(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20230707BHJP
H04N 5/32 20230101ALI20230707BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H04N5/32
H01L27/144 K
(21)【出願番号】P 2018126170
(22)【出願日】2018-07-02
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】奈良 修平
(72)【発明者】
【氏名】関根 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石野 隆行
(72)【発明者】
【氏名】田村 文識
(72)【発明者】
【氏名】畠澤 良和
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-245078(JP,A)
【文献】特開2014-116429(JP,A)
【文献】特開2014-078651(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195000(WO,A1)
【文献】特開2015-090957(JP,A)
【文献】特開2015-144298(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146855(WO,A1)
【文献】特開2018-84485(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070349(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/056255(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/32
H01L 27/144
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に接続された光電変換素子と、
前記光電変換素子を直接覆う第1保護膜と、
前記スイッチング素子よりも上層に位置し、前記第1保護膜に接する第1有機膜と、を備え、
前記第1有機膜は、前記光電変換素子の端面を含む前記光電変換素子の部位、である第1端部を覆い、
前記第1端部を覆う前記第1有機膜の端部である第1被覆部は、前記光電変換素子方向への傾斜を有して終端し、
前記第1有機膜は、前記光電変換素子のうち前記第1端部のみを覆う、イメージセンサ
であって、
前記第1有機膜を直接覆う第2保護膜と、
前記第1有機膜及び前記第2保護膜よりも上層に位置する配線を直接覆う第3保護膜と、を備え、
前記第1保護膜、前記第2保護膜、及び前記第3保護膜は無機膜であり、
前記第3保護膜は前記第2保護膜を直接覆い、
前記第2保護膜は前記第1保護膜を直接覆い、
前記第2保護膜の前記第1被覆部を直接覆う部分は、前記光電変換素子方向への傾斜を有する、イメージセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のイメージセンサであって、
マトリクス状に配置された複数の画素を含み、
前記複数の画素それぞれは、前記スイッチング素子と、前記光電変換素子と、を含み、
前記第1有機膜は、前記光電変換素子の間、及び前記複数の画素において最も外側に位置する光電変換素子である最外光電変換素子の外側に配置され、
前記最外光電変換素子の外側に位置する前記第1有機膜の端部は、前記第2保護膜で直接覆われている、イメージセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のイメージセンサであって、
前記第1有機膜よりも上層に第2有機膜を備える、イメージセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載のイメージセンサであって、
複数の前記光電変換素子を備え、
1つの前記第1保護膜が、前記複数の光電変換素子の全てを直接覆う、イメージセンサ。
【請求項5】
請求項1に記載のイメージセンサであって、
マトリクス状に配置された複数の画素を含み、
前記複数の画素それぞれは、前記スイッチング素子と、前記光電変換素子と、を含み、
前記イメージセンサは、
前記スイッチング素子に接続されたゲート線及び信号線と、
行方向に配置された画素からなる画素行を選択し、前記ゲート線を介して、前記選択中の画素行の画素に出力信号を出力して前記スイッチング素子を導通状態にする、走査部と、
前記選択中の画素行の画素の光電変換素子からの信号を、導通状態の前記スイッチング素子及び前記信号線を介して検出する、検出部と、を備え、
前記信号線は、前記第1有機膜を介して、前記光電変換素子と隔てられている、イメージセンサ。
【請求項6】
請求項1に記載のイメージセンサであって、
前記スイッチング素子を覆うスイッチング素子保護膜を備え、
前記光電変換素子及び前記第1有機膜は、前記スイッチング素子保護膜上に配置されている、イメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
