IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

<>
  • 特許-移動体 図1
  • 特許-移動体 図2
  • 特許-移動体 図3A
  • 特許-移動体 図3B
  • 特許-移動体 図4
  • 特許-移動体 図5A
  • 特許-移動体 図5B
  • 特許-移動体 図6
  • 特許-移動体 図7A
  • 特許-移動体 図7B
  • 特許-移動体 図7C
  • 特許-移動体 図8
  • 特許-移動体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230707BHJP
【FI】
G05D1/02 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017243032
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019109768
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】阪下 英知
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】大山 健
【審判官】刈間 宏信
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-134742(JP,A)
【文献】特開2009-294934(JP,A)
【文献】国際公開第2011/064821(WO,A1)
【文献】特開2011-108056(JP,A)
【文献】特開2015-55974(JP,A)
【文献】特表2019-502974(JP,A)
【文献】特開2012-226613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動する移動体であって、
前記移動体を全方向に移動できる移動機構と、
全方向に関して周囲の物体までの距離を測定する測距センサと、
前記測距センサによって測定された距離を用いて障害物を検知する障害物検知部と、
前記障害物検知部によって検知されたすべての障害物への衝突を防ぐように前記移動機構を制御する移動制御部と、を備え、
前記障害物検知部は、全方向に関して障害物を検知しつつ、前記移動体の移動方向については、周囲の物体までの距離が第1の閾値以下になった場合に、当該物体を障害物として検知し、移動方向以外の方向については、周囲の物体までの距離が、前記第1の閾値より短い第2の閾値以下になった場合に、当該物体を障害物として検知する、移動体。
【請求項2】
前記障害物検知部は、前記移動体の外縁を移動方向に延ばした領域において、移動方向に関する障害物の検知を行う、請求項1記載の移動体。
【請求項3】
前記移動制御部は、移動経路に沿って前記移動体が移動するように前記移動機構を制御するものであり、
前記移動方向は、前記移動経路に応じたものである、請求項2記載の移動体。
【請求項4】
前記障害物検知部は、前記移動体が回転している場合には、前記移動体の外縁を回転方向に回転させた領域において、移動方向に関する障害物の検知を行う、請求項1から請求項3のいずれか記載の移動体。
【請求項5】
前記移動制御部は、障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について、前記測距センサによる距離の測定を行うことができない場合には、減速するように前記移動機構を制御する、請求項2から請求項4のいずれか記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向に移動可能な移動体であって、測距センサを用いた障害物検知を行う移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体において、測距センサを用いて周囲の物体までの距離を測定し、その測定結果を用いて障害物を検知することが行われている。そのようにして障害物を検知した場合には、移動体は、その障害物との衝突を防ぐために、例えば減速したり停止したりする。移動体と障害物との衝突を防止するために障害物を検知することは大切であるが、不必要な障害物の検知が行われると、それにより、本来は必要でなかった減速や停止が行われることになり、移動体の適切な移動が阻害されてしまうことになる。
【0003】
なお、距離センサを用いた距離の測定結果を用いて移動制御を行う際に、移動体の不要な停止を低減するため、少なくとも3個の距離センサによって距離を測定する自律移動体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-103227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全方向に移動可能な移動体については、通常、全方向について障害物の検知を行うことになる。したがって、上記のような不必要な障害物の検知が行われる可能性が高くなる。例えば、移動方向とは逆の方向(すなわち、移動方向に対する後方)において障害物が検知されたとしても、移動体は、その検知された障害物の箇所を通過しない。そのため、そのような障害物の検知に応じて減速や停止を行う必要はなく、そのような障害物の検知は不必要であるということができる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、不必要な障害物の検知を低減できると共に、必要な障害物は適切に検知することができる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による移動体は、自律的に移動する移動体であって、移動体を全方向に移動できる移動機構と、全方向に関して周囲の物体までの距離を測定する測距センサと、測距センサによって測定された距離を用いて障害物を検知する障害物検知部と、障害物検知部によって検知された障害物への衝突を防ぐように移動機構を制御する移動制御部と、を備え、障害物検知部は、移動体の移動方向について、他の方向よりも広い範囲において、測距センサを用いた障害物の検知を行う、ものである。
