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体単一化合物を含むミセル(図2)又はベンゾイミダゾールアンモニウムの単一化合物を含むミセル(図3)よりも、数十~数百倍優れた効果を奏することを確認することができる。
【0092】
本発明の一実施例によれば、前記ミセル(micelle)は、細胞に投入された後、24~72時間の間に投入された細胞内に残存するベンゾイミダゾールアンモニウム誘導体及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の濃度が、投入された細胞から排出されるベンゾイミダゾールアンモニウム誘導体及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の濃度よりもさらに高く維持させるものであってもよい。
【0093】
ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物が、ミセル(micelle)ではない単一物質で吸収される場合、多量のベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を短い時間内に吸収させにくく、薬効が十分発揮しにくいことがある。
【0094】
本発明によるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルは、正常細胞よりもGLUTチャネルの活性化した癌細胞及びウイルス感染細胞に多量の薬物を集中して吸収させて、短い時間内に薬効が表れることを特徴とする。
【0095】
(2)ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルの製造方法
本発明の第二目的は、下記の式(1b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物に、下記の式(1)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を混合するミセル(micelle)の製造方法を提供することである:
【0096】
【化19】
(1b)
【0097】
【化20】
(1)
【0098】
上記式において、R、R、R、X及びYは、上記に定義したとおりである。
【0099】
本発明の一実施例によれば、前記ミセル(micelle)の製造方法は、下記の式(2b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物に、下記の式(2)で表されるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を混合するものであってもよい:
【0100】
【化21】
(2b)
【0101】
【化22】
(2)
【0102】
上記式において、R、R、R、X及びYは、上記に定義したとおりである。
【0103】
本発明によるミセルは、様々な方法により製造され得、以下に製造方法の一例を提示する。本発明によるミセルを製造する一例として、下記の反応スキーム1を提示することができる。
【0104】
反応スキーム1は、2-アミノベンゾイミダゾール化合物に塩酸(HCl)を結合して得られたベンゾイミダゾールアンモニウム化合物と、2-アミノベンゾイミダゾール化合物に炭水化物が結合したベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を混合してミセルを形成する反応を示す。
【0105】
[反応スキーム1]
【化23】
【0106】
本発明の一実施例によれば、上記の式(1b)又は式(2b)で表されるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物は、下記の式(1a)又は式(2a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物に酸(acid)を反応させて製造され得る:
【0107】
【化24】
(1a)
【0108】
【化25】
(2a)
【0109】
上記式において、R、R及びXは、上記に定義したとおりである。
【0110】
前記酸(acid)は、水素イオン(H)を提供する物質であれば、特に制限されない。
【0111】
本発明によるミセルの製造に用いられるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物を製造する一例として、下記の反応スキーム2を提示することができる。
【0112】
[反応スキーム2]
【化26】
【0113】
本発明の一実施例によれば、前記ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、上記の式(1a)又は式(2a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物に炭水化物を反応させてイミン結合を形成したものであってもよい。
【0114】
本発明の一実施例によれば、式(1a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物におけるイミン反応を行える置換基は、予め保護又は遮蔽することができる。
【0115】
本発明によるミセルの製造に用いられるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を製造する一例として、下記の反応スキーム3を提示することができる。