間接型のX線撮像装置として、フラットパネルディテクタ(以下、Flat Panel Detector:FPDとも呼ぶ)が広く用いられている。FPDは、シンチレータと呼ばれるX線-光変換膜と、フォトダイオードアレイと、を含んで構成される。フォトダイオードアレイは、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTとも呼ぶ)とフォトダイオードとが接続して形成された受光素子を、マトリクス状に並べたデバイスである。フォトダイオードアレイは光をフォトダイオードで光電変換し、得られた電荷を、TFTを介して信号線から読み出して画像化する。
【0003】
特許文献1はX線撮像装置を開示する。特許文献1に記載のX線撮像装置において、第2の絶縁膜は、第1の絶縁膜とフォトダイオード及び電極を含む変換素子を覆うように設けられている。また、特許文献1に記載の撮像パネルにおいて、第2の絶縁膜は、0より大きい数x及び0以上の数yに対して、SiNxOyで表される材料で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高画質なFPD開発に向け、鮮鋭度の高い画像を得るニーズが高まっている。しかし、シンチレータからの光信号の進行方向が必ずしも受光面に対し垂直でないため、特許文献1に記載の技術では、本来入射すべき画素とは異なる画素(例えば、周辺画素)に光が入射してしまう可能性がある。つまり、この光は、周辺画素にとってはノイズ光(迷光)であるため、イメージセンサによって得られる画像がぼけてしまう、即ち鮮鋭度が低下してしまう。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術において、X線がシンチレータに対し垂直に入射しても、変換された光がイメージセンサの受光面(厳密には、特許文献1に記載の撮像パネルにおけるフォトダイオードの、特に非晶質シリコン層)に到達するまでに光学的な距離が存在するため、その間に光信号が散乱してしまい、一部の光信号が周辺画素に入射してしまう。つまり、鮮鋭度の高い画像を取得するには、各画素において周辺画素からのノイズ光の混入を抑制する必要がある。そこで本開示は、より鮮鋭度の高い画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様は以下の構成を採用する。イメージセンサは、基板上に配置されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子に接続された光電変換素子と、前記光電変換素子を直接覆う第1保護膜と、前記スイッチング素子よりも上層に位置し、前記第1保護膜に接する第1有機膜と、を備え、前記第1有機膜は、前記光電変換素子の端部の少なくとも一部である第1端部を覆い、前記第1端部を覆う前記第1有機膜の端部である第1被覆部は、前記光電変換素子方向への傾斜を有して終端し、前記第1有機膜は、前記光電変換素子のうち前記第1端部のみを覆う、イメージセンサ。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、鮮鋭度の高い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】イメージセンサの構成例を示すブロック図である。
【
図2】イメージセンサに適用可能な画素の回路構成例を示す回路図である。
【
図3】フォトダイオードアレイの上面の一例を示す概略図である。
【
図4】
図3のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の一例を示す概略図である。
【
図6】
図3のB部(第1有機膜を非表示)の一例を示す部分拡大図である。
【
図7】
図3のB部(第1有機膜を表示)の一例を示す部分拡大図である。
【
図8】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第1の例を示す断面図である。
【
図9】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第2の例を示す断面図である。
【
図10】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第3の例を示す断面図である。
【
図11】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第4の例を示す断面図である。
【
図12】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第5の例を示す断面図である。
【
図13】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第6の例を示す断面図である。
【
図14】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第6の例を示す断面図である。
【
図15】