このような構成により、移動体の移動方向以外については、移動体の移動方向よりも狭い範囲で測距センサを用いた障害物の検知を行うため、不必要な障害物を検知する可能性を低減することができる。例えば、移動方向に対する後方に存在する障害物を検知しないようにすることができ、不必要に減速したり、停止したりすることを回避することができる。
【0008】
また、本発明による移動体では、障害物検知部は、移動体の外縁を移動方向に延ばした領域において、移動方向に関する障害物の検知を行ってもよい。
このような構成により、移動体が今後、移動する際に通過する領域について、移動方向以外の方向よりも広い範囲において障害物検知を行うようになり、不必要な障害物の検知を低減することができる。
【0009】
また、本発明による移動体では、移動制御部は、移動経路に沿って移動体が移動するように移動機構を制御するものであり、移動方向は、移動経路に応じたものであってもよい。
このような構成により、例えば、移動経路が曲線等を含む場合であっても、その曲線に応じた領域において、障害物検知を行うことができるようになる。
【0010】
また、本発明による移動体では、障害物検知部は、移動体が回転している場合には、移動体の外縁を回転方向に回転させた領域において、移動方向に関する障害物の検知を行ってもよい。
このような構成により、移動体が回転する場合にも、その移動体が通過する領域について、他の方向よりも広い範囲において、障害物検知を行うようになり、不必要な障害物の検知を低減することができる。
【0011】
また、本発明による移動体では、移動制御部は、障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について、測距センサによる距離の測定を行うことができない場合には、減速するように移動機構を制御してもよい。
このような構成により、障害物の検知を行う領域における障害物の有無が不明な場合には、その領域に障害物が存在する可能性を考慮して減速することになり、安全性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による移動体によれば、全方向に移動可能な移動体において、不必要な障害物の検知を少なくすることができ、その結果、例えば、必要のない減速や停止を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態による移動体の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による移動体の動作を示すフローチャート
図3A】同実施の形態による移動体の移動方向について説明するための図
図3B】同実施の形態による移動体の測距方向について説明するための図
図4】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図5A】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図5B】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図6】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図7A】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図7B】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図7C】同実施の形態における移動方向の障害物の検知について説明するための図
図8】同実施の形態における障害物を検知できない範囲について説明するための図
図9】同実施の形態における移動体の移動について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による移動体について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による移動体は、全方向に移動可能なものであり、移動方向については、他の方向よりも広い範囲で測距センサを用いた障害物検知を行うものである。
【0015】
図1は、本実施の形態による移動体1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による移動体1は、自律的に移動するものであり、移動機構11と、測距センサ12と、障害物検知部13と、現在位置取得部14と、移動制御部15とを備える。なお、移動体1が自律的に移動するとは、移動体1がユーザ等から受け付ける操作指示に応じて移動するのではなく、自らの判断によって目的地に移動することであってもよい。その目的地は、例えば、手動で決められたものであってもよく、または、自動的に決定されたものであってもよい。また、その目的地までの移動は、例えば、移動経路に沿って行われてもよく、または、そうでなくてもよい。また、自らの判断によって目的地に移動するとは、例えば、進行方向、移動や停止などを移動体1が自ら判断することによって、目的地まで移動することであってもよい。また、例えば、移動体1が、障害物に衝突しないように目的地に移動することであってもよい。移動体1は、例えば、台車であってもよく、移動するロボットであってもよい。ロボットは、例えば、エンターテインメントロボットであってもよく、監視ロボットであってもよく、搬送ロボットであってもよく、清掃ロボットであってもよく、動画や静止画を撮影するロボットであってもよく、その他のロボットであってもよい。
