(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230707BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20230707BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230707BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/04
A61K8/41
A61K8/895
(21)【出願番号】P 2019119507
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】松崎 祐大
(72)【発明者】
【氏名】米澤 徹朗
【審査官】▲高▼橋 明日香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-163379(JP,A)
【文献】特開平09-227351(JP,A)
【文献】特開平09-227350(JP,A)
【文献】特開平09-095433(JP,A)
【文献】特開2002-275022(JP,A)
【文献】特開2006-232740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ酸塩と、
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と、
(C)エラストマーと、
を含有する、水相と油相から構成される乳化化粧料であって、
前記(C)エラストマーが非乳化型シリコーンエラストマーであり、
前記水相が乳化化粧料全量に対して58~70質量%である乳化化粧料。
【請求項2】
前記(A)ケイ酸塩がケイ酸アルミニウムマグネシウムである請求項1記載の乳化化粧料。
【請求項3】
前記(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が塩化ジステアリルジメチルアンモニウムである請求項1または2記載の乳化化粧料。
【請求項4】
前記非乳化型シリコーンエラストマーが(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーである請求項
1~3いずれか一項記載の乳化化粧料。
【請求項5】
前記(C)エラストマーの含有量が乳化化粧料全量に対して0.05~1.5質量%である請求項1~
4いずれか1項記載の乳化化粧料。
【請求項6】
さらに(D)HLB値が8以下のシリコーン界面活性剤を含む請求項1~
5いずれか1項記載の乳化化粧料。
【請求項7】
粘度が13000mPa・s以下である請求項1~
6いずれか1項記載の乳化化粧料。
【請求項8】
油中水型である請求項1~
7いずれか1項記載の乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の毛穴補正が可能な低粘度の乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、油相を外相、水相を内相とした油中水型の乳化組成物は、油溶性の有効成分、例えばエモリエント油、油溶性の薬剤、紫外線吸収剤等を効率的に皮膚上に展開できることから、皮膚外用剤に適した剤型であり、化粧品分野ではスキンケア用のクリーム、乳液、ヘアケア用クリーム等に広く活用されている。
【0003】
しかし、油中水型乳化化粧料においては、外相を構成する油をゲル化させ、水滴を不動化し、粒子同士の衝突頻度を低下させることで安定化を図ることが多く、必然的に粘度が高くなってしまうことがあった。そのため、油中水型乳化化粧料では、低粘度化と安定化の両立が困難であるとされており、経時安定性と、塗布時の伸びや良好な使用感とを同時に向上することは難しかった。
【0004】
低粘度かつ安定な油中水型乳化化粧料として、例えば特許文献1には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、モノグリセリン脂肪酸エステルあるいはポリグリセリン脂肪酸エステルと、分岐型の高級アルコールと、液状エステル油を含有するW/O型乳液状組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、有機変性粘土鉱物と疎水性シリカとを特定量で組み合わせて配合し、さらに非極性炭化水素油を特定の比率で含む油分と、シリコーン系界面活性剤と、水相成分とを特定量で配合することにより、低粘度でありながら、極性油の配合にも耐え得る優れた安定性を有する油中水型乳化化粧料が記載されている。
【0006】
従来より、素肌がきれいであることは多くの女性の憧れであるが、素肌をきれいに見せることが可能な化粧料、とりわけ、基礎化粧料である乳液のような化粧料は存在していなかった。素肌をきれいに見せるためには、キメを整え、毛穴補正が可能なエラストマーを化粧料に添加する必要がある。
【0007】
エラストマーが添加されている化粧料としては、オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉体と、シリコーン油と、有機変性粘土鉱物と、親油性界面活性剤とを配合した油中水型乳化皮膚外用剤(特許文献3および4)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-095588号公報
【文献】特開2014-172853号公報
【文献】特開平10-109917号公報
【文献】特開平10-109918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3および4に記載されている油中水型乳化皮膚外用剤はエラストマーを含むために、粘度が高く、その性状はクリーム状あるいはゲル状である。例えば、特許文献2に記載されている低粘度の油中水型乳化化粧料にエラストマーを添加すると、粘度が上がってクリーム状になってしまう。つまり、肌の毛穴補正に有効なエラストマーを添加すると、低粘度の乳化化粧料を実現することは困難である。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、肌の毛穴補正が可能でありながら、低粘度の乳化化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の乳化化粧料は、
(A)ケイ酸塩と、
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と、