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイの断面の第7の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を説明する。本実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。各図において共通の構成については同一の参照符号が付されている。また、図面に描かれた形状は、実際の寸法及び比率とは必ずしも一致しない。また、各図面におけるハッチングは、各構成要素を区別するためのものでもあり、必ずしも切断面を意味するものではない。また、説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例のイメージセンサの構成例を示すブロック図である。イメージセンサ10は、フォトダイオードアレイ200、走査回路400、及び検出回路300を含む。
【0012】
フォトダイオードアレイ200において、縦方向に配置された信号線281(S1-Sm)と横方向に配置されたゲート線282(G1-Gn)との各交点に配置された画素210がマトリクス状に配置されている。信号線281(S1-Sm)は、それぞれ、異なる画素列に接続されている。ゲート線282(G1-Gn)は、それぞれ、異なる画素行に接続されている。
【0013】
また、
図1には図示されていないが、イメージセンサ10は、後述するシンチレータ500を含む。シンチレータ500は、例えば、フォトダイオードアレイ200のZ軸方向にフォトダイオードアレイ200を覆うように配置されている。被写体に照射されたX線が被写体を透過してシンチレータ500に入射し、シンチレータ500は入射したX線を光に変換する。シンチレータ500が変換した光がフォトダイオードアレイ200に入射する。なお、イメージセンサ10は、シンチレータ500を含まなくてもよい。
【0014】
なお、本実施形態では、画素210が配列されたマトリクスの行方向及び列方向を、それぞれ、x軸方向、y軸方向とし、x軸及びy軸に直交し、フォトダイオードアレイ200にシンチレータ500が積層する方向をz軸方向とする。
【0015】
センサ基板100は、絶縁性基板(例えばガラス基板)である。信号線281(S1-Sm)は検出回路300に接続され、ゲート線282(G1-Gn)は走査回路400に接続される。またここに示した例では、全ての画素210に共通のバイアス線283(Bias)が接続されているが、全ての画素210および共通のバイアス線283が複数の画素領域に分割されており、それぞれの画素領域に対応する独立したバイアス線およびバイアス端子が配置されていてもよい。
【0016】
図2は、本実施例のイメージセンサ10に適用可能な画素210の回路構成例を示す回路図である。
図2の画素210は、
図1における上からi行目、左からj列目の画素210である。画素210は、フォトダイオード220とTFT290とを含む。フォトダイオード220は光電変換素子の一例である。TFT290は、スイッチング素子の一例である。なお、フォトダイオード220の代わりに、他の光電変換素子が用いられてもよい。また、TFT290の代わりに他のスイッチング素子が用いられてもよい。
【0017】
TFT290のゲート端子はゲート線Giに接続され、ドレイン端子は信号線Sjに接続され、ソース端子はフォトダイオード220のカソード端子に接続される。
図2の例において、フォトダイオード220のアノード端子は、バイアス線283(Bias)に接続されている。
【0018】
走査回路400は、フォトダイオードアレイ200における画素行を選択し、ゲート線282を介して、選択中の画素行の画素210に出力信号を出力してTFT290を導通状態にする。検出回路300は、導通状態のTFT290及び信号線281を介して、走査回路400が選択した画素行の画素210のフォトダイオード220からの信号を検出する。
【0019】
続いて、
図3乃至
図5を用いてフォトダイオードアレイ200の概略について説明する。説明の便宜のため、
図3乃至
図5にはフォトダイオードアレイ200の一部の構成の記載を省略する場合もある。例えば、
図3には、後述する第2保護膜250、第3保護膜260、及び第2有機膜270等が記載されていない。
【0020】
図3は、フォトダイオードアレイ200の上面の一例を示す概略図である。フォトダイオードアレイ200は、フォトダイオード220、第1有機膜230、第1保護膜240、及び第2保護膜250を含む。前述したように、フォトダイオードアレイ200において、フォトダイオード220がマトリクス状に配置されている。また、第1有機膜230が、フォトダイオード220間の隙間を埋めるように、井桁状に配置されている。
【0021】
図4は、
図3のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の一例を示す概略図である。フォトダイオード220それぞれは、下部に配置された下部電極221を含む。下部電極221の端部221aは、フォトダイオード220の下部電極221を除く部分における端部220a(以下、単にフォトダイオード220の端部220aとも呼ぶ)の外側に位置する。第1保護膜240それぞれは、フォトダイオード220を直接覆うように積層している。
【0022】
第1有機膜230は、隣接する第1保護膜240の間に配置される。具体的には、例えば、第1有機膜230は、隣接する第1保護膜240の間を満たす。第1有機膜230の端部230aは、フォトダイオード220の端部220aの内側に位置する。また、第1有機膜230の端部230aは、z軸の負の方向(即ちフォトダイオード220が存在する方向)に傾斜している。
【0023】
なお、フォトダイオード220の上面における端部220a(外周)の少なくとも一部の直上(z軸の正の方向)に、第1有機膜230の端部230aが位置すればよい。