【0016】
移動機構11は、例えば、図3Aで示されるように、移動体1を全方向に移動できるものである。全方向に移動できるとは、任意の方向に移動できることである。移動機構11は、例えば、走行部(例えば、車輪など)と、その走行部を駆動する駆動手段(例えば、モータやエンジンなど)とを有していてもよい。なお、移動機構11は、移動体1を全方向に移動できるものであるため、その走行部は、全方向移動車輪(例えば、オムニホイール、メカナムホイールなど)であってもよい。全方向移動車輪を有し、全方向に移動可能な移動体については、例えば、特開2017-128187号公報を参照されたい。この移動機構11としては、公知のものを用いることができるため、その詳細な説明を省略する。本実施の形態では、移動機構11がオムニホイールである走行部と、その走行部を駆動する駆動手段とを有している場合について主に説明する。
【0017】
測距センサ12は、例えば、図3Bで示されるように、全方向に関して周囲の物体までの距離を測定する。測距センサ12は、例えば、レーザセンサや、超音波センサ、マイクロ波を用いた距離センサ、ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像を用いた距離センサなどであってもよい。そのレーザセンサは、レーザレンジセンサ(レーザレンジスキャナ)であってもよい。なお、それらの測距センサについてはすでに公知であり、それらの説明を省略する。本実施の形態では、測距センサ12がレーザレンジセンサである場合について主に説明する。また、移動体1は、1個のレーザレンジセンサを有していてもよく、または、2個以上のレーザレンジセンサを有していてもよい。後者の場合には、2個以上のレーザレンジセンサによって、全方向がカバーされてもよい。また、測距センサ12が超音波センサや、マイクロ波を用いた距離センサなどである場合に、測距センサ12の測距方向を回転させることによって複数方向の距離を測定してもよく、複数方向ごとに配置された複数の測距センサ12を用いて複数方向の距離を測定してもよい。全方向に関して距離を測定するとは、例えば、全周囲(360度)について、あらかじめ決められた角度間隔で複数方向の距離を測定することであってもよい。その角度間隔は、例えば、1度間隔や2度間隔、5度間隔などのように一定であってもよい。測距センサ12から得られる情報は、例えば、移動体1のある向きを基準とした複数の方位角のそれぞれに関する周辺の物体までの距離であってもよい。その距離を用いることによって、移動体1のローカル座標系において、移動体1の周囲にどのような物体が存在するのかを知ることができるようになる。
【0018】
障害物検知部13は、測距センサ12によって測定された距離を用いて障害物を検知する。障害物検知部13は、例えば、測距センサ12によって測定された距離によって、移動体1の近くに物体が存在することが分かった場合に、その物体を障害物として検知してもよい。例えば、測距センサ12によって測定された周囲の物体までの距離が所定の閾値以下になった場合に、障害物検知部13は、その物体を障害物として検知してもよい。その周囲の物体までの距離は、例えば、測距センサ12からの距離であってもよく、移動体1の外縁からの距離であってもよく、移動体1の外縁を仮想的に膨張させた位置からの距離であってもよく、その他の基準からの距離であってもよい。その閾値は、1個であってもよく、または、2個以上存在してもよい。本実施の形態では、後述するように、停止領域と減速領域とに応じた2個の閾値が存在する場合について主に説明する。なお、前述のように、全方向について均等な障害物の検知を行った場合には、例えば、移動方向とは逆の方向に存在する物体についても障害物として検知することになる。そして、その障害物の検知に応じて、必要のない移動の停止や減速が行われる可能性もある。したがって、障害物検知部13は、移動体1の移動方向について、他の方向よりも広い範囲において、測距センサ12を用いた障害物の検知を行うものとする。換言すれば、移動方向以外については、移動方向よりも狭い範囲において、測距センサ12を用いた障害物の検知を行うことになる。移動方向は、例えば、移動平面上において位置が変化する方向であってもよく、回転方向であってもよい。移動方向は、例えば、直線であってもよく、曲線であってもよく、回転の方向であってもよい。広い範囲、狭い範囲とは、距離に関してであってもよく、角度に関してであってもよく、領域に関してであってもよい。すなわち、移動方向について障害物の検知を行う距離の方が、移動方向以外の方向について障害物の検知を行う距離よりも大きくてもよい。その距離は、移動体1からの距離である。具体的には、移動方向については、2メートルや3メートルまでの障害物を検知し、それ以外の方向については、10センチメートルまでの障害物を検知してもよく、または、障害物を検知しなくてもよい。また、回転方向について障害物の検知を行う角度の方が、回転方向の逆方向について障害物の検知を行う角度よりも大きくてもよい。また、移動方向について障害物の検知を行う領域には、移動方向に関係なく行われる障害物の検知領域に含まれていない領域が存在してもよい。より具体的には、移動方向に関係なく、移動体1の全方向について外縁から10センチメートルの範囲において、測距センサ12の測定結果を用いた障害物の検知を行っている場合に、移動方向については、その範囲に含まれない領域(例えば、2メートル先や3メートル先までの領域など)においても、測距センサ12の測定結果を用いた障害物の検知が行われてもよい。本実施の形態では、説明を簡単にするため、以下、移動方向以外については測距センサ12を用いた障害物の検知を行わない場合について主に説明する。
