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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】開閉アシスト装置の誤操作防止構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
B60K15/05 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019145990
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021024494
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康行
(72)【発明者】
【氏名】樅山 貴司
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173422(JP,A)
【文献】特開2019-078070(JP,A)
【文献】実開平02-098165(JP,U)
【文献】国際公開第2012/049733(WO,A1)
【文献】特開2007-036348(JP,A)
【文献】特開昭63-221259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の給油又は充電のための開口部を封じる開閉可能に取付けられたリッドと、
前記開口部側には、押し込み操作によって伸長状態と縮長状態とを交互に繰り返すプッシュロッドと、前記プッシュロッドの先端部には、押し込み操作によって回転するリッド係止部を有する開閉アシスト装置が取付けられ、
前記リッドの前記開口部側には、前記開閉アシスト装置の前記リッド係止部が係合される係合溝部を有する係合部が形成され、前記リッドの開閉をアシストする開閉アシスト装置の誤操作防止構造であって、
前記開閉アシスト装置の近傍には、前記プッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さよりも高く、前記リッドを開閉するために前記リッドを車外側から押圧したときに前記リッドの前記開口部側が当接しない高さに突出するガード部材が形成され
前記リッド又は前記係合部と前記プッシュロッドの先端部分が当接する部位には、前記リッドの前記開口部側に突出する凸部が形成され、
前記凸部の前記リッドの前記開口部側からの高さは、前記リッドを開くために前記リッドを車外側から押圧したときに前記プッシュロッドの押し込み操作が可能となる高さであることを特徴とする開閉アシスト装置の誤操作防止構造。
【請求項2】
前記ガード部材は、複数形成されている請求項1に記載の開閉アシスト装置の誤操作防止構造。
【請求項3】
前記リッドに形成された前記係合部において、前記リッドを閉じる際に前記ガード部材と干渉する部分が取り除かれている請求項1又は請求項2に記載の開閉アシスト装置の誤操作防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能に取付けられたリッドをいわゆるプッシュ-プッシュ方式(ノックカム方式)で開閉するための開閉アシスト装置に関係し、プッシュロッドを誤って押し込むことを防止する開閉アシスト装置の誤操作防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、燃料補給口や充電口の開口部を覆うリッド(蓋)は、一般にヒンジを介して車体に取付けられており、ヒンジを支点に回動して燃料補給口や充電口の開口部を開閉する。そして、開閉アシスト装置として、プッシュ-プッシュ方式(ノックカム方式)、すなわち、開方向にリッドを押圧するプッシュロッドを備え、閉方向へのリッドに対する押し込み操作に伴って押し込まれたプッシュロッドを押し込み位置に保持してリッドを閉じ、再度のリッドの押し込み操作に伴ってプッシュロッドを突き出してリッドを開く方式の開閉アシスト装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、この開閉アシスト装置と連動して、リッドが開状態のときには、インストルメントパネル上に開状態を、例えば、ランプの点灯等で表示したり、ワイヤレスのスマートキーを保持していない場合は、リッドを押し込んでもリッドが開かないようにする電気的、機械的機構が開閉アシスト装置に付与されている。
【0004】
図7図8は、特許文献1に開示された開閉アシスト装置300の動きを説明する図である。開閉アシスト装置300は、フューエルリッド200を開方向に押圧するプッシュロッド320を備えている。プッシュロッド320は、軸方向に移動可能に設けられており、閉方向へのフューエルリッド200に対する押し込み操作に伴って押し込まれる。開閉アシスト装置300は、押し込まれたプッシュロッド320を押込位置P1に保持してフューエルリッド200を閉じ、再度のフューエルリッド200に対する押し込み操作によってプッシュロッド320を突出位置P2まで突き出してフューエルリッド200を開く。
【0005】