図3の例では、フォトダイオード220のxy平面における端部220a(外周)全体の内側に、第1有機膜230の端部230aが位置する。なお、フォトダイオード220の上面の少なくとも一部の直上には、第1有機膜230が存在しない。
【0024】
図3及び
図4の例では、フォトダイオード220の上面の中央部の直上には、第1有機膜230が存在しない。なお、z軸方向において第1有機膜230とフォトダイオード220とが重複する部分の面積は、z軸方向において第1有機膜230と重複しないフォトダイオード220の部分の面積より十分小さいことが望ましい。
【0025】
第1有機膜230及び第1保護膜240を直接覆うように第2保護膜250が積層している。従って、フォトダイオード220の上面の直上に第1有機膜230が存在しない部分においては、第2保護膜250は、第1保護膜240上に積層している。
【0026】
なお、第2保護膜250は、第1有機膜230及び第1保護膜240の形状をなぞるように積層しているため、第1有機膜230の端部230aの直上で、z軸の負の方向(即ちフォトダイオード220が存在する方向)に傾斜している。なお、フォトダイオードアレイ200は、第2保護膜250を含む方が望ましいが、含まなくてもよい。
【0027】
第1有機膜230は、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、又はエポキシ樹脂等の有機樹脂材料で構成される。第1保護膜240及び第2保護膜250は、例えば、SiOxNy(x,yは0又は任意の自然数)等の絶縁性無機膜で構成される。
【0028】
図5は、
図4のA部の一例を示す部分拡大図である。
図5における入射光601及び入射光602の光路において、第2保護膜250がある場合、第2保護膜250は、第2保護膜250に入射する直前の他の媒質と比較して、高屈折率である。第2保護膜250がない場合、第1有機膜230の端部230aには後述する第3保護膜260(この場合、第3保護膜260は第2保護膜250と光学的に同様の機能を果たす)が直上に位置するので、第3保護膜260は、前記第3保護膜260に入射する直前の他の媒質と比較して、高屈折率である。
【0029】
第2保護膜250及び第3保護膜260がともにない場合、第1有機膜230の端部230aは、前記端部230aに入射する直前の他の媒質と比較して、高屈折率である。なお第2保護膜250、第3保護膜260、又は端部230aに光が入射する直前に他の材質の層がない場合は、他の媒質とは空気(屈折率1.0)を指すものとする。
【0030】
図4の第1有機膜230と、無機膜である第1保護膜240、及び無機膜である第2保護膜250又は第3保護膜260と(但し、
図4及び後述する
図5においては第2保護膜250として記載)、の間の熱膨張率差が大きい。一方、第1保護膜240と、第2保護膜250又は第3保護膜260と、の間の熱膨張率差は小さい。フォトダイオード220の上面の中央部の直上には、第1有機膜230が存在せず、第1保護膜240と、第2保護膜250又は第3保護膜260と、が積層している。
【0031】
つまり、フォトダイオード220の上面の中央部の直上においては、第1保護膜240の上に熱膨張率差が小さい第2保護膜250又は第3保護膜260が直接積層しているため、製造プロセスにおける温度差の影響を受けにくい。その結果、第1保護膜240と、第2保護膜250又は第3保護膜260と、の間の剥離やそれぞれの膜の亀裂が生じにくい。従って、フォトダイオードアレイ200の耐湿性が向上し、ひいてはフォトダイオードアレイ200の信頼性が向上する。
【0032】
また、第1保護膜240と、第2保護膜250又は第3保護膜260と、が同一又は類似する材質であるため、第1保護膜240の上に第2保護膜250又は第3保護膜260が直接積層している部分において、第1保護膜240と、第2保護膜250又は第3保護膜260と、の密着性が高い。従って、当該部分において膜浮きや膜剥がれが生じにくくなり、ひいては画像のムラが発生しにくくなる。
【0033】
また、第1有機膜230は、xy平面において、最も外側に位置するフォトダイオード220の外側にも配置されているが、最も外側に位置するフォトダイオード220より外側に位置する第1有機膜230の端部230bも、第2保護膜250又は第3保護膜260によって密封されている。従って、端部230bからの水分の侵入を防ぐことができる。これにより、フォトダイオードアレイ200の配線の腐食、並びにフォトダイオード220及びTFT290の特性悪化を抑制することができる。なお、フォトダイオードアレイ200のy軸方向の端部においても、第1有機膜230が、第2保護膜250又は第3保護膜260によって密封されている。
【0034】
図5に記載されたフォトダイオード220を他のフォトダイオード220と区別するためにフォトダイオード220-1と呼ぶ。入射光601及び入射光602は、いずれもシンチレータ500からフォトダイオードアレイ200に入射する光である。一般にシンチレータの発する光の波長は可視光であり、例えばシンチレータの一種であるCsI:Tlは、中心波長が550nm程度である。
【0035】
