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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】鏡の固定構造
(51)【国際特許分類】
   A47G 1/16 20060101AFI20230707BHJP
   E04F 13/08 20060101ALN20230707BHJP
【FI】
A47G1/16 B
E04F13/08 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019129312
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021013505
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513163579
【氏名又は名称】エントラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【弁理士】
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】長江 達志
(72)【発明者】
【氏名】西川 金弥
(72)【発明者】
【氏名】藤井 寛
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 学
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-069010(JP,A)
【文献】特開平07-124045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 1/16
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面が裏面の側に設けられた鏡を前記裏面に対向する被固定面に固定する鏡の固定構造であって、
前記裏面と交差する上端部側面および下端部側面のいずれか一方に設けられた第1の孔または溝と、前記裏面と交差する一方の側端部側面に設けられた第2の孔または溝と、を有するとともに、表面と、前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面と、が交差する角部に設けられた面取り部を有する鏡と、
前記鏡の前記表面には掛からない状態で前記第1の孔または溝、および前記第2の孔または溝に係止される第1の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第1の係止部に接続された第1の固定部と、を有する第1の固定具と、
を備え
前記表面に沿った方向において、前記表面と前記面取り部とが交差する交差点と、前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面のそれぞれと、の間の距離は、前記孔または溝の深さよりも長いことを特徴とする鏡の固定構造。
【請求項2】
前記鏡は、前記裏面と交差する他方の側端部側面に設けられた第3の孔または溝を有し、
記表面には掛からない状態で前記第1の孔または溝、および前記第3の孔または溝に係止される第2の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第2の係止部に接続された第2の固定部と、を有する第2の固定具と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の鏡の固定構造。
【請求項3】
前記鏡は、前記上端部側面および前記下端部側面のいずれか他方に設けられた第4の孔または溝を有し、
記表面には掛からない状態で前記第2の孔または溝、および前記第4の孔または溝に係止される第3の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第3の係止部に接続された第3の固定部と、を有する第3の固定具と、
記表面には掛からない状態で前記第3の孔または溝、および前記第4の孔または溝に係止される第4の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第4の係止部に接続された第4の固定部と、を有する第4の固定具と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載の鏡の固定構造。
【請求項4】
前記固定具の外面は、前記表面側の前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面と同一面、または前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面からみて前記鏡の中央部に向かって後退した位置に配置されたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鏡の固定構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被固定部に鏡を固定する鏡の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、接着剤や両面接着テープなどを用いた接着により、壁などの被固定部に鏡を固定する鏡の固定構造が存在する。しかし、鏡は、高温多湿な環境下に設置されることがある。また、例えば鏡の清掃時などにおいて、比較的強い力が鏡に加わることがある。そのため、被固定部に対して鏡をより安全あるいは確実に固定するためには、ネジなどの締結部材により被固定部に固定される固定具を用いて、鏡を支持し被固定部に固定することが望ましい。
【0003】
特許文献1には、壁面に鏡を取り付けるための鏡止め具が開示されている。特許文献1に記載された鏡止め具は、壁面に取付け固定される固定部と、上下方向に可動して鏡を保持する爪部と、下方向に爪部を弾性的に保持するように保持力が働くバネ部と、を備え、バネの弾性力を利用して鏡を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-84674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された鏡止め具は、爪部の爪掛部が鏡の上部に掛かるように設置される。すなわち、爪部の爪掛部は、鏡の表面の一部を覆う。そのため、鏡の意匠性の向上という点においては、改善の余地がある。また、爪掛部が鏡の表面の一部を覆うため、爪掛部に覆われた鏡の部分には例えば水垢などの汚れが溜まりやすく、清掃者は鏡の表面を拭きにくい。そのため、鏡の清掃性の向上という点においては、改善の余地がある。このように、鏡の固定構造に対しては、鏡の意匠性や清掃性の向上などといった鏡の付加価値の向上が望まれている。
【0006】