【0019】
障害物検知部13は、例えば、移動体1の移動方向を移動制御部15や移動機構11から取得してもよく、センサによって取得してもよい。前者の場合には、障害物検知部13は、移動のための指令値や、移動経路、移動に応じて変化するエンコーダの値などを用いて移動方向を取得してもよい。後者の場合には、障害物検知部13は、加速度センサやジャイロセンサなどによって、移動方向を取得してもよい。より具体的には、障害物検知部13は、移動体1が直線移動している場合には、その移動方向を加速度センサによって取得してもよく、移動体1が回転している場合には、その回転方向をジャイロセンサによって取得してもよい。なお、停止している移動体1が移動を開始する際には、障害物検知部13は、移動経路や、移動の開始時に出力される指令値などを用いて移動方向を取得してもよい。
【0020】
障害物検知部13は、移動体1の外縁を移動方向に延ばした領域において、測距結果を用いた、移動方向に関する障害物の検知を行ってもよい。例えば、図4で示されるように移動体1が移動している場合について説明する。図4は、移動体1を上方から見た図であり、図中の矢印方向(図中の右方向)に移動体1が直進するものとする。この場合には、移動体1の外縁のうち、前端の辺S1を移動方向に長さL1だけ移動させた際に、辺S1が通過する領域、すなわち辺S1がスイープする領域が停止領域R1となり、そこからさらに辺S1を移動方向に長さL2だけ移動させた際に、辺S1が通過する領域が減速領域R2となる。これらに限定されるものではないが、L1は、例えば、50センチメートルや1メートル程度であり、L2は、例えば、2メートルや3メートル程度であってもよい。L1やL2は、移動体1の移動速度や制動距離などに応じて決められてもよい。障害物検知部13は、停止領域R1に存在する物体B1や、減速領域R2に存在する物体B2を障害物として検知する。なお、障害物検知部13は、物体B1を、停止領域R1内の障害物として検知し、物体B2を、減速領域R2内の障害物として検知してもよい。そして、停止領域R1に障害物B1が存在する場合には、移動体1が停止されることになり、減速領域R2に障害物B2が存在する場合には、移動体1が減速されることになる。なお、停止領域R1及び減速領域R2の外部に存在する物体B3,B4,B5は、障害物として検知されない。したがって、移動体1の近傍に物体B4,B5が存在しても、停止領域R1及び減速領域R2に障害物が存在しない場合には、物体B4,B5に応じて移動体1が減速されたり停止されたりしないことになり、円滑な移動を実現できるようになる。また、移動体1の周囲に存在する物体について測距センサ12の測定距離によって検知されるのは、厳密には、その物体の移動体1側の1次元の外縁のみであるが、説明の便宜上、図4や後述する他の図面においては、物体B1等を2次元の広がりを持った図形で示している。また、移動方向以外についても測距センサ12を用いた障害物の検知を行う場合には、上記のように、移動方向よりも狭い範囲において、例えば長さL1やL2よりも短い範囲において障害物の検知が行われるものとする。
【0021】
次に、例えば、図5Aで示されるように、移動体1が斜め方向に移動している場合について説明する。この場合には、移動体1の外縁のうち、前方の辺S1,S2を移動方向に長さL1だけ移動させた際に、辺S1,S2が通過する領域が停止領域R1となり、そこからさらに辺S1,S2を移動方向に長さL2だけ移動させた際に、辺S1,S2が通過する領域が減速領域R2となる。なお、図5Aにおいて、物体B1,B2が障害物として検知され、物体B3,B4,B5が、障害物として検知されないことは、図4の場合と同様である。
【0022】
なお、図4図5Aでは、移動体1の前端や前方側の辺を移動方向に移動させることによって停止領域R1や減速領域R2が特定される場合について説明したが、移動体1のすべての外縁を移動方向に移動させることによって停止領域R1や減速領域R2が決められてもよい。例えば、図5Aにおいて、辺S1~S4をそれぞれ移動方向に長さL1だけ移動させた際に、各辺S1~S4がそれぞれ通過する領域を結合した領域を停止領域R1としてもよい。その場合には、停止領域R1は、互いに離れた位置に存在する2以上の領域の集合となってもよい。そのようにして停止領域R1を決めることによって、移動方向と移動体1の外縁(図5Aでは各辺)との関係を確認することなく、停止領域R1や減速領域R2を決めることができる。また、図4図5Aでは、移動体1の上面視の輪郭形状が矩形状である場合について示しているが、その輪郭形状は、例えば、円形状や、楕円形状、多角形状、その他の形状である場合があり得る。そのような場合であっても、すべての外縁を移動方向に移動させることによって、容易に停止領域R1等を確定することができる。
【0023】
