(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】相同二量体型二重特異性抗体およびその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230707BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230707BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230707BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230707BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230707BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230707BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230707BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20230707BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230707BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230707BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230707BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230707BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230707BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230707BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230707BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230707BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K47/65
A61K47/68
A61P35/00
A61P37/04
C07K16/28
C07K16/30
C07K16/46
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021523492
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2019114818
(87)【国際公開番号】W WO2020088608
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】201811294887.4
(32)【優先日】2018-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519366190
【氏名又は名称】安源医薬科技(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AMPSOURCE BIOPHARMA SHANGHAI INC.
【住所又は居所原語表記】NO.3, LANE 908, ZIPING ROAD, PUDONG NEW AREA, SHANGHAI 201318, PEOPLE’S REPUBLIC OF CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 強
(72)【発明者】
【氏名】馬 心魯
(72)【発明者】
【氏名】賈 世香
(72)【発明者】
【氏名】厳 源
(72)【発明者】
【氏名】張 玉華
(72)【発明者】
【氏名】周 利
(72)【発明者】
【氏名】孫 日龍
(72)【発明者】
【氏名】崔 雪原
(72)【発明者】
【氏名】余 霊菊
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ 玉潔
(72)【発明者】
【氏名】金 蛍蛍
(72)【発明者】
【氏名】熊 耀
(72)【発明者】
【氏名】李 媛麗
(72)【発明者】
【氏名】陳 思
(72)【発明者】
【氏名】劉 雪梅
(72)【発明者】
【氏名】▲チョウ▼ 家昇
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-186301(JP,A)
【文献】国際公開第2019/222428(WO,A1)
【文献】特開2012-161324(JP,A)
【文献】特表2018-509901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0355600(US,A1)
【文献】特表2014-529402(JP,A)
【文献】特表2014-514287(JP,A)
【文献】ASANO, R. et al.,Cytotoxic Enhancement of a Bispecific Diabody by Format Conversion to Tandem Single-chain Variable Fragment (taFv),THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2011年,Vol.286, No.3,pp.1812-1818
【文献】WU, X. et al.,Tandem bispecific neutralizing antibody eliminates HIV-1 infection in humanized mice,The Journal of Clinical Investigation,2018年06月,Vol.128, No.6,pp.2239-2251
【文献】KIM, H. et al.,Application of bispecific antibody against antigen and hapten for immunodetection and immunopurification,Experimental & Molecular Medicine,2013年,Vol.45, e43,pp.1-7
【文献】Grit Lorenczewski, MS et al.,Generation of a Half-Life Extended Anti-CD19 BiTE(R) Antibody Construct Compatible with Once-Weekly Dosing for Treatment of CD19-Positive Malignancies,Blood blood,2017年,Vol.130, Suppl_1
【文献】ZOU, J. et al.,Immunotherapy based on bispecific T-cell engager with hIgG1 Fc sequence as a new therapeutic strategy in multiple myeloma,Cancer Sci,2015年,Vol.106, No.5,pp.512-521
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の同じポリペプチド鎖により共有結合で4価の相同二量体を形成し、各本のポリペプチド鎖は、N端からC端まで、腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1の一本鎖Fv、エフェクター細胞抗原CD3に特異的に結合する第2の一本鎖Fv、およびFc断片を順に含む二重特異性抗体であって、
第1の一本鎖Fvと第2の一本鎖Fvとはリンカーペプチドを介して連結され、第2の一本鎖FvとFc断片とは直接連結されるか、またはリンカーペプチドを介して連結され、且つ、前記Fc断片はCDC、ADCCおよびADCPのエフェクター機能を有さず、
第1の一本鎖Fvと第2の一本鎖Fvとを連結するリンカーペプチドは、フレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、前記フレキシブルペプチドは、G
2(GGGGS)
3、(GGGGS)
3、GS(GGGGS)
2または(GGGGS)
1であり、前記リジッドペプチドは、SSSSKAPPPS、SRLPGPSDTPILPQ、SSSSKAPPPSLPSPSR、またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQである、二重特異性抗体。
【請求項2】
前記第1の一本鎖Fvに含まれるVHドメインとVLドメインとはリンカーペプチドを介して連結され、且つ、前記リンカーペプチドのアミノ酸配列は(GGGGX)
nであり、XはSerまたはAlaを含み、nは1~5の自然数である、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
前記腫瘍関連抗原は、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD38、CD39、CD40、CD47、CD52、CD73、CD74、CD123、CD133、CD138、BCMA、CA125、CEA、CS1、DLL3、DLL4、EGFR、EpCAM、FLT3、gpA33、GPC-3、Her2、MEGE-A3、NYESO1、PSMA、TAG-72、CIX、葉酸塩結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR2、VEGFR3、カドヘリン(Cadherin)、インテグリン(Integrin)、メソテリン(Mesothelin)、Claudin18、αVβ3、α5β1、ERBB3、c-MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、B7タンパク質ファミリー、ムチンファミリー(Mucin)、FAPまたはテネイシン(Tenascin)を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記第1の一本鎖Fvは、CD19に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:9、10および11に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:12、13および14に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:17、18および19に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:20、21および22に示すとおりであるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:25、26および27に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:28、29および30に示すとおりであるグループ、
(iv)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:33、34および35に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:36、37および38に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記第1の一本鎖Fvは、CD20に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:41、42および43に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:44、45および46に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:49、50および51に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:52、53および54に示すとおりであるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:57、58および59に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:60、61および62に示すとおりであるグループ、
(iv)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:65、66および67に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:68、69および70に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
前記第1の一本鎖Fvは、CD22に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:73、74および75に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:76、77および78に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:81、82および83に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:84、85および86に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
前記第1の一本鎖Fvは、CD30に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:89、90および91に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:92、93および94に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:97、98および99に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:100、101および102に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記第1の一本鎖Fvは、EpCAMに特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:105、106および107に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:108、109および110に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:113、114および115に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:116、117および118に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記第1の一本鎖Fvは、CEAに特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:121、122および123に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:124、125および126に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:129、130および131に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:132、133および134に示すとおりであるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:137、138および139に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:140、141および142に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第1の一本鎖Fvは、Her2に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:145、146および147に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:148、149および150に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:153、154および155に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:156、157および158に示すとおりであるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:161、162および163に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:164、165および166に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記第1の一本鎖Fvは、EGFRに特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:169、170および171に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:172、173および174に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:177、178および179に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:180、181および182に示すとおりであるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:185、186および187に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:188、189および190に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記第1の一本鎖Fvは、GPC-3に特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:193、194および195に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:196、197および198に示すとおりである、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記第1の一本鎖Fvは、Mesothelinに特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:201、202および203に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:204、205および206に示すとおりである、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記第1の一本鎖Fvは、Mucin1に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:209、210および211に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:212、213および214に示すとおりであるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:217、218および219に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:220、221および222に示すとおりであるグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記第1の一本鎖Fvは、CA125に特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:225、226および227に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:228、229および230に示すとおりである、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
前記第1の一本鎖Fvは、CD19に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:16に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:23に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:24に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:32に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iv)そのVLドメインが、SEQ ID NO:39に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、そのVLドメインが、SEQ ID NO:40に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項4に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
前記第1の一本鎖Fvは、CD20に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:47に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:48に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:55に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:56に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:63に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:64に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iv)VHドメインが、SEQ ID NO:71に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:72に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
前記第1の一本鎖Fvは、CD22に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:79に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:80に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:87に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:88に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項6に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
前記第1の一本鎖Fvは、CD30に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:95に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:96に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:103に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインがSEQ ID NO:104に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項20】
前記第1の一本鎖Fvは、EpCAMに特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:111に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:112に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:119に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:120に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項21】
前記第1の一本鎖Fvは、CEAに特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:127に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:128に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:135に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:136に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:143に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:144に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項22】
前記第1の一本鎖Fvは、Her2に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:151に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:152に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:159に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:160に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:167に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:168に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項23】
前記第1の一本鎖Fvは、EGFRに特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:175に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:176に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:183に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:184に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:191に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:192に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
ことを特徴とする請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項24】
前記第1の一本鎖Fvは、GPC-3に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:199に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:200に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含む、ことを特徴とする請求項12に記載の二重特異性抗体。
【請求項25】
前記第1の一本鎖Fvは、Mesothelinに特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:207に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:208に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の二重特異性抗体。
【請求項26】
前記第1の一本鎖Fvは、Mucin1に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:215に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:216に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:223に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:224に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含むグループ、
から選ばれる、ことを特徴とする請求項14に記載の二重特異性抗体。
【請求項27】
前記第1の一本鎖Fvは、CA125に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:231に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:232に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含む、ことを特徴とする請求項15に記載の二重特異性抗体。
【請求項28】
前記第2の一本鎖Fvに含まれるVHドメインとVLドメインとはリンカーペプチドを介して連結され、且つ、前記リンカーペプチドのアミノ酸配列は(GGGGX)
nであり、XはSerまたはAlaを含み、nは1~5の自然数である、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項29】
前記第2の一本鎖Fvは、体外結合親和性分析において、50nMよりも大きい、または100nMよりも大きい、または300nMよりも大きい、または500nMよりも大きいEC
50値でエフェクター細胞に結合する、ことを特徴とする請求項1または28に記載の二重特異性抗体。
【請求項30】
前記第2の一本鎖FvのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:241、242および243に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:244、245および246に示すとおりである、ことを特徴とする請求項29に記載の二重特異性抗体。
【請求項31】
前記第2の一本鎖FvのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:249、250および251に示すとおりであり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:252、253および254に示すとおりである、ことを特徴とする請求項29に記載の二重特異性抗体。
【請求項32】
前記第2の一本鎖Fvは、CD3に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:247に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:248に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含む、ことを特徴とする請求項30に記載の二重特異性抗体。
【請求項33】
前記第2の一本鎖Fvは、CD3に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:255に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:256に示すアミノ酸配列、または上記配列と少なくとも
90%の同一性を有する配列を含む、ことを特徴とする請求項31に記載の二重特異性抗体。
【請求項34】
前記リジッドペプチドはSSSSKAPPPSである、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項35】
前記リンカーペプチドは、SEQ ID NO:258に示すアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項34に記載の二重特異性抗体。
【請求項36】
前記Fc断片と第2の一本鎖Fvとを連結するリンカーペプチドは、(GGGGS)nのみからなり、n=1、2、3、または4である、ことを特徴とする請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項37】
前記Fc断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEの重鎖定常領域から選ばれ、且つ、前記Fc断片は、由来する天然配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有する、ことを特徴とする請求項1または36に記載の二重特異性抗体。
【請求項38】
前記Fc断片は、EU番号システムに基づいて確定されたL234A/L235A/P331Sのアミノ酸置換を含む、ことを特徴とする請求項
37に記載の二重特異性抗体。
【請求項39】
前記Fc断片は、
(i)新生児受容体(FcRn)との結合親和性が増強されるという性質と、
(ii)低減または除去されたグリコシル化という性質と、
(iii)低減または除去された荷電不均一性という性質と、
の1種または複数種の性質を有するアミノ酸の置換、欠失、または付加を更に含む、ことを特徴とする請求項
38に記載の二重特異性抗体。
【請求項40】
前記Fc断片は、
(i)EU番号システムに基づいて確定されたM428L、T250Q/M428L、M428L/N434S、またはM252Y/S254T/T256Eのアミノ酸置換と、
(ii)EU番号システムに基づいて確定されたN297Aのアミノ酸置換と、
(iii)EU番号システムに基づいて確定されたK447のアミノ酸欠失と、
の1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加を更に含む、ことを特徴とする請求項
39に記載の二重特異性抗体。
【請求項41】
前記Fc断片のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:263に示すように、由来する天然配列と比べ、L234A/L235A/N297A/P331S/T250Q/M428LというEU番号システムに基づいて確定された6つのアミノ酸の置換または代替を有し、且つ、EU番号システムに基づいて確定されたK447が欠失または削除される、ことを特徴とする請求項
39に記載の二重特異性抗体。
【請求項42】
前記二重特異性抗体は、ヒトCD19およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:264に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:264に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:264に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
4に記載の二重特異性抗体。
【請求項43】
前記二重特異性抗体は、ヒトCD19およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:283に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:283に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:283に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
4に記載の二重特異性抗体。
【請求項44】
前記二重特異性抗体は、ヒトCD20およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:266に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:266に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:266に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
5に記載の二重特異性抗体。
【請求項45】
前記二重特異性抗体は、ヒトCD22およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:268に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:268に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:268に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
6に記載の二重特異性抗体。
【請求項46】
前記二重特異性抗体は、ヒトCD30およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:270に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:270に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:270に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
7に記載の二重特異性抗体。
【請求項47】
前記二重特異性抗体は、ヒトEpCAMおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:272に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:272に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:272に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
8に記載の二重特異性抗体。
【請求項48】
前記二重特異性抗体は、ヒトCEAおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:274に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:274に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:274に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
9に記載の二重特異性抗体。
【請求項49】
前記二重特異性抗体は、ヒトHer2およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:8に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:8に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:8に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
10に記載の二重特異性抗体。
【請求項50】
前記二重特異性抗体は、ヒトEGFRおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:277に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:277に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:277に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
11に記載の二重特異性抗体。
【請求項51】
前記二重特異性抗体は、ヒトGPC-3およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:279に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:279に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:279に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
12に記載の二重特異性抗体。
