(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波プローブ用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2019158562
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友広
(72)【発明者】
【氏名】武内 俊
(72)【発明者】
【氏名】四方 浩之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健吾
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-012381(JP,A)
【文献】特開2008-000581(JP,A)
【文献】特表2013-535301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0096547(US,A1)
【文献】特開2015-080671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超音波振動子によって形成される超音波振動子アレイと、
前記超音波振動子アレイの超音波送受信側に設けられ、被検体との接触部を有するオフセットと、前記オフセットを支持する外装部材と、を具備し、
前記オフセットは、第1の曲率を有する曲面によって形成され前記接触部の中央に配置される第1の領域と、前記第1の曲率より大きな第2の曲率を有する曲面によって形成され前記接触部の辺縁に配置される第2の領域と、を少なくとも有
し、
前記第2の領域に隣接して設けられた前記外装部材と前記第2の領域とにより形成される曲面の曲率は、前記第1の領域を形成する局面の曲率よりも大きい、
超音波プローブ。
【請求項2】
前記超音波振動子アレイは、格子状に2次元に配列された前記複数の超音波振動子によって形成され、
前記オフセットは、
前記超音波振動子アレイの第1の方向に沿った前記接触部の辺縁において前記第2の領域を有し、
前記超音波振動子アレイの前記第1の方向と交差する第2の方向に沿った前記接触部の辺縁において、前記第1の曲率より大きく且つ前記第2の曲率とは異なる第3の曲率を有する曲面によって形成される第3の領域をさらに有する
請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記第1の曲率はゼロであり、前記第1の領域は平面である請求項1又は2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記第2の領域は、前記オフセットの前記接触部に前記超音波振動子アレイの外形を投影した範囲内に起点があり、前記オフセッ
トの前記接触部の辺縁に端点がある請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記第1の領域と前記第2の領域との境界は、前記超音波振動子アレイの前記超音波送受信側の面を前
記接触部に投影した領域に含まれる請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域との境界は、前記超音波振動子アレイの前記超音波送受信側の面を前
記接触部に投影した領域の外側に存在する請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記外装部材は、前記オフセットとの境界において前記第2の曲率を有する請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記外装部材は、前記オフセットの輪郭に沿った形状の開口部を有し、当該開口部にはめ込まれその一部を露出する前記オフセットの側面を支持する請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の超音波プローブ。
【請求項9】
超音波プローブにおいて、複数の超音波振動子によって形成される超音波振動子アレイの超音波送受信側に設けられる超音波プローブ用アタッチメントであって、
被検体との接触部を有するオフセットと、前記オフセットを支持する外装部材と、を具備し、
前記オフセットは、第1の曲率を有する曲面によって形成され前記接触部の中央に配置される第1の領域と、前記第1の曲率より大きな第2の曲率を有する曲面によって形成され前記接触部の辺縁に配置される第2の領域と、を少なくとも有
し、
前記第2の領域に隣接して設けられた前記外装部材と前記第2の領域とにより形成される曲面の曲率は、前記第1の領域を形成する局面の曲率よりも大きい、