プッシュロッド320は、中心軸Oまわりに90°回転(θ)可能に設けられており、押込位置P1と突出位置P2とを往復する際の軸方向の移動に伴って回転される。そして、プッシュロッド320の先端部には、フューエルリッド200を係止するプッシュロッド320の中心軸Oに関して回転対称に、略長方形の板状に形成されたリッド係止部330が設けられている。
【0006】
そして、プッシュロッド320の回転に応じてリッド係止部330を、フューエルリッド200の裏面側(車内側)に形成されたリッド係止部330よりも若干大きい略長方形状の開口211に係合させてフューエルリッド200をロックし、またリッド係止部330を開口211から係脱させてフューエルリッド200をアンロックし、プッシュロッド320を突き出してフューエルリッド200を開く。
【0007】
ところで、特許文献1においては、給油時にフューエルリッド200が開かれた状態(プッシュロッド320はP2の位置)では、プッシュロッド320及びリッド係止部330の周辺には広い空間があるので、誤ってプッシュロッド320が押込位置P1へ押し込まれる場合がある。そして、誤ってプッシュロッド320が押し込まれるとプッシュロッド320が逆回転してロックの位置になり、リッド係止部330が開口211に対して不適切に係合することになり、フューエルリッド200を閉じることができない。一方、インストルメントパネル上では、点灯によってフューエルリッド200の開状態を示すランプは消灯し、フューエルリッド200が閉状態であることを表示している。
【0008】
上記の問題を解決する技術として、下記の特許文献2の技術が知られている。図9は、特許文献2に開示されたリッドロック装置400の斜視図であり、ロック軸430が解錠位置に位置する状態を示している。又、図10は、リッドロック装置400のプッシュロッド320が突出位置に位置する状態を示す図9の一部に対応した斜視図である。リッドロック装置400では、フューエルリッド(図示せず)が取付けられた開口部ハウジング(図示せず)にケース410が取り付けられる。ケース410には、ロック機構411のモータ412が収容されると共に、プッシュリフタ420が有する筒状のプッシュロッド320が支持されている。プッシュロッド320は、プッシュ操作される度に突出と退避とを交互に繰り返し、上記の突出によってフューエルリッド200を押し開く。ロック機構411は、プッシュロッド320の内側に挿入されたロック軸430を、上記のプッシュ操作とは無関係にモータ412によって正逆回転させ、ヘッドハンマ431によってフューエルリッド200の施錠と解錠を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-173422号公報
【文献】特開2019-78070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2においては、モータ412を内蔵、駆動させ、ロック軸430に対してプッシュロッド320が上下することにより、給油時にフューエルリッド200が開かれた状態では、ロック軸430及びヘッドハンマ431がプッシュロッド320内に隠れる構造になっているため、部品点数が増え、機構が複雑になるので、装置全体が大型化、重量化すると共に、大きなコストupになってしまう。
【0011】
したがって、本発明は、開閉可能に取付けられたリッドをいわゆるプッシュ-プッシュ方式(ノックカム方式)で開閉するための開閉アシスト装置に関係し、プッシュロッドを誤って押し込むことを視覚的にも、物理的にも抑制、防止する安価な開閉アシスト装置の誤操作防止構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、車体の給油又は充電のための開口部を封じる開閉可能に取付けられたリッドと、開口部側には、押し込み操作によって伸長状態と縮長状態とを交互に繰り返すプッシュロッドと、プッシュロッドの先端部には、押し込み操作によって回転するリッド係止部を有する開閉アシスト装置が取付けられ、リッドの開口部側には、開閉アシスト装置のリッド係止部が係合される係合溝部を有する係合部が形成され、リッドの開閉をアシストする開閉アシスト装置の誤操作防止構造であって、開閉アシスト装置の近傍には、プッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さよりも高く、前記リッドを開閉するためにリッドを車外側から押圧したときにリッドの開口部側が当接しない高さに突出するガード部材が形成され、リッド又は係合部とプッシュロッドの先端部分が当接する部位には、リッドの開口部側に突出する凸部が形成され、凸部のリッドの開口部側からの高さは、リッドを開くためにリッドを車外側から押圧したときにプッシュロッドの押し込み操作が可能となる高さであることを特徴とする開閉アシスト装置の誤操作防止構造である。
【0013】
請求項1の本発明では、開閉アシスト装置近傍には、ガード部材が形成されているので、リッドが開いているときに、誤ってプッシュロッドを押し込むことに対する視覚的抑制力が働く。又、誤ってプッシュロッドが押されてしまった場合も、ガード部材の高さはプッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さよりも高いので、手のひら又は指等がガード部材に当たり、プッシュロッドが縮長状態まで押し込まれることを防止することができる。したがって、物理的にも誤操作を防止することができる。