【請求項52】
前記二重特異性抗体は、ヒトMesothelinおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:281に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:281に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:281に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
13に記載の二重特異性抗体。
【請求項53】
前記二重特異性抗体は、ヒトMucin1およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:285に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:285に示す配列と比べて1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:285に示す配列と少なくとも
90%の配列同一性を有する配列、
のとおりである、ことを特徴とする請求項
14に記載の二重特異性抗体。
【請求項54】
請求項1~
53のいずれか1項に記載の二重特異性抗体をコードするDNA分子。
【請求項55】
SEQ ID NO:265、267、269、271、273、275、276、278、280、282、284、または286に示すヌクレオチド配列を有する、請求項
54に記載のDNA分子。
【請求項56】
請求項
54または
55に記載のDNA分子を含むベクター。
【請求項57】
請求項
56に記載のベクターを含む宿主細胞であって、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母、または哺乳動物細胞を含む、宿主細胞。
【請求項58】
請求項1~
53のいずれか1項に記載の二重特異性抗体および医薬的に許容される賦形剤、ベクター、または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項59】
(a)二重特異性抗体の融合遺伝子を取得し、二重特異性抗体の発現ベクターを構築することと、(b)遺伝子工学的手法により上記発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクションすることと、(c)前記二重特異性抗体の産生が許容された条件で上記宿主細胞を培養することと、(d)産生された前記抗体を分離、精製することとを含む請求項1~
53のいずれか1項に記載の二重特異性抗体を調製する方法であって、
ステップ(a)に記載の発現ベクターは、プラスミ
ドおよびウイルスから選ばれる1種または複数種であり、
ステップ(b)は、遺伝子工学的手法により構築したベクターを宿主細胞にトランスフェクションし、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母、または哺乳動物細胞を含み、
ステップ(d)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換、疎水性クロマトグラフィー、またはモレキュラーシーブ方法を含む通常の免疫グロブリン精製方法により、前記二重特異性抗体を分離、精製する、方法。
【請求項60】
請求項1~
53のいずれか1項に記載の二重特異性抗体の、癌/腫瘍を治療、予防、または緩和する薬剤の調製における使用であって、
前記癌は、中皮腫、扁平上皮腫、骨髄腫、骨肉腫、膠芽腫、神経膠腫、悪性上皮性腫瘍、腺癌、メラノーマ、肉腫、急性白血病、慢性白血病、リンパ腫、髄膜腫、ホジキン病、セザリー症候群、多発性骨髄腫、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、喉頭癌、乳癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、子宮頸癌、膣癌、胃癌、腎細胞癌、腎癌、膵臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓胆管癌、骨癌、皮膚癌、血液癌、鼻腔癌、副鼻腔癌、鼻咽頭癌、口腔癌、中咽頭癌、喉頭癌、喉下部癌、唾液腺癌、縦隔膜癌、胃癌、小腸癌、結腸癌、直腸および肛門領域の癌、尿管癌、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、外陰癌、内分泌系癌、中枢神経系癌または形質細胞腫を含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照] 本発明は、2018年11月1日に提出されたCN201811294887.4という中国特許出願に対して優先権を主張するものである。上記引用された優先権の出願の全ての内容を引用により本出願に援用する。
【0002】
本発明は、免疫学の分野に関し、より具体的には、T細胞を媒介して殺傷する抗CD3二重特異性抗体、およびこのような抗体の使用、特に、癌の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
1985年、T細胞を利用して腫瘍細胞を殺傷する概念は既に提案(Stearz UDら、Nature、314:628~631、1985)されている。通常、T細胞を効果的に活性化には、二重信号が必要となると考えられ、第1の信号は、抗原提示細胞におけるMHC-抗原複合体とT細胞受容体TCR-CD3との結合に由来し、第2の信号は、T細胞と抗原提示細胞が発現する共刺激分子とが相互作用して生じた非抗原特異性共刺激信号に由来する。多数の腫瘍細胞表面のMHCの発現が低下して更に欠失するため、腫瘍細胞が免疫殺傷から逃げる。
【0004】
二重特異性抗体は、作用メカニズムで二重信号遮断型および媒介細胞機能型に分けることができる。通常、媒介細胞機能型の二重特異性抗体とは、T細胞を媒介して殺傷する抗CD3二重特異性抗体を指す。CD3分子は、全ての成熟T細胞の表面に発現し、TCRと非共有結合を呈し、完全なTCR-CD3複合体を形成し、抗原刺激に対する免疫応答に共に参与し、現在の二重特異性抗体で最も多く適用されて最も成功した免疫エフェクター細胞の表面のトリガ分子である。CD3を標的とする二重特異性抗体は、T細胞の表面のCD3および腫瘍細胞の表面の抗原にそれぞれ結合することができ、細胞毒性T細胞(cytotoxic T cell、TcまたはCTL)と腫瘍細胞との距離を近接させ、且つ、T細胞を直接活性化し、従来のT細胞の二重活性化信号に依存せずに癌細胞を直接殺傷するようにT細胞を誘導する。しかし、T細胞抗原CD3を標的とするアゴニスト抗体、例えば、第1世代の臨床に応用されるヒトCD3を標的とするマウスモノクローナル抗体OKT3(Kung Pら、Science、206:347~349、1979)は、T細胞が過剰に活性化されてインターロイキン-2(IL-2)、TNF-α、IFN-γ、およびインターロイキン-6(IL-6)のような炎症因子を大量に放出するため、臨床的に深刻な「サイトカインストーム症候群」(Hirsch Rら、J.Immunol.,142:737~743、1989)を引き起こし、発熱、身震い、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、呼吸急迫、無菌性髄膜炎、および血圧低下を特徴とする「インフルエンザ様」症候群を引き起こす。そのため、CD3を標的とする二重機能抗体を開発するには、過剰なサイトカインストームをどのように弱めるまたは回避することは第1の考慮すべき問題となる。
【0005】
近年、2つの異なるハーフ抗体を正確に組み立てるという問題を解決するために、科学者らは様々な構造の二重特異性抗体を設計して開発した。全体的にまとめて二種類があり、1種類の二重特異性抗体はFc領域を含まない。このような構造の二重抗体の利点は、分子量が小さく、原核細胞に発現でき、正確に組み立てるという問題を考慮する必要がないことであり、欠点は、抗体Fc断片がないため、分子量が低く、その半減期が短く、且つ、このような形式の二重抗体が重合しやすく、安定性が悪く、発現量が低いため、臨床応用がある程度限られている。現在、このような二重特異性抗体がBiTE、DART、TrandAbs、bi-Nanobody等を含むという報告がある。
【0006】
別の種類の二重特異性抗体はFcドメインを保留する。このような二重抗体がIgG様構造を形成し、分子構造が大きく、且つ、FcRnにより媒介される細胞のエンドサイトーシスおよび再循環過程により、より長い半減期を有する。それと共に、Fcにより媒介される部分または全てのエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞介在性細胞傷害活性(ADCC)、補体依存性細胞傷害活性(CDC)、および抗体依存性細胞貪食(ADCP)が保留される。現在既に報告されたこのような二重特異性抗体は、Triomabs、kih IgG、Cross-mab、orthoFab IgG、DVD IgG、IgG scFv、scFv2-Fc等を含む。抗CD3二重特異性抗体は、現在、TandAbおよびscFv-Fv-scFv構成の他、他の抗CD3二重特異性抗体の設計は1価の抗CD3形式を広く採用し、主な原因は、2価の抗CD3二重特異性抗体が過剰に活性化しやすくてT細胞のアポトーシスおよび大量のサイトカインの瞬時放出を誘発し(Kuhn Cら、Immunotherapy、8:889~906、2016)、更に、より深刻な場合、T細胞を非抗原依存的に活性化して免疫バランスを破る可能性があるためである。そのため、従来技術における抗CD3二重特異性抗体は、2価の抗CD3抗体の導入を回避することが多く、例えば、triFab-Fc、DART-FcおよびBiTE-Fc構成の二重特異性抗体は、いずれも非対称性設計を採用する(即ち、ヘテロ二量体型二重抗体)(Z Wuら、Pharmacology and Therapeutics、182:161~175、2018)が、その下流の生産に多くの挑戦をもたらし、例えば、望ましくない相同二量体またはミスフィットされた不純物分子が生成され、二重抗体の発現および精製の困難度を増加する。「knobs-into-holes」技術の運用がある程度でヘテロ二量体型二重抗体分子の重鎖間のミスフィットの問題を解決したが、「軽鎖/重鎖のミスフィット」は、更に別の挑戦をもたらす。重鎖-軽鎖のミスフィットを防止する1つの策略は、二重特異性抗体の一方のFabの軽鎖および重鎖の一部のドメインを相互交換し、Crossmab(ハイブリッド抗体)を形成することであり、該方法は、軽鎖/重鎖間の選択的なペアリングを許容することができる。しかし、これらの方法の欠点は、ミスフィット生成物の生成を完全に防ぐことができず、任意のミスフィット分子の残留画分がいずれも生成物から分離されにくく、且つ、このような方法が2つの抗体配列に対して大量の突然変異等の遺伝子工学的改造を行う必要があり、簡単かつ汎用という目的を達成することができないことである。
【0007】
また、CD3特異性を含むIgG様構造の二重特異性抗体は、FcγRと結合する能力を有するため、無制限の長時間のT細胞活性化をもたらす可能性があり、且つ、このような活性化は、標的細胞によって制限されず、標的抗原に結合するか否かに関わらず、FcγRを発現する組織内(例えば、造血、リンパおよび細網内皮系内)においていずれも活性化されたT細胞を発見する。このようなT細胞の全身性活性化は、サイトカインの大量の放出に伴い、これは、T細胞がサイトカインまたは抗体を活性化する治療の応用過程における深刻な有害反応である。従い、このようなT細胞を媒介して殺傷する抗CD3二重特異性抗体は、Fcにより媒介されるT細胞の全身性活性化を回避する必要があり、免疫エフェクター細胞の標的細胞組織内での制限的な活性化を許容し、即ち、二重特異性抗体と対応する標的抗原との結合に一意に依存する。
【0008】
従い、本分野は、製品の半減期、安定性、安全性および生産可能性の面で性能が改善される新型な二重特異性分子の開発が差し迫って必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、免疫エフェクター細胞抗原CD3および腫瘍関連抗原(Tumor-Associated Antigen、TAA)を標的とする4価の相同二量体型二重特異性抗体分子を提供すること目的とし、このような二重特異性抗体は、体内で腫瘍細胞を著しく抑制または殺傷することができるが、TAAを低発現した正常細胞に対する非特異的殺傷作用が著しく低下するとともに、制御されたエフェクター細胞の過剰な活性化による毒副作用を有し、且つ、その物理化学性能および体内安定性がいずれも著しく向上する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様において、2本の同じポリペプチド鎖により共有結合で4価の相同二量体を形成し、各本のポリペプチド鎖は、N端からC端まで、腫瘍関連抗原に特異的に結合する第1の一本鎖Fv(抗-TAA scFv)、エフェクター細胞抗原CD3に特異的に結合する第2の一本鎖Fv(抗-CD3 scFv)、およびFc断片を順に含む二重特異性抗体であって、第1の一本鎖Fvと第2の一本鎖Fvとはリンカーペプチドを介して連結され、第2の一本鎖FvとFc断片とは直接連結されるか、またはリンカーペプチドを介して連結され、且つ、前記Fc断片はエフェクター機能を有しない二重特異性抗体を提供する。
【0011】
ここで、第1の一本鎖Fvは、腫瘍関連抗原に対して特異性を有し、それに含まれるVHドメインとVLドメインとはリンカーペプチド(L1)を介して連結され、前記VHとL1とVLとは、VH-L1-VLまたはVL-L1-VHの順で並べ、且つ、前記リンカーペプチドL1のアミノ酸配列は(GGGGX)nであり、XはSerまたはAlaを含み、XはSerであることが好ましく、nは1~5の自然数であり、nは3であることが好ましい。
【0012】
例示的には、前記腫瘍関連抗原は、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD38、CD39、CD40、CD47、CD52、CD73、CD74、CD123、CD133、CD138、BCMA、CA125、CEA、CS1、DLL3、DLL4、EGFR、EpCAM、FLT3、gpA33、GPC-3、Her2、MEGE-A3、NYESO1、PSMA、TAG-72、CIX、葉酸塩結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR2、VEGFR3、カドヘリン(Cadherin)、インテグリン(Integrin)、メソテリン(Mesothelin)、Claudin18、αVβ3、α5β1、ERBB3、c-MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、B7タンパク質ファミリー、ムチンファミリー(Mucin)、FAP、およびテネイシン(Tenascin)を含んでもよいが、これらに限定されない。好ましくは、前記腫瘍関連抗原は、CD19、CD20、CD22、CD30、CD38、BCMA、CS1、EpCAM、CEA、Her2、EGFR、CA125、Mucin1、GPC-3、およびMesothelinである。
【0013】
例えば、本発明の表6-1において、いくつかの好ましい腫瘍関連抗原に対する第1の一本鎖FvのVHドメインおよびその相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)のアミノ酸配列と、VLドメインおよびその相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列とを例示的に列挙する。
【0014】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD19に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:9、10および11に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:12、13および14に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:17、18および19に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:20、21および22に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:25、26および27に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:28、29および30に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iv)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:33、34および35に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:36、37および38に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0015】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD20に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:41、42および43に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:44、45および46に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:49、50および51に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:52、53および54に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:57、58および59に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:60、61および62に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iv)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:65、66および67に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:68、69および70に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0016】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD22に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:73、74および75に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:76、77および78に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:81、82および83に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:84、85および86に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0017】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD30に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:89、90および91に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:92、93および94に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:97、98および99に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:100、101および102に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0018】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、EpCAMに特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:105、106および107に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:108、109および110に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:113、114および115に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:116、117および118に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0019】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CEAに特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:121、122および123に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:124、125および126に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:129、130および131に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:132、133および134に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:137、138および139に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:140、141および142に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0020】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、Her2に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:145、146および147に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:148、149および150に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:153、154および155に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:156、157および158に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:161、162および163に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:164、165および166に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0021】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、EGFRに特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:169、170および171に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:172、173および174に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:177、178および179に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:180、181および182に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(iii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:185、186および187に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:188、189および190に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0022】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、GPC-3に特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:193、194および195に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:196、197および198に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。
【0023】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、Mesothelinに特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:201、202および203に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:204、205および206に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。
【0024】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、Mucin1に特異的に結合し、
(i)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:209、210および211に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:212、213および214に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
(ii)VHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:217、218および219に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:220、221および222に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であるグループ、
から選ばれる。
【0025】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CA125に特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:225、226および227に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:228、229および230に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。
【0026】
好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、BCMAに特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:233、234および235に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:236、237および238に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。
【0027】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD19に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:15に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:16に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:23に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:24に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:31に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:32に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iv)VHドメインが、SEQ ID NO:39に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:40に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0028】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD20に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:47に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:48に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:55に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:56に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:63に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:64に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iv)VHドメインが、SEQ ID NO:71に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:72に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0029】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD22に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:79に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:80に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:87に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:88に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0030】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CD30に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:95に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:96に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:103に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:104に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0031】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、EpCAMに特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:111に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:112に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:119に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:120に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0032】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CEAに特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:127に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:128に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:135に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:136に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:143に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:144に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0033】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、Her2に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:151に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:152に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:159に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:160に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:167に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:168に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0034】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、EGFRに特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:175に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:176に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:183に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:184に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(iii)VHドメインが、SEQ ID NO:191に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:192に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0035】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、GPC-3に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:199に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:200に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含む。
【0036】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、Mesothelinに特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:207に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:208に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含む。
【0037】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、Mucin1に特異的に結合し、
(i)VHドメインが、SEQ ID NO:215に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:216に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
(ii)VHドメインが、SEQ ID NO:223に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:224に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含むグループ、
から選ばれる。
【0038】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、CA125に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:231に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:232に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含む。
【0039】
より好ましくは、前記第1の一本鎖Fvは、BCMAに特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:239に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:240に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含む。
【0040】
ここで、本発明に記載の第1の一本鎖Fvと第2の一本鎖Fvとを連結するリンカーペプチド(L2)は、フレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成される。
【0041】
更に、前記フレキシブルペプチドは2つ以上のアミノ酸を含み、好ましくは、Gly(G)、Ser(S)、Ala(A)、およびThr(T)といういくつかのアミノ酸から選ばれる。より好ましくは、前記フレキシブルペプチドはGおよびS残基を含む。最も好ましくは、前記フレキシブルペプチドのアミノ酸組成の構造の一般式は、GxSy(GGGGS)zであり、ただし、x、yおよびzは0以上の整数で、x+y+z≧1である。例えば、1つの好ましい実施例において、前記フレキシブルペプチドのアミノ酸配列はG2(GGGGS)3である。
【0042】
更に、前記リジッドペプチドは、天然ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβ-サブユニットのカルボキシル基の末端の118~145-位のアミノ酸で構成される全長配列(SEQ ID NO:257に示すように)またはその裁断された断片(以下、CTPと総称する)に由来する。好ましくは、前記CTPリジッドペプチドは、SEQ ID NO:257のN端の10個のアミノ酸、即ち、SSSSKAPPPS(CTP1)を含み、または、前記CTPリジッドペプチドは、SEQ ID NO:257のC端の14個のアミノ酸、即ち、SRLPGPSDTPILPQ(CTP2)を含み、また、別の実施例において、前記CTPリジッドペプチドは、SEQ ID NO:257のN端の16個のアミノ酸、即ち、SSSSKAPPPSLPSPSR(CTP3)を含み、更に、別の実施例において、前記CTPリジッドペプチドは、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβ-サブユニットの118-位から開始して145-位まで終了する28個のアミノ酸、即ち、SSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(CTP4)を含む。
【0043】
例えば、本発明の表6-3において、いくつかの好ましい第1の一本鎖Fvと第2の一本鎖Fvとを連結するリンカーペプチドL2のアミノ酸配列を例示的に列挙する。