超音波プローブ用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、超音波プローブ及び超音波プローブ用アタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内を超音波で走査し、被検体内からの反射波に基づいて、被検体の内部を映像化する超音波診断装置が開示されている。このような超音波診断装置では、複数の超音波振動子を有する超音波プローブを用いて被検体に超音波を送信し、当該被検体から反射波を受信する。
【0003】
超音波プロ―ブの音響照射(放射)方向の生体接触部材において、音響集束効果を持たせるために音響集束材料であり且つ曲率を設けたレンズ部材を配置する場合と、音響集束効果は意図しないが、生体との接触性を確保する目的や音響特性を改善する目的等のために音響集束効果を持たない弾性材(以下、「オフセット」と呼ぶ。)を配置する場合とがある。従来、後者のオフセットを配置する場合において、このオフセットの生体接触部の接触面(生体接触面)は、生体接触性の観点から、平面、または曲率が一定の曲面(又は長手方向に沿った断面が単一曲率の曲線となる曲面)となっている。
【0004】
セクタプローブ、コンベックスプローブ等の音路が偏向するプローブにおいて、生体接触面が平面、または単一曲率である曲面である場合、機能的に必要なオフセットの厚み寸法を確保しつつ、オフセットの辺縁部近傍での音路を確保する必要がある。このため、従来の超音波プローブのオフセット、及び当該オフセットを支持する外装部材の音響放射開口部は、大きく確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の超音波プローブは、オフセット、及び当該オフセット材を支持する外装部材の音響放射開口部を大きく確保する必要があることから、生体接触部のフットプリントが大きいという問題がある。また、音路がオフセット内で偏向方向に角度をもって進むことで、オフセット内での音路長が大きくなり、オフセット内減衰による音波のエネルギ損失が大きくなってしまう問題がある。
【0007】
本願発明が解決しようとする課題は、機能的に必要なオフセットの厚みを確保しつつ、従来に比して、オフセットの生体接触部のフットプリントを小型化し、オフセット内での不要な超音波のエネルギ損失(減衰)を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る超音波プローブは、複数の超音波振動子によって形成される超音波振動子アレイと、前記超音波振動子アレイの超音波送受信側に設けられ、被検体との接触部を有するオフセットと、前記オフセットを支持する外装部材と、を具備する。前記オフセットは、第1の曲率を有する曲面によって形成され前記接触部の中央に配置される第1の領域と、前記第1の曲率より大きな第2の曲率を有する曲面によって形成され前記接触部の辺縁に配置される第2の領域と、を少なくとも有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波プローブ1を具備する超音波診断装置Sの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る超音波プローブ1の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した超音波プローブ1のオフセット2、外装部材3の一部を拡大した斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した超音波プローブ1をA方向から見た上面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示した超音波プローブ1をB方向から見た側面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した超音波プローブ1をC方向から見た側面図である。
【
図7】
図7は、オフセット2の第1の領域2a、第2の領域2b、第3の領域2cと、超音波プローブ1に内蔵される振動子アレイ6との位置関係を説明するために図である。
【
図8】
図8は、
図4に示した上面図において、点線にて振動子アレイ6の上面6aの輪郭が書き加えられた図である。
【
図9】
図9は、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のD-Dに沿った(長手方向の沿った)断面図である。
【
図10】
図10は、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のE-Eに沿った(短手方向の沿った)断面図である。
【
図11】
図11は、オフセット2を有する超音波プローブ1によって実現される音響特性を説明するための図であり、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のD-D(長手方向)に沿った断面図である。
