IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プライムポリマーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】積層体及びそれを用いた流体包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230707BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230707BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019065836
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020104509
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2018240712
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関谷 慶子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道彦
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2016/039275(JP,A1)
【文献】特開2006-181831(JP,A)
【文献】特開2017-177699(JP,A)
【文献】特開2004-025562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 5/00-5/22
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分から構成される外層(A)、中間層(B)及び内層(C)を少なくとも有する積層体であって、
外層(A)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分であり、且つ、密度が900~960kg/mであり、
中間層(B)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が3.5~20g/10分であり、且つ、DSC測定のDSC曲線から求められる全融解熱量(Ht)に対する110℃以上でのDSC曲線から求められる融解熱量(Hh)の比率である110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)が11~80%であり、
内層(C)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分であり、且つ、密度が920~960kg/mである積層体。
【請求項2】
外層(A)の外側に基材層(D)をさらに有する請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
外層(A)、中間層(B)及び内層(C)を構成する樹脂が、エチレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンの共重合体を含む請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
厚みが3~300μmである請求項1~3の何れかに記載の積層体。
【請求項5】
流体包装材用積層体である請求項1~4の何れかに記載の積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の積層体を有する流体包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れた積層体及びそれを用いた流体包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
医療品や食品を内包する包装袋は、長期間の保存を可能にする為に、充填及び密封後に100~140℃程度の高温で殺菌処理する場合がある。その包装袋としては、例えば、複数の樹脂フィルムを積層させた積層体(積層フィルム)を袋状に形成したものが用いられている。そして、その包装袋には、高温高圧下の殺菌処理に耐えられる程度の耐熱性と、流通過程で落下しても破袋しない強度(耐衝撃性)が要求される。
【0003】
特許文献1には、耐熱性と耐湿性の高いプラスチックフィルムからなる表面材に、耐熱性接着剤を用いて内面材を積層した積層材が開示されている。そして、その内面材がポリエチレン又はエチレン/α-オレフィン共重合体のフィルムを3層以上ラミネートしてなるものであること、並びに、両最外層を構成するプラスチックの密度が0.939以上で、中間層を構成するプラスチックの密度が0.910~0.925であることが開示されている。さらに、この積層材は、両最外層に密度の高いプラスチックを用いることにより、レトルト滅菌時の熱による内面材の軟化を防ぐことができ、中間層に密度の低いプラスチックを用いることにより内面材全体の耐衝撃性及び耐寒性を向上できることが説明されている。
【0004】
特許文献2には、プロピレン重合体成分(A)、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体成分(B)、及びエチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体成分(C)からなる特定のプロピレン重合体組成物から得られる熱融着性フィルムの片面に、基材層が積層された熱融着性積層フィルムが開示されている。そして、この熱融着性積層フィルムは、高い剛性及び耐低温衝撃強度を有しているので、レトルト食品等の加熱・殺菌処理を必要とする被包装物の包装フィルムとして有用であることが説明されている。