【0044】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記リンカーペプチドのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:258に示すように、そのフレキシブルペプチドのアミノ酸組成がG2(GGGGS)3であり、そのリジッドペプチドのアミノ酸組成がSSSSKAPPPS(即ち、CTP1)である。
【0045】
ここで、第2の一本鎖Fvは、免疫エフェクター細胞抗原CD3に対して特異性を有し、それに含まれるVHドメインとVLドメインとはリンカーペプチド(L3)を介して連結され、前記VHとL3とVLとは、VH-L3-VLまたはVL-L3-VHの順で並べ、且つ、前記リンカーペプチドL3のアミノ酸配列は(GGGGX)nであり、XはSerまたはAlaを含み、XはSerであることが好ましく、nは1~5の自然数であり、nは3であることが好ましい。
【0046】
好ましくは、前記二重特異性抗体の第2の一本鎖Fvは、体外FACS結合分析測定において、約50nMよりも大きい、または100nMよりも大きい、または300nMよりも大きい、または500nMよりも大きいEC50値でエフェクター細胞に結合し、より好ましくは、前記二重特異性抗体の第2の一本鎖Fvは、ヒトCD3に結合できるだけでなく、更にカニクイザルまたはアカゲザルのCD3に特異的に結合することもできる。本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、132.3nMのEC50値でエフェクター細胞に特異的に結合する。
【0047】
例えば、本発明の表6-2において、いくつかの好ましい抗-CD3 scFvのVHドメインおよびその相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)のアミノ酸配列と、VLドメインおよびその相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列とを例示的に列挙する。
【0048】
好ましくは、前記第2の一本鎖Fvは、CD3に特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれSEQ ID NO:241、242および243に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:244、245および246に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。
【0049】
好ましくは、前記第2の一本鎖Fvは、CD3に特異的に結合し、そのVHドメインに含まれるHCDR1、HCDR2およびHCDR3が、それぞれ SEQ ID NO:249、250および251に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列であり、そのVLドメインに含まれるLCDR1、LCDR2およびLCDR3が、それぞれSEQ ID NO:252、253および254に示すとおりであるか、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列である。
【0050】
より好ましくは、前記第2の一本鎖Fvは、CD3に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:247に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:248に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含む。
【0051】
より好ましくは、前記第2の一本鎖Fvは、CD3に特異的に結合し、そのVHドメインが、SEQ ID NO:255に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含み、そのVLドメインが、SEQ ID NO:256に示すアミノ酸配列、または上記配列のうちのいずれかとほぼ同じ(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくはより高度に類似する、または1つ以上のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する)配列を含む。
【0052】
ここで、本発明に係るFc断片は、第2の一本鎖Fvに直接またはリンカーペプチドL4を介して連結され、且つ、前記リンカーペプチドL4は、1~20個のアミノ酸を含み、好ましくは、Gly(G)、Ser(S)、Ala(A)およびThr(T)といういくつかのアミノ酸から選ばれ、より好ましくは、前記リンカーペプチドL4は、Gly(G)およびSer(S)から選ばれ、更に好ましくは、前記リンカーペプチドL4の組成が(GGGGS)nであり、n=1、2、3、または4である。本発明の1つの好ましい実施例において、前記Fc断片は第2の一本鎖Fvに直接連結されている。
【0053】
別の態様において、本発明に係るFc断片は、ヒト免疫グロブリンの重鎖定常領域に由来するヒンジ領域、CH2およびCH3ドメインを含み、例えば、いくつかの実施形態において、本発明に係るFc断片の由来は、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgDおよびIgEの重鎖定常領域から選ばれ、特に、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の重鎖定常領域から選ばれ、更に、ヒトIgG1、またはIgG4の重鎖定常領域から選ばれ、且つ、前記Fc断片は、由来する天然配列と比べて1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加(例えば、最大で20個、最大で15個、最大で10個、または最大で5つの置換、欠失、または付加)を有する。
【0054】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明に係る二重特異性抗体分子の性質(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上の特性を改変する)を修飾するために、前記Fc断片は改変され、例えば、突然変異される。
【0055】
例えば、本発明に係る二重特異性抗体は、エフェクター機能が改変された(例えば、低減または除去)アミノ酸の置換、欠失、または付加を有するFc変異体を含む。抗体のFc領域は、ADCC、ADCP、CDC等のようないくつかの重要なエフェクター機能を媒介する。抗体のFc領域におけるアミノ酸残基を置換することにより、抗体のエフェクタリガンド(例えば、FcγRまたは補体C1q)に対する親和性を改変し、エフェクター機能を改変する方法は本分野で知られている(例えば、EP 388、151A1、US 564、8260、US 562、4821、Natsume Aら、Cancer Res.,68:3863~3872、2008、Idusogie EEら、J.Immunol.,166:2571~2575、2001、Lazar GAら、PNAS、103:4005~4010、2006、Shields RLら、JBC、276:6591~6604、2001、Stavenhagen JBら、Cancer Res.,67:8882~8890、2007、Stavenhagen JBら、Advan.Enzyme.Regul.,48:152~164、2008、Alegre MLら、J.Immunol.,148:3461~3468、 1992、およびKaneko Eら、Biodrugs、25:1~11、2011を参照)。本発明のいくつかの好ましい実施例において、Fc受容体の相互作用を改変するために抗体の定常領域におけるアミノ酸L235(EU番号)を修飾し、例えば、L235E、またはL235Aを修飾する。別の好ましい実施例において、抗体の定常領域におけるアミノ酸234および235を同時に修飾し、例えば、L234AおよびL235A(L234A/L235A)(EU番号)を同時に修飾する。
【0056】
例えば、本発明に係る二重特異性抗体は、循環半減期が延長されたアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するFc変異体を含んでもよい。研究により、M252Y/S254T/T256E、M428L/N434S、またはT250Q/M428Lがいずれも抗体の霊長類動物における半減期を延長できることが発見した。より多くの新生児受容体(FcRn)との結合親和性が増強されたFc変異体に含まれる突然変異のサイトは、中国発明特許CN201280066663.2、US2005/0014934A1、WO97/43316、US5869046、US574703、WO96/32478を参照することができる。本発明のいくつかの好ましい実施例において、FcRn受容体との結合親和性を増強するために抗体の定常領域におけるアミノ酸M428(EU番号)を修飾し、例えば、M428Lを修飾する。別の好ましい実施例において、抗体の定常領域におけるアミノ酸250および428(EU番号)を同時に修飾し、例えば、T250QおよびM428L(T250Q/M428L)を同時に修飾する。
【0057】
例えば、本発明に係る二重特異性抗体は、Fcグリコシル化を低減または除去できるアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するFc変異体を含んでもよい。例えば、Fc変異体は、アミノ酸サイト297(EU番号)に正常に存在するN-に連結されたグリカンが低下したグリコシル化を含む。N297-位のグリコシル化はIgGの活性に大きく影響を及ぼし、該サイトグリコシル化が除去されると、IgG分子CH2の上半部分の配座に影響を及ぼし、FcγRsに対する結合能力が失われ、抗体に関連する生物活性に影響を及ぼす。本発明のいくつかの好ましい実施例において、抗体のグリコシル化を回避するためにヒトIgGの定常領域におけるアミノ酸N297(EU番号)を修飾し、例えば、N297Aを修飾する。
【0058】
例えば、本発明に係る二重特異性抗体は、荷電不均一性を除去するアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するFc変異体を含んでもよい。エンジニアリング細胞の発現過程で発生する様々な翻訳後修飾は、いずれもモノクローナル抗体の荷電不均一性を引き起こし、IgG抗体C末端のリジンの不均一性はそのうちの1つの主な原因であり、重鎖のC端のリジンKは、抗体の生産過程で一定の割合の欠失が現れて荷電不均一性を引き起こし、更に抗体の安定性、有効性、免疫原性、または薬物動態学に影響を及ぼす可能性がある。本発明のいくつかの好ましい実施例において、IgG抗体C末端のK447(EU番号)を除去または欠失させ、抗体の荷電不均一性を除去して発現生成物の均一性を向上させる。
【0059】
本発明の表6-4において、いくつかの好ましいFc断片のアミノ酸配列を例示的に列挙する。野生型ヒトIgGのc領域を含む二重特異性抗体と比べ、本発明に係る二重特異性抗体に含まれるFc断片は、ヒトFcγRs(FcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)およびC1qの少なくとも1種に対して低下した親和性を示し、減少したエフェクター細胞機能または補体機能を有する。例えば、本発明の1つの好ましい実施例において、二重特異性抗体に含まれるFc断片はヒトIgG1に由来し、且つ、L234AおよびL235A置換(L234A/L235A)を有し、FcγRIに対して低下した結合能力を示す。また、本発明に係る二重特異性抗体に含まれる前記Fc断片は、他の1種または複数種の特性(例えば、FcRn受容体との結合能力、抗体のグリコシル化、または抗体の荷電不均一性等)を改変させるアミノ酸置換を更に含んでもよい。例えば、本発明の1つの好ましい実施例において、前記Fc断片のアミノ酸配列はSEQ ID NO:263に示すように、由来する天然配列と比べてL234A/L235A/T250Q/N297A/P331S/M428Lのアミノ酸の置換または代替を有し、且つ、K447が欠失または削除される。
【0060】
本発明に係る二重特異性抗体分子は、2本の相同のポリペプチド鎖でFc断片のヒンジ領域の鎖間ジスルフィド結合により4価の相同二量体を形成し、各本のポリペプチド鎖は、N端からC端まで、抗-TAA scFv、リンカーペプチド、抗-CD3 scFv、およびFc断片で順に構成され、例えば、本発明の表6-5において、いくつかの好ましい二重特異性抗体のアミノ酸配列を例示的に列挙する。
【0061】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトCD19およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:264に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:264に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:264に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0062】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0063】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトCD19およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:283に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:283に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:283に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0064】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0065】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトCD20およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:266に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:266に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:266に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0066】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0067】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトCD22およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:268に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:268に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:268に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0069】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトCD30およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:270に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:270に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:270に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0071】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトEpCAMおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:272に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:272に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:272に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0073】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトCEAおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:274に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:274に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:274に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0075】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトHer2およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:8に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:8に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:8に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0077】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトEGFRおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:277に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:277に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:277に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0078】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0079】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトGPC-3およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:279に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:279に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:279に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0080】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0081】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトMesothelinおよびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:281に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:281に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:281に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0083】
本発明の1つの好ましい実施例において、前記二重特異性抗体は、ヒトMucin1およびCD3に結合し、そのアミノ酸配列は、
(i)SEQ ID NO:285に示す配列、
(ii)SEQ ID NO:285に示す配列と比べて1つまたは複数の置換、欠失、または付加(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの置換、欠失、または付加)を有する配列、
または
(iii)SEQ ID NO:285に示す配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列、
のとおりである。
【0084】
いくつかの好ましい実施形態において、(ii)に記載の置換は保存的置換である。
【0085】
本発明の第2の態様において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子を提供する。
【0086】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:265に示すヌクレオチド配列である。
【0087】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:267に示すヌクレオチド配列である。
【0088】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:269に示すヌクレオチド配列である。
【0089】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:271に示すヌクレオチド配列である。
【0090】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:273に示すヌクレオチド配列である。
【0091】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:275に示すヌクレオチド配列である。
【0092】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:276に示すヌクレオチド配列である。
【0093】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:278に示すヌクレオチド配列である。
【0094】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:280に示すヌクレオチド配列である。
【0095】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:282に示すヌクレオチド配列である。
【0096】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:284に示すヌクレオチド配列である。
【0097】
本発明の好ましい実施例において、上記二重特異性抗体をコードするDNA分子は、SEQ ID NO:286に示すヌクレオチド配列である。
【0098】
本発明の第3の態様において、上記DNA分子を含むベクターを提供する。
【0099】
本発明の第4の態様において、上記ベクターを含む宿主細胞であって、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母、または、CHO細胞、NS0細胞、または他の哺乳動物細胞のような哺乳動物細胞を含み、好ましくはCHO細胞である宿主細胞を提供する。
【0100】
本発明の第5の態様において、上記二重特異性抗体および医薬的に許容される賦形剤、ベクター、または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0101】
本発明の第6の態様において、
(a)二重特異性抗体の融合遺伝子を取得し、二重特異性抗体の発現ベクターを構築することと、(b)遺伝子工学的手法により上記発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクションすることと、(c)前記二重特異性抗体の産生が許容された条件で上記宿主細胞を培養することと、(d)産生された前記抗体を分離、精製することとを含む本発明に係る二重特異性抗体を調製する方法であって、
ステップ(a)に記載の発現ベクターは、プラスミド、細菌およびウイルスから選ばれる1種または複数種であり、好ましくは、前記発現ベクターはPCDNA3.1であり、
ステップ(b)は、遺伝子工学的手法により構築したベクターを宿主細胞にトランスフェクションし、前記宿主細胞は、原核細胞、酵母、またはCHO細胞、NS0細胞もしくは他の哺乳動物細胞のような哺乳動物細胞を含み、好ましくはCHO細胞であり、
ステップ(d)は、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換、疎水性クロマトグラフィー、またはモレキュラーシーブ方法を含む通常の免疫グロブリン精製方法により、前記二重特異性抗体を分離、精製する方法を更に提供する。
【0102】
本発明の第7の態様において、前記二重特異性抗体の、腫瘍を治療、予防、または緩和する薬剤の調製における使用であって、前記癌の実例は、中皮腫、扁平上皮腫、骨髄腫、骨肉腫、膠芽腫、神経膠腫、悪性上皮性腫瘍、腺癌、メラノーマ、肉腫、急性および慢性白血病、リンパ腫および髄膜腫、ホジキン病、セザリー症候群、多発性骨髄腫、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、喉頭癌、乳癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、子宮頸癌、膣癌、胃癌、腎細胞癌、腎癌、膵臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓胆管癌、骨癌、皮膚癌および血液癌、鼻腔と副鼻腔癌、鼻咽頭癌、口腔癌、中咽頭癌、喉頭癌、喉下部癌、唾液腺癌、縦隔膜癌、胃癌、小腸癌、結腸癌、直腸および肛門領域の癌、尿管癌、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、外陰癌、内分泌系癌、中枢神経系癌および形質細胞腫を含んでもよいが、これらに限定されない使用を提供する。
【0103】
本発明の第8の態様において、患者/被験者個体に治療有効量の前記二重特異性抗体を投与することを含む前記二重特異性抗体を免疫応答または機能の増強または刺激に用いる方法を提供する。
【0104】
本発明の第9の態様において、前記二重特異性抗体を腫瘍の治療、進展の遅延、再発の低減/抑制に使用する方法であって、有効量の前記二重特異性抗体を、前記以上の疾患または病症に罹患する個体に投与または使用することを含み、前記腫瘍の実例は、中皮腫、扁平上皮腫、骨髄腫、骨肉腫、膠芽腫、神経膠腫、悪性上皮性腫瘍、腺癌、メラノーマ、肉腫、急性および慢性白血病、リンパ腫および髄膜腫、ホジキン病、セザリー症候群、多発性骨髄腫、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、喉頭癌、乳癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮癌、皮膚癌、前立腺癌、子宮頸癌、膣癌、胃癌、腎細胞癌、腎癌、膵臓癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝臓胆管癌、骨癌、皮膚癌および血液癌、鼻腔と副鼻腔癌、鼻咽頭癌、口腔癌、中咽頭癌、喉頭癌、喉下部癌、唾液腺癌、縦隔膜癌、胃癌、小腸癌、結腸癌、直腸および肛門領域の癌、尿管癌、尿道癌、陰茎癌、精巣癌、外陰癌、内分泌系癌、中枢神経系癌および形質細胞腫を含んでもよいが、これらに限定されない方法を提供する。
【発明の効果】
【0105】
本発明に開示された技術案は、以下のような有益な技術的効果を取得する。
【0106】
1、本発明に係る二重特異性抗体に含まれる抗-TAA scFvは、二重抗体のN端に位置し、空間構成が変化し、TAAとの結合能力がある条件で弱くなる可能性があり、特に、弱発現または低発現したTAAの正常細胞に結合しにくく、非特異的殺傷を減少するが、過発現または高発現したTAAの細胞に対する結合特異性が著しく低下せず、良好な体内殺傷効果を示す。これにより分かるように、標的抗原が腫瘍細胞のみに発現し、または本発明に係る二重特異性抗体が標的抗原を過発現した腫瘍細胞のみに特異的に結合する場合、免疫エフェクター細胞の制限性は標的細胞の組織内のみで活性化され、前記二重特異性抗体の正常細胞に対する非特異的殺傷およびサイトカインの随伴放出が最低に低減され、臨床治療における毒副作用を低減することができる。
【0107】
2、本発明に係る二重特異性抗体が選択した抗-CD3 scFvは、微弱な結合親和性(EC50値が、約50nMよりも大きい、または100nMよりも大きい、または300nMよりも大きい、または500nMよりも大きい)でエフェクター細胞と特異的に結合し、また、抗-TAA scFvとFcとの間に包埋され、且つそのN端に位置するリンカーペプチドL3に含まれるCTPリジッドペプチドおよびそのC端に位置するFc断片がいずれも抗-CD3 scFvの抗原の結合領域を部分的に「遮蔽」または「シールド」したため、このような立体障害の効果により、より微弱な結合親和性(例えば、1μMよりも大きい)でCD3に結合することで、T細胞に対する活性化刺激能力が弱くなるため、サイトカインの過剰放出を制限し、従って、より高い安全性を有する。また、本発明に使用される抗-CD3 scFvは、ヒトとカニクイザルおよび/またはアカゲザルのCD3天然抗原に同時に結合することができ、その臨床前毒性学的評価は代替分子を再構築する必要がなく、且つ、取得した有効用量、毒性用量および毒性副反応がより客観的で正確となり、臨床用量の変換を直接行って臨床研究のリスクを低減することができる。また、本発明に係る二重特異性抗体が2価の抗-CD3 scFvを創造的に使用することにより、前記二重特異性抗体は、構成設計で従来技術において一般的に使用されるヘテロ二量体型(含まれる抗-CD3 scFvが1価である)の非対称構造を回避するため、重鎖間のミスフィットの問題が存在せず、下流の精製ステップを簡略化する。且つ、意外には、体外細胞結合試験で抗-CD3 scFvとT細胞との非特異的結合が観察されず、且つ、細胞活性化程度(IL-2等のサイトカインの放出)が安全かつ有効な範囲内に制御され、即ち、本発明に使用される2価の抗-CD3 scFv構造は、T細胞の過剰な活性化を非抗原依存的に誘導することを引き起こすことがなく、2価の抗-CD3ドメインを含む他の二重特異性抗体は、T細胞の制御不能な過剰活性化が一般的に存在するため、抗-CD3二重特異性抗体は、設計時に、一般的に2価の抗-CD3構造の導入を回避する。
【0108】
3、本発明に係る二重特異性抗体に含まれる修飾されたFc断片は、FcγRと結合する能力を有さず、FcγRにより媒介されるT細胞の全身性活性化を回避するため、免疫エフェクター細胞が標的細胞組織内のみで制限的に活性化されることが許容される。
【0109】
4、本発明に係る二重特異性抗体は相同二量体型であり、重鎖および軽鎖のミスフィットの問題が存在せず、下流の生産プロセスが安定し、精製ステップが簡単かつ効率的であり、発現生成物が均一であり、且つ、その物理化学性能および体内安定性がいずれも著しく向上する。
【0110】
5、本発明に係る二重特異性抗体は、Fc断片を含むため、長い体内循環半減期を有し、薬物動態学試験により、マウスおよびカニクイザルの体内における循環半減期がそれぞれ約40hおよび8hであり、その臨床投与頻度を大きく低減することが分かった。
[発明の詳細]
【0111】
[略語および定義]
Her2 ヒト表皮成長因子受容体2
BiAb 二重特異性抗体(bispecific antibody)
CDR Kabat番号システムで規定された免疫グロブリンの可変領域における相補性決定領域
EC50 50%の効能または結合を産生する濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着測定
FR 抗体のフレームワーク領域:CDR領域を除外する免疫グロブリンの可変領域
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
IL-2 インターロイキン2
IFN インターフェロン
IC50 50%の抑制を産生する濃度
IgG 免疫グロブリンG
Kabat Elvin A Kabatにより提唱された免疫グロブリンの比較および番号システム
mAb モノクローナル抗体
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
V領域 異なる抗体間の配列が可変なIgG鎖セグメントであり、軽鎖の109-位のKabat残基および重鎖の113-位の残基まで延在する
VH 免疫グロブリンの重鎖の可変領域
VK 免疫グロブリンのκ軽鎖の可変領域
KD 平衡解離定数
ka 結合速度定数
kd 解離速度定数
【0112】
本発明において、特に断りのない限り、本発明に使用される科学および技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。本発明に使用される抗体またはその断片は、アミノ酸の欠失、挿入、置換、付加、および/または組換えのような本分野で知られている通常の技術および/または他の修飾方法を単独でまたは組み合わせて使用して更に修飾することができる。1種の抗体のアミノ酸配列に基づいてそのDNA配列にこのような修飾の方法を導入することは、当業者に周知のことであり、例えば、Sambrook、分子クローン:実験マニュアル、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.である。指摘された修飾は、核酸レベルで行われることが好ましい。それと同時に、本発明をより良好に理解するために、以下、関連用語の定義および解釈を提供する。
【0113】
「CD19」は分化クラスタ19のポリペプチドであり、シングルチャネルI型の膜貫通糖タンパク質であり、2つのIg様C2型(免疫グロブリン様)ドメインおよび1つの比較的大きな細胞質末端を含み、哺乳動物種で高度に保存的である。CD19は、ほとんどのB系譜の細胞および濾胞細胞で発現し、Bリンパ球の分化に必要であり、且つ、B細胞の重要な共受容体としてCD21とCD81とCD225とともに作用する。従い、CD19は、常にBリンパ球発育、B細胞リンパ腫およびBリンパ球白血病の生物診断標識として使用される。また、CD19における突然変異は、深刻な免疫不全症候群に関連する。CD19標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、CD19の任意の変異体、イソ型、誘導体および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはCD19遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0114】
「CD20」は分化クラスタ20のポリペプチドであり、4回膜貫通のタンパク質に属し、Bリンパ球の表面の特有の分化抗原であり、90%以上のBリンパ腫細胞および正常なBリンパ球に発現し、造血幹細胞、原始Bリンパ球、正常な血球および他の組織に発現せず、抗体と結合した後、顕著な内化および脱落がなく、抗原変調が発生せず、B細胞リンパ腫を治療する理想的な作用標的点とすることができる。CD20は、主に、ADCC、CDC等の作用により抗腫瘍作用を発揮する。近年、CD20標的点に対する適応症はまずます拡大され、例えば、自己免疫疾患(多発性硬化症(MS)、クローン病(CD)を含む)、炎症性疾患(例えば、潰瘍性大腸炎(UC))等を含む。CD20標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、CD20の任意の変異体、イソ型、誘導体および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはCD20遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0115】
「CD22」は分化クラスタ22のポリペプチドであり、Igドメインを有し、成熟B細胞表面の膜貫通受容体である。ヒトの体内で、CD22は、主に、B細胞表面受容体の過剰活性化を抑制し、自己免疫疾患に罹患するリスク(例えば、全身性エリテマトーデス)を低減する。CD22に関連する適応症は、例えば、B細胞リンパ腫、急性慢性白血病、および他のB細胞発育異常とB細胞依存性自己免疫疾患に関連する病症を含む。CD22標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、CD22の任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはCD22遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0116】
「CD30」は腫瘍壊死因子(TNF)受容体のスーパーファミリーメンバーであり、I型の膜貫通糖タンパク質に属し、生理的で活性化されたBおよびTリンパ球として発現する。CD30は、主に、全てのホジキンリンパ腫(HL)、いくつかのB細胞リンパ腫、いくつかのT細胞リンパ腫、およびNK細胞リンパ腫のようなリンパを起源とする腫瘍に発現し、非病理状態で活性化されたT細胞、B細胞の表面に低発現し、正常細胞に発現しないため、対応する腫瘍マーカーおよび疾患診断の指標とすることができる。CD30標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、CD30の任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはCD30遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0117】
「EpCAM(上皮細胞接着分子)」は膜貫通糖タンパク質であり、結腸癌から最も早く発見されたTAAである。EpCAMは、異なる程度でほとんどのヒトの腫瘍に過発現し、例えば、肺癌、食管癌、胃癌、乳癌、結腸直腸癌、肝癌、前立腺癌、卵巣癌を含み、腫瘍診断および予後判断に密に関連する。また、EpCAMの過発現は、既にEpCAM抗体および腫瘍関連ワクチンの臨床実験で開発されて適用される。EpCAM標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、EpCAMの任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはEpCAM遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0118】
「CEA(癌胎児性抗原)」は酸性糖タンパク質であり、腫瘍細胞の表面に存在する抗原であり、ヒト胚抗原特性を有し、内胚葉を起源とする消化系癌に広く存在し、例えば、胃腸管腫瘍、肝癌、膵臓癌を含み、小細胞肺癌、乳癌、甲状腺髄様癌、癌様体にも存在できる。従い、広域スペクトルの腫瘍マーカーとして様々な腫瘍の診断および治療に使用できる。CEA標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、CEAの任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはCEA遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0119】
「Her2(ヒト表皮成長因子受容体2)」はヒト表皮成長因子受容体のファミリーメンバーであり、多くの腫瘍の発生、発展および病状の軽重はその活性の大きさに密に関連する。遺伝子突然変異または増幅が発生可能であるほか、her2の上昇は下流の2つの信号伝達経路を活性化し、滝式連鎖反応を引き起こし、細胞の無限増殖を促進し、最終的に癌を引き起こすことができる。また、her2は、様々な転移関連メカニズムを開始して腫瘍細胞の転移能力を増加することができる。Her2遺伝子の増幅または過発現は、例えば、乳癌、卵巣癌、胃癌、肺腺癌、前立腺癌、侵襲性子宮癌等の様々な腫瘍で発生する。Her2標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、Her2の任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはHer2遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。種相同体はアカゲザルHer2を含む。
【0120】
「EGFR(表皮成長因子受容体)」は表皮成長因子受容体のファミリーメンバーであり、哺乳動物の上皮細胞、線維芽細胞、膠細胞、角質細胞等の細胞の表面に広く分布され、腫瘍細胞の増殖、血管生成、腫瘍侵襲、転移および細胞のアポトーシスの抑制に関連する。EGFRの突然変異または過発現は、一般的に腫瘍を引き起こし、膠細胞、腎癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌等のような多くの実体腫瘍を含む組織においていずれもEGFRの高発現または異常発現が存在する。EGFR標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、EGFRの任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはEGFR遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0121】
