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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20230707BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
H05K13/08 B
H05K13/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019044698
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020150055
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 明靖
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-059100(JP,A)
【文献】特開2004-193191(JP,A)
【文献】特開2003-133792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に部品を実装する部品実装装置であって、
前記部品が吸着される開口部を有する吸着ノズルと、
前記開口部に連なり、気体を流通可能な通気路と、
前記通気路に負圧を供給するように動作する負圧供給部と、
前記通気路に正圧を供給するように動作する正圧供給部と、
前記吸着ノズルの上昇及び下降を行う昇降部と、
前記吸着ノズルの前記開口部内に生じる気圧を検出可能な圧力検出部と、
前記圧力検出部の検出結果に基づいて、前記正圧供給部の動作継続時間及び前記昇降部による前記吸着ノズルの上昇タイミングを制御する制御部と、を備え、
前記通気路に負圧を供給することで前記吸着ノズルに部品を吸着保持し、
前記通気路に正圧を供給することで前記吸着ノズルによる部品保持を解放するものにおいて、
前記制御部は、
前記圧力検出部の検出結果に基づいて、前記正圧供給部の前記動作継続時間を決定するブロー時間決定処理と、
前記圧力検出部の検出結果に基づいて、前記正圧供給部の前記動作継続時間の終了後、前記吸着ノズルを上昇するまでの時間を決定する上昇タイミング決定処理とを、行い、
前記動作継続時間は、正圧供給により前記開口部内の真空破壊が可能であり、かつ、正圧停止から所定の待ち時間経過後における前記開口部内の圧力のピーク値が所定値以下となるように調整された時間であり、
前記制御部は、前記圧力検出部の検出結果に基づいて、正圧停止から所定の待ち時間経過後における前記開口部内の圧力のピーク値が、前記所定値以上になるか否かを判断し、前記ピーク値が所定値以上の場合、前記ピーク値が前記所定値以下になるように、前記正圧供給部の動作継続時間を調整し、
前記所定値は、周りの実装済み部品に対して影響を与えない所定の圧力である、部品実装装置。
【請求項2】
前記圧力検出部は、前記吸着ノズルの前記開口部に密着して前記開口部に生じる気圧を検出する請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記圧力検出部は、前記正圧及び前記負圧を検出可能な連成計とされている請求項2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記正圧供給部の前記動作継続時間の終了後、前記吸着ノズルを上昇するまでの前記時間は、正圧停止後、前記開口部の内圧が所定の部品解放圧力に低下する時間である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記正圧供給部の動作終了後、前記上昇タイミング決定処理で決定した前記時間が経過した後に前記吸着ノズルが上昇するように前記上昇タイミングの制御を行う請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【請求項6】
前記制御部による前記ブロー時間決定処理及び前記上昇タイミング決定処理は、部品実装装置の電源投入後、部品の実装動作に先立って、定期的に行われる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【請求項7】
