(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】ブラックマトリックス用着色組成物およびカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230707BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230707BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20230707BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/004 501
G03F7/004 504
G03F7/004 505
G03F7/004 502
G02F1/1335 505
(21)【出願番号】P 2019162998
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】清水 達彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 智晶
(72)【発明者】
【氏名】辻 康人
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 智宏
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086743(JP,A)
【文献】特表2015-532667(JP,A)
【文献】国際公開第2009/078407(WO,A1)
【文献】特表2015-508405(JP,A)
【文献】特開2012-083735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G02B 5/20
G03F 7/004
G02F 1/1335
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材、分散剤、分散媒体および亜リン酸エステルを含有し、
前記亜リン酸エステルが、
一般式(5-1)で表される化合物であることを特徴とするブラックマトリックス用着色組成物。
【化1】
[一般式(5-1)において、R
51
は炭素数1~20のアルキル基を表す。複数存在するR
51
は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記亜リン酸エステルの含有量が、前記分散剤100質量部に対して0.1質量部~100質量部である請求項1に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項3】
前記分散剤がアミン価を有する樹脂型分散剤である請求項1または2に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項4】
前記
ブラックマトリックス用着色組成物が、さらにフェノール系酸化防止剤を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項5】
前記フェノール系酸化防止剤が、一般式(6)で表される化合物である請求項4に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【化2】
[一般式(6)において、R
61は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R
62は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R
63は、炭素数2~20の炭化水素基のいずれか1以上の炭素原子をエステル基もしくはエーテル基で置換した基、または、炭素数1~20の炭化水素基を表す。nは1~6の数を表す。ただし、R
61のベンゼン環と結合する炭素原子は1級~3級炭素原子である。]
【請求項6】
前記フェノール系酸化防止剤の含有量が、前記分散剤100質量部に対して0.1質量部~25質量部である請求項4または5に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項7】
前記
ブラックマトリックス用着色組成物が、さらにバインダー樹脂を含有する請求項1~6のいずれか一項に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項8】
前記
ブラックマトリックス用着色組成物が、着色材として、黒色顔料を含有するか、または、黒色顔料以外の顔料を2種以上含有する請求項1~7のいずれか一項に記載のブラックマトリックス用着色組成物。
【請求項9】
透明基板と、前記透明基板上に形成されたブラックマトリックスを備え、
前記ブラックマトリックスが、請求項1~8のいずれか一項に記載のブラックマトリックス用着色組成物から形成されていることを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックマトリックス用着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置に用いられるカラーフィルタは、透明基板上に形成された赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の三原色の光を透過させる色画素と、各色画素の境界に形成され、黒色として可視光を実質的に透過しないブラックマトリックスとからなる。
【0003】
液晶ディスプレイの製造においては、カラーフィルタの上に液晶を駆動するための透明電極が蒸着またはスパッタリングにより形成され、その上に液晶を一定方向に配向させるための配向膜が形成されている。これらの透明電極および配向膜の性能を十分に得るためには、それらの形成を200℃以上の高温で行う必要がある。そのため、カラーフィルタの透明基板への着色材の付与方法としては、耐熱性および耐光性に優れる顔料を着色材とする顔料分散法が広く使用されている。
【0004】
前記顔料分散法では、顔料、分散剤、バインダー樹脂および分散媒体(溶媒)を混合した着色組成物を使用する。着色層を形成する場合、まず前記着色組成物を透明基板に塗布し、着色組成物からなる塗布膜を透明基板上に形成する。次いで、所望のパターン形状のフォトマスクを介して放射線を照射(以下「露光」という。)してバインダー樹脂を硬化する。最後に、未露光部を現像により除去することで所望のパターン形状の着色層を形成する。なお、着色層には、必要に応じて加熱等の処理を加える。そして、黒色のパターン(以下「ブラックマトリックス」という。)、ならびに、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の色画素を形成することによりカラーフィルタを製造することができる。
【0005】
ブラックマトリックスは、格子状又は帯状に形成され、薄膜・細部であって、エッジはシャープで直線性が高いことが要求される。近年、カーボンブラックを遮光材料とした着色組成物がブラックマトリックスの形成に利用されている。薄膜で高い遮光性を維持するためには、カーボンブラックの含有濃度を高くすることが必要となる。カーボンブラックを着色組成物中に分散させた場合、カーボンブラックの表面積の増大に伴って再凝集が起こりやすく、分散安定性が低下するという問題がある。
【0006】
この問題を解決するために、着色組成物中の分散媒体とカーボンブラックとの親和性を向上させる方法があり、その手段として種々の分散剤の検討が行われている。例えば、ウレタン系分散剤を用いた着色組成物(特許文献1参照)、塩基性官能基を有するウレタン系分散剤を用いた着色組成物(特許文献2参照)、塩基性官能基を有するポリエステル又はポリエーテルからなる分散剤を用いた着色組成物(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-227654号公報