「GPC-3(グリピカン3)」はグリピカンのファミリーメンバーであり、ほとんどの胚組織に高発現し、細胞増殖の抑制因子である。GPC-3の欠失はSGBS(過成長症候群)を引き起こすことができ、且つ、HCCの早期組織に過発現し、肝細胞癌(HCC)、メラノーマ、卵巣癌、前立腺癌等の様々な癌に関連する。また、GPC-3は、悪性中皮腫、乳癌、肺癌、胃癌、卵巣細胞癌等の悪性腫瘍で発現がサイレンシングとなり、正常組織で発現しないか低発現するため、様々な腫瘍治療および診断の生物マーカーとすることができる。GPC-3標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、GPC-3の任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはGPC-3遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0122】
「Mesothelin(メソテリン)」はメソテリンファミリーに属し、前巨核球の増強因子であり、フューリンのインベルターゼによるタンパク質の加水分解により、巨核球の増強因子(MPF)とメソテリンとの2本の鎖に切断することができる。メソテリンは腫瘍分化抗原であり、通常、胸膜、腹膜および心膜ライナーの中皮細胞に存在する。メソテリンは、中皮腫、卵巣癌、肺癌、膵臓癌等のような様々な腫瘍で過発現して免疫原性を有するため、腫瘍マーカーまたは治療性癌ワクチンの抗原標的として使用することができる。Mesothelin標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、Mesothelinの任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはMesothelin遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0123】
「Mucin1(細胞表面関連ムチン1)」はムチンのメンバーであり、肺、乳腺、胃および膵臓等の組織器官を含む上皮細胞の頂端の表面に発現する。Mucin1の過剰発現、異常の細胞内局在およびグリコシル化変化はいずれも癌に関連し、結腸癌、乳癌、卵巣癌、肺癌および膵臓癌を含んでもよいが、これらに限定されない。免疫組織化学技術により、広範な分泌性上皮細胞、間葉系腫瘍(例えば、滑膜肉腫および卵巣の顆粒膜細胞腫)、およびその腫瘍相当物でMucin1を同定することができる。且つ、Mucin1は、腺癌に由来して細胞質拡散による中皮腫(細胞膜および関連する微絨毛に限られる)を区別することができる。従い、Mucin1は、以上の関連疾患または病症と、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を診断して治療するために使用できる。該用語は、Mucin1の任意の変異体、イソ型、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはMucin1遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0124】
「CA125(糖類抗原125)」は卵巣癌関連抗原であり、胎児の体腔上皮組織に起源し、胸膜、心膜、腹膜、子宮内膜、生殖管および羊膜等の中皮組織細胞の表面に普遍的に分布されている。これらの部位に悪性病変が発生したり、炎症により刺激されたりすると、血清中のCA125のレベルは著しく上昇する。最も多く研究された卵巣癌マーカーとして、CA125は、卵巣癌の早期スクリーニング、診断、治療および予後の応用研究でいずれも報告されている。卵巣癌の良性嚢腫瘍および悪性嚢性上皮腫の穿刺液において、CA125のレベルは明らかに上昇することができる。消化管の悪性腫瘍(例えば、膵臓癌、肝癌、胃癌、腸癌)および慢性膵臓炎、慢性肝炎、肝硬変、肺腺癌、骨盤炎症性病変、子宮内膜症の場合、血清CA125のレベルも上昇する。CA125の様々な癌および炎症における研究に鑑み、以上の関連疾患のスクリーニング、診断、治療に広く使用することができる。CA125標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、CA125の任意の変異体、イソ型、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはCA125遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0125】
「BCMA(B細胞の成熟抗原)」は腫瘍壊死因子受容体のスーパーファミリーメンバーに属し、成熟Bリンパ球に優先的に発現し、且つ、形質芽細胞(即ち、形質細胞の前駆体)および形質細胞の表面に発現する。脾臓、リンパ節、胸腺、副腎および肝臓において、いずれもBCMAのRNAが検出でき、複数のB細胞系が成熟した後、そのBCMA mRNAのレベルも増加する。BCMAは、白血病、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫、自己免疫疾患(例えば、全身性エリテマトーデス)等の様々な疾患に関連するため、関連するB細胞疾患に関する潜在的なターゲットとすることができる。BCMA標的点に対する適応症は、他の従来技術で発見されたおよび将来発見する関連疾患または病症を更に含む。該用語は、BCMAの任意の変異体、イソ型、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはBCMA遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0126】
CD3分子は、T細胞膜上の重要な分化抗原であり、成熟したT細胞の特徴的な標識であり、6本のペプチド鎖で構成され、非共有結合でT細胞抗原受容体(TCR)とTCR-CD3複合体を構成し、TCR-CD3複合体の細胞スラリー内組み立てに参与するだけでなく、更に各ポリペプチド鎖の細胞スラリー領域の免疫受容チロシン活性化モチーフ(immunoreceptortyrosine-basedactivationmotif、ITAM)により抗原刺激信号を伝達する。CD3分子の主要機能は、TCR構造を安定化し、T細胞の活性化信号を伝達し、TCRが抗原を特異的に識別して結合すると、CD3は、信号をT細胞の細胞スラリー内に伝達することに参与し、T細胞の活性化を誘導する第1の信号とし、T細胞の抗原識別および免疫応答の産生過程で極めて重要な作用を有することである。
【0127】
「CD3」とは、T細胞受容体複合体の一部として3つの異なる鎖CD3ε、CD3δおよびCD3γで構成されることを意味する。CD3は、T細胞で、例えば、抗CD3抗体のそれに対する固定作用によるクラスタリング(clustering)によりT細胞の活性化を引き起こし、T細胞受容体により媒介される活性化に類似するが、TCRクローンの特異性に依存しない。ほとんどの抗CD3抗体がCD3ε鎖を識別する。本発明におけるT細胞表面受容体CD3を特異的に識別する第2の機能領域は、CD3を特異的に識別できれば制限されず、例えば、US7994289、US6750325、US6706265、US5968509、US8076459、US7728114、US20100183615という特許に記載されたCD3抗体であるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明に使用される抗ヒトCD3抗体はカニクイザルおよび/またはアカゲザルと交差反応性を有し、例えば、WO2016130726、US20050176028、WO2007042261、またはWO2008119565という特許に記載された抗ヒトCD3抗体であるが、これらに限定されない。該用語は、任意のCD3変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、細胞により天然に発現されるか、または前述した鎖をコードする遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞で発現される。
【0128】
「超可変領域」または「CDR領域」または「相補性決定領域」という用語は、抗原結合を担当する抗体のアミノ酸残基を指し、非連続的なアミノ酸配列である。CDR領域の配列は、IMGT、Kabat、ChothiaおよびAbM方法で定義された、または本分野でよく知られている任意のCDR領域の配列の確定方法により同定された可変領域内のアミノ酸残基であってもよい。例えば、超可変領域は、配列比較で規定された「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基、例えば、軽鎖の可変ドメインの24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)-位の残基と重鎖の可変ドメインの31~35(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)-位の残基(Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest(免疫目的物のタンパク質配列)、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.を参照)、および/または構造に基づいて規定された「超可変リング」(HVL)に由来する残基、例えば、軽鎖の可変ドメインの26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)-位の残基と重鎖の可変ドメインの26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)位の残基(ChothiaおよびLeskl、J.Mol.Biol.,196:901~917、1987を参照)というアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」残基または「FR」残基は、本発明で定義された超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。いくつかの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合断片に含まれるCDRは、Kabat、Chothia、またはIMGT番号システムにより確定されることが好ましい。当業者は、配列自体以外の任意のデータに依存せずに各システムに任意の可変ドメイン配列を明確に付与することができる。例えば、抗体のKabat残基番号を付与する方式は、抗体配列と各「標準」番号配列との相同領域を対照するにより確定できる。本発明が提供する配列の番号に基づき、配列表における任意の可変領域の配列の番号を確定する形態は、完全に当業者の通常の技術範囲内にある。
【0129】
「一本鎖Fv抗体」(または「scFv抗体」)という用語は、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体断片を指し、リンカー(linker)を介して連結される重鎖の可変領域(VH)および軽鎖の可変領域(VL)の組換えタンパク質であり、リンカーは、この2つのドメインを架橋させて抗原結合サイトを形成し、リンカーの配列は、一般的にフレキシブルペプチドで構成され、例えば、G2(GGGGS)3であるが、これらに限定されない。scFvの大きさは一般的に1つの完全な抗体の1/6である。一本鎖抗体は、1つのヌクレオチド鎖でコードされた1本のアミノ酸鎖の配列であることが好ましい。scFvの概要は、Pluckthun(1994)The Pharmacology of Monoclonal Antibodies(モノクローナル抗体の薬理学)、第113巻、RosenburgおよびMooreにより編集され、Springer-Verlag、New York、269~315ページを参照することができる。更に、国際特許出願公開番号WO88/01649、米国特許第4946778号および第5260203号を参照する。
【0130】
「Fab断片」という用語は、1本の軽鎖および1本の重鎖のCH1と可変領域とで構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。「Fab抗体」の大きさは、完全な抗体の1/3であり、1つの抗原結合サイトのみを含む。
【0131】
「Fab’断片」という用語は、1本の軽鎖および1本の重鎖のVHドメイン、CH1ドメイン、およびCH1とCH2ドメインとの間の定常領域の部分を含む。
【0132】
「F(ab’)2断片」という用語は、2本の軽鎖および2本の重鎖のVHドメイン、CH1ドメイン、およびCH1とCH2ドメインとの間の定常領域の部分を含み、これにより、2本の重鎖間で鎖間ジスルフィド結合を形成する。従い、F(ab′)2断片は、2本の重鎖間のジスルフィド結合により一体に保持される2つのFab′断片で構成される。
【0133】
「Fc領域」という用語は、抗体の重鎖の定常領域断片を指し、少なくともヒンジ領域、CH2およびCH3ドメインを含む。
【0134】
「Fv領域」という用語は、重鎖と軽鎖との両者に由来する可変領域を含むが、定常領域が欠け、完全な抗原識別および結合サイトを含む最小の断片である。
【0135】
「抗体断片」または「抗原結合断片」という用語は、抗原(例えば、Her2)との特異的な結合能力を保留する抗体の抗原結合断片および抗体類似体を指し、通常、少なくとも一部の親抗体(Parental Antibody)の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片は、親抗体の少なくとも一部の結合特異性を保留する。通常、モルで活性を表す場合、抗体断片は、少なくとも10%の親結合活性を保留する。好ましくは、抗体断片は、少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%、または100%の親抗体のターゲットに対する結合親和性を保留する。抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片、相補性決定領域(CDR)断片、ジスルフィド結合安定性タンパク質(dsFv)等と、線形抗体(Linear Antibody)、一本鎖抗体(例えば、scFv単一抗体)(技術はGenmabに由来する)、2価の一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、単一ドメイン抗体(Single Domain Antibody)(例えば、VHドメイン抗体)、ドメイン抗体(技術はAbIynxに由来する)と、抗体断片で形成された多特異的抗体(例えば、3鎖抗体、4鎖抗体等)と、キメラ抗体(Chimeric Antibody)(例えば、ヒト由来マウス抗体)のような工学的改造された抗体と、ヘテロコンジュゲート抗体(Heteroconjugate Antibody)等とを含んでもよいが、これらに限定されない。これらの抗体断片は、当業者に知られている通常の技術で取得され、完全な抗体と同じ方法でこれらの断片の実用性をスクリーニングする。
【0136】
「リンカーペプチド」という用語は、2つのポリペプチドを連結するペプチドを指し、ここで、前記リンカーペプチドは、2つの免疫グロブリンの可変領域または1つの可変領域であってもよい。リンカーペプチドの長さは、0~30個のアミノ酸または0~40個のアミノ酸であってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは、0~25、0~20、または0~18個のアミノ酸の長さであってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーペプチドは、14、13、12、11、10、9、8、7、6、または5個以下のアミノ酸長のペプチドであってもよい。他の実施形態において、リンカーペプチドは、0~25、5~15、10~20、15~20、20~30、または30~40個のアミノ酸長であってもよい。他の実施形態において、リンカーペプチドは、約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸長であってもよい。リンカーペプチドは当業者に知られているものである。リンカーペプチドの調製は、本分野の任意の方法を採用してもよい。例えば、リンカーペプチドは合成によるものであってもよい。
【0137】
「重鎖の定常領域」という用語は、免疫グロブリンの重鎖に由来するアミノ酸配列を含む。重鎖の定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部ヒンジ領域、中間ヒンジ領域、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはその変異体、または断片のうちの1種を少なくとも含む。例えば、本発明に使用される抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインを有するポリペプチド鎖と、CH1ドメイン、少なくとも一部のヒンジドメインおよびCH2ドメインを有するポリペプチドと、CH1ドメインおよびCH3ドメインを有するポリペプチド鎖と、CH1ドメイン、少なくとも一部のヒンジドメインおよびCH3ドメインを有するポリペプチド鎖と、またはCH1ドメイン、少なくとも一部のヒンジ構造、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを有するポリペプチド鎖とを含んでもよい。別の実施例において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを有するポリペプチド鎖を含む。また、本発明に使用される抗体は、少なくとも一部のCH2ドメイン(例えば、全てまたは一部のCH2ドメイン)が欠ける可能性がある。上述したように、当業者は、重鎖の定常領域が修正される可能性があるため、それらがアミノ酸配列で天然に存在する免疫グロブリン分子と異なることを理解すべきである。
【0138】
「軽鎖の定常領域」という用語は、抗体の軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記軽鎖の定常領域は、定常kappaドメインと定常lambdaドメインとのうちの少なくとも1つを含む。
【0139】
「VHドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖のアミノ基末端の可変ドメインを含み、「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリンの重鎖の第1(アミノ基末端であることが多い)の定常領域を含む。CH1ドメインはVHドメインに隣接し、且つ、免疫グロブリンの重鎖分子のヒンジ領域のアミノ基末端である。
【0140】
「結合」は、抗原上の特定のエピトープとそれに対応する抗体との間の親和性相互作用を定義し、一般的に、「特異的識別」とも理解される。「特異的識別」は、本発明の二重特異性抗体が、ターゲット抗原以外の任意のポリペプチドと交差反応しない、またはほぼ交差反応しないことを意味する。特異性の程度は免疫学的技術により判断でき、ウエスタンブロッティング、免疫アフィニティークロマトグラフィー、フローサイトメトリー等を含んでもよいが、これらに限定されない。本発明において、特異的識別は、フローサイトメトリーにより確定されることが好ましく、具体的な場合、特異的識別の標準は、当業者が把握している本分野の常識により判断することができる。
【0141】
「体内半減期」という用語は、ターゲットポリペプチドが所定の動物の循環における生物半減期を指し、動物で循環および/または他の組織から該動物の循環に存在する量の一半を除去するために必要な時間として表される。
【0142】
「同一性」という用語は、2つのポリペプチド間、または2つの核酸間の配列のマッチング状況を指すために用いられる。比較する2つの配列のうちのある位置がいずれも同じ塩基またはアミノ酸のモノマーサブユニットにより占められている(例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおけるある位置がいずれもアデニンにより占められ、または2つのポリペプチドのそれぞれにおけるある位置がいずれもリジンにより占められている)場合、各分子は該位置で同一である。2つの配列間の「パーセント同一性」は、この2つの配列が共有するマッチング位置数を、比較する位置数で割って×100関数である。例えば、2つの配列の10個の位置のうち、6つがマッチングすれば、この2つの配列は60%の同一性を有する。例えば、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTが50%の同一性(合計6つの位置のうち、3つの位置がマッチングしている)を共有する。通常、2つの配列を照合して最大の同一性を生成する時に比較する。このような照合は、例えば、Alignプログラム(DNAstar、Inc.)のようなコンピュータプログラムで行いやすい方法(Needlemanら(1970)J.Mol.Biol.,48:443~453)を使用することにより実現できる。更に、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に統合されたE.MeyersおよびW.Miller(Comput.Appl Biosci.,4:11~17(1988))のアルゴリズムを使用し、PAM120重み残基テーブル(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティで2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を測定することもできる。また、GCGパッケージ(www.gcg.comから取得できる)に統合されたGAPプログラムにおけるNeedlemanおよびWunsch(J.MoI.Biol.,48:444-453(1970))のアルゴリズムを使用し、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み(gap weight)、および1、2、3、4、5、または6の長さ重みで2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を測定することができる。
【0143】
「Fc領域」または「Fc断片」という用語は、免疫グロブリンの重鎖のC端領域を指し、ヒンジ領域の少なくとも一部、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)に位置するFc受容体との結合、または古典的な補体系の第1の成分(C1q)との結合を含む免疫グロブリンと宿主組織または因子との結合を媒介し、天然配列Fc領域および変異Fc領域を含む。
【0144】
通常、ヒトIgGの重鎖のFc領域は、そのCys226またはPro230位置のアミノ酸残基からカルボキシル基の末端までのセグメントであるが、その境界が変化する可能性がある。Fc領域のC-末端のリジン(残基447、EU番号システムによる)は存在してもよいし、存在しなくてもよい。Fcは、更に隔離されたこの領域を指すこともできるし、またはFcを含むタンパク質ポリペプチドの場合、例えば、「Fc領域を含む結合タンパク質」は、「Fc融合タンパク質」(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)とも呼ばれる。本発明の抗体における天然配列Fc領域は、哺乳動物(例えば、ヒト)IgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3およびIgG4を含む。ヒトIgG1のFc領域において、少なくとも2つの対立遺伝子のタイプが知られている。いくつかの実施形態において、哺乳動物のFcポリペプチドアミノ酸配列の配列に対し、2本のFcポリペプチド鎖のアミノ酸配列における100個あたりのアミノ酸において10個程度のアミノ酸の単一アミノ酸の置換、挿入および/または欠失を有する。いくつかの実施形態において、上記異なりは、半減期を延長するFcの改変、FcRnとの結合を増加する改変、Fcγ受容体(FcγR)結合を抑制する改変、および/またはADCCおよびCDCを低減または除去する改変であってもよい。
【0145】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、免疫グロブリンのFc領域と結合する受容体を指す。FcRは、天然配列であるヒトFcRであってもよいし、IgG抗体と結合するFcR(γ受容体)であってもよいし、これらの受容体の対立遺伝子の変異体および可変な剪断接着形式であってもよい。FcγRファミリーは、3種の活性化受容体(マウスにおけるFcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIV、ヒトにおけるFcγRIA、FcγRIIAおよびFcγRIIIA)および1種の抑制性受容体(FcγRIIbまたは同等のFcγRIIB)で構成される。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制受容体」)を含み、それらが類似するアミノ酸配列を有する。FcγRIIAの細胞質ドメインには、免疫受容体がチロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)が含まれている。FcγRIIBの細胞質ドメインには、免疫受容体がチロシンに基づく抑制モチーフ(ITIM)が含まれている(M.Annu.Rev.Immunol.,15:203~234(1997)を参照)。ほとんどの天然エフェクター細胞タイプは、1種または複数種の活性化FcγRと抑制性FcγRIIbとを共発現する一方、NK細胞は、1種の活性化Fc受容体(マウスにおけるFcγRIIIおよびヒトにおけるFcγRIIIA)を選択的に発現するが、マウスおよびヒトで抑制性FcγRIIbを発現しない。ヒトIgG1はほとんどのヒトFc受容体と結合し、それに結合する活性化Fc受容体のタイプの面で、マウスIgG2aに相当すると考えられる。「FcR」という用語は、本発明で他のFcRをカバーし、将来同定するものを含む。FcRnとの結合の測定方法は知られているものである(例えば、Ghetie Vら、Immunol Today、18:592-8、1997)、Ghetie Vら、Nature Biotechnology、15:637-40、1997)を参照)。例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスまたはトランスフェクションされたヒト細胞系において、ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのFcRnとの体内結合および血清半減期を測定することができる。「Fc受容体」または「FcR」という用語は、新生児受容体FcRnを更に含み、親IgGを胎児に転移することを担当する((Guyer RLら、J.Immunol.,117:587、1976)および(Kim YJら、J.Immunol.,24:249、1994))。
【0146】
「ヒト由来抗体」という用語は、遺伝子工学的手法により改造された非ヒト由来抗体を指し、そのアミノ酸配列は、ヒト由来抗体の配列との相同性を向上させるために修飾される。非ヒト抗体のCDRドメイン外の大部分または全てのアミノ酸、例えば、マウス抗体は、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸により置換され、1つまたは複数のCDR領域内の大部分または全てのアミノ酸は改変されていない。小分子アミノ酸の付加、削除、挿入、置換、または修飾は、抗体の特定の抗原との結合能力を除去しない限り許容される。「ヒト由来」抗体は、原始抗体に類似する抗原特異性を保留する。CDRの由来は特に限定されず、任意の動物に由来してもよい。例えば、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、または非ヒト霊長類動物(例えば、カニクイザル)抗体に由来するものを利用することができる。本発明に使用可能なヒトフレームワークの実例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAYおよびPOM(Kabatら、同上)である。例えば、KOLおよびNEWMは重鎖に使用でき、REIは軽鎖およびEUに使用でき、LAYおよびPOMは重鎖と軽鎖との両者に使用できる。または、人種系配列を使用することができる。これらは、http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/list2.phpというウェブサイトから取得できる。本発明のヒト由来抗体分子において、受容体の重鎖および軽鎖は同じ抗体に由来する必要がなく、且つ、必要な場合、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0147】
「サイトカイン」という用語は、一般的に1種の細胞群から放出された、細胞間媒体として別の細胞に作用する、または該タンパク質を生成する細胞に対して自己分泌の影響を有するタンパク質を指す。このようなサイトカインの例は、リンホカインと、モノカインと、IL-2、IL-6、IL-17A-Fのようなインターロイキン(「IL」)と、TNF-α、またはTNF-βのような腫瘍壊死因子と、白血病抑制因子(「LIF」)のような他のポリペプチド因子とを含む。
【0148】
「免疫結合」および「免疫結合性質」という用語は1種の非共有相互作用を指し、免疫グロブリン分子と抗原(該抗原にとって、免疫グロブリンは特異的である)との間で発生する。免疫結合相互作用の強度または親和性は、相互作用できる平衡解離定数(KD)で表すことができ、KD値が小さければ小さいほど、親和性が高いことを表す。選択されたポリペプチドの免疫結合性質は、本分野で公知の方法で定量することができる。1つの方法は、抗原結合サイト/抗原複合体の形成および解離の速度を測定することに関する。「結合速度定数」(KaまたはKon)と「解離速度定数」(KdまたはKoff)との両者は、いずれも濃度、会合と解離の実際速率により計算することができる。(Malmqvist Mら、Nature、361:186~187、1993参照)。kd/kaの比率は解離定数KDに等しい(通常、Davies Cら、Annual.Rev.Biochem.,59:439~473、1990参照)。任意の有効な方法でKD、kaおよびkd値を測定することができる。
【0149】
「交差反応」という用語は、本発明に係る抗体の、異なる種に由来する腫瘍関連抗原と結合する能力を指す。例えば、本発明に係るヒトTAAと結合する抗体は、他の種に由来するTAA(例えば、カニクイザルのTAA)と結合することもできる。交差反応性は、結合測定法(例えば、SPR、ELISA)で精製抗原との特定の反応性、またはTAAを生理的に発現する細胞との結合、または他の方式でTAAを生理的に発現する細胞機能との相互作用を検出することにより測定できる。本分野で知られている結合親和性を測定する分析の実例は、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore)または類似する技術(例えば、Kinexa、またはOctet)を含む。
【0150】
「EC50」という用語は、抗体またはその抗原結合断片を用いて行われる体外または体内測定において、50%応答を誘導する抗体またはその抗原結合断片の濃度の最大応答、即ち、最大応答とベースラインとの間の半分を指す。
【0151】
「エフェクター細胞」とは、免疫系の1種の細胞を指し、1種または複数種のFcRを発現し、1種または複数種のエフェクター機能を媒介する。好ましくは、該細胞は、少なくとも1種のタイプの活性化Fc受容体、例えば、ヒトFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の実例は、末梢血単核球(PBMC)、NK細胞、単核球、マクロファージ、好中球、および好酸球を含む。エフェクター細胞は、例えば、T細胞も含む。それらは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含んでもよいが、これらに限定されない任意の生物体に由来してもよい。
【0152】
「エフェクター機能」という用語は、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列変異体のFc領域)に起因する生物学的活性を指し、抗体のアイソタイプに従って変化する。抗体のエフェクター機能の例は、Fc受容体結合親和性、ADCC、ADCP、CDC、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の低下、B細胞活性化、サイトカイン分泌、抗体および抗原-抗体複合体の半減期/除去率等を含んでもよいが、これらに限定されない。抗体のエフェクター機能を改変する方法は本分野で知られているものであり、例えば、Fc領域に突然変異を導入することにより行う。
【0153】
「抗体依存性細胞により媒介される細胞毒性(ADCC)」という用語は、細胞毒性の形式を指し、Igは、細胞毒性細胞(例えば、NK細胞、好中球、またはマクロファージ)に存在するFcRと結合することにより、これらの細胞毒性エフェクター細胞を抗原に付着された標的細胞に特異的に結合させ、その後、細胞毒素を分泌することで標的細胞を殺す。抗体のADCC活性の検出方法は本分野で知られているものであり、例えば、測定待ち抗体とFcR(例えば、CD16a)との間の結合活性を測定することにより評価することができる。
【0154】
「抗体依存性細胞により媒介される貪食作用(ADCP)」という用語は、細胞により媒介される反応を指し、該反応において、FcγRを発現する非特異性細胞傷害活性細胞は、標的細胞に結合する抗体を識別した後、該標的細胞の貪食を引き起こす。
【0155】
「補体依存的な細胞毒性(CDC)」という用語は、補体成分C1qと抗体Fcとを結合させることにより補体カスケードを活性化する細胞毒性の形式を指す。抗体のCDC活性の検出方法は本分野で知られているものであり、例えば、測定待ち抗体とFc受容体(例えば、C1q)との間の結合活性を測定することにより評価することができる。
【0156】
「医薬的に許容されるベクターおよび/または賦形剤および/または安定剤」という用語は、薬理学および/または生理学で被験者および活性成分に合わせるベクターおよび/または賦形剤および/または安定剤を指し、それらの使用される用量および濃度は、それに暴露された細胞または哺乳動物に対して無毒である。pH調整剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤、希釈剤、浸透圧を維持する試薬、吸収を遅延させる試薬、防腐剤を含んでもよいが、これらに限定されない。例えば、pH調整剤は、リン酸塩緩衝液を含んでもよいが、これらに限定されない。界面活性剤は、陽イオン、陰イオン、または、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-80を含んでもよいが、これらに限定されない。イオン強度増強剤は、塩化ナトリウムを含んでもよいが、これらに限定されない。防腐剤は、様々な抗細菌試薬および抗真菌試薬を含んでもよいが、これらに限定されず、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等である。浸透圧を維持する試薬は、糖、NaCl及その類似体を含んでもよいが、これらに限定されない。吸収を遅延させる試薬は、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含んでもよいが、これらに限定されない。希釈剤は、水、水性緩衝液(例えば、緩衝生理食塩水)、アルコール、および多価アルコール(例えば、グリセリン)等を含んでもよいが、これらに限定されない。防腐剤は、様々な抗細菌試薬および抗真菌試薬、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含んでもよいが、これらに限定されない。安定剤は、当業者が通常理解する意味を有し、薬剤における活性成分の所望の活性を安定化することができ、グルタミン酸ナトリウム、ゼラチン、SPGA、糖類(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、乳糖、デキストラン、またはデキストラン)、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グリシン)、タンパク質(例えば、乾燥ホエー、アルブミン、またはカゼイン)、またはその分解生成物(例えば、ラクトアルブミン加水分解物)等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0157】
「有効量」という用語は、所望の効果を取得できるまたは少なくとも部分的に取得できる量を指す。例えば、疾患(例えば、腫瘍または感染)予防有効量とは、単独で使用するまたは別の1種または複数種の治療剤と組み合わせて使用する場合、疾患(例えば、腫瘍、または感染)の発生を予防、阻止、または遅延できる量を指す。疾患治療有効量とは、単独で使用するまたは別の1種または複数種の治療剤と組み合わせて使用する場合、疾患に罹患している患者の疾患およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止できる量を指す。このような有効量を測定することは、完全に当業者の能力範囲内にある。例えば、治療用途に有効な量は、治療待ち疾患の重篤度、患者自身の免疫系の全体的な状態、年齢、体重および性別のような患者の一般的な状況、薬剤の投与方式、および同時に使用される他の治療等に依存する。治療に関する「有効」および「有効性」という用語は、薬理学的有効性と生理学的安全性との両者を含む。薬理学的有効性とは、薬剤の患者の病症または症状を解消させる能力を指す。生理学的安全性とは、薬剤投与による細胞、器官および/または生物体レベルでの毒性または他の不良な生理効果(不良作用)のレベルを指す。
【0158】
被験者に対する「治療」または「療法」は、疾患に関連する症状、合併症、病症、または生化学的指標の出現、進展、発展、重篤度、または再発を逆転、軽減、改善、抑制、緩和、または防止することを目的として被験者に対して行われる任意のタイプの介入、または処理、または活性剤の投与を指す。
【0159】
「T細胞受容体(TCR)」という用語は、T細胞、即ち、Tリンパ球の表面に存在する特殊な受容体を指す。体内のT細胞受容体は、いくつかのタンパク質の複合体として存在する。T細胞受容体は、通常、2つの単独なペプチド鎖を有し、通常、T細胞受容体αおよびβ(TCRαおよびTCRβ)鎖であり、いくつかのT細胞でT細胞受容体γおよびδ(TCRγおよびTCRδ)である。複合体における他のタンパク質は、CD3εγおよびCD3εδヘテロ二量体のようなCD3タンパク質であり、最も重要なのは、6つのITAMモチーフのCD3ζ相同二量体がある。CD3ζにおけるITAMモチーフは、Lckによりリン酸化されて逆にZAP-70を募集することができる。Lckおよび/またはZAP-70は、多くの他の分子でチロシンをリン酸化することができ、特に、CD28、LATおよびSLP-76であり、これにより、これらのタンパク質を囲む信号が複合体凝集を伝導することが許容される。
【0160】
「二重特異性抗体」という用語は、本発明の二重特異性抗体を指し、例えば、抗Her2抗体またはその抗原結合断片が誘導化できるか、または別のペプチドまたはタンパク質(例えば、TAA、サイトカインおよび細胞表面受容体)のような別の機能性分子に連結されて少なくとも2種の異なる結合サイトまたは標的分子と結合する二重特異性分子を生成することができる。本発明の二重特異性分子を作成するために、本発明の抗体を機能で(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合、または他の方式により)別の抗体、抗体断片、ペプチド、または結合模倣物のような1種または複数種の他の結合分子に連結することにより、二重特異性分子を産生することができる。例えば、「二重特異性抗体」とは、2つの可変ドメインまたはscFv単位を含むことで得られた抗体が2種の異なる抗原を識別することを指す。本分野では、二重特異性抗体の多くの異なる形式および使用が知られている(Chames Pら、Curr.Opin.Drug Disc.Dev.,12:.276、2009、Spiess Cら、Mol.Immunol.,67:95~106、2015)。
【0161】
「hCG-βカルボキシル基末端ペプチド(CTP)」という用語は、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)に由来するβ-サブユニットカルボキシル末端の短いペプチドである。卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)という4種の生殖に関連するポリペプチド系ホルモンは、同じα-サブユニットおよびそれぞれ特異的なβ-サブユニットを含む。他の3種のホルモンと比べ、hCGの体内半減期が明らかに延長され、これは主にそのβ-サブユニットにおける特有のカルボキシル基末端のペプチド(CTP)に起因する。CTPは37個のアミノ酸残基を含み、4つのO-グリコシル化サイトを有し、糖側鎖末端はシアル酸残基である。負に帯電して高度にシアル酸化されたCTPは、腎臓による除去作用に抵抗してタンパク質の体内での半減期を延長することができる(Fares FAら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4304~4308、1992)。
【0162】
「グリコシル化」という用語は、オリゴ糖(一体に連結された2つ以上の単糖を含み、例えば、一体に連結された2つ~約12個の単糖の炭水化物)が付着して糖タンパク質を形成することを指す。オリゴ糖側鎖は、通常、N-連結またはO-連結を介して糖タンパク質の骨格に連結される。本発明に開示された抗体のオリゴ糖は、通常、Fc領域に連結されたCH2ドメインであり、N-連結のオリゴ糖とする。「N-連結のグリコシル化」とは、炭水化物類部分が糖タンパク質鎖のアスパラギン残基に連結されることを指す。例えば、技術者は、マウスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、およびヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgDのCH2ドメインにおけるそれぞれが、残基297箇所にN-連結のグリコシル化用の単一サイトがあることを識別することができる。
