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  • 特許-ドーナツ包装袋およびドーナツ包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ドーナツ包装袋およびドーナツ包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20230707BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20230707BHJP
   B65D 33/01 20060101ALI20230707BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
B65D81/26 C
B65D30/02
B65D33/01
B65D85/50 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017065019
(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2018167850
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-02-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】中尾 悟
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】井上 茂夫
【審判官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108051(JP,A)
【文献】特開2004-290023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D81/26
B65D30/02
B65D33/01
B65D85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を含む生地を油で揚げた揚げドーナツ内にクリームが注入され、総重量が65g/袋以上250g/袋以下であるドーナツを包装するために用いられ、開口部を有する合成樹脂フィルムで構成されるドーナツ包装袋であって、
前記合成樹脂フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたはポリ塩化ビニリデンコートを施した二軸延伸ポリプロピレンフィルムで構成され、
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が2.0g/m・日(40℃・90%RH)以上4.0g/m・日(40℃・90%RH)以下であることを特徴とするドーナツ包装袋。
【請求項2】
前記合成樹脂フィルムは、その酸素透過度が10cc/(m・atm・日)以上2250cc/(m・atm・日)以下である請求項に記載のドーナツ包装袋。
【請求項3】
前記合成樹脂フィルムは、その炭酸ガス透過度が10cc/(m・atm・日)以上3000cc/(m・atm・日)以下である請求項1または2に記載のドーナツ包装袋。
【請求項4】
ドーナツ50gあたりの袋内表面積が200cm以上800cm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載のドーナツ包装袋。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルムで構成される第1および第2のフィルムを重ね合わせることで袋状とされ、
前記第1および第2のフィルムの少なくとも一方が前記開口部を有している請求項1ないしのいずれか1項に記載のドーナツ包装袋。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のドーナツ包装袋と、該ドーナツ包装袋で包装された前記ドーナツとを有することを特徴とするドーナツ包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーナツ包装袋およびドーナツ包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、スーパーおよびコンビニエンスストア等の量販店では、ドーナツは、陳列ケース内に収納された状態のものを、販売員が紙袋、紙箱等に入れて提供する店頭販売の他、人件費の削減の観点から、例えば、合成樹脂フィルム製の包装袋で包装された状態(例えば、特許文献1参照。)で、陳列棚に陳列して消費者(購買者)に販売される。
【0003】
ところで、消費者が袋を開封して、このドーナツを食した際には、サクサク感のようないわゆるクリスピー性がドーナツに保持されていることが求められる。
【0004】
しかしながら、包装袋が密閉性に優れたもの、すなわち、水蒸気透過性に劣るものであると、包装袋内にドーナツから出た水分がこもり、これに起因して、ドーナツのサクサク感が低下することで、ドーナツの食感が低下するという欠点があった。特にこのようなケースは、揚げたてのドーナツを袋詰めし、ドーナツが包装袋内で冷却される場合に顕著に認められるため、ドーナツを包装袋外で冷却した後に袋詰めする必要が生じ、生産性の低下を招くと言う問題があった。