【文献】特開2009-175613号公報
【文献】特開平10-82908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、環境基準が厳しくなってきており、ブラックマトリックスにおいて、着色組成物に起因して経時的に発生するホルムアルデヒドが問題となっている。例えば、従来の着色組成物では、着色組成物中のホルムアルデヒド量が環境基準に合致しなくなる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、着色材の分散性能が高く、経時的なホルムアルデヒドの発生量が少ない、ブラックマトリックス用着色組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することができた本発明のブラックマトリックス用着色組成物は、着色材、分散剤、分散媒体および亜リン酸エステルを含有し、前記亜リン酸エステルが、一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする。
【0011】
【化1】
[一般式(5)において、R
51は炭素数1~20のアルキル基を表す。R
52およびR
53は、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。R
52およびR
53は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(5)で表される化合物は、R
52またはR
53で結合して2量体または3量体を形成していてもよい。]
【0012】
着色組成物に、一般式(5)で表される亜リン酸エステルを共存させることで、配合剤から発生したホルムアルデヒドと亜リン酸エステルが不可逆的に反応し、着色組成物中のホルムアルデヒドを低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、着色材の分散性能が高く、経時的なホルムアルデヒドの発生量が少ない、ブラックマトリックス用着色組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示である。以下の実施形態に何ら限定されない。本発明において、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよびメタクリルの少なくとも一方」をいう。「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよびメタクリレートの少なくとも一方」をいう。
【0015】
<ブラックマトリックス用着色組成物>
本発明のブラックマトリックス用着色組成物(以下、単に「着色組成物」と称する場合がある。)は、着色材、分散剤、分散媒体および亜リン酸エステルを含有し、前記亜リン酸エステルが、一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする。
【0016】
従来の着色組成物は、着色組成物中の配合剤に起因して経時的にホルムアルデヒドが発生する。ここで、一般式(5)で表される亜リン酸エステルを共存させることで、配合剤から発生したホルムアルデヒドと亜リン酸エステルが不可逆的に反応する。よって、着色組成物中のホルムアルデヒドを低減できる。
【0017】
前記ブラックマトリックス用着色組成物は、可視光を実質的に透過しないことが好ましい。具体的には、着色組成物から形成したブラックレジストパターンの光学濃度(OD値)が0.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.5以上である。前記光学濃度は、着色組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、ベタ部のみでブラックレジストパターンを形成し、このブラックレジストパターンについて、マクベス濃度計(TD-931、マクベス社製)を用いて測定する。
【0018】
本発明のブラックマトリックス用着色組成物の各種構成成分等について以下説明する。
【0019】
[着色材]
前記着色材は、着色組成物を黒色または疑似黒色化された色相にできるものであれば、特に制限なく、公知の着色材を使用できる。ここで「擬似黒色化された色相」とは、理想的には黒色であるが、液晶表示素子のカラーフィルタに用いられるブラックマトリックスとして許容される色相であれば良い。ブラックマトリックスとしては、余分な色みが付加されないよう、基本的には無彩色であることが必要となる。さらに、ブラックマトリックスから光が漏れると、画像のコントラストが低下することから、各色光を全て吸収するという点で、上記の通り黒色が理想的である。しかし、完全な無彩色でなくても、画像に余分な色みが付加されない色相の範囲であればよく、また、コントラストを維持するために必要な光を吸収できる色相は、擬似黒色化された色相の範囲に含まれるものである。
【0020】
前記着色材としては、黒色顔料、混色顔料、及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0021】
前記黒色顔料としては、カーボンブラック、黒鉛、ペリレン系顔料、ラクタム系顔料、チタンブラック、および、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等が挙げられる。これらの中でも、遮光率、画像特性の観点からカーボンブラック、チタンブラックが好ましい。前記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、ボーンブラックなどが挙げられる。また、カーボンブラックは、中性カーボンブラック、酸性カーボンブラックのいずれも使用でき、これらを併用してもよい。なお、黒色顔料の色相は、色彩論上の無彩色である黒色には限定されず、紫がかった黒色や、青みがかった黒色や、赤みがかった黒色であってもよい。
【0022】
前記混色顔料としては、黒色顔料以外の顔料を2種以上混合して疑似黒色化したものが挙げられる。前記混色顔料としては、青色の有機顔料、紫色の有機顔料、黄色の有機顔料、赤色の有機顔料及び橙色の有機顔料よりなる群から選ばれる2種以上の有機顔料を混合して疑似黒色化したものが挙げられる。
【0023】
青色の有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、22、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、64、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等が挙げられる。
紫色の有機顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、30、31、32、37、39、40、42、44、47、49、50等が挙げられる。
黄色の有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、86、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、125、126、127、127:1、128、129、133、134、136、137、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、213等が挙げられる。
