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特許7308720缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/26 20060101AFI20230707BHJP
   B21D 22/28 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
B21D51/26 R
B21D22/28 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019196406
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070035
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昭二
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩二
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-514057(JP,A)
【文献】特開2009-078301(JP,A)
【文献】特開平6-071351(JP,A)
【文献】特開2010-540254(JP,A)
【文献】特開2015-531689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/28
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶底を成形する金型のドーマーを有するドーマードアと、
前記ドーマードアが取り付けられる本体フレームと、
前記本体フレームに対して前記ドーマードアを開閉可能に連結する連結部と、
前記ドーマードアの閉状態において、前記本体フレームと前記ドーマードアとを位置合わせする位置決め部と、
前記本体フレームと前記ドーマードアとが位置合わせされた状態で、前記本体フレームと前記ドーマードアとを固定する固定部と、を備え、
前記連結部と前記位置決め部とが、別々に設けられる、
缶成形装置のドーマー機構。
【請求項2】
前記連結部は、前記本体フレームと前記ドーマードアとを、前記ドーマーの中心軸の軸方向に沿って相対移動可能に連結する、
請求項1に記載の缶成形装置のドーマー機構。
【請求項3】
前記連結部は、
前記本体フレームに取り付けられる第1回転軸と、
前記第1回転軸を介して、前記本体フレームに前記第1回転軸回りに回転自在に連結される第1リンク部と、
前記ドーマードアに取り付けられる第2回転軸と、
前記第2回転軸を介して、前記ドーマードアに前記第2回転軸回りに回転自在に連結される第2リンク部と、
前記第1リンク部と前記第2リンク部とを連結する第3回転軸と、を有し、
前記第3回転軸は、前記第1リンク部と前記第2リンク部とを前記第3回転軸回りに回転自在に連結する、
請求項1または2に記載の缶成形装置のドーマー機構。
【請求項4】
前記ドーマードアに取り付けられる少なくとも2つの操作ハンドルを備え、
前記ドーマーの中心軸の軸方向から見て、前記2つの操作ハンドル間に前記ドーマーが配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の缶成形装置のドーマー機構。
【請求項5】
前記位置決め部は、
前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記ドーマーの中心軸の軸方向に位置合わせする軸方向位置決め部と、
前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記中心軸と直交する径方向に位置合わせする径方向位置決め部と、を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の缶成形装置のドーマー機構。
【請求項6】
前記ドーマーの中心軸は、水平方向に沿って延び、
前記径方向位置決め部は、
前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記径方向のうち水平方向において位置合わせする第1径方向位置決め部と、
前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記径方向のうち鉛直方向において位置合わせする第2径方向位置決め部と、を有する、
請求項5に記載の缶成形装置のドーマー機構。
【請求項7】
前記位置決め部は、
前記本体フレームおよび前記ドーマードアのいずれか一方に設けられる転動体と、
前記本体フレームおよび前記ドーマードアの前記一方とは異なる他方に設けられ、前記転動体が転動する転動体案内部と、を有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の缶成形装置のドーマー機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の缶成形装置のドーマー機構と、
前記ドーマーの中心軸の軸方向において、前記ドーマーと対向するパンチと、
前記ドーマーに対して前記パンチを前記軸方向に往復直線運動させる往復直線運動機構と、
前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、