前記制御部は、異常が検出された場合に、前記圧力検出部により検出される圧力が所定の圧力に到達するまでの時間を検出し、この検出した時間に基づいて前記正圧供給部の動作継続時間及び前記上昇タイミングの制御を行う請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、部品実装装置に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着ノズルに負圧により部品を吸着した後、正圧を供給して部品を実装する部品実装装置が知られている。特許文献1の部品実装装置は、吸着ノズルと接続される空気配管に圧力センサを設けるようにし、吸着ノズルが吸着した部品を解放する際にその都度、圧力センサで圧力を検出する。そして、圧力センサで検出された真空度と、演算式とを基にして正圧供給手段が吸着ノズルに正圧を印加する時間を制御する。部品を吸着した吸着ノズルは、吸着ノズルが下降するのと前後して真空圧を破壊し、これによって吸着部品を基板上に搭載し、再び吸着ノズルが上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-78290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記構成では、吸着ノズルの下降後、吸着ノズルを上昇させるタイミングによっては、正圧の供給時に部品の保持力が変化し、部品の実装不良や精度不良の発生が懸念される。特に部品の実装動作を高速化する場合には、吸着ノズルを上昇させるタイミングがずれると実装不良等の発生率が高まることが懸念される。
【0005】
本明細書に記載された技術は、部品の実装不良等の発生を抑制することが可能な部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載された部品実装装置は、基板に部品を実装する部品実装装置であって、前記部品が吸着される開口部を有する吸着ノズルと、前記開口部に連なり、気体を流通可能な通気路と、前記通気路に負圧を供給するように動作する負圧供給部と、前記通気路に正圧を供給するように動作する正圧供給部と、前記吸着ノズルの上昇及び下降を行う昇降部と、前記吸着ノズルの前記開口部内に生じる気圧を検出可能な圧力検出部と、前記圧力検出部の検出結果に基づいて、前記正圧供給部の動作継続時間及び前記昇降部による前記吸着ノズルの上昇タイミングを制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、吸着ノズルの開口部に生じる気圧に基づいて、正圧供給部の動作継続時間及び吸着ノズルの上昇タイミングが制御されるため、部品実装装置の経時劣化等によって負圧から正圧への切り替えの際に、部品の保持圧力の変化が生じうる状況であっても適正なタイミングで部品の実装動作を行うことが可能になる。よって、部品の実装不良や精度不良の発生を抑制することができる。
【0008】
本明細書に記載された技術の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記吸着ノズルの前記開口部に密着して前記開口部に生じる気圧を検出可能な圧力検出部を備える。
このようにすれば、吸着ノズルの開口部に連なる通気路の圧力をセンサで検出する構成と比較して、吸着ノズルの開口部内の圧力を高精度で検出することができる。
【0009】
前記圧力検出部は、前記正圧及び前記負圧を検出可能な連成計とされている。
このようにすれば、正圧を検出する正圧計(圧力計)と負圧を検出する真空計とのそれぞれを備える構成と比較して部品実装装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0010】
前記制御部は、前記圧力検出部の検出結果に基づいて所定の正圧状態になるか否かを判断し、前記所定の正圧状態になる否かの判断結果に応じて前記正圧供給部の動作継続時間を変更する。
このようにすれば、所定の正圧状態とならない状態で吸着ノズルが上昇することによる部品の実装不良や精度不良の発生を抑制することができる。
【0011】
前記制御部は、前記正圧供給部の動作終了後、所定時間経過後に前記吸着ノズルが上昇するように前記上昇タイミングの制御を行う。
このようにすれば、実装用ヘッドの駆動時に必ずしも正圧の検出を行わなくても所定時間経過後の上昇タイミングで実装用ヘッドが上昇するように制御できるため、部品実装装置の構成を簡素化することが可能になる。また、開口部内の圧力が正圧状態とならない状態で吸着ノズルが上昇することによる部品の実装不良や精度不良の発生を抑制することができる。
【0012】
前記制御部による前記正圧供給部の動作継続時間及び前記上昇タイミングの制御は定期的に行われる。