(C)エラストマーと、
を含有する、水相と油相から構成される乳化化粧料であって、
水相が乳化化粧料全量に対して58~70質量%である。
【0012】
(A)ケイ酸塩はケイ酸アルミニウムマグネシウムであることが好ましい。
【0013】
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は塩化ジステアリルジメチルアンモニウムであることが好ましい。
【0014】
(C)エラストマーは非乳化型シリコーンエラストマーであることが好ましい。
非乳化型シリコーンエラストマーは(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーであることが好ましい。
【0015】
(C)エラストマーの含有量は乳化化粧料全量に対して0.05~1.5質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明の乳化化粧料は、さらに(D)HLB値が8以下のシリコーン界面活性剤を含んでいてもよい。
【0017】
本発明の乳化化粧料は、粘度が13000mPa・s以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の乳化化粧料は、油中水型であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の乳化化粧料は、本発明の乳化化粧料は、
(A)ケイ酸塩と、
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と、
(C)エラストマーと、
を含有する、水相と油相から構成される乳化化粧料であって、
水相が乳化化粧料全量に対して58~70質量%であるので、肌の毛穴補正が可能でありながら、低粘度の乳化化粧料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の乳化化粧料(以下、単に化粧料ともいう)は、
(A)ケイ酸塩と、
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と、
(C)エラストマーと、
を含有する、水相と油相から構成される乳化化粧料であって、
水相が乳化化粧料全量に対して58~70質量%である。
ここで、(A)ケイ酸塩は水相に、(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、(C)エラストマー、および後述する(D)シリコーン界面活性剤は油相に含まれる。
各成分について詳細に説明する。
【0021】
[水相]
(A)ケイ酸塩
(A)ケイ酸塩としては、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸ナトリウムリチウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられ、(A)の分散安定性の観点から、ケイ酸アルミニウムマグネシウムが好ましい。ケイ酸アルミニウムマグネシウムは、コロイド性含水ケイ酸塩であることがより好ましい。
これらのアルミノケイ酸塩は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ケイ酸アルミニウムマグネシウムの市販品としては、「スメクトンSA」等が挙げられる。
【0022】
水相には、(A)ケイ酸塩以外に、水(イオン交換水、精製水、自然水等)あるいは水性溶媒の他、通常化粧料に使用可能なものを、化粧料の安定性を損なわない範囲で配合することができる。
【0023】
典型的には、低級アルコールや多価アルコール等を配合することができる。
低級アルコールとしては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等);3価のアルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価アルコール(例えば、1,2,6-へキサントリオール等のペンタエリスリトール等);5価アルコール(例えば、キシリトール等);6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール等);多価アルコール重合体(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等);2価のアルコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等);2価アルコールアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等);2価アルコールエーテルエステル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等);グリセリンモノアルキルエーテル(例えば、キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等);糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトース、デンプン分解等還元アルコール等);グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE-テトラハイドロフルフリルアルコール、POP-ブチルエーテル;POP・POE-ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテルリン酸;POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0024】
本発明において乳化化粧料全量に対する水相の配合量は、58~70質量%である。水相の配合量が58質量%以上であることで、粘度を低粘度とすることができるとともに、使用感を良好なものとすることができ、70質量%以下であることで、十分な安定性を得ることができる。乳化化粧料全量に対する水相の配合量は、好ましくは59~68質量%であり、60~66質量%がより好ましい。
【0025】
[油相]
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤
第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、乳化安定性(保存安定性)の観点から、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムが好ましく挙げられる。その他、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、さらにはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。
