(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】肉類含有加熱食品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20230707BHJP
【FI】
A23L13/00 Z
(21)【出願番号】P 2019064791
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505126610
【氏名又は名称】株式会社ニチレイフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】志賀 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】原 翔一
(72)【発明者】
【氏名】村木 美智子
(72)【発明者】
【氏名】高杉 成俊
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-004839(JP,A)
【文献】安いお肉でも。ステーキの焼き方&ソース, クックパッド, [online], 17-01-2015 uploaded, [Retrieved on 16-12-2022], Retrieved from the Internet:<URL: https://cookpad.com/recipe/2943911>
【文献】カジキのパン粉焼き, クックパッド, [online], 17-09-2017 uploaded, [Retrieved on 16-12-2022], Retrieved from the Internet:<URL: https://cookpad.com/recipe/4706314>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1片面と、前記第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料を加熱調理して肉類含有加熱食品を製造する方法であって、
前記肉類含有食品原料の前記第1片面に打ち粉層を形成する工程を含み、
前記肉類含有食品原料の前記第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まず、
前記肉類含有食品原料の第2片面を焼成する工程
を含
み、
前記肉類は、牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉またはそれらの組み合わせであり、かつ、細切れ状肉または挽肉であり、
前記肉類含有食品原料は、前記肉類と経口摂取可能なその他の食品成分との混合成形物である、方法。
【請求項2】
前記第1片面に打ち粉層を形成する工程が、第1片面を上側とした状態にある肉類含有食品原料に対して上側から打ち粉を付着させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1片面に打ち粉層を形成する工程が、第1片面を下側とした状態にある肉類含有食品原料に対して下側から打ち粉を付着させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1片面に打ち粉層を形成する工程が、第2片面が被覆手段で覆われた状態にある肉類含有食品原料の第1片面に打ち粉を付着させる工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記打ち粉層における打ち粉の量が、肉類含有食品原料100重量部に対して0.5~4重量部である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記打ち粉層における打ち粉が、小麦粉、乾燥卵白、パン粉およびデンプンからなる群から選択される少なくとも一つのものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記肉類含有食品原料の重量が10~1,000gである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記肉類の量が、前記肉類含有食品原料100重量部に対して30~100重量部である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記打ち粉層の表面積が、肉類含有食品原料の全表面積の25~75%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2片面を焼成された前記肉類含有食品原料を蒸煮する工程をさらに含んでなる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法により得られた肉類含有加熱食品を冷凍する工程を含んでなる、冷凍済み肉類含有加熱食品を製造する方法。
【請求項12】