そこで、鏡の固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡の端部を支持し鏡を固定する固定構造が、一策として考えられる。しかし、固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡の端部を支持する場合であっても、鏡の外形から外側に出る固定具の量が多いと、使用者が鏡を正面から見た際に固定具が見えるおそれがある。そうすると、鏡の意匠性の向上という点においては、さらなる改善が必要である。このように、本発明者は、固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡を固定する鏡の固定構造の検討において、固定具が鏡の正面から見えるおそれがあるという新たな課題を見出した。
【0007】
また、例えば鏡の清掃時などにおいて、水平方向(横方向)の比較的強い力が鏡に加わる場合がある。この場合には、固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡を固定する場合であっても、鏡と固定具との係止条件によっては、鏡が固定具に対して水平方向にずれてしまうおそれがあるという新たな課題を本発明者は見出した。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、鏡の固定具が鏡の正面視において見え難くなり、鏡に対して水平方向の外力が加わっても鏡が固定具に対して水平方向にずれることを抑えることができる鏡の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、反射面が裏面の側に設けられた鏡を前記裏面に対向する被固定面に固定する鏡の固定構造であって、前記裏面と交差する上端部側面および下端部側面のいずれか一方に設けられた第1の孔または溝と、前記裏面と交差する一方の側端部側面に設けられた第2の孔または溝と、を有する鏡と、前記鏡の表面には掛からない状態で前記第1の孔または溝、および前記第2の孔または溝に係止される第1の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第1の係止部に接続された第1の固定部と、を有する第1の固定具と、を備えたことを特徴とする本発明に係る鏡の固定構造により解決される。
【0010】
本発明に係る鏡の固定構造によれば、固定具の第1の係止部は、鏡の上端部側面および下端部側面のいずれか一方に設けられた第1の孔または溝と、鏡の一方の側端部側面に設けられた第2の孔または溝と、の両方に係止される。このため、第1の固定具は、鏡の鉛直方向(縦方向)だけではなく水平方向(横方向)の位置ズレを抑制し、高い固定力により鏡を保持することができる。従って、鏡に対して水平方向の外力が加わっても鏡が固定具に対して水平方向にずれることを抑制することができる。
【0011】
しかも、第1の固定具の第1の係止部は、鏡の第1の孔または溝と第2の孔または溝とに係止される。そのため、鏡の表面においてすっきりとした外観が得られ、鏡のデザインの自由度が高まる。そのため、鏡の意匠性を向上させることができる。また、例えば水垢などの汚れが鏡の表面に溜まることを抑えることができるとともに、清掃者は鏡の表面を拭きやすくなる。そのため、鏡の清掃性を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る鏡の固定構造において、好ましくは、前記鏡は、前記裏面と交差する他方の側端部側面に設けられた第3の孔または溝を有し、前記鏡の表面には掛からない状態で前記第1の孔または溝、および前記第3の孔または溝に係止される第2の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第2の係止部に接続された第2の固定部と、を有する第2の固定具と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る鏡の固定構造によれば、第2の固定具の第2の係止部は、鏡の上端部側面および下端部側面のいずれか一方に設けられた第1の孔または溝と、鏡の他方の側端部側面に設けられた第3の孔または溝と、の両方に係止される。このため、鏡の水平方向の位置ズレを抑制し、より一層の高い固定力により鏡を保持することができる。すなわち、第1の固定具および第2の固定具は、鏡の水平方向の両側の角部を係止することができる。このため、鏡に対して水平方向の外力が加わっても鏡が固定具に対して水平方向にずれることをより一層抑制することができる。
【0014】
本発明に係る鏡の固定構造において、好ましくは、前記鏡は、前記上端部側面および前記下端部側面のいずれか他方に設けられた第4の孔または溝を有し、前記鏡の表面には掛からない状態で前記第2の孔または溝、および前記第4の孔または溝に係止される第3の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第3の係止部に接続された第3の固定部と、を有する第3の固定具と、前記鏡の表面には掛からない状態で前記第3の孔または溝、および前記第4の孔または溝に係止される第4の係止部と、両端部のうちの一方の端部が前記被固定面に固定され、前記両端部のうちの他方の端部が前記第4の係止部に接続された第4の固定部と、を有する第4の固定具と、をさらに備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る鏡の固定構造によれば、第3の固定具の第3の係止部は、鏡の上端部側面および下端部側面のいずれか他方に設けられた第4の孔または溝と、鏡の一方の側端部側面に設けられた第2の孔または溝と、の両方に係止される。また、第4の固定具の第4の係止部は、鏡の上端部側面および下端部側面のいずれか他方に設けられた第4の孔または溝と、鏡の他方の側端部側面に設けられた第3の孔または溝と、の両方に係止される。これにより、鏡の水平方向の位置ズレを抑制し、より一層の高い固定力により鏡を保持することができる。すなわち、第3の固定具および第4の固定具は、鏡の水平方向の両側の角部を係止することができる。このため、鏡に対して水平方向の外力が加わっても鏡が固定具に対して水平方向にずれることをより一層抑制することができる。
【0016】
本発明に係る鏡の固定構造において、好ましくは、前記固定具の外面は、前記鏡の表面側の前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面と同一面、または前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面からみて前記鏡の中央部に向かって後退した位置に配置されたことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る鏡の固定構造によれば、固定具の外面は、表面側の上端部側面、下端部側面および側端部側面と同一面に配置される。あるいは、固定具の外面は、鏡の表面側の上端部側面、下端部側面および側端部側面と同一面、または上端部側面、下端部側面および側端部側面からみて鏡の中央部に向かって後退した位置に配置される。このため、鏡を正面視したときに、固定具が鏡に隠れてさらに見えにくくなる。このため、鏡の意匠性が向上する。
