(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】音響式不良検出装置及び不良検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20230707BHJP
G01N 29/06 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
G01N25/72 F
G01N29/06
(21)【出願番号】P 2022528775
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020120
(87)【国際公開番号】W WO2021246271
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020095265
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146722
【氏名又は名称】ヤマハロボティクスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 広志
(72)【発明者】
【氏名】マイケル カークビー
(72)【発明者】
【氏名】歌野 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】中野 晶太
(72)【発明者】
【氏名】足立 卓也
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0019153(US,A1)
【文献】特表2010-512509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0051035(US,A1)
【文献】特開平08-062166(JP,A)
【文献】特開平10-096705(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101713756(CN,A)
【文献】特開2017-129560(JP,A)
【文献】特表2004-530309(JP,A)
【文献】特開平04-175649(JP,A)
【文献】米国特許第9787913(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
G01N 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の不良を検出する音響式不良検出装置であって、
前記検査対象物を超音波加振する音響ヘッドと、
前記音響ヘッドに取付けられて超音波加振中の前記検査対象物の表面の温度分布を温度分布画像として出力する赤外線サーモグラフィと、
保持面に前記検査対象物を保持するステージと、
前記赤外線サーモグラフィから入力された前記温度分布画像に基づいて不良の検出を行う検出部と、を備え、
前記音響ヘッドは、前記ステージの前記保持面の側に前記ステージと離間して配置され、指向性を有する複数の超音波発生器と、複数の前記超音波発生器から発生した複数の超音波が前記検査対象物に集中するように複数の前記超音波発生器が取付けられるケーシングと、を有し、
前記ケーシングは、前記ステージの側が開放された球形のドーム状、又は球台型の環状部材であり、
前記ケーシングの球面の球中心は、前記ステージの前記保持面の上に保持される前記検査対象物の表面に位置しており、
各前記超音波発生器は、指向性を有する超音波スピーカーであり、各軸が前記ケーシングの前記球中心で交差するように前記ケーシングに取付けられており、
複数の前記超音波発生器から発生した複数の超音波を前記検査対象物に集中させて前記検査対象物を超音波加振すること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音響式不良検出装置であって、
前記検出部は、前記赤外線サーモグラフィから入力された前記温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い高温部を不良領域として検出すること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の音響式不良検出装置であって、
前記赤外線サーモグラフィは、
超音波加振前の前記検査対象物の前記表面の温度分布を加振前温度分布画像として出力すると共に、超音波加振中又は超音波加振後の前記検査対象物の前記表面の温度分布を加振後温度分布画像として出力し、
前記検出部は、前記赤外線サーモグラフィから入力された前記加振前温度分布画像と前記加振後温度分布画像とに基づいて、前記表面の領域毎に加振前の温度と加振後の温度との温度差を算出し、前記温度差が所定の閾値以上となる領域を不良領域として検出すること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の音響式不良検出装置であって、