赤色の有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、97、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、184、185、187、188、190、192、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、215、216、217、220、221、223、224、226、227、228、230、231、232、233、235、236、237、238、239、240、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276等が挙げられる。
橙色の有機顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、51、55、59、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79等が挙げられる。
【0024】
前記有機顔料の組合せとしては、青色の有機顔料と、紫色、黄色、赤色、および橙色の有機顔料の中から選ばれる少なくとも2種以上の有機顔料との組合せが好ましい。
【0025】
前記着色材は、分散助剤として色素誘導体を含有していてもよい。前記色素誘導体としては、酸性基を有する色素誘導体を含有することが好ましい。この色素誘導体は、色素骨格に酸性官能基が導入されたものである。色素骨格の具体例としては、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格等を挙げることができる。色素骨格に導入される酸性基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基が好ましい。なお、合成の都合上および酸性度の強さからスルホン酸基が好ましい。また、酸性基は、色素骨格に直接結合してもよいが、アルキル基やアリール基等の炭化水素基;エステル、エーテル、スルホンアミド、ウレタン結合を介して色素骨格に結合してもよい。
【0026】
着色組成物における着色材の合計含有量は、着色組成物の固形分全量中において、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。ここで固形分とは、着色組成物中の後述する分散媒体以外の成分である。
【0027】
[分散剤]
前記着色組成物は、分散剤を含有する。分散剤は、着色材に吸着する性質を有する部位と、分散媒体と親和性のある部位を有する。分散剤は、着色材に吸着して分散媒体への分散を安定化する機能を有する。分散剤は特に限定されず、着色材および分散媒体の種類に応じて適宜選択すればよい。分散剤としては、カラーフィルタ用着色組成物で使用されている樹脂型分散剤を使用でき、例えば、ポリエステル系樹脂型分散剤、(メタ)アクリル系樹脂型分散剤、ポリウレタン系樹脂型分散剤、ポリアリルアミン系樹脂型分散剤、カルボジイミド系樹脂型分散剤等が挙げられる。
【0028】
前記樹脂型分散剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等のポリアルキレンアミン等)のアミノ基及び/又はイミノ基と、遊離のカルボキシ基を有するポリエステル、ポリアミド及びポリエステルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物。
(2)分子内に、ポリエステル側鎖、ポリエーテル側鎖及びポリアクリル側鎖よりなる群から選択される少なくとも1種の側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(3)ポリアルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等のアミノ化合物と、遊離のカルボキシ基を有するポリエステルとの反応生成物。
(4)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2~3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族又は複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物。
(5)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物に、ポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた反応生成物。
(6)アミノ化合物に、ポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物。
(7)イソシアネート基を有する化合物に、アミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物。
(8)ポリエポキシ化合物に、遊離のカルボキシ基を有する線状ポリマー及び2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物。
(9)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物と、ポリアミン化合物との反応生成物。
(10)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、(メタ)アクリルアミド、N-メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合性モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体。
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩基等の塩基性基を有するブロックと、塩基性官能基を有していないブロックとからなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体。
(12)ポリアリルアミンに、ポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる化合物。
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(14)分子内に、アミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物。
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、かつ、四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン系化合物。
(16)分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、かつ、カルバゾール環及び/又はアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内のイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基と、イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合及び尿素結合との合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15~85%である化合物。
【0029】