【0005】
これに対して、包装袋が密閉性に劣るもの、すなわち、高い水蒸気透過性を有するものであると、ドーナツが保持する水分が早期にドーナツから離脱してしまい、これに起因して、ぱさぱさ感が際立つことで、ドーナツの食感が低下するという欠点があった。
【0006】
したがって、ドーナツの食感、特に、サクサク感を維持することができる水蒸気透過性を備えるドーナツ包装袋の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-218388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、長期において、ドーナツの食感を維持することができる水蒸気透過性を備えるドーナツ包装袋、およびかかるドーナツ包装袋で包装されたドーナツを備えるドーナツ包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~()に記載の本発明により達成される。
(1) 小麦粉を含む生地を油で揚げた揚げドーナツ内にクリームが注入され、総重量が65g/袋以上250g/袋以下であるドーナツを包装するために用いられ、開口部を有する合成樹脂フィルムで構成されるドーナツ包装袋であって、
前記合成樹脂フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたはポリ塩化ビニリデンコートを施した二軸延伸ポリプロピレンフィルムで構成され、
前記合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が2.0g/m・日(40℃・90%RH)以上4.0g/m・日(40℃・90%RH)以下であることを特徴とするドーナツ包装袋。
【0012】
) 前記合成樹脂フィルムは、その酸素透過度が10cc/(m・atm・日)以上2250cc/(m・atm・日)以下である上記(1)に記載のドーナツ包装袋。
【0013】
) 前記合成樹脂フィルムは、その炭酸ガス透過度が10cc/(m・atm・日)以上3000cc/(m・atm・日)以下である上記(1)または(2)に記載のドーナツ包装袋。
【0014】
) ドーナツ50gあたりの袋内表面積が200cm以上800cm以下である上記(1)ないし()のいずれかに記載のドーナツ包装袋。
【0015】
) 前記合成樹脂フィルムで構成される第1および第2のフィルムを重ね合わせることで袋状とされ、
前記第1および第2のフィルムの少なくとも一方が前記開口部を有している上記(1)ないし()のいずれかに記載のドーナツ包装袋。
【0016】
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載のドーナツ包装袋と、該ドーナツ包装袋で包装された前記ドーナツとを有することを特徴とするドーナツ包装体。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドーナツ包装袋によれば、水蒸気透過度の下限が1.0g/m・日(40℃・90%RH)以上のように、適度に水蒸気をフィルムの内側から外側に排出し得る値となり、かつ、水蒸気透過度の上限が50g/m・日(40℃・90%RH)以下のように、適度に水蒸気をフィルムの内側に保持し得る値となっている。そのため、ドーナツの断面(内部)における含水率をほぼ一定に保ち、かつ、ドーナツの表面における含水率を初期(製造直後)よりも低くなることを防止することができる。これにより、ドーナツが、その表面と内部との双方において、固くなるのが的確に抑制または防止され、その結果、ドーナツのサクサク感(食感)が長期に亘って維持されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のドーナツ包装袋でドーナツが包装されたドーナツ包装体(本発明のドーナツ包装体)の実施形態を示す平面図である。
図2図1中のドーナツ包装袋の未包装状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のドーナツ包装袋およびドーナツ包装体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明のドーナツ包装袋でドーナツが包装されたドーナツ包装体(本発明のドーナツ包装体)の実施形態を示す平面図、図2は、図1中のドーナツ包装袋の未包装状態を示す斜視図である。なお、図1および図2では、説明の便宜上、ドーナツ包装袋が有する開口部を誇張して図示しており、ドーナツ包装袋全体に対する開口部の大きさおよびその比率は実際とは大きく異なる。また、ドーナツ包装袋は、平面視で長方形をなし、その短辺に沿った方向をx方向、長辺に沿った方向をy方向として説明する。また、x方向およびy方向と直交する方向を、ドーナツ包装袋(第1のフィルムおよび第2のフィルム)の厚さ方向と言う。
【0021】