また、上記説明では、停止領域R1や減速領域R2を特定し、その領域内に測距センサ12によって測定された物体が存在するかどうかによって、障害物が存在するかどうかを判断する場合について説明したが、障害物の検知方法は、それ以外の方法であってもよい。例えば、図4において、移動体1の辺S1を移動方向に徐々に移動させ、その辺S1を長さL1だけ移動させるまでに、辺S1が測距センサ12によって距離の測定されている物体に当たる場合には、停止領域R1に存在する障害物が検知され、その辺S1を長さL1だけ移動させた後にさらに長さL2だけ移動方向に移動させるまでに、辺S1が距離の測定された物体に当たる場合には、減速領域R2に存在する障害物が検知されてもよい。この処理は、例えば、測距センサ12によって距離の測定された物体を移動体1のローカル座標系においてプロットし、そのローカル座標系において、移動体1の外縁を移動させることによって行ってもよい。
【0024】
また、上記説明では、移動体1の外縁を移動させることによって停止領域R1等を決める場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、移動体1を上方から見た図5Bにおいて、移動方向(図中の矢印方向)に対する移動体1の前端である頂点A2を特定する。そして、その頂点A2を通り、移動方向に直交する方向の直線に対して、移動方向に移動体1を投影した範囲を線分S5とする。その線分S5を移動方向に長さL1だけ移動させた際に、線分S5が通過する領域を停止領域R1とし、そこからさらに線分S5を移動方向に長さL2だけ移動させた際に、線分S5が通過する領域を減速領域R2としてもよい。なお、図5Bでは、移動体1の外縁ではなく、投影した線分S5を移動させているため、移動体1の外縁と、線分S5との間にも領域が存在する。したがって、その領域、すなわち線分S5の左上側の端点と、移動体1の頂点A3とを結ぶ線分と、辺S2と線分S5によって囲われる領域R1-1、及び線分S5の右下側の端点と、移動体1の頂点A1とを結ぶ線分と、辺S1と線分S5によって囲われる領域R1-2も、停止領域としてもよい。このように、障害物を検知する領域、例えば停止領域や減速領域は、移動体1に対して所定のルールで決められる任意の形状の領域であってもよい。
【0025】
次に、移動体1が回転する場合について説明する。障害物検知部13は、移動体1が回転している場合には、移動体1の外縁を回転方向に回転させた領域において、測距結果を用いた、移動方向に関する障害物の検知を行ってもよい。その回転方向への回転の中心は、例えば、あらかじめ決まっていてもよい。具体的には、移動機構11が、特開2017-128187号公報で開示されるように、円周上に等間隔に配置されたN個(Nは3以上の整数)の全方向移動車輪を有する場合には、その円周の中心が回転中心であってもよい。そのように、通常、回転中心は移動機構11の構成に応じて決まることになる。したがって、移動体1のローカル座標系における回転中心の位置が、あらかじめ登録されていることが好適である。回転は、回転中心の位置が変化しない移動であり、回転以外の移動は、回転中心の位置が変化する移動であると考えてもよい。図6は、移動体1を上方から見た図であり、図中の矢印の回転方向に、回転中心Cを中心として移動体1が回転するものとする。移動体1が、図6で示される状態から角度AN1だけ回転する際に、移動体1の外縁が通過する領域、すなわち移動体1の外縁がスイープする領域が停止領域となり、移動体1がそこからさらに角度AN2だけ回転する際に、移動体1の外縁が通過する領域を減速領域となる。例えば、その停止領域に物体B1が存在し、減速領域に物体B2が存在する場合には、障害物検知部13は、それらを障害物として検知する。なお、物体B3,B4,B5が停止領域及び減速領域の外部に存在する場合には、それらは障害物として検知されない。回転の場合にも、障害物検知部13は、移動体1の外縁を回転方向に徐々に回転させ、その外縁を角度AN1だけ回転するまでに、その外縁が測距センサ12によって距離の測定されている物体に当たる場合には、停止領域に存在する障害物が検知され、その外縁を角度AN1だけ回転させた後にさらに角度AN2だけ回転方向に回転させるまでに、その外縁が距離の測定された物体に当たる場合には、減速領域に存在する障害物が検知されてもよい。なお、回転方向(移動方向)以外についても測距センサ12を用いた障害物の検知を行う場合には、回転方向とは逆の方向について、移動方向よりも狭い範囲において、例えば角度AN1やAN2よりも角度の小さい範囲において障害物の検知が行われてもよく、回転方向とは関係のない方向、例えば移動体1の外縁から離れる方向について、移動方向よりも狭い範囲において、例えば回転方向に関する障害物の検知範囲をカバーしない範囲において障害物の検知が行われてもよい。
【0026】
次に、移動体1が移動経路に沿って移動する場合について説明する。障害物検知部13は、移動体1が移動経路に沿って移動する場合には、その移動経路に沿った移動方向について、他の方向よりも広い範囲において測距センサ12を用いた障害物の検知を行ってもよい。例えば、図7Aで示されるように、移動経路が設定されている場合に、その移動経路に沿って移動体1の外縁が通過する領域に応じて、停止領域R1や減速領域R2が決められてもよい。図7Aでは、辺S1がL1だけ移動される際に通過する領域が停止領域R1となり、辺S1がさらにL2だけ移動される際に通過する領域が減速領域R2となってもよい。なお、移動体1は、全方向に移動できるため、例えば、図7Bで示されるように、矢印P1で示される方向(図中上方向)に移動した後に、方向転換(回転)することなく、矢印P2で示される方向(図中右方向)に移動することも可能である。その場合には、図7Cで示されるように、例えば、辺S1が通過する領域によって停止領域R1が決められ、辺S1が通過する領域と、辺S4が通過する領域とによって減速領域R2が決められてもよい。なお、矢印P1に応じた移動距離はL1よりも長く、図7Cにおいて、長さL2-1と長さL2-2とを加算した結果が、長さL2になるものとする。また、図7A図7Bにおいては、説明の便宜上、移動経路や移動を示す矢印に応じて移動する移動体1の箇所を、辺S1の中点としている。