前記ダイの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える、
缶成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状のDI(Drawing&Ironing)缶が知られている。DI缶は、アルミニウム合金製の円板状のブランクに、カッピング加工およびDI加工等を施すことにより製造される。カッピング加工では、ブランクを絞り加工してカップ状体とする。DI加工では、カップ状体の内部にパンチを嵌合させ、カップ状体の外部に複数のダイを嵌合させて、これらの金型間でカップ状体を絞りしごき加工する。またDI加工では、パンチとドーマー(ドーム形成具)との間で缶の底部を挟み込むことにより、缶底をドーム形状に成形する。
【0003】
DI缶を成形する缶成形装置として、例えば下記特許文献1~3が知られている。特許文献1の缶成形装置は、缶底受け部(ドーマードア)が旋回軸を中心に旋回する。缶底受け部が旋回軸回りに旋回し開閉されることで、缶底受け部の金型交換やメンテナンス等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-71351号公報
【文献】特許第5872688号公報
【文献】特開2018-118320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の缶成形装置は、ドーマードアが旋回軸回りに繰り返し開閉されることで旋回軸周辺の部材が摩耗し、ドーマードアの位置精度を確保することが困難になる。ドーマードアの位置精度が確保できなくなると、成形される缶の品質に影響する。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、ドーマードアを繰り返し開閉しても、ドーマードアの位置精度が良好に維持される缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の缶成形装置のドーマー機構の一つの態様は、缶底を成形する金型のドーマーを有するドーマードアと、前記ドーマードアが取り付けられる本体フレームと、前記本体フレームに対して前記ドーマードアを開閉可能に連結する連結部と、前記ドーマードアの閉状態において、前記本体フレームと前記ドーマードアとを位置合わせする位置決め部と、前記本体フレームと前記ドーマードアとが位置合わせされた状態で、前記本体フレームと前記ドーマードアとを固定する固定部と、を備え、前記連結部と前記位置決め部とが、別々に設けられる。
また、本発明の缶成形装置の一つの態様は、上述の缶成形装置のドーマー機構と、前記ドーマーの中心軸の軸方向において、前記ドーマーと対向するパンチと、前記ドーマーに対して前記パンチを前記軸方向に往復直線運動させる往復直線運動機構と、前記パンチが挿入される貫通孔を有するダイと、前記ダイの前記貫通孔が開口する端面に押し付けられるカップホルダーと、を備える。
【0008】
本発明の缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置では、本体フレームに対してドーマードアが、連結部を介して開閉する。またドーマードアが閉じられた状態で、本体フレームに対してドーマードアが、位置決め部により位置合わせされる。本発明では、本体フレームに対してドーマードアを開閉する構造(連結部)と、本体フレームに対してドーマードアを位置合わせする構造(位置決め部)とが、別々に設けられる。
【0009】
例えば本発明とは異なり、従来構造の旋回軸を用いて、ドーマードアの開閉および位置合わせの両方を行う場合、ドーマードアが繰り返し開閉されることにより、旋回軸周辺の部材が摩耗し、ドーマードアの位置精度を確保することが困難になる。
一方、本発明によれば、ドーマードアを繰り返し開閉することにより、たとえ連結部周辺の部材が摩耗した場合でも、ドーマードアの位置精度は、位置決め部により良好に維持される。このため、ドーマー機構により成形される缶の品質が、長期にわたり安定して高められる。
【0010】
また、位置決め部によりドーマードアを位置決めすることで、ドーマードアを支持するための力が分散される。これにより、連結部にかかる荷重が小さく抑えられるため、他の部材に比べて摩耗しやすい連結部の部品寿命を延長することができる。
【0011】
上記缶成形装置のドーマー機構において、前記連結部は、前記本体フレームと前記ドーマードアとを、前記ドーマーの中心軸の軸方向に沿って相対移動可能に連結することが好ましい。
【0012】
上記缶成形装置のドーマー機構において、前記連結部は、前記本体フレームに取り付けられる第1回転軸と、前記第1回転軸を介して、前記本体フレームに前記第1回転軸回りに回転自在に連結される第1リンク部と、前記ドーマードアに取り付けられる第2回転軸と、前記第2回転軸を介して、前記ドーマードアに前記第2回転軸回りに回転自在に連結される第2リンク部と、前記第1リンク部と前記第2リンク部とを連結する第3回転軸と、を有し、前記第3回転軸は、前記第1リンク部と前記第2リンク部とを前記第3回転軸回りに回転自在に連結することが好ましい。
【0013】
この場合、本体フレームに対してドーマードアが、ドーマーの軸方向に移動させられつつ、位置決め部により位置合わせされる。例えば、従来構造のように旋回軸回りにドーマードアを回転させる構成と比べて、本発明の上記構成によれば、本体フレームに対してドーマードアを位置合わせしやすい。またドーマードアの位置合わせの精度が安定して確保される。