このようにすれば、部品の保持圧力の変化が生じうる状況であっても正圧供給部の動作継続時間及び吸着ノズルの上昇タイミングを定期的に修正することができるため、適正なタイミングで部品の実装動作を行うことが可能になり、より一層、部品の実装不良や精度不良の発生を抑制することができる。
【0013】
前記制御部は、異常が検出された場合に、前記圧力検出部により検出される圧力が所定の圧力に到達するまでの時間を検出し、この検出した時間に基づいて前記正圧供給部の動作継続時間及び前記上昇タイミングの制御を行う。
このようにすれば、部品の保持圧力の変化が生じうる状況であっても、異常が検出された場合に、圧力検出部により検出される圧力が所定の圧力に到達するまでの時間に基づいて適正な動作継続時間及び上昇タイミングに修正することができるため、より一層、部品の実装不良や精度不良の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に記載された技術によれば、部品の実装不良等の発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態1の部品実装装置を示す平面図
図2】連成計に密着する吸着ノズルに対してエア供給源からの正圧及び負圧の供給経路を示す図
図3】部品実装装置の電気的構成を示すブロック図
図4】ブロー時間決定処理の際に連成計で検出される時間-圧力特性を示す図
図5図4の状態から更にブローOFFタイミングを早めた際に連成計で検出される時間-圧力特性を示す図
図6図4の状態よりもブローOFFタイミングが遅い場合に連成計で検出される時間-圧力特性を示す図
図7】部品の実装時における時間-圧力特性を示す図
図8】ブローON及びヘッド上昇タイミング決定処理を示すフローチャート
図9】ブロー時間決定処理を示すフローチャート
図10】部品の実装時における制御部の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
1、部品実装装置10の全体構成
実施形態1の部品実装装置10について図1図10を参照しつつ説明する。図1は部品実装装置10の平面図である。以下の説明では、基台11の長辺方向及び搬送コンベア13の搬送方向をX軸方向(図1の左右方向)とし、基台11の短辺方向をY軸方向(図1の上下方向)とし、X軸方向及びY軸方向と直交する方向を高さ方向とする。
【0017】
部品実装装置10は、図1に示すように、基台11と、プリント基板(「基板」の一例。以下では「基板P」と示す)を搬送方向(X軸方向)に搬送する搬送コンベア13と、部品B(電子部品)を吸着して基板P上に実装するヘッドユニット20とを備えている。
【0018】
基台11は、平面視長方形状をなし、基台11上における左右両側には、Y方向に延びる金属製の一対のY軸ビーム12Yが設けられている。一対のY軸ビーム12Y上には、X軸方向に延び、一対のY軸ビーム12Yに対してY方向に移動可能に支持された金属製のX軸ビーム12Xが設けられている。X軸ビーム12Xには、X軸方向に移動可能なヘッドユニット20が設けられている。X軸ビーム12X及びヘッドユニット20は、X軸モータ45X及びY軸モータ45Y(図3参照)の駆動によりX軸方向及びY軸方向に移動可能とされている。
【0019】
搬送コンベア13は、図1に示すように、基台11上の基板Pを左右方向(搬送方向)に搬送するものであって、循環駆動する一対の搬送ベルト14を備えており、基板Pは、両搬送ベルト14に架設する形でセットされる。基板Pは、搬送方向の一方側から基台11上において実装作業が行われる実装位置に搬入される。そして、この実装位置に停止した状態で部品Bの実装作業がされた後、搬送ベルト14に沿って他方側に搬出される。
【0020】
搬送コンベア13の両側には、X軸方向に並んで2箇所ずつ、計4箇所にフィーダ型供給装置16が配されている。フィーダ型供給装置16には、複数のフィーダ17が横並び状に整列して取り付けられている。各フィーダ17は、複数の部品Bが収容された部品供給テープ(不図示)が巻回されたリール(不図示)、及びリールから部品供給テープを引き出す電動式の送出装置(不図示)等を備えており、搬送コンベア13側に位置する端部から部品Bが一つずつ供給されるようになっている。基台11上においてX軸方向に並んだ一対のフィーダ型供給装置16の間には、部品認識カメラ18が設置されている。部品認識カメラ18は、搬送コンベア13の両側に一対設けられており、実装用ヘッド21の吸着ノズル22に吸着保持された部品Bを下方から撮像する。吸着ノズル22に吸着された部品Bは、部品認識カメラ18により撮影された後、基板P上で正圧の供給により開放される。