【0027】
また、上記説明では、長さ(L1,L2)や角度(AN1,AN2)などの閾値を用いて障害物を検知する領域が決められる場合について説明したが、その閾値は、時間に応じたものであってもよい。すなわち、現時点からT1時間後までに移動体1の外縁が通過する領域が停止領域となり、その時点からさらにT2時間後までに移動体1の外縁が通過する領域が減速領域となってもよい。その場合には、例えば、あらかじめ設定されている速度指令または推定された速度指令を用いて、現時点から所定時間後までに移動体1の外縁が通過する領域を特定してもよい。例えば、回転と、回転以外の移動とが複雑に組み合わさる場合には、そのようにして障害物を検知する領域が決められてもよい。
【0028】
なお、障害物検知部13は、測距センサ12によって測定された距離以外を用いた障害物の検知を行ってもよい。例えば、障害物検知部13は、接触センサを用いた障害物の検知を行ってもよい。そして、その接触センサによって、障害物と移動体1との接触が検知された場合には、移動体1が停止されてもよい。
【0029】
また、障害物検知部13は、障害物の検知を行う領域(例えば、停止領域R1や減速領域R2など)の少なくとも一部について、測距センサ12による距離の測定を行うことができない場合には、そのことを検知してもよい。障害物の検知を行う領域の一部が壁などの影になっている場合などに、そのようなことが生じうる。例えば、図8で示されるように、移動体1が破線の矢印で示されるように移動する状況において、壁が存在することによって、測距センサ12を用いて領域R10に関する距離を測定することができず、その領域R10の一部が減速領域R2に含まれていたとする。そのような場合には、障害物検知部13は、そのことを検知してもよい。
【0030】
障害物検知部13は、移動体1のローカル座標系において示される移動体1の外縁の形状や回転中心などを示す情報を用いて、上記のように、障害物を検知する領域における障害物の検知を行ってもよい。具体的には、障害物検知部13は、それらの情報を用いて、停止領域や減速領域を特定し、停止領域に存在する障害物や減速領域に存在する障害物を検知してもよい。そして、障害物を検知した場合には、障害物検知部13は、その旨を移動制御部15に渡す。その際に、検知された障害物が、停止領域に存在するのか、減速領域に存在するのかも渡されてもよい。また、障害物の検知に応じて、障害物の迂回などの移動制御が行われる場合には、検知された障害物の位置を示す情報、例えば、移動体1のローカル座標系における障害物の座標値なども、移動制御部15に渡されてもよい。
【0031】
現在位置取得部14は、移動体1の現在位置を取得する。現在位置の取得は、例えば、無線通信を用いて行われてもよく、周囲の物体までの距離の測定結果を用いて行われてもよく、周囲の画像を撮影することによって行われてもよく、現在位置を取得できるその他の手段を用いてなされてもよい。無線通信を用いて現在位置を取得する方法としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いる方法や、屋内GPSを用いる方法、最寄りの無線基地局を用いる方法などが知られている。また、例えば、周囲の物体までの距離の測定結果を用いたり、周囲の画像を撮影したりすることによって現在位置を取得する方法としては、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などによって知られている方法を用いてもよい。周囲の物体までの距離の測定結果としては、例えば、測距センサ12の測定結果を用いてもよい。また、あらかじめ作成された地図(例えば、周囲の物体までの距離の測定結果や撮影画像を有する地図など)が記憶されている場合には、現在位置取得部14は、地図を用いて、周囲の物体までの距離の測定結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよく、周囲の画像を撮影し、地図を用いて、その撮影結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部14は、例えば、自律航法装置を用いて現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部14は、移動体1の向き(方向)を含む現在位置を取得することが好適である。その方向は、例えば、北を0度として、時計回りに測定された方位角によって示されてもよく、その他の方向を示す情報によって示されてもよい。その向きは、電子コンパスや地磁気センサによって取得されてもよい。
【0032】
移動制御部15は、移動機構11を制御することによって、移動体1の移動を制御する。移動の制御は、移動体1の移動の向きや、移動の開始・停止などの制御であってもよい。例えば、移動経路が設定されている場合には、移動制御部15は、移動体1がその移動経路に沿って移動するように、移動機構11を制御する。より具体的には、移動制御部15は、現在位置取得部14によって取得される現在位置が、その移動経路に沿ったものになるように、移動機構11を制御してもよい。また、移動制御部15は、地図を用いて、移動の制御を行ってもよい。その場合には、移動体1は、地図が記憶される記憶部を備えていてもよい。そのような移動の制御は公知であり、その詳細な説明を省略する。なお、移動体1が移動経路に沿って移動する場合に、その移動経路は、移動制御部15によって取得されてもよい。その移動経路の取得は、例えば、移動経路の生成によって行われてもよく、外部のサーバ等から移動経路を受け取ることによって行われてもよい。