【
図12】
図12は、従来の典型的な超音波プローブ10の長手方向に沿った断面図である。
【
図13】
図13は、変形例2を説明するための図であり、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のD-Dに沿った(長手方向の沿った)断面図である。
【
図14】
図14は、変形例2を説明するための図であり、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のE-Eに沿った(短手方向の沿った)断面図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る超音波プローブ用アタッチメント10及び超音波プローブアセンブリ20を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態及び第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。また、実施形態は、構成に矛盾が生じない範囲で他の実施形態や従来技術との組み合わせが可能である。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波プローブ1を具備する超音波診断装置Sの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置Sは、超音波プローブ1、装置本体100、モニタ2、入力装置3を具備する。超音波プローブ1、モニタ2、入力装置3は、装置本体100に通信可能に接続される。なお、被検体Pは、超音波診断装置1の構成に含まれない。
【0012】
超音波プローブ1は、被検体に当接され、当該被検体に超音波を送信し、送信した超音波に起因する当該被検体からの反射波を受信する。超音波プローブ1は、例えば、複数の超音波振動子(超音波トランスデューサ)が格子状に2次元で配置された振動子アレイを有する2次元超音波プローブである。
【0013】
複数の超音波振動子は、装置本体100から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、複数の超音波振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号(エコー信号)に変換する。さらに、超音波プローブ1は、オフセットと、オフセットを支持する外装部材と、複数の超音波振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を具備する(
図9参照)。
【0014】
なお、超音波プローブ1の構成については、後で詳しく説明する。
【0015】
モニタ2は、超音波診断装置Sのユーザが入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示し、装置本体100において生成された超音波画像等を表示する。
【0016】
入力装置3は、トラックボール、スイッチ、ダイヤル、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、ジョイスティック等により実現される。入力装置3は、超音波診断装置Sのユーザからの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して、受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置3は、超音波プローブ1を制御するための各種設定要求を受け付けて、装置本体100に転送する。
【0017】
装置本体100は、超音波プローブ1による超音波の送信、及び、超音波プローブ1による反射波の受信を制御する。そして、装置本体100は、超音波プローブ1から例えばサブアレイ毎に加算されたエコー信号に基づいて、超音波画像を生成する。装置本体100は、
図1に示すように、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13、記憶回路15、制御回路16を具備する。
【0018】
送受信回路11は、制御回路16による制御を受けて、超音波プローブ1と装置本体100との間で駆動信号及び受信信号の送受信を行う送受信回路である。例えば、送受信回路11は、超音波プローブ1に駆動信号の振幅の値を制御する。送受信回路11は、超音波プローブ1に、超音波プローブ1から送信される超音波に対する送信遅延量(各超音波振動子が出力する超音波に対する送信遅延量)を制御する。
【0019】
また、送受信回路11は、エコー信号に対する受信遅延量(各超音波振動子が受信したエコー信号に対する遅延量)を制御する。