【0014】
上記缶成形装置のドーマー機構は、前記ドーマードアに取り付けられる少なくとも2つの操作ハンドルを備え、前記ドーマーの中心軸の軸方向から見て、前記2つの操作ハンドル間に前記ドーマーが配置されることが好ましい。
【0015】
この場合、ドーマーの軸方向から見て、ドーマードアの中でも重量が大きいドーマーの両側に、操作ハンドルがそれぞれ設けられるので、2つの操作ハンドルを把持したときのドーマードアの重量バランスが安定する。このため、ドーマーの金型交換やメンテナンス等を行うオペレーターが、本体フレームに対してドーマードアを両手で押し込んだり引き出したりする操作が容易である。
【0016】
上記缶成形装置のドーマー機構において、前記位置決め部は、前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記ドーマーの中心軸の軸方向に位置合わせする軸方向位置決め部と、前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記中心軸と直交する径方向に位置合わせする径方向位置決め部と、を有することが好ましい。
【0017】
この場合、本体フレームに対してドーマードアが、位置決め部によって、ドーマーの中心軸の軸方向および径方向にそれぞれ位置決めされる。ドーマードアの位置精度が安定して確保される。
【0018】
上記缶成形装置のドーマー機構において、前記ドーマーの中心軸は、水平方向に沿って延び、前記径方向位置決め部は、前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記径方向のうち水平方向において位置合わせする第1径方向位置決め部と、前記本体フレームに対して前記ドーマードアを、前記径方向のうち鉛直方向において位置合わせする第2径方向位置決め部と、を有することが好ましい。
【0019】
この場合、本体フレームに対してドーマードアが、径方向位置決め部によって、ドーマーの径方向のうち、水平方向および鉛直方向に位置決めされる。ドーマードアの位置精度が安定して確保される。
【0020】
上記缶成形装置のドーマー機構において、前記位置決め部は、前記本体フレームおよび前記ドーマードアのいずれか一方に設けられる転動体と、前記本体フレームおよび前記ドーマードアの前記一方とは異なる他方に設けられ、前記転動体が転動する転動体案内部と、を有することが好ましい。
【0021】
この場合、転動体が転動体案内部を転動することにより、本体フレームに対してドーマードアが位置合わせされる。転動体と転動体案内部との摩擦抵抗は、転動により小さく抑えられるため、転動体および転動体案内部の摩耗が抑制される。このため、位置決め部の位置合わせ機能が、長期にわたり良好に維持される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一つの態様の缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置によれば、ドーマードアを繰り返し開閉しても、ドーマードアの位置精度が良好に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態の缶成形装置を模式的に示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す正面図であり、ドーマードアが閉じた状態を表す。
図3図3は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す斜視図であり、ドーマードアが閉じた状態を表す。
図4図4は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す斜視図であり、ドーマードアが閉じた状態を表す。
図5図5は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す斜視図であり、ドーマードアが開閉される途中の状態を表す。
図6図6は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す斜視図であり、ドーマードアが開閉される途中の状態を表す。
図7図7は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す斜視図であり、ドーマードアが開いた状態を表す。
図8図8は、本発明の一実施形態の缶成形装置のドーマー機構を示す斜視図であり、ドーマードアが開いた状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態の缶成形装置10、および缶成形装置10のドーマー機構1(以下、単にドーマー機構1と呼ぶ場合がある)について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の缶成形装置10は、ワークであるカップ状体WにDI加工を施してDI缶100とする、DI缶製造装置である。
【0025】
まず、DI缶100について説明する。
DI缶100は、飲料等の内容物が充填、密封される缶体(2ピース缶やボトル缶)に用いられる。2ピース缶の場合、缶体は、有底筒状のDI缶100と、このDI缶100の開口端部に巻き締められる円板状の缶蓋と、を備える。ボトル缶の場合、缶体は、DI缶100にネッキング加工およびねじ加工等が施されたボトル缶本体と、ボトル缶本体の開口端部に螺着されるキャップと、を備える。