【0033】
また、移動制御部15は、障害物検知部13によって検知された障害物への衝突を防ぐように移動機構11を制御する。移動制御部15は、前述のように、停止領域R1に存在する障害物が検知された場合には、移動体1が停止するように移動機構11を制御し、停止領域R1において障害物は検知されていないが、減速領域R2に存在する障害物が検知された場合には、移動体1がその時点の速度よりも減速するように移動機構11を制御してもよい。移動体1が減速される場合に、その減速後の速度が決まっていてもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、その時点の速度に対して相対的に決まる速度(例えば、50%の速度など)となるように減速が行われてもよい。また、移動制御部15は、検知された障害物への衝突を防ぐため、例えば、その障害物を迂回する経路を移動体1が通るように移動機構11を制御してもよい。その場合には、移動制御部15は、その検知された障害物の位置を通らない移動経路を新たに生成し、それに応じた移動を行うようにしてもよい。
【0034】
なお、移動制御部15は、障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について、測距センサ12による距離の測定を行うことができない場合、例えば、図8を用いて説明したように、領域R10について距離を測定できず、またその領域R10の一部が減速領域R2に含まれている場合には、移動体1が減速するように移動機構11を制御してもよい。その減速は、例えば、減速領域R2において障害物が検知された場合と同様にして行われてもよい。障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について、測距センサ12による距離の測定を行うことができないことは、前述のように、障害物検知部13によって検知されてもよい。その場合には、移動制御部15は、障害物検知部13によって、障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について、測距センサ12による距離の測定を行うことができないことが検知された際に、移動体1が減速するように移動機構11を制御してもよい。そのようにすることで、距離の測定を行うことができない領域に障害物が存在していることが後から分かった場合にも、停止などを適切に行うことができるようになる。なお、障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について、測距センサ12による距離の測定を行うことができない場合に、移動体1は、減速に代えて、またはその減速と共に、警告音の出力を行ってもよい。そのようにして、例えば、その距離の測定できない領域に人がいた場合に、移動体1の接近を警告することができる。
【0035】
次に、移動体1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)移動制御部15は、移動を開始するかどうか判断する。そして、移動を開始する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、移動を開始するまでステップS101の処理を繰り返す。なお、移動制御部15は、例えば、移動経路に沿った自律的な移動を開始する場合に、移動を開始すると判断してもよい。
【0036】
(ステップS102)移動制御部15は、移動体1の移動の制御を行う。この移動の制御は、例えば、目的地に向かう自律的な移動の制御である。このステップS102の移動の制御が繰り返して行われることによって、移動体1は、出発地から目的地に到達することになる。
【0037】
(ステップS103)障害物検知部13は、移動方向を取得する。その移動方向の取得も、例えば、加速度センサやジャイロセンサを用いて行われてもよく、移動制御部15や移動機構11からの情報を用いて行われてもよい。
【0038】
(ステップS104)障害物検知部13は、ステップS103で取得した移動方向によって、移動体1が回転しているかどうか判断する。その判断は、回転中心の位置が変化しているかどうかによって行われてもよい。そして、回転している場合、すなわち回転中心の位置が変化していない場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS105に進む。
【0039】
(ステップS105)障害物検知部13は、上記のようにして、回転以外の移動に応じた障害物の検知を行う領域に障害物が存在するかどうか判断する。そして、障害物が存在する場合には、ステップS106に進み、そうでない場合には、ステップS102に戻る。したがって、障害物が検知されない場合には、移動が継続されることになる。
【0040】
(ステップS106)移動制御部15は、ステップS105における障害物の検知に応じた制御を行う。その制御は、例えば、移動体1を停止させる制御や、減速させる制御である。そして、ステップS102に戻る。なお、障害物の検知に応じて移動体1を減速させた場合には、移動制御部15は、移動速度の上限を減速後のものに制限した上で、ステップS102に戻って移動を継続してもよい。その場合には、障害物が検知されなくなったとき(ステップS105またはステップS107でNoと判断されたとき)に、移動速度の上限の制限を解除してもよい。また、障害物の検知に応じて移動体1を停止させた場合には、移動制御部15は、障害物検知部13によって障害物が検知されなくなるまで停止を継続し、障害物が検知されなくなってから(例えば、障害物である人間が移動してから)、ステップS102に戻って移動を再開してもよい。