第1片面と、前記第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料からなる未加熱の肉類含有加熱用食品の、少なくとも前記第2片面を焼成して得られた、肉類含有加熱食品
であって、
前記肉類は、牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉またはそれらの組み合わせであり、かつ、細切れ状肉または挽肉であり、
前記肉類含有食品原料は、前記肉類と経口摂取可能なその他の食品成分との混合成形物であり、
前記
未加熱の肉類含有加熱用食品の第1片面は、その表面の少なくとも一部に打ち粉層が形成されており、
前記未加熱の肉類含有加熱用食品の第2片面は、打ち粉層が形成されておらず、
前記肉類含有加熱食品の表面に存在する焼き目の面積割合は、第2片面の方が第1片面よりも大きい、肉類含有加熱用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉類含有加熱食品を製造する方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
肉類含有加熱食品の製造方法において、デンプン、パン粉、小麦粉、乾燥卵白等の粉体類を加熱前食品材料の表面に付着させることによって歩留まりを向上させる技術は従前報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【0003】
しかしながら、肉類含有加熱食品の表面に粉体類を付着させると、好ましい濃い焼き目がつきにくく外観を損ねてしまう場合がある。また、肉類含有加熱食品は球状等の様々な形状を取り得ることから、肉類含有加熱食品の表面に粉体が不均一に付着して歩留まりの向上を妨げる場合や焼き目ムラが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-56341号公報
【文献】特開2000-4839号公報
【文献】特開平10-229840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、今般、肉類含有食品原料の片面に打ち粉層を形成させ、打ち粉層を形成していない片面を焼成すると、肉類含有加熱食品の表面に良好な焼き目を付与しつつ、歩留まり を効果的に向上させうることを見出した。
【0006】
したがって、本発明は、肉類含有加熱食品の表面上に良好な焼き目を付与しつつ、歩留まりを効果的に向上させることを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を包含する。
[1]第1片面と、第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料を加熱調理して肉類含有加熱食品を製造する方法であって、
肉類含有食品原料の前記第1片面に打ち粉層を形成する工程を含み、
肉類含有食品原料の前記第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まず、
肉類含有食品原料の第2片面を焼成する工程を含んでなる、方法。
[2]肉類含有食品原料を準備する工程が、第1片面を上側とした状態にある肉類含有食品原料に対して上側から打ち粉を付着させる工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]肉類含有食品原料を準備する工程が、第1片面を下側とした状態にある肉類含有食品原料に対して下側から打ち粉を付着させる工程を含む、[1]に記載の方法。
[4]肉類含有食品原料を準備する工程が、第2片面が被覆手段で覆われた状態にある肉類含有食品原料の第1片面に打ち粉を付着させる工程を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]打ち粉層における打ち粉の量が、肉類含有食品原料100重量部に対して0.5~4重量部である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]打ち粉層における打ち粉が、小麦粉、乾燥卵白、パン粉およびデンプンからなる群から選択される少なくとも一つのものである、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]肉類含有食品原料の重量が10~1,000gである、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]肉類の量が、肉類含有食品原料100重量部に対して30~100重量部である、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]打ち粉層の表面積が、肉類含有食品原料の全表面積の25~75%である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]第2片面を焼成された前記肉類含有食品原料を蒸煮する工程をさらに含んでなる、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の方法により得られた肉類含有加熱食品を冷凍する工程を含んでなる、冷凍済み肉類含有加熱食品を製造する方法。