【0014】
又、ガード部材は、リッドを開閉するためにリッドを車外側から押圧したときにリッドの開口部側が当接しない高さに形成されているので、ガード部材がリッドの開閉操作を妨げることもない。
【0015】
なお、ここで、「押し込み」、「押し込み操作」とは、プッシュロッドに関し、伸長状態と縮長状態が入れ替わる位置までプッシュロッドを押すこと、その操作を言う。
【0017】
リッドが閉じられている状態では、開閉アシスト装置のプッシュロッドの先端部のリッド係止部は係合部の係合溝部内に収容されている。そして、リッド又は係合部とプッシュロッドとは当接している、又は、少しのクリアランスを有している。リッドを開くには、車外側からリッドを押し、リッドが車内側に移動することにより開閉アシスト装置のプッシュロッドを押し込み、リッド係止部が回転して係合部から解放されると共に、プッシュロッドが縮長状態から伸長状態に移行し、伸びたプッシュロッドがリッドを車外側に押し、リッドが開く。
【0018】
ところで、誤操作防止用のガード部材をプッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さより高く形成しようとすると、リッドが先にガード部材に当接し、プッシュロッドを押し込み位置までリッドを車内側に移動させることができない。これは、リッドを閉める場合も同様であり、ガード部材をプッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さより高く形成すると、ガード部材によってプッシュロッドを押し込み位置までリッドを移動させることができないので、プッシュロッドを伸長状態から縮長状態に移行できず、結果としてリッドを閉めることができない。
【0019】
本発明では、リッド又は係合部とプッシュロッドの先端部分が当接する部位には、リッドの開口部側に突出する凸部が形成され、リッド又は係合部に形成される凸部のリッドの開口部側からの高さは、リッドを開くためにリッドを車外側から押圧したときにプッシュロッドの押し込み操作が可能となる高さであるので、誤操作防止用のガード部材をプッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さより高く形成した場合であっても、凸部がプッシュロッドを押し、リッドの裏面側がガード部材に当接することなくプッシュロッドを押し込むことができ、リッドの開閉が可能となる。
【0020】
請求項の本発明は、ガード部材は、複数形成されている開閉アシスト装置の誤操作防止構造である。請求項の本発明では、ガード部材は、複数形成されているので、プッシュロッドを誤って押し込むことを視覚的にも、物理的にも抑制又は防止する効果が増大する。
【0021】
請求項の本発明は、リッドに形成された係合部において、リッドを閉じる際にガード部材と干渉する部分が取り除かれている開閉アシスト装置の誤操作防止構造である。請求項の本発明では、リッドに形成された係合部において、リッドを閉じる際にガード部材と干渉する部分が取り除かれているので、ガード部材をよりプッシュロッド、リッド係止部に近づけて形成することができ、プッシュロッドを誤って押し込むことを視覚的にも、物理的にも抑制又は防止する効果が増大する。
【発明の効果】
【0022】
開閉アシスト装置近傍には、ガード部材が形成されているので、リッドが開いているときに、誤ってプッシュロッドを押し込むことに対する視覚的抑制力が働く。又、誤ってプッシュロッドが押されてしまった場合も、ガード部材の高さはプッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さよりも高いので、手のひら又は指等がガード部材に当たり、プッシュロッドが縮長状態まで押し込まれることを防止することができる。したがって、物理的にも誤操作を防止することができる。又、リッド又は係合部とプッシュロッドの先端部分が当接する部位には、リッドの開口部側に突出する凸部が形成され、リッド又は係合部に形成される凸部のリッドの開口部側からの高さは、リッドを開くためにリッドを車外側から押圧したときにプッシュロッドの押し込み操作が可能となる高さであるので、誤操作防止用のガード部材をプッシュロッドの押し込み操作を可能とする高さより高く形成した場合であっても、凸部がプッシュロッドを押し、リッドの裏面側がガード部材に当接することなくプッシュロッドを押し込むことができ、リッドの開閉が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態を示すものであり、リッドが開いた状態を示す斜視図である。
図2図1におけるA部の詳細図である。
図3】本発明の実施形態を示すものであり、リッドが閉じているときの開閉アシスト装置のプッシュロッド、リッド係止部と、ガード部材と、リッドの係合部との関係を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態を示すものであり、リッドを開けるためにリッドが押されたときの開閉アシスト装置のプッシュロッド、リッド係止部と、ガード部材と、リッドの係合部との関係を示す模式図である。