【0020】
また、送受信回路11は、A/D(Analog to Digital)変換器と受信ビームフォーマとを有する。送受信回路11が超音波プローブ1から出力されたサブアレイごとに加算された(アナログ形式の)エコー信号を受信すると、A/D変換器は、アナログ形式のエコー信号をデジタル形式のエコーデータに変換する。受信ビームフォーマは、サブアレイごとのデジタル形式のエコーデータに対して整相加算処理を実行し、指向性を持ったエコーデータを生成する。そして、受信ビームフォーマは、整相加算処理後のエコーデータをBモード処理回路12及びドプラ処理回路13に送信する。
【0021】
Bモード処理回路12は、送受信回路11から出力されたエコーデータに基づき、Bモードデータを生成するプロセッサである。すなわち、Bモード処理回路12は、送受信回路11から出力されたエコーデータを受信する。そして、Bモード処理回路12は、受信したエコーデータに対して対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0022】
ドプラ処理回路13は、送受信回路11から出力されたエコーデータに基づき、ドプラデータを生成するプロセッサである。すなわち、ドプラ処理回路13は、送受信回路11から出力されたエコーデータを受信する。そして、ドプラ処理回路13は、受信したエコーデータから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0023】
記憶回路15は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、記憶回路15は、生成された超音波画像を記憶する。また、記憶回路15は、Bモード処理回路12やドプラ処理回路13から出力されるデータ(RAWデータ)を記憶する。
【0024】
また、記憶回路15は、超音波送受信、画像生成、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。
【0025】
制御回路16は、超音波診断装置Sの処理全体を制御するCPUとしてのプロセッサである。例えば、制御回路16は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路15から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13を制御する。また、制御回路16は、記憶回路15が記憶する超音波画像や、記憶回路15が記憶する各種画像、又は、画像生成処理や各種画像処理を行なうためのGUI、画像生成結果等を表示するようにモニタ2を制御する。
【0026】
また、制御回路16は、画像生成機能16a、画像処理機能16bを有する。画像生成機能16aは、Bモード処理回路12及びドプラ処理回路13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成機能16aは、Bモード処理回路12が生成したBモードデータからエコーの強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。また、画像生成機能16aは、ドプラ処理回路13が生成したドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。画像処理機能16bは、生成した各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正及びRGB変換等の各種画像処理を実行する。
【0027】
なお、画像生成機能16a、画像処理機能16bは、CPUとしての制御回路16が制御プログラムを実行することにより実現される。しかしながら、当該例に限定されず、画像生成機能16a、画像処理機能16bの一部又は全部を、同様の各機能を実行するように設計された専用のハードウェア、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の半導体集積回路や従来の回路モジュール等によって実現するようにしてもよい。
【0028】
(超音波プローブ)
次に、第1の実施形態に係る超音波プローブ1について説明する。なお、本実施形態においては、説明を具体的にするため、超音波プローブ1は、音路が偏向する超音波プローブとしてセクタプローブを例とする。しかしながら、当該例に限定する趣旨ではなく、同じく音路が偏向する超音波プローブとして、コンベックスプローブに対しても適用可能である。
【0029】
図2は、実施形態に係る超音波プローブ1の外観を示す斜視図である。同図に示す様に、超音波プローブ1は、オフセット2、外装部材3、筐体4、接続ケーブル5を具備している。
【0030】