【0005】
特許文献3には、MFRが0.5~10g/10分であり、密度が940~960kg/mであるポリエチレン系樹脂組成物(A)から形成された同一又は異なる少なくとも一つの外層と、MFRが0.5~10g/10分であり、密度が925~935Kg/mであるポリエチレン系樹脂組成物(B)から形成された同一又は異なる少なくとも一つの中間層とから形成された樹脂積層フィルムが開示されている。そして、この樹脂積層フィルムは衝撃強度に優れ、121℃を超えるレトルト処理が施された場合にもフィルムの透明性の低下が少なく、耐熱融着性に優れることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-095849号公報
【文献】特開2003-183462号公報
【文献】特開2005-059243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、樹脂成分から構成される複数の層からなる積層体においては、耐熱性と耐衝撃性の両立が難しいという課題に着目した。具体的には、例えば積層体の耐熱性を向上させると耐衝撃性が低下してしまうという傾向があり、この両特性のバランスについてはさらに改善の余地があると考えた。
【0008】
すなわち本発明の目的は、耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れた積層体及びそれを用いた流体包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、積層体の各層の各々の物性を適切な範囲内に設定することが耐熱性と耐衝撃性のバランスの点で非常に有効であることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の事項により特定される。
【0010】
[1]樹脂成分から構成される外層(A)、中間層(B)及び内層(C)を少なくとも有する積層体であって、
外層(A)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分であり、且つ、密度が900~960kg/mであり、
中間層(B)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分であり、且つ、DSC測定のDSC曲線から求められる全融解熱量(Ht)に対する110℃以上でのDSC曲線から求められる融解熱量(Hh)の比率である110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)が11~80%であり、
内層(C)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分であり、且つ、密度が920~960kg/mである積層体。
【0011】
[2]外層(A)の外側に基材層(D)をさらに有する[1]に記載の積層体。
【0012】
[3]外層(A)、中間層(B)及び内層(C)を構成する樹脂が、エチレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンの共重合体を含む[1]または[2]に記載の積層体。
【0013】
[4]厚みが3~300μmである[1]~[3]の何れかに記載の積層体。
【0014】
[5]流体包装材用積層体である[1]~[4]の何れかに記載の積層体。
【0015】
[6][1]~[5]のいずれかに記載の積層体を有する流体包装袋。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れた積層体及びそれを用いた流体包装袋を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<外層(A)>
本発明において、外層(A)は樹脂成分から構成される層であり、中間層(B)を中心として内層(C)とは逆側に位置する層である。外層(A)は、特にラミネート層であることが好ましい。
【0018】
外層(A)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.1~20g/10分であり、好ましくは0.5~12g/10分、より好ましくは1~12g/10分である。MFRが低過ぎないことは押出成形性の点で好ましく、高過ぎないことは耐衝撃性の点で好ましい。
【0019】
外層(A)を構成する樹脂成分の密度は900~960kg/mであり、好ましくは905~955kg/m、より好ましくは910~950kg/mである。密度が低過ぎないことは耐熱性の点で好ましく、高過ぎないことは耐衝撃性の点で好ましい。
【0020】
外層(A)を構成する樹脂成分は、1種の樹脂のみからなるものであっても良いし、2種以上の樹脂を含むものであっても良い。樹脂の種類は特に限定されないが、オレフィン系重合体が好ましく、エチレン系重合体がより好ましい。オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)は、単独重合体であっても良いし、共重合体であっても良い。特に、エチレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンの共重合体(エチレン・α-オレフィン共重合体)が好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン、1-オクテン、1-ヘキセンが挙げられる。中でも、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、1-ヘキセンがより好ましい。