図5】本発明の実施形態を示すものであり、リッドが開かれたときの開閉アシスト装置のプッシュロッド、リッド係止部と、ガード部材との関係を示す模式図である。
図6】本発明の実施形態を示すものであり、リッドが開かれたときに誤って開閉アシスト装置のプッシュロッドが押されたときの、開閉アシスト装置のプッシュロッド、リッド係止部と、ガード部材との関係を示す模式図である。
図7】従来の開閉装置(開閉アシスト装置)の構成を示す斜視図である(特許文献1)。
図8図7のブッシュロッドのリッド係止部の動作を示す図である。
図9】従来のリッドロック装置(開閉アシスト装置)の斜視図である。(特許文献2)。
図10】リッドロック装置のプッシュロッドが突出位置に位置する状態を示す図9の一部に対応した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から図6に基づいて、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、車体の燃料給油口1を塞ぐリッド20(給油口蓋)に関し説明するものであるが、電気自動車やPHV(プラグインハイブリッド車)に電気を充電する場合の充電口にも使用できる。
【0025】
図1に示すように、車体の燃料給油口1の周縁部には、正面側に開口部11を有する略円筒箱状をなした固定部材10が固定されている。この固定部材10の開口部11に、ヒンジ21を介してリッド20( ここではフューエルリッド)が開閉可能に取付けられている。図1において、図の左右方向が車体の上下方向である。なお、固定部材10は略円筒箱状ではなく、例えば、略四角形の筒状であってもよく、車体のデザインに合わせて決定される。
【0026】
固定部材10の、リッド20のヒンジ21とは周方向反対側には、凹部12 が設けられている。この凹部12に開閉アシスト装置30が配置されている。開閉アシスト装置30には、押し込み操作によって伸長状態と縮長状態とを交互に繰り返すプッシュ-プッシュ方式(ノックカム方式)の機構部と押し込み操作の結果を電気的に車体側に伝達する電気回路等が内蔵された本体部31と、押し込み操作によって伸長状態と縮長状態とを交互に繰り返すプッシュロッド32と、プッシュロッド32の先端部には、押し込み操作によって回転するリッド係止部33が取付けられている。
【0027】
プッシュロッド32は、中心軸まわりに90°回転可能に設けられており、伸長状態と縮長状態の軸方向の移動に伴って回転される。リッド係止部33は、プッシュロッド32の中心軸に関して回転対称に、略長方形の板状に形成されている。リッド係止部33は、1度のプッシュロッド32の押し込み操作によって90°回転する。プッシュロッド32とリッド係止部33の動きについては、図3から図6に詳述する。なお、プッシュロッド32とリッド係止部33は、一体に射出成形等の樹脂成型によって形成してもよい。
【0028】
又、開閉アシスト装置30の近傍の、開口部11の凹部12の底面14の車外側には、プッシュロッド32とリッド係止部33の上下方向にそれぞれ2箇所ずつ、計4箇所に円柱状に突出したガード部材13が形成されている。円柱状のガード部材13は、略円筒箱状をなす固定部材10と同時に射出成形等の樹脂成型によって形成した。なお、ガード部材13は固定部材10とは別に成形し、固定部材10に接着や嵌め込みによって取付けてもよい。
【0029】
ガード部材13は4箇所には限定されない。ただし、プッシュロッド32を誤って押し込むことを物理的に抑制する観点からは、車体の上下方向に複数形成することが望ましい。又、ガード部材13の形状は、円柱状には限られず、三角柱等の柱状であってもよい。なお、ガード部材13は、プッシュロッド32を押し込むことに対する視覚的抑制効果を有することも必要であるので、例えば、ガード部材13を三角柱形状とする場合は、三角形の角部がプッシュロッド32側を指すように配置するより、三角形の底面がプッシュロッド32側になるように配置することが望ましい。
【0030】
図2に示すように、リッド20の開口部11側には、一側部が開口した門形枠状を有する係合部22が設けられており、その内側には係合溝部23が形成されている。この係合溝部23は、平行に配置された一対の内側壁を有しており、一対の内側壁の開口部24の幅より、溝の奥方25の幅の方が広くなった形状になっている。なお、係合部22は、係合溝部23を2枚、係合溝部23を向かい合わせる形で平行に配置してもよい。
【0031】
門形枠状の係合部22の四隅には、リッド20を閉じる際にガード部材13と干渉することを避けるために、円弧状の切り欠き部15が形成されている。なお、切り欠き部15はガード部材13に合わせた形状であればよい。又、ガード部材13と干渉することがない場合は形成する必要がないことは言うまでもない。
【0032】
切り欠き部15を形成するに当たっては、係合部22の係合溝部23がリッド係止部33と係合し、且つリッド係止部33の回転動作を妨げない範囲で、係合部22を部分的に取り除くことが必要である。切り欠き部15を形成することにより、ガード部材13をよりプッシュロッド32、リッド係止部33に近づけて形成することができ、プッシュロッド32を誤って押し込むことを視覚的にも、物理的にも抑制又は防止する効果を増大させることができる。
【0033】