図1に示すように、本発明のドーナツ包装袋1(以下、単に「包装袋1」と言うこともある)は、この袋中に密閉した状態でドーナツを包装するために用いられるものであり、本発明のドーナツ包装体10(以下、単に「包装体10」と言うこともある)は、包装袋1と、この包装袋1で密閉した状態で包装されたドーナツとを有している。以下、包装袋1でドーナツを未だ包装していない状態を「未包装状態」と言い、包装袋1でドーナツを包装した状態を「包装状態」と言う。
【0022】
ドーナツBの包装に本発明のドーナツ包装袋1を用いることで、ドーナツBのサクサク感(食感)を損なうことなく包装袋1内で保存(保管)することができる。すなわち、包装袋1によれば、水蒸気透過度の下限が1.0g/m・日(40℃・90%RH)以上のように、適度に水蒸気をフィルムの内側から外側に排出し得る値となり、かつ、水蒸気透過度の上限が50g/m・日(40℃・90%RH)以下のように、適度に水蒸気をフィルムの内側に保持し得る値となっている。そのため、包装袋1で包装されるドーナツBの断面(内部)における含水率をほぼ一定に保ち、かつ、ドーナツBの表面における含水率を初期(製造直後)よりも低くなることを防止することができる。これにより、ドーナツBが、その表面と内部との双方において、固くなるのが的確に抑制または防止され、その結果、ドーナツBのサクサク感(食感)が長期に亘って維持された状態で、ドーナツBを、包装袋1内で保存することができる。
【0023】
包装袋1で包装されるドーナツBは、小麦粉を含む生地(ドウ)に加工を施したものであり、生地を油で揚げた揚げドーナツ、生地を焼いた焼きドーナツ、生地を半生の状態とした半ナマドーナツのうちの何れであってもよいが、揚げドーナツであることが好ましい。本発明のドーナツ包装袋1は、小麦粉を含む生地を油で揚げた揚げドーナツの包装により好適に用いられ、包装された揚げドーナツBのサクサク感(食感)を長期に亘ってより確実に維持することができる。
【0024】
揚げドーナツは、小麦粉を含む生地(ドウ)を油で揚げたものであれば特に限定されず、生地に小麦粉の他、砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、水飴のような甘味料、バター、ラード、ヘット、マーガリン、ショートニング、サラダ油、オリーブオイル、大豆油のような油脂、牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、ヨーグルトのような乳製品、食塩、澱粉、ベーキングパウダー、イースト、卵および水等が含まれるものであってもよく、例えば、ケーキドーナツ、イーストドーナツ、クルーラー、サーターアンダギー、チュロス、パパナシ、ベニエ等が挙げられる。
【0025】
また、ドーナツBは、生地に加工を施したものに対して、その外表面に、溶かしたチョコレート、砂糖等をかけたもの、粉砂糖、グラニュー糖、きな粉、シナモン等をまぶしたものや、その内部に、生クリーム、カスタードクリーム、餡等を注入したものであってもよい。
【0026】
包装袋1は、ドーナツBを包装するために用いられるものである。この包装袋1は、合成樹脂フィルムで構成されるものであり、本実施形態では、第1のフィルム2と第2のフィルム3とを重ね合わせることで袋状とされ、ドーナツBの出し入れ口となる開口11を、熱シール(熱圧着)により融着等させて封止することにより密閉されたシール袋である。
【0027】
このような包装袋1の製作方法には、各種方法が挙げられ特に限定されないが、例えば、2枚の合成樹脂フィルムを重ね合わせた状態、または1枚の合成樹脂フィルムを折り重ねた状態で、2辺または1辺を熱シールにより融着させて筒状をなすフィルムを形成することで、y軸方向に対向する2辺において開口する開口11を有する包装袋1を得ることができる。このような包装袋1では、2つの開口11の一方からドーナツBを収納した後、これら開口11を、熱シール(ヒートシール)により融着させて封止することにより、ドーナツBが包装袋1で包装されたドーナツ包装体10とすることができる。
【0028】
なお、2枚の合成樹脂フィルムを重ね合わせて包装袋1を作製する場合、これら2枚の合成樹脂フィルムにより第1のフィルム2および第2のフィルム3が構成される。また、1枚の合成樹脂フィルムを折り重ねて包装袋1を作製する場合、折り重ねられた1枚の合成樹脂フィルムにより第1のフィルム2および第2のフィルム3が構成される。
【0029】
このような合成樹脂フィルムの材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペートおよびポリ乳酸等が挙げられる。また、合成樹脂フィルムは、半合成樹脂フィルムであってもよく、その材質としては、例えば、セロハン等が挙げられる。これらのうちのいずれかの材質を単独あるいはラミネートして用いればよい。なお、包装袋1は、これらフィルムと金属箔、紙や不織布とを貼り合わせた袋でもよい。
【0030】
また、これらの第1のフィルム2および第2のフィルム3は、延伸加工、防曇加工や印刷が施されていてもよく、銀、銅のような無機系抗菌剤や、キチン、キトサン、アリルイソチオシアネートのような有機系抗菌剤が塗布されたものであってもよいし、これらがフィルム中に練り込まれているものであってもよい。
【0031】