【0018】
本発明に係る鏡の固定構造において、好ましくは、前記鏡は、前記表面と、前記上端部側面、前記下端部側面および前記側端部側面と、が交差する角部に設けられた面取り部を有することを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、鏡は、鏡の表面と、鏡の上端部側面、下端部側面および側端部側面と、が交差する角部に設けられた面取り部を有することから、光の屈折、反射、乱反射により、側面に形成された孔または溝、もしくは孔または溝に係止された固定具の係止部が見え難くなる。このため、鏡の意匠性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鏡の固定具が鏡の正面視において見え難くなり、鏡に対して水平方向の外力が加わっても鏡が固定具に対して水平方向にずれることを抑えることができる鏡の固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る鏡の固定構造により鏡が被固定部に固定された状態を表す斜視図である。
図2図1に表した矢印A11の方向からみたときの鏡の側面図である。
図3】本実施形態に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
図4図3に表した切断面A-Aにおける断面図である。
図5図3に表した切断面B-Bにおける断面図である。
図6図4に表した領域A1の拡大図である。
図7図5に表した領域A2の拡大図である。
図8図3に表した複数の固定具と、鏡と、を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0023】
発明の基本態様
本発明による態様は、図3に表す固定ユニット4を用いて、図1に表す鏡3を被固定部9に固定する鏡の固定構造2に関する。図6図7図8とに表すように、上端部側面371,372と、下端部側面381,382と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、では、次のような特徴的な構造を有する。
【0024】
図8に表す鏡3の裏面35側の上端部側面372と下端部側面382と一方の側端部側面392と他方の側端部側面394とは、鏡3に設けられた第1の孔または溝373と第4の孔または溝383と第2の孔または溝401と第3の孔または溝402とからみて、鏡3の表面36側の上端部側面371と下端部側面381と一方の側端部側面391と他方の側端部側面393とに対して、鏡3の中央部に向かって後退した位置に設けられている。つまり、図6図7に例示するように、鏡3の裏面35側の上端部側面372および下端部側面382と、鏡3の表面36側の上端部側面371および下端部側面381と、の間に、段差D1、D2がそれぞれ設けられている。段差D1、D2が設けられていることで、段落ち部700が形成されている。すなわち、第1の固定具141から第4の固定具144の外面は、鏡3の表面36側の上端部側面371および下端部側面381と同一面、または鏡3の表面36側の上端部側面371および下端部側面381からみて鏡3の中央部に向かって後退した位置に配置されている。
【0025】
同様にして、図8に表す一方の側端部側面391,392および他方の側端部側面393,394においても、上端部側面371,372および下端部側面381,382と同様に段差が設けられて、段落ち部が形成されている。すなわち、第1の固定具141から第4の固定具144の外面は、鏡3の表面36側の一方の側端部側面391および他方の側端部側面393と同一面、または鏡3の表面36側の一方の側端部側面391と他方の側端部側面393からみて鏡3の中央部に向かって後退した位置に配置されている。
【0026】
以上のことから、図8に表す固定ユニット4の四隅の第1の固定具141から第4の固定具144は、段落ち部700に収まることで、鏡3の表面36の側からの正面視において見えないように設置される。これにより、鏡3の固定ユニット4は、鏡3の正面視において見え難くなっている。このように、本発明による鏡の固定構造2は、鏡3が被固定部9に対して浮いているように見せることができ、鏡3の付加価値を向上させることができるとの優れた利点を有するものである。
【0027】
また、鏡3は、第1の固定具141から第4の固定具144により図8に表すY方向である鉛直方向(上下方向)だけでなく、図8に表すX方向である水平方向(横方向:左右方向)についても移動しないように保持されている。例えば鏡の清掃時などにおいて、水平方向の比較的強い力が鏡に加わる場合がある。この場合には、第1の固定具141から第4の固定具144が、保持力を発揮するので、鏡3が水平方向(X方向)に位置ズレすることを、確実に抑制することができる。
以下、定義を述べた後に、本発明による鏡の固定構造のさらに詳細を説明する。
【0028】
定義

本発明による鏡の固定構造によって固定される鏡は、反射面が鏡の裏面の側に設けられたいわゆる「裏面鏡」であり、例えば浴室や脱衣室や洗面化粧室などの高温多湿な環境下に設置されることがある。鏡の具体的な構造については、図面を参照しながら後述する。
【0029】
孔または溝
本発明による鏡の固定構造によって固定される鏡は、鏡の側面に設けられた孔または溝を有する。孔または溝は、好適には、非貫通の孔または溝である。非貫通とは、一方の端部から他方の端部に向かって掘り下げられて孔または溝が形成されるが、他方の端部にまで至らない状態を意味する。図8に示す具体例では、第1の孔または溝373と第4の孔または溝383、そして第2の孔または溝401と第3の孔または溝402が、鏡3の4つの側面に、それぞれ設けられている。
【0030】
本発明において、鏡が有する非貫通の溝とは、凹条を意味する。なお、非貫通の溝は、非貫通の孔であってもよい。非貫通の孔の形状は、特には限定されず、例えば、円形、楕円、三角形、四角形、多角形様であってよい。このように、本発明において、溝と孔とは、明確に区別される必要はなく、例えば四角形の非貫通の孔が横長に形成されて溝と解されるような形状であってもよい。本願明細書において、固定具の係止部材が挿入かつ係止可能である限りにおいて、孔または溝と呼ぶ。また、溝は、一方の側面から、その一方の側面に対向する他方の側面まで延びていてもよく、両側面まで延びていなくともよい。例えば、鏡の幅(一方の側面と他方の側面との間の距離)よりも短い複数の溝が、鏡の幅方向において互いに独立して存在していてもよい。
【0031】
孔または溝が延びた方向に沿ってみたときの孔または溝の形状は、三角形(V溝形状)、四角形(矩形状)、半円形(U溝形状)であってもよい。
【0032】
被固定部と被固定面