【0116】
反応スキーム3は、アルベンダゾール又はフェンベンダゾールの前駆体である6-アルキルチオ-2-アミノベンゾイミダゾールの2-アミノ基にD-グルコース単位を結合させる反応を示す。
【0117】
[反応スキーム3]
【化27】
【0118】
反応スキーム3において、アミノベンゾイミダゾールの2-アミノ基をD-グルコース(open chain form)のアルデヒド基と反応させて、イミン結合を形成することにより、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物、つまり、ベンゾイミダゾール-D-グルコース(open chain form)結合体化合物を製造する。
【0119】
前記ベンゾイミダゾール-D-グルコース(open chain form)の結合体化合物は、熱力学的に安定した環状ベンゾイミダゾール-D-グルコース(cyclic form)に変換され得る。
【0120】
本発明によるミセルの製造に用いられるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を製造するさらに他の例として、下記の反応スキーム4を提示することができる。
【0121】
反応スキーム4は、フルベンダゾール又はメベンダゾールの前駆体である6-アルキルカルボニル-2-アミノベンゾイミダゾールの2-アミノ基にD-グルコース単位を結合させる反応を示す。
【0122】
[反応スキーム4]
【化28】
【0123】
上記の反応スキーム3及び4における結果であるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物は、通常の方法により単離及び/又は精製した後、分光学的手法(例:H-NMR)などにより確認することができる。
【0124】
(3)ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルの薬理学的効果及び用途
本発明の第三目的は、上記の式(1)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含有するミセルの薬学組成物又は薬理学的組成物を提供することである。
【0125】
本発明の一実施例によれば、式(1)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルが微小管の形成を抑制し、炭水化物、好ましくはブドウ糖を含む糖類(sugar compound)の吸収を抑制する薬学的組成物が提供され得る。すなわち、癌細胞とウイルス感染細胞に吸収されると、微小管の形成を抑制し、炭水化物又はブドウ糖を含む糖類(sugar compound)の吸収を抑制することができる。
【0126】
本発明の一実施例によれば、式(1)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルが抗癌又は抗ウイルス活性を示す薬学的組成物を提供することができる。すなわち、正常細胞よりもGLUT(glucose transporter)チャネルを多く形成する癌細胞とウイルス感染細胞に高い割合で選択的に吸収されて、抗癌又は抗ウイルス効能を奏し得る。
【0127】
本発明の一実施例によれば、式(1)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルは、細胞膜ではないGLUT(glucose transporter)チャネルを介して選択的に吸収される薬学的組成物を提供することができる。
【0128】
本発明の特徴の一つは、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物のうち一つであるアルベンダゾール-グルコース化合物(Al-G)は、アルベンダゾールにグルコースが結合した形態で、アルベンダゾール塩酸塩(Al-NH Cl)と混合して形成されたミセルが細胞に吸収されるとき、前記ミセルに含まれたグルコースによって細胞膜ではないGLUTチャネルを介して吸収されるように設計された。GLUTチャネルは、正常細胞よりも癌細胞やウイルス感染細胞で多く活性化していると知られている。特に、正常細胞よりも癌細胞において、1000倍程GLUTチャネルを形成すると報告されている。本発明によるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルは、正常細胞よりもGLUTチャネルの活性化した癌細胞及びウイルス感染細胞に集中して吸収される(参考:L.Quan et al./Journal of Molecular Structure 1203(2020)127361)。
【0129】
各細胞内に存在するチューブリン(tubulin)が分子化(polymerization)して微小管を形成すると知られている。各細胞内に存在するチューブリンの濃度は、およそ5uM濃度(Biomolecules 2019,9,86; doi:10.3390/biom9030086)であり、チューブリン(tubulin)が微小管となる高分子化過程を抑制するためには、多量の薬物が短い時間内に吸収される必要がある。しかし、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物が、ミセル(micelle)ではない単一物質で吸収される場合、多量の薬物を短い時間内に吸収させにくく、薬効を十分発揮しにくいことがある。