【0021】
外層(A)を構成する樹脂成分は、上述したエチレン・α-オレフィン共重合体を含むことが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法は特に限定されず、例えばメタロセン系触媒、チタン系触媒、クロム系触媒、フェノキシイミン系触媒等のオレフィン重合用触媒を用いた重合により得ることができる。特に、メタロセン系触媒を用いた重合により得られるエチレン・α-オレフィン共重合体が好ましい。メタロセン系触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、及び必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)やイオン化イオン性化合物触媒成分(e)から形成される。
【0023】
外層(A)を構成する樹脂成分には、必要に応じて添加剤を配合しても良い。添加剤の具体例としては、アンチブロッキング剤、防曇剤、静電防止剤、酸化防止剤、耐候安定剤、熱安定剤、滑剤が挙げられる。
【0024】
外層(A)の厚さは、通常1~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~100μmである。
【0025】
<中間層(B)>
本発明において、中間層(B)は樹脂成分から構成される層であり、外層(A)と内層(C)の間に位置する層である。
【0026】
中間層(B)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.1~20g/10分であり、好ましくは0.5~12g/10分、より好ましくは1~12g/10分である。MFRが低過ぎないことは押出成形性の点で好ましく、高過ぎないことは耐衝撃性の点で好ましい。
【0027】
中間層(B)を構成する樹脂成分のDSC測定のDSC曲線から求められる全融解熱量(Ht)に対する110℃以上でのDSC曲線から求められる融解熱量(Hh)の比率である110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)は11~80%であり、好ましくは15~75%、より好ましくは20~70%分である。Hh/Htが低過ぎないことは耐熱性の点で好ましく、高過ぎないことは耐衝撃性の点で好ましい。Hh/Htの具体的な算出方法は、後述の実施例の欄に記載する。
【0028】
中間層(B)を構成する樹脂成分は、1種の樹脂のみからなるものであっても良いし、2種以上の樹脂を含むものであっても良い。樹脂の種類は特に限定されないが、オレフィン系重合体が好ましく、エチレン系重合体がより好ましい。オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)は、単独重合体であっても良いし、共重合体であっても良い。特に、エチレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンの共重合体(エチレン・α-オレフィン共重合体)が好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン、1-オクテン、1-ヘキセンが挙げられる。中でも、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、1-ヘキセンがより好ましい。
【0029】
中間層(B)を構成する樹脂成分は、上述したエチレン・α-オレフィン共重合体を含むことが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、2種以上の重合体を組み合わせて用いることは、上述したHh/Ht、MFR、密度等の物性を調整する点から好ましい。例えば、一般的な融点を有する重合体に対して比較的高い融点を有する重合体を混合して使用することにより、中間層(B)のHh/Htを容易に高くすることができる。2種以上の重合体を組み合わせて用いる場合は、それら重合体を、例えばバンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、押出機等の混合装置を用いて混合すれば良い。
【0030】
エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法は特に限定されない。その製造方法の具体例は、外層(A)について先に説明したものと同様である。
【0031】
中間層(B)を構成する樹脂成分には、必要に応じて添加剤を配合しても良い。添加剤の具体例具体例は、外層(A)について先に説明したものと同様である。
【0032】
中間層(B)の厚さは、通常1~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~100μmである。
【0033】
<内層(C)>
本発明において、内層(C)は樹脂成分から構成される層であり、中間層(B)を中心として外層(A)とは逆側に位置する層である。内層(C)は、特に熱融着層であることが好ましい。
【0034】
内層(C)を構成する樹脂成分の190℃、2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.1~20g/10分であり、好ましくは0.5~12g/10分、より好ましくは1~12g/10分である。MFRが低過ぎないことは押出成形性の点で好ましく、高過ぎないことは耐衝撃性の点で好ましい。
【0035】
内層(C)を構成する樹脂成分の密度は920~960kg/mであり、好ましくは920~955kg/m、より好ましくは920~950kg/mである。また、これら密度は、925kg/m以上であってもよい。すなわち、925~960kg/m、925~955kg/m、925~950kg/mの各範囲内であっても良い。密度が低過ぎないことは耐熱性の点で好ましく、高過ぎないことは耐衝撃性の点で好ましい。