これらの第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(C)エラストマー
(C)エラストマーはシリコーンエラストマーであることが好ましく、例えば、シリコーンエラストマー(オルガノポリシロキサン)が挙げられる。シリコーンエラストマーには、例えば、シリコーンポリマーが三次元的に架橋した架橋型シリコーン(架橋型オルガノポリシロキサン)が含まれる。シリコーンエラストマーは、非乳化型シリコーンエラストマーであるとより好ましい。非乳化型シリコーンエラストマーとは、架橋部または主鎖がポリオキシアルキレン基で修飾されていないシリコーンエラストマーのことをいう。特に、非乳化型シリコーンエラストマーは、疎水部からなる(親水部を有さない)と好ましい。ポリオキシアルキレン基を有する乳化型シリコーンエラストマーを添加すると、界面活性剤のようなべたつきが生じ、化粧料を肌へ塗布する際のなめらかさが失われてしまう傾向にある。一方、非乳化型シリコーンエラストマーを用いると、べたつきを抑制するとともに、肌への塗布時のなめらかさ(スベスベ感)を得ることができる。
【0027】
シリコーンエラストマーの例としては、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコン)クロスポリマー、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。このうち、シリコーンエラストマーの非凝集性の観点、肌の毛穴補正の観点から、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーがより好ましい。
【0028】
エラストマーには、例えば、市販品を用いることができる。市販品は、シリコーンエラストマーと油性成分との混合物であってもよい。この市販品に含まれる油性成分は、皮膚に適用可能なものであれば特に限定されない。例えば、シリコーンエラストマーを含む市販品としては、KSG-18A、KSG-16、KSG-15AP(以上、信越シリコーン社製)、エラストマーブレンドDC9045(東レ・ダウコーニング社製)などを挙げることができる。
【0029】
エラストマーの含有量は、乳化化粧料全量に対して0.05~1.5質量%であることが好ましく、0.2~1.2質量%であることがより好ましく、さらには0.5~1.0質量%であることが望ましい。シリコーンエラストマーの含有量が乳化化粧料全量に対して0.05質量%以上であることで、より高い毛穴補正効果を得ることができる。また、シリコーンエラストマーの含有量が乳化化粧料全量に対して1.5質量%以下であることで、シリコーンエラストマーをより安定に分散させることができる。
【0030】
(D)HLB値が8以下のシリコーン界面活性剤
本発明の化粧料には、さらに油相にはグリフィン法を用いて算出したHLB(Hydrophile-Lipohile Balance)値が8以下のシリコーン界面活性剤を含んでいてもよい。シリコーン界面活性剤は、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤であることが好ましい。ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤としては、例えば、シリコーン骨格に、ポリオキシエチレン(POE)やポリオキシプロピレン(POP)等のポリオキシアルキレン基を導入したポリエーテル変性シリコーンを用いることができる。このうち、特に、シリコーン界面活性剤は、シリコーン鎖(シロキサン鎖)を主鎖として有し、ポリエーテル基を有する親水基を側鎖として有することが好ましい。シリコーン界面活性剤は、シリコーン鎖に複数のポリオキシアルキレン基(ポリエーテル鎖)を側鎖として導入したペンダント型(櫛型)構造を有するとより好ましい。シリコーン界面活性剤がペンダント型構造を有すると、シリコーンエラストマーの分散安定性をより高めることができる。
【0031】
HLB値が8以下のシリコーン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、セチルジメチコンコポリオール等を使用することができる。ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体の市販品の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)-3ジメチコン(シリコーンKF-6015、信越化学工業社)、PEG-9メチルエーテルジメチコン(シリコーンKF-6016、信越化学工業社)、PEG-10ジメチコン(シリコーン6015、KF-6017、KF-6017P、KF-6043、信越化学工業社)、セチルPEG/PPG10/1ジメチコン(シリコーンKF-6048、信越化学工業社)等を挙げることができる。
【0032】
シリコーン界面活性剤の含有量は、乳化化粧料全量に対して0.3~5質量%であること好ましく、0.5~4質量%であるとより好ましく、0.8~3質量%であるとより好ましい。シリコーン界面活性剤の含有量が0.3質量%以上であることでシリコーンエラストマーの分散性をより確保することができる。また、シリコーン界面活性剤の含有量が5質量%以下であると、より乳化安定性を良好なものとすることができる。
【0033】
(その他の油相成分)
本発明の乳化化粧料の油相には、通常化粧料に配合され得る油性成分であれば特に限定されるものでなく、例えば、シリコーン油、合成エステル油、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、油脂、ロウ類等が挙げられる。
【0034】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン;3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴムなどが例示される。
【0035】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリー2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-クチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、クロタミトン(C13H17NO)などが例示される。