これら樹脂型分散剤の中でも、塩基性基含有ウレタン系樹脂型分散剤、塩基性基含有ポリエステル系樹脂型分散剤、塩基性基含有(メタ)アクリル系樹脂型分散剤がより好ましく、アミノ基含有ウレタン系樹脂型分散剤、アミノ基含有ポリエステル系樹脂型分散剤、アミノ基含有(メタ)アクリル系樹脂型分散剤がより好ましい。特に、塩基性基含有ウレタン系樹脂型分散剤が好ましく、これらの中でも、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、およびポリカーボネート鎖よりなる群から選択される少なくとも1種を有する塩基性基(アミノ基)含有ウレタン系樹脂型分散剤が好ましい。
【0030】
前記樹脂型分散剤は、極性官能基を有する樹脂(ポリマー)であることが好ましい。極性官能基が顔料に吸着し、分散媒体への分散を安定化する機能を有すると考えられる。前記極性官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、イミノ基、アミド基、含窒素複素環基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。前記極性官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、イミノ基、アミド基及び含窒素複素環基より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0031】
前記樹脂型分散剤としては、アミン価を有し酸価を有さないポリマー(アミン価が0mgKOH/g超であり酸価が0mgKOH/gであるポリマー)、酸価を有しアミン価を有さないポリマー(酸価が0mgKOH/g超でありアミン価が0mgKOH/gであるポリマー)、アミン価および酸価を有するポリマー(アミン価および酸価が0mgKOH/g超であるポリマー)、酸価およびアミン価を有さないポリマー(アミン価及び酸価が0mgKOH/gであるポリマー)がある。
【0032】
前記樹脂型分散剤としては、アミン価を有するポリマー(アミン価が0mgKOH/g超であるポリマー)が好ましい。樹脂型分散剤のアミン価としては、10mgKOH/g以上、200mgKOH/g以下が好ましい。アミン価が10mgKOH/g以上であれば分散安定化効果がより向上し、アミン価が200mgKOH/g以下であれば着色組成物のアルカリ現像性液への溶解性が良好となり、パターン加工性が向上する。また、前記樹脂型分散剤は、酸価が20mgKOH/g未満であることが好ましい。
【0033】
着色組成物における分散剤の含有量は、着色材100質量部に対して1質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上、特に好ましくは10質量部以上であり、200質量部以下が好ましく、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0034】
[分散媒体]
前記着色組成物は、分散媒体を含有する。前記分散媒体としては、着色組成物を構成する他の成分(固形分)を分散または溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度に揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用できる。分散媒体としては、例えば、従来公知の有機溶媒を使用することができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のグリコールアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート等のグリコールジアセテート類;シクロヘキサノールアセテート等のアルキルアセテート類;アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール、ダイアセトンアルコール等の1価または多価アルコール類;n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、3-メチル-3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の鎖状または環状エステル類;3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸等のアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライド等のハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノン等のエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
前記有機溶媒は、着色材等の分散性、分散剤の溶解性、着色組成物の塗布性等の観点から、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、アミルホルメート、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシプロピオン酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル等が好ましい。着色組成物に含まれる分散媒体は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0035】
着色組成物における分散媒体の含有量は、特に限定されず、適宜調整することができる。着色組成物中の分散媒体の含有量は、通常99質量%以下である。また、着色組成物中の分散媒体の含有量は、着色組成物の塗布に適した粘度を考慮して、50質量%以上であることが好ましい。
【0036】
[亜リン酸エステル]
本発明の着色組成物は、一般式(5)で表される亜リン酸エステルを含有する。亜リン酸エステルを含有することで、着色組成物中の配合剤から発生したホルムアルデヒドを低減できる。
【0037】
【化2】
[一般式(5)において、R
51は炭素数1~20のアルキル基を表す。R
52およびR
53は、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。R
52およびR
53は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。一般式(5)で表される化合物は、R
52またはR
53で結合して2量体または3量体を形成していてもよい。]
【0038】
R51は、炭素数1~20のアルキル基を表す。炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。これらの中でも、エチル基、ブチル基、イソデシル基が好ましい。
【0039】
R52またはR53で表される炭化水素基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族基が挙げられる。前記置換基を有していてもよいアルキル基の全体の炭素数は、1~20が好ましく、より好ましくは1~15である。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、エイコシル基等の鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。前記芳香族基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられる。
【0040】
R52およびR53は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R21~R23は、互いに結合して形成される環としては、例えば、下記部分構造が挙げられる。さらに、一般式(5)で表される化合物は、R52またはR53で結合して2量体または3量体を形成していてもよい。
【0041】
【0042】