【0041】
(ステップS107)障害物検知部13は、上記のようにして、回転に応じた障害物の検知を行う領域に障害物が存在するかどうか判断する。そして、障害物が存在する場合には、ステップS108に進み、そうでない場合には、ステップS102に戻る。したがって、障害物が検知されない場合には、移動が継続されることになる。
【0042】
(ステップS108)移動制御部15は、ステップS107における障害物の検知に応じた制御を行う。その制御は、例えば、移動体1を停止させる制御や、減速させる制御である。そして、ステップS102に戻る。なお、障害物の検知に応じて移動体1を減速させた場合や停止させた場合には、移動制御部15は、ステップS106の説明と同様に処理を行ってもよい。
【0043】
なお、図2のフローチャートには含まれていないが、現在位置取得部14による現在位置の取得は、繰り返して行われているものとする。そして、その現在位置が、移動の制御に用いられてもよい。また、図2のフローチャートにおいて、移動体1が目的地に到達したこと、または電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0044】
図9は、本実施の形態による移動体1の移動の具体例について説明するための図である。図9を参照して、移動体1の移動環境である工場には、移動体1が通ることのできない設備B11~B13が存在している。また、移動体1は、図9で示されている位置から出発し、移動経路W1に沿って移動するものとする。したがって、移動体1が移動経路W1に沿って移動するごとに、障害物検知部13は、その移動経路W1に応じた移動方向を取得する(ステップS101~S103)。そして、障害物検知部13は、その移動が回転ではないと判断して(ステップS104)、回転ではない移動に応じた障害物の検知を行う領域に障害物が存在するかどうか判断する(ステップS105)。その障害物の検知を行う領域は、例えば、図4で示されるように、進行方向の前方となる。したがって、移動体1が設備B11,B12の間の通路を通る際にも、側方に存在する設備B11,B12の壁が障害物として検知されることはなく、減速や停止を行うことはないことになる。また、設備B11~B13によって形成されるT字路の箇所では、障害物検知部13は、図7Aで示されるように、移動経路W1に応じた領域において障害物検知を行うことになる。したがって、T字路の突き当たりの壁、すなわち設備B13の壁が障害物として検知されることはなく、減速や停止を行うことはないことになる。このようにして、全方向に移動可能な移動体1であっても、狭い範囲を円滑に移動することができるようになる。一方、進行方向の前方に人間などの障害物が入ってきた場合には、障害物検知部13によって障害物が存在すると判断され(ステップS105)、それに応じて移動体1が減速されたり、停止されたりすることになる(ステップS106)。このようにして、安全性も確保することができる。
【0045】
以上のように、本実施の形態による移動体1によれば、全方向に移動可能な移動体1における測距センサ12を用いた障害物の検知に関して、移動体1の移動方向について、他の方向よりも広い範囲について障害物の検知を行うことによって、不必要な障害物の検知を低減することができる。具体的には、移動方向に対する後方側や側方側に物体が存在したとしても、その物体を障害物として検知しないことによって、移動方向への移動が制限されないようにすることができる。一方、移動体1の移動方向については障害物の検知を行うため、安全性を犠牲にすることなく、不必要な減速や停止を低減することができるようになる。
【0046】
また、障害物の検知を行う領域の少なくとも一部について測距センサ12による距離の測定を行うことができない場合には移動体1が減速することによって、障害物を検知できない領域をも考慮した、より安全な移動を実現することができるようになる。
【0047】
また、本実施の形態では、停止領域と減速領域とに存在する物体が障害物として検知される場合について説明したが、障害物が検知される領域は、1個であってもよい。その場合には、例えば、停止領域のみが障害物の検知される領域であってもよい。
【0048】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0051】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0052】
また、上記実施の形態において、移動体1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0053】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0054】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上より、本発明による移動体によれば、不必要な障害物の検知を低減できるという効果が得られ、全方向に移動できる移動体として有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 移動体
11 移動機構
12 測距センサ
13 障害物検知部
14 現在位置取得部
15 移動制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9