オフセット2は、複数の超音波振動子からなる振動子アレイの超音波送受信側に設けられ、被検体との接触部を有する。オフセット2は、第1の曲率を有する曲面によって形成され接触部の中央に配置される第1の領域2aと第1の曲率より大きな第2の曲率を有する曲面によって形成され接触部の辺縁に配置される第2の領域2bと、を少なくとも有する。
【0031】
すなわち、オフセット2は、超音波振動子と生体表面との距離及び生体表面との接触性を確保して多重反射等を防止し、音響特性を改善するための弾性材である。オフセット2は、接触部の中央に配置され第1の曲率を有する曲面又は平面としての第1の領域2a、超音波振動子アレイの第1の方向(例えば長手方向)に沿った接触部の辺縁に配置され第2の曲率を有する曲面としての第2の領域2b、超音波振動子アレイの第1の方向と交差する第2の方向(例えば短手方向)に沿った接触部の辺縁に配置され第2の曲率とは異なる第3の曲率を有する曲面としての第3の領域2c、を有する。なお、
図2等においては、説明の便宜上、第1の領域2aの輪郭を一点鎖線で示してある。
【0032】
ここで、本実施形態においては、平面を曲率が0(ゼロ)である曲面として定義する。以下においては、説明を具体的にするため、第1の領域2aが平面である場合(すなわち第1の領域2aが第1の曲率=0の曲面である場合)を例とする。また、オフセット2の(生体)接触面は、第1の領域2a、第2の領域2b、第3の領域2cの各表面によって形成される。
【0033】
外装部材3は、オフセットを支持する。すなわち、外装部材3は、オフセット2の輪郭に沿った形状の開口部を有する。外装部材3は、この開口部にはめ込まれその一部を露出するオフセット2の側面を支持する支持部材である。外装部材3は、樹脂やプラスチック等によって形成される。
【0034】
筐体4には、複数の超音波振動子、バッキング材、複数の超音波振動子に接続される電子回路や配線が内蔵されると共に、オフセット2がはめ込まれた外装部材3が装着される。技師や医師等のユーザは、筐体4を把持しながら、第1の領域2a、第2の領域2b、第3の領域2cから形成されるオフセット2の接触面を被検体表面に当接させながら超音波送受信を実行し、超音波撮像を行う。
【0035】
接続ケーブル5は、超音波プローブ1と超音波診断装置本体100とを電気的に接続する。
【0036】
図3は、
図2に示した超音波プローブ1のオフセット2、外装部材3の一部を拡大した斜視図である。
図4は、
図2に示した超音波プローブ1をA方向から見た(すなわち、オフセット2の第1の領域2aと対向する位置から見た)上面図である。
図5は、
図2に示した超音波プローブ1をB方向から見た側面図である。
図6は、
図2に示した超音波プローブ1をC方向から見た側面図である。
【0037】
図3、
図4、
図5、
図6の各図に示す様に、オフセット2は、例えば長方形形状である平面としての第1の領域2a、第1の領域2aの短手方向に沿ったオフセット2の(生体接触部の)辺縁部を形成する第2の領域2b、第1の領域2aの長手方向に沿ったオフセット2の(生体接触部の)辺縁部を形成する第3の領域2cを有している。
【0038】
外装部材3は、オフセット2との各境界において、第2の領域2b又は第3の領域2cの曲率と同じ曲率を有している。これにより、外装部材3とオフセット2との境界における段差を無くすことができる。
【0039】
図7は、オフセット2の第1の領域2a、第2の領域2b、第3の領域2cと、超音波プローブ1に内蔵される振動子アレイ6との位置関係を説明するために図である。なお、説明の便宜上、
図7においては超音波プローブ1の内部構造を実線で、オフセット2、外装部材3の一部(すなわち、
図3において実線で示された部分)を点線で示している。
【0040】
図7に示す様に、超音波プローブ1は、振動子アレイ6、バッキング材7を内蔵している。振動子アレイ6は、例えば格子状に2次元に配列された複数の超音波振動子によって形成される。オフセット2の第1の領域2aは、振動子アレイ6の上面(超音波送受信側の面)2aの上に位置する。オフセット2の第1の領域2aは、振動子アレイ6の上面に含まれており、従って、オフセット2の第1の領域2aの面積は、振動子アレイ6の上面の面積に比して小さい。また、オフセット2の第2の領域2b及び第3の領域2cは、それぞれ振動子アレイ6の上面2aとその一部が重なるように設けられている。
【0041】
図8は、
図4に示した上面図において、点線にて振動子アレイ6の上面6a(すなわち、振動子アレイ6の超音波送受信側の面)の輪郭が書き加えられた図である。
図9は、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のD-Dに沿った(長手方向の沿った)断面図である。