【0163】
[相同抗体]
更なる態様において、本発明の抗体に含まれる重鎖および軽鎖の可変領域に含まれるアミノ酸配列は、本発明に係る好ましい抗体のアミノ酸配列と相同であり、且つ、ここで、前記抗体は、本発明に係る、例えば、Her2×CD3二重特異性抗体の所望の機能特性を保留する。
【0164】
[保存的修飾を有する抗体]
「保存的修飾」という用語は、アミノ酸修飾が該アミノ酸配列を含む抗体の結合特徴に著しく影響を及ぼすまたは改変することがないことを意味する。このような保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加および欠失を含む。修飾は、本分野で知られている標準的技術、例えば、定点変異誘導およびPCRにより媒介される利点により本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基を、類似する側鎖を有するアミノ酸残基で置換することを指す。本分野で、類似する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーについては既に詳細に説明した。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電荷を持たない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。従い、同一側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸残基で本発明の抗体CDR領域における1つまたは複数のアミノ酸残基を置換することができる。
【0165】
[新生児受容体(FcRn)との結合親和性が改変されたFc変異体]
ここで使用される「FcRn」とは、IgG抗体のFc領域と結合する少なくとも一部がFcRn遺伝子によりコードされるタンパク質を指す。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ子およびサルを含んでもよいが、これらに限定されない任意の生物体に由来してもよい。機能性FcRnタンパク質は、よく重鎖および軽鎖と呼ばれる2本のポリペプチドを含み、軽鎖はβ-2-マイクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子によりコードされる。
【0166】
本発明は、FcRnとの結合が調節された抗体(調節は、結合の増加および低減を含む)に関する。例えば、ある場合、増加された結合により、細胞が抗体を再循環させ、且つ、これにより、例えば、治療抗体の半減期を延長する。ある場合、FcRnとの結合を低減することは必要であり、例えば、放射線マーカーを含む診断抗体または治療抗体として使用される場合である。また、FcRnとの結合が増加することを示すとともに、FcγRsのような他のFc受容体との結合が改変された抗体は、本発明に使用できる。
【0167】
本発明は、FcRnとの結合力を調節するアミノ酸修飾を含む抗体に関する。特殊な意義を持つのは、pHが低い場合、FcRnとの結合親和性が増加することを示すが、pHが高い場合、結合はほぼ改変を示さずにFc領域の抗体またはその機能性変異体を最低限に含むことである。
【0168】
[新生児受容体(FcRn)との結合親和性が増強されたFc変異体]
IgGの血漿半減期は、FcRnとの結合に依存し、一般的にpH6.0の時に結合し、pH7.4(血漿pH)の時に解離する。両者の結合サイトに対する研究により、pH6.0の時に結合能力が増加するようにIgGにおけるFcRnと結合するサイトを改造する。FcRnとの結合に重要なヒトFcγドメインのいくつかの残基の突然変異が、血清半減期を増加できることが既に証明されている。T250、M252、S254、T256、V308、E380、M428およびN434(EU番号)における突然変異が、FcRnとの結合親和性を増加または低減できることが報告されている(Roopenian DCら、Nat.Rev.Immunol.,7:715~725、2007)。韓国特許番号KR10-1027427は、増加されたFcRnとの結合親和性を有するトラスツズマブ(Herceptin、Genentech)の変異体を開示し、且つ、これらの変異体は、257C、257M、257L、257N、257Y、279Q、279Y、308Fおよび308Yから選ばれる1つ以上のアミノ酸修飾を含む。韓国特許公開番号KR2010-0099179は、ベバシズマブ(Avastine、Genentech)の変異体を提供し、且つ、これらの変異体は、N434S、M252Y/M428L、M252Y/N434SおよびM428L/N434Sに含まれるアミノ酸修飾により、増加された体内半減期を示す。また、Hintonらも、T250QとM428Lとの2つの変異体が、それぞれFcRnとの結合を3倍および7倍増加させることを発見した。2つのサイトを同時に変異させると、結合が28倍増加する。アカゲザル体内で、M428LまたはT250QM/428Lの変異体は、血漿半減期が2倍増加することを示す(Hinton PRら、J.Immunol.,176:346~356、2006)。新生児受容体(FcRn)との結合親和性が増強されたFc変異体に含まれるより多くの突然変異サイトは、中国発明特許CN201280066663.2を参照することができる。また、5種のヒト由来抗体のFc断片をT250Q/M428L変異させることが、FcとFcRnとの相互作用を改善するだけでなく、且つ、その後の体内薬物動態学試験において、皮下注射で投与すると、Fc突然変異抗体が野生型抗体と比べて薬物動態学パラメータが改善され、例えば、体内暴露量が増加し、除去率が低下し、皮下生物利用度が向上したことが発見されたという研究がある(Datta-Mannan Aら、MAbs.Taylor&Francis、4:267~273、2012)。
【0169】
本発明の抗体とFcRnとの親和性を増強できる他の突然変異点は、226、227、230、233、239、241、243、246、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、290、291、292、294、298、299、301、302、303、305、307、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、382、383、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、433、438、439、440、443、444、445、446というアミノ酸修飾含んでもよいが、これらに限定されず、ここで、Fc領域におけるアミノ酸の番号はKabat中のEUインデックスの番号である。
【0170】
FcRnとの結合親和性が増強されたFc変異体は、他の一切の公知のアミノ酸修飾サイトおよび発見されていないアミノ酸修飾サイトを更に含む。
【0171】
好ましい実施形態において、IgG変異体を最適化して増加または低減されたFcRn親和性、および増加または低減されたヒトFcγRを有させることができ、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIaおよびそれらの対立遺伝子変異を含むFcγRIIIb親和性を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0172】
優先的には、IgG変異体のFcリガンドの特異性はその治療応用を決定する。所定のIgG変異体の治療用の目的は、標的抗原のエピトープまたは形式、および治療待ち疾患または適応症に依存する。ほとんどの標的適応症にとって、増強されたFcRnとの結合はより好ましく、その原因は、増強されたFcRnとの結合が血清半減期を延長させることができるためである。長い血清半減期は、治療時に低い頻度および用量で投与することを許容する。繰り返し投与する必要のある適応症を反応させるために該治療剤を投与する場合、このような特性は特に好ましい。いくつかの標的適応症にとって、変異体Fcが増加された除去または低減された血清半減期を有する必要がある場合、例えば、Fcポリペプチドが現像剤または放射治療剤として使用される場合、低減されたFcRn親和性は特に好ましい。
【0173】
従来技術の公知方法により該ポリペプチドのFcRnに対する親和性を評価することができる。例えば、当業者は、適当なELISA測定を行うことができる。例えば、実施例5.6に記載されるように、適当なELISA測定により、変異体および親本のFcRnとの結合強度を比較することができる。PHが7.0である場合、変異体および親本ポリペプチドに対して検出された特異的信号を比較し、変異体の特異的信号が親本ポリペプチドの特異的信号よりも少なくとも1.9倍弱い場合、それは本発明の好ましい変異体であり、更に臨床応用に適用される。
【0174】
FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含んでもよいが、これらに限定されない任意の生物に由来してもよい。
【0175】
[FcγRとの結合を抑制する改変]
本発明に係る「FcγRとの結合を抑制する改変」とは、Fcポリペプチド鎖におけるFcγRIIA、FcγRIIBおよび/またはFcγRIIIAとの結合を抑制する1つまたは複数の挿入、欠失、または置換を指し、前記結合は、例えば、競合ベースの結合実験(PerkinElmer、Waltham、MA)により測定される。これらの改変は、二重特異性抗体の一部であるFcポリペプチド鎖に含まれてもよい。より具体的には、Fcγ受容体(FcγR)との結合を抑制する改変は、L234A、L235A、またはN297位のグリコシル化を抑制する任意の改変を含み、N297での任意の置換を含む。また、N297位のグリコシル化を抑制する改変と共に、別のジスルフィド架橋を確立することにより二量体のFc領域を安定化する別の改変も予測されている。FcγRとの結合を抑制する改変の更なる実例は、一方本のFcポリペプチド鎖でのD265Aの改変と、他方本のFcポリペプチド鎖でのA327Qの改変とを含む。上記いくつかの突然変異は、Xu Dら、Cellular Immunol.,200:16~26、2000に記載され、ここで、上記突然変異およびその活性評価を記載している部分は、引用の方式で本発明に援用される。以上はEU番号に基づくものである。
【0176】
例えば、本発明に係る二重特異性抗体のFcγRとの結合を抑制する改変に含まれるFc断片は、ヒトFcγRs(FcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)とC1qとの少なくとも1種に対して低減された親和性を示し、減少されたエフェクター細胞機能または補体機能を有する。
【0177】
他のFcγRとの結合を抑制する改変は、公知技術および将来発見される可能性があるサイトとその修飾を含む。
【0178】
FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含んでもよいが、これらに限定されない任意の生物に由来してもよい。
【0179】
[半減期を延長するFcの改変]
本発明に係る「半減期を延長するFcの改変」とは、同じFcポリペプチドを含むが、改変を含まない類似するFcタンパク質の半減期と比べ、Fcポリペプチド鎖で、改変を含むFcポリペプチド鎖のタンパク質の体内半減期を延長させる改変を指す。前記改変は、二重特異性抗体の一部であるFcポリペプチド鎖に含まれてもよい。T250Q、M252Y、S254TおよびT256E(250-位のトレオニンがグルタミンに変わり、252-位のメチオニンがチロシンに変わり、254-位のセリンがトレオニンに変わり、256-位のトレオニンがグルタミン酸に変わり、EU番号に基づいて番号を付ける)の改変は、半減期を延長するFcの改変であり、合わせて、単独で、または任意に組み合わせて使用することができる。これらの改変および他のいくつかの改変は、米国特許7083784に詳細に記述されている。米国特許7083784におけるこのような改変を記載している部分は、引用の方式により本発明に援用される。
【0180】
同様に、M428LおよびN434Sは、半減期を延長するFcの改変であり、合わせて、単独で、または任意に組み合わせて使用することができる。これらの改変および他のいくつかの改変は、米国特許出願公開テキスト2010/0234575および米国特許7670600に詳細に記載されている。米国特許出願公開テキスト2010/0234575および米国特許7670600におけるこのような改変を記載している部分は、引用の方式により本発明に援用される。
【0181】
また、本発明の定義に従い、250、251、252、259、307、308、332、378、380、428、430、434、436というサイトの1つにおける任意の置換は、いずれも半減期を延長するFcの改変と考えることができる。これらの改変のうちのそれぞれまたはこれらの改変の組み合わせは、本発明に係る二重特異性抗体の半減期を延長するために使用できる。半減期の延長に使用できる他の改変は、2012年12月17日に提出された国際出願PCT/US2012/070146(公開番号:WO2013/096221)に詳細に記載されている。この出願における上記改変を記載している部分は、引用の形式により本発明に援用される。
【0182】
半減期を延長するFcの改変は、公知技術および将来発見される可能性があるサイトとその修飾を更に含む。
【0183】
Fcは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含んでもよいが、これらに限定されない任意の生物に由来してもよい。
【0184】
[二重特異性抗体の調製方法]
本分野の任意の既知の方法で本発明の二重特異性抗体を調製することができる。二重特異性抗体の早期の構築方法には、化学架橋法、またはハイブリッド-ハイブリドーマ法もしくはクワドローマ法がある(例えば、Staerz UDら、Nature、314:628-31、1985、Milstein Cら、Nature、305:537-540、1983、Karpovsky Bら、J.Exp.Med.,160:1686-1701、1984)。化学カップリング法は、2つの異なるモノクローナル抗体を化学カップリングの方式で連結し、二重特異性モノクローナル抗体を調製することである。例えば、2種の異なるモノクローナル抗体の化学結合、または、例えば、2つのFab断片のような2つの抗体断片の化学結合である。ハイブリッド-ハイブリドーマ法は、細胞ハイブリダイゼーション法または三元ハイブリドーマの方式で二重特異性モノクローナル抗体を生成することであり、これらの細胞ハイブリドーマまたは三元ハイブリドーマが、構築されたハイブリドーマの融合、または確立されたハイブリドーマとマウスから得られたリンパ球との融合により得られる。これらの技術はBiAbの製造に使用されるが、抗原結合サイトを含む異なる組み合わせの混合群が生成し、タンパク質の発現が難しく、ターゲットBiAbを精製する必要があり、収率が低く、生産コストが高い等のような産生された様々な問題により、このような複合体は使用されにくくなる。
【0185】
最近の方法は、遺伝子工学的手法により改造されたコンストラクトを利用し、必要のない副生成物を除去するために徹底的に精製する必要がなく単一のBiAbの均質生成物を生成することができる。このようなコンストラクトは、直列に連結されたscFv、二抗体、直列に連結された二抗体、二重可変ドメイン抗体、およびCh1/CkドメインまたはDNLTMのモチーフを使用するヘテロ二量体を含む(Chames&Baty、Curr.Opin.Drug.Discov.Devel.,12:276-83、2009、Chames&Baty、mAbs、1:539-47)。関連する精製技術は公知のものである。
【0186】
[腫瘍表面抗原]
「腫瘍表面抗原」という用語は、腫瘍細胞または内部の表面にあるまたは提示することができる抗原を指す。いくつかの癌細胞抗原は、いくつかの正常細胞の表面にも発現し、腫瘍-関連抗原と呼ぶことができる。正常細胞と比べると、これらの腫瘍-関連抗原は、腫瘍細胞に過発現でき、または正常組織と比べて腫瘍組織の構造が密でないため、前記抗原は腫瘍細胞で抗体と結合しやすい。これらの抗原は、正常細胞により提示せずに腫瘍細胞のみにより提示することができる。腫瘍抗原は、腫瘍細胞のみに発現してもよいし、または正常細胞と比べた腫瘍特異的突然変異を表してもよい。対応する抗原は、腫瘍-特異性抗原と呼ぶことができる。
【0187】
「腫瘍関連抗原」は、宿主で免疫反応をトリガして腫瘍細胞を同定するために使用し、且つ、癌治療で可能な候補とすることができる。この抗原は、免疫系をよく避ける正常なタンパク質、通常ごく少量で生成されたタンパク質、通常ある発育段階のみで生成されたタンパク質、またはその構造が突然変異により修正されたタンパク質を含む可能性がある。
【0188】
大量の腫瘍抗原は本分野で知られており、且つ、スクリーニングにより同定された新たな腫瘍抗原を容易に確定することができる。腫瘍抗原の非制限的な実例は、α-フェトプロテイン(AFP)、α-アクチン-4、A3、A33抗体に対して特異性を有する抗原、(AFP)、α-アクチン-4、A3、A33抗体に対して特異性を有する抗原、ART-4、B7、Ba733、 BAGE、BrE3-抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、炭酸無水物酵素IX、CASP-8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD70L、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD123、CD126、CD132、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、BCMA、CS1、DLL3、DLL4、EpCAM、FLT3、gpA33、GPC-3、Her2、MEGE-A3、NYESO1、CIX、GD2、GD3、GM2、CDK-4/m、CDKN2A、CTLA-4、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1α、結腸特異性抗原p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、c-Met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1(TROP-2)、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、線維芽細胞成長因子(FGF)、Flt-1、Flt-3、葉酸塩結合タンパク質、G250抗原、GAGE、gp100、GRO-β、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、酸欠誘導因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2、Ia、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-λ、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-25、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、KC4-抗原、KS-1-抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージマイグレーション抑制因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、MUC13、MUC16、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM4抗原、膵臓癌ムチン、PD-1受容体、胎盤成長因子、p53、PLAGL2、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイノシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、Thomson-Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGF、VEGFR2、VEGFR3、カドヘリン(Cadherin)、インテグリン(Integrin)、メソテリン(Mesothelin)、Claudin18、αVβ3、α5β1、ERBB3、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、ムチンファミリー、FAP、テネイシン(Tenascin)、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A-抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管生成マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、発癌性遺伝子マーカーおよび発癌性遺伝子生成物(例えば、Sensi Mら、Clin.Cancer Res.,12:5023-32、2006、Parmiani Jら、J.Immunol.,178:1975-79、2007、Novellino Lら、Cancer Immunol.Immunother.,54:187-207、2005参照)を含む。好ましくは、本発明に係るTAAは、CD19、CD20、CD22、CD30、CD38、BCMA、CS1、EpCAM、CEA、Her2、EGFR、Mucin1、CA125、GPC-3およびMesothelinである。
【0189】
該用語は、TAAの任意の変異体、イソ型、誘導体、および種相同体を更に含み、腫瘍細胞を含む細胞により天然に発現されるか、またはTAA遺伝子やcDNAでトランスフェクションされた細胞により発現される。
【0190】
TAAは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含んでもよいが、これらに限定されない任意の生物に由来してもよく、好ましくは、ヒトのTAAに由来する。
【0191】
[標的細胞および標的細胞に発現する標的細胞タンパク質]
上述したように、二重特異性抗体は、エフェクター細胞タンパク質および標的細胞タンパク質に結合することができる。例えば、前記標的細胞タンパク質は、癌細胞、病原体により感染された細胞、または疾患(例えば、炎性、自己免疫疾患)を媒介する細胞の表面に発現することができる。いくつかの実施形態において、高レベルの発現が必要ではないが、該標的細胞タンパク質は標的細胞の表面に高度に発現することができる。いくつかの実施形態において、該標的細胞タンパク質は標的細胞の表面に発現しないか、または低発現する。
【0192】
標的細胞が癌細胞である場合、本発明に係る相同二量体の二重特異性抗体は、上記癌細胞抗原に結合することができる。癌細胞抗原はヒトのタンパク質であってもよいし、または他の種に由来するタンパク質であってもよい。
【0193】
いくつかの実施例において、前記標的細胞タンパク質は、腫瘍細胞の表面で選択的に発現するまたは過発現するまたは発現しないタンパク質であってもよい。
【0194】
いくつかの実施例において、前記標的細胞タンパク質は、リンパシステム関連疾患を媒介する細胞表面のタンパク質であってもよい。
【0195】
他の態様において、標的細胞は、自己免疫疾患または炎性疾患を媒介する細胞であってもよい。例えば、喘息中のヒトの好酸球は標的細胞であってもよく、このような場合、EGFモジュール含有ムチン様ホルモン受容体(EMR1)は、標的細胞タンパク質とすることができる。好ましくは、全身性エリテマトーデスの患者で、過剰のヒトB細胞は標的細胞とすることができ、このような場合、例えば、CD19またはCD20は標的細胞のタンパク質とすることができる。他の自己免疫疾患において、過剰のヒトTh2T細胞は標的細胞とすることができ、このような場合、例えば、CCR4は標的細胞のタンパク質とすることができる。同様に、標的細胞は、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変、強皮症、腎移植線維症、腎同種移植腎病、または肺線維症(特発性肺線維症および/またはイディオタイプ肺高血圧を含む)を媒介する線維症細胞であってもよい。前記線維症の場合、例えば、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAPα)は標的細胞タンパク質であってもよい。
【0196】
いくつかの実施例において、標的細胞タンパク質は、感染した細胞表面に選択的に発現するタンパク質であってもよい。例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)に感染した場合、前記標的細胞タンパク質は、感染された細胞表面に発現するHBVまたはHCVのエンベロープタンパク質であってもよい。他の実施形態において、前記標的細胞タンパク質は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がHIVに感染した細胞でコードするgp120であってもよい。
【0197】
いくつかの実施例において、標的細胞は、感染および感染性関連疾患を媒介する細胞であってもよい。
【0198】
いくつかの実施例において、標的細胞は、免疫不全関連疾患を媒介する細胞であってもよい。
【0199】
いくつかの実施例において、標的細胞は、他の関連疾患を媒介する細胞であってもよく、公知技術および将来発展する可能性がある部分を含む。
【0200】
二重特異性抗体は、マウス、ラット、ウサギ、新世界サルおよび/または旧世界サル種等に由来する標的細胞タンパク質に結合することができる。前記種は、ハツカネズミ(Musmusculus)、クマネズミ(Rattusrattus)、ドブネズミ(Rattusnorvegicus)、カニクイザル(Macacafascicularis)、マントヒヒ(hamadryasbaboon)、Papiohamadryas、ギニアヒヒ(Guineababoon)、Papiopapio、オリーブヒヒ(olivebaboon)、アヌビスヒヒ(Papioanubis)、キイロヒヒ(yellowbaboon)、サバンナヒヒ(Papiocynocephalus)、チャクマヒヒ(Chacmababoon)、Papioursinus、コモンマーモセット(Callithrixjacchus)、ワタボウシタマリン(SaguinusOedipus)、およびリスザル(Saimirisciureus)という種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0201】
[癌]
「癌」という用語は、体内の異常細胞が制御されずに成長することを特徴とする疾患を指す。「癌」は、良性癌、悪性癌、休眠腫瘍または微転移を含む。癌は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、細胞が被験者の体内の原始悪性疾患または腫瘍サイト以外の部位にマイグレーションされていない腫瘍)および続発性悪性細胞または腫瘍(例えば、転移による腫瘍が悪性細胞に転移されるか、または腫瘍細胞が原始腫瘍サイトと異なる二次サイトにマイグレーションされる)を含む。癌は、血液学悪性腫瘍も含む。「血液学的悪性腫瘍」は、リンパ腫、白血病、骨髄腫またはリンパ悪性腫瘍、および脾癌およびリンパ節腫瘍を含む。
【0202】
好ましい実施形態において、本発明の二重特異性抗体、または本発明の抗体をコードする核酸またはポリヌクレオチド、または免疫コンジュゲート、または医薬組成物、または組み合わせ療法は、癌の治療、予防、または緩和に有用である。癌の実例は、癌腫、リンパ腫、膠芽細胞腫、メラノーマ、肉腫、白血病、骨髄腫、またはリンパ悪性疾患を含んでもよいが、これらに限定されない。このような癌の更なる特定の実例は以下のように、扁平上皮癌(例えば、上皮扁平上皮癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃部癌、または胃癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、多形性膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、肝細胞癌腫、神経内分泌腫瘍、甲状腺髄様癌、甲状腺分化癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、または腎癌、前立腺癌、陰門癌、肛門癌、陰茎癌および頭頸部癌を含む。
【0203】
癌または悪性病の他の実例は、急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髓性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝癌、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髓性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性リンパ腫、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝癌、成人軟組織肉腫、AIDS関連性リンパ腫、AIDS関連性悪性病、肛門癌、星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂と尿管癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫、子宮頸癌、小児(原発性)肝細胞癌、小児(原発性)肝癌、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髓性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部と視覚路神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽細胞腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体とテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝癌、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視覚路と視床下部神経膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性髓細胞性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、上衣腫瘍、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫と関連腫瘍、外分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫、性腺外胚細胞腫、肝外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃部癌、胃腸管良性腫瘍、胃腸管腫瘍、胚細胞腫、妊娠性絨毛腫瘍、毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼球内黒色腫、膵島細胞癌、膵島細胞膵臓癌、カポジ肉腫、腎癌、喉頭癌、口唇と口腔癌、肝癌、肺癌、リンパ増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、メラノーマ、中皮腫、転移性原発巣秘匿性頸部扁平上皮癌、転移性原発性頸部扁平上皮癌、転移性頸部扁平上皮癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、骨髓発育不良症候群、髓細胞性白血病、骨髓性白血病、骨髓増殖性疾患、鼻腔と副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非メラノーマ皮膚癌、非小細胞肺癌、転移性原発巣秘匿性頸部扁平上皮癌、中咽頭癌、骨肉腫/悪性線維肉腫、骨肉腫/悪性線維組織細胞腫、骨肉腫/骨格の悪性線維組織細胞腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、真性赤血球増加症、副甲状腺癌、陰茎癌、クロム親和性細胞腫、下垂体部腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝癌、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂と尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟組織肉腫、頸部扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体腫、T細胞リンパ腫、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂と尿管の移行マイグレーション細胞癌、移行マイグレーション腎盂と尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管と腎盂細胞癌、尿管癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路と視床下部神経膠腫、陰門癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、および以上に列挙した器官システムに位置する余分な腫瘍以外の任意の他の過剰増殖性疾患を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0204】
[組み合わせ療法]
本発明は、二重特異性抗体、または本発明の抗体をコードする核酸、またはポリヌクレオチド、または免疫コンジュゲート、または医薬組成物が1種または複数種の活性治療剤(例えば、化学治療剤)または他の予防または治療モード(例えば、放射線)と組み合わせることができる使用を含む。このような組み合わせ療法において、各活性剤は、常に異なる相補的な作用メカニズムを有し、組み合わせ療法は相乗効果をもたらす可能性がある。組み合わせ療法は、免疫反応に影響を及ぼす(例えば、反応を増強または活性化する)治療剤と、腫瘍/癌細胞に影響を及ぼす(例えば、抑制または死滅する)治療剤とを含む。組み合わせ療法は、薬剤耐性癌細胞の発生の可能性を低減することができる。組み合わせ療法は、試薬のうちの1種または複数種に関連する副作用を減少または除去するために、試薬のうちの1種または複数種の試薬用量の減少を許容する。このような組み合わせ療法は、潜在的な疾患、病症、または病状に対して相乗的な治療または予防作用を有することができる。
【0205】
「組み合わせ」は、個別に投与できる療法を含み、例えば、単独投与に対して個別に配合する(例えば、セットで提供できる)療法と、単一の配合物(即ち、「共配合物」)と共に投与する療法とを含む。いくつかの実施例において、本発明の二重特異性抗体、または本発明の抗体をコードする核酸、またはポリヌクレオチド、または免疫コンジュゲート、または医薬組成物は、順に投与することができる。他の実施例において、二重特異性抗体、または本発明の抗体をコードする核酸、またはポリヌクレオチド、または免疫コンジュゲート、または医薬組成物は、同時に投与することができる。本発明の二重特異性抗体、または本発明の抗体をコードする核酸、またはポリヌクレオチド、または免疫コンジュゲート、または医薬組成物は、少なくとも1種の他の(活性)薬剤と任意の方式で組み合わせて使用することができる。
【0206】
本発明の二重特異性抗体による治療は、治療待ち病症に有効な他の治療と組み合わせることができる。本発明の抗体の組み合わせ治療の非限定的実例は、手術、化学療法、放射線治療、免疫療法、遺伝子療法、DNA療法、RNA療法、ナノ療法、ウイルス療法、補助療法を含む。
【0207】
組み合わせ療法は、他の一切の公知技術における既存したおよび将来発展可能な部分を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【
図1-1】二重特異性抗体AB7K、AB7K4、AB7K5、AB7K6、AB7K7、およびAB7K8の構成はそれぞれa、b、c、d、e、およびfに示すとおりである。
【
図1-2】二重特異性抗体AB7K7発現プラスミドクロマトグラムを示す。該発現プラスミドは全長9293bpであり、9つの主な遺伝子断片を含み、1.hCMVプロモーター、2.ターゲット遺伝子、3.EMCV IRES、4.mDHFRスクリーニング遺伝子、5.Synターミネータ配列、6.SV40プロモーター、7.カナマイシン耐性遺伝子、8.SV40ターミネータ配列、9.PUCレプリコンを含む。
【
図1-3】AB7K7の精製サンプルのSEC-HPLC検出の結果である。
【
図1-4】AB7K7の精製サンプルのSDS-PAGE電気泳動の結果である。
【
図1-5】AB7K7の25℃の加速実験でのSDS-PAGEの結果である。
【
図1-6】AB7K7の凍結融解実験でのSDS-PAGEの結果である。
【
図2-1】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K4の腫瘍細胞BT474に結合する能力を検出する図である。
【
図2-2】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K5の腫瘍細胞BT474に結合する能力を検出する図である。
【
図2-3】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K6の腫瘍細胞BT474に結合する能力を検出する図である。
【
図2-4】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K7の腫瘍細胞BT474に結合する能力を検出する図である。
【
図2-5】FACSにより二重特異性抗体AB7K8の腫瘍細胞BT474に結合する能力を検出する図である。
【
図2-6】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K4のエフェクター細胞CIKに結合する能力を検出する図である。
【
図2-7】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K5のエフェクター細胞CIKに結合する能力を検出する図である。
【
図2-8】FACSにより二重特異性抗体AB7K6のエフェクター細胞CIKに結合する能力を検出する図である。
【
図2-9】FACSにより二重特異性抗体AB7KおよびAB7K7のエフェクター細胞CIKに結合する能力を検出する図である。
【
図2-10】FACSにより二重特異性抗体AB7K8のエフェクター細胞CIKに結合する能力を検出する図である。
【
図2-11】FACSにより二重特異性抗体AB7KのカニクイザルのT細胞に結合する能力を検出する図である。
【
図2-12】ELISAにより5種のAnti-Her2×CD3二重特異性抗体のCD3およびHer2分子に結合する能力を検出する図である。
【
図2-13】プレートリーダにより5種のAnti-Her2×CD3二重特異性抗体の遺伝子細胞株Jurkat T細胞を活性化して報告する能力を検出する図である。
【
図2-14】CTPリンカーペプチドと抗-CD3 scFv VH構造とをモデリングする図である。
【
図2-15】GSリンカーペプチドと抗-CD3 scFv VH構造とをモデリングする図である。
【
図2-16】抗-CD3 FvとCD3のepsilon鎖との分子ドッキングモデルである。
【
図3-1】NCGマウスの皮下にヒトCIK細胞とHCC1954細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K4およびAB7K7の体内腫瘍抑制効果である。
【
図3-2】NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト乳癌細胞HCC1954とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7の体内腫瘍抑制効果である。
【
図3-3】異なる投与頻度でのNPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト乳癌細胞HCC1954とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7およびAB7K8の体内腫瘍抑制効果である。
【
図3-4】NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とSK-OV-3細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7の体内腫瘍抑制効果である。
【
図3-5】NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とHT-29細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7の体内腫瘍抑制効果である。
【
図3-6】CD34免疫が再構成されたNPGマウスの皮下にヒト乳癌HCC1954細胞を接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7の体内腫瘍抑制効果である。
【
図3-7】PBMC免疫が再構成されたNPGマウスにヒト乳癌HCC1954細胞を接種したマウス移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7の体内腫瘍抑制効果である。
【