前記音響ヘッドを前記ステージに対して相対移動させる移動機構を含み、
前記移動機構は、複数の前記超音波発生器から発生した複数の超音波が前記検査対象物に集中する検査領域を前記検査対象物の表面に沿ってスキャンする様に前記音響ヘッドを相対移動させること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の音響式不良検出装置であって、
複数の前記超音波発生器を駆動する駆動回路を備え、
前記駆動回路は、各超音波発生器から発生する前記超音波の各位相をそれぞれ調整可能であること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項8】
請求項5に記載の音響式不良検出装置であって、
複数の前記超音波発生器を駆動する駆動回路を備え、
前記駆動回路は、各超音波発生器から発生する前記超音波の各位相をそれぞれ調整可能であること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項9】
請求項6に記載の音響式不良検出装置であって、
前記駆動回路は、1つの前記超音波発生器を駆動する駆動ユニットを複数含み、
前記駆動ユニットは、前記超音波発生器から発生する前記超音波の位相を調整可能であること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項10】
請求項8に記載の音響式不良検出装置であって、
前記駆動回路は、1つの前記超音波発生器を駆動する駆動ユニットを複数含み、
前記駆動ユニットは、前記超音波発生器から発生する前記超音波の位相を調整可能であること、
を特徴とする音響式不良検出装置。
【請求項11】
検査対象物の不良を検出する不良検出方法であって、
保持面に前記検査対象物を保持するステージと、
指向性を有する複数の超音波発生器を有し、前記ステージの前記保持面の側に前記ステージと離間して配置されて前記検査対象物を超音波加振する音響ヘッドと、
前記音響ヘッドに取付けられた赤外線サーモグラフィと、を備え、
前記音響ヘッドは、複数の前記超音波発生器から発生した複数の超音波が前記検査対象物に集中するように複数の前記超音波発生器が取付けられるケーシングを有し、
前記ケーシングは、前記ステージの側が開放された球形のドーム状、又は球台型の環状部材であり、
前記ケーシングの球面の球中心は、前記ステージの前記保持面の上に保持される前記検査対象物の表面に位置しており、
各前記超音波発生器は、指向性を有する超音波スピーカーであり、各軸が前記ケーシングの前記球中心で交差するように前記ケーシングに取付けられている音響式不良検出装置を準備する準備工程と、
前記音響ヘッドの複数の前記超音波発生器で発生させた複数の超音波を前記検査対象物に集中させて前記検査対象物を超音波加振する超音波加振工程と、
前記赤外線サーモグラフィで超音波加振中の前記検査対象物の表面の温度分布を温度分布画像として取得する画像取得工程と、
取得した前記温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い高温部を不良領域として検出する検出工程と、
を備えることを特徴とする不良検出方法。
【請求項12】
検査対象物の不良を検出する不良検出方法であって、
保持面に前記検査対象物を保持するステージと、
指向性を有する複数の超音波発生器を有し、前記ステージの前記保持面の側に前記ステージと離間して配置されて前記検査対象物を超音波加振する音響ヘッドと、
前記音響ヘッドに取付けられた赤外線サーモグラフィと、を備え、
前記音響ヘッドは、複数の前記超音波発生器から発生した複数の超音波が前記検査対象物に集中するように複数の前記超音波発生器が取付けられるケーシングを有し、
前記ケーシングは、前記ステージの側が開放された球形のドーム状、又は球台型の環状部材であり、
前記ケーシングの球面の球中心は、前記ステージの前記保持面の上に保持される前記検査対象物の表面に位置しており、
各前記超音波発生器は、指向性を有する超音波スピーカーであり、各軸が前記ケーシングの前記球中心で交差するように前記ケーシングに取付けられている音響式不良検出装置を準備する準備工程と、
前記音響ヘッドの複数の前記超音波発生器で発生させた複数の超音波を前記検査対象物に集中させて前記検査対象物を超音波加振する超音波加振工程と、
前記赤外線サーモグラフィで、超音波加振前の前記検査対象物の表面の温度分布を加振前温度分布画像として取得すると共に、超音波加振中又は超音波加振後の前記検査対象物の前記表面の温度分布を加振後温度分布画像として取得する加振前後画像取得工程と、
取得した前記加振前温度分布画像と前記加振後温度分布画像とに基づいて、前記表面の領域毎に加振前の温度と加振後の温度との温度差を算出し、前記温度差が所定の閾値以上となる領域を不良領域として検出する不良領域検出工程と、