【0036】
内層(C)を構成する樹脂成分は、1種の樹脂のみからなるものであっても良いし、2種以上の樹脂を含むものであっても良い。樹脂の種類は特に限定されないが、オレフィン系重合体が好ましく、エチレン系重合体がより好ましい。オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)は、単独重合体であっても良いし、共重合体であっても良い。特に、エチレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンの共重合体(エチレン・α-オレフィン共重合体)が好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、ブテン、1-オクテン、1-ヘキセンが挙げられる。中でも、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく、1-ヘキセンがより好ましい。
【0037】
内層(C)を構成する樹脂成分は、上述したエチレン・α-オレフィン共重合体を含むことが好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
エチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法は特に限定されない。その製造方法の具体例は、外層(A)について先に説明したものと同様である。
【0039】
内層(C)を構成する樹脂成分には、必要に応じて添加剤を配合しても良い。添加剤の具体例具体例は、外層(A)について先に説明したものと同様である。
【0040】
内層(C)の厚さは、通常1~150μm、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~100μmである。
【0041】
<基材層(D)>
本発明の積層体は、外層(A)の外側に基材層(D)をさらに有していても良い。
【0042】
基材層(D)を構成する材料の種類は特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂又はそれらの延伸物、無機酸化物蒸着フィルム、金属蒸着フィルム、セラミック蒸着フィルム、金属箔、紙、不織布等、基材としての機能を発現可能な各種材料を使用できる。樹脂を用いる場合は、例えば、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、アクリル系樹脂を使用できる。さらに基材層(D)としては、例えば、ポリエステルフィルムとセラミック蒸着ポリエステルフィルムをドライラミネートした2層フィルム、ポリエステルフィルムとアルミ箔をドライラミネートして更にアルミ箔面にポリエステルフィルムをドライラミネートした3層フィルムも使用できる。
【0043】
基材層(D)の厚さは、通常1~100μm、好ましくは2~90μm、より好ましくは3~60μmである。
【0044】
<積層体>
本発明の積層体は、以上説明した外層(A)[例えばラミネート層]、中間層(B)、内層(C)[例えば熱融着層]、及び必要に応じて基材層(D)を有する積層体である。また、これら各層以外の層をさらに有していても良い。例えば、これら各層以外のラミネート層や接着層を有していても良い。
【0045】
外層(A)と中間層(B)と内層(C)の層厚比[(A)/(B)/(C)]は、外層(A)の厚さを1とした場合、好ましくは1/0.1~20/0.1~20、より好ましくは1/0.2~10/0.2~10である。
【0046】
積層体全体の厚さは、通常3~300μm、好ましくは5~200μmである。
【0047】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されない。例えば、各層を構成する樹脂成分を別々にあるいは同時に溶融押出成形することにより積層体を得ることができる。
【0048】
本発明の積層体は、各層の物性を適度な範囲に設定することにより耐熱性と耐衝撃性のバランスを向上したものである。例えば、中間層(B)を構成する樹脂成分の110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)を適切な値に調整することにより、適切なバランスが発現する。また中間層(B)を構成する樹脂成分については、さらにその密度を比較的低くすることも有効である。
【0049】
本発明の積層体は、耐熱性と耐衝撃性のバランスに優れるので、高温に曝されても欠陥が生じにくく且つ衝撃を受けても破れにくい。したがって、例えば食品や医療の分野など、耐熱性と耐衝撃性が要求される様々な用途に有用である。具体的には、例えばレトルト食品、医薬品、医療用器具、ペットフード等の加熱・殺菌処理が必要な流体又は固体の被包装物に対する包装材として好適に使用できる。中でも、流体を包装する為の材料(流体包装材)の用途において非常に有用である。
【0050】
<流体包装袋>
本発明の流体包装袋は、以上説明した積層体を有する流体包装袋である。本発明において「流体」とは、液体及び粘体の双方を含む意味である。流体の具体例としては、レトルト食品、飲料等の液体状又は粘体状食品、医薬品等の液体状又は粘体状医療品が挙げられる。
【0051】
本発明の流体包装袋においては、流体を包装する為の材料の一部又は全部に本発明の積層体が用いられていれば良く、本発明の積層体以外の部材を有していても構わない。
【0052】