【0130】
本発明によるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルは、正常細胞よりもGLUTチャネルの活性化した癌細胞及びウイルス感染細胞に多量の薬物を集中して吸収させて、短い時間内に薬効が表れることを特徴とする。
【0131】
微小管の形成を抑制させると、GLUTチャネルの生成が抑制され、ブドウ糖の吸収を遮断することができ、その結果、癌細胞の増殖やウイルス感染細胞内のウイルスの増殖が顕著に抑制され得、これによって、体内免疫システムが、上記のように、増殖の抑制された癌細胞又はウイルス感染細胞等を攻撃して、抗癌効果又は抗ウイルス効果を奏すると知られている。
【0132】
本発明の一実施例によれば、式(1a)の2-アミノベンゾイミダゾール化合物にHCl(塩酸)を結合して得られた2-アミノベンゾイミダゾール塩酸塩と、式(1)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を利用して製造されたミセルは、細胞膜ではないGLUTチャネルを介して吸収される。図7図8及び図9を参照すると、24時間内に乳房癌細胞、肺癌細胞、大膓癌細胞、膵膓癌の癌細胞が完全に死滅した。同じ条件での正常細胞は、ほとんど影響を受けないことを確認した。
【0133】
本発明による式(1)のベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルが、抗ウイルス活性を示すことを次のように説明することができる。
【0134】
ウイルスとは、細菌よりも小さくて、細菌濾過器(0.22um)でも濾しない小さい粒子(平均0.1um以下)であって、生存に必要な物質として核酸(DNA又はRNA)と少数のタンパク質のみを有しており、宿主に依存して生きて行く生命体であり、人体に感染すると、ウイルス性疾患を引き起こしたりもする。
【0135】
ウイルスは、ほとんどの性質が細菌とは異なり、一般的な抗生剤ではウイルスの増殖が抑制されない。ウイルスによって引き起こされる疾病に対する治療剤として、体内に侵入したウイルスの作用を弱くするか消滅させる薬を抗ウイルス治療剤と言い、ウイルス感染症は、既存の抗生剤では治療が難しいため、抗ウイルス治療剤で治療するしかない。
【0136】
現在開発して使用される抗ウイルス製剤は、ウイルスの増殖過程を抑制して、つまり、ウイルスに感染した細胞内のウイルスの増殖速度を抑制して、最終的にウイルスに感染した細胞が増えることを抑制し、体内免疫体系がウイルスに感染した細胞を攻撃して、除去可能な水準以下にウイルスの増殖過程を抑制する薬物である。
【0137】
ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス製剤は、細胞内でウイルスの増殖過程で特定の段階を妨げて、ウイルスの増殖を抑制して治療する薬物である。
【0138】
抗ウイルス剤は、治療対象疾患群によってインフルエンザ治療剤、ヘルペス治療剤、B型肝炎治療剤、C型肝炎治療剤、エイズ治療剤などに分類し、薬物の特性によって色んな疾患に使用されたりもする。
【0139】
インフルエンザ治療剤として使用される抗ウイルス剤は、インフルエンザA及びインフルエンザBのウイルス感染の治療に使用されるタミフル(登録商標)、リレンザロタディスク(登録商標)、ペラミビル(登録商標)などが代表的である。
【0140】
ヘルペス治療剤にて単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus,HSV)及び水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus,VZV)感染の治療に使用される抗ウイルス剤は、ゾビラックス(登録商標)、バルトレックス(登録商標)、ファムビル(登録商標)、Ocufridine(登録商標)などが代表的である。
【0141】
C型肝炎治療剤にてC型肝炎ウイルスの増殖を抑制して、疾病の進行を引き延ばす薬物である。長い間、免疫体系を増強させるインターフェロン注射剤とリバビリンの併用療法が使われてきたが、比較的に最近、直接作用抗ウイルス剤(direct acting antivirals,DAA)が開発されて、飲み薬のみでの治療が可能となり、ビラミド(登録商標)、ダザブビル(登録商標)、ソバルディ(登録商標)、ダクルインザ(登録商標)、ハーボニ(登録商標)などが代表的である。
【0142】
エイズ治療剤にて人間免疫欠乏ウイルス(HIV)の増殖を抑制して、疾病の進行を引き延ばす薬物は、3種類以上の薬剤を同時に服用するカクテル療法を使って、耐性発現を防止し、コンビビル(登録商標)、カイベクサ(登録商標)、ツルバタ(登録商標)、インテレンス(登録商標)などが代表的である。
【0143】
その他抗ウイルス剤にて人の免疫反応を増強させるか調節することによって、ウイルスの増殖を抑制する薬物があるが、感染時、兔疫細胞で生産して分泌される物質であって、抗ウイルス効果と免疫調節能力を有しており、ロフェロンA(登録商標)、イントロンA(登録商標)、ペガシス(登録商標)、アルダラ(登録商標)などが代表的である(参考:Korea Pharmaceutical Information Center)。
【0144】