を備えることを特徴とする不良検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて検査対象物の不良の検出を行う音響式不良検出装置の構造及び超音波を用いて不良の検出を行う不良検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラック等の不良を内在する検査対象物に超音波振動を入射するとクラック等の不良の存在する部分の温度が他の部分よりも高くなることが知られている。この原理に基づいて、超音波振動子から発生させた超音波振動を検査対象物に入射させ、赤外線サーモグラフィで検査対象物の表面の温度分布画像を取得し、温度の高い部分を不良として検出する非破壊検査装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された従来技術の装置は、超音波振動子を検査対象物に接続し、検査対象物全体を超音波加振するため装置が複雑になってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、簡便な構成で検査対象物の不良の検出を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の音響式不良検出装置は、検査対象物の不良を検出する音響式不良検出装置であって、検査対象物を超音波加振する音響ヘッドと、音響ヘッドに取付けられて超音波加振中の検査対象物の表面の温度分布を温度分布画像として出力する赤外線サーモグラフィと、赤外線サーモグラフィから入力された温度分布画像に基づいて不良の検出を行う検出部と、を備え、音響ヘッドは、指向性を有する複数の超音波発生器と、複数の超音波発生器から発生した複数の超音波が検査対象物に集中するように複数の超音波発生器が取付けられるケーシングと、を有し、複数の超音波発生器から発生した複数の超音波を検査対象物に集中させて検査対象物を超音波加振すること、を特徴とする。
【0007】
このように、複数の超音波発生器を取付けた音響ヘッドを用いて検査対象物に超音波を集中させて検査対象物を間接的に超音波加振してクラック等の不良の検出を行うので、検査対象物に直接的に超音波振動を入射させる場合に比べて簡便な構造でクラック等の不良の検出を行うことができる。また、検査対象物を間接的に超音波加振するので、非接触で検査対象物の不良の検出を行うことができる。
【0008】
本発明の音響式不良検出装置において、検出部は、赤外線サーモグラフィから入力された温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い高温部を不良領域として検出してもよい。
【0009】
これにより、簡便な構成でクラック等の不良の検出を行うことができる。
【0010】
本発明の音響式不良検出装置において、赤外線サーモグラフィは、超音波加振前の検査対象物の表面の温度分布を加振前温度分布画像として出力すると共に、超音波加振中又は超音波加振後の検査対象物の表面の温度分布を加振後温度分布画像として出力し、検出部は、赤外線サーモグラフィから入力された加振前温度分布画像と加振後温度分布画像とに基づいて、表面の領域毎に加振前の温度と加振後の温度との温度差を算出し、温度差が所定の閾値以上となる領域を不良領域として検出してもよい。
【0011】
このように、表面の領域毎に加振前の温度と加振後の温度との温度差を算出し、温度差が所定の閾値以上となる領域を不良存在領域として検出するので、超音波加振時間が短く、不良部分の温度上昇が他の部分に比べてあまり大きくない場合でも、確実にクラック等の不良を検出することができる。これにより、不良検出時間を短縮することができる。
【0012】
本発明の音響式不良検出装置において、保持面に検査対象物を保持するステージを含み、音響ヘッドは、ステージの保持面の側にステージと離間して配置され、音響ヘッドのケーシングは、円環状又はステージの側が開放されたドーム状で、複数の超音波発生器は複数の超音波スピーカーであり、各軸がステージの保持面に保持された検査対象物に集中するようにケーシングに取付けられてもよい。
【0013】
この構成により、効果的に超音波スピーカーが発生した超音波を検査対象物に集中させて検査対象物を効果的に超音波加振することができる。
【0014】
本発明の音響式不良検出装置において、音響ヘッドをステージに対して相対移動させる移動機構を含み、移動機構は、複数の超音波発生器から発生した複数の超音波が検査対象物に集中する検査領域を検査対象物の表面に沿ってスキャンする様に音響ヘッドを相対移動させてもよい。
【0015】
これにより、検査対象物が大きい場合で表面全体を一度に超音波加振できない場合でも、音響ヘッドをスキャンさせることにより、検査対象物全体のクラック等の不良の検出を行うことができる。
【0016】
本発明の音響式不良検出装置において、複数の超音波発生器を駆動する駆動回路を備え、駆動回路は、各超音波発生器から発生する超音波の各位相をそれぞれ調整可能としてもよい。また、駆動回路は、1つの超音波発生器を駆動する駆動ユニットを複数含み、駆動ユニットは、超音波発生器から発生する超音波の位相を調整可能してもよい。
【0017】