[12]第1片面と、第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料からなる未加熱の肉類含有加熱用食品であって、
前記第1片面は、その表面の少なくとも一部に打ち粉層が形成されており、
前記第2片面は、打ち粉層が形成されていない、未加熱の肉類含有加熱用食品。
[13][12]に記載された未加熱の肉類含有加熱用食品の、少なくとも前記第2片面を焼成して得られた、肉類含有加熱食品。
[14]第1片面と、第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料を加熱調理する、肉類含有加熱食品の歩留まり向上方法であって、
肉類含有食品原料の前記第1片面に打ち粉層を形成する工程を含み、
肉類含有食品原料の前記第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まず、
肉類含有食品原料の第2片面を焼成する工程を含んでなる、方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肉類含有加熱食品上に良好な焼き目を付与しつつ、歩留まりを効果的に向上させることができる。また、本発明によれば、良好な外観と肉類含有加熱食品にジューシーな食感を共に付与することができる。また、本発明によれば、加熱調理後の肉類含有加熱食品の歩留まりを顕著に向上させることができる。また、本発明によれば、冷凍済みの肉類含有加熱食品の歩留まりを顕著に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例において得られたハンバーグ(試験区1、試験区2および試験区3)の焼成面(表面)の加熱(焼成)後の写真である。左上および左下は、試験区1(打ち粉なし)の写真であり、中央上および中央下は、試験区2(打ち粉片面付着)の写真であり、右上および右下は、試験区3(打ち粉両面付着)の写真である。
【
図2】実施例において得られたハンバーグ(試験区1、試験区2および試験区3)の打ち粉付着面(裏面)の加熱後の写真である。左上および左下は、試験区1(打ち粉なし)の写真であり、中央上および中央下は、試験区2(打ち粉片面付着)の写真であり、右上および右下は、試験区3(打ち粉両面付着)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施態様によれば、第1片面と、前記第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料を加熱調理して肉類含有加熱食品を製造する方法であって、
肉類含有食品原料の前記第1片面に打ち粉層を形成する工程を含み、
肉類含有食品原料の前記第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まず、
肉類含有食品原料の第2片面を焼成する工程を含んでなる、方法が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施態様によれば、肉類含有加熱食品は、焼成された第2片面を表面(上側)に配置し、第1片面を裏面(下側)に配置した状態で提供される。かかる状態で肉類含有加熱食品を提供することは、需要者に対する良好な外観を保持する上で有利である。
【0012】
以下、本発明のさらなる詳細を説明する。
肉類含有食品原料
一実施態様によれば、本発明に用いられる肉類含有加熱食品の重量は、特に限定されないが、例えば、10~1,000gであり、好ましくは20~300gである。
【0013】
肉類含有食品原料における肉類としては、牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉、魚肉等の動物由来の生肉類が挙げられるが、好ましくは牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉またはそれらの組み合わせである。上記肉類の形態は、特に限定されないが、他の成分と均一に混合する観点からは、細切れ状肉または挽肉であることが好ましい。
【0014】
肉類含有食品原料における肉類の量は、特に限定されないが、肉類含有食品原料100重量部に対して、好ましくは30~100重量部であり、より好ましくは40~90重量部であり、より一層好ましくは40~60重量部である。
【0015】
肉類含有食品原料は、肉類の他、経口摂取可能なその他の食品成分を含有していてもよい。肉類以外の食品成分としては、糖類(砂糖等);食塩;香辛料(コショウ、ナツメグ等);アミノ酸(グルタミン酸ナトリウム等)等の調味料;デンプン;植物性タンパク質;タマネギ、ニンジン、ニンニク、ショウガ等の野菜;卵;パン粉;水;pH調整剤(酢酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0016】