門形枠状の係合部22の内部であって、リッド20の開口部11側には、略半球状に突出した凸部26が形成されている。凸部26は略半球状には限定されず、柱状に突出していてもよい。係合部22と凸部26は、リッド5と同時に射出成形等の樹脂成型によって形成した。なお、係合部22を別体として作製し、リッド20の内面側に接着してもよい。更には、係合部22と凸部26を同時に成形し、凸部26が形成された係合部22をリッド20の開口部11側に接着や嵌め込みによって取付けてもよい。
【0034】
次に、図3から図6に基づいて、開閉アシスト装置30のプッシュロッド32、リッド係止部33と、固定部材10に形成されたガード部材13と、リッド20の係合部22(係合溝部23)との関係を説明する。図3から図6は、図2における矢印B方向から見たときの模式図である。
【0035】
図3は、リッド20が閉じられた状態を示している。この状態においては、開閉アシスト装置30のリッド係止部33は、リッド20が開いているときから90°回転し、リッド20の係合部22の係合溝部23に当接するように収納されて係合し、リッド20が開かないようにロックしている。このとき、開閉アシスト装置30のプッシュロッド32は、プッシュロッド32押し込み操作による伸長状態から縮長状態を過ぎ、縮長状態よりも少し上方に伸びた状態になっている。図3においては、プッシュロッド32の先端部分と凸部26との間にクリアランスがあるが、凸部26の高さによっては、プッシュロッド32の先端部分と凸部26とが当接している場合もある。
【0036】
次に、図4に示すように、リッド20を開くために、車外側からリッド20を押圧すると、リッド20が開口部11側に移動すると同時に凸部26によってプッシュロッド32の先端部分が下方に押される。そして、縮長状態から伸長状態への変化点まで到達する(押し込み操作が行われる)とリッド係止部33が90°回転する。図4における破線部は、回転前のリッド係止部33の位置を示している。
【0037】
このとき、開閉アシスト装置30近傍の開口部11の凹部12の底面14の車外側からのプッシュロッド32の縮長状態から伸長状態への変化点における高さをH1、ガード部材13の高さをH2、リッド20の開口部11側との間隔をH3とすると、H1<H2<H3の関係になっているので、上記の押し込み操作が可能になっている。
【0038】
この結果、回転したリッド係止部33は、リッド20の係合部22から解放され、同時にプッシュロッド32は伸長状態に移行しているので、プッシュロッド32がリッド20の凸部26を押し上げ、プッシュロッド32が最も伸びた位置に到達したときには、リッド20が車外側に少し突き出た状態となり、更に、突き出たリッド20を手で開くことにより、リッド20を開き、給油口を開けることにより給油が可能になる(図5)。
【0039】
図5は、リッド20が図1の位置まで開かれたときの固定部材10のガード部材13と、開閉アシスト装置30のプッシュロッド32とリッド係止部33との特に高さについての位置関係を示しており、プッシュロッド32の先端は、ガード部材13の先端より車外側にある。したがって、プッシュロッド32を押すこと自体は可能な状況ではあるが、図1に示すように、ガード部材13が形成されているので、プッシュロッドを押すことに対する視覚的抑制力が働いている。
【0040】
図6は、図5、すなわち、リッド20が図1の位置まで開かれたときに、指(手)40によって、誤ってプッシュロッド32が押され、指(手)40がガード部材13の先端に当接した状態を示している。なお、図6における破線は、押し込み操作によって伸長状態から縮長状態に移行するプッシュロッド32、リッド係止部33の位置を示している。
【0041】
図6から明らかなように、指(手)40がガード部材13の先端に当接した状態においても、プッシュロッド32は、伸長状態から縮長状態に移行するところまで押し込まれていない。したがって、誤ってプッシュロッド32が押された場合も、ガード部材13によって、プッシュロッド32が伸長状態から縮長状態に移行するところまで押し込まれることはないので、リッド係止部33が回転し、リッド係止部33が係合部22に対して不適切に係合してリッド20を閉じることができなくなることを防止することができる。
【0042】
リッド20を閉じるときは、図5から図3に戻る(図5においては、矢印は逆方向を向き、リッド20の凸部26によってプッシュロッド32の先端部を逆方向に押圧する)ことにより、リッド20が閉じられる。
【0043】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0044】
上記の実施形態では、ガード部材13は、円柱形状に形成したが、ガード部材13を屈曲させた形状とし、ガード部材13を先端部分で、よりプッシュロッド32、リッド係止部33に近づけるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 燃料給油口
10 固定部材
11 開口部
12 凹部
20 リッド
21 ヒンジ
22 係合部
23 係合溝部
26 凸部
30 開閉アシスト装置
32 プッシュロッド
33 リッド係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10