本発明による鏡の固定構造において、鏡が固定される部材あるいは構造物を「被固定部」という。被固定部としては、例えば浴室や脱衣室や洗面化粧室などの壁が挙げられる。ただし、被固定部は、浴室、脱衣室および洗面化粧室の壁だけには限定されない。また、本発明による鏡の固定構造において、鏡が固定される被固定部の表面を「被固定面」という。被固定面としては、例えば浴室や脱衣室や洗面化粧室など壁の表面であって、鏡の利用者が存在する側の壁の表面(内壁面)が挙げられる。ただし、被固定面は、浴室、脱衣室および洗面化粧室の内壁面だけには限定されない。
【0033】
本発明による鏡の固定構造
以下、本発明による鏡の固定構造について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鏡の固定構造により鏡が被固定部に固定された状態を表す斜視図である。
図2は、図1に表した矢印A11の方向からみたときの鏡の側面図である。
図3は、本実施形態に係る鏡の固定構造を表す斜視図である。
【0034】
図1に表したように、鏡3は、本実施形態に係る鏡の固定構造2(図3参照)により被固定部9に固定される。鏡3は、反射面が鏡3の裏面の側に設けられたいわゆる「裏面鏡」である。すなわち、図2に表したように、鏡3は、ガラス31と、銀(Ag)を含む銀層32と、銅(Cu)を含む銅層33と、バックコート層34と、を有する。ガラス31と、銀層32と、銅層33と、バックコート層34と、は、鏡3の表面36から鏡3の裏面35に向かってこの順に配置されている。なお、後述するように、バックコート層34の裏面側には、オーバーコート層がさらに設けられていてもよい。
【0035】
本願明細書において「鏡の表面」とは、鏡3が被固定部9に固定された状態において鏡3の前に存在する利用者に対向する面をいう。言い換えれば、「鏡の表面」とは、鏡3を利用する利用者が鏡3を眺めたり覗いたりする側の面をいう。本願明細書において「鏡の裏面」とは、鏡3の表面36とは反対側の面であって、鏡3が被固定部9に固定された状態において被固定面に対向する面をいう。
【0036】
表面36から裏面35に向かう方向のガラス31の寸法(厚さ)L1は、例えば約5mm程度である。表面36から裏面35に向かう方向の銀層32の寸法(厚さ)L2は、例えば約80nm程度である。表面36から裏面35に向かう方向の銅層33の寸法(厚さ)L3は、例えば約40nm程度である。表面36から裏面35に向かう方向のバックコート層34の寸法(厚さ)L4は、例えば約50μm程度である。
【0037】
図2に表したように、鏡3の反射面311は、銀層32の面のうちで鏡3の表面36の側に配置された面であり、ガラス31に接触している。図2に表した矢印A12および矢印A13のように、鏡3の表面36からガラス31の内部に入射した光の一部は、反射面311において反射し、ガラス31の内部を進行して鏡3の表面36から放出される。
【0038】
銅層33は、銀層32を保護する機能を有し、銀層32が例えば塩化物や硫化物などと反応して腐食することを抑える。すなわち、銅層33とは、犠牲防蝕効果を発揮する。また、バックコート層34は、銅層33の防蝕効果よりも高い防蝕効果を有する塗料を含み、銀層32の腐食をより一層抑える。なお、本実施形態の鏡3の構造は、図2に表した例には限定されず、例えば、防蝕効果を有する塗料を含むオーバーコート層がバックコート層34の裏面の側にさらに積層された構造であってもよい。
【0039】
鏡の固定構造2が備える固定ユニット4(図3参照)は、鏡3の正面視において見え難くなっている。また、固定ユニット4は、鏡3のガラス31を通して斜めから見え難くなっている。これにより、図1に表したように、鏡3は、被固定部9に対して浮いているように見える。
なお、図1に表した例では、鏡3は、ボウル部81を有する洗面台8の上において被固定部9に固定されている。ただし、鏡3の固定位置は、洗面台8の上の被固定部9には限定されない。例えば、鏡3は、浴室や脱衣室などに設置された壁などの被固定部9に固定されてもよい。以下、本実施形態に係る鏡の固定構造2の詳細を、図面を参照して説明する。
【0040】
図4は、図3に表した切断面A-Aにおける断面図である。
図5は、図3に表した切断面B-Bにおける断面図である。
図6は、図4に表した領域A1の拡大図である。
図7は、図5に表した領域A2の拡大図である。
図8は、図3に表した複数の固定具と、鏡と、を示す斜視図である。
【0041】
本実施形態に係る鏡の固定構造2は、鏡3と、固定ユニット4と、を備える。固定ユニット4は、図8に表した複数の固定具を有する。本実施形態では、複数の固定具は、第1の固定具141から第4の固定具144である。第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の4つの角部をそれぞれ固定する。
【0042】
図8に表した鏡3は、長方形あるいは正方形である。鏡3は、上端部側面371,372と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、下端部側面381,382と、を有する。上端部側面371,372と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、下端部側面381,382と、は、鏡3の裏面35および表面36と交差する面である。
【0043】
上端部側面371,372と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、下端部側面381,382と、は、例えば「木口」や「こば」など呼ばれる部分であり、鏡3の主面(表面36および裏面35)の側方に形成された面である。上端部側面371,372の間には、直線状の第1の孔または溝373が設けられている。一方の側端部側面391,392の間には、直線状の第2の孔または溝401が設けられている。他方の側端部側面393,394の間には、直線状の第3の孔または溝402が設けられている。下端部側面381,382の間には、直線状の第4の孔または溝383が設けられている。
【0044】
本発明では、第1の孔または溝373は、上端部側面371,372および下端部側面381,382のいずれか一方に設けられている。第4の孔または溝383は、上端部側面371,372および下端部側面381,382のいずれか他方に設けられている。本実施形態の説明では、第1の孔または溝373が上端部側面371,372に設けられ、第4の孔または溝383が下端部側面381,382に設けられた場合を例に挙げる。
【0045】
上端部側面371,372と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、下端部側面381,382と、は、本発明の「裏面と交差する側面」の一例である。鏡3が図1に示す被固定部9に固定された状態において、上端部側面371,372は鏡3の上側の端面(上端面)の一例であり、下端部側面381,382は鏡3の下側の端面(下端面)の一例である。一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394は、裏面35と交差する側面のうち互いに対向する両側の側面である。