肉類含有食品原料は、ミキサー等の公知の装置を用いて、肉類と経口摂取可能なその他の食品成分とを混合することにより得ることができる。肉類含有食品原料の成分は全てを一度に混合してもよく、各成分を段階的に添加して混合してよい。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、肉類含有食品原料は、第1片面と、第1片面と対向する第2片面と、第1片面と第2片面とを繋ぐ側面(厚みに相当)とを備えた形状に成形する。肉類含有食品原料の成形は、特に限定されず、プレート式成型機、ドラム式成型機、包餡機等の公知の成形装置を用いて実施することができる。
【0018】
肉類含有食品原料の形状、表面積および割合およびそれらの間の距離(厚み)は、所望の肉類含有加熱食品の形状、サイズ、材料の種類等に応じて適宜決定することができる。肉類含有加熱食品の形状としては、特に限定されないが、例えば、小判形状、俵形状、ラグビーボール形状、略球状等が挙げられる。
【0019】
肉類含有食品原料において、第1片面および第2片面の形状は、特に限定されないが、例えば、円状、楕円状、正方形状、長方形状等が挙げられる。
【0020】
肉類含有加熱食品の表面積は、特に限定されないが、例えば、5,000~150,000mm2であり、好ましくは5,000~30,000mm2であり、より好ましくは5,000~25,000mm2である。
【0021】
肉類含有食品原料において、第1片面の表面積は、好ましくは第2片面の表面積と実質的に同等であることが好ましい。第1片面と第2片面とを同様のサイズとすることは、取り扱いの簡便性保持および需要者に対する美観付与の観点からは有利である。本発明の一実施形態によれば、第1片面または第2片面の表面積の割合は、肉類含有食品原料の全表面積を基準にして、好ましくは25~45%であり、より好ましくは25~40%であり、より一層好ましくは25~35%である。
【0022】
また、本発明の一実施形態によれば、肉類含有食品原料の側面の表面積の割合は、肉類含有食品原料の全表面積を基準にして、好ましくは15~45%であり、より好ましくは20~40%であり、より一層好ましくは25~40%である。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、肉類含有食品原料における第1片面に打ち粉層を形成する工程を含み、第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まない。
ここで、「第1片面に打ち粉層を形成する工程を含む」とは、第1片面を焼成した場合に肉眼で第1片面に焼き目が付与されないことを確認できるように第1片面に向けて層状に打ち粉を付着させる工程を含むことをいう。「第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まない」とは、第1片面とは異なり、第2片面を焼成した場合に肉眼で第2片面に焼き目が付与されることを確認できるように第2片面に対しては層状に打ち粉を付着させないことをいう。本発明の作用効果を妨げない限りにおいて、第2片面に微量の打ち粉が付着することは除外しない。
【0024】
また、本発明の好ましい実施態様によれば、肉類含有食品原料における第1片面に加えて、側面の少なくとも一部または全部に打ち粉を付着させてもよい。打ち粉の付着した面積を大きくすることは、歩留まりを向上させる観点から好ましい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、打ち粉層の表面積は、肉類含有食品原料の全表面積を基準にして、例えば、25~75%であり、好ましくは25~70%であり、より好ましくは25~65%であり、より一層好ましくは30~65%である。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、第1片面上の打ち粉層の表面積は、第1面全面を基準にして、例えば、50~100%であり、好ましくは70~100%であり、より好ましくは80~100%であり、より一層好ましくは90~100%である。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、打ち粉層における打ち粉の量は、肉類含有食品原料100重量部に対して、例えば、0.5~4重量部であり、好ましくは1~4重量部であり、より好ましくは1.5~3重量部であり、より一層好ましくは1.5~2.5重量部である。
【0028】
本発明の一実施態様においては、第1片面と対向する第2片面の表面は、肉類含有食品原料により形成されることが好ましい。焼成する第2片面の表面を肉類含有食品原料で形成することは、肉類含有加熱食品に良好な焼き目を付与する上で好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、第2片面上の肉類含有食品原料により形成される領域の表面積は、第2面全面を基準にして、例えば、80~100%であり、好ましくは85~100%であり、より好ましくは90~100%であり、より一層好ましくは95~100%である。