しかし、現在までウイルス感染を成功的に治療する抗ウイルス製剤の種類や数が非常に少なく、ほとんどのウイルス感染症は、患者の免疫機能によって自ら治癒されることを期待する次第である。
【0145】
ウイルスに感染した細胞内のウイルスの増殖速度を抑制して、最終的にウイルスに感染した細胞が増えることを抑制して、体内免疫体系がウイルスに感染した細胞を攻撃して除去可能な水準以下にウイルスの増殖過程を抑制する薬物の開発が至急な実情である。
【0146】
本発明の利点のうち一つは、本発明によるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセルが、正常細胞よりも主に癌細胞及びウイルス感染した細胞のみに吸収された後、このミセルに含まれているベンゾイミダゾール化合物誘導体が微小管の形成を妨げて細胞分裂を阻害し、これによって、細胞エネルギー源であるブドウ糖を含む炭水化物(carbohydrate)の吸収を遮断させることにより、癌細胞及びウイルス感染細胞の死滅を効果的に誘導することができる点である。
【0147】
よって、本発明によるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物とベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物が含まれたミセル(micelle)は、主に癌細胞及びウイルス感染細胞に集中して吸収されるため、正常細胞には毒性を最小化できるように設計されただけでなく、癌とウイルス-感染を治療するための抗癌及び抗ウイルス剤化合物として有用に使用し得ると期待される。
【0148】
以下では、実施例によって本発明をより詳説する。しかし、下記の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。下記の実施例は、本発明の範囲内で当業者によって適宜修正、変更され得る。
【実施例
【0149】
<実施例1>アルベンダゾールアンモニウム(Al-NH )化合物の製造
【0150】
【化29】
【0151】
Al-NH 化合物は、Al-NHに塩酸(HCl)を添加して、下記の方法に従って製造する。
【0152】
1)100mlの1neck丸底フラスコにAl-NH(分子量:207g/mol)5gと、アセトン30mlを入れて、ice bathで20分間攪拌する。
【0153】
2)NaCl(分子量:58.44)4.23gを2-neck丸底フラスコに入れて、2-neckの一方はゴム栓で塞ぎ、他方は、ゴム管の連結されたバルブコネクタで装着する。バルブコネクターで連結されたゴム管の端にはガラスピペットを連結して、1)のアセトン溶液にガラスピペット浸し、HClガスが出るように取り付ける。
【0154】
3)硫酸3.9mlを2)のNaClが入っている丸底フラスコに添加した後、heating bathで15分間加熱する。
【0155】
4)アセトン溶液の色が茶色から紫色に変わると、加熱を止めた状態で5分間攪拌した後、フィルターを利用してアセトン溶液を濾過する。
【0156】
5)濾過したアセトン溶媒を減圧下で除去した後、Al-NH 化合物5.8g(修得率98%)を白い結晶として得た。
【0157】
<実施例2> ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物の製造
実施例2-A:アルベンダゾール-グルコースの結合体化合物
【0158】
【化30】
【0159】
上記の反応式に従って、アルベンダゾール-グルコースの結合体化合物を製造しており、反応手続き及び条件は、文献(Gokhale,Kearney,and Kirsch,AAPS PharmSciTech,Vol.10,No.2,June2009)に記載の方法を参照した。
【0160】
塩酸溶液(pH3.45)に1.2mMのアミノアルベンダゾール(CAS # 80983-36-4)(市販名:Albendazole amine)及び0.5Mのグルコースを添加して反応混合物を製造し、テプロンコーティングされたゴム栓付ガラスバイアルにおける40±1℃で反応させた後、アセテート緩衝液(0.5M、pH5.8)で希釈して反応を終決した。
【0161】
溶媒を除去し、ジクロロメタン及び10%メタノールを利用してカラムクロマトグラフィーで精製し、アルベンダゾール-グルコースの結合体化合物を62%の収率で得た。
【0162】
前記生成物をH-NMRスペクトラムで分析して、アルベンダゾール-グルコースの結合体化合物の生成を確認した(図13図17)。
【0163】
実施例2-B:フェンベンダゾール-グルコースの結合体化合物
【0164】
【化31】
【0165】
アミノアルベンダゾールの代りにアミノフェンベンダゾール(CAS # 1448346-29-9)(塩酸塩形態)を用いることを除いては、実施例1-Aと同様に行い、ベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物としてフェンベンダゾール-グルコースの結合体化合物を66%の収率で得た。
【0166】
前記生成物をH-NMRスペクトラムで分析して、フェンベンダゾール-グルコースの結合体化合物の生成を確認した(図14図18)。
【0167】
実施例2-C:フルベンダゾール-グルコースの結合体化合物
【0168】
【化32】
【0169】