なお、熱シールに適さない第1のフィルム2および第2のフィルム3を用いる場合には、開口11にシーラント層をラミネートあるいはコーティングすることで開口11を封止することができる。例えば、アクリル樹脂をコーティングしたセロハンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)ポリスチレンとEVAをラミネートしたフィルムが挙げられ、これらを第1のフィルム2および第2のフィルム3として用いることができる。
【0032】
このようなドーナツBの包装袋1による包装は、製造工場において、ドーナツBの製造の後に行われ、得られた包装体10の状態で、ドーナツBは、トラック等で輸送した後に、量販店で陳列したり、工場からの直送による宅配等により販売される。また、ドーナツBは、量販店において、直接、製造・包装がなされ、包装体10の状態で、陳列して販売されるようにすることもできる。
【0033】
図2に示すように、本実施形態では、第1のフィルム2は、その厚さ方向に貫通する複数個の第1の開口部(第1の貫通孔)21を有し、第2のフィルム3は、その厚さ方向に貫通する複数個の第2の開口部(第2の貫通孔)31を有している。これら開口部21、31の数および大きさを適宜設定することにより、包装袋1を、目的とする水蒸気透過度を有する水蒸気透過性を発揮するものとすることができる。このように、包装袋1では、合成樹脂フィルムすなわち、第1および第2のフィルム2、3にそれぞれ形成された第1および第2の開口部21、31は、水蒸気が通過する通気孔(切れ込み)として機能する。
【0034】
本発明では、このような第1および第2のフィルム2、3からなる合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が1.0g/m・日(40℃・90%RH)以上50g/m・日(40℃・90%RH)以下となっている。
【0035】
このような包装袋1によれば、水蒸気透過度の下限が1.0g/m・日(40℃・90%RH)以上のように、適度に水蒸気をフィルムの内側から外側に排出し得る値となり、かつ、水蒸気透過度の上限が50g/m・日(40℃・90%RH)以下のように、適度に水蒸気をフィルムの内側に保持し得る値となっている。そのため、ドーナツBの断面(内部)における含水率をほぼ一定に保ち、かつ、ドーナツBの表面における含水率を初期(製造直後)よりも低くなることを防止することができる。これにより、ドーナツBが、その表面と内部との双方において、固くなるのが的確に抑制または防止され、その結果、ドーナツBのサクサク感(いわゆるクリスピー性)が長期に亘って維持されることとなる。
【0036】
なお、水蒸気透過度の下限は、1.0g/m・日(40℃・90%RH)以上であれば良いが、1.5g/m・日(40℃・90%RH)以上であることが好ましく、3.0g/m・日(40℃・90%RH)以上であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。さらに、たとえ製造直後のドーナツBを包装袋1に袋詰めしドーナツBが包装袋1内で冷却されたとしても、ドーナツBの表面に水滴が過度に付着して、ドーナツBのサクサク感が低下するのを的確に抑制または防止することができる。そのため、ドーナツBを包装袋1外で冷却する手間が省けることから、前記袋詰めの作業の時間の短縮化が図られる。
【0037】
さらに、水蒸気透過度の上限は、50g/m・日(40℃・90%RH)以下であれば良いが、30g/m・日(40℃・90%RH)以下であることが好ましく、10g/m・日(40℃・90%RH)以下であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
また、水蒸気透過度は、JIS Z 0208に則って測定することができる。
【0038】
なお、包装袋1では、その内部における水蒸気濃度は、具体的には、包装されるドーナツBの種類にもよるが、一般的に、60%以上85%以下程度であることが好ましく、70%以上80%以下程度であることがより好ましい。水蒸気濃度をかかる範囲内に設定することにより、ドーナツBが、その表面と内部との双方において、固くなるのが的確に抑制または防止されることから、ドーナツBのサクサク感(食感)を長期に亘って維持することができる。
【0039】
したがって、このような包装袋1によれば、前記水蒸気透過度を備えていることから、長期において、ドーナツBの食感を維持することができる。すなわち、包装袋1は、長期にわたって、サクサク感(食感)を維持し得る保存容器としての機能を発揮する。
【0040】
なお、このようなサクサク感(食感)が維持されたドーナツBの固さの指標としての切断強度は、ドーナツBの種類によっても若干異なるが、例えば、1.1N/m以上2.0N/m以下であることが好ましく、1.3N/m以上1.8N/m以下であることがより好ましい。かかる範囲内の切断強度で、ドーナツBの保存期間(例えば、3日間)において、維持されることにより、そのドーナツBは、サクサク感が維持されたものであると言うことができる。
【0041】