【0030】
打ち粉層における打ち粉としては、通常の揚げ物等の加熱食品の製造に用いられるものを使用することができ、例えば、小麦粉(例えば、薄力粉)、乾燥卵白、パン粉(微粉パン粉)、デンプン(加工デンプン(デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酸化デンプン、アセチル化デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン等)、馬鈴薯デンプン等)またはそれらの混合物等の粉体を使用することができる。打ち粉として使用される粉体には、各種調味料等を混合してもよい。
【0031】
打ち粉の粒径は、特に限定されないが、例えば、10~500メッシュであり、好ましくは20~300メッシュであり、より好ましくは40~200メッシュである。ここで、メッシュサイズの規格は、JIS試験篩いメッシュ換算表に従う。
【0032】
第1片面に打ち粉層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、1)ち粉を予め底面に敷いている容器を準備し、第1片面を下側にした状態で肉類含有食品原料を上記容器の底面上に置き、肉類含有食品原料をそのままの状態で容器から取り出す方法、2)第1片面のみに打ち粉を吹き付ける方法、3)肉類含有食品原料が配置されたコンベアの上から打ち粉を添加し、その後反転またはエアブローにより過剰な打ち粉を落とす方法等が挙げられる。
【0033】
一実施態様によれば、第1片面に打ち粉層を形成する工程は、第1片面を上側とした状態にある肉類含有食品原料に対して上側から打ち粉を付着させる工程を含む。
【0034】
別の実施態様によれば、第1片面に打ち粉層を形成する工程は、第1片面を下側とした状態にある肉類含有食品原料に対して下側から打ち粉を付着させる工程を含む。
【0035】
さらに別の実施態様によれば、第1片面に打ち粉層を形成する工程は、第2片面が被覆手段で覆われた状態にある肉類含有食品原料の第1片面に打ち粉を付着させる工程を含む。
【0036】
肉類含有食品原料を焼成する工程
本発明の一実施態様によれば、打ち粉層が形成されていない第2片面を焼成する。本発明の好ましい態様によれば、打ち粉層が形成されている第1片面を表面に配置し、肉打ち粉層が形成されていない第2片面を裏面に配置した状態で肉類含有食品原料を加熱用機器(フライパン、鉄板、ベルトグリル、焼き網等)上に配置して、第2片面を焼成することができる。上記焼成を実施することは、良好な焼き目を肉類含有加熱食品に付与し、飲食者の食欲を喚起する上で好ましい。
【0037】
上記焼成工程において、肉類含有食品原料の第2片面に付与される焼き目の存否および面積については、後述する実施例と同様の方法および基準に従い判定することができる。肉類含有加熱食品の第2片面において焼き目を有する表面積の割合は、第2片面の表面積を基準として、例えば、50%以上であり、好ましくは50~90%であり、より好ましくは50~80%である。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、上記焼成の温度および時間は、所望の焼き目の色および面積を勘案して適宜決定することができる。具体的には、上記焼成の温度は、例えば、200~260℃であり、好ましくは200~250℃であり、より好ましくは200~230℃である。また、上記焼成の時間は、例えば、70~180秒であり、好ましくは70~200秒であり、より好ましくは70~150秒であり、より一層好ましくは70~100秒である。
【0039】
一実施態様によれば、肉類含有加熱食品の第1片面について、食品衛生上の観点から、加熱処理することが好ましい。肉類含有加熱食品の第1片面の加熱処理は、生肉の殺菌の観点から、好ましくは肉類含有加熱食品の中心温度が75℃以上となるように実施する。具体的には、第1片面の加熱を200~260℃程度の高温で実施する場合には、加熱時間は、例えば、10~65秒、好ましくは50~65秒としてもよい。また、第1片面の加熱を100~150℃程度の低温で実施する場合には、加熱時間は、例えば、65秒~15分、好ましくは10分~15分としてもよい。肉類含有加熱食品の第1片面の加熱工程は、第2片面の焼成の前後または第2片面の焼成と一体的に同時に実施することができるが、第2片面の焼成の後に実施することが好ましい。
【0040】
また、本発明の一実施態様によれば、肉類含有食品原料を蒸煮する工程をさらに実施してもよい。蒸煮を実施することは、生肉部分が肉類含有加熱食品中に残存することを防止する上で好ましい。
【0041】
蒸煮工程は、第2片面の焼成工程の前後、第1片面の加熱工程の前後、またはそれらの工程と一体的に実施することができるが、上記焼成工程および加熱工程後に実施することが好ましい。