このように、複数の超音波発生器の超音波の各位相を調整することによって、検査対象物の大きさや検出しようとしているクラック等の不良の大きさ等により超音波の検査対象物の表面への集中の度合いを調整することができる。
【0018】
本発明の不良検出方法は、検査対象物の不良を検出する不良検出方法であって、指向性を有する複数の超音波発生器を有し、検査対象物を超音波加振する音響ヘッドと、音響ヘッドに取付けられた赤外線サーモグラフィと、を備える音響式不良検出装置を準備する準備工程と、音響ヘッドの複数の超音波発生器で発生させた複数の超音波を検査対象物に集中させて検査対象物を超音波加振する超音波加振工程と、赤外線サーモグラフィで超音波加振中の検査対象物の表面の温度分布を温度分布画像として取得する画像取得工程と、取得した温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い高温部を不良領域として検出する検出工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の不良検出方法は、検査対象物の不良を検出する不良検出方法であって、指向性を有する複数の超音波発生器を有し、検査対象物を超音波加振する音響ヘッドと、音響ヘッドに取付けられた赤外線サーモグラフィと、を備える音響式不良検出装置を準備する準備工程と、音響ヘッドの複数の超音波発生器で発生させた複数の超音波を検査対象物に集中させて検査対象物を超音波加振する超音波加振工程と、赤外線サーモグラフィで、超音波加振前の検査対象物の表面の温度分布を加振前温度分布画像として取得すると共に、超音波加振中又は超音波加振後の検査対象物の表面の温度分布を加振後温度分布画像として取得する加振前後画像取得工程と、取得した加振前温度分布画像と加振後温度分布画像とに基づいて、表面の領域毎に加振前の温度と加振後の温度との温度差を算出し、温度差が所定の閾値以上となる領域を不良領域として検出する不良領域検出工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、簡便な方法でクラック等の不良の検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、簡便な構成で検査対象物のクラック等の不良の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の音響式不良検出装置の構成を示す立面図である。
【
図2】実施形態の音響式不良検出装置で電子部品を超音波加振した場合の時間に対する電子部品の表面温度の変化を示すグラフである。
【
図3】実施形態の音響式不良検出装置でクラック領域を検出した際のディスプレイの表示を示す図である。
【
図4】他の実施形態の音響式不良検出装置の構成を示す立面図である。
【
図5】半導体チップとサブストレートとをワイヤで接続した電子部品を超音波加振した状態を示す立面図である。
【
図6】パッドと圧着ボールとの間の不着部を示す立面図である。
【
図7】アイランドとワイヤとの間の不着部を示す立面図である。
【
図8】実施形態の音響式不良検出装置でパッドと圧着ボールの不着領域を検出した際のディスプレイの表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら実施形態の音響式不良検出装置100について説明する。
図1に示す様に、音響式不良検出装置100は、ステージ10と、音響ヘッド20と、移動機構30と、制御部50と、検出部55とを備えている。
図1の紙面に対して垂直方向をX方向、水平面でX方向と直交する方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。なお、
図1には、音響ヘッド20のケーシング22に取付けられている6つの超音波スピーカー21を図示しているが、各超音波スピーカー21を区別しない場合は、超音波スピーカー21といい、各超音波スピーカー21を区別する場合には、超音波スピーカー211~216という。
【0024】
ステージ10は、図示しないベースに取付けられている。ステージ10は、上側の保持面10aに検査対象物である電子部品13を吸着保持する。電子部品13は、例えば、サブストレート12の上に取付けられた半導体チップ11であってもよい。半導体チップ11は、不良であるクラック90が内在している。ステージ10は、電子部品13をX方向に搬送可能である。
【0025】
ステージ10の保持面10aの側の上方には、ステージ10と離間して音響ヘッド20が配置されている。音響ヘッド20は、ケーシング22と、ケーシング22に取付けられた複数の超音波スピーカー21とで構成されている。音響ヘッド20のケーシング22は、音響ヘッド20をステージ10の保持面10aの上に吸着保持された電子部品13に対して相対的に移動させる移動機構30に接続されている。
【0026】