前記一般式(5)で表される亜リン酸エステルとしては、一般式(5-1)で表される亜リン酸エステルおよび/または一般式(5-2)で表される亜リン酸エステルが好ましい。
【0043】
【化4】
[一般式(5-1)において、R
51は炭素数1~20のアルキル基を表す。複数存在するR
51は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0044】
【化5】
[一般式(5-1)において、R
51は炭素数1~20のアルキル基を表す。複数存在するR
51は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0045】
前記一般式(5)で表される亜リン酸エステルとしては、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸トリイソプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリペンチル、亜リン酸トリヘキシル、亜リン酸トリオクチル、亜リン酸トリイソオクチル、亜リン酸トリノニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸トリイソデシル等の亜リン酸トリアルキルエステル;亜リン酸オクチルジフェニル、亜リン酸デシルジフェニル、亜リン酸ジフェニルイソデシル、亜リン酸トリデシルジフェニル、亜リン酸ヘキサデシルジフェニル等の亜リン酸アルキルジフェニルエステル;3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ビス(イソデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカンなどの亜リン酸エステルの2量体等が挙げられる。これらの中でも、亜リン酸トリアルキルエステルが好ましく、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリイソデシルがより好ましい。
【0046】
着色組成物に含まれる一般式(5)で表される亜リン酸エステルは、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0047】
着色組成物における一般式(5)で表される亜リン酸エステルの含有量は、分散剤100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは5質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。
【0048】
着色組成物の調製時において、前記亜リン酸エステルは、着色材と分散剤とを混合する前に着色材および/または分散剤に添加してもよいし、着色材と分散剤とを混合する際に添加してもよいし、着色材と分散剤とを混合した後にこの混合物に添加してもよい。
【0049】
[フェノール系酸化防止剤]
本発明の着色組成物は、公知のフェノール系酸化防止剤を含有することができる。フェノール系酸化防止剤を含有することで、着色組成物中のホルムアルデヒド量をより低減できる。ホルムアルデヒド量を低減できる理由は、亜リン酸エステルの酸化劣化を抑制できるためと考えられる。また、フェノール系酸化防止剤を含有することで、着色組成物がバインダー樹脂を多く含む場合でも、着色材の分散安定性を向上させることができる。特に、着色組成物の固形分全量中のバインダー樹脂含有量が30質量%以上の場合に、分散安定性の向上効果が顕著となる。
【0050】
フェノール系酸化防止剤とは、少なくとも1つのベンゼン環上に、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する化合物を有する酸化防止剤のことをいう。具体的には、ベンゼン環上のヒドロキシ基を1位としたとき、2位、4位および6位の少なくとも1つ、あるいは3位、4位および6位の少なくとも1つに、ラジカルを有する他の分子を排除し得るような置換基、例えば、嵩高い置換基(例えば、ベンゼン環と結合する炭素原子が4級炭素原子である置換基(具体例、t-ブチル基、アダマンチル基など))を有する化学構造を有する酸化防止剤を挙げることができる。
【0051】
前記フェノール系酸化防止剤としては、一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0052】
【化6】
[一般式(6)において、R
61は水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。R
62は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R
63は、炭素数2~20の炭化水素基のいずれか1以上の炭素原子をエステル基もしくはエーテル基で置換した基、または、炭素数1~20の炭化水素基を表す。nは1~6の数を表す。ただし、R
61のベンゼン環と結合する炭素原子が1級~3級炭素原子である。]
【0053】
R61は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を表す。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基等が挙げられる。これらの中でも酸化防止性能の相乗効果が大きいことから水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。なお、R61はベンゼン環と結合する炭素原子が4級炭素原子になることはなく、例えば、tert-ブチル基のような基はR61としては不適格である。
【0054】
R62は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0055】
R63は、炭素数2~20の炭化水素基のいずれか1以上の炭素原子をエステル基もしくはエーテル基で置換した基、または、炭素数1~20の炭化水素基を表す。炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、エイコシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。これらの中でもアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。上記の基は、一般式(6)のnの値が1のときの基であり、nの値が2のときは、上記の基から任意の水素原子を1つ除いた基となり、nの値が3であれば上記の基から任意の水素原子を2つ取り除いた基となる。nの値は1~6の数を表すが、酸化防止剤としての性能が良好なことおよび原料事情が良好なことから1~4の数が好ましく、2または3の数がより好ましい。
【0056】
R63は、炭素数2~20の炭化水素基のいずれかの1以上の炭素原子をエステル基もしくはエーテル基で置換した基であってもよい。当該基は、エステル基とエーテル基のどちらか一方のみを有するものでも、両方を有するものでも、あるいは複数個有するものであってもよい。なお、亜リン酸エステルとの相乗効果の観点から、R63は、炭素数1~20の炭化水素基が好ましい。
【0057】
一般式(6)の化合物の具体例としては、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルプロピオン酸](2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-3,9-ジイル)ビス(2,2-ジメチル-2,1-エタンジイル))などが挙げられる。
【0058】
前記着色組成物に含まれるフェノール系酸化防止剤は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0059】