【0021】
ヘッドユニット20には、部品Bの実装動作を行う実装用ヘッド21が列状をなして複数個搭載されている。各実装用ヘッド21の先端には、図2に示すように、吸着ノズル22が設けられている。吸着ノズル22の先端部は筒状であって、部品Bを負圧によって吸着可能な開口部23を有する。ヘッドユニット20は、負圧によって部品Bを吸着ノズル22の開口部23に吸着した状態で実装位置に移動し、基板P上に部品Bを実装する。開口部23の上方は、気体を流通可能な通気路25に連なっている。通気路25は、エア供給源30と吸着ノズル22の開口部23との間に設けられた配管であって、負圧や正圧の気体が流通する。通気路25は、エア供給源30と吸着ノズル22との間において第1通気路25Aと第2通気路25Bとに分岐されている。第1通気路25Aには、逆止弁26と、エジェクタ28B(「負圧供給部」の一例)と、電磁バルブかなる負圧バルブ28A(「負圧供給部」の一例)とが直列に連なっている。第2通気路25Bには、電磁バルブかなる正圧バルブ31(「正圧供給部」の一例)と、可変絞り弁32とが直列に連なっている。吸着ノズル22への部品Bの吸着時には、負圧バルブ28Aがオン、正圧バルブ31がオフとされ、これにより、第2通気路25Bは遮断される一方、エジェクタ28Bとエア供給源30とが連通してエジェクタ28Bで負圧が生成されるとともに、エジェクタ28Bと吸着ノズル22とが連通してエジェクタ28Bで生成された負圧が吸着ノズル22の開口部23に供給され、部品Bの吸着が行われる。一方、基板Pへの部品Bの装着時には、上記負圧バルブ28Aをオフ、正圧バルブ31をオンすることにより、第1通気路25Aが遮断される一方、エア供給源30と吸着ノズル22との間の第2通気路25Bが連通し、吸着ノズル22に正圧が供給されて吸着ノズル22による部品Bの吸着状態が解除される。
【0022】
図1に示すように、一方の部品認識カメラ18に対して左右方向の一方側(図1では左方側)には、圧力測定ステーション27が設置されている。圧力測定ステーション27は、図2に示すように、正圧及び負圧を検出可能な連成計27B(「圧力検出部」の一例)と、連成計27Bが収容されるケース29(図2ではケース29の一部を図示し、他の部分は省略)とを備える。連成計27Bは、ケース29の孔29A内にセンサ部27Aが配され、吸着ノズル22の先端部の開口部23がセンサ部27Aの上面に密着することにより、開口部23内の圧力PA(気圧)を検出可能とされている。
【0023】
2.部品実装装置10の電気的構成
部品実装装置10は、図3に示すように、実装装置本体内に、全体を制御する制御部40を備える。制御部40は、CPU(Central Processing Unit)等により構成される演算処理部41、記憶部42、検出処理部43、モータ制御部44、画像処理部47、入出力部50及びフィーダ通信制御部57を備えている。実装装置本体の外部には、ユーザが操作可能な操作部61及びディスプレイ等の表示部62が設けられており、演算処理部41は、操作部61及び表示部62に接続されている。
【0024】
記憶部42には部品実装装置10の実装動作を制御するための実装プログラムや、基板Pの有無や位置を判断するためのデータ等が格納されている。また、演算処理部41が各種演算を行う際の情報を一時記憶させておくための作業領域が割り当てられている。また、後述するブローON及びヘッド上昇タイミング決定処理等で使用する各種情報が記憶されている。
【0025】
検出処理部43は、入出力部50を介してセンサ類51から現在の検出信号が入力されるとともに、記憶部42に記憶された過去の検出信号の波形と基板Pの有無や位置との関係の検出データを読み出し、検出信号と検出データとの関係により基板Pの有無や基板Pの位置を判断する。
【0026】