移動機構30は、図示しないベースにX方向に移動可能に取付けられたガイドレール31と、ガイドレール31に沿ってY方向に移動するスライダ33とで構成されている。ガイドレール31は、X方向移動機構32によってX方向に移動可能に構成されている。スライダ33は、内部にY方向移動機構34を備えておりガイドレール31にガイドされてY方向に移動可能に構成されている。音響ヘッド20のケーシング22はZ方向に延びるアーム36でスライダ33に接続されている。スライダ33は、内部にアーム36をZ方向に駆動するZ方向移動機構35を備えており、音響ヘッド20をZ方向に移動可能に構成されている。従って、移動機構30は、音響ヘッド20をステージ10の上に吸着保持された電子部品13に対してXYZ方向に相対的に移動可能に構成されている。
【0027】
音響ヘッド20のケーシング22は、球形のドーム状で下方のステージ側が開放されている。ケーシング22を構成する球面の球中心26は、ステージ10の保持面10aの上に保持される電子部品13の表面15の上に位置している。超音波スピーカー21は、指向性を有する超音波発生器であり、軸21aの方向で軸21aを中心とした指向角度θの範囲に超音波24が伝播するように超音波24を発生させる。複数の超音波スピーカー21は、各軸21aがケーシング22の球面の球中心26で交差するようにケーシング22に取付けられている。このため、複数の超音波スピーカー21から発生された各超音波24は、球中心26の位置する保持面10aの上に保持された電子部品13の表面15に集中する。電子部品13の表面15の超音波24が集中する範囲がクラック90の検出を行う検査領域40である。
【0028】
各超音波スピーカー21には、それぞれ超音波スピーカー21を駆動する駆動ユニット23が接続されている。各駆動ユニット23は、接続されている超音波スピーカー21が発生する超音波24の位相を調整可能となっている。また、複数の駆動ユニット23は、複数の超音波スピーカー21で構成される超音波スピーカー群を駆動する駆動回路を構成する。
【0029】
移動機構30のX方向移動機構32と、Y方向移動機構34と、Z方向移動機構35と、各超音波スピーカー21を駆動する駆動ユニット23とは、制御部50に接続されて制御部50の指令によって駆動する。制御部50は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU51と制御プログラムや制御用データを格納する記憶部52とを備えるコンピュータである。
【0030】
音響ヘッド20の中心には、赤外線サーモグラフィ27が取付けられている。赤外線サーモグラフィ27は、電子部品13の表面15からの赤外線放射を測定して表面15の温度分布を温度分布画像として出力する。赤外線サーモグラフィ27は、光軸28がステージ10に対して垂直で球中心26を通るようにケーシング22に取付けられている。従って、赤外線サーモグラフィ27は、電子部品13の表面15の検査領域40を真上から撮像するようにケーシング22に取付けられている。
【0031】
赤外線サーモグラフィ27は検出部55に接続されている。検出部55は、赤外線サーモグラフィ27から入力された温度分布画像に基づいてクラック90の検出を行う。検出部55は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU56と制御プログラムや制御用データを格納する記憶部57と、赤外線サーモグラフィ27から入力された温度分布画像を表示するディスプレイ58とを備えるコンピュータである。また、検出部55は、制御部50と接続されてデータの授受を行う。
【0032】
以上のように構成された音響式不良検出装置100の動作について説明する。最初の制御部50は、Z方向移動機構35を動作させて球中心26の高さが電子部品13の表面15に一致するように音響ヘッド20のZ方向位置を調整する。
【0033】
次に、制御部50は、各駆動ユニット23によって各超音波スピーカー21を駆動して各超音波スピーカー21から所定の周波数の超音波24を発生させる。各超音波スピーカー21は、指向性が有り、各軸21aの方向で軸21aを中心とした指向角度θの範囲に伝播していく。各超音波スピーカー21は、各軸21aがケーシング22の球中心26で交差するようにケーシング22に取付けられているので、各超音波スピーカー21から発生した超音波24は、ケーシング22の球中心26の近傍で交差、集中して重ね合わされる。
【0034】
制御部50は、この超音波24の重ね合わせにより、球中心26の近傍に超音波振動の振幅が大きくなるように、各超音波スピーカー21の各位相を調整する。一例を示すと、球中心26に対して対称の位置にある超音波スピーカー211,216の発生する超音波24の位相を180度ずらす様にする。同様に、球中心26に対して対称の位置にある超音波スピーカー212,215の位相、超音波スピーカー213,214の位相をそれぞれ180度ずらすようにしてもよい。また、他の例としては、各超音波スピーカー211~216が発生する各超音波24の位相を分散するように調整してもよい。これにより、球中心26の近傍の超音波24が集中する範囲である検査領域40の超音波振動の振幅を大きくすることができる。