【0026】
DI缶100は、アルミニウム合金製等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)およびDI工程(絞りしごき工程)を施すことにより、有底筒状に形成される。具体的にDI缶100は、例えば2ピース缶の場合、板材打ち抜き工程、カッピング工程、DI工程、トリミング工程、印刷工程、塗装工程、ネッキング工程およびフランジング工程をこの順に経て、製造される。
【0027】
DI缶100を製造する過程では、ブランクをカッピングプレスによって絞り加工(カッピング加工)し、カップ状体Wに成形する。つまりカップ状体Wは、上記カッピング工程において、ブランクからDI缶100へ移行する過程で作製される成形中間体である。カップ状体Wは、DI缶100よりも周壁の高さ(缶軸方向に沿う長さ)が小さく、底壁の直径が大きい有底筒状である。
【0028】
次に、缶成形装置10について説明する。
缶成形装置10は、上記DI工程に用いられるものであり、カップ状体WにDI加工、すなわち絞り(再絞り)しごき加工を施して、DI缶100に成形する。また缶成形装置10は、上記DI工程において、DI缶100の缶底をドーム形状に成形する。
【0029】
図1において、缶成形装置10は、ドーマー機構1と、パンチ2と、往復直線運動機構4と、往復直線運動機構4とパンチ2とを繋ぐラム軸3と、ラム軸3をパンチ2の中心軸Oの軸方向に往復移動自在に支持する軸受5と、パンチ2が挿入される貫通孔7を有するダイ8と、ダイ8の貫通孔7が開口する端面9に押し付けられるカップホルダー6と、を備える。
【0030】
また缶成形装置10は、ダイ8の端面9上にカップ状体Wを搬送するカップフィーダー(図示略)と、この端面9上にカップ状体Wを保持する受け座(図示略)と、成形後のDI缶100を装置外部へ搬送する缶搬出機構(図示略)と、パンチ2の先端面および外周面の少なくともいずれかに開口するエア吐出孔からエアを吐出し、パンチ2からDI缶100を離型させるエア吐出機構12と、往復直線運動機構4に同期して駆動され、カップホルダー6を中心軸Oの軸方向に往復移動させるカップホルダー駆動機構(図示略)と、駆動モータ等の駆動源(図示略)と、を備える。
【0031】
ドーマー機構1が有するドーマー11、パンチ2、ラム軸3、軸受5、ダイ8およびカップホルダー6の各中心軸は、互いに同軸に配置される。本実施形態では、この共通軸を中心軸Oと呼ぶ。本実施形態では、中心軸Oが水平方向に延びる。つまりドーマー11の中心軸Oは、水平方向に沿って延びる。
【0032】
本実施形態においては、中心軸Oが延びる方向を、軸方向と呼ぶ。ドーマー機構1の軸方向位置と、パンチ2の軸方向位置とは、互いに異なる。軸方向のうち、ドーマー機構1からパンチ2へ向かう方向を軸方向一方側と呼び、パンチ2からドーマー機構1へ向かう方向を軸方向他方側と呼ぶ。
中心軸Oと直交する方向を、径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を、周方向と呼ぶ。
【0033】
本実施形態では、各図に3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
X軸方向は、中心軸Oの軸方向に相当する。X軸方向のうち、+X側は軸方向一方側に相当し、-X側は軸方向他方側に相当する。本実施形態においてX軸方向は、水平方向である。
Y軸方向は、X軸方向と直交する方向である。本実施形態においてY軸方向は、水平方向のうちX軸方向とは異なる方向である。図2に示すように、ドーマー機構1を軸方向他方側から見て、Y軸は、左右方向に延びる。このため本実施形態では、Y軸方向を左右方向と呼ぶ。ドーマー機構1を軸方向他方側から見て、Y軸方向のうち、+Y側を左側と呼び、-Y側を右側と呼ぶ。Y軸方向は、中心軸Oと直交する径方向のうち、左右方向(水平方向)に延びる所定の径方向である。Y軸方向は、第1の所定の径方向と言い換えてもよい。
Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向と直交する方向である。本実施形態においてZ軸方向は、鉛直方向つまり上下方向である。Z軸方向のうち、+Z側を上側と呼び、-Z側を下側と呼ぶ。Z軸方向は、中心軸Oと直交する径方向のうち、上記所定の径方向とは異なり上下方向に延びる、他の所定の径方向である。Z軸方向は、第2の所定の径方向と言い換えてもよい。
【0034】
図2図4に示すように、ドーマー機構1は、ドーマードア21と、本体フレーム22と、連結部23と、位置決め部24と、固定部25と、操作ハンドル26と、を備える。
【0035】
ドーマードア21は、ドア本体21aと、ドーマー11と、を有する。
ドア本体21aは、中心軸Oと垂直な方向に拡がる板状である。ドア本体21aは、左右方向に延びる。ドア本体21aは、ドア本体21aの左右方向の両端部における軸方向の厚さよりも、ドア本体21aの左右方向の両端部間に位置する中間部分における軸方向の厚さが大きい。ドア本体21aは、ドア本体21aの左右方向の両端部における上下方向の長さよりも、ドア本体21aの左右方向の両端部間に位置する中間部分における上下方向の長さが大きい。
【0036】