上記の反応式に従って、フルベンダゾール-グルコースの結合体化合物を製造しており、反応手続き及び条件は、文献(Gokhale,Kearney,and Kirsch,AAPS PharmSciTech,Vol.10、No.2,June2009)に記載の方法を参照した。
【0170】
塩酸溶液(pH3.45)に1.2mMのアミノフルベンダゾール(CAS # 82050-13-3)(市販名:2-Aminoflubendazole)及び0.5Mのグルコースを添加して反応混合物を製造し、テプロンコーティングされたゴム栓付ガラスバイアルにおける40±1℃で反応させた後、アセテート緩衝液(0.5M、pH5.8)で希釈して反応を終決した。
【0171】
溶媒を除去して、ジクロロメタン及び10%メタノールを利用してカラムクロマトグラフィーで精製し、フルベンダゾール-グルコースの結合体化合物を68%の収率で得た。
【0172】
前記生成物をH-NMRスペクトラムで分析して、フルベンダゾール-グルコースの結合体化合物の生成を確認した(図15図19)。
【0173】
実施例2-D:メベンダゾール-グルコースの結合体化合物
【0174】
【化33】
【0175】
アミノフルベンダゾールの代りにアミノメベンダゾール(CAS # 52329-60-9)を用いることを除いては、実施例2-Cと同様に行い、メベンダゾール-グルコースの結合体化合物を66%の収率で得た。
【0176】
前記生成物をH-NMRスペクトラムで分析して、メベンダゾール-グルコースの結合体化合物の生成を確認した(図16図20)。
【0177】
<実施例3>アルベンダゾール-アンモニウム(Al-NH )化合物及びアルベンダゾール-グルコース(Al-G)化合物を含むミセルの製造
ベンゾイミダゾール-アンモニウム化合物であるAl-NH 化合物とベンゾイミダゾール-炭水化物化合物であるAl-G化合物を混合してミセルを製造した。
【0178】
【化34】
【0179】
Al-NH 100mg(分子量:243g/mol)をDMSOの2mlに溶かして、200mMのストック溶液を製造しており、Al-Gの100mg(分子量:369g/mol)をDMSOの1.35mlに溶かして、200mMのストック溶液を製造した。これを表1に示した割合で混合して、6種のミセルを製造した。
【0180】
【表1】
【0181】
表1の混合物6種それぞれ0.5mlをsaline溶液100mlと混合して、細胞投与用溶液を製造しており、これを表2の濃度で希釈して、癌細胞株の成長抑制試験に使用した。
【0182】
<実施例4>アルベンダゾール-グルコース(Al-G)化合物を含むミセルの製造
【0183】
【化35】
【0184】
表1のAl-G200mMのストック溶液0.5mlをsaline溶液100mlと混合して、1000uMの細胞試験用溶液を製造しており、これを表2の濃度で希釈して、癌細胞株の成長抑制試験に使用した。
【0185】
<実施例5>アルベンダゾール-アンモニウム(Al-NH )化合物を含むミセルの製造
【0186】
【化36】
【0187】
表1のAl-NH 200mMのストック溶液0.5mlをsaline溶液100mlと混合して、1000uMの細胞試験用溶液を製造しており、これを表2の濃度で希釈して、癌細胞株の成長抑制試験に使用した。
【0188】
<実施例6>癌細胞株の成長抑制試験
人の膵膓癌細胞株ASPC-1、肺癌細胞株A549、乳房癌細胞株MCF-7、大膓癌細胞株HCT116は、韓国細胞株銀行(KCLB、ソウル、韓国)より分譲されて、培養培地で培養した。DMEM、10%培養フラスコを使用して、37℃で5%COを含有する加湿した細胞培養インキュベーター内でウシ胎児血清(FBS)、0.1mMのMEM非必須アミノ酸(NEAA)、2mMのL-グルタミン(L-glutamine)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)をKCLBより提供された指針に従って、2-3日ごとにトリプシン処理して細胞を継代培養した。培養水が80-90%の合流度になるまで培養し、癌細胞株の成長抑制実験のために細胞を培養フラスコに連続して移した。
【0189】
癌細胞株(膵膓癌細胞株ASPC-1、肺癌細胞株A549、乳房癌細胞株MCF-7、大膓癌細胞株HCT 116)を96ウェルプレートにウェル当たり約 7,000個の細胞でシーディングした。24時間後、表2の9種化合物を6つ濃度条件でそれぞれウェルに添加して、24時間インキュベーションした。
【0190】
【表2】
【0191】
インキュベーション後、培地を捨てて、各々のウェルにおける細胞生存率を製造社の指示に従って、WST-8細胞生存力分析キット(Quanti-MaxTM,BIOMAX)を使用して測定した。
【0192】
分析は、生存細胞の脱水素酵素がテトラゾリウム塩(Tetrazolium salt)を分解して、ホルマザン(formazan)を生成する原理を利用しており、これによって、生きている細胞を定量的に評価した。還元されたホルマザン塩料(formazan salt)は、細胞培養培地に可溶性で、かつホルマザン(formazan)量は、生存細胞数に正比例することを利用して測定した。
【0193】
上記のような癌細胞株の成長抑制試験結果は、表3及び図4図12に示した。
【0194】
図12のドキソルビシン(doxorubicin)は、FDA承認された薬物であって、本発明の一実施例によるミセルと同じ濃度(表2)で投与されたとき、24時間内に全体癌細胞の70%以上が残っている結果を示した。