【0046】
第1の孔または溝373と、第2の孔または溝401と、第3の孔または溝402と、第4の孔または溝383と、は、図8に表した例では、それぞれ上端部側面371,372と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、下端部側面381,382と、の全長に渡って形成されている。
【0047】
但し、これに限らず、第1の孔または溝373と、第2の孔または溝401と、第3の孔または溝402と、第4の孔または溝383と、は、それぞれ上端部側面371,372と、一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、下端部側面381,382と、の途中の位置まで形成されているだけでも良い。例えば、第1の孔または溝373と、第2の孔または溝401と、第3の孔または溝402と、第4の孔または溝383と、の各形成長さは、対応する第1の固定具141から第4の固定具144の寸法に対応した長さであれば良い。第1の孔または溝373と、第2の孔または溝401と、第3の孔または溝402と、第4の孔または溝383と、について、表面36から裏面35に向かう方向の溝寸法(幅)は、例えば約1mm程度である。
【0048】
図3に表した固定ユニット4と第1の固定具141から第4の固定具144とは、材料は特に問わないが、例えば金属の板状部材のプレス加工に形成された金具である。固定ユニット4と第1の固定具141から第4の固定具144とは、鏡3を被固定部9に対して位置ズレがないように固定する。第1の固定具141から第4の固定具144は、好ましくは同じ形状を有している。そのため、複数の種類の固定具を用意する必要がなく、製造時のコストダウンを図ることができる。
【0049】
図3に表した固定ユニット4は、第1の固定具141から第4の固定具144と、固定部材42と、を有する。固定ユニット4は、第1連結部材43と、第2連結部材44と、をさらに有していてもよい。本実施形態では、固定ユニット4が、第1の固定具141から第4の固定具144と、一対の固定部材42と、一対の第1連結部材43と、一対の第2連結部材44と、を有する場合を例に挙げて説明する。
【0050】
なお、第1の固定具141から第4の固定具144、固定部材42、第1連結部材43および第2連結部材44は、必ずしも別部材として設けられていなくともよく、一部材として設けられていてもよい。また、本実施形態に係る鏡の固定構造2においては、第1連結部材43および第2連結部材44は必須ではない。他の実施形態によれば、第1連結部材43および第2連結部材44は無くてもよい。つまり、第1の固定具141から第4の固定具144が1つの固定部材42に支持されていてもよい。
【0051】
さらに他の実施形態によれば、第1連結部材43および第2連結部材44のいずれかが無くてもよい。つまり、第1連結部材43が無い場合には、図8に表す一方の側端部側面391,392から他方の側端部側面393,394へ向かう方向において、上側の第2連結部材44が第1の固定具141と第2の固定具142とを連結し、下側の第2連結部材44が第3の固定具143と第4の固定具144とを連結する。第2連結部材44が無い場合には、第1の固定具141と第2の固定具142と、第3の固定具143と第4の固定具144と、が、それぞれ固定部材42、42で支持される。
【0052】
図8に表す鏡3の固定構造2では、既に述べたように、第1の固定具141から第4の固定具144が用いられている。概略的には、第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の表面36には掛からない状態で鏡3の第1の孔または溝373と、第2の孔または溝401と、第3の孔または溝402と、第4の孔または溝383と、に対して、それぞれ係止されている。すなわち、第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の表面36のいずれの部分も覆っていない。
【0053】
図4および図5に表したように、固定部材42は、ねじなどの締結部材5により被固定部9に物理的に固定され、第1の固定具141から第4の固定具144を支持する。例えば、固定部材42は、鏡3の裏面35と被固定部9との間において、第1の固定具141から第4の固定具144に直接的または間接的に引っ掛けられて、第1の固定具141から第4の固定具144を支持する。図4および図5に表した例では、固定部材42は、第1連結部材43および第2連結部材44を介して、第1の固定具141から第4の固定具144に間接的に引っ掛けられて、第1の固定具141から第4の固定具144を支持する。
【0054】
図3に表す一対の第1連結部材43は、第1の固定具141から第4の固定具144を連結している。一方の第1連結部材43の上端部および下端部は、第1の固定具141と第3の固定具143とを連結している。他方の第1連結部材43の上端部および下端部は、第2の固定具142と第4の固定具144とを連結している。一対の第2連結部材44は、左右の第1連結部材43同士を連結している。一方の第2連結部材44は、相対的に上側において2つの第1連結部材43同士を連結している。他方の第2連結部材44は、相対的に下側において2つの第1連結部材43同士を連結している。
【0055】
第1の固定具141から第4の固定具144の構造例
次に、第1の固定具141から第4の固定具144の構造例を、図8を参照して説明する。
図8に表したように、第1の固定具141から第4の固定具144は、好ましくは同じ構造を有していることで、固定具の製造時のコストダウンを図ることができる。第1の固定具141は、第1の係止部501A、501Bと、第1の固定部502と、を有する。第1の固定部502は矩形の板部材であり、第1の係止部501A、501Bに接続されている。第1の固定部502の一方の端部が、被固定面側に固定され、第1の固定部502の他方の端部側には、第1の係止部501A、501Bが接続して形成されている。第1の係止部501Aは、第1の固定部502の1つの辺部に接続して形成され、第1の係止部501Bは、第1の固定部502の別の辺部に接続して形成されている。第1の係止部501A、501Bは、例えば断面U字型を有している。第1の固定具141は、鏡3の上側の一方の角部に対応して装着される。第1の係止部501Aは、鏡3の表面36には掛からない状態で、それぞれ第1の孔または溝373に係止され、第1の係止部501Bは、第2の孔または溝401に係止される。
【0056】