着色組成物において、フェノール系酸化防止剤の含有量は、分散剤100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、25質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。
【0060】
着色組成物の調製時において、前記フェノール系酸化防止剤は、着色材と分散剤とを混合する前に着色材および/または分散剤に添加してもよいし、着色材と分散剤とを混合する際に添加してもよいし、着色材と分散剤とを混合した後にこの混合物に添加してもよい。なお、前記フェノール系酸化防止剤は、着色材と分散剤とを混合する前に着色材および/または分散剤に添加することが好ましい。
【0061】
[バインダー樹脂]
本発明の着色組成物は、バインダー樹脂(ただし、前記分散剤は除く。)を含有することができる。前記バインダー樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂、重合性化合物(重合性樹脂、重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマー、重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマー、オリゴマー等)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、好ましくはアルカリ可溶性樹脂および/又は重合性化合物である。
【0062】
前記バインダー樹脂は、前記樹脂型分散剤とは異なる化合物である。前記バインダー樹脂は、アミン価が0mgKOH/gであるものが好ましい。
【0063】
着色組成物におけるバインダー樹脂の含有量は、使用するバインダー樹脂の合計量で、着色組成物の固形分全量中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、70質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0064】
(アルカリ可溶性樹脂)
前記アルカリ可溶性樹脂としては、着色材に対してバインダーとして作用し、かつカラーフィルタを製造する際に、その現像処理工程において用いられる現像液、好ましくはアルカリ現像液に対して可溶性を有するものであれば、特に限定されるものではない。前記アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基等の酸性基を有する樹脂であることが好ましい。
【0065】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、あるいは該付加反応により生じたヒドロキシ基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られる樹脂;主鎖にカルボキシ基を含有する直鎖状樹脂;カルボキシ基含有樹脂のカルボキシ基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等を挙げることができ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
前記アルカリ可溶性樹脂の具体例としては酸性基含有不飽和単量体成分と、スチレン、メチルスチレン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチル(メタ)アクリレートマクロモノマー等よりなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分をラジカル重合して得られる酸基含有共重合体樹脂等が挙げられる。前記酸性基含有不飽和単量体成分としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、スルホエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリルアミドスルホン酸、ホスホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
前記アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するものであってもよい。側鎖に二重結合を有することで、本発明に係る着色組成物の光硬化性が高まるため、解像度、密着性を更に向上することができる。側鎖にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を導入する方法としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-(またはm-、またはp-)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の化合物を、前記アルカリ可溶性樹脂の酸性基に反応させる方法が挙げられる。
【0068】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、500以上が好ましく、より好ましくは1,000以上であり、200,000以下が好ましく、より好ましくは100,000以下である。アルカリ可溶性樹脂のMwが500以上であると、着色組成物から形成された着色層の耐熱性、膜強度等が良好となり、Mwが200,000以下であると、この塗布膜のアルカリ現像性がより一層良好となる。
【0069】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは20mgKOH/g以上であり、300mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは200mgKOH/g以下である。アルカリ可溶性樹脂の酸価が10mgKOH/g以上であると、着色組成物を着色層としたときのアルカリ現像性がより一層良好となり、300mgKOH/g以下であると膜強度等が良好となる。また、アルカリ可溶性樹脂のアミン価は10mgKOH/g未満が好ましい。
【0070】
着色組成物において、アルカリ可溶性樹脂の含有量は、着色材100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、200質量部以下が好ましく、より好ましくは120質量部以下である。着色組成物におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、着色組成物の固形分全量中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、70質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0071】
(重合性化合物)
前記重合性化合物としての重合性樹脂としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子にイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等の架橋性基を導入した樹脂が用いられる。スチレン-無水マレイン酸共重合物やα-オレフィン-無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化した重合物も用いられる。
【0072】
前記重合性化合物としての重合性不飽和結合を分子内に1個有するモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルの(メタ)アクリレート;ヘキサエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールアリールエーテルの(メタ)アクリレート;イソボニル(メタ)アクリレート;グリセロール(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