図10は、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のE-Eに沿った(短手方向の沿った)断面図である。なお、
図8、
図9において1点鎖線で示した直線lは、超音波プローブ1のD-D又はE-Eに沿った断面の中心軸である。また、
図9、
図10で示した断面は一例であり、本実施形態に係る超音波プローブ1の断面形状を限定する趣旨ではない。
【0042】
図8、
図9において、位置PL1(及び位置PL1を含む一点鎖線)は、第1の領域2aと第2の領域2bとの境界(すなわち、曲率の不連続点又は不連続線)に対応する。同様に、位置PR1(及び位置PR1を含む一点鎖線)は、第1の領域2aと第2の領域2bとの境界(すなわち、曲率の不連続点又は不連続線)に対応する。平面としての第1の領域2aは、オフセット2の表面上の位置PL1から位置PR1に亘って形成されている。第2の曲率を有する第2の領域2bは、左側については位置PL1を起点としオフセット2の辺縁位置PL2を端点とする範囲で、右側側については位置PR1を起点としオフセット2の辺縁位置を端点PR2とする範囲で形成されている。
【0043】
同様に、
図8、
図10に示す様に、位置QL1(及び位置QL1を含む一点鎖線)は、第1の領域2aと第3の領域2cとの境界(すなわち、曲率の不連続点又は不連続線)に対応する。同様に、位置QR1(及び位置QR1を含む一点鎖線)は、第1の領域2aと第3の領域2cとの境界(すなわち、曲率の不連続点又は不連続線)に対応する。平面としての第1の領域2aは、オフセット2の表面上の位置QL1から位置QR1に亘って形成されている。第3の曲率を有する第3の領域2cは、左側については位置QL1を起点としオフセット2の辺縁位置を端点QL2とする範囲で、右側側については位置QR1を起点としオフセット2の辺縁位置QR2を端点とする範囲で形成されている。
【0044】
すなわち、第2の領域2b、第3の領域2cは、超音波プローブ2の断面において、オフセット2の生体接触面に振動子アレイ6の外形を投影した範囲内に起点PL1、QL1があり、オフセット2の辺縁位置を端点PL2、QL2とする範囲において形成されている。また、平面としての第1の領域2aは、長手方向については位置PL1から位置PR1に亘って形成されており、短手方向については位置QL1から位置QR1に亘って形成されている。従って、オフセット2の表面(生体接触面)は、平面と曲率の異なる二つの曲面との組み合わせ(或いは、曲率の異なる三つの曲面の組み合わせ)によって形成されている。
【0045】
なお、第2の曲率、第3の曲率は、例えば、第2の領域2b、第3の領域2cが平面としての第1の領域2aに接続されることを前提として、生体接触性、プローブの種類(セクタプローブ、コンベックスプローブ等)やサイズ、振動子アレイ6のサイズ、最大偏向角等の少なくとも一つを基準として決定される。
【0046】
以上説明した様に本実施形態に係る超音波プローブは、複数の超音波振動子によって形成される超音波振動子アレイ6と、超音波振動子アレイ6の超音波送受信側に設けられ、被検体との接触部を有するオフセット2と、オフセット2を支持する外装部材3と、を具備する。オフセット2は、第1の曲率を有する曲面によって形成され接触部の中央に配置される第1の領域2aと、第1の曲率より大きな第2の曲率によって形成され接触部の辺縁に配置される第2の領域2bと、を少なくとも有する。
【0047】
すなわち、オフセット2の接触部の辺縁に配置される第2の領域2bは、中央に位置する第1の領域2aの第1の曲率より大きな第2の曲率を有する。従って、オフセット2の接触部の辺縁においては、従来に比してオフセット2を小さくすることができ、フットプリントの小型化を実現することができる。また、オフセット2の接触部の辺縁における最大偏向角の音路を、従来に比して短くすることができ、オフセット内減衰によるエネルギ損失(減衰)を軽減することができる。
【0048】
また、オフセット2の小型化に伴い、外装部材3においてオフセット2をはめ込みその一部を露出させるための開口部を小さくすることができる。従って、オフセット2のみならず、外装部材3をも併せたフットプリントの小型化を実現することができる。
【0049】
(比較例)
本実施形態に係る超音波プローブと、従来の典型的な超音波プローブとの比較例について説明する。なお、以下の比較例においては、フットプリント大きさ、音路距離について長手方向を例に比較する。短手方向についても長手方向と同様の結果となるため、その説明は省略する。
【0050】
図11は、オフセット2を有する超音波プローブ1によって実現される音響特性を説明するための図であり、
図2、
図8に示した超音波プローブ1のD-D(長手方向)に沿った断面図である。
【0051】