同様にして、図8に表したように、第2の固定具142は、第2の係止部511A、511Bと、第2の固定部512と、を有する。第2の固定部512は矩形の板部材であり、第2の係止部511A、511Bに接続されている。第2の固定部512の一方の端部が、被固定面側に固定され、第2の固定部512の他方の端部側には、第2の係止部511A、511Bが接続して形成されている。第2の係止部511Aは、第2の固定部512の1つの辺部に接続して形成され、第2の係止部511Bは、第2の固定部512の別の辺部に接続して形成されている。第2の係止部511A、511Bは、例えば断面U字型を有している。第2の固定具142は、鏡3の上側の他方の角部に対応して装着される。第2の係止部511Aは、鏡3の表面36には掛からない状態で、それぞれ第1の孔または溝373に係止され、第2の係止部511Bは、第3の孔または溝402に係止される。
【0057】
図8に表したように、第3の固定具143は、第3の係止部521A、521Bと、第3の固定部522と、を有する。第3の固定部522は矩形の板部材であり、第3の係止部521A、521Bに接続されている。第3の固定部522の一方の端部が、被固定面側に固定され、第3の固定部522の他方の端部側には、第3の係止部521A、521Bが接続して形成されている。第3の係止部521Aは、第3の固定部522の1つの辺部に接続して形成され、第3の係止部521Bは、第3の固定部522の別の辺部に接続して形成されている。第3の係止部521A、521Bは、例えば断面U字型を有している。第3の固定具143は、鏡3の下側の一方の角部に対応して装着される。第3の係止部521Aは、鏡3の表面36には掛からない状態で、それぞれ第4の孔または溝383に係止され、第3の係止部521Bは、第2の孔または溝401に係止される。
【0058】
そして、図8に表したように、第4の固定具144は、第4の係止部531A、531Bと、第4の固定部532と、を有する。第4の固定部532は矩形の板部材であり、第4の係止部531A、531Bに接続されている。第4の固定部532の一方の端部が、被固定面側に固定され、第4の固定部532の他方の端部側には、第4の係止部531A、531Bが接続して形成されている。第4の係止部531Aは、第4の固定部532の1つの辺部に接続して形成され、第4の係止部531Bは、第4の固定部532の別の辺部に接続して形成されている。第4の係止部531A、531Bは、例えば断面U字型を有している。第4の固定具144は、鏡3の下側の他方の角部に対応して装着される。第4の係止部531Aは、鏡3の表面36には掛からない状態で、第4の孔または溝383に係止され、第4の係止部531Bは、第3の孔または溝402に係止される。
【0059】
ここで、第1の課題として、固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡の端部を支持する場合であっても、鏡の外形から外側に出る固定具の量が多いと、使用者が鏡を正面から見た際に固定具が見えるおそれがある。そうすると、鏡が被固定部に対して浮いているように見えないおそれがあり、鏡の意匠性の向上という点においては改善の余地がある。
【0060】
これに対して、本実施形態に係る鏡3の固定構造2では、鏡の意匠性の向上という点において、つぎのように改善している。図6に表したように、第1の孔または溝373からみて裏面35の側の上端部側面372は、第1の孔または溝373からみて表面36の側の上端部側面371に対して鏡3の中央部に向かって後退した位置に設けられている。本実施形態の説明では、第1の孔または溝373からみて表面36の側の上端部側面371を「第1側面371」と称し、溝373からみて裏面35の側の上端部側面372を「第2側面372」と称することがある。つまり、第1側面371と、第2側面372と、の間には、段差D1(図6参照)が設けられている。段差D1が設けられていることで、段落ち部700が形成されている。
【0061】
また、同様にして、図7に表したように、第4の孔または溝383からみて裏面35の側の下端部側面382は、第4の孔または溝383からみて表面36の側の下端部側面381に対して鏡3の中央部に向かって後退した位置に設けられている。本実施形態の説明では、第4の孔または溝383からみて表面36の側の下端部側面381を「第1側面381」と称し、第4の孔または溝383からみて裏面35の側の下端部側面382を「第2側面382」と称することがある。つまり、第1側面381と、第2側面382と、の間には、段差D2(図7参照)が設けられている。段差D2が設けられていることで、段落ち部700が形成されている。同様にして、図8に示す一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394と、においても同様の段差が設けられていることで、それぞれ段落ち部が形成されている。
【0062】
第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の表面36の側からの正面視において見えないように設置されている。すなわち、第1の固定具141から第4の固定具144は、それぞれ対応する位置の段落ち部700に収まるように配置されている。これにより、鏡3の固定ユニット4の第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の正面視において見え難くなっている。そのため、鏡3が被固定部9に対して浮いているように見え、鏡3の意匠性を向上させることができる。
【0063】
次に、第2の課題として、鏡3は、第1の固定具141から第4の固定具144により鉛直方向(上下方向) だけでなく、水平方向(横方向)についても位置ズレしないように固定する必要がある。例えば鏡の清掃時などにおいて、水平方向の比較的強い力が鏡に加わる場合がある。この場合には、本発明の実施形態の第1の固定具141から第4の固定具144が、鏡3をY方向で示す鉛直方向だけでなく、図8に表すX方向である水平方向(左右方向)に移動させないように保持力を発揮する。このため、鏡3が水平方向に位置ズレするのを防止している。
【0064】
このようにして、鏡3の四隅の角部は、第1の固定具141から第4の固定具144を用いて固定されている。このため、本発明者の実施した実験結果の一例によれば、本実施形態に係る鏡の固定構造2の水平方向についての保持力は、例えば10kgfを得られるのに対して、従来の鏡の固定構造の水平方向についての保持力は、6.1kgfであった。このことから、鏡の固定構造2は、従来構造に比べて、水平方向への鏡3の位置ズレや鏡の落下に対する抑制能力が向上している。また、鏡面の外方向への変形が抑制されるので、保持力が向上できる。
【0065】