モータ制御部44は演算処理部41の指令の下、各モータを通電制御するものであり、搬送コンベア13を駆動するためのコンベアモータ15と、部品Bの実装作業を行うためのX軸モータ45X、Y軸モータ45Y、Z軸モータ45Z(Z軸モータ45Zは「昇降部」の一例)及びR軸モータ45Rが電気的に接続されている。画像処理部47は、部品認識カメラ18及び基板認識カメラ19に電気的に接続されている。入出力部50は、いわゆるインターフェースであって、負圧バルブ28A及び正圧バルブ31からなるバルブ類,エジェクタ28B,連成計27B,センサ類51及び検査機49が電気的に接続されている。センサ類51は、例えば、通気路25内に配されて通気路25内の圧力を検出する圧力センサ、通気路25内の流量を検出する流量センサ等とされる。フィーダ通信制御部57は、フィーダの駆動軸モータ59及び巻取軸モータ60の制御を行うフィーダ制御部58に接続されている。
【0027】
3.ブローON及びヘッド上昇タイミング決定処理
ユーザにより部品実装装置10の電源がONされると、部品実装装置10が稼働状態となる。部品実装装置10が稼働状態では、部品Bの実装動作に先立って、制御部40により、ブローON及びヘッド上昇タイミング決定処理が定期的(例えば、週一又は複数回、所定日の決まった時刻など)に行われる。ヘッド上昇タイミングA3は、Z軸モータ45Zによる吸着ノズル22(及び実装用ヘッド21)が上昇を開始するタイミングとされる。ブローON及びヘッド上昇タイミング決定処理では、図8に示すように、制御部40は、まずブロー時間決定処理を行う(S1)。
【0028】
(ブロー時間決定処理)
ブロー時間決定処理では、図9に示すように、制御部40は、X軸モータ45X及びY軸モータ45Yを駆動して吸着ノズル22を連成計27Bの上方に移動し、Z軸モータ45Zの駆動により、実装用ヘッド21を下降させて吸着ノズル22の下端部(先端部)の開口部23を連成計27Bのセンサ部27Aの上面に密着(接地)させる(S11)。次に、制御部40は、(正圧バルブ31はオフ状態のまま)負圧バルブ28Aをオンしてエジェクタ28Bを動作(バキュームON)させる(S12,図4参照)。
【0029】
負圧バルブ28Aをオンしてエジェクタ28Bを動作させた後(バキュームON後)は、負圧安定時間TS[ms]が経過するまで負圧バルブ28Aをオンしてエジェクタ28Bを動作させた状態(バキュームON状態)を継続する(S13で「NO」)。ここで、負圧安定時間TSとは、実験等で評価された所定の負圧状態に安定するまでの固定時間であり、予め記憶部42に記憶されている。
【0030】
次に、制御部40は、負圧安定時間TSが経過すると(S13で「YES」)、正圧供給動作の開始タイミングA1で負圧バルブ28Aをオフしてエジェクタ28Bを停止(バキュームOFF)させ、正圧バルブ31はオン(ブローON)する(S14)。正圧供給動作の開始タイミングA1は、正圧の供給動作を行うために正圧バルブ31をオン(及び負圧バルブ28Aをオフ)するタイミングとされる。なお、上記した負圧安定時間TSの経過の有無に限られず、例えば、圧力の変動が所定の範囲まで低下したことを圧力センサ等で検出することにより、負圧状態から正圧状態への切り替えを行うようにしてもよい。
【0031】
そして、真空破壊判断時間Tt1(後述するS19による減算回数に応じて、Tt1→Tt2,Tt3・・・に変化する)[ms]が経過するまで正圧バルブ31のオン状態(ブローON)を継続する(S15で「NO」)。ここで、真空破壊判断時間Tt1は、実験等により評価され、予め記憶部42に記憶されている真空破壊に十分な時間とされる。真空破壊判断時間Tt2(Tt2,Tt3・・・)を経過すると(S15で「YES」)、正圧供給動作の終了タイミングA21で(負圧バルブ28Aをオフしたまま)正圧バルブ31をオフ(ブローOFF)する(S16)。図4の正圧供給動作の終了タイミングA21は、正圧の供給動作を停止するために正圧バルブ31をオフするタイミングとされる。
【0032】
そして、負圧バルブ28A及び正圧バルブ31をオフした状態で所定の待ち時間TWが経過するまで待つ(S17で「NO」)。待ち時間TWは、実験等により求められ、予め記憶部42に記憶されている時間であり、正圧バルブ31のオフ後の残圧で開口部23内の圧力が上昇して正圧のピーク(最大気圧PM)に到達するのにかかる時間とされる。負圧バルブ28A及び正圧バルブ31をオフした状態で待ち時間TWが経過すると(S17で「YES」)、正圧バルブ31のオフ後に連成計27Bで検出された最大気圧PM(検出圧力)[kPa]がX[kPa]以上となっていたか否かを判断する(S18)。なお、X[kPa]は、図7における正圧のピークであり、周りの実装済み部品に影響を与えない圧力とされ、予め記憶部42に記憶されている。
【0033】