前記重合性化合物としての重合性不飽和結合を分子内に2個以上有するモノマーとしては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
着色組成物における重合性化合物の含有量は、着色組成物の固形分全量中において、3質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下である。重合性化合物の含有量が少なすぎると、十分な硬化性が得られないおそれがある。一方、重合性化合物の量が多すぎると、本発明の着色組成物にアルカリ現像性が低下し、未露光部の基板上または遮光層上に地汚れ、膜残り等が発生しやすくなる傾向がある。
【0075】
(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)
前記熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム、エポキシ樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。
【0076】
[光重合開始剤]
前記着色組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。これにより、着色組成物に感放射線性を付与することができる。前記光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠赤外線、電子線、X線等の放射線の露光により、架橋剤の重合を開始し得る活性種を発生する化合物である。
【0077】
前記光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物、アミノケトン系化合物等を挙げることができる。光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0078】
本発明の着色組成物において、光重合開始剤の含有量は、着色組成物の固形物全量中において、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上であり、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。この場合、光重合開始剤の含有量が少なすぎると、露光により硬化が不十分となるおそれがあり、一方多すぎると、形成された着色層が現像時に基板から脱落しやすくなる傾向がある。
【0079】
[他の配合剤]
他の配合剤としては、増感色素、熱重合防止剤、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、可塑剤、有機カルボン酸化合物、有機カルボン酸無水物、pH調整剤、前記フェノール系酸化防止剤以外の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防腐剤、防カビ剤、凝集防止剤、密着性改良剤、現像改良剤、保存安定剤等を挙げることができる。
【0080】
[着色組成物の製造方法]
前記着色組成物は、着色材、分散剤、分散媒体、亜リン酸エステル、必要に応じて、フェノール系酸化防止剤、バインダー樹脂、光重合開始剤、光拡散剤(沈降性硫酸バリウム等)、他の配合剤を混合することで調製できる。混合は、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ニーダー等の混合分散機を用いることができる。着色組成物は、混合後に濾過することが好ましい。各材料を混合する方法は特に限定されず、例えば、全ての材料を同時に一括で混合する方法;着色材、分散剤、分散媒体を混合し、予め着色材を分散させた後、この着色材分散液に他の材料を混合する方法;着色材、分散剤および他の材料の一部を混合して着色材分散ベースを調製した後、この着色材分散ベースに他の材料を混合する方法などが挙げられる。前記着色組成物は、分散性が優れ、ホルムアルデヒドの発生が抑制されていることから、ブラックマトリックス用として好適に使用することができる。
【0081】
<カラーフィルタ>
本発明のカラーフィルタは、透明基板上に、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の三原色の光を透過させる色画素と、前記着色組成物から形成されたブラックマトリックスとを備えるものである。
【0082】
カラーフィルタを製造する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。まず、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、各種ガラスなどの透明基板上に、例えば、本発明のブラックマトリックス用着色組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶媒(分散媒体)を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液(有機溶剤又は界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液など)を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去すし、黒色のパターン(ブラックマトリックス)を形成する。その後、必要に応じてポストベークした後、同様の操作を赤色(R)、緑色(G)および青色(B)について順次繰り返すことにより、赤色、緑色および青色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。但し、本発明においては、各色の画素を形成する順序は、上記のものに限定されない。
【0083】
着色組成物を基板に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができるが、特に、スピンコート法、スリットダイ塗布法を採用することが好ましい。
【0084】
このようにして得られた画素パターン上に、必要に応じて保護膜を形成した後、透明導電膜(ITOなど)をスパッタリングにより形成する。透明導電膜を形成した後、更にスペーサーを形成してカラーフィルタとすることもできる。
【0085】
本発明のカラーフィルタは、ホルムアルデヒドの発生が抑制され、寸法精度等が高いことから、カラー液晶表示素子、カラー撮像管素子、カラーセンサー、有機EL表示素子、電子ペーパー等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0087】
<評価方法>
(分散安定性)
各顔料分散ベースおよび着色組成物をそれぞれガラス瓶に採り、密栓して室温で7日間保存した。保存後の各顔料分散ベースおよび着色組成物を目視にて確認し、下記評価基準に従って評価した。
A:増粘、沈降物が共に認められない。
B:軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められる。
C:強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる。
【0088】
(レジストパターンの現像性)
各着色組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、硬化部分と未硬化部分の面積比が20:80となる線幅25μmの格子状のパターンが得られるマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cm2で露光した。0.05%水酸化カリウム水溶液を使用して得られた塗膜を現像し、未露光部分の着色組成物が除去できる時間から下記評価基準に従って現像性を評価した。