図4-1】NCGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K4およびAB7K7の腫瘍抑制効果である。
【
図4-2】NPGマウスの皮下にヒト乳癌HCC1954細胞を単独で接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB7K7の腫瘍抑制効果である。
【
図4-3】二重抗体AB7K7およびAB7K8を複数回投与した後の正常なカニクイザルの体重の変化曲線である。
【
図5-1】SDラットにおいて2種のELISA方法で二重抗体AB7K7を検出する場合の血中濃度-時間曲線である。
【
図5-2】SDラットにおいて2種のELISA方法で二重抗体AB7K8を検出する場合の血中濃度-時間曲線である。
【
図5-3】カニクイザル体内における二重抗体AB7K7およびAB7K8の血中濃度-時間曲線である。
【
図5-4】pH6.0時の二重抗体AB7K、AB7K5およびAB7K7のFcRnに結合する能力の測定である。
【
図5-5】pH7.0時の二重抗体AB7K、AB7K5およびAB7K7のFcRnに結合する能力の測定である。
【
図6-1】NOD-SCIDマウスの皮下にヒトPBMC細胞とHuh-7細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB9Kの体内腫瘍抑制効果である。
【
図6-2】CD34免疫が再構成されたNPGマウスの皮下にヒト肝癌Huh-7細胞を接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB9Kの体内腫瘍抑制効果である。
【
図6-3】CD34免疫が再構成されたNPGマウスの皮下にヒト肝癌Huh-7細胞を接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB9Kの体内腫瘍抑制効果である。
【
図7-1】フローサイトメトリーで二重特異性抗体AB2KのCD20陽性腫瘍細胞に結合する能力を検出する図である。
【
図7-2】二重特異性抗体AB2KおよびAB7K7がエフェクター細胞を媒介してRaji-luc細胞を殺傷する能力である。
【
図7-3】レポータージーン法で二重特異性抗体AB2KおよびAB7K7がJurkat NFATRE Luc細胞を活性化する能力を検出する図である。
【
図7-4】NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB2Kの体内腫瘍抑制効果である。
【
図7-5】NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB2Kの体内腫瘍抑制効果である。
【
図8】二重抗体AB2Kを複数回投与した後の正常なカニクイザルの白血球およびリンパ球の変化曲線である。
【
図9-1】FACSによりAnti-CD19×CD3二重特異性抗体の腫瘍細胞Rajiに結合する能力を検出する図である。
【
図9-2】FACSによりAnti-CD19×CD3二重特異性抗体のエフェクター細胞CIKに結合する能力を検出する図である。
【
図9-3】FACSにより二重特異性抗体AB1K2およびAB23P10のカニクイザルのT細胞に結合する能力を検出する図である。
【
図9-4】ELISAにより4種のAnti-CD19×CD3二重特異性抗体のCD3およびCD19分子に結合する能力を検出する図である。
【
図9-5】プレートリーダによりAB1K2およびAB23P8二重特異性抗体がレポータージーン細胞株Jurkat T細胞を活性化する能力を検出する図である。
【
図9-6】プレートリーダにより4種のAnti-CD19×CD3二重特異性抗体がレポータージーン細胞株Jurkat T細胞を活性化する能力を検出する図である。
【
図10-1】AB11KのMucin1抗原を高発現する腫瘍細胞およびヒトまたはカニクイザルの初代T細胞との結合である。
【
図10-2】AB11Kが増幅されたT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷する能力である。
【
図10-3】AB11KがPBMCを媒介して腫瘍細胞を殺傷する能力である。
【
図10-4】AB11KがT細胞を特異的に活性化する能力である。
【
図11】NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト皮膚癌A431細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体AB8Kの体内腫瘍抑制効果である。
【発明を実施するための形態】
【0209】
以下の実施例により本発明について更に説明し、前記実施例は、更に限定するものとして説明されるべきではない。ここで、本明細書に引用される全ての図面および全ての参照文献、特許、および開示された特許出願の内容を参照として明確に本発明に援用する。
【0210】
実施例1、異なる構造のAnti-Her2×CD3二重特異性抗体の設計および調製
【0211】
1.1、異なる構造の二重特異性抗体の設計
【0212】
適切な構成の二重特異性抗体をスクリーニングするために、Her2およびCD3に対して6種の異なる構成の二重特異性抗体を設計し、ここで、AB7K5、AB7K6およびAB7K8は一本鎖の2価の二重特異性抗体であり、AB7K、AB7K4およびAB7K7は二本鎖の4価の二重特異性抗体(
図1-1参照)であり、ここで、AB7K8のみがFc断片を含まなかった。具体的には、上記4種の構成の二重特異性抗体の構成、そのN端からC端への方向の構成、およびそのアミノ酸配列番号は表1-1に示すとおりであった。6種の二重特異性抗体の具体的な構造の組成特性についての説明はいかのとおりであった。
【0213】
ここで、二重特異性抗体AB7Kは、抗Her2の全長抗体の2本の重鎖のC端がリンカーペプチド(L1)を介してそれぞれ1つの抗CD3のscFvドメインに連結することで構成された。AB7Kに含まれるHer2に対する完全抗体のアミノ酸配列は、モノクローナル抗体Herceptin(登録商標)の配列(IMGTデータベースINN 7637)を参照し、それに含まれるFc断片がヒトIgG1に由来し、D356E/L358M突然変異(EU番号)を有した。そのリンカーペプチドL1は、フレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、且つ、フレキシブルペプチドの組成がGS(GGGGS)3であり、リジッドペプチドがSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQであった。ここで、抗CD3 scFvのVHとVLとの間のリンカーペプチドL2の組成が(GGGGS)3であった。
【0214】
ここで、二重特異性抗体AB7K4は、抗Her2の全長抗体の2本の軽鎖のC端がリンカーペプチド(L1)を介してそれぞれ1つの抗CD3のscFvドメインに連結することで構成された。AB7K4に含まれるHer2に対する完全抗体の重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、モノクローナル抗体Herceptin(登録商標)の可変領域の配列を参照し、その軽鎖のアミノ酸配列は、モノクローナル抗体Herceptin(登録商標)の軽鎖のアミノ酸配列(IMGTデータベースINN 7637)を参照した。AB7K4重鎖に含まれるFc断片はヒトIgG1に由来し、複数のアミノ酸の代替/置換を有し、それぞれがL234A、L235A、T250Q、N297A、P331SおよびM428L(EU番号)であるおとともに、Fc断片のC末端のK447(EU番号)を削除/欠失した。そのリンカーペプチドL1は、フレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、且つ、フレキシブルペプチドの組成がG2(GGGGS)3であり、リジッドペプチドがSSSSKAPPPSであった。ここで、抗CD3 scFvのVHとVLとの間のリンカーペプチドL2の組成が(GGGGS)3であった。
【0215】
ここで、二重特異性抗体AB7K5は、抗-Her2 scFv、Fc断片、リンカーペプチドL2および抗-CD3 scFvを順次直列に連結することで構成され、抗-Her2 scFvおよび抗-CD3 scFvの内部のVHとVLとの間は、それぞれリンカーペプチドL1およびL3を介して連結された。AB7K5に含まれるHer2に対するscFvのアミノ酸配列は、モノクローナル抗体Herceptin(登録商標)の可変領域の配列を参照した。AB7K5に含まれるFc断片はヒトIgG1に由来し、複数のアミノ酸の代替/置換を有し、それぞれがC226S、C229S、L234A、L235A、T250Q、N297A、P331S、T366R、L368H、K409TおよびM428L(EU番号)であった。ここで、C226S、C229S、T366R、L368HおよびK409Tという5つのサイトの突然変異は、Fc断片間の重合の発生を防止して一本鎖の2価の二重特異性抗体を形成させることができた。L234A/L235A/P331S突然変異を担持しているFc断片は、ADCCおよびCDCの活性を除去した。T250Q/M428L突然変異を担持していることにより、Fc断片と受容体FcRnとの結合親和性を増強してその半減期を延長させることができた。N297A突然変異により、抗体のグリコシル化が回避され、FcγRsとの結合能力が失った。また、更にFc断片のC末端のK447(EU番号)を削除/欠失し、抗体の荷電不均一性を除去した。そのリンカーペプチド(L2)はフレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、且つ、フレキシブルペプチドがいずれもG2(GGGGS)3であり、リジッドペプチドがSSSSKAPPPSであった。各scFvの内部のリンカーペプチドL1およびL3の組成がいずれも(GGGGS)3であった。
【0216】
ここで、二重特異性抗体AB7K6は、抗-Her2 scFv、リンカーペプチドL2、抗-CD3 scFv、およびFc断片を順次直列に連結することで構成され、抗-Her2 scFvおよび抗-CD3 scFvの内部のVHとVLとの間は、それぞれリンカーペプチドL1およびL3を介して連結された。AB7K6に含まれるFc断片はヒトIgG1に由来し、複数のアミノ酸の代替/置換を有し、それぞれがC226S、C229S、L234A、L235A、T250Q、N297A、P331S、T366R、L368H、K409TおよびM428L(EU番号)であった。ここで、C226S、C229S、T366R、L368HおよびK409Tという5つのサイトの突然変異は、Fc断片間の重合の発生を防止して一本鎖の2価の二重特異性抗体を形成させることができた。L234A/L235A/P331S突然変異を担持しているFc断片は、ADCCおよびCDC活性を除去し、T250Q/M428L突然変異を担持していることにより、Fc断片と受容体FcRnとの結合親和性を増強してその半減期を延長することができた。N297A突然変異により、抗体のグリコシル化が回避され、FcγRsとの結合能力を失った。また、更にFc断片のC末端のK447(EU番号)を削除/欠失し、抗体の荷電不均一性を除去した。そのリンカーペプチド(L2)はフレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、フレキシブルペプチドがいずれもG2(GGGGS)3であり、リジッドペプチドがSSSSKAPPPSであった。各scFvの内部のリンカーペプチドL1およびL3の組成がいずれも(GGGGS)3であった。
【0217】
ここで、二重特異性抗体AB7K7は、抗-Her2 scFv、リンカーペプチドL2、抗-CD3 scFv、およびFc断片を順次直列に連結することで構成され、抗-Her2 scFvおよび抗-CD3 scFvの内部のVHとVLとの間は、それぞれリンカーペプチドL1およびL3を介して連結された。AB7K7に含まれるHer2に対するscFvのアミノ酸配列は、モノクローナル抗体Herceptin(登録商標)の可変領域の配列を参照した。AB7K7に含まれるFc断片はヒトIgG1に由来し、複数のアミノ酸の代替/置換を有し、それぞれがL234A、L235A、T250Q、N297A、P331SおよびM428L(EU番号)であるとともに、更にFc断片のC末端のK447(EU番号)を削除/欠失した。そのリンカーペプチド(L2)はフレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、且つ、フレキシブルペプチドがいずれもG2(GGGGS)3であり、リジッドペプチドがSSSSKAPPPSであった。各scFvの内部のリンカーペプチドL1およびL3の組成がいずれも(GGGGS)3であった。
【0218】
ここで、二重特異性抗体AB7K8は、抗-Her2 scFv、リンカーペプチドL2、抗-CD3 scFvおよびHisタグを順次直列に連結することで構成され、抗-Her2 scFvおよび抗-CD3 scFvの内部のVHとVLとの間は、それぞれリンカーペプチドL1およびL3を介して連結された。AB7K8に含まれるHer2に対するscFvのアミノ酸配列は、モノクローナル抗体Herceptin(登録商標)の可変領域の配列を参照した。AB7K8は、抗体の精製を容易にするように、抗-CD3 scFvのC末端にHisタグを付加し、組成がHHHHHHHHであった。そのリンカーペプチド(L2)はフレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、且つ、フレキシブルペプチドがいずれもG2(GGGGS)3であり、リジッドペプチドがSSSSKAPPPSであった。各scFvの内部のリンカーペプチドL1およびL3の組成がいずれも(GGGGS)3であった。
【0219】
上記6種の二重特異性抗体に含まれる抗CD3-scFvのVHおよびVLアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:247およびSEQ ID NO:248に示すように、且つ、VHとVLとの間は(GGGGS)3を介して連結され、該モノクローナル抗体(CD3-3と命名される)は、ヒトおよびカニクイザルのCD3抗原に特異的に結合し、且つ、CD3と微弱な結合親和性を有した。
【0220】
【0221】
1.2、二重特異性抗体分子の発現ベクターの構築
【0222】
通常の分子生物学的方法で上記5種の二重特異性抗体のコード遺伝子を合成し、取得した融合遺伝子のコードcDNAをPCDNA3.1で改造された真核発現プラスミドpCMAB2Mの対応する酵素切断サイト間にそれぞれ挿入し、ここで、AB7KおよびAB7K4の重鎖および軽鎖は、1つのベクターに構築されてもよいし、2つの異なるベクターにそれぞれ構築されてもよい。例えば、AB7K7の発現プラスミドクロマトグラムは
図1-2に示すように、該プラスミドは、サイトメガロウイルスの早期プロモーターを含み、哺乳動物細胞が外来遺伝子を高レベルに発現するために必要なエンハンサーであった。プラスミドpCMAB2Mは、選択的マーカーを更に含み、細菌でカナマイシン耐性を有することができ、哺乳動物細胞でG418耐性を有することができた。また、宿主細胞がDHFR遺伝子発現欠陥型である場合、pCMAB2Mの発現ベクターはマウスのジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子を含み、メトトレキサート(MTX)が存在する場合、ターゲット遺伝子とDHFR遺伝子とを共増幅することができた(米国特許US4399216を参照)。
【0223】
1.3、二重特異性抗体分子の発現
【0224】
二重特異性抗体を発現するために、上記構築した発現プラスミドを哺乳動物の宿主細胞系にトランスフェクションした。高レベルの発現を安定化するために、好ましい宿主細胞系はDHFR酵素欠陥型CHO-細胞であり(米国特許US4818679を参照)、本実施例における宿主細胞は、CHO誘導細胞株DXB11を選択した。1つの好ましいトランスフェクション方法はエレクトロポレーションであり、リン酸カルシウム共沈降、リポフェクションを含む他の方法を使用してもよい。エレクトロポレーションにおいて、300Vの電界および1500μFdのコンデンサに設定されたGene Pulserエレクトロポレーター(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA)を使用し、キュベット内の5×107個の細胞に50μgの発現ベクタープラスミドDNAを加えた。2日間トランスフェクションした後、培地を0.6mg/mLのG418を含む成長培地に変更した。サブクローンのトランスフェクタントを限界希釈し、ELISA方法で各細胞系の分泌率を測定した。二重特異性抗体を高レベルに発現した細胞株をスクリーニングした。
【0225】
融合タンパク質の高レベルの発現を実現するために、MTX医薬により抑制されたDHFR遺伝子を用いて共増幅を行うことが好ましい。濃度が逓増したMTXを含む成長培地において、DHFR遺伝子を用いてトランスフェクションされた融合タンパク質遺伝子を共増幅した。DHFR発現が陽性であるサブクローンを限界希釈し、次第加圧して6μM MTXと高い培地で成長できたトランスフェクタントをスクリーニングし、その分泌率を測定し、外来タンパク質を高発現した細胞系をスクリーニングした。分泌率が約5(好ましくは、約15)μg/106(即ち、百万)個の細胞/24hを超えた細胞系を、無血清培地で適応性浮遊培養した。その後、細胞上清を収集して二重特異性抗体を分離して精製した。
【0226】
適切な構成の二重特異性抗体をスクリーニングするために、以下、いくつかの構成の二重特異性抗体の精製プロセス、安定性、体外と体内の生物学的機能、安全性、および薬物動態学等についてそれぞれドラッガビリティ評価を行った。
【0227】
1.4、二重特異性抗体の精製プロセスおよび安定性試験
【0228】
抗体の精製は、一般的に、粗精製(サンプルの捕獲)、中間精製、および精細精製という3ステップの精製策略を採用した。粗精製段階において、通常、アフィニティークロマトグラフィーを利用してターゲット抗体を捕獲し、不純なタンパク質、核酸、エンドトキシン、およびウイルスのようなサンプル中の大量の不純物を効果的に除去することができた。中間精製のステップでは、疎水性クロマトグラフィーまたはCHTヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いて大部分の残留された不純物タンパク質および重合体を除去することが多かった。精細精製では、イオン交換クロマトグラフィーまたはゲルろ過クロマトグラフィー(モレキュラーシーブ)を用いてターゲット抗体と性質が近い残留された少量または微量の不純物タンパク質を除去し、更にHCP、DNA等の汚染物を除去することが多かった。
【0229】
本発明は、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーカラム(例えば、GE社のHisTrap FF等)を利用してHis-tagを融合した二重特異性抗体AB7K8の培養上清を粗精製することができた。Protein A/Gアフィニティークロマトグラフィーカラム(例えば、GE社のMabselect SURE等)を利用してFcを含む二重特異性抗体AB7K4、AB7K5、AB7K6、AB7KおよびAB7K7を粗精製することができた。上記粗精製生成物は、更に中間精製および精細精製のステップを経て、最終的に高純度、高品質の精製したターゲット抗体を取得し、その後、脱塩カラム(例えば、GE社のHiTrap desaulting等)を利用して上記二重特異性抗体の保存緩衝液をPBSまたは他の適当な緩衝液に置換した。
【0230】
(a)二本鎖の4価の二重特異性抗体AB7K7の精製
【0231】
AB7K7を例とし、このような4価の相同二量体構成の二重特異性抗体の具体的な精製ステップおよび態様を説明した。
【0232】
3ステップのクロマトグラフィー法を採用して二重特異性抗体AB7K7を精製した。それぞれがアフィニティークロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーであった(本実施例で採用されたタンパク質精製装置は、米国GE社のAKTA pure 25Mであった。本実施例で採用された試薬は、いずれも国薬グループ化学試薬有限公司から購入し、純度はいずれも分析レベルであった)。
【0233】
ステップ1、アフィニティークロマトグラフィー:GE社のMabSelect Sureアフィニティークロマトグラフィー媒体または他の市販のアフィニティー媒体(例えば、Bsetchrom社のDiamond protein A等)を採用してサンプルの捕獲、濃縮および一部の汚染物の除去を行った。まず、平衡buffer(20mMのPB、140mMのNaCl、pH7.4)を用い、100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ平衡化させ、清澄された発酵液を、100~200cm/hの線形流速でサンプルローディングを行い、担持量が20mg/m以下であり、サンプルローディングが終了した後、平衡buffer(20mMのPB、140mMのNaCl、pH7.4)を用いて100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ平衡化させ、結合していない成分を洗い流し、洗浄buffer 1(50mMのNaAc-HAc、1MのNaCl、pH5.0)を用いて100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積だけ洗い流し、一部の汚染物を除去し、洗浄buffer 2(50mMのNaAc-HAc、pH5.0)を用いて100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ平衡化させ、その後、溶出buffer(40mMのNaAc-HAc、pH3.5)を用いて100cm/h以下の線形流速でターゲット生成物を溶出し、ターゲットピークを収集した。
【0234】
ステップ2、疎水性クロマトグラフィー:Bsetchrom社のButyl HPまたは他の市販の疎水性クロマトグラフィー媒体(例えば、GEのButyl HP等)を使用して中間精製を行い、重合体の含有量を低減するために用いられた。ターゲットタンパク質が重合すると、重合体と単量体との間には、電荷特性および疎水性を含む性質上の違いが存在し、疎水性の違いで両者を分離した。まず、平衡buffer(20mMのPB、0.3Mの(NH4)2SO4、pH7.0)を用いて100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ平衡化させ、次に、陰イオン交換クロマトグラフィーにより分離されたターゲットタンパク質を2Mの(NH4)2SO4溶液でコンダクタンスを40~50ms/cmに調整し、その後、サンプルローディングを行い、担持量を<20mg/mlに制御し、サンプルローディングが終了した後、平衡buffer(20mMのPB、0.3Mの(NH4)2SO4、pH7.0)を使用して100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ洗い流し、最後にターゲットタンパク質溶出を行い、溶出buffer(20mMのPB、pH7.0)を用いてそれぞれ40%、80%および100%の溶出bufferにて100cm/h以下の線形流速で3~5つのカラム体積(CV)だけ溶出し、溶出成分を段階的に収集し、それぞれSEC-HPLCで検出した。単量体の百分率が90%よりも大きいターゲット成分を合わせて次のステップのクロマトグラフィーを行った。
【0235】
ステップ3、陰イオン交換クロマトグラフィー:Bsetchrom社のQ-HPまたは他の市販の陰イオン交換クロマトグラフィー媒体(例えば、GEのQHP、TOSOHのToyopearl GigaCap Q-650、天地人和のDEAE Beads 6FF、Sepax TechnologiesのGenerik MC-Q、MerckのFractogel EMD TMAE、PallのQ Ceramic HyperD F)を用いて精細精製を行い、構造変異体を分離し、HCP、DNA等の汚染物を更に除去した。まず、平衡buffer(20mMのPB、pH7.0)を用いて100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ洗い流し、ステップ2の疎水性クロマトグラフィー分離により得られたターゲットタンパク質に対してサンプルローディングを行い、流れを収集し、サンプルローディングが終了した後、平衡buffer(20mMのPB、pH7.0)を用いて100~200cm/hの線形流速でクロマトグラフィーカラムを3~5つのカラム体積(CV)だけ洗い流し、流れ成分を段階的に収集し、サンプルに対してタンパク質の含有量、SEC-HPLCおよび電気泳動検出をそれぞれ行った。
【0236】
サンプルのSEC-HPLC純度結果およびSDS-PAGE電気泳動結果は、それぞれ
図1-3および
図1-4に示すように、ここで、SEC-HPLCの結果により、3ステップのクロマトグラフィー後の二重特異性抗体の主ピークの純度が95%以上に達し、SDS-PAGE電気泳動のバンド形が予測に合致し、非還元電気泳動(180KDa)であり、還元後に明らかな(90KDa)一本鎖のバンドが取得できたことが分かった。
【0237】
(b)一本鎖の2価の二重特異性抗体AB7K5およびAB7K6の精製
【0238】
AB7K5は、Protein Aアフィニティークロマトグラフィーおよびヒドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィーで精製され、SEC-HPLC検出により、その純度が低く、収率が高くなく、更に発現生産量が極めて低いという問題が存在することが発見された。
【0239】
別の一本鎖の2価の二重特異性抗体AB7K6には、同様にプロセス開発の困難度が大きいという問題が存在し、AB7K6は、Protein AアフィニティークロマトグラフィーおよびモレキュラーシーブクロマトグラフィーSuperdex 200で2ステップの精製を行った後、SEC-HPLCにより検出すると、その純度が定量しにくく、主ピークに明らかな「肩ピーク」があることが発見された。また、その発現生産量が極めて低く、非常に不安定で、4℃の冷蔵庫において24h置いた後、そのSEC-HPLCの結果におけるピーク形が変化し、2つのピークから1つの主ピークに変更したことが発見され、ピーク出現時間により、それが一本鎖から二本鎖構造に変換したことによる可能性があると推測される。以上から、AB7K6の現在のプロセス開発の困難度が大きく、プロセス拡大および産業化を実現しにくいことが分かった。
【0240】
以上をまとめ、AB7K7はAB7K5およびAB7K6に対し、プロセス開発の面で顕著な優位性を有し、生産量が高く、精製方法が簡単で効率的であり、下流のプロセスが安定している等の利点を有する。、また、AB7K7の異なる緩衝液体系および異なる貯蔵条件での物理化学性能の安定性を更に考察した。
【0241】
c)二重特異性抗体AB7K7の安定性試験
【0242】
AB7K7タンパク質のクエン酸塩(20mMのクエン酸塩、pH5.5)およびヒスチヒスチジン塩緩衝系(20mMのヒスチジン塩、pH5.5)における安定性をそれぞれ考察した。AB7K7タンパク質を25℃の加速条件で4週間貯蔵し、タンパク質の安定性を評価した。
【0243】
AB7K7タンパク質を上記クエン酸塩(F2)およびヒスチジン塩(F3)緩衝液内にそれぞれ液交換し、濃度を0.5mg/mLに調節し、上記2種の緩衝系にいずれも8%のショ糖(w/v)および0.02%のPS80(w/v)を補助材として加えた。0.22μmのPESフィルムシリンジフィルタで濾過し、それぞれ2mLのバイアル瓶に分注し、1瓶あたり0.8mLとし、分注が終了すると直ちにプラグを押圧してキャッピングした。表1-2のスキームに基づいてサンプルを異なる安定性箱に入れ、各サンプリングポイントからサンプルを取り出して検出して分析し、検出項目は、サンプルの外観、濃度、SEC-HPLC検出によるサンプルの純度、HMW%、LMW%および濁度測定(A340)を含む。
【0244】
【0245】
2種の製剤処方を25℃で0~4週間貯蔵した後の外観、濃度、濁度およびSEC-HPLC検出の結果は、表1-3および表1-4に示すとおりであり、SDS-PAGE(還元/非還元)結果は、
図1-5に示すとおりであった。2つの処方の外観、濃度の結果はいずれも明らかな変化がなかった。SEC-HPLCの結果において、F2およびF3の2つの処方のSECの結果は明らかな変化がなく、4週間後の純度はそれぞれ97.9%および98.2%であった。SDS-PAGE(還元/非還元)の結果はLMW%の結果の傾向とほぼ一致し、F2およびF3の変化は軽微であった。
【0246】
AB7K7タンパク質の2種の緩衝系における折り畳み解消温度を知るために、DSFの方式により2種の処方におけるTm(折り畳み解消温度)およびTmonset(タンパク質の折り畳み解消が開始する温度)を検出し、結果は表1-5に示すとおりであった。2つ処方のTmonset値はいずれも低く、F2およびF3のTmonset値はいずれも45℃よりも低かった。
【0247】
【0248】
【0249】
【0250】
それと同時に、3回の凍結融解実験を行い、凍結融解(-70℃/室温、3回繰り返し凍結融解する)過程におけるAB7K7タンパク質の上記2種の緩衝系における安定性状況を考察し、サンプルの準備およびテストスキームは同上であった。
【0251】
サンプルの外観、濃度、濁度およびSEC-HPLC検出の結果は表1-6に示すとおりであり、SDS-PAGE(還元/非還元)の結果は
図1-6に示すとおりであった。SDS-PAGE(非還元)の結果において、F2およびF3という2つの処方は、3回の凍結融解を経た後、各検出項目の結果には明らかな変化がなかった。
【0252】
【0253】
実施例2、Anti-Her2×CD3二重特異性抗体の体外生物学的機能の評価
【0254】
2.1、二重特異性抗体とエフェクター細胞および標的細胞との結合活性の測定(FACS)
【0255】
a)フローサイトメトリー法を利用して二重特異性抗体とHer2陽性腫瘍細胞BT-474との結合活性を検出した
【0256】
Her2発現が陽性である腫瘍細胞BT-474細胞(上海中国科学院細胞バンク)を培養し、0.25%のトリプシンで消化し、遠心により細胞を収集した。収集した細胞を1%のPBSBで重懸濁し、細胞密度を2×106個/mlに調整し、96ウェルプレートに置き、ウェル毎に100μl(2×105個の細胞)とし、4℃で0.5h密閉した。密閉後の細胞を遠心して上清を捨て、希釈した一連の濃度の二重特異性抗体を加え、4℃で1hインキュベートし、遠心して上清を取り除き、1%のBSAのPBS溶液(PBSB)で3回洗浄し、希釈したAF488で標識されたヤギ抗ヒトIgG抗体またはマウス抗6×His IgG抗体を加え、4℃で遮光して1hインキュベートし、遠心して上清を取り除き、1%のPBSBで2回洗浄し、更にウェル毎に100μlの1%のパラホルムアルデヒド(PF)で重懸濁し、フローサイトメーターで信号強度を検出した。また、平均蛍光強度をY軸とし、抗体濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPadにより分析し、二重特異性抗体の腫瘍細胞BT-474に結合するEC50値を計算した。
【0257】
その結果、異なる構造の二重特異性抗体およびHer2過発現腫瘍細胞がいずれも良好な結合活性を有することが分かった。
図2-1~
図2-5は、異なる構造の二重特異性抗体の腫瘍細胞BT-474との結合の曲線を示した。表2-1に示すように、AB7KおよびAB7K4の腫瘍細胞と結合するEC
50は5nM程度にあり、AB7K7の腫瘍細胞と結合するEC
50が50nMに近く、AB7K5およびAB7K8の腫瘍細胞と結合するEC
50が100nMであり、AB7K6の腫瘍細胞と結合するEC
50が200nM以上と高かった。
【0258】
【0259】
b)FACSを利用して二重特異性抗体のヒトのT細胞との結合活性を検出した
【0260】
密度勾配遠心法を採用してヒトの新鮮な血液からPBMCを調製し、10%の熱不活化FBSを含む1640培地で重懸濁し、2μg/mlのOKT3を加えて24h活性化した後、250IU/mlのIL-2を加えて7日間増幅培養し、調製してCIK細胞(Cytokine-Induced Killer cells)を取得し、フローサイトメーターによる検出を経て、細胞表面のCD3発現が陽性であった。測定待ちサンプルの調製および測定方法は、実施例2.1a)と同様であった。1%のPFで重懸濁した細胞を装置で検出し、平均蛍光強度でソフトウェアOriginPro 8により分析し、各二重特異性抗体のヒトCIK細胞と結合するEC50値を計算した。
【0261】
その結果、各二重特異性抗体のCIK細胞との結合に大きな差が存在することを示した(
図2-6~
図2-10)。表2-2に示すように、AB7KのEC
50は約20nMであり、AB7K4の結果はそれに相当し、AB7K7はそれと6倍以上異なり、AB7K5、AB7K6、AB7K8はいずれもそれと10倍以上異なったことが分かった。
【0262】
【0263】
c)FACSにより二重特異性抗体のカニクイザルCIK細胞膜表面のCD3との交差反応性を検出した
【0264】
密度勾配遠心法を採用してカニクイザルの新鮮な血液からPBMCを調製し、10%の熱不活化FBSを含む1640培地で重懸濁し、2μg/mlのOKT3を加えて24h活性化した後、250IU/mlのIL-2を加えて7日間増幅培養し、カニクイザルCIK細胞を取得して使用に備えた。ヒトCIK細胞およびカニクイザルCIK細胞を遠心して収集し、その後の実験過程は上記実施例と同じであった。1%のパラホルムアルデヒド溶液で重懸濁した細胞を装置で検出し、平均蛍光強度でソフトウェアOriginPro 8により分析し、二重特異性抗体のヒトCIK細胞およびカニクイザルCIK細胞にそれぞれ結合するEC50値を計算した。
【0265】
図2-11に示すように、二重特異性抗体AB7KはカニクイザルのT細胞にも良好に結合でき、且つ、そのカニクイザルのT細胞に結合する能力とヒトのT細胞に結合する能力とがほぼ相当し、フローサイトメーターによりその結合のEC
50が約26nMであることを検出した。二重特異性抗体AB7K4、AB7K5、AB7K6、AB7K7およびAB7K8は、AB7Kと同様に、カニクイザルのT細胞に特異的に結合することができた。
【0266】
2.2、二重特異性抗体の抗原と結合する能力の測定
【0267】
二抗原サンドイッチELISA法により二重特異性抗体の可溶CD3およびHer2との結合を同定した。
【0268】
Her2タンパク質(北京シノバイオロジカル社、品番10004-H08H4)をPBSで0.1μg/mlの濃度に希釈し、96ウェルプレートに入れて100μl/ウェルとし、4℃一晩コーティングした。その後、1%の脱脂粉乳を用いて室温で1h密閉した。それと同時に、各二重特異性抗体を希釈し、4倍の勾配で希釈し、合計11個の濃度勾配を有した。その後で、PBSTで96ウェルプレートを洗浄し、希釈した二重特異性抗体を加え、抗体を加えない対照ウェルを設け、室温で1hインキュベートした。結合していない二重特異性抗体をPBSTで洗浄し、ビオチニル化されたCD3E&CD3D(ACRO Biosystem、品番CDD-H82W1)を50ng/mlでstreptavdin HRP(BD、品番554066)と混合して96ウェルプレートに入れて100μl/ウェルとし、室温で1hインキュベートした。その後、96ウェルプレートをPBSTで洗浄し、TMBを加え、100μl/ウェルとし、室温で15min発色させ、その後、0.2MのH2SO4を加えて発色反応を終了させた。プレートリーダでA450-620nmの吸光値を検出した。ソフトウェアOriginPro 8により分析し、二重特異性抗体の2つの抗原に結合するEC50値を計算した。
【0269】
その結果、各二重特異性抗体がいずれもCD3とHer2分子とを同時に特異的に結合することができ、且つ、抗体濃度の変化に従って良好な用量依存性を示す(
図2-12)ことが分かった。いくつかの二重特異性抗体の可溶CD3およびHer2との結合能力は、表2-3に示すように、そのEC
50値が0.03nM~3.8nMであり、2桁異なった。ここで、AB7Kの結合活性は最も良く、AB7K4およびAB7K7はそれと1桁異なり、AB7K5およびAB7K8の結合活性が最も弱かった。
【0270】
【0271】
2.3、レポータージーン細胞株で二重特異性抗体のT細胞を活性化する能力を評価した
【0272】
NFAT REレポータージーンを含むJurkat T細胞(BPS Bioscience、品番60621)は、二重特異性抗体と標的細胞とが同時に存在する場合にルシフェラーゼを過発現することができ、ルシフェラーゼの活性を検出することによりJurkat T細胞の活性化程度を定量する。二重特異性抗体の濃度をX軸とし、フルオレセイン信号をY軸とし、4パラメータ曲線をフィッティングした。
【0273】
図2-13の実験結果により、Her2を標的とするモノクローナル抗体HerceptinはJurkat T細胞を活性化できなかったことが分かった。2つの抗体が全て存在する場合にのみ、T細胞が活性化された。各抗体のJurkat T細胞を活性化する能力を表2-4に示し、ここで、AB7K4のT細胞を活性化する能力が最も強く、AB7K8のT細胞を活性化する能力が最も弱く、そのEC
50値が1桁異なった。
【0274】
【0275】
2.4、二重特異性抗体のT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷する能力
【0276】
正常に培養した腫瘍細胞系は、SK-BR-3、MCF-7、HCC1937、NCI-N87、HCC1954細胞(いずれも上海中科院細胞バンクから購入)を標的細胞として含み、0.25%のトリプシンで消化し、単細胞懸濁液を調製し、細胞密度を2×105個/mlに調整し、96ウェル細胞培養プレートに入れて100μl/ウェルとし、一夜培養した。実験設計に従って対応する抗体を希釈して50μl/ウェルとし、抗体を入れる必要のないウェルを同じ体積の培地で補充した。その後、標的細胞数の5倍のエフェクター細胞(ヒトPBMCまたは増幅培養したCIK細胞)を加えて100μl/ウェルとし、対照ウェルを設け、エフェクター細胞を入れる必要のないウェルを、同じ体積の培地で補充した。48h培養した後、96ウェルプレートの上清を捨て、PBSで3回洗浄し、10%のCCK-8を含む完全培地を加えて100μl/ウェルとし、37℃で4hインキュベートし、プレートリーダでA450~620nmの吸光値を検出した。ソフトウェアOriginPro 8により分析し、各二重特異性抗体と同じ標的点のモノクローナル抗体Herceptinの腫瘍細胞の殺傷を媒介する能力を計算して比較した。
【0277】
各二重特異性抗体のエフェクター細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷するEC50値を表2-5にまとめ、その結果、各二重特異性抗体は、Her2が高発現した腫瘍細胞(例えば、SK-BR-3、NCI-N87およびHCC1954)に対していずれも非常に顕著な殺傷作用を示し、且つ、用量依存性を示したことが分かった。各二重特異性抗体(特に、AB7K7)は、Her2が低発現した乳癌細胞MCF-7に対しても良好な殺傷効果を示した。Herceptin耐薬の細胞株HCC1954に対して、各二重特異性抗体も良好な殺傷作用を有し、Her2発現が陰性(ごく少量が発現した)である細胞株HCC1937に対して、各二重特異性抗体は、最も高い2つの濃度のみで殺傷作用を示した。
【0278】
【0279】
2.5、コンピュータ技術を採用してGS-CTPリンカーペプチドの抗-CD3 scFvとCD3分子との結合能力に対する影響を評価した
【0280】
コンピュータソフトウェアを採用してGS-CTPリンカーペプチドを含む抗-CD3 scFv VHに対して構造のモデリングを行い、抗-CD3 scFvとその抗原CD3のepsilon鎖の分子とのドッキングに対して空間配座のシミュレーションおよび予測を行った。
【0281】
二重抗体AB7K7における抗-Her2 scFvと抗-CD3 scFvとの間に位置するGS-CTPリンカーペプチド配列は(GGGGGGSGGGGSGGGGSSSSSKAPPPS)であり、前半はGSフレキシブルペプチド(GGGGGGSGGGGSGGGGS)で、後半はCTPリジッドペプチド(SSSSKAPPPS)であった。リジッドCTP部分(SSSSKAPPPS)は抗-CD3 scFv VHのN端に連結されている。phyre2ソフトウェアにより3次元構造をモデリングし、構造上で、CTPペプチドセグメントが抗-CD3 scFvのVHのCDR1領域をコーティングし(
図2-14)、CD3抗体とその抗原との結合を阻害するまたは不利にする可能性があった。GSリンカーペプチド(CTPを除去し、GSフレキシブルペプチドのみを含む)に連結された抗-CD3 scFvのVHは、phyre2ソフトウェアで3次元構造をモデリングし、GSリンカーペプチドがCDR領域から離れ(
図2-15)、抗原と抗体との結合に影響を及ぼすことがないことを発見した。GSリンカーペプチドがCDR領域に接近しても、その自体の柔軟性により、抗原と抗体との結合領域から自由に離れることができるため、抗原と抗体との結合に影響を及ぼすこともない。
【0282】
更に、Discovery Studioソフトウェアで抗-CD3 scFvとその抗原CD3のepsilon鎖の分子とのドッキング状況をシミュレーションした。二本鎖の抗-CD3 FVが抗-CD3 scFvの構造と高度に類似しているため、抗-CD3 scFの代わりに二本鎖の抗-CD3 FVを用いて構造のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果により、抗原CD3のepsilon鎖が抗-CD3 FvのVHのCDR2およびCDR3に結合するが、CDR1領域に結合しないことが分かり(