有効超音波振動子群(すなわち、実際の超音波送受信に用いる超音波振動子群)を、例えば振動子アレイ6全体とする。この場合、有効超音波振動子群からの音路は、最大偏向角θを最外側として送信(音響照射)される。
【0052】
有効超音波振動子群の長手方向の長さをLaとし、オフセット2の中心付近での(すなわち第1の領域2aにおける)必要な厚みをt、オフセット2の辺縁付近での(すなわち第2の領域2bの端点における)必要な厚みをdとする(ただし、d<t)。係る場合、オフセット2の長手方向の長さはLa+2×d×tanθとなる。また、有効超音波振動子群の端部FL(FR)から音響照射開口端GL(GR)までの音路距離(すなわち、最大偏向角θの際の音路距離)は、d×(1/cosθ)となる。
【0053】
図12は、従来の典型的な超音波プローブ10の長手方向に沿った断面図である。なお、超音波プローブ10は、本実施形態に係る超音波プローブ1と同じ振動子アレイ6、バッキング材7を内蔵するものとする。
【0054】
同図に示す様に、オフセット8は、長手方向にかけて均一な厚さを有する。有効超音波振動子群の長手方向の長さをLaとし、オフセット8の必要な厚みをtとする。係る場合、オフセット8の長手方向の長さはLa+2×t×tanθとなる。また、有効超音波振動子群の端部FL(FR)から音響照射開口端GL(GR)までの音路距離(すなわち、最大偏向角θの際の音路距離)は、t×(1/cosθ)となる。
【0055】
すなわち、従来の典型的な超音波プローブ10と比較した場合、本実施形態に係る超音波プローブ2は、オフセット2とオフセット8との大きさの差ΔL=2(t-d)tanθの分だけ、フットプリントの小型化を実現している。
【0056】
また、本実施形態に係る超音波プローブ2における最大偏向角θの音路上での音路距離はd×cosθとなり、従来の典型的な超音波プローブ8における最大偏向角θの音路上での音路距離はt×cosθとなる。従って、最大偏向角θの音路上での音路距離差(t-d)×(1/cosθ)の分だけ距離短縮が実現され、オフセット内減衰によるエネルギ損失を軽減することができる。
【0057】
(変形例1)
上記説明においては、オフセット2の中央に位置する第1の領域2aは、第1の曲率=0とする平面領域であるとし、オフセット2の表面は、平面と、曲率の異なる二つの曲面とが組み合わされた形状を有するものとした。しかしながら、オフセットの中央付近に位置する第1の領域2aは、平面ではなく(第1の曲率=0でない)曲面であってもよい。この場合、オフセット2は曲率の異なる三つの曲面の組み合わせで構成される。言い換えれば、第1の領域2aを第1の曲率=0でない曲面とした場合、オフセット2は、中央から短手方向辺縁にかけて及び中央から長手方向の辺縁にかけて、それぞれ曲率を不連続とする曲面によって構成となる。係る構成の場合、第1の領域2aは第2の領域2b、第3の領域2cに比して緩やかな曲面とすることが好ましい。従って、第1の曲率は、第2の曲率、及び第3の曲率に比して小さな値とすることが好ましい。
【0058】
なお、第1の曲率、第2の曲率、第3の曲率のそれぞれの値は、生体接触性、プローブの種類(セクタプローブ、コンベックスプローブ等)やサイズ、振動子アレイ6のサイズ、最大偏向角等の少なくとも一つを基準として決定することができる。
【0059】
(変形例2)
上記説明においては、第1の領域2aと、第2の領域2b及び第3の領域2cとの境界(すなわち、曲率の不連続点又は不連続線)は、オフセット2の生体接触面に振動子アレイ6の外形(上面6a)を投影した範囲内に存在する場合を例示した。これに対し、
図13、
図14に示す様に、第1の領域2aと、第2の領域2b及び第3の領域2cとの境界(同図では、曲率の不連続点PL3、PR3、QL3、QR3)を、オフセット2の生体接触面に振動子アレイ6の外形(上面6a)を投影した範囲外に存在するようにしてもよい。なお、この場合、第2の領域2bの第2の曲率、及び第3の領域2cの第3の曲率、外装部材3の曲率は、第1の領域2aと、第2の領域2b及び第3の領域2cとの境界がオフセット2の生体接触面に振動子アレイ6の外形を投影した範囲内に存在する場合(すなわち、
図9、
図10に例示した場合)に比べて大きくなる。
【0060】
第1の領域2aと第2の領域2b及び第3の領域2cとの境界をオフセット2の表面のどの位置にもってくるのかは、生体接触性、プローブの種類(セクタプローブ、コンベックスプローブ等)やサイズ、振動子アレイ6のサイズ、最大偏向角等の少なくとも一つを基準として決定される。
【0061】
(変形例3)
上記説明においてオフセット2の平面領域としての第1の領域2aが長方形であるのは、振動子アレイ6が直方体(すなわち、振動子アレイ6の上面6aが長方形)であるからである。そのため、
図2乃至