A:30秒以内に完全に除去できる。
B:30秒を超えて60秒以内に完全に除去できる。
C:60秒を超えても完全に除去できない。
【0089】
(レジストパターンの現像マージン)
各着色組成物をスピンコーターにて膜厚1μmとなるようにガラス基板上に塗布し、100℃で3分間プレベークした。その後、硬化部分と未硬化部分の面積比が20:80となる線幅25μmの格子状のパターンが得られるマスクを用いて、高圧水銀灯を用い、UV積算光量400mJ/cm2で露光した。得られた塗膜を、0.05%水酸化カリウム水溶液を使用して現像し、未露光部分の着色組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間を測定して、下記評価基準に従って現像マージンを評価した。
A:未露光部分の着色組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間が60秒以上。
B:未露光部分の着色組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間が30秒以上、60秒未満。
C:未露光部分の着色組成物が除去できた時から、硬化部分のレジスト組成物が除去されるまでの時間が30秒未満。
【0090】
(ホルムアルデヒド検出量)
着色組成物0.5gをDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)を含侵したシリカゲルを充填したカートリッジ(ウォーターズ社製、Sep Pak(登録商標) DNPHシリカプラスカートリッジ(商品番号:WAT037500))に注入し、室温で2時間静置させた。
アセトニトリル4mLで洗い出し、5mLにメスアップした。液体クロマトグラフ(島津製作所製、商品名:LC-10AD、カラム:Pro C18 RS(4.6×250mm,5μm(YMC社製)、移動相:アセトニトリル/超純水=65:35溶液、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出波長:360nm)を用い、標準物質として2種アルデヒド-DNPH混合標準液(0.1μgアルデヒド/μLアセトニトリル、和光純薬製)を使用し、測定を行った。測定結果よりホルムアルデヒド量を算出した。
【0091】
(アミン価)
アミン価は、固形分1gあたりの塩基性成分と当量の水酸化カリウム(KOH)の質量を表したものである。測定試料をテトラヒドロフランに溶解し、電位差滴定装置(商品名:GT-06、三菱化学社製)を用いて、得られた溶液を0.1mol/L塩酸/2-プロパノール溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として次式によりアミン価(B)を算出した。
B=56.11×Vs×0.1×f/w
B:アミン価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L塩酸/2-プロパノール溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L塩酸(2-プロパノール性)の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0092】
(酸価)
酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。測定試料をテトラヒドロフランに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインエタノール溶液を数滴加え、0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液で中和滴定した。次式により酸価(A)を算出した。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液の力価
w:測定試料の質量(g)(固形分換算)
【0093】
<顔料分散ベースの調製>
(顔料分散ベースNo.1~12、14~16)
表1に示した組成となるように各種材料を一括混合し、ビーズミルで一昼夜練肉し、顔料分散ベースを調製した。顔料分散ベースNo.1~12、14~16は、いずれも分散安定性が良好であった。
【0094】
(顔料分散ベースNo.13の調製)
表1に示した亜リン酸エステルを除く各材料を一括混合し、ビーズミルで一昼夜練肉した後、当該練肉物に亜リン酸エステルを添加し、顔料分散ベースを調製した。顔料分散ベースNo.13は、分散安定性が良好であった。
【0095】
【0096】
【0097】
表1、2で用いた材料は下記のとおりである。
SB250:カーボンブラック(キャボット社製、商品名「スペシャルブラック250」)
PY185:C.I.ピグメントイエロー185
PV29:C.I.ピグメントバイオレット29
PB60:C.I.ピグメントブルー60
分散剤1:アミノ基含有ポリウレタン系樹脂型分散剤(酸価0mgKOH/g、アミン価36mgKOH/g)
分散剤2:アミノ基含有ポリウレタン系樹脂型分散剤(酸価0mgKOH/g、アミン価45mgKOH/g)
分散剤3:アミノ基含有(メタ)アクリル系樹脂型分散剤(酸価0mgKOH/g、アミン価63mgKOH/g)
分散剤4:アミノ基含有ポリエステルアミド系樹脂型分散剤(酸価17mgKOH/g、アミン価10mgKOH/g)
フタロシアニン系(銅フタロシアニン系色素骨格を有する色素誘導体、ルーブリゾール社製、商品名「Solsperse(登録商標)5000」)
アルカリ可溶性樹脂:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、酸価100mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g、重量平均分子量30,000
TEP:亜リン酸トリエチル
TIDP:亜リン酸トリイソデシル
BBC:4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)
PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
【0098】
<着色組成物No.1~16の調製>
高速撹拌機を用いて、各顔料分散ベースと他の材料とを表3、4の組成になるように均一に混合した。その後、孔径3μmのフィルターで濾過し、各着色組成物を得た。
【0099】
【0100】
【0101】
表3、4で用いた材料は下記のとおりである。
重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
イルガキュア907:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン
【0102】
得られた着色組成物の評価結果を表3、4に示した。着色組成物No.1~13、16は、着色材、分散剤、分散媒体および特定の亜リン酸エステルを含有する場合である。これらの着色組成物No.1~13、16は、分散安定性、現像性、現像マージンがいずれも良好であり、かつ、ホルムアルデヒド検出量が2ppm以下に低減されていた。特に、フェノール系酸化防止剤を含有する着色組成物No.1~13は、分散安定性が一層優れていた。また、着色組成物No.2と13は、亜リン酸エステルの添加時期が異なるが、これらの対比より、着色材と分散剤とを混合する際に亜リン酸エステルを添加した方が、ホルムアルデヒド検出量がより低減されていた。