図2-16)、そのVHのCDR1領域にコーティングされたCTPは、抗-CD3 scFvと抗原との結合を干渉しないことを表すようであった。しかし、CD3分子が1つの複合体であり、1つのCD3のgamma鎖、1つのCD3のdelta鎖および2つCD3のepsilon鎖を含むことを考えると、該CD3分子がTCRおよびZeta鎖と共にT細胞受容体の複合体を構成した。抗-CD3 scFvのVHのCDR1にコーティングされたCTPペプチドセグメントは抗-CD3 scFvとその抗原CD3のepsilon鎖との結合を直接干渉しないが、CTPペプチドセグメントは、T細胞受容体の複合体のある構成タンパク質との空間構造での接触により、抗-CD3 scFvとその抗原CD3のepsilon鎖との結合に影響を間接的に及ぼす可能性があった。
【0283】
抗-CD3 scFvのVHのCDR1領域にコーティングされたCTPの存在により、抗-CD3 scFvとその抗原との結合親和性が大きく低下し、T細胞の過剰活性化によるサイトカインの大量の放出を引き起こすことがなく、いくつかのT細胞により媒介される不要な非特異的殺傷を回避する。
【0284】
実施例3、Anti-Her2×CD3二重特異性抗体のマウス移植腫瘍モデルにおける薬効学的研究
【0285】
3.1、NCGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト乳癌HCC1954細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0286】
Her2発現が陽性であるヒト乳癌HCC1954細胞を選択し、NCGマウスの皮下にヒトCIK細胞とHCC1954細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0287】
正常なヒトの末梢血を取り、密度勾配遠心法(Lymphoprep
TM、ヒトリンパ球分離液、STEMCELL)でヒトPBMC細胞を分離し、その後、RPMI-1640培養液に10%の不活化したFBS重懸濁を加え、且つ、終濃度1μg/mlのOKT3および250IU/mlのヒトIL-2を加え、3日間培養した後、300gで5min遠心してから液交換し、RPMI-1640に10%の不活化したFBSを加えて細胞を培養するとともに、250IU/mlのヒトIL-2を加え、その後、2日間毎に新鮮な培養液を添加し、10日目まで培養し、CIK細胞を収集した。7~8週齢の雌NCGマウス(GemPharmatech社から購入)を選択し、対数成長期にあるHCC1954細胞(ATCC)を収集し、5×10
6個のHCC1954細胞と5×10
5個のCIK細胞とを混合し、NCGマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重で7グループにランダムに分け、グループ毎に5匹であり、対応する薬剤をそれぞれ腹腔投与し、陽性対照グループおよびPBS対照グループにいずれも週に2回投与し、合計3回投与し、陽性対照グループに用量がそれぞれ1mg/kgおよび3mg/kgのHerceptin(Herceptin、Roche社)を投与し、PBS対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与した。投与グループに毎日二重抗体AB7K4およびAB7K7を投与し、投与量がそれぞれ0.1mg/kgおよび1mg/kgであり、合計10回投与した。投与当日を0日目と記し、電子式ノギスで腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、以下の式で腫瘍体積を計算し、
【数1】
且つ、以下の式により各投与グループの腫瘍成長抑制率を計算した。
【数2】
【0288】
図3-1に示すように、投与後の33日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1494.61±500.28mm
3であり、1mg/kgのHerceptin投与グループの平均腫瘍体積が1327.29±376.65mm
3であり、3mg/kgのHerceptin投与グループの平均腫瘍体積が510.49±106.07mm
3で、TGIが65.84%であり、PBS対照グループに対して著しい差がなかった。0.1mg/kgおよび1mg/kgのAB7K4投与グループの平均腫瘍体積がそれぞれ304.10±108.50mm
3および79.70±58.14mm
3であり、TGIがそれぞれ79.65%および94.67%であり、PBS対照グループに対していずれも著しい差(P<0.05)があった。0.1mg/kgおよび1mg/kgのAB7K7投与グループの平均腫瘍体積がそれぞれ385.82±95.41mm
3および209.98±51.74mm
3であり、TGIがそれぞれ74.19%および85.95%であり、PBS対照グループに対していずれも著しい差(P<0.05)があった。以上の結果により、異なる用量の二重抗体AB7K4およびAB7K7は、いずれも動物体内でヒト免疫細胞を活性化することにより腫瘍細胞の成長を抑制することができ、良好な抗腫瘍効果を示し、同じ1mg/kgの用量で、二重抗体の腫瘍抑制効果がモノクローナル抗体Herceptinよりも明らかに優れていることが分かった。
【0289】
3.2、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト乳癌HCC1954細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0290】
Her2発現が陽性であるヒト乳癌HCC1954細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト乳癌細胞HCC1954とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0291】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得した。7~8週齢の雌NPGマウス(Beijing Vitalstar Biotechnologyから購入)を選択し、対数成長期にあるHCC1954細胞(ATCC)を収集し、5×106個のHCC1954細胞と5×105個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。腫瘍が6日間成長した後、マウスを腫瘍体積および体重によって3グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する医薬をそれぞれ腹腔投与し、具体的には、AB7K7投与グループの用量がそれぞれ0.1mg/kgおよび1mg/kgであり、週に2回投与し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0292】
図3-2に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が821.73±201.82mm
3であり、0.1mg/kgのAB7K7投与グループの平均腫瘍体積が435.60±51.04mm
3で、TGIが50.83%であり、対照グループに対して著しい差がなかった。1mg/kgのAB7K7投与グループの平均腫瘍体積がそれぞれ40.98±12.64mm
3で、TGIが95.37%であり、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.01)があった。上記結果により、腫瘍が一定の大きさに成長してから二重抗体AB7K7を投与しても依然として良好な治療効果を有し、0.1mg/kgの低用量で50%の腫瘍抑制効果があり、1mg/kg投与グループの6匹のマウスのうち、4匹のマウスの腫瘍が完全に解消され、また、2匹の腫瘍体積も100mm
3よりも小さく、グループ分け時の体積よりも小さく(グループ分け時に該グループの平均腫瘍体積が161.37±18.98mm
3であった)、二重抗体AB7K7は良好な腫瘍治療の作用を有することが分かった。
【0293】
また、上記移植腫瘍モデルにおいて二重抗体AB7K7およびAB7K8の2種の投与頻度で腫瘍成長に対する抑制作用を更に考察した。上記方法によりCIK細胞を取得し、7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、5×106個のHCC1954細胞と5×105個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重によって6グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する医薬をそれぞれ腹腔投与した。具体的には、対照グループおよびHerceptin投与グループにいずれも週に2回投与し、Herceptinの投与量が3mg/kgであり、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与した。二重特異性抗体AB7K7の投与量が1mg/kgであり、AB7K8の投与量が0.7mg/kgであり、2種の投与頻度をそれぞれ設け、QDグループに毎日1回投与し、10日間連続して投与し、BIWグループに週に2回投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、上記式により各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0294】
図3-3に示すように、投与後の25日目、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1588.12±120.46mm
3であり、3mg/kgのHerceptin投与グループの平均腫瘍体積が361.72±134.70mm
3であり、AB7K7のQD投与グループおよびBIW投与グループの平均腫瘍体積がそれぞれ260.18±45.96mm
3および239.39±40.62mm
3であり、TGIがそれぞれ83.62%および84.93%であり、PBS対照グループに対していずれも極めて顕著な差(P<0.01)があり、AB7K8のQD投与グループおよびBIW投与グループの平均腫瘍体積がそれぞれ284.98±26.62mm
3および647.14±118.49mm
3であり、TGIがそれぞれ82.06%および59.25%であり、PBS対照グループに対していずれも極めて顕著な差(P<0.01)があった。上記結果から見られるように、二重特異性抗体AB7K7は、QDグループであってもBIWグループであっても、抗腫瘍効果がいずれもHerceptinよりも優れ、同じモル量で、QDグループのAB7K8およびAB7K7の腫瘍抑制効果が相当し、BIWグループのAB7K7はAB7K8よりも顕著に優れた抗腫瘍効果を示し、これは、AB7K8がBiTE構成の二重特異性抗体であり、Fcドメインがなく、AB7K7がAB7K8よりも半減期がより長いためであると推測され、臨床投与頻度が低下してより良好な治療効果が得られることが予測できる。
【0295】
3.3、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト卵巣癌SK-OV-3細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0296】
Her2発現が陽性であるヒト卵巣癌SK-OV-3細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とSK-OV-3細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0297】
正常なヒトの末梢血を取り、密度勾配遠心法でヒトPBMC細胞を分離し、その後、McCoy’s 5A培養液に10%の不活化したFBSを加えて重懸濁し、且つ、終濃度1μg/mlのOKT3および250IU/mlヒトIL-2を加え、3日間後に、300gで5min遠心して上清を除去し、RPMI-1640に10%の不活化したFBSを加えて細胞を重懸濁するとともに、250IU/mlのヒトIL-2を加えて培養した。2日間毎に新鮮な培養液を添加し、10日目まで培養し、CIK細胞を収集した。7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、対数成長期にあるSK-OV-3細胞(中科院上海細胞バンクから購入)を収集し、3×106個のSK-OV-3細胞と3×105個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。接種してから1h後に、マウスを体重で7グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する医薬をそれぞれ腹腔投与し、HerceptinおよびAB7K7投与グループにいずれも1mg/kg、0.2mg/kgおよび0.04mg/kgそれぞれ投与し、投与頻度がいずれも週に2回投与し、対照グループに同じ体積のPBSを投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0298】
図3-4に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が834.09±45.64mm
3であり、Herceptinの1mg/kg、0.2mg/kgおよび0.04mg/kg用量での平均腫瘍体積がそれぞれ644.84±58.22mm
3、884.95±38.63mm
3および815.79±78.39mm
3であり、AB7K7の全ての投与グループの腫瘍はいずれも完全に解消された。上記結果により、卵巣癌SK-OV-3モデルにおいて、AB7K7が極めて低用量の0.04mg/kgでも依然として腫瘍を完全に解消することができ、極めて良好な抗腫瘍効果を示すことが分かった。
【0299】
3.4、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒト結腸癌細胞HT-29細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0300】
Her2発現が陽性であるヒト結腸癌HT-29細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とHT-29細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0301】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得した。7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、対数成長期にあるHT-29細胞(中科院上海細胞バンクから購入)を収集し、3×106個のHT-29細胞と3×106個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。接種してから1h後に、マウスを体重によって5グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する医薬をそれぞれ腹腔投与し、具体的には、Herceptinの投与量が3mg/kgであり、AB7K7投与グループの用量がそれぞれ3mg/kg、1mg/kgおよび0.3mg/kgであり、全ての投与グループにいずれも週に2回投与し、対照グループに同じ体積のPBSを投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0302】
図3~5に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1880.52±338.26mm
3であり、3mg/kgのHerceptinの平均腫瘍体積が1461.36±177.94mm
3であり、AB7K7の3mg/kg、1mg/kgおよび0.3mg/kg用量の投与グループにおける平均腫瘍体積がそれぞれ13.94±7.06mm
3、26.31±10.75mm
3および10.47±6.71mm
3であり、ここで、0.3mg/kg投与グループで4匹のマウスの腫瘍が完全に解消され、1mg/kg投与グループで3匹のマウスの腫瘍が完全に解消され、3mg/kg投与グループで4匹のマウスの腫瘍が完全に解消された。上記結果により、結腸癌HT-29モデルにおいて、Herceptinはこの腫瘍モデルに対してほぼ薬効がないが、AB7K7は3つの用量でいずれもマウスの腫瘍を完全に解消し、極めて低い用量でも良好な抗腫瘍効果を示すことが分かった。
【0303】
3.5、CD34免疫が再構成されたNPGマウスにヒト乳癌HCC1954を接種した移植腫瘍モデル
【0304】
Her2発現が陽性であるヒト乳癌HCC1954細胞を選択し、CD34免疫が再構成されたNPGマウスの皮下にヒト乳癌HCC1954細胞を接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0305】
CD34陽性選別ビーズ(Miltenyi Biotecから購入)を用いて新鮮な臍帯血からCD34陽性の造血幹細胞を集め、3~4週齢の雌NPGマウス(Beijing Vitalstar Biotechnologyから購入)を選択し、CD34陽性の造血幹細胞を尾静脈に注射し、マウス体内でヒトの免疫系を再構築した。16週間後、マウスの後眼窩静脈叢から採血してフローサイトメトリーを行い、ヒトCD45の割合が15%よりも大きいマウスを免疫の再構築が成功したマウスと見なした。対数成長期にあるHCC1954細胞を収集し、5×106個のHCC1954細胞を免疫が再構成されたマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重によって3グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、用量1mg/kgのAB7K7およびHerceptinをそれぞれ腹腔投与し、対照グループに同じ体積のPBSを投与し、週に2回投与し、合計6回投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0306】
図3-6に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が475.23±58.82mm
3であり、Herceptin投与グループの平均腫瘍体積が293.27±66.35mm
3で、TGIが38.29%であり、対照グループに対して著しい差がなかった。AB7K7投与グループの平均腫瘍体積が0.67±0.67mm
3で、TGIが99.86%であり、全ての腫瘍がほとんど解消され、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.01)があった。以上の結果により、二重抗体AB7K7がCD34免疫再構築モデルにおいて極めて良好な抗腫瘍効果を有することが分かった。
【0307】
3.6、PBMC免疫が再構成されたNPGマウスにヒト乳癌HCC1954細胞を接種した移植腫瘍モデル
【0308】
Her2発現が陽性であるHCC1954細胞を選択し、PBMC免疫が再構成されたNPGマウスにヒト乳癌HCC1954細胞を接種したマウス移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0309】
正常なヒトの末梢血を取り、密度勾配遠心法でヒトPBMC細胞を分離し、5~6週齢の雌NPGマウスを選択し、ヒトPBMC細胞を腹腔に注射し、マウス体内でヒト免疫系を再構築した。PBMCを注射してから7日間後に、対数成長期にあるHCC1954細胞を収集し、5×106個のHCC1954細胞をマウスの右側背部皮下に接種した。PBMCを注射してから13日間後に、後眼窩静脈叢から採血してフローサイトメトリーを行い、human CD45の割合が15%よりも大きいマウスを免疫の再構築が成功したマウスと見なした。PBMCを注射してから14日間後に、免疫が成功したマウスを腫瘍体積および体重によって2グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、用量1mg/kgのAB7K7を腹腔投与し、対照グループにPBSを投与し、週に3回投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0310】
図3-7に示すように、投与後の23日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1224.05±224.39mm
3であり、AB7K7投与グループの平均腫瘍体積が32.00±0.00mm
3で、TGIが97.41%であり、全ての腫瘍がいずれも解消され、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.001)があった。以上の結果により、二重機能特異性抗体AB7K7がPBMC免疫再構築モデルにおいて極めて良好な抗腫瘍効果を有することが分かった。
【0311】
実施例4、Anti-Her2×CD3二重特異性抗体の安全性の評価
【0312】
4.1、二重特異性抗体は、Her2発現が陰性である腫瘍細胞に対する非特異的殺傷を媒介することができなかった
【0313】
Her2発現が陰性であるヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞を選択し、NCGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおいて二重抗体が腫瘍成長を抑制するか否かを観察した。
【0314】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得した。7~8週齢の雌NCGマウスを選択し、対数成長期にあるRaji細胞(中科院上海細胞バンクから購入)を収集し、5×106個のRaji細胞と2×106個のCIK細胞とを混合し、NCGマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重で3グループにランダムに分け、グループ毎に5匹であり、投与グループに用量1mg/kgのAB7K4およびAB7K7をそれぞれ腹腔投与し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、毎日1回投与し、10日間連続して投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0315】
図4-1に示すように、投与後の25日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が2439.88±193.66mm
3であり、AB7K4投与グループの平均腫瘍体積が2408.81±212.44mm
3であり、AB7K7投与グループの平均腫瘍体積が2598.11±289.35mm
3であり、2つの投与グループ平均腫瘍体積が対照グループに対していずれも差がなかった。以上の結果により、二重抗体AB7K4およびAB7K7は、Her2発現が陰性である細胞株でいずれも非特性殺傷が観察されず、AB7K4およびAB7K7が体内でT細胞の非標的組織に対する殺傷(即ち、二重特異性抗体と対応する標的抗原との結合に一意に依存する)を媒介せず、オフターゲット毒性がなく、安全性が高かったことが分かった。
【0316】
4.2、二重特異性抗体の腫瘍細胞に対する殺傷がT細胞の活性化に依存した
【0317】
Her2発現が陽性であるヒト乳癌HCC1954細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒト乳癌HCC1954細胞を単独で接種した移植腫瘍モデルにおいて二重抗体が腫瘍成長を抑制するか否かを観察した。
【0318】
7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、対数成長期にあるHCC1954細胞を収集し、5×106個のHCC1954細胞とMatrigelマトリゲル(Corning、品番:354234)とを体積比1:1で均一に混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。腫瘍が6日間成長した後、マウスを腫瘍体積および体重によって3グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、投与グループに用量3mg/kgのHerceptinおよび1mg/kgのAB7K7をそれぞれ腹腔投与し、対照グループに同じ体積のPBSを投与し、週に2回投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0319】
図4-2に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1311.35±215.70mm
3であり、Herceptin投与グループの平均腫瘍体積が273.98±60.10mm
3であり、AB7K7投与グループの平均腫瘍体積が1243.20±340.31mm
3であり、対照グループに対して差がなかった。以上の結果により、AB7K7がヒト免疫細胞の存在がない場合にHCC1954皮下腫瘍の成長を抑制しないことで、二重抗体AB7K7は腫瘍細胞を殺傷できるために免疫エフェクター細胞の媒介を介する必要があることを表し、Herceptinのように主にFcγRにより媒介されたADCCまたはCDC効果に依存して腫瘍細胞を殺傷するのではなく、AB7K7に含まれるFc変異体がFcγRに結合できないことが証明され、その受容体FcγRの広範な発現によるT細胞の全身性活性化を媒介することを回避できるため、薬剤の安全性がより高いことが分かった。
【0320】
4.3、二重特異性抗体の正常なカニクイザル対する毒性の評価
【0321】
3~4歳の雌の成年カニクイザル(広州相観生物科技有限公司から購入)を選択し、体重が3~4kgで、3グループに分け、グループ毎に1匹とし、それぞれが溶媒対照グループ、AB7K7投与グループおよびAB7K8投与グループであった。投与方式は、ペリスタポンプで1h静脈点滴し、それぞれ0日目(D0)、7日目(D7)、21日目(D21)および28日目(D28)に投与し、合計4回投与し、薬剤用量が逓増したことであった。それと同時に、毎週動物の体重を量った。投与量および体積は以下の表4-1に示すとおりであった。
【0322】
D0に投与した後、AB7K8投与グループのカニクイザルは、傾眠、瞳孔が縮小する現象が現れ、翌日正常に回復し、他のグループに異常がなかった。D7に投与した後、AB7K7投与グループのカニクイザルは、投与してから2~3h後に嘔吐症状が現れ、投与の翌日正常に回復し、他のグループに異常がなかった。D21に投与した後、AB7K7投与グループのカニクイザルは、投与してから3h後に食物を嘔吐する症状が現れ、ゼリー状の糞便を排泄し、AB7K8投与グループは、投与してから1h後に食物を嘔吐する症状が現れ、2グループのカニクイザルは、投与の翌日全て正常に回復した。D28に投与してから40~50min後、AB7K7およびAB7K8投与グループはいずれも嘔吐症状が現れ、3h後に動物が排出した糞便にいずれもゼリー状の粘着液があり、6h後、AB7K7投与グループの動物は魚の臭みがある水のような糞便を排出した。24h後、動物はいずれも正常に回復し、飲食が正常となった。カニクイザルの体重変化は
図4-3に示すように、矢印が投与時間を表し、各グループの体重がいずれも大きく変化せず、正常な生理値範囲内で変動していることが見られた。
【0323】
【0324】
本実験の過程で観察された異なる程度の下痢は、腸管内の関連受容体の発現に関連する可能性があり、二重抗体がHer1/Her2またはHer2/Her3のヘテロ二量体を抑制した後に腸管の塩素イオンのアンバランスを引き起こすことによるものと推測され、薬理作用の延伸に属し、投与してから24h後に正常に回復することができった。AB7K7が3mg/kgという高い投与量に達すると、カニクイザルは依然として良好な耐性を有し、マウスの薬効実験の結果により、低用量のAB7K7が良好な抗腫瘍効果を表し、AB7K7の治療ウィンドウが広く、安全性が高いことを示すことが分かった。
【0325】
実施例5、Anti-Her2×CD3抗体の薬物動態学研究
【0326】
5.1、二重抗体AB7K7のSDラット体内での薬物動態学実験
【0327】
AB7K7を1mg/kgの用量で尾静脈投与の方式により4匹の健康なSDラット(SHANGHAI SLAC LABORATORY ANIMALから購入)に注射した。採血時点が、それぞれ1h、3h、6h、24h、72h、96h、120h、168h、216hおよび64hであった。各時点で一定量の全血を採取し、血清を分離した後、2種のELISA方法で血清中の薬品濃度を測定した。
【0328】
方法1、抗AB7K7抗体A(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が0.5μg/mLであった。AB7K7を100ng/mL、50ng/mL、25ng/mL、12.5ng/mL、6.25ng/mL、3.125ng/mLおよび1.56ng/mLで設定して検量線を確立した。HRPで抗AB7K7抗体B(安源医薬科技(上海)有限公司、anti-herceptin-HRP)をマークし、使用濃度が1:5000であり、最後に、TMBで発色した。PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表5-1に示すとおりであった。
【0329】
方法2、SDラットの血清中の薬品濃度を検出した。抗AB7K7抗体A(安源医薬科技(上海)有限公司、 mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が0.5μg/mLであった。AB7K7を5ng/mL、2.5ng/mL、1.25ng/mL、0.625ng/mL、0.3125ng/mL、0.156ng/mLおよび0.078ng/mLで設定して検量線を確立した。マウス抗ヒトIgG Fc-HRP(安源医薬科技(上海)有限公司)を1:5000で加え、最後に、TMBで発色した。PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表5-2に示すとおりであった。
【0330】
図5-1は、2種の異なる検出方法でAB7K7のラット体内での血中濃度を検出することを示し、2種の異なる検出方法で血中のAB7K7の濃度を検出し、得た血中濃度はほぼ一致し、計算した薬物動態学パラメータがほぼ同じであり、AB7K7が体内で完全な分子の形式で代謝され、その生物学的機能が確保できることを意味した。
【0331】
【0332】
【0333】
5.2、二重抗体AB7K7のNPGモデルマウス体内での薬物動態学実験
【0334】
NPGマウス(Beijing Vitalstar Biotechnologyから購入)に投与する1週間前にHCC1954細胞(中科院中国科学院生化学細胞生物学研究所から購入)を接種し、接種密度が3.5×106/匹であった。投与する2日前にCIK細胞を蘇生させ、24h培養してから細胞を収集してマウス体内に静脉注射した。マウスを3グループにランダムに分け、グループ毎に4匹とした。3つの投与グループ投与量が、それぞれ0.3mg/kg、1mg/kgおよび3mg/kgであった。採血時点がそれぞれ1h、3h、6h、24h、48h、72h、96h、120h、168h、216hおよび264hであった。各時点で一定量の全血を採取し、血清を分離した後、ELISA方法で血清中の薬品濃度を測定した。
【0335】
抗AB7K7抗体A(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が0.5μg/mLであった。AB7K7を100ng/mL、50ng/mL、25ng/mL、12.5ng/mL、6.25ng/mL、3.125ng/mLおよび1.56ng/mLで設定して検量線を確立した。HRPで抗AB7K7抗体B(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)をマークし、使用濃度が1:5000であり、最後に、TMBで発色した。PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表5-3に示すとおりであった。表5-3から見られるように、AB7K7のNPGモデルマウス体内での薬物動態学パラメータは、SDラット体内での薬物動態学パラメータと数値で大きな差がなかった。
【0336】
【0337】
5.3、二重抗体AB7K8のSDラット体内での薬物動態学実験
【0338】
AB7K8をそれぞれ1mg/kgおよび3mg/kgの用量で尾静脈投与の方式により3匹の健康なSDラットに注射した。採血時点が、それぞれ0.25h、0.5h、1h、2h、3h、4h、5hおよび7hであった。各時点で一定量の全血を採取し、血清を分離した後、ELISA方法で血清中の薬品濃度を検出した。
【0339】
抗AB7K8抗体C(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が2.5μg/mLであった。AB7K8を25ng/mL、12.5ng/mL、6.25ng/mL、3.125ng/mL、1.56ng/mLおよび0.78ng/mLで設定して検量線を確立した。HRPで抗-hisの抗体(安源医薬科技(上海)有限公司)をマークし、使用濃度が1:5000であり、最後に、TMBで発色した。PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表5-4に示すとおりであった。
【0340】
AB7K8は、2種の用量で、得られた薬物動態学パラメータT1/2がほぼ一致し、そのSDラット体内で線形代謝動態学を示していることが分かった。AB7K8はFcを含まないため、そのT1/2が非常に短く、AB7K7と比べて約20倍短くなった。
【0341】
【0342】
5.4、二重抗体AB7KのSDラット体内での薬物動態学実験
【0343】
AB7Kを0.8mg/kgの用量で尾静脈投与の方式により4匹の健康なSDラットに注射した。採血時点が、それぞれ2h、24h、48h、72h、96h、120h、144h、168h、216hおよび264hであった。各時点で一定量の全血を採取し、血清を分離した後、2種のELISA方法で血清中の薬品濃度を測定した。
【0344】
方法1、抗AB7K抗体A(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が1μg/mLであった。AB7Kを20ng/mL、10ng/mL、5ng/mL、2.5ng/mL、1.25ng/mL、0.625ng/mLおよび0.3125ng/mLで設定して検量線を確立した。25ng/mLのビオチンでマークされたヒトCD3E&CD3D(Acro、品番CDD-H82W0)を加え、1hインキュベートしてから1:500で希釈されたHRPマークのストレプトアビジン(BD Pharmingen、品番554066)を加え、最後に、TMBで発色した。PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表5-5に示すとおりであった。
【0345】
【0346】
方法2、抗AB7Kの抗体A(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が1μg/mLであった。AB7Kを20ng/mL、10ng/mL、5ng/mL、2.5ng/mL、1.25ng/mL、0.625ng/mLおよび0.3125ng/mLで設定して検量線を確立した。マウス抗ヒトIgG Fc-HRP(1:10000で希釈)(安源医薬科技(上海)有限公司)を加え、1hインキュベートし、最後に、TMBで発色した。
【0347】
図5-2は、2種の異なる検出方法でAB7Kのラット体内での血中濃度を検出することを示し、結果により、2種の検出方法で測定した結果の差が大きいことが分かった。曲線の最初の2つの点(2h、1D)の濃度はまだ近かったが、翌日以降、2種の方法で測定した濃度の差が大きくなり、抗-CD3 scFvと抗-Her2抗体の重鎖間のリンカーペプチドが切断だれた可能性があると推測された。AB7Kは、体内での構造が安定せず、その生物学的機能を発揮できなかった一方、改良されたAB7K7は体内で完全な形式で代謝でき、その生物学的機能を正常に発揮することができた。
【0348】
5.5、二重抗体AB7K7およびAB7K8のカニクイザル体内での薬物動態学実験
【0349】
カニクイザル(広州相観生物科技有限公司から購入)を3グループに分け、グループ毎に1匹とし、性別が雌で、体重が3~4kgであった。グループ1(G1-1)はブランクグループであり、グループ2(G2-1)はAB7K7投与グループで、投与量が0.3mg/kgであり、グループ3(G3-1)はAB7K8投与グループで、投与量が0.2mg/kgであった。採血時点がそれぞれ15min、1h、3h、6h、24h、48h、72h、96h、144h、192h、240hおよび288hで、合計13個の時間であった。採血して血清を収集し、-80℃で凍結保存し、その後、ELISA方法で血清中の薬品濃度を測定した。
【0350】
抗AB7K7抗体A(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)を用いてプレートをコーティングし、プレートコーティング濃度が0.5μg/mLであった。AB7K7を100ng/mL、50ng/mL、25ng/mL、12.5ng/mL、6.25ng/mL、3.125ng/mL、1.56ng/mLで設定して検量線を確立した。HRPで抗AB7K7抗体B(安源医薬科技(上海)有限公司、mouse-anti-herceptin)をマークし、使用濃度が1:5000であり、最後に、TMBで発色した。PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表5-6に示すとおりであった。
【0351】
図5-3は、AB7K7のラット体内での血中濃度を示し、AB7K7の正常なカニクイザル体内でのT
1/2が僅か8時間程度であった。AB7K8は、血中濃度-時間曲線における点が少なすぎるため、薬物動態学パラメータを計算することができなかった。しかし、血中濃度-時間曲線から見られるように、正常なカニクイザル体内でAB7K7はAB7K8よりも半減期がかなりなかった。
【0352】
【0353】
5.6、ELISA技術により二重特異性抗体のFcRnと結合する能力を評価した
【0354】
各抗体をPBS溶液で10μg/mlの濃度に希釈し、96ウェルプレートに入れて100μl/ウェルとし、4℃一晩コーティングした。その後、1%の脱脂粉乳を用いて室温で1h密閉した。それと同時に、それぞれpH6.0および7.0の希釈液を用いてビオチンbiotinでマークされたFcRnタンパク質(ACRO Biosystem、品番FCM-H8286)を希釈し、4倍の勾配で希釈し、合計11個の濃度勾配を有した。同じpHのPBSTで96ウェルプレートをそれぞれ洗浄し、同じpHの希釈液で希釈された二重特異性抗体を加え、抗体を加えない対照ウェルを設け、室温で1hインキュベートした。同じpHのPBST溶液でプレートを洗浄し、ストレプトアビジン-HRP(BD、品番554066)を96ウェルプレートに入れて100μl/ウェルとし、室温で0.5hインキュベートした。その後、96ウェルプレートをPBSTで洗浄し、TMBを加えて100μl/ウェルとし、室温で15min発色させ、その後、0.2MのH2SO4を加えて発色反応を終了させた。プレートリーダでA450nm~620nmの吸光値を検出した。ソフトウェアOriginPro 8により分析し、二重特異性抗体のFcRnに結合するEC50値を計算した。
【0355】
結果により、異なるpH条件で各抗体のFcRnとの結合能力が異なることが分かり、体内PKのデータと合わせ、二重特異性抗体AB7K7の半減期がAB7Kよりも長いが、Herceptinよりも短いと分析でき、これは、臨床応用に更に寄与する可能性がある(
図5-4および
図5-5)。表5-7および表5-8は、それぞれpH6.0および7.0時の各抗体のFcRnとの結合能力の測定結果を示した。
【0356】
【0357】
【0358】
実施例6、scFv1-scFv2-Fc構成の二重特異性抗体の調製
【0359】
上記6種の抗-Her2×CD3二重特異性抗体に対する多面的な研究の結果により、AB7K7というscFv1-scFv2-Fc構成の二重特異性抗体は、調製しやすく、精製方法が簡単かつ効率的で、且つ、調製および保存過程で安定性が良いという利点を有することを確定できた。より好ましくは、正常細胞に対する非特異的殺傷作用が微弱であり、制御されたエフェクター細胞の過剰な活性化による可能性がある毒副作用等を有するという顕著な優位性を有し、ドラッガビリティが良好であった。
【0360】
実施例1における二重特異性抗体AB7K7の構成設計および調製方法を参照し、一連の免疫エフェクター細胞抗原CD3分子および腫瘍関連抗原を標的とする二重特異性抗体分子を構築し、このような二重特異性抗体分子は、2本の同じポリペプチド鎖でFc断片のヒンジ領域の鎖間ジスルフィド結合を介して4価の相同二量体を結合して形成し、各本のポリペプチド鎖は、N端からC端まで、抗-TAA scFv、リンカーペプチド、抗-CD3 scFv、およびFc断片で順に構成され、以下、各二重特異性抗体の各構造単位の分子組成について具体的に説明した。
【0361】