図6に表したように、第1の固定具141と第2の固定具142は、光の透過を抑制する材料、好適には不透明な材料により形成された接着剤61により鏡3に張り付けられている。具体的には、図6に表したように、第1の固定具141と第2の固定具142は、第2側面372と、面取り領域374と、裏面35と、に対して接着剤61により接着されている。面取り領域374は、裏面35と第2側面372とが交差する角部に設けられている。面取り領域374と第1の固定具141と第2の固定具142との間の空間375には、接着剤61の溜まり部が形成されている。また、図7に表したように、第3の固定具143と第4の固定具144は、第2側面382と、面取り領域384と、裏面35と、に対して接着剤61により接着されている。面取り領域384は、裏面35と第2側面382とが交差する角部に設けられている。面取り領域384と第3の固定具143と第4の固定具144との間の空間385には、接着剤61の溜まり部が形成されている。
【0066】
図6図7図8とに表す第1側面371、381は、第2側面372、382に対して鏡3の外側の位置に設けられている。また、鏡3の厚さ方向(表面36および裏面35のいずれか一方から表面36および裏面35のいずれか他方に向かう方向)において、第1側面371、381は、比較的薄い。そのため、第1側面371、381の部分は、鏡3の外側に突出した薄肉部分になっている。同様にして、図8に表す第1側面391、393は、第2側面392、394に対して鏡3の外側の位置に設けられている。また、鏡3の厚さ方向(表面36および裏面35のいずれか一方から表面36および裏面35のいずれか他方に向かう方向)において、第1側面391、393は、比較的薄い。そのため、第1側面391、393の部分は、鏡3の外側に突出した薄肉部分になっている。
【0067】
これに対して、本実施形態によれば、図6図7に表すように、第1の固定具141から第4の固定具144が接着剤61により鏡3に張り付けられているため、鏡3の薄肉部分の強度の低下を補い、鏡3が割れたり欠けたりすることを抑えることができる。また、面取り領域374、384と第1の固定具141と第2の固定具142との間の空間375、385に形成された溜まり部において接着剤61が溜まっているため、第1の固定具141から第4の固定具144と鏡3との間の接着強度がより一層増している。これにより、鏡3の薄肉部分の強度の低下をより一層補い、鏡3が割れたり欠けたりすることをより一層抑えることができる。
【0068】
また、第3の課題として、使用者は、鏡を使用する際に鏡を正面から見るため、鏡の表面側に設けられたガラスを通して鏡の端部を斜めから見ることになる。このような状況では、固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡の端部を支持する場合であっても、固定具が鏡のガラスを通して斜めから見えるおそれがある。そうすると、鏡の意匠性の向上という点においては改善の余地がある。
【0069】
これに対して、本実施形態に係る鏡3の固定構造2では、図3および図6に表したように、光の透過を抑制する材料、好適には不透明な材料により形成された樹脂層62が、第2側面372のうちで第1の固定具141と第2の固定具142とが溝373に係止されていない部分23に設けられている。なお、図6に表した例では、樹脂層62は、第1側面371および第2側面372のうちで第1の固定具141と第2の固定具142が、図3に表す溝373に係止されていない部分23に設けられている。このように、樹脂層62は、第1側面371および第2側面372の両方に設けられていてもよい。
【0070】
そのため、図6に表した矢印A11のように、使用者が鏡3のガラス31を通して鏡3の第1側面371および第2側面372の部分を斜めから見たときに、樹脂層62が設けられていない場合と比較して、第1の固定具141と第2の固定具142とが溝373に係止された部分22、24と、第1の固定具141と第2の固定具142とが溝373に係止されていない部分23と、の違いが明確になることを抑え、第1の固定具141と第2の固定具142が目立つことを抑える。
【0071】
また、同様にして、図3および図7に表したように、光の透過を抑制する材料により形成された樹脂層62が、第2側面382のうちで第3の固定具143と第4の固定具144が溝383に係止されていない部分23に設けられている。なお、図7に表した例では、樹脂層62は、第1側面381および第2側面382のうちで第3の固定具143と第4の固定具144が溝383に係止されていない部分23に設けられている。このように、樹脂層62は、第1側面381および第2側面382の両方に設けられていてもよい。
【0072】
そのため、図7に表した矢印A12のように、使用者が鏡3のガラス31を通して鏡3の第1側面381および第2側面382の部分を斜めから見たときに、樹脂層62が設けられていない場合と比較して、第3の固定具143と第4の固定具144とが溝383に係止された部分22、24と、第3の固定具143と第4の固定具144とが溝383に係止されていない部分23と、の違いが明確になることを抑え、第3の固定具143と第4の固定具144が目立つことを抑えることができる。
【0073】
これにより、鏡3の固定ユニット4は、鏡3のガラス31を通して斜めから見え難くなっている。そのため、鏡3の意匠性を向上させることができる。第1側面371および第2側面372の部分を斜めから見たときに、第1の固定具141と第2の固定具142とが係止された部分22、24と、第1の固定具141と第2の固定具142とが係止されていない部分23と、の違いが明確になることを抑えるためには、樹脂層62は、第2側面372および溝373の部分に設けられていることが好ましく、第1側面371の部分には設けられていなくてもよい。樹脂層62は、第1の固定具141と第2の固定具142と鏡3との係止が外れるような力が加わったときに、係止が外れることを抑制することができる。
【0074】
このように、樹脂層62は、第1の固定具141と第2の固定具142と鏡3との係止力を補助するためには、図6に表したように、第1側面371の部分に設けられていることが好ましく、第1側面371および第2側面372の部分に設けられていることが、より好ましい。このような樹脂層62の設置位置に関する作用および効果は、第1側面381および第2側面382の部分、そして図8に示す一方の側端部側面391,392と、他方の側端部側面393,394においても同様である。
【0075】
樹脂層62、および樹脂層として機能する接着剤61が、第1の固定具141から第4の固定具144が溝373、383に係止された部分22、24(図3参照)と、第1の固定具141から第4の固定具144が溝373、383に係止されていない部分23(図3参照)と、の両方に設けられるため、第1の固定具141から第4の固定具144が目立つことをより一層抑えることができる。また、樹脂層として機能する接着剤61が、第1の固定具141から第4の固定具144と第2側面372、382、392、394との間の部分に設けられるため、使用者が鏡3のガラス31を通して鏡3の第1側面371、381および第2側面372、382の部分を斜めから見たときに、第1の固定具141から第4の固定具144が樹脂層として機能する接着剤61に隠れてほとんど見えない状態になる。