また、合成樹脂フィルムは、その酸素透過度が10cc/(m・atm・日)以上2250cc/(m・atm・日)以下であることが好ましく、10cc/(m・atm・日)以上500cc/(m・atm・日)以下であることがより好ましい。酸素透過度を前記範囲内に設定することにより、ドーナツBに含まれる油成分等の酸化およびドーナツBのカビの発生等を確実に抑制または防止して、長期において、ドーナツBの食味および品質を保持することができる。
【0042】
さらに、合成樹脂フィルムは、その炭酸ガス透過度が10cc/(m・atm・日)以上3000cc/(m・atm・日)以下であることが好ましく、10cc/(m・atm・日)以上500cc/(m・atm・日)以下であることがより好ましい。炭酸ガス透過度を前記範囲内に設定することにより、特に、ドーナツBのカビの発生に起因する腐敗を確実に抑制または防止して、長期において、ドーナツBの品質を保持することができる。
【0043】
また、ドーナツB50gあたりの袋内表面積は、200cm以上800cm以下であるのが好ましく、300cm以上500cm以下であるのがより好ましい。これにより、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度を前記範囲内に設定することにより、包装袋1の内部における水蒸気濃度を、より確実に前記範囲内に設定することができる。なお、袋の内表面積で規定しているのは、シール部分すなわちとじ代が計算に含まれないようにするためである。
【0044】
さらに、合成樹脂フィルムは、その内面における動摩擦係数が0.1以上1以下であることが好ましく、0.35以上0.8以下であることがより好ましい。内面における動摩擦係数を、かかる範囲内に設定することにより、包装袋1の開封後におけるドーナツBの取り出しを容易に行うことができる。
【0045】
また、合成樹脂フィルムは、開口11におけるy方向に対する引裂強度(JIS P 8116に規定)が、50g以上500g以下であることが好ましく、100g以上350g以下であることがより好ましい。前記引裂強度を、かかる範囲内に設定することにより、包装袋1の開口11における開封を容易に行うことができる。また、この開封をより容易に行うために、開口11の縁部には、切り欠きのような欠損部を設けるようにしてもよい。
【0046】
かかる構成の包装袋1において、本実施形態では、第1の開口部21は、その数には限定されないが、x方向に沿って等間隔に4行配置され、y方向に沿って等間隔に4列配置されている。なお、x方向に隣接する第1の開口部21同士の中心間距離と、y方向に隣接する第1の開口部21同士の中心間距離とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、このように行列状に配置された各第1の開口部21を、それぞれ、図2中の左下から右上側に向かって順に、「第1の開口部21a」、「第1の開口部21b」・・・「第1の開口部21o」および「第1の開口部21p」と言うことがある。また、各第1の開口部21は、それぞれ、y方向に直線状に延びる長尺状をなし、長さが互いに同じであり、幅も互いに同じものである。
【0047】
また、第2の開口部31は、本実施形態では、その数には限定されないが、x方向に沿って等間隔に4行配置され、y方向に沿って等間隔に4列配置されている。なお、x方向に隣接する第2の開口部31同士の中心間距離は、x方向に隣接する第1の開口部21同士の中心間距離と同じである。また、y方向に隣接する第2の開口部31同士の中心間距離は、y方向に隣接する第1の開口部21同士の中心間距離と同じである。そして、このように行列状に配置された各第2の開口部31を、それぞれ、図2中の左下から右上側に向かって順に、「第2の開口部31a」、「第2の開口部31b」・・・「第2の開口部31o」および「第2の開口部31p」と言うことがある。また、各第2の開口部31は、それぞれ、第1の開口部21と形状および大きさが同じである。すなわち、各第2の開口部31は、それぞれ、y方向に直線状に延びる長尺状をなし、その長さおよび幅が第1の開口部21と同じものである。
【0048】
各第1の開口部21、各第2の開口部31をそれぞれこのような配置、形状および大きさとすることにより、本実施形態では、図2に示すように、未包装状態では、当該包装袋1の厚さ方向で最も近い位置に形成されている第1の開口部21a、b・・・pと第2の開口部31a、b・・・pとの全体がそれぞれ重なっている。これにより、ドーナツB全体の大きさ、1本1本のドーナツBの大きさやその配置にもよるが、包装状態で、例えば図1に示すように第1の開口部21aと第2の開口部31aとの間にドーナツBが介在していない場合、この開口部での空気の通り抜けが容易となる。また、図1に示すように第1の開口部21eと第2の開口部31eとの間にドーナツBが一部介在していたとしても、第1の開口部21e、第2の開口部31eは、それぞれ、長尺状をなしているため、その全体がドーナツBで塞がれるのが低減され、よって、この開口部での空気の通り抜けも容易となる。このように包装袋1は、包装状態でも通気性に優れたものとなっている。したがって、包装袋1の包装(収納)後においても、包装袋1を、前述したような水蒸気透過度を発揮するものとすることができる。
【0049】