図11に示した超音波プローブ1のオフセット2においては、第2の領域2bの第2の曲率と第3の曲面領域2cの第3の曲率とは、異なる値として例示した。しかしながら、当該例に限定されず、第2の領域2bの第2の曲率と第3の曲面領域2cの第3の曲率とは、同じ値であってもよい。
【0062】
(変形例4)
上記説明においては、超音波プローブ2が、複数の超音波振動子が格子状に2次元に配列された2次元アレイプローブである場合を例示した。しかしながら、当該例に限定されず、必要に応じて、超音波プローブ2が1次元アレイプローブ、1.5次元アレイプローブである場合であっても適用可能である。例えば、超音波プローブ2が1次元アレイプローブである場合には、中央に位置する第1の領域2aの長手方向の両端に第2の領域2bが設けられ、第3の領域が存在しないオフセットを有する構成となる。また、超音波プローブ2が1.5次元アレイプローブである場合には、1次元アレイプローブの場合と同じく第3の領域を設けない構成、或いは2次元アレイプローブの場合に比して大きな第3の曲率の第3の領域を有する構成となる。
【0063】
(変形例5)
近年、送受信系回路、信号処理系回路等を内蔵する超音波プローブ(すなわち、
図1に示した装置本体100の構成の一部又は全部を内蔵するプローブ)が開発されている。変形例5は、第1の実施形態の構成をこの様な超音波プローブへ適用する例である。
【0064】
すなわち、オフセット2、外装部材3を含む構成は第1の実施形態に係る超音波プローブ1と同様とし、筐体4の内部に、送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13、記憶回路15、制御回路16の一部又は全部を内蔵するようにしてもよい。典型的な例としては、超音波プローブ1が送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13、記憶回路15、制御回路16の全部を内蔵し、これをモニタ2及び入力装置3の構成を具備するタブレットコンピュータに接続することで超音波診断装置Sを実現する構成、或いは、超音波プローブ1が送受信回路11、Bモード処理回路12、ドプラ処理回路13、記憶回路15、制御回路16の一部を内蔵し、これを画像生成機能16a、画像処理機能16b、モニタ2、入力装置3の構成を具備するタブレットコンピュータに接続することで超音波診断装置Sを実現する構成などを挙げることができる。
【0065】
なお、本変形例5に係る超音波プローブ1は、送受信系回路、信号処理系回路等を内蔵することから、超音波診断装置と捉えることもできる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る超音波プローブ用アタッチメント及び超音波プローブアセンブリについて説明する。
【0067】
図15は、第2の実施形態に係る超音波プローブ用アタッチメント10及び超音波プローブアセンブリ20を示した図である。
【0068】
ここで、超音波プローブ用アタッチメント10とは、第1の実施形態において説明したオフセット2及び外装部材3から構成される。超音波プローブ用アタッチメント10は、超音波プローブの筐体4に対して脱着可能である。また、超音波プローブアセンブリ20とは、オフセット2及び外装部材3を有していない(すなわち、超音波プローブ用アタッチメント10を有していない)超音波プローブと、超音波プローブ用アタッチメント10とから構成される。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、超音波プローブアセンブリ20と実質的に同じ構成となる。
【0069】
以上述べた第2の実施形態に係る超音波プローブ用アタッチメント10によれば、例えば既存の超音波プローブの筐体に装着することができる。これにより、既存の超音波プローブを、オフセット2及び外装部材3を有する超音波プローブアセンブリ20として事後的に改良することができる。
【0070】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU (Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0071】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1 超音波プローブ
2 オフセット
2a 第1の領域
2b 第2の領域
2c 第3の領域
3 外装部材
4 筐体
5 接続ケーブル
6 振動子アレイ
7 バッキング材
10 超音波プローブ用アタッチメント
11 送受信回路
12 Bモード処理回路
13 ドプラ処理回路
15 記憶回路
16 制御回路
16a 画像生成機能
16b 画像処理機能
20 超音波プローブアセンブリ