【0042】
蒸煮工程は、蒸気と肉類含有食品原料と接触させることにより実施することができる。本発明において、蒸煮工程を実施する具他的な方法は特に限定されないが、例えば、1)肉類含有食品原料の焼成工程において生じる水蒸気と肉類含有食品原料とを接触させる方法、2)焼成工程とは別に、蒸し器(せいろ等)、コンベクションオーブン等の装置中で、水蒸気と肉類含有食品原料とを接触させる方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の一実施態様によれば、蒸煮工程において、蒸気(約100℃)を肉類含有食品原料に接触させる期間は、例えば、1~30分間、好ましくは5~25分間、より好ましくは5~20分間、より一層好ましくは5~10分間である。
【0044】
肉類含有加熱食品
本発明の一実施態様によれば、上記方法により、肉類含有加熱食品およびそその製造に用いられる未加熱の肉類含有加熱用食品が提供することができる。
【0045】
一実施態様によれば、第1片面と、第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料からなる未加熱の肉類含有加熱用食品であって、第1片面は、その表面の少なくとも一部に打ち粉層が形成されており、前記第2片面は、打ち粉層が形成されていない、未加熱の肉類含有加熱用食品が提供される。
【0046】
また、好ましい実施態様によれば、未加熱の肉類含有加熱用食品の、少なくとも第2片面を焼成して得られた、肉類含有加熱食品が提供される。
【0047】
本発明の製造方法によれば、焼き目に関連した良好な外観を付与しつつ肉類含有加熱食品の製造歩留まりを効果的に改善することができる。好ましい実施態様によれば、第1片面に打ち粉層を形成した肉類含有加熱食品は、第1片面に打ち粉を付着させない以外同様にして製造した対照肉類含有加熱食品と比較して製造歩留まりが向上している。一実施態様によれば、本発明の肉類含有加熱食品の歩留まり向上率は、第1片面に打ち粉を付着させずに製造した対照肉類含有加熱食品を基準として、好ましくは3~10%であり、より好ましくは4~8%であり、より一層好ましくは4.5~6.5%である。また、別の実施態様によれば、本発明の肉類含有加熱食品の重量は、肉類含有食品原料の重量に対して、例えば、96~105%であり、好ましくは97~103%であり、より好ましくは98~102%であり、より一層好ましくは99~102%である。
【0048】
肉類含有加熱食品の表面積は、特に限定されないが、例えば、5,000~150,000mm2であり、好ましくは5,000~30,000mm2であり、より好ましくは5,000~25,000mm2である。
【0049】
肉類含有加熱食品の形状は、好ましくは肉類含有食品原料と同様であり、例えば、円状、楕円状、正方形状、長方形状等が挙げられる。
【0050】
一実施態様によれば、肉類含有加熱食品においては、第1片面の表面積は、好ましくは第2片面の表面積と実質的に同等である。一実施態様によれば、第2片面の表面積は、第1片面の表面積を基準として、好ましくは90~100%であり、より好ましくは95~100%であり、より一層好ましくは98~100%である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、第1片面または第2片面の表面積の割合は、肉類含有食品原料の全表面積を基準にして、好ましくは15~45%であり、より好ましくは20~40%であり、より一層好ましくは25~40%である。
【0052】
また、本発明の一実施形態によれば、第1片面および第2片面の合計表面積の割合は、肉類含有食品原料の全表面積を基準にして、例えば、30~90%であり、好ましくは40~80%であり、より好ましくは50~80%であり、より一層好ましくは60~75%である。
【0053】
また、本発明の一実施形態によれば、第1片面と第2片面との間の距離は
例えば、10~50mmであり、好ましくは10~40mmであり、より好ましくは15~30mmの範囲内にある。
【0054】
肉類含有加熱食品の具体的な例としては、例えば、ハンバーグ、ステーキ、焼き肉、つくねまたはミートボール等が挙げられるが、好ましくはハンバーグまたはステーキであり、より好ましくはハンバーグである。
【0055】
また、本発明の肉類含有加熱食品には冷凍処理を行ってもよい。したがって、本発明の一実施態様によれば、上記肉類含有加熱食品を冷凍する工程を含んでなる、冷凍済み肉類含有冷凍食品を製造する方法が提供される。
【0056】