なお、例えば、第1のフィルム2が、商品名、価格および消費期限等の印刷物が印刷されている第1印刷面であり、第2のフィルム3が、栄養成分、原材料、製造者および連絡先等の印刷物が印刷されている第2印刷面である場合、かかる構成の包装体10は、通常、第1のフィルム2(第1印刷面)を上側とし、第2のフィルム3(第2印刷面)を下側として陳列される。そのため、上側に位置する第1のフィルム2の各第1の開口部21から主として水蒸気および酸素が透過し、下側に位置する第2のフィルム3の各第2の開口部31から主として炭酸ガスが透過することとなる。
【0050】
以上のような構成の包装袋1において、前記水蒸気透過度等が前述した範囲内となるように、第1および第2のフィルム2、3に形成される開口部21、31の長さL、幅Wおよび数等が設定される。
【0051】
具体的には、第1の開口部21および第2の開口部31の長さLは、好ましくは50μm以上100μm以下であり、より好ましくは55μm以上80μm以下であり、幅wは、好ましくは40μm以上90μm以下であり、より好ましくは45μm以上70μm以下である。前記上限値を超えると、第1のフィルム2および第2のフィルム3の種類やそれらの厚さによっては、第1のフィルム2および第2のフィルム3が変形することに起因して第1の開口部21や第2の開口部31が開き易くなるため、水蒸気透過度等の制御が難しくなるおそれがある。また、前記下限値未満であると、多数の第1の開口部21や第2の開口部31を形成する必要が生じ、その結果、第1のフィルム2および第2のフィルム3の種類やそれらの厚さによっては、加工が困難となり、包装袋1の量産に向かなくなるおそれがある。また、前記範囲内に設定することにより、開口部21、31を、視認性を有さないものとすることができる。これにより、消費者の購買意欲の低下を招くことなく、開口部21、31が形成される。また、細菌やホコリ等の異物の混入を的確に抑制または防止することができる。
【0052】
また、第1および第2のフィルム2、3に形成される開口部21、31の数は、第1および第2のフィルム2、3の表面積500cmあたり、1個以上10個以下であることが好ましく、1個以上3個以下であることがより好ましい。開口部21、31の数を前記範囲内に設定することにより、包装袋1の前記水蒸気透過度をより確実に前述した範囲内に設定することができる。
【0053】
また、第1のフィルム2および第2のフィルム3の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、0.01mm以上0.1mm以下であるのが好ましく、0.01mm以上0.065mm以下であるのがより好ましい。厚さを前記範囲内に設定することにより、それぞれが有する第1の開口部21や第2の開口部31から水蒸気を前述した範囲内となるように確実に透過させることができる。また、前記下限値未満となるとフィルムの材質によっては、強度が十分に得られなくなるおそれがある。さらに、前記上限値を超えると、コストが高くなるおそれがある。
【0054】
なお、本発明では、包装袋1により各種ドーナツが包装され、その個数は、図1に示す1個の場合に限らず、複数個であってもよいが、ドーナツの総重量が好ましくは30g~250g/袋程度、より好ましくは50g~400g/袋程度で包装される。
【0055】
また、第1のフィルム2への第1の開口部21の加工、および、第2のフィルム3への第2の開口部31の加工は、カッターのような鋭利な刃物を用いて切ることで行うようにしてもよいし、所望の形状の切れ込みができるようにした型で打ち抜くことで行うようにしてもよいし、さらに、レーザーによる加工によっても行うこともできる。
【0056】
なお、本実施形態では、図2に示すように、未包装状態では、包装袋1の厚さ方向で最も近い位置に形成されている第1の開口部21と第2の開口部31との全体がそれぞれ重なっている場合について説明したが、合成樹脂フィルムの水蒸気透過度が前記範囲内であれば、第1の開口部21と第2の開口部31とが重なっていなくてもよいし、第1の開口部21と第2の開口部31とのうちの一方の形成が省略されていてもよいし、さらには、第1の開口部21と第2の開口部31との双方の形成が省略されていてもよい
【0057】
以上、本発明のドーナツ包装袋およびドーナツ包装体を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ドーナツ包装袋およびドーナツ包装体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0058】
また、包装袋としては、前記実施形態で説明したシール袋に限らず、例えば、ガゼット袋等の形態の袋であってもよく、さらには、トレー、カップ等にドーナツを充填し、これを包装袋で包装する形態のものであってもよい。
【0059】
さらに、第1の開口部および第2の開口部の形状としては、それぞれ、前記各本実施形態では直線型であるが、これに限定されず、例えば、S字型、U字型、半円形、波型のような曲線部を有する形状、V字型、X字型、L字型、H字型、T字型、W字型、コ字型のような角部を有する形状であってもよい。
【実施例