【0036】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが例示される。
【0037】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが例示される。
【0038】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコールなどが例示される。
【0039】
油脂としては、アボガド油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂などが例示される。
【0040】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどが例示される。
【0041】
また、本発明の乳化化粧料は、粘度が13000mPa・s以下であることが好ましく、2500~12000mPa・sであることがより好ましく、さらには3000~11000mPa・sがより好ましい。粘度が13000mPa・s以下であることで塗布時の伸びが軽く、良好な使用感が得られる。一方、2500mPa・s以上であることで十分な安定性を得ることができる。なお、本発明の乳化化粧料の粘度は実施例に示す条件で測定される粘度である。
【0042】
本発明の乳化化粧料は、(A)~(C)の成分を効率的に皮膚上に展開できることから油中水型であることが好ましい。
【0043】
本発明の乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内で通常化粧料に用いられる他の任意添加成分、例えば、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、粉末成分、糖、アミノ酸、有機アミン、pH調整剤、紫外線吸収剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0044】
本発明の乳化化粧料は、常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば、水相と油相を、それぞれ70℃程度に加温し、加温した水相を油相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、その後、室温まで放冷する等の方法が挙げられるが、これに限定されるものでない。
【0045】
本発明の乳化化粧料は、化粧料に広く応用することが可能であり、例えば、乳液の他、サンケア化粧料(サンスクリーン、サンオイル、アフターサンローション等)、化粧下地、乳化ファンデーション等の製品が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
下記表1および2に掲げた処方で化粧料を常法により調製した。調製した化粧料の物性(粘度、乳化粒子径)は以下のようにして測定した。また、保存安定性および毛穴補正は以下のように評価した。
【0047】
(粘度)
化粧料の粘度は、得られた化粧料を30℃、BL型粘度計(VS-A型 芝浦システム製)により、ローター3号、12rpm、1分間の測定条件で測定した。
【0048】
(乳化粒子径)
実施例および比較例の化粧料における乳化粒子の粒子径は、ZETASIZER(登録商標) Nano ZS90(マルバーン社製)を用いて測定した。
【0049】
(保存安定性)
調製した化粧料を50℃の恒温槽に保管した後、状態を観察し、以下の基準で評価した。
A:1か月後でも変化が見られない
B:1か月後にクリーミングした
C:2週間後にクリーミングした
D:調製直後にクリーミングした
【0050】
(毛穴補正効果)
パネル5名により、実施例および比較例の化粧料を顔に塗布する実使用試験を行い、以下の基準で評価した。
A:塗布後に補正効果を感じた人が4~5人
B:塗布後に補正効果を感じた人が1~3人
C:塗布後に補正効果を感じた人が0人
評価結果を処方とともに表1および2に示す。
【0051】
【0052】
【0053】
表1に示すように、乳化化粧料全量に対する水相の配合量が58~70質量%である実施例1~4は保存安定性がよく、毛穴補正効果も十分であった。一方、比較例1は乳液にはならず、比較例2は保存安定性が十分ではなかった。
また、表2に示すように、エラストマーを含まない比較例3は保存安定性も毛穴補正効果も十分とは言えず、エラストマーの含有量が多く、乳化化粧料全量に対する水相の配合量が57質量%の比較例4では剤型をクリームとすることができなかった。一方、シリコーンエラストマーの含有量が乳化化粧料全量に対して0.05~1.5質量の範囲である実施例2および5は、保存安定性を維持しながら、高い毛穴補正効果が得られた。
本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]-[項目9]に記載する。
[項目1]
(A)ケイ酸塩と、
(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と、
(C)エラストマーと、
を含有する、水相と油相から構成される乳化化粧料であって、
前記水相が乳化化粧料全量に対して58~70質量%である乳化化粧料。
[項目2]
前記(A)ケイ酸塩がケイ酸アルミニウムマグネシウムである項目1記載の乳化化粧料。
[項目3]
前記(B)第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が塩化ジステアリルジメチルアンモニウムである項目1または2記載の乳化化粧料。
[項目4]
前記(C)エラストマーが非乳化型シリコーンエラストマーである項目1、2または3記載の乳化化粧料。
[項目5]
前記非乳化型シリコーンエラストマーが(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーである項目4記載の乳化化粧料。
[項目6]
前記(C)エラストマーの含有量が乳化化粧料全量に対して0.05~1.5質量%である項目1~5いずれか1項記載の乳化化粧料。
[項目7]
さらに(D)HLB値が8以下のシリコーン界面活性剤を含む項目1~6いずれか1項記載の乳化化粧料。
[項目8]
粘度が13000mPa・s以下である項目1~7いずれか1項記載の乳化化粧料。
[項目9]
油中水型である項目1~8いずれか1項記載の乳化化粧料。