ここで、前記腫瘍関連抗原は、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD38、CD39、CD40、CD47、CD52、CD73、CD74、CD123、CD133、CD138、BCMA、CA125、CEA、CS1、DLL3、DLL4、EGFR、EpCAM、FLT3、gpA33、GPC-3、Her2、MEGE-A3、NYESO1、PSMA、TAG-72、CIX、葉酸塩結合タンパク質、GD2、GD3、GM2、VEGF、VEGFR2、VEGFR3、カドヘリン(Cadherin)、インテグリン(Integrin)、メソテリン(Mesothelin)、Claudin18、αVβ3、α5β1、ERBB3、c-MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、B7タンパク質ファミリー、ムチンファミリー(Mucin)、FAP、およびテネイシン(Tenascin)を含んでもよいが、これらに限定されない。好ましくは、前記腫瘍関連抗原はCD19、CD20、CD22、CD30、CD38、BCMA、CS1、EpCAM、CEA、Her2、EGFR、CA125、Mucin1、GPC-3、およびMesothelinであった。
【0362】
表6-1は、いくつかの好ましい腫瘍関連抗原に対する第1の一本鎖FvのVHドメインおよびその相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)のアミノ酸配列と、VLドメインおよびその相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列とを列挙し、そのCDR領域に含まれるアミノ酸残基は、Kabatルールに基づいて定義された。ここで、抗-TAA scFvのVHとVLとの間のリンカーペプチドアミノ酸組成は(GGGGS)nであり、n=1、2、3、4、または5であった。
【0363】
【0364】
ここで、抗-CD3 scFvは、体外FACS結合分析測定において、約50nMよりも大きい、または100nMよりも大きい、または300nMよりも大きい、または500nMよりも大きいEC50値でエフェクター細胞に結合し、より好ましくは、前記二重特異性抗体の第2の一本鎖FvヒトCD3に結合できるだけでなく、更にカニクイザルまたはアカゲザルのCD3に特異的に結合することもできた。
【0365】
表6-2において、いくつかの好ましい抗-CD3 scFvのVHドメインおよびその相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)のアミノ酸配列と、VLドメインおよびその相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列とを列挙し、そのCDR領域に含まれるアミノ酸残基はKabatルールに基づいて定義される。ここで、抗-CD3 scFvのVHとVLとの間のリンカーペプチドアミノ酸組成が(GGGGS)nであり、n=1、2、3、4、または5であった。
【0366】
【0367】
ここで、抗-TAA scFvと抗-CD3 scFvとを連結するリンカーペプチドはフレキシブルペプチドおよびリジッドペプチドで構成され、好ましくは、フレキシブルペプチドのアミノ酸組成の構造一般式はGxSy(GGGGS)zであり、ここで、x、yおよびzは0以上の整数であり、x+y+z≧1であった。リジッドペプチドは、天然ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβ-サブユニットのカルボキシル基末端の118~145-位アミノ酸組成の全長配列(例えば、SEQ ID NO:257に示す)またはその裁断された断片に由来し、好ましくは、前記CTPリジッドペプチド組成はSSSSKAPPPS(CTP1)であった。表6-3において、抗-TAA scFvと抗-CD3 scFvとを連結するいくつかの好ましいリンカーペプチドのアミノ酸配列を列挙した。
【0368】
【0369】
ここで、Fc断片は、直接またはリンカーペプチドを介して抗-CD3 scFvに連結され、リンカーペプチドは1~20個のアミノ酸を含み、好ましくは、Gly(G)、Ser(S)、Ala(A)およびThr(T)といういくつかのアミノ酸から選ばれ、より好ましくは、Gly(G)およびSer(S)から選ばれ、最も好ましくは、前記リンカーペプチドの組成が(GGGGS)nであり、n=1、2、3、または4であった。
【0370】
Fc断片は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の重鎖定常領域から選ばれることが好ましく、特に、ヒトIgG1、またはIgG4の重鎖定常領域から選ばれ、且つ、Fcは、二重特異性抗体分子の性質を修飾するための突然変異したものであり、例えば、ヒトFcγRs(FcγRI、FcγRIIa、またはFcγRIIIa)およびC1qの少なくとも1種に対して低下した親和性を表し、減少したエフェクター細胞機能または補体機能を有した。また、Fc断片は、他の1種または複数種の特性(例えば、FcRn受容体と結合する能力、抗体グリコシル化、または抗体荷電不均一性等)を改変させるアミノ酸置換を更に含んでもよい。
【0371】
表6-4において、1つまたは複数のアミノ酸突然変異を有するいくつかのFc断片のアミノ酸配列を列挙した。
【0372】
【0373】
表6-5において、いくつかの好ましい二重特異性抗体のアミノ酸および対応するヌクレオチド配列を例示的に列挙した。
【0374】
【0375】
実施例7、Anti-GPC-3×CD3二重特異性抗体のマウス移植腫瘍モデルにおける薬効学的研究
【0376】
7.1、NOD-SCIDマウスの皮下にヒトPBMC細胞とヒト肝癌Huh-7細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0377】
GPC-3発現が陽性であるヒト肝癌Huh-7細胞を選択し、NOD-SCIDマウスの皮下にヒトPBMC細胞とHuh-7細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0378】
正常なヒトの末梢血を取り、密度勾配遠心法でヒトPBMC細胞を分離し、7~8週齢の雌NOD-SCIDマウス(上海霊暢生物科技有限公司から購入)を選択し、対数成長期にあるHuh-7細胞を収集した。3×106個のHuh-7細胞と3×106個のPBMC細胞とを混合し、NOD-SCIDマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重で2グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、投与グループに1mg/kgのAB9Kを腹腔投与し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、毎日1回投与し、6日間連続して投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0379】
図6-1に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1311.03±144.89mm
3であり、AB9K投与グループの平均腫瘍体積が60.83±12.63mm
3で、TGIが95.36%であり、1匹のマウスの腫瘍が完全に解消され、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.01)があった。以上の結果により、PBMCにおける大部分が活性化されていない原始T細胞であり、二重抗体AB9Kは動物体内で原始T細胞を活性化させ、T細胞と標的細胞Huh-7との距離を近接させることができ、これにより、T細胞は腫瘍細胞を直接殺傷して腫瘍の成長を抑制することができ、AB9Kは1mg/kgの用量で非常に良好な抗腫瘍効果を有することが分かった。
【0380】
7.2、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0381】
GPC-3発現が陰性であるヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内性腫瘍抑制効果を観察した。
【0382】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得し、7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、対数成長期にあるRaji細胞を収集し、5×106個のRaji細胞と2×106個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重で3グループにランダムに分け、グループ毎に5匹であり、投与グループに用量1mg/kgのAB9Kを腹腔投与し、対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、毎日1回投与し、10日間連続して投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0383】
結果は
図6-2に示すように、投与してから26日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が2636.66±196.62mm
3であり、AB9K投与グループの平均腫瘍体積が2739.57±220.13mm
3であり、対照グループに対して著しい差がなかった。以上の結果により、二重抗体AB9Kは、GPC-3発現が陰性である細胞株で非特異的殺傷が観察されず、二重抗体が体内でT細胞の非標的組織に対する殺傷を媒介せず、医薬毒性がなく、安全性が高いことを示すことが分かった。
【0384】
7.3、CD34免疫が再構成されたNPGマウスにヒト肝癌Huh-7細胞を接種した移植腫瘍モデル
【0385】
GPC-3発現が陽性であるヒト肝癌Huh-7細胞を選択し、CD34免疫が再構成されたNPGマウスの皮下にヒト肝癌Huh-7細胞を接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果であるを観察した。
【0386】
実施例3.5における方法によりCD34免疫が再構成されたNPGマウスを調製した。対数期にあるHuh-7細胞を収集し、2.5×106個のHuh-7細胞を免疫が再構成されたマウスの右側背部皮下に接種した。接種してから4日間後、マウスを腫瘍体積および体重で2グループにランダムに分け、グループ毎に7匹とし、投与グループに1mg/kgのAB9Kを腹腔投与し、PBS対照グループに同じ体積のPBS溶液を投与し、実験が終了したまで毎日1回投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0387】
図6-3に示すように、投与後の21日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が2102.84±275.71mm
3であり、1mg/kgのAB9K投与グループの平均腫瘍体積が325.01±282.21mm
3で、TGIが86.53%であり、4匹のマウスの腫瘍が完全に解消され、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.01)があった。以上の結果により、二重抗体AB9KがCD34免疫再構築モデルにおいて極めて良好な抗腫瘍効果を有することが分かった。
【0388】
実施例8、Anti-CD20×CD3二重特異性抗体の体外生物学的機能の評価およびマウス移植腫瘍モデルにおける薬効学的研究
【0389】
8.1、フローサイトメトリー法を利用してAB2KのCD20陽性腫瘍細胞との結合活性を検出した
【0390】
Raji細胞(中科院細胞バンクから購入)を培養し、遠心により細胞を収集して1%のPBSBで重懸濁し、細胞密度を2×106個/mlに調整し、96ウェルプレートに置き、ウェル毎に100μl(2×105個の細胞)とした。その後、希釈した一連の濃度の二重特異性抗体を加え、4℃で1hインキュベートし、遠心して上清を取り除き、1%のBSAのPBS溶液(PBSB)で3回洗浄し、希釈したAF488で標識されたヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson Immuno Research Inc.,品番109-545-088)またはマウス抗6×his IgG抗体(R&D Systems、品番IC050P)を加え、4℃で遮光して1hインキュベートし、遠心して上清を取り除き、1%のPBSBで2回洗浄し、更にウェル毎に100μlの1%のパラホルムアルデヒドで重懸濁し、フローサイトメーターで信号強度を検出した。また、平均蛍光強度をY軸とし、抗体濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPadにより分析し、AB2KのRaji細胞に結合するEC50値を計算した。
【0391】
図7-1に示すように、AB2KはCD20陽性細胞と良好に結合することができ、その信号強度が抗体濃度に比例し、AB2KのRaji細胞に結合するEC
50値を約69.97nMと計算した。
【0392】
8.2、AB2Kがエフェクター細胞によるCD20陽性腫瘍細胞の標的殺傷を媒介した
【0393】
正常に培養したRaji-luc細胞(Beijing Biocytogen社から購入)、細胞密度を1×105個/mlに調整し、96ウェル白色プレートに入れて40μl/ウェルとした。それと同時に、一連の勾配のAB2K抗体を希釈し、上記96ウェル白色プレートに入れ、CIKの細胞密度を5×105/mlに調整し、96ウェル白色プレートに入れて40μl/ウェルとし、エフェクター-標的比E:T=5:1とし、37℃で24h培養した。24h後に、白色プレートを取り出し、ウェル毎に100μlのOne-Glo(Promega、品番E6120)溶液を加え、室温で少なくとも3min置いた。プレートリーダでルミネセンス値を検出した。蛍光強度をY軸とし、抗体濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPadにより分析し、AB2KのRaji-luc細胞を殺傷するEC50値を計算した。
【0394】
図7-2に示すように、AB2Kのエフェクター細胞を媒介してRaji-luc細胞を殺傷するEC
50は42.8ng/mlのみであり、更に標的点特異性を有し、陰性対照としてのAB7K7のEC
50は229.5ng/mlであり、Raji-luc細胞に対してほぼ殺傷作用がなかった。
【0395】
8.3、レポータージーン細胞株で二重特異性抗体のT細胞を活性化する能力を評価した
【0396】
NFAT REレポータージーンを含むJurkat T細胞(BPS Bioscience、品番60621)は、二重特異性抗体とCD20陽性Raji細胞とが同時に存在する場合にルシフェラーゼを過発現することができ、ルシフェラーゼの活性を検出することによりJurkat T細胞の活性化程度を定量した。二重特異性抗体の濃度をX軸とし、フルオレセイン信号をY軸とし、4パラメータ曲線をフィッティングした。
【0397】
図7-3に示すように、AB2KはJurkat NFATRE Luc細胞を特異的に活性化することができ、EC
50値が0.2006μg/mlであり、且つ、その濃度が信号強度に比例し、陰性対照としてのAB7K7はT細胞を活性化する能力をほぼ持たない。
【0398】
8.4、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0399】
CD20発現が陽性であるヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Raji細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0400】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得し、7~8週齢の雌NPGマウス(Beijing Vitalstar Biotechnologyから購入)を選択し、対数成長期にあるRaji細胞を収集し、4×106個のRaji細胞と8×105個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。1h後、マウスを体重で5グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する医薬をそれぞれ腹腔投与し、具体的には、全ての投与グループにいずれも週に2回投与し、Rituxan(Rituxan、Roche社製薬)および二重機能抗体AB2Kをそれぞれ1mg/kgおよび0.1mg/kg投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0401】
図7-4に示すように、投与してから24日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1766.84±155.62mm
3であり、1mg/kgのRituxan投与グループの平均腫瘍体積が647.92±277.11mm
3で、TGIが63.33%であり、対照グループに対して顕著な差(P<0.01)があり、0.1mg/kgのRituxan投与グループの平均腫瘍体積が1893.81±186.99mm
3であり、薬効がなく、AB2Kの1mg/kg投与グループの平均腫瘍体積が116.18±39.50mm
3で、TGIが93.42%であり、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.01)があり、AB2Kの0.1mg/kg投与グループの平均腫瘍体積が1226.03±340.05mm
3で、TGIが30.61%であり、対照グループに対して著しい差がなかった。上記結果により、二重機能特異性抗体AB2Kは、動物体内でヒト免疫細胞を活性化することにより腫瘍細胞の成長を抑制し、同じ用量で、二重抗体の薬効がモノクローナル抗体Rituxanよりも優れ、良好な抗腫瘍効果を示すことが分かった。
【0402】
8.5、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞とを共接種した移植腫瘍モデル
【0403】
CD20発現が陽性であるヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞を選択し、NPGマウスの皮下にヒトCIK細胞とヒトBurkkit’sリンパ腫Daudi細胞とを共接種した移植腫瘍モデルにおける二重抗体の体内腫瘍抑制効果を観察した。
【0404】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得し、7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、対数成長期にあるDaudi細胞(中科院細胞バンクから購入)を収集し、4×106個のDaudi細胞と8×105個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。1時間後、マウスを体重で5グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する医薬をそれぞれ腹腔投与し、全ての投与グループにいずれも週に2回投与した。Rituxanおよび二重機能抗体AB2Kをそれぞれ1mg/kgおよび0.1mg/kg投与した。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0405】
図7-5に示すように、投与してから30日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が889.68±192.13mm
3であり、1mg/kgのRituxan投与グループの平均腫瘍体積が241.51±44.91mm
3で、TGIが72.85%であり、対照グループに対して顕著な差(P<0.01)があり、0.1mg/kgのRituxan投与グループの平均腫瘍体積が746.11±299.71mm
3であり、対照グループに対して著しい差がなく、AB2Kの1mg/kg投与グループの平均腫瘍体積が72.05±11.89mm
3で、TGIが91.9%であり、対照グループに対していずれも顕著な差(P<0.01)があり、AB2Kの0.1mg/kg投与グループの平均腫瘍体積が75.36±11.81mm
3で、TGIが91.53%であり、対照グループに対して顕著な差(P<0.01)があった。上記結果により、二重機能特異性抗体AB2Kは動物体内でヒト免疫細胞を活性化することにより腫瘍細胞の成長を抑制し、同じ用量で、二重抗体の薬効がモノクローナル抗体Rituxanよりも優れ、低用量のAB2Kも良好な抗腫瘍効果を示すことが分かった。
【0406】
実施例9、Anti-CD20×CD3二重特異性抗体の安全性評価
【0407】
AB2Kの毒性反応状況を評価し、後続の毒性試験のために適当な用量範囲および観察指標を確定した。3~4歳の雌の成年カニクイザル(広州相観生物科技有限公司から購入)を選択し、体重3~4kgで、2グループに分け、グループ毎に1匹とし、溶媒対照グループおよびAB2K投与グループに分けた。投与方式がペリスタポンプで1h静脈点滴することであり、投与量および体積は以下の表7に示すとおりであった。それぞれ0日目(D0)、7日目(D7)、21日目(D21)および28日目(D28)に投与し、合計4回投与し、医薬用量を逓増した。それと同時に、毎週動物の体重を量った。
【0408】
【0409】
試験期間において、動物の臨床症状、体重、食事量、体温、心電図、血圧、臨床病理指標(血球計数、血液凝固機能指標および血液生化学)、リンパ球サブセット、サイトカイン、薬剤血漿中濃度測定および毒性分析を周期的に監視した。AB2Kを投与した後、カニクイザルのバイタルサインに異常反応がなく、体重が安定し、体温変化の変動幅が溶媒対照グループに類似し、投与期間で各動物は死亡または瀕死したことが見られなかった。
図8に示すように、AB2Kグループに投与した後、カニクイザルの白血球の変化は対照グループの変化傾向に類似し、初回に0.06mg/kgのAB2Kを投与することがリンパ球への影響が大きくなく、2回目に投与してから1h~6h後に、投与グループの動物のリンパ球の細胞数が急激に低下し、24時間後に正常に回復した。投与回数の増加に伴って用量が増加しつつあるが、AB2Kがリンパ球の細胞数の減少に与える影響がますます弱くなった。また、初回にAB2Kを投与した後、IL-2、IL-6、TNF-α因子の放出を促進し、IL-5の放出を微弱に刺激するが、IFN-γの放出を刺激しなかった。投与回数の増加に伴い、AB2Kがサイトカインに対する放出促進作用はますます明らかでなくなり、生体が二重特異性抗体の刺激に適用していることが示唆された。
【0410】
実施例10、Anti-CD20×CD3二重特異性抗体の薬物動態学評価
【0411】
雌のカニクイザルを2グループに分け、グループ毎に1匹とし、体重が3~4kgであった。グループ1がブランクグループであり、グループ2がAB2K投与グループであり、投与量を0.3mg/kgとした。採血時点がそれぞれ15min、1h、3h、6h、10h、24h、30h、48h、54h、72h、96hおよび144hであり、合計13個の時間であった。採血して血清を収集し、-80℃で凍結保存した。
【0412】
ELISA方法を採用して血清中のAB2Kの薬剤濃度を測定し、PKSolverソフトウェアを利用して薬物動態学パラメータを計算し、具体的なパラメータは表8に示すとおりであった。結果により、AB2Kの正常カニクイザル体内でのT1/2が8.5時間程度であることが分かった。
【0413】
【0414】
実施例11、Anti-CD19×CD3二重特異性抗体の体外生物学的機能の評価
【0415】
11.1、二重特異性抗体のエフェクター細胞および標的細胞との結合活性の測定(FACS)
【0416】
a)フローサイトメトリー法を利用して二重特異性抗体のCD19陽性腫瘍細胞Rajiとの結合活性を検出した
【0417】
CD19発現が陽性である腫瘍細胞Raji細胞を培養し、遠心により細胞を収集した。収集した細胞を1%のPBSBで重懸濁し、細胞密度を2×106個/mlに調整し、96ウェルプレートに置き、ウェル毎に100μl(2×105個の細胞)とし、4℃で0.5h密閉した。密閉後の細胞を遠心して上清を捨て、希釈した一連の濃度の二重特異性抗体AB1K2と同型CD19二重特異性抗体AB23P8、AB23P9およびAB23P10とを加え、4℃で1hインキュベートし、遠心して上清を取り除き、1%のBSAのPBSBで3回洗浄し、AF647でマークされた希釈されたヤギ抗ヒトIgG抗体を加え、4℃で遮光して1hインキュベートし、遠心して上清を取り除き、1%のPBSBで2回洗浄し、更に100μlの1%のPFでウェル毎に重懸濁し、フローサイトメーターで信号強度を検出した。また、平均蛍光強度をY軸とし、抗体濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPadにより分析し、二重特異性抗体の腫瘍細胞Rajiと結合するEC50値を計算した。
【0418】
結果により、異なる構造の二重特異性抗体がいずれもCD19過発現腫瘍細胞と良好な結合活性を有することが分かった。
図9-1は、異なる構造の二重特異性抗体の腫瘍細胞Rajiとの結合曲線を示した。表9-1に示すように、4つの二重特異性分子のRaji細胞と結合するEC
50はいずれもnMレベルにあった。
【0419】
【0420】
b)FACSを利用して二重特異性抗体のヒトのT細胞との結合活性を検出した
【0421】
密度勾配遠心法を採用してヒトの新鮮な血液からPBMCを調製し、10%の熱不活化FBSを含む1640培地で重懸濁し、2μg/mlのCD3抗体を加えて24h活性化した後、250IU/mlのIL-2を加えて7日間増幅培養し、増幅したT細胞を調製し、フローサイトメーターによる検出を経て、細胞表面のCD3発現が陽性になった。測定待ちサンプルの調製および測定方法は実施例11.1a)と同様であった。1%のPFで重懸濁した細胞を装置で検出し、平均蛍光強度でソフトウェアGraphPadにより分析し、各二重特異性抗体のヒトのT細胞と結合するEC50値を計算した。
【0422】
図9-2の結果により、各二重特異性抗体がいずれもCIKと良好な結合活性を有することが分かった。表9-2に示すように、AB1K2のEC
50が約16nMであり、AB23P8の結果がそれに相当し、AB23P9、AB23P10のEC
50が約50nMおよび30nMであった。
【0423】
【0424】
c)FACSにより二重特異性抗体のカニクイザルCIK細胞膜表面のCD3との交差反応性を検出した
【0425】
密度勾配遠心法を採用してカニクイザルの新鮮な血液からPBMCを調製し、10%の熱不活化FBSを含む1640培地で重懸濁し、2μg/mlのOKT3を加えて24h活性化した後、250IU/mlのIL-2を加えて7日間増幅培養し、カニクイザルCIK細胞を取得して使用に備えた。ヒトCIK細胞およびカニクイザルCIK細胞を遠心して収集した。測定待ちサンプルの調製および測定方法は実施例11.1a)と同様であった。1%のパラホルムアルデヒド溶液で重懸濁した細胞を装置で検出し、平均蛍光強度でソフトウェアGraphPadにより分析し、二重特異性抗体のヒトCIK細胞およびカニクイザルCIK細胞とそれぞれ結合するEC50値を計算した。
【0426】
図9-3に示すように、二重特異性抗体AB1K2およびAB23P10のカニクイザルのT細胞との結合能力にほぼ差がなく、フローサイトメーターにより、その結合するEC
50が約5.5nMであり、且つ、2つの二重特異性抗体のカニクイザルのT細胞との結合能力がヒトのT細胞との結合能力よりも強いことが検出された。
【0427】
11.2、二重特異性抗体の抗原との結合能力の測定
【0428】
二抗原サンドイッチELISA法により二重特異性抗体の可溶CD3およびCD19との結合を同定した。
【0429】
CD19タンパク質(ACRO Biosystems、品番CD9-H5251)をPBSで1μg/mlの濃度に希釈し、96ウェルプレートに入れて100μl/ウェルとし、4℃で一晩コーティングした。その後、1%の脱脂粉乳を用いて室温で1h密閉した。それと同時に、各二重特異性抗体を希釈し、5倍の勾配で希釈し、合計10個の濃度勾配とした。その後、PBSTで96ウェルプレートを洗浄し、希釈した二重特異性抗体を加え、抗体を加えない対照ウェルを設け、室温で2hインキュベートした。結合していない二重特異性抗体をPBSTで洗浄し、ビオチニル化されたCD3E&CD3D(ACRO Biosystem、品番CDD-H82W1)を50ng/mlでStreptavdin HRP(BD、品番554066)と混合して96ウェルプレートに入れて100μl/ウェルとし、室温で1hインキュベートした。その後、96ウェルプレートをPBSTで洗浄し、TMBを加えて100μl/ウェルとし、室温で15min発色させ、その後、0.2MのH2SO4を加えて発色反応を終了させた。プレートリーダでA450~620nmの吸光値を検出した。ソフトウェアGraphPadにより分析し、二重特異性抗体の2つの抗原に結合するEC50値を計算した。
【0430】
結果により、各二重特異性抗体がいずれもCD3とCD19分子とを同時に特異的に結合することができ、且つ、抗体濃度の変化に従って良好な用量依存性を示す(
図9-4)ことが分かった。複数種の二重特異性抗体の可溶CD3およびCD19との結合能力は表9-3に示すように、そのEC
50値が0.19nM~0.47nMであり、両端の結合能力にほぼ差がなかった。
【0431】
【0432】
11.3、レポータージーン細胞株で二重特異性抗体のT細胞を活性化する能力を評価した
【0433】
NFAT REレポータージーンを含むJurkat T細胞は、二重特異性抗体と標的細胞Raji細胞とが同時に存在する場合、ルシフェラーゼを過発現し、ルシフェラーゼの活性を検出することによりJurkat T細胞の活性化程度を定量することができた。二重特異性抗体の濃度をX軸とし、フルオレセイン信号をY軸とし、4パラメータ曲線をフィッティングした。
【0434】
図9-5~
図9-6の実験結果により、CD19過発現標的細胞が存在しない場合、Jurkat T細胞はほぼ活性化できず、二重抗体および両端の標的細胞が全て存在する場合にのみ、T細胞が活性化された。各抗体のJurkat T細胞を活性化する能力を表9-4に示し、各二重特異性抗体のJurkat T細胞を活性化する能力はほぼ相当した。
【0435】
【0436】
11.4、二重特異性抗体のT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷する能力
【0437】
正常に培養された腫瘍細胞系は、Raji-Luc、NALM6、Reh細胞(いずれも上海中科院細胞バンクから購入)を標的細胞として含み、細胞懸濁液を収集し、遠心し、細胞密度を2×105個/mlに調整し、96ウェル細胞培養プレートに入れて100μl/ウェルとし、一夜培養した。実験設計に従って対応する抗体を希釈して50μl/ウェルとし、抗体を入れる必要のないウェルを同じ体積の培地で補充した。その後、標的細胞数の5倍のエフェクター細胞を加え(ヒトPBMCまたは増幅培養したCIK細胞)、100μl/ウェルとし、対照ウェルを設け、エフェクター細胞を入れる必要のないウェルを、同じ体積の培地で補充した。48h培養した後、Raji-Luc細胞をSteady-Glo Luciferase Assay System(Promega)で検出し、他の細胞をCytoTox96 Non-Radio Cytotoxicity Assay(Promega)で検出した。検出結果をY軸とし、二重特異性抗体濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPadにより分析し、各二重特異性抗体の腫瘍細胞の殺傷を媒介する能力を計算して比較した。
【0438】
各二重特異性抗体のエフェクター細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷するEC50値を表9-5~表9-7にまとめ、結果により、各二重特異性抗体は、CD19が高発現した腫瘍細胞に対していずれも非常に顕著な殺傷作用を示し、そのEC50がpMレベルに達し、且つ、用量依存性を示すことが分かった。
【0439】
【0440】
【0441】
【0442】
実施例12、Anti-Mucin1×CD3二重特異性抗体の体外生物学的機能の評価
【0443】
12.1、AB11Kの、Mucin1が高発現した腫瘍細胞およびヒトまたはカニクイザルの初代T細胞との結合活性
【0444】
ヒト乳癌細胞MCF-7、BT-549、HCC70、T-47DおよびHCC1954、ヒト卵巣癌細胞SK-OV-3、ヒト子宮頸癌細胞Helaおよびヒト結腸癌細胞HT-29を培養し、ここで、MCF-7、BT-549、T-47D、HCC1954、SK-OV-3、HelaおよびHT-29細胞は中国科学院細胞バンクから購入され、HCC70は南京科佰生物科技有限公司から購入された。上記細胞をそれぞれトリプシンで消化した後、遠心して収集し、1%のPBSBで重懸濁し、細胞密度をそれぞれ5×105個/mlに調整し、96ウェルプレートに置いて100μl/ウェルとし、4℃で30min密閉した。ヒトまたはカニクイザルの初代T細胞は、遠心により細胞を収集し、1%のPBSBで重懸濁し、細胞密度をそれぞれ5×105個/mlに調整し、96ウェルプレートに置いて100μl/ウェルとし、4℃で30min密閉した。1%のPBSBで細胞を1回洗浄した。その後、希釈した一連の濃度のAB11Kを100μl/ウェルで加え、4℃で1hインキュベートした。遠心して上清を取り除き、1%のPBSBで2回洗浄し、希釈したAF647 goat anti human IgG(H+L)抗体(Jackson Immuno Research Inc.1:250で希釈)を加え、100μl/ウェルとし、4℃で遮光して1hインキュベートした。遠心して上清を取り除き、プレートを洗浄した後、4%のPFAを150μl/ウェルで加えて細胞を重懸濁し、フローサイトメーターで信号強度を検出した。平均蛍光強度をY軸とし、抗体のモル濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPad Prism 6により分析し、AB11Kの上記腫瘍細胞およびヒトまたはカニクイザルの初代T細胞と結合するEC50値を計算した。
【0445】
図10-1および表10-1に示すように、細胞レベルで、AB11Kは上記腫瘍細胞およびヒトまたはカニクイザルの初代T細胞と結合し、その信号強度が抗体濃度に比例し、AB11Kの上記腫瘍細胞と結合するEC
50が5nM~300nM間に達していると計算し、ここで、T-47DおよびHelaとの結合が最も強く、次はHCC70、HCC1954、SKOV-3およびBT-549であり、MCF-7およびHT-29との結合が弱く、上部プラトーに達していなかった。AB11KのヒトまたはカニクイザルのT細胞と結合するEC
50値がそれぞれ13.43nMおよび9.996nMであり、そのカニクイザルのT細胞に結合する能力とヒトのT細胞に結合する能力とがほぼ相当した。
【0446】
【0447】
12.2、AB11KのT細胞を媒介して腫瘍細胞を殺傷する能力
【0448】
正常に培養したMCF-7、BT-549、HCC70、T-47D、HCC1954、SK-OV-3、HelaおよびHT-29細胞をそれぞれ標的細胞とし、トリプシンで消化した後、細胞密度を2×10
5個/mlに調整し、96ウェル細胞培養プレートに入れて100μl/ウェルとし、37℃にて5%のCO
2で一夜培養した。T細胞グループに対応する標的細胞数の5倍のエフェクター細胞(増幅培養したT細胞)を加え、PBMCグループに対応する標的細胞数の10倍のエフェクター細胞(健康なボランティアのPBMC)を加え、100μl/ウェルとした。空白のウェルおよびエフェクター細胞を入れる必要のないウェルを設けた。AB11Kを培地で50μg/mLに希釈し、4倍比で希釈した後、50μl/ウェルで96ウェルプレートに入れ、37℃にて5%のCO
2で48h培養した。細胞培養板をPBSで3回洗浄し、浮遊細胞を除去した。10%のCCK-8を含む培地を加え、100μl/ウェルとし、37℃にて5%のCO
2で4hインキュベートした。450nmおよび620nmでデータを読み取り、[OD450-OD620]の数値に基づいて抗体の特異的殺傷率を計算し、式は以下のとおりである。
【数3】
【0449】
特異的殺傷率(%)をY軸とし、抗体のモル濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPad Prism 6により分析し、AB11Kの腫瘍標的細胞の殺傷を媒介するEC50を計算した。
【0450】
図10-2、10-3および表10-2に示すように、二重特異性抗体AB11Kがエフェクター細胞を媒介してMucin1が高発現した腫瘍細胞を殺傷することは、顕著な殺傷作用を示し、増幅したT細胞をエフェクター細胞とする場合、AB11Kの最大の特異的殺傷がいずれも99%以上に達し、ここで、MCF-7、BT-549、HCC70およびT-47Dに対する特異的殺傷効果が最も良く、EC
50が100pM~200pMに達し、次はHela、HCC1954およびSK-OV-3であり、HT-29を特異的殺傷する効果が弱く、EC
50が大きく、約1577pMであった。PBMCをエフェクター細胞とする場合、AB11KのMCF-7、BT-549を特異的殺傷する効果が最も良く、最大の特異的殺傷が95%以上に達し、EC
50がそれぞれ131.2pMおよび955.9pMであり、次はHCC1954およびHCC70であり、HelaおよびHT-29を特異的殺傷するEC
50が大きく、それぞれ4810pMおよび9550pMであった。
【0451】
【0452】
12.3、二重特異性抗体のT細胞を活性化する能力の評価
【0453】
NFAT REレポータージーンを含むJurkat T細胞(BPS Bioscienceから購入)は、二重特異性抗体とMucin1陽性細胞が同時に存在する場合、ルシフェラーゼを過発現し、ルシフェラーゼの活性を検出することによりJurkat T細胞の活性化程度を定量することができた。
【0454】
具体的には、MCF-7、BT-549、HCC70、T-47D、HCC1954、SK-OV-3、HelaおよびHT-29細胞をトリプシンで消化した後、細胞密度2×105個/mlに調整し、50μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに入れ、37℃にて5%のCO2で一夜培養した。Jurkat-NFAT細胞は、細胞密度を2.5×106個/mlに調整し、40μl/ウェルとした。AB11Kを培地で400μg/mLに希釈し、4倍比で希釈した後、10μl/ウェルで96ウェル細胞培養プレートに入れ、37℃にて5%のCO2インキュベーターで4hインキュベートした。Steady-GIo(登録商標) Luciferaseを加え、100μl/ウェルとし、5min反応させた後、プレートリーダでルミネセンス値を検出した。フルオレセイン強度をY軸とし、抗体のモル濃度をX軸とし、ソフトウェアGraphPad Prism 6により分析し、二重特異性抗体のT細胞を活性化するEC50を計算した。
【0455】
図10-4および表10-3に示すように、AB11Kは、Jurkat-NFAT細胞を特異的に活性化することができ、EC
50値がいずれもnMレベルにあり、且つ、その濃度が信号強度に比例した。
【0456】
【0457】
実施例13、Anti-EGFR×CD3二重特異性抗体のマウス移植腫瘍モデルでの薬効学的研究
【0458】
EGFRが高発現したヒト皮膚癌A431細胞マウス移植腫瘍モデルを選択し、抗EGFR×CD3二重機能特異性抗体AB8K、AB2KおよびErbitux(Erbitux、Merck KGaA製薬)に対して体内で腫瘍成長を抑制する薬効学的研究を行った。
【0459】
実施例3.1における方法によりCIK細胞を取得し、対数成長期にあるA431細胞を収集した。7~8週齢の雌NPGマウスを選択し、3×106個のA431細胞と1×106個のCIK細胞とを混合し、NPGマウスの右側背部皮下に接種した。1時間後、マウスを体重で5グループにランダムに分け、グループ毎に6匹であり、対応する薬剤を腹腔投与した。全ての投与グループおよび対照グループPBSグループにいずれも週に2回投与し、AB2KおよびErbituxの投与量が1mg/kgであった。AB8Kの投与量を1mg/kgおよび0.1mg/kgとした。投与当日を0日目と記し、腫瘍の最大直径(D)および最小直径(d)を週に2回測定し、且つ、実施例3.1における式に基づいて各グループの腫瘍体積(mm3)および各投与グループの腫瘍成長抑制率TGI(%)を計算した。
【0460】
図11に示すように、投与してから17日目に、PBS対照グループの平均腫瘍体積が1370.76±216.35mm
3であり、1mg/kgのErbitux投与グループの平均腫瘍体積が1060.35±115.86mm
3であり、対照グループに対して著しい差がなく、1mg/kg AB2K投与グループの平均腫瘍体積が877.76±120.38mm
3であり、対照グループに対して著しい差がなく、0.1mg/kgおよび1mg/kgのAB8K投与グループの平均腫瘍体積がそれぞれ233.30±135.51mm
3および8.14±8.14mm
3であり、TGIがそれぞれ82.98%および98.36%であり、対照グループに対していずれも顕著な差(p<0.01)があり、ここで、AB8Kの1mg/kg用量グループの6匹のマウスのうち、5匹のマウスの腫瘍が完全に解消された。AB2KはAB8Kの同型対照であり、A431細胞はCD20を発現せず、AB2Kはこのモデルで薬効が見られなかったことにより、二重抗体の構造が相対的に安全で、非特異的殺傷作用を引き起こさないことが示唆された。CIK細胞の90%以上がいずれも活性化されたT細胞であり、AB8Kは動物体内でヒト免疫細胞を活性化することにより腫瘍細胞を抑制して殺傷し、1mg/kgの用量で腫瘍の成長を完全に抑制することができ、0.1mg/kgの用量でも良好な抗腫瘍効果を示した。
【0461】
本発明に記載された全ての文献は、それぞれが参照として単独で引用されるように、いずれも参照として本発明に引用される。また、本発明の上記説明内容を閲読した後、当業者は、本発明に対して様々な改良または修正を行うことができ、これらの等価形式は同様に本発明の特許請求の範囲に限定される範囲内に含まれることが理解されるべきである。
【配列表】