入射光601は、フォトダイオード220-1に入射すべき光成分(例えば、シンチレータ500のフォトダイオード220-1の直上に配置された部分から入射した光)を多く含む。入射光602は、フォトダイオード220-1に入射すべきでない光成分(例えば、シンチレータ500のフォトダイオード220-1の直上以外に配置された部分から入射した光、即ち他のフォトダイオード220(例えば隣接する画素210等の周辺画素のフォトダイオード220)に入射すべき光)を多く含む。
【0036】
入射光601のほとんどの光成分は、フォトダイオード220-1にそのまま入射する。一方、入射光602に含まれる入射すべきでない光成分は、例えば隣接する画素210の直上のシンチレータ500の部分から入射しているため、入射角が大きく、さらにフォトダイオード220-1の端部220-1aの直上の近傍から入射しやすい。また、前述したように、第2保護膜250又は第3保護膜260に入射する直前の他の媒質の屈折率と比較して、第2保護膜250又は第3保護膜260の屈折率が高い。
【0037】
従って、入射光602の少なくとも一部は、第2保護膜250又は第3保護膜260、及び第1有機膜230に設けられた傾斜部分において屈折し、フォトダイオード220-1に入射しない。これにより、各画素210において隣接する画素210からの光の混入を抑制することができる。その結果、隣接する画素210からの光によって引き起こされていた、画像のぼやけを改善し鮮鋭度を向上させることができる。
【0038】
なお、第1有機膜230は、例えば、380nm~700nmの波長範囲で光吸収特性を有してもよい。入射光602に含まれる入射光602-1は、第1有機膜230に設けられた傾斜部分において屈折するものの、第1有機膜230を通過して、フォトダイオード220-1に入射する。第1有機膜230が当該光吸収特性を有することにより、フォトダイオード220に入射する入射光602-1の光強度が第1有機膜230によって減衰するため、画像の鮮鋭度がさらに向上する。
【0039】
以下、
図6乃至
図8を用いて、フォトダイオードアレイ200の構成の詳細を説明する。
図6は、
図3のB部(第1有機膜230を非表示)の一例を示す部分拡大図である。
図7は、
図3のB部(第1有機膜230を表示)の一例を示す部分拡大図である。
図8は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第1の例を示す断面図である。なお、
図8には、フォトダイオードアレイ200を覆うシンチレータ500、及びフォトダイオードアレイ200の直下に配置されるセンサ基板100も描かれている。また、
図8には、後述する第2保護膜250、第3保護膜260、及び第2有機膜270等についても描かれている。
【0040】
センサ基板100上にTFT290が配置されている。TFT290は、ゲート電極291、ゲート絶縁膜292、半導体層293、ソース電極294、及びドレイン電極295を含む。センサ基板100上にゲート電極291が配置され、ゲート電極291を直接覆うようにセンサ基板100上にゲート絶縁膜292が積層している。
【0041】
ゲート電極291の直上に、ゲート絶縁膜292を介して、半導体層293が配置されている。また、ソース電極294及びドレイン電極295が、ゲート絶縁膜292上に配置されている。半導体層293のx軸方向の正の方向の端部にソース電極294が接続されている。半導体層293のx軸の負の方向の端部にドレイン電極295が接続されている。ソース電極294とドレイン電極295とは隔離されている。
【0042】
なお、ゲート電極291の構成材料は、例えば、Al、Cr、又はこれらの金属の合金などである。ゲート絶縁膜292の構成材料は、例えば、SiOxNy(x,yは0又は任意の自然数)、Al2O3及びそれらの積層膜などである。半導体層293は、例えば、a-Si(アモルファスシリコン)若しくはpoly-Si(多結晶シリコン)、又はIn、Ga、Zn、及びSnなどの金属酸化物などで構成される。ドレイン電極295の構成材料は、例えば、AlとMo及びTiなどの合金などの、抵抗率の低い金属である。
【0043】
なお、ゲート電極291の厚さ(以下、特に断らない限り、「厚さ」とは、z軸方向の厚さを示す)は、例えば、100~1000nm程度である。ゲート絶縁膜292の厚さは、例えば、200~600nm程度である。半導体層293の厚さは、例えば、10~500nm程度である。ソース電極294及びドレイン電極295の厚さは、例えば、100~1000nm程度である。
【0044】
半導体層293、ソース電極294、及びドレイン電極295を覆うように、TFT保護膜280が積層している。TFT保護膜280は、例えば、SiOxNy(x,yは0又は任意の自然数)やAl2O3等の絶縁性無機膜で構成される。TFT保護膜280の厚さは、100~2000nm程度である。
【0045】
TFT保護膜280上にフォトダイオード220及び第1有機膜230が配置される。第1有機膜230の厚さは、例えば、500~2500nm程度である。フォトダイオード220は、例えば、z軸の負の方向から順に、下部電極221、n型a-Si層222、i型a-Si層223、p型a-Si層224、上部電極225、が積層されることによって構成される。
【0046】