【0076】
例えば、樹脂層62は、接着剤により形成されている。接着剤により形成された樹脂層62の材料は、第1の固定具141から第4の固定具144と鏡3とを張り付ける接着剤61の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。樹脂層62が接着剤により形成されている場合には、鏡3の第1側面371、381、391、393および第2側面372、382、392、394を樹脂層62で覆う被覆工程と、第1の固定具141から第4の固定具144と鏡3とを張り付ける接着工程と、を同じ工程で行うことができる。これにより、鏡3の固定構造2に関する作業の効率化を図ることができる。
【0077】
また、第4の課題として、固定具が鏡の表面には掛からない状態で鏡の端部を支持する場合において、比較的強い力や衝撃が鏡に加わったり、鏡が振動したりすると、過度な力が固定具から鏡の端部に作用するおそれがある。例えば、鏡に対して曲げやねじりを生じさせる力が固定具から鏡の端部に作用するおそれがある。そうすると、鏡が割れたり欠けたりするおそれがある。この点においては、改善の余地がある。
【0078】
これに対して、本実施形態に係る鏡3の固定構造2では、緩衝部材63が溝373、383、401、402と被固定部9との間にそれぞれ設けられ、第1の固定具141から第4の固定具144から溝373、383、401、402に作用する力を緩和する。具体的には、図6において例示したように、緩衝部材63は、溝373のうちで、鏡3の裏面35の側の側面と、鏡3の表面36の側の側面と、底面と、に設けられている。また、図7に表したように、緩衝部材63は、溝383のうちで、鏡3の裏面35の側の側面と、鏡3の表面36の側の側面と、底面と、に設けられている。本実施形態の緩衝部材63は、接着剤61よりも柔軟な接着剤であるとともに弾性を有する接着剤であり、第1の固定具141から第4の固定具144と鏡3とを接着している。
【0079】
これによれば、緩衝部材63は、第1の固定具141から第4の固定具144が溝373、383、401、402に作用する力を緩和する。そのため、比較的強い力や衝撃が鏡3に加わったり、鏡3が振動したりした場合であっても、過度な力が第1の固定具141から第4の固定具144が溝373、383、401、402に作用することを抑えることができる。例えば、鏡3に対して曲げやねじりを生じさせる力が第1の固定具141から第4の固定具144が溝373、383、401、402に作用することを抑えることができる。これにより、鏡3が割れたり欠けたりすることを抑えることができる。
【0080】
また、緩衝部材63は、接着剤61よりも柔軟であるため、第1の固定具141から第4の固定具144が溝373、383、401、402に作用する力をより一層緩和することができる。これにより、鏡3が割れたり欠けたりすることをより一層抑えることができる。
【0081】
また、緩衝部材63は、弾性を有する接着剤であり、第1の固定具141から第4の固定具144と鏡3とを接着しているため、鏡3の薄肉部分(第1側面371、381、391、393の部分および第2側面372、382、392、394の部分)の強度の低下を補い、鏡が割れたり欠けたりすることをより一層抑えることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る鏡3の固定構造2によれば、第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の表面36には掛からない状態で鏡3の溝373、383,401,402に係止されている。そのため、鏡3の表面36においてすっきりとした外観が得られ、鏡3のデザインの自由度が高まる。そのため、鏡3の意匠性を向上させることができる。また、例えば水垢などの汚れが鏡3の表面36に溜まることを抑えることができるとともに、清掃者は鏡3の表面36を拭きやすくなる。そのため、鏡3の清掃性を向上させることができる。
【0083】
図6図7に表すように、第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の表面36側よりも内側にある段落ち部700に収めるようにして配置される。このため、第1の固定具141から第4の固定具144は、段落ち部700に収まるようにして配置されることで、第1の固定具141から第4の固定具144は、鏡3の表面36側の側面よりも内側にある。このため、鏡3を正面視したときに、第1の固定具141から第4の固定具144が鏡3に隠れて見えにくくなる。このため、鏡3の意匠性が向上する。
【0084】
また、鏡3は、鏡3の表面36の端部を面取りすることで設けられた面取り部600を有する。面取り部600は、平面や曲面を有しており、複数の曲面が並んだ波面を有していても良い。面取り部600が平面や曲面であると、光が面取り部600により屈折したり反射したりする。また、面取り部600が波面であると、乱反射の効果が得られる。このため、光の屈折、反射、乱反射により、側面に形成された孔または溝、もしくは孔または溝に係止された第1の固定具141から第4の固定具144の係止部が見え難くなる。このため、鏡3の意匠性をより一層向上させることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0086】
2・・・鏡の固定構造、 3・・・鏡、 5・・・締結部材、 8・・・洗面台、 9・・・被固定部、 22、23、24・・・部分、 31・・・ガラス、 32・・・銀層、 33・・・銅層、 34・・・バックコート層、 35・・・裏面、 36・・・表面、 42・・・固定部材、 43・・・第1連結部材、 44・・・第2連結部材、 61・・・接着剤、 62・・・樹脂層、 63・・・緩衝部材、 141・・・第1の固定具、142・・・第2の固定具、143・・・第3の固定具、 144・・・第4の固定具、 371,372・・・上端部側面、 373・・・第1の孔または溝、 381,382・・・下端部側面、 383・・・第4の孔または溝、 391,392・・・一方の側端部側面、 393,394・・・他方の側端部側面、 401・・・第2の孔または溝、 402・・・第3の孔または溝、 501A、501B・・・第1の係止部、 502・・・第1の固定部、511A、511B・・・第2の係止部、 512・・・第2の固定部、 521A、521B・・・第3の係止部、 522・・・第3の固定部、 531A、531B・・・第4の係止部、 532・・・第4の固定部、 600・・・面取り部、 700・・・段落ち部、 D1、D2・・・段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8