【0035】
超音波スピーカー21の発生する超音波振動が検査領域40に集中すると、検査領域40の温度は、
図2に示す様に上昇してくる。この際、電子部品13の内部に不良であるクラック90が存在する部分の表面15の温度は、
図2の実線aに示す様に、
図2の破線bに示す内部にクラック90の無い部分よりも高くなってくる。制御部50は、所定時間Δt1の間、検査領域40の超音波加振を続ける。
【0036】
検出部55は、所定時間Δt1だけ検査領域40が超音波加振されたら、音響ヘッド20に取付けられた赤外線サーモグラフィ27に、検査領域40の赤外線放射を撮像させて検査領域40の温度分布を温度分布画像として出力させる。検出部55は、
図3に示す様に、赤外線サーモグラフィ27から入力された温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い高温部を内部にクラック90が存在するクラック領域91として検出する。クラック領域91は、内部に不良であるクラック90が存在する不良領域である。
【0037】
クラック領域91の検出は、いろいろな方法を用いてよいが、例えば、温度分布画像の中から周囲の温度よりも温度が高くなっている領域を高温部として抽出し、高温部と周囲の最も温度が低い低温部との温度差ΔT1(
図2参照)が所定の閾値以上となった場合に高温部をクラック領域91として検出するようにしてもよい。
【0038】
また、赤外線サーモグラフィ27の温度分布画像は、温度によって色分けされているので、検査員がディスプレイ58に表示された画像を見て画像の色に基づいて温度の高い部分をクラック領域91として検出するようにしてもよい。
【0039】
また、他の方法として、超音波加振前の温度と超音波加振中又は超音波加振後の温度との温度差によってクラック領域91を検出するようにしてもよい。検出部55は、超音波加振前に、赤外線サーモグラフィ27で、超音波加振前の電子部品13の検査領域40の温度分布を加振前温度分布画像として取得する。そして、
図2に示す様に、制御部50が超音波スピーカー21を駆動して所定の時間Δt2だけ検査領域40を超音波加振した後に電子部品13の検査領域40の温度分布を加振後温度分布画像として取得する。そして、検出部55は、取得した加振前温度分布画像と加振後温度分布画像の検査領域40の中の所定の領域45(
図3参照)の加振前の温度と加振後の温度との温度差ΔT2(
図2参照)を算出する。そして、温度差ΔT2が所定の閾値以上となる領域をクラック領域91として検出してもよい。
【0040】
この検出方法は、
図2に示す様に、先に説明した温度分布画像の高温部を検出する方法よりも短い超音波加振時間で同様の温度差を検出することができるので、クラック領域91の検出時間を短くすることができる。
【0041】
なお、上記の説明では、超音波加振後に加振後温度分布画像を取得することとして説明したが、超音波加振中に加振後温度分布画像を取得するようにしてもよい。
【0042】
制御部50は、一つの検査領域40におけるクラック検出動作が終了したら、移動機構30によって音響ヘッド20をXY方向に移動させる。このように、移動機構30によって検査領域40を電子部品13の表面15に沿ってスキャンさせて電子部品13全体のクラック領域91の検出を行う。
【0043】
なお、検査対象物である電子部品13が検査領域40よりも小さい場合には、スキャンせずに電子部品13のクラック領域91の検出を行うようにしてもよい。
【0044】
以上説明したように、実施形態の音響式不良検出装置100は、複数の超音波スピーカー21を取付けた音響ヘッド20を用いて電子部品13の表面15に超音波24を集中させて電子部品13を間接的に超音波加振する。このため、電子部品13に直接的に超音波振動を入射させる場合に比べて簡便な構造で内部にクラック90が存在するクラック領域91の検出を行うことができる。また、電子部品13を間接的に超音波加振するので、非接触で電子部品13のクラック領域91の検出を行うことができる。
【0045】
また、音響式不良検出装置100の各駆動ユニット23は、接続されている超音波スピーカー21が発生する超音波24の位相を調整可能となっており、各位相を調整することによって、形成される検査領域40の形状、大きさ、位置を検査対象物の大きさに合わせて自由に調整できる。
【0046】
また、音響式不良検出装置100では、ケーシング22は球形のドーム状で、各超音波スピーカー21は、各軸21aが球中心26で交差するように取り付けられている。このように、各超音波24を一点で重ね合わせることにより、超音波振動の振幅が大きい検査領域40を安定して形成できる。このため、検査領域40の位置がふらつかず、確実に電子部品13の表面15を超音波加振することができる。
【0047】