下部電極221は、TFT保護膜280を貫通して、例えば第1コンタクト部285において、ソース電極294に接続される。下部電極221には、例えば、Crなどを用いることができる。上部電極225の構成材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極を用いることができる。下部電極221の厚さは、例えば、10~200nm程度である。上部電極225の厚さは、例えば、10~200nm程度である。
【0047】
n型a-Si層222の厚さは、例えば、10~100nm程度である。i型a-Si層223の厚さは、例えば、500~2000nm程度である。p型a-Si層224の厚さは、例えば、10~100nm程度である。
【0048】
また、TFT290とフォトダイオード220との間の寄生容量を低減するために、
図8のように、TFT290とフォトダイオード220が離間して配置されていることが好ましい。同様に、フォトダイオード220間の寄生容量を低減するために、フォトダイオード220についても離間して配置されていることが好ましい。
【0049】
第1保護膜240は、フォトダイオード220を直接覆う。また、第1有機膜230は、隣接する第1保護膜240の間に配置される。前述した通り、第1有機膜230及び第1保護膜240を直接覆うように、第2保護膜250が積層している。第1保護膜240の厚さは、例えば、50~2000nm程度である。第2保護膜250の厚さは、例えば、50~1000nm程度である。なお、第2保護膜250は、第1有機膜230及び第1保護膜240の形状をなぞるように積層しているため、第1有機膜230の端部230aの直上で、z軸の負の方向に傾斜している。
【0050】
また、前述したように第1有機膜230の端部230aは、フォトダイオード220の端部220aの内側に位置し、第1有機膜230の端部220aは、z軸の負の方向(即ちフォトダイオード220が存在する方向)に傾斜している。
【0051】
第1有機膜230とフォトダイオード220とが重なる幅L1は、10μm以下が望ましく、例えば、3μmである。フォトダイオード220の幅L2は、200μm以下であり、用途によっては100μm以下である。また、L1は、L2より十分小さい。また、第1有機膜230の端部220aの傾斜角は、例えば、15度~75度程度である。
【0052】
また、上部電極225上に、バイアス線283が配置されている。バイアス線283は、第1保護膜240及び第2保護膜250を貫通して、例えば第2コンタクト部286において、上部電極225に接続されている。また、ドレイン電極295上に、信号線281が配置されている。
【0053】
信号線281は、第2保護膜250を貫通して、例えば第3コンタクト部287において、ドレイン電極295に接続されている。また、第1有機膜230と信号線281との間は、第2保護膜250によって隔てられている。
【0054】
なお、第1有機膜230は比誘電率が低く、また、信号線281と、TFT290及びフォトダイオード220と、の間の空間の大半は、第1有機膜230で満たされていることが望ましい。これにより、信号線281の寄生容量を低減することができる。信号線281の寄生容量が低下することにより、検出回路300は信号を高速に読み取ることができるため、イメージセンサ10の残像特性が改善する。
【0055】
図6乃至
図8の例では、信号線281及びバイアス線283の少なくとも一部が、第1有機膜230より上層に位置しているが、信号線281及びバイアス線283の全体が第1有機膜230より上層に位置しなくてもよい。
【0056】
ゲート線282は、例えば、
図6のフォトダイオード220の場合はy軸の負の方向に位置し、x軸方向に沿って配置されている。ゲート線282は、例えば、zx平面と平行な平面において、ゲート電極291に接続されている。信号線281、ゲート線282、及びバイアス線283の厚さは、例えば、100~1000nm程度である。
【0057】
信号線281、及びバイアス線283を直接覆うように第3保護膜260が積層している。第3保護膜260は、例えば、SiOxNy(x,yは0又は任意の自然数)等の絶縁性無機膜で構成される。第3保護膜260は、信号線281及びバイアス線283を保護する。なお、第3保護膜260は、第2保護膜250の形状をなぞるように積層しているため、第1有機膜230の端部230aの直上で、z軸の負の方向に傾斜している。なお、第3保護膜260はある方が望ましいが、なくてもよい。
【0058】
第3保護膜260を覆うように第2有機膜270が積層している。第2有機膜270は、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂材料の平坦化膜や、パリレンなどに代表されるシンチレータ保護膜、光学両面テープ(OCAテープ:Optical Clear Adhesive tape)や光学接着剤などに代表されるシンチレータ接着剤などが該当する。第2有機膜270を覆うようにシンチレータ500が配置される。
【0059】
なお、第3保護膜260の厚さは、例えば、50~1000nm程度である。第2有機膜270の厚さは、例えば、500~5000nmである。シンチレータ500の厚さは、例えば、10nm~10mm程度である。なお、フォトダイオードアレイ200は、第3保護膜260及び第2有機膜270の少なくとも一方を含まなくてもよい。
【0060】
図9は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第2の例を示す断面図である。