正圧バルブ31のオフ後の最大気圧PMがX[kPa]以上の場合には(S18で「YES」)、図5に示すように、真空破壊判断時間Tt1に対して微少な時間dsを減算した真空破壊判断時間Tt2とする(S19,Tt2=Tt1-ds)。その後、(正圧バルブ31はオフのまま)負圧バルブ28Aをオンしてエジェクタ28Bを動作させ(バキュームON)、正圧バルブ31のオフ後、待ち時間TWが経過するまでに連成計27Bで検出される最大気圧PMがX[kPa]以下となるまで、図9におけるS12からS19の処理を繰り返す(Tt3=Tt2-ds,Tt4=Tt3-ds,・・・)。
【0034】
そして、連成計27Bで検出された最大気圧PMがX[kPa]以下となると(S18で「NO」)、真空破壊判断時間(Tt1,Tt2・・・)に対して時間dsを加算し(S20)、新たな真空破壊判断時間(Tt1,Tt2・・・)を部品Bの実装動作時に用いる動作継続時間TBとして記憶部42に記憶する(S21)。これによりブロー時間決定処理が終了する。なお、図4ではブローONからブローOFFまでの真空破壊判断時間Tt1とし、最大気圧PMに達する前の圧力PAでブローOFFされる構成としたが、これに限られず、例えば、図6に示すように、真空破壊判断時間Tt1よりも長い真空破壊判断時間Tt(Tt>Tt1)とし、ブローOFF時のタイミングA20までに圧力PAが最大気圧PMに達している構成としてもよい。
【0035】
次に、図8に示すように、記憶部42に記憶されているデータのうち、正圧バルブ31をオンした後、開口部23内の圧力PAが所定の部品保持圧力Y(例えば-20[kPa])に到達するまでの時間T2[ms]を読み出す(S2)。ここで、部品保持圧力Y[kPa]は、部品Bが基板Pに接触(接地)するときに必要な圧力であり、正圧バルブ31の正圧供給動作の開始タイミングA1から開口部23内の圧力PAが部品保持圧力Yに到達するまでの時間T2は、例えばブロー時間決定処理時に連成計27Bによって検出されており、連成計27Bの検出データは記憶部42に記憶されている。
【0036】
次に、記憶部42に記憶されているデータのうち、正圧バルブ31をオフした後、開口部23内の圧力PAが所定の部品解放圧力Z(例えば+5[kPa])に到達するまでの時間T3[ms]を読み出す(S3)。ここで、部品解放圧力Z[kPa]は、吸着ノズル22が上昇して開口部23から部品Bが切り離される(解放される)際に必要な圧力とされる。本実施形態では、部品解放圧力Z[kPa]は、真空破壊判断圧力X[kPa]よりもわずかに小さい圧力とされているが、これに限られず、例えば、部品解放圧力Z[kPa]と真空破壊判断圧力X[kPa]とを同じ値としてもよい。時間T3は、連成計27Bで検出された圧力PAの圧力データ、正圧バルブ31のオフタイミング、部品解放圧力Zから算出される時間とされる。
これにより、ブローON及び実装用ヘッド21の上昇タイミング決定処理が終了する。
【0037】
3.部品Bの実装時における制御部の処理
制御部40は、搬送コンベア13を駆動させ、基板Pを所定の実装位置に搬送させるとともに、各軸モータを駆動して吸着ノズル22を移動させ、フィーダ型供給装置16から部品Bを供給して吸着ノズル22に吸着させるとともに、吸着ノズル22の位置が基板Pの上方に移動するように制御する。図7図10に示すように、ヘッド下降開始から部品Bが基板Pに密着(接地)するまでの時間TD[ms]を算出する(S31)。時間TDは、実装用ヘッド21の下降速度、距離、Z軸パラメータ等を用いて演算により求めることができる。
【0038】
次に、制御部40は、時間TDと時間T2とから時間T1を算出する(S32)。時間T1は、実装用ヘッド21の下降開始から正圧バルブ31の正圧供給動作の開始タイミングA1まで時間とされ、T1=TD-T2により時間T1を求めることができる。次に、制御部40は、Z軸モータ45Zを駆動させることにより、吸着ノズル22(実装用ヘッド)の下降が開始する(S33)。
【0039】
次に、制御部40は、吸着ノズル22(実装ヘッド)の下降開始から時間T1[ms]経過したか否かを判断し(S34)、吸着ノズル22の下降開始から時間T1[ms]経過した場合には(S34で「YES」)、負圧バルブ28Aをオフしてエジェクタ28Bを停止(バキュームOFF)し、正圧バルブ31をオン(ブローON)する(S35)。これにより、通気路25の気圧が徐々に上昇してブロー状態が開始される。なお、実装用ヘッド21が下降を開始してからT1[ms]後に正圧バルブ31をオンするのは、実装用ヘッド21の下降が終了した時点(部品が基板に接地された時点)で所定の部品保持圧力Y[kPS]となるようにするためである。