【0195】
図10図11を参照すると、前記ベンゾイミダゾールアンモニウムの単一化合物を含むミセル(micelle)又はベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体単一化合物を含むミセル(micelle)は、前記ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル(micelle)と同じ濃度(表2)で投与されたとき、24時間内に全体癌細胞の70~90%以上が残っている結果を示した。
【0196】
図7図8及び図9を参照すると、ベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物が共に含まれたミセル(micelle)がドキソルビシンと同じ濃度(表2)で投与されたとき、24時間内に全体癌細胞が完全に死滅する結果を示した。特に、24時間内に乳房癌細胞、肺癌細胞、大膓癌細胞、膵膓癌細胞が完全に死滅する癌細胞株の成長抑制結果を得た。同じ条件での正常細胞は、ほとんど影響を受けないことを確認した。
【0197】
<実施例7>正常細胞株での毒性試験
正常肺細胞株MRC-5の細胞株は、(韓国細胞株銀行(KCLB)ソウル、韓国)より分譲されて、完全な培養培地で培養した。DMEM、10%培養フラスコを使って37℃で5%COを含有する加湿した細胞培養インキュベーター内でウシ胎児血清(FBS)、0.1mMのMEM非必須アミノ酸(NEAA)、2mMのL-グルタミン(L-glutamine)及び1%のペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin)をKCLBより提供された指針に従って、2-3日ごとにトリプシン処理して細胞を継代培養した。培養水が80-90%の合流度になるまで培養し、癌細胞株の成長抑制実験のために細胞を培養フラスコに連続して移した。
【0198】
正常細胞株(MRC-5)を96ウェルプレートにウェル当たり約7000個の細胞でシーディングした。24時間後、表2の9種化合物を6つ条件の濃度でそれぞれウェルに添加して、24時間インキュベーションした。
【0199】
インキュベーション後、培地を捨てて、各々のウェルにおける細胞生存率を製造社の指示に従って、WST-8細胞生存力分析キット(Quanti-MaxTM,BIOMAX)を使用して測定した。
【0200】
分析は、生存細胞の脱水素酵素がテトラゾリウム塩(Tetrazolium salt)を分解して、ホルマザン(formazan)を生成する原理を利用しており、これによって、生きている細胞を定量的に評価した。還元されたホルマザン塩料(formazan salt)は、細胞培養培地に可溶性で、かつホルマザン(formazan)の量は、生存細胞数に正比例することを利用して測定した。
【0201】
本正常細胞株での毒性試験結果は、表3及び図4図12に示した。
【0202】
表3は、ドキソルビシン(doxorubicin)に対し癌細胞株の成長抑制試験及び正常細胞株の毒性試験結果を示したものである。一番目コラムは、ドキソルビシン(doxorubicin)に対し癌細胞株の成長抑制試験であって、AAAは優越(1倍以下)、AAは対等(1-2倍)、Aは若干微弱(3-5倍)、Bは微弱(5-10倍)及びCは非常に微弱(10倍以上)であることを意味する。二番目コラムは、ドキソルビシン(doxorubicin)に対し正常細胞株に対する毒性試験であって、AAAは毒性なし(1/30倍以下)、AAはほとんど毒性なし(1/10倍以下)、Aは若干毒性あり(1/3倍以下)、Bは毒性が対等(1-2倍)及びCは毒性が高い(10倍以上)ことを意味する。下記の表3に示したように、癌細胞株の成長抑制と正常細胞株の毒性に及ぼす化合物等の影響を測定した結果、本発明によるベンゾイミダゾールアンモニウム化合物及びベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル等は、癌細胞株における非常に優れた成長抑制活性を示し、正常細胞株での毒性を示さないことを確認した。
【0203】
【表3】
【0204】
今まで、本発明によるベンゾイミダゾール-炭水化物の結合体化合物を含むミセル、この製造方法、及びこれの抗癌剤又は抗ウイルス剤としての用途に関する具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から外れない限度内では、様々な実施変形が可能であることは自明である。
【0205】
よって、本発明の範囲は、説明した実施例に限って定めてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、この特許請求の範囲と均等なものなどによって定めなければならない。
【0206】
すなわち、前述の実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならず、本発明の範囲は、詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、その特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から想到するすべての変更又は変形形態が本発明の範囲に含まれると解釈しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20