【0060】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0061】
ドーナツを包装した際の包装袋の検討
1.ドーナツ包装袋の製造、およびドーナツ包装袋によるドーナツの包装
(実施例1)
厚さ25mmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを折り重ねた後、対向する2辺を熱シール(熱圧着)により融着させることで、内寸160×160mmの包装袋を作製した。そして、この包装袋を、第1のフィルムを上側にした状態で、第1のフィルム側から1箇所の位置でレーザー照射することにより、第1および第2のフィルムに、それぞれ、長さL73μm×幅W68μmの第1および第2の開口部を1個ずつ設けた。これにより、図2に示す、第1の開口部と第2の開口部との全体が重なった(一致した)包装袋を得た。
【0062】
そして、この袋に、およそ65gのドーナツ(揚げドーナツ内にクリームが注入されたドーナツ)1個を入れて開口部をヒートシールで密封することで実施例1の包装体を得た。
【0063】
(実施例2)
包装袋の形成に用いるフィルムとして、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)コート(防曇コート)を施した厚さ26mmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2の包装体を得た。
【0064】
(比較例1)
包装袋の形成に用いるフィルムとして、厚さ26mmのナイロン(Ny)/エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)の積層フィルムを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1の包装体を得た。
【0065】
(比較例2)
包装袋として、厚さ25mmの袋状をなす紙材を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例2の包装体を得た。
【0066】
2.ドーナツBの保管
各実施例および比較例のドーナツ包装体について、それぞれ、平板上に第1のフィルムが上側、第2のフィルムが下側となるように載置した状態で、20℃で3日間保管した。
【0067】
3.評価
各実施例および比較例のドーナツ包装体について、それぞれ、水蒸気透過度、酸素透過度、炭酸ガス透過度、動摩擦係数および引裂強度を測定した。
【0068】
また、各実施例および比較例のドーナツ包装体について、それぞれ、包装直後、1日後、2日後および3日後の包装体内のドーナツの外観、食味、食感、臭気および触感を観察し、以下に示す評価基準に従って評価した。なお、これらの外観等の主観的評価は、4名のモニターにおいて実施しその平均値を求めた。
【0069】
・評価基準
4 :良好
3 :やや劣化(購入可能)
2 :明らかな劣化(商品性無し)
1 :著しい劣化(食べない)
【0070】
さらに、各実施例および比較例のドーナツ包装体について、それぞれ、包装直後、1日後、2日後および3日後における、包装体内のドーナツの包装直後からの重量変化、ドーナツの厚さ方向に対する切断強度、ドーナツ表面における含水率、ドーナツ断面(内部)における含水率を測定した。
【0071】
また、各実施例および比較例のドーナツ包装体について、それぞれ、包装直後、1日後、2日後および3日後の包装体における結露の発生の有無を観察し、以下に示す評価基準に従って評価した。なお、結露の評価は、4つのドーナツ包装体において実施しその平均値を求めた。
【0072】
・評価基準
4 :結露が認められない
3 :若干の結露の発生が認められる
2 :明らかな結露の発生が認められる
1 :結露が水滴となり、ドーナツに付着している
これらの評価結果を表1~表11に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
各表から明らかなように、各実施例の包装体では、水蒸気透過度が適切な範囲内に設定されることにより、ドーナツ表面における含水率が包装直後よりも低くなることが防止され、また、ドーナツ断面(内部)における含水率が包装直後からほぼ一定に保たれることにより、重量変化を認めることなく、切断強度の上昇も抑制されている結果を示した。これにより、外観および臭気が維持されるとともに、優れた食味、食感および触感を維持して、ドーナツBを保管し得ることが判った。
【0085】
これに対して、各比較例の包装体では、ドーナツ表面およびドーナツ断面(内部)における含水率が包装直後よりも低くなることにより、重量の低下および切断強度の上昇が認められる結果を示した。これにより、外観および臭気が維持されるものの、食味、食感および触感が低下することとなった。
【0086】
10 ドーナツ包装体(包装体)
1 ドーナツ包装袋(包装袋)
11 開口
2 第1のフィルム
21、21a、21b、21d、21e、21m、21o、21p 第1の開口部(第1の貫通孔)
3 第2のフィルム
31、31a、31b、31d、31e、31m、31o、31p 第2の開口部(第2の貫通孔)
B ドーナツ
L 長さ
W 幅
図1
図2