肉類含有加熱食品の冷凍処理する際の温度は、適宜設定してよいが、冷凍温度は、例えば、-15~-78℃であり、好ましくは-15~40℃である。また、冷凍時間は、冷凍温度および肉類含有加熱食品のサイズおよび量に応じて決定してよいが、例えば、1~10時間であり、好ましくは1~5時間である。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、肉類含有加熱食品を冷凍処理することにより得られた、冷凍済み肉類含有加熱食品が提供される。本発明によれば、冷凍済み肉類含有冷凍食品に対しても優れた製造歩留まりを付与することができる。好ましい実施態様によれば、冷凍済み肉類含有加熱食品は、第1片面に打ち粉を付着させない以外同様にして製造した対照冷凍済み肉類含有加熱食品と比較して製造歩留まりが向上している。一実施態様によれば、本発明の冷凍済み肉類含有加熱食品の歩留まり向上率は、第1片面に打ち粉を付着させずに製造した対照冷凍済み肉類含有加熱食品を基準として、好ましくは2~9%であり、より好ましくは3~7.5%であり、より一層好ましくは4~6.5%である。また、別の実施態様によれば、本発明の冷凍済み肉類含有冷凍食品の重量は、肉類含有食品原料の重量を基準として、例えば、96~105%であり、好ましくは96~100%であり、より好ましくは96~99%であり、より一層好ましくは96~98%である。
【0058】
肉類含有加熱食品または冷凍済み肉類含有加熱食品は、所望により、気密性または遮光性を有する容器に密閉して、容器詰め食品または容器詰め冷凍食品とすることができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、肉類含有加熱食品または冷凍済み肉類含有加熱食品は容器詰め食品の形態で提供される。また、容器詰め食品は、加熱殺菌処理を施して、レトルトパウチ食品とすることができる。したがって、本発明の一実施態様によれば、容器詰め食品はレトルトパウチ食品の形態で提供される。
【0059】
冷凍済み肉類含有加熱食品は、オーブン等の公知の装置を用いて解凍して摂取することができる。冷凍済み肉類含有加熱食品の解凍条件は、特に限定されないが、例えば、150~200℃で2~20分間である。
【0060】
本発明においては、上述の通り、肉類含有加熱食品の歩留まりを効果的に向上させることができる。したがって、本発明の別の態様によれば、第1片面と、第1片面と対向する第2片面とを備えた肉類含有食品原料を加熱調理する、肉類含有加熱食品の歩留まり向上方法であって、肉類含有食品原料の前記第1片面に打ち粉層を形成する工程を含み、肉類含有食品原料の前記第2片面に打ち粉層を形成する工程を含まず、肉類含有食品原料の第2片面を焼成する工程を含んでなる、方法が提供される。また、本発明の別の実施態様によれば、上記肉類含有加熱食品を冷凍する工程を含んでなる、冷凍済み肉類含有加熱食品の歩留まり向上方法が提供される。上記別の好ましい態様は、肉類含有加熱食品または冷凍済み肉類含有加熱食品の製造方法に準じて実施することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
試験サンプルの製造
<中種の作製>
牛挽肉(250.0kg)、豚挽肉(250.0kg)、食塩(5.0kg)および水(20.0kg)をミキサーで5分間混合した。次に、得られた混合物に、香辛料(ナツメグ、コショウ;各0.20kg)、デンプン(10.0kg)を加えて混合した。次に、得られた混合物に、卵(50.0kg)、グルタミン酸ソーダ(2.0kg)、ぶどう糖(4.0kg)、グリシン(1.0kg)、植物性蛋白(アペックス650、不二製油;20.0kg)、生玉葱(4.5mmダイス、200.0kg)および水(65.0kg)を加えて混合した。次に、得られた混合物に生パン粉(5.39kg)を加えて混合した。次に、得られ混合物を小判形状(短径75mm、長径105mm、厚み20mm、片面当たり表面積64.3cm2(片面当たり表面積は全表面積に対して34.7%に相当))に成形し、ハンバーグの中種(120.0g/個)を得た。
【0063】
打ち粉による処理
(1)打ち粉として、以下の粉体A~Eを用意した。
【表1】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
(2)以下の手順に従い、ハンバーグを作成した。なお、以下に記載の加熱処理の際に、ハンバーグの中種の中心温度は75℃以上となることを確認した。
試験区1(打ち粉なし)
ハンバーグの中種に打ち粉を添加しなかった。そして、油をひいた約220℃の鉄板上でハンバーグの中種の片面を90秒焼成し、もう一方の片面を60秒加熱した。
試験区2(打ち粉片面付着)
アルミバットに打ち粉を1cmほどの厚みに平らに敷き、そこにハンバーグの中種を置いた。次に、ヘラでハンバーグをとり、打ち粉がついていない側に粉がつかないように網の上に反転し、付着量が2.0gになるように余分な打ち粉を払った。ここで、打ち粉としては、粉体Aを用いた。
油をひいた約220℃の鉄板上でハンバーグの中種の打ち粉の付着していない片面を90秒焼成し、打ち粉の付着したもう一方の片面を60秒加熱した。
試験区3(打ち粉両面付着)