本発明の流体包装袋において、積層体はその内層(C)が袋の内側になるように配置される。例えば、2枚の積層体の内層(C)側を重ねてヒートシール機で二方シール、三方シール又は四方シールして袋状にすることにより製造できる。袋の形状は特に制限されないが、通常は矩形である。
【実施例
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0054】
実施例及び比較例では樹脂成分として以下の樹脂a~gを用いた。
「a」:エチレン・1-ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP4030、MFR(190℃、2.16kg)=4.0g/10分、密度=938kg/m
「b」:エチレン・1-ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP0540、MFR(190℃、2.16kg)=3.8g/10分、密度=903kg/m
「c」:エチレン・1-ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP4530、MFR(190℃、2.16kg)=2.9g/10分、密度=938kg/m
「d」:エチレン・1-ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP1540、MFR(190℃、2.16kg)=3.8g/10分、密度=913 kg/m
「e」:エチレン・1-ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP2040、MFR(190℃、2.16kg)=3.8g/10分、密度=918kg/m
「g」:エチレン・1-ヘキセン共重合体(プライムポリマー社製、エボリュー(登録商標)SP0510、MFR(190℃、2.16kg)= 1.2 g/10分、密度= 903 kg/m
【0055】
[実施例1~8及び比較例1~3]
まず、表1~3に示す各樹脂から構成される外層(A)、中間層(B)及び内層(C)からなる積層体(積層フィルム)を作製した。外層(A)の厚さは16μm、中間層(B)の厚さは48μm、内層(C)の厚さは16μmとした。ただし比較例1~2では、外層(A)のみからなる単層フィルムを作製した。
【0056】
次いで、実施例1~8及び比較例3~4の積層フィルム並びに比較例1の単層フィルムの外層(A)側に、基材層(D)として2軸延伸ポリエステル(OPET)からなる基材(厚さ16μm)をアンカーコート剤を用いて貼り合わせ、ドライラミ積層体を得た。
【0057】
以上のようにして得たドライラミ積層体に関して、以下の試験を行った。結果を表2及び3に示す。
【0058】
<メルトフローレート(MFR)>
各層を構成する樹脂成分のメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210-1に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
【0059】
<密度>
各層を構成する樹脂成分の密度は、JIS K7112に準拠し、MFR測定時に得られるストランドを100℃で1時間熱処理し、更に室温で1時間放置した後に密度勾配管法で測定した。
【0060】
<融解熱量比>
中間層(B)を構成する樹脂成分の融解熱量比は、DSC測定のDSC曲線から求められる全融解熱量(Ht)と、110℃以上でのDSC曲線から求められる融解熱量(Hh)から、その比率である110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)を計算した。
【0061】
<耐熱温度>
ドライラミ積層体を任意の温度で5分滅菌した際に、シワや融着が発生しない温度を耐熱温度とした。
【0062】
<フィルム強度>
(1)耐ピンホール性(ピンホールの数)
積層フィルム(又は単層フィルム)から208mm×205mmのサイズの試験片を切り出した。そして、テスター産業社製のゲルボフレックステスターを使用し、屈曲角度440°、ストローク152mm、試験速度42回/分の条件にて、23℃の各雰囲気下で3000回の屈曲試験を行った。その際に発生したピンホールの数を、ニッカ電側社製のピンホールテスターにより測定した。
【0063】
(2)ダートインパクト
ASTM D 1709のA法に従って、積層フィルム(又は単層フィルム)から切り出した試験片をエアークランプ方式で締め付け、半球形のダートを一定高さの位置から落下させ、試験片が50%破壊した荷重(g)であるダートインパクトをグラフから読み取った。一水準の落下回数は10回とした。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
表1及び2から明らかな通り、実施例1~8の積層体は耐熱性及び耐衝撃性のバランスに優れていた。
【0068】
比較例1のフィルムは、樹脂eから構成される単層フィルムであり、耐熱性が劣っていた。
【0069】
比較例2の積層体は、全ての層が110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)が高過ぎる樹脂aから構成される積層フィルムであり、耐衝撃性(ダートインパクト)が劣っていた。
【0070】
比較例3の積層体は、中間層(B)が110℃以上融解熱量比(Hh/Ht)が低過ぎる樹脂bから構成される積層フィルムであり、耐熱性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の積層体は、例えばレトルト食品、医薬品、医療用器具、ペットフード等の加熱・殺菌処理が必要な流体又は固体の被包装物に対する包装材として好適に使用できる。中でも、流体を包装する為の材料(流体包装材)の用途において非常に有用である。