【0040】
次に、制御部40は、正圧バルブ31のオン(ブローON)から動作継続時間TB[ms]経過したか否かを判断する(S36)。正圧バルブ31のオン(ブローON)から動作継続時間TB[ms]経過した場合には(S36で「YES」)、制御部40は、正圧バルブ31をオフ(ブローOFF)することにより(S37)、ブロー状態が終了する。
【0041】
次に、記憶部42から時間T3を読み出し、正圧バルブ31をオフ(ブローOFF)してから時間T3[ms]経過したか否かを判断する(S38)。正圧バルブ31をオフしてから時間T3[ms]経過した場合には(S38で「YES」)、開口部23内の圧力PAは、部品Bの実装に不具合を生じない所定の部品解放圧力Z[kPa]以上である判断できるため、制御部40は、Z軸モータ45Zを駆動させることにより、実装用ヘッド21の上昇が開始する(S39)。その後、制御部40は、基板Pに実装する部品Bの数に応じて、フィーダ型供給装置16の部品Bを吸着ノズル22に吸着させる。そして、部品Bの数に応じて上記S31~S39を繰り返すことにより、部品Bが実装された基板Pが形成される。
【0042】
4.本実施形態の作用、効果
基板Pに部品Bを実装する部品実装装置10であって、部品Bが吸着される開口部23を有する吸着ノズル22と、開口部23に連なり、気体を流通可能な通気路25と、通気路25に負圧を供給するように動作する負圧バルブ28A及びエジェクタ28B(負圧供給部)と、通気路25に正圧を供給するように動作する正圧バルブ31及びエア供給源30(正圧供給部)と、吸着ノズル22の上昇及び下降を行うZ軸モータ45Z(昇降部)と、吸着ノズル22の開口部23内に生じる気圧を検出可能な連成計27B(圧力検出部)と、連成計27Bの検出結果に基づいて、正圧バルブ31及びエア供給源30による正圧供給動作の開始タイミングA1、前記正圧供給動作の終了タイミングA2及びZ軸モータ45Zによる吸着ノズル22の上昇タイミングA3を制御する制御部40、を備える。なお、開始タイミングA1、終了タイミングA2は、開始タイミングA1と終了タイミングA2の間の正圧バルブ31の動作継続時間TBとしてもよい。
本実施形態によれば、吸着ノズル22の開口部23に生じる気圧に基づいて、正圧バルブ31の動作継続時間TB及び吸着ノズル22の上昇タイミングA3が制御されるため、部品実装装置10の経時劣化等によって負圧から正圧への切り替えの際に、部品Bの保持圧力の変化が生じうる状況であっても適正なタイミングで部品Bの実装動作を行うことが可能になる。よって、部品Bの実装不良や精度不良の発生を抑制することができる。
【0043】
また、連成計27B(圧力検出部)は、吸着ノズル22の開口部23に密着して開口部23に生じる気体の圧力PA(気圧)を検出可能とされている。
このようにすれば、通気路25の気体の圧力をセンサで検出する構成と比較して、吸着ノズル22の開口部23(先端部)内の圧力PAを高精度で検出することができる。
【0044】
また、連成計27B(圧力検出部)は、正圧及び負圧を検出可能とされている。
このようにすれば、正圧を検出する正圧計(圧力計)と負圧を検出する真空計とのそれぞれを備える構成と比較して部品実装装置10の構成を簡素化することが可能になる。
【0045】
また、制御部40は、連成計27B(圧力検出部)の検出結果に基づいて所定の正圧状態(真空破壊判断圧力X)になる否かを判断し、所定の正圧状態になる否かの判断結果に応じて動作継続時間TB(真空破壊判断時間Tt)を変更する。
このようにすれば、簡素な構成で適切な動作継続時間を設定することができる。
【0046】
また、制御部40は、正圧バルブ31(正圧供給部)の動作終了後、所定時間T3経過後に吸着ノズル22が上昇するように上昇タイミングA3の制御を行う。
このようにすれば、実装用ヘッド21の駆動時に必ずしも正圧の検出を行わなくても所定時間T3経過後の上昇タイミングA3で実装用ヘッド21が上昇するように制御できるため、部品実装装置10の構成を簡素化することが可能になる。
【0047】