なお、以上の説明では、球中心26の高さを、電子部品13の表面15に一致させることとして説明したが、これに限らず、電子部品13の厚さの範囲であれば、電子部品13の表面15よりも下側でもよい。これにより、電子部品13全体を超音波加振することができる。また、球中心26が表面15より僅かに上側であってもよい。
【0048】
また、ケーシング22の形状はこのような球形に限らない。例えば、ケーシング22は楕円球形のドーム形状であってもよい。また、各超音波スピーカー21は、各軸21aが球中心26で交差してなくても、各超音波スピーカー21の各軸21aを中心とした各指向角度θの範囲が交差するように配置されていればよい。
【0049】
また、超音波スピーカー21を駆動する駆動ユニット23は、各超音波スピーカー21にそれぞれ接続されていることとして説明したが、これに限らず、いくつかの超音波スピーカー21を一つの駆動ユニット23で駆動するように構成してもよい。
【0050】
また、移動機構30は、X方向に移動するガイドレール31とY方向に移動するスライダ33と、スライダ33に取付けられたZ方向移動機構35とで構成されることとして説明したが、これに限らない。例えば、XYZ方向に自在に移動可能なロボットアームの先端に音響ヘッド20を取付けてもよい。この場合、ロボットアームが移動機構30を構成する。また、ステージ10をXYZ方向に移動させるように構成してもよいし、ステージ10上に載置されている電子部品13をXY方向に移動させるように構成してもよい。
【0051】
次に
図4を参照しながら他の実施形態の音響式不良検出装置200について説明する。先に
図1を参照して説明した音響式不良検出装置100と同様の部分には、同様の符号を付して説明は省略する。
図4に示すように、音響式不良検出装置200の音響ヘッド60は、円環状のケーシング62に複数の超音波スピーカー21が取付けられている。
【0052】
図4に示すように、ケーシング62は、上側が小径の開放面64で下側が大径の開放面65の球台型の環状部材であり、球帯面63に複数の超音波スピーカー21が取付けられている。球帯面63の球中心66は、ステージ10の保持面10aの上に保持される電子部品13の表面15の上に位置している。複数の超音波スピーカー21は、各軸21aがケーシング62の球面の球中心66で交差するようにケーシング62に取付けられている。先に
図1を参照して説明した音響式不良検出装置100と同様、各超音波スピーカー21から発生した超音波24は、球中心66で交差し、集中して重ね合わされる。この超音波24の重ね合わせにより、球中心66の近傍には超音波振動の振幅が大きい検査領域40が形成される。
【0053】
ケーシング62の上側の開放面64には、ステー67が取付けられており、ステー67には、アーム36が接続されている。音響ヘッド60は、先に
図1を参照して説明した音響式不良検出装置100の音響ヘッド20と同様、移動機構30によりステージ10の上に吸着保持された電子部品13に対してXYZ方向に相対的に移動可能となっている。
【0054】
また、ステー67には、赤外線サーモグラフィ27が取付けられている。赤外線サーモグラフィ27は、光軸28がステージ10に対して垂直で球中心66を通るようにステー67に取付けられている。
【0055】
音響式不良検出装置200の動作は、先に
図1を参照して説明した音響式不良検出装置100の動作と同様である。
【0056】
音響式不良検出装置200は、ケーシング62が球台型の環状部材で構成されているので、Z方向の厚さを薄くすることができ、小型のボンディング装置等に組み込むことが可能となる。
【0057】
以上の説明では、音響ヘッド60のケーシング62は、上側が小径の開放面64で下側が大径の開放面65の球台型の環状部材として説明したが、これに限らず、上側の開放面64に蓋を取付けるようにしてもよい。この場合、超音波スピーカー21から発生する超音波24が外気の影響を受けにくくなるので、検査領域40の位置、大きさをより安定させることができる。また、蓋に超音波スピーカー21を取付けてもよい。これにより、検査領域40の超音波振動の振幅をより大きくして電子部品13の表面15を効果的に超音波加振して効率的に不良領域であるクラック領域91を検出することができる。
【0058】
なお、以上の説明では、音響式不良検出装置100,200は、電子部品13の内部のクラック90をクラック領域91として検出することとして説明したが、内部のクラック90のみでなく、表面15に存在するクラック90の検出も行うことができる。
【0059】
次に
図5から
図8を参照しながら、先に
図1を参照して説明した音響式不良検出装置100を用いて半導体チップ11とサブストレート12との間をワイヤ16で接続している電子部品13の半導体チップ11とワイヤ16との不着領域94、或いは、サブストレート12とワイヤ16との不着領域94を検出する場合について説明する。不着領域94は、後で説明する不良である不着部92,93が存在する不良領域である。
【0060】
電子部品13は、半導体チップ11と、サブストレート12と、半導体チップ11のパッド11a(