ハンバーグの中種の両片面に打ち粉を付着させた。具体的には、アルミバットに打ち粉を1cmほどの厚みに平らに敷き、そこにハンバーグの中種を置いた。次に、片面に打ち粉が添加されたハンバーグの中種をとり、打ち粉を敷いたアルミバットの上で反転し、全体の付着量が5.0gになるように余分な打ち粉を払った。ここで、打ち粉としては、粉体Aを用いた。
次に、油をひいた約220℃の鉄板上でハンバーグの中種の片面を90秒焼成し、もう一方の片面を60秒加熱した。
試験区4(打ち粉なし)
ハンバーグの中種に打ち粉を添加しなかった。そして、油をひいた約220℃の鉄板上でハンバーグの中種の片面を90秒焼成し、もう一方の片面を約130℃で12分焼成した。
試験区5(打ち粉片面付着)
試験区2と同様の手法により、ハンバーグの中種の片面に打ち粉を付着させた。打ち粉としては粉体Aを用いた。
油をひいた約220℃の鉄板上でハンバーグの中種の打ち粉の付着していない片面を90秒焼成し、打ち粉の付着したもう一方の片面を約130℃で12分加熱した。
試験区6(打ち粉片面付着)
試験区2と同様の手法により、ハンバーグの中種の片面に打ち粉を付着させた。打ち粉としては粉体Bを用いた。
油をひいた約220℃の鉄板上でハンバーグの中種の打ち粉の付着していない片面を90秒焼成し、打ち粉の付着したもう一方の片面を60秒加熱した。
試験区7(打ち粉片面付着-片面焼成)
打ち粉としては粉体Cを用いる以外、試験区6と同様の処理を行った。
試験区8(打ち粉片面付着-片面焼成)
打ち粉としては粉体Dを用いる以外、試験区6と同様の処理を行った。
試験区9(打ち粉片面付着-片面焼成)
打ち粉としては粉体Eを用いる以外、試験区6と同様の処理を行った。
【0069】
<蒸煮工程>
試験区1~3および6~9のサンプルは、焼成および加熱処理した後、100℃の蒸気を使用して9分間蒸煮処理した。
【0070】
<冷凍工程>
加熱工程を経て得られた試験区1~9のサンプルを約-35℃の凍結庫で急速冷凍し、約-18℃にて5日間冷凍保管して冷凍ハンバーグを得た。
【0071】
喫食時処理
<喫食時調理>
天板に冷凍ハンバーグを並べ、180℃のコンベクションオーブンで14分間加熱調理した。得られたハンバーグを焼き目のある面を上にして皿に置き、外観の評価では上下両面とも見て、以下の官能評価を行った。
【0072】
官能評価
訓練されたパネラー3名により以下の評価基準に従い、外観、食感の官能評価を行った(各サンプル数n=4)。なお、外観は、試験区1と同等の焼き目の存在する面積割合が約5割であるサンプルをスコア3の基準とした。焼き目は、試験区1と同等の色(茶黒色)の焼き目であるとパネラー2名が評価する場合に試験区1と同等の焼き目であると判定し、焼き目の存在する面積割合に加入した。
【0073】
<外観>
5:極めて良好な外観である(ハンバーグ表面における焼き目の存在する面積割合が約7割以上である)
4:良好な外観である(ハンバーグ表面における焼き目の存在する面積割合が約6割以上7割未満である)
3:通常の外観である(ハンバーグ表面における焼き目の存在する面積割合が約5割以上6割未満である)
2:やや不良な外観である(ハンバーグ表面における焼き目の存在する面積割合が約4割以上5割未満である)
1:不良な外観である(ハンバーグ表面における焼き目の存在する面積割合が約4割未満である)
【0074】
<食感(ジューシー感)>
5:極めてジューシーが強い
4:ジューシーが強い
3:通常のジューシーである
2:やや不良なジューシーである
1:不良なジューシーである
【0075】
【0076】
なお、総合評価は、外観およびジューシー感のスコアが4以上であり、かつ冷凍後の歩留まりが95%以上である場合を◎とし、外観またはジューシー感のスコアが4未満であるかまたは冷凍後の歩留まりが95%未満である場合を×とした。
【0077】
また、
図1の写真は、試験区1(左上および左下:打ち粉なし)、試験区2(中央上および中央下:打ち粉片面付着)、試験区3(右上および右下:打ち粉両面付着)の焼成面(表面)の加熱(焼成)後の外観を示す。
【0078】
また、
図2ではそれぞれ、試験区1(左上および左下:打ち粉なし)、試験区2(中央上および中央下:打ち粉片面付着)、試験区3(打ち粉両面付着)の非焼成面(裏面)の加熱後の外観を示す。
【0079】
打ち粉の付着していない片面を焼成した試験区2および5~9では、外観はいずれもスコア5(極めて良好)であり、食感(ジューシー感)もスコア4~5(良好~極めて良好)であり、冷凍後の歩留まりは95.3~97.7%であった。
打ち粉を使用していない試験区1および4では、外観はスコア5(極めて良好)である一方で、食感(ジューシー感)はスコア3(通常)であり、冷凍後の歩留まりはそれぞれ、91.2および92.8%であった。
打ち粉を両面に使用した試験区3では、外観はスコア1(不良)であり、食感(ジューシー感)はスコア4(良好)であり、歩留まりは100.4%であった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、肉類含有加熱食品に良好な焼き目を付与しつつ、歩留まりを効果的に向上させることができる。