また、制御部40による正圧バルブ31の動作継続時間TB及び上昇タイミングA3の制御は定期的に行われる。定期的に行われる内容は、連成計27Bの検出結果に基づいて算出される動作継続時間TBと、連成計27Bにより検出される開口部23内の圧力データ(圧力曲線)が所定の部品保持圧力Y[kPa]に到達するまでの時間T2と、動作継続時間TB後、開口部23内の圧力PAが所定の部品解放圧力Z[kPa]に到達するまでの時間T3と、を決定(算出)する処理とされる。制御部40は、決定(算出)された動作継続時間TB、時間T2及び時間T3に基づいて正圧バルブ31の動作継続時間TB及びZ軸モータ45Zによる吸着ノズル22の上昇タイミングA3を制御することにより、実装動作が行われる(図10参照)。
このようにすれば、部品Bの保持圧力の変化が生じうる状況であっても吸着ノズル22の上昇タイミングA3を定期的に修正することができるため、適正なタイミングで部品の実装動作を行うことが可能になり、実装動作の精度を高めることができる。
【0048】
<実施形態2>
実施形態2について説明する。実施形態2は、正圧バルブ31の動作継続時間TB及び上昇タイミングA3の制御は、異常が検出された際に行われるものである。他の構成は、実施形態1と同一であるため、実施形態1と同一の構成については説明を省略する。
【0049】
部品実装装置10は、実装装置本体の異常や、基板Pの実装不良等を検出可能な異常検出部65を備えている。異常検出部65は、例えば、検査機49(図3参照)、基板認識カメラ19、部品認識カメラ18、制御部40等により構成することができる。異常検出部65により検出される異常は、部品Bの吸着エラー、部品Bの吸着圧力異常、基板Pに対する部品Bの搭載位置ずれ、外部の検査機49等による不良レポート等がある。検査機49等は、異常に関する検出結果を制御部40に出力する。制御部40は、異常検出部65により異常が検出された際に、連成計27B(圧力検出部)により検出される圧力PAが所定の部品保持圧力Yに到達するまでの時間T2を検出し、この検出した時間T2に基づいて正圧バルブ31の動作継続時間TB及び上昇タイミングA3の制御を行う。具体的には、異常検出部65により異常が検出された際には、連成計27Bの検出結果に基づいて算出される動作継続時間TBと、連成計27Bにより検出される開口部23内の圧力データ(圧力曲線)が所定の部品保持圧力Y[kPa]に到達するまでの時間T2と、動作継続時間TB後、開口部23内の圧力PAが所定の部品解放圧力Z[kPa]に到達するまでの時間T3と、を決定(算出)する処理が行われる。制御部40は、決定(算出)された動作継続時間TB、時間T2及び時間T3に基づいて正圧バルブ31の動作継続時間TB及びZ軸モータ45Zによる吸着ノズル22の上昇タイミングA3を制御することにより、実装動作が行われる(図10参照)。
【0050】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0051】
(1)正圧及び負圧の検出に連成計27Bを用いたが、これに限られず、例えば、正圧を検出する正圧計(圧力計)と負圧を検出する真空計とのそれぞれを備える構成としてもよい。
【0052】
(2)動作継続時間TBを算出する際に、真空破壊判断時間Ttに対して微少な時間dsを減算したが、これに限られない。例えば、真空破壊判断時間Ttを上記実施形態よりも予め短い時間に設定しておき、正圧バルブ31のオフ後の最大気圧PMがX[kPa]以下の場合に微少な時間dsを加算して動作継続時間TBを求めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10:部品実装装置,20:ヘッドユニット,21:実装用ヘッド,22:吸着ノズル,23:開口部,25:通気路,25A:第1通気路,25B:第2通気路,27:圧力測定ステーション,27B:連成計(圧力検出部),28A:負圧バルブ(負圧供給部),28B:エジェクタ(負圧供給部),30:エア供給源,31:正圧バルブ(正圧供給部),40:制御部,42:記憶部,44:モータ制御部,45R:R軸モータ,45X:X軸モータ,45Y:Y軸モータ,45Z:Z軸モータ(昇降部),50:入出力部,51:センサ類,65:異常検出部,A1:正圧供給動作の開始タイミング,A2,A20,A21:正圧供給動作の終了タイミング,A3:吸着ノズルの上昇タイミング,B:部品,P:基板,PA:圧力(気圧),T1,T2:時間,T3:時間(所定時間),TB:動作継続時間,TD:時間,TS:負圧安定時間,Tt:真空破壊判断時間,TW:待ち時間,ds:時間,X:真空破壊判断圧力,Y;部品保持圧力,Z:部品解放圧力
図1
図2
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図10