図6参照)とサブストレート12のアイランド12a(
図7参照)との間を接続する金属製のワイヤ16とで構成されている。
【0061】
図6に示す様に、ワイヤ16は先端に形成したフリーエアボールをパッド11aの上に押圧して半球状の圧着ボール17としてパッド11aの上にボンディングされている。このようなボンディングをボールボンディングという。ボールボンディング場合、圧着ボール17とパッド11aとの間に圧着していない不着部92ができる場合がある。また、
図7に示す様に、ワイヤ16の他端は、ワイヤ16の側面をアイランド12aの上に押し付けて圧着される。この場合も、圧着部18とアイランド12aとの間に圧着していない不着部93ができる場合がある。これらの不着部92,93は、ワイヤ16の接続部の不良であり、電子部品13が動作しなかったり、動作不良となったりする場合がある。このため、不良である不着部92,93を検出する技術が求められている。
【0062】
不着検出としてはワイヤ16と半導体チップ11との間に電流を流して不着検出を行う方法が用いられているが、
図6、
図7に示す様に一部分が不着となっている場合には、電流を流す方法では不着検出が難しかった。
【0063】
図6、
図7に示す様な不着部92,93が存在する場合、
図5に示す様に音響ヘッド20によって電子部品13を超音波加振すると、不着部92,93を含むパッド11a、或いはアイランド12aは、不着部92,93が存在しないパッド11a、アイランド12aよりも温度が大きく上昇する。
【0064】
このため、
図8に示す様に、赤外線サーモグラフィ27から入力された温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い網掛けで示すパッド11aを不着部92が存在する不着領域94として検出する。同様に、周囲よりも温度が高いアイランド12aを不着部93が存在する不着領域94として検出する。不着領域94の検出の具体的な方法は、先に説明した電子部品13のクラック領域91の検出方法と同様である。
【0065】
なお、超音波加振前の温度と超音波加振中又は超音波加振後の温度との温度差によって不着領域94の検出を行う場合には、検出部55は、取得した加振前温度分布画像と加振後温度分布画像の検査領域40の中の所定の領域45を
図8に示す様に、一つのパッド11aを含む範囲に設定してもよい。
【0066】
以上、音響式不良検出装置100で電子部品13のワイヤ16の不着部92,93を検出する場合について説明したが、音響式不良検出装置100は電子部品13に限らず、タービン翼やシャフト等の金属部品のクラック90の検出にも適用することができる。
【0067】
尚、以上説明した、音響式不良検出装置100,200の動作は、不良検出方法として以下のように記載することができる。
【0068】
超音波スピーカー21を有し、電子部品13を超音波加振する音響ヘッド20と、音響ヘッド20に取付けられた赤外線サーモグラフィ27と、を備える音響式不良検出装置100,200を準備する準備工程と、音響ヘッド20の複数の超音波スピーカー21で発生させた複数の超音波24を電子部品13に集中させて電子部品13を超音波加振する超音波加振工程と、赤外線サーモグラフィ27で超音波加振中の電子部品13の表面15の温度分布を温度分布画像として取得する画像取得工程と、取得した温度分布画像の中で周囲よりも温度が高い高温部を不良領域として検出する検出工程と、を備える不良検出方法。
【0069】
また、他の不良検出方法は、上記の画像取得工程と検出工程に代えて、赤外線サーモグラフィ27で、超音波加振前の電子部品13の表面15の温度分布を加振前温度分布画像として取得すると共に、超音波加振中又は超音波加振後の電子部品13の表面15の温度分布を加振後温度分布画像として取得する加振前後画像取得工程と、取得した加振前温度分布画像と加振後温度分布画像とに基づいて、表面15の領域45毎に加振前の温度と加振後の温度との温度差を算出し、温度差が所定の閾値以上となる領域を不良領域として検出する不良領域検出工程を含む。
【符号の説明】
【0070】
10 ステージ、10a 保持面、11 半導体チップ、11a パッド、12 サブストレート、12a アイランド、13 電子部品、15 表面、16 ワイヤ、17 圧着ボール、18 圧着部、20 音響ヘッド、21,211~216 超音波スピーカー、21a 軸、22 ケーシング、23 駆動ユニット、24 超音波、26 球中心、27 赤外線サーモグラフィ、28 光軸、30 移動機構、31 ガイドレール、32 X方向移動機構、33 スライダ、34 Y方向移動機構、35 Z方向移動機構、36 アーム、40 検査領域、45 領域、50 制御部、51,56 CPU、52,57 記憶部、55 検出部、58 ディスプレイ、60 音響ヘッド、62 ケーシング、63 球帯面、64,65 開放面、66 球中心、67 ステー、90 クラック、91 クラック領域、92,93 不着部、94 不着領域、100,200 音響式不良検出装置。