図8との相違点を説明する。
図8の例では、TFT290の形状が逆スタガ型であったが、
図9の例では、TFT290の形状が順スタガ型である。順スタガ型と逆スタガ型の最大の違いは、半導体層293とゲート電極291の位置関係の違いである。
【0061】
センサ基板100上に半導体層293、ソース電極294、及びドレイン電極295が配置されている。半導体層293のx軸方向の正の方向の端部にソース電極294が接続されている。半導体層293のx軸の負の方向の端部にドレイン電極295が接続されている。
【0062】
半導体層293、ソース電極294、及びドレイン電極295を覆うようにゲート絶縁膜292が積層している。半導体層293の直上に、ゲート絶縁膜292を介して、ゲート電極291が配置されている。ゲート電極291を覆うように、TFT保護膜280が積層している。
【0063】
図10は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第3の例を示す断面図である。
図8との相違点を説明する。
図10の例では、半導体層293と、ソース電極294及びドレイン電極295と、の接続がチャネルエッチ型である。半導体層293の上面のx軸方向(又はy軸方向)の中央部が窪んでいる。
【0064】
図11は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第4の例を示す断面図である。
図8との相違点を説明する。
図11の例では、半導体層293と、ソース電極294及びドレイン電極295と、の接続がチャネル保護型である。TFT290は、エッチストップ層296をさらに含む。
【0065】
半導体層293のx軸方向(又はy軸方向)の中央部に、島状のエッチストップ層296が配置されている。エッチストップ層296の正のx軸方向の端部にソース電極294が接している。エッチストップ層296の負のx軸方向の端部にドレイン電極295が接している。エッチストップ層296は、例えば、SiOxNy(x,yは0又は任意の自然数)やAl2O3等の絶縁性無機膜で構成される。エッチストップ層296の厚さは、例えば、10~500nm程度である。
【0066】
図12は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第5の例を示す断面図である。
図11との相違点を説明する。
図12の例では、半導体層293と、ソース電極294及びドレイン電極295と、の接続がコンタクト型である。
【0067】
半導体層293を覆うように、エッチストップ層296が積層されている。エッチストップ層296上に、ソース電極294及びドレイン電極295が配置されている。また、ソース電極294及びドレイン電極295は、エッチストップ層296を貫通して、半導体層293に接続される。
【0068】
図13は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第6の例を示す断面図である。
図8との相違点を説明する。
図8の例では、互いに隔離された第1保護膜240が、フォトダイオード220それぞれを覆う。
【0069】
一方、
図13の例では、一連の第1保護膜240が全てのフォトダイオード220を覆うように積層している。即ち、
図13の例においては、
図4における第1保護膜240同士が繋がっている。第1保護膜240が一連の形状を有することにより、フォトダイオードアレイ200の製造工程において、フォトダイオード220を覆わない部分を除去する工程が不要であるため、製造効率が高まる。
【0070】
図14は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第7の例を示す断面図である。
図14の断面図は、フォトダイオードアレイ200が、第2保護膜250を含まない点を除いて、
図8と同様である。
【0071】
図15は、
図6のA-A’線で切断したフォトダイオードアレイ200の断面の第8の例を示す断面図である。
図15の断面図は、フォトダイオードアレイ200が、第2保護膜250及び第3保護膜260を含まない点を除いて、
図8と同様である。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明が上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、
図2に示した画素210の回路構成として、フォトダイオード220のアノード端子、カソード端子が、各々、TFT290、及びバイアス線283に接続されてもよい。このように、当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本発明の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 イメージセンサ、100 センサ基板、200 フォトダイオードアレイ、210 画素、220 フォトダイオード、221 下部電極、230 第1有機膜、240 第1保護膜、250 第2保護膜、260 第3保護膜、270 第2有機膜、280 TFT保護膜、290 TFT、281 信号線、282 ゲート線、283 バイアス線、300 検出回路、400 走査回路、500 シンチレータ