ドーマー11は、DI缶100の缶底を成形する金型である。図8に示すように、ドーマー11は、略円筒状であり、軸方向に延びる。ドーマー11は、ドア本体21aに設けられる。ドーマー11は、ドア本体21aのうち左右方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。ドーマー11は、ドア本体21aの軸方向一方側を向く面から軸方向一方側に突出する。
【0037】
本体フレーム22は、缶成形装置10の図示しない装置フレームと固定される。図2図4に示すように、本体フレーム22には、ドーマードア21が取り付けられる。
本体フレーム22は、左フレーム部22aと、右フレーム部22bと、を有する。左フレーム部22aは、本体フレーム22のうち中心軸Oの左側に位置する部分を構成する。右フレーム部22bは、本体フレーム22のうち中心軸Oの右側に位置する部分を構成する。本実施形態では、左フレーム部22aと右フレーム部22bとが、左右方向に互いに間隔をあけて、別体として設けられる。つまり左フレーム部22aと右フレーム部22bとは、別々に設けられる。
【0038】
図3図4図7および図8に示すように、本体フレーム22は、上壁22cと、下壁22dと、縦壁22eと、上ガイド溝22hと、下ガイド溝22iと、を有する。上壁22c、下壁22dおよび縦壁22eは、左フレーム部22aと右フレーム部22bとに、それぞれ設けられる。上壁22c、下壁22dおよび縦壁22eは、単一の部材により一体に設けられる。上ガイド溝22hおよび下ガイド溝22iは、左フレーム部22aに設けられる。
【0039】
上壁22cは、本体フレーム22の上端部に配置され、上下方向と垂直な方向つまり水平方向に拡がる。図2図4に示すように、上壁22cは、ドア本体21aの左右方向の両端部よりも上側に位置する。
下壁22dは、本体フレーム22の下端部に配置され、上下方向と垂直な方向つまり水平方向に拡がる。下壁22dは、ドア本体21aの左右方向の両端部よりも下側に位置する。
【0040】
縦壁22eは、上下方向において上壁22cと下壁22dとの間に位置し、中心軸Oと垂直な方向に拡がる。縦壁22eは、上壁22cと下壁22dとを繋ぐ。縦壁22eは、ドア本体21aよりも軸方向一方側に位置する。縦壁22eは、軸方向他方側を向く壁面を有する。縦壁22eの軸方向他方側を向く壁面は、ドア本体21aの軸方向一方側を向く板面と対向する。縦壁22eの軸方向他方側を向く壁面の少なくとも一部(後述する本体側接触部32a)と、ドア本体21aの軸方向一方側を向く板面の少なくとも一部(後述するドア側接触部32b)とは、軸方向において互いに接触可能である。
【0041】
図7および図8に示すように、上壁22cの軸方向他方側の端部は、縦壁22eよりも軸方向他方側に突出する。つまり上壁22cは、縦壁22eよりも軸方向他方側に突出する部分を有する。下壁22dの軸方向他方側の端部は、縦壁22eよりも軸方向他方側に突出する。つまり下壁22dは、縦壁22eよりも軸方向他方側に突出する部分を有する。
【0042】
縦壁22eは、縦壁22eの軸方向他方側を向く壁面に開口する雌ネジ孔22fを有する。雌ネジ孔22fは、軸方向に延びる。本実施形態では雌ネジ孔22fが、縦壁22eを軸方向に貫通する。雌ネジ孔22fは、雌ネジ孔22fの内周面に雌ネジ部22gを有する。
【0043】
図4に示すように、上ガイド溝22hは、上壁22cに設けられる。上ガイド溝22hは、上壁22cの下面に配置されて軸方向に延び、下側に開口する。上ガイド溝22hは、軸方向他方側には開口しない溝である。本実施形態では上ガイド溝22hが、軸方向一方側に開口する溝であるが、開口しなくてもよい。
【0044】
図3に示すように、下ガイド溝22iは、下壁22dに設けられる。下ガイド溝22iは、下壁22dの上面に配置されて軸方向に延び、上側に開口する。下ガイド溝22iは、軸方向他方側には開口しない溝である。本実施形態では下ガイド溝22iが、軸方向一方側に開口する溝であるが、開口しなくてもよい。
【0045】
連結部23は、本体フレーム22に対してドーマードア21を開閉可能に連結する。すなわちドーマードア21は、本体フレーム22に対して、閉じた状態と開いた状態との間で移動可能である。図2図4は、本体フレーム22に対してドーマードア21が閉じた状態を表している。以下では、この状態を単に「ドーマードア21の閉状態」と呼ぶ場合がある。図7および図8は、本体フレーム22に対してドーマードア21が開いた状態を表している。以下では、この状態を単に「ドーマードア21の開状態」と呼ぶ場合がある。図5および図6は、本体フレーム22に対してドーマードア21が開閉される途中の状態を表しており、具体的には、ドーマードア21が開かれる途中の状態および閉じられる途中の状態のいずれかを表している。
【0046】
連結部23は、本体フレーム22とドーマードア21とを、ドーマー11の中心軸Oの軸方向に沿って相対移動可能に連結する。
図3に示すように、連結部23は、第1回転軸27と、第1リンク部28と、第2回転軸29と、第2リンク部30と、第3回転軸31と、を有する。
【0047】
第1回転軸27は、本体フレーム22に取り付けられる。第1回転軸27の中心軸は、上下方向に延びる。第1回転軸27は、上壁22cと下壁22dとの間に配置される。
第1リンク部28は、第1回転軸27を介して、本体フレーム22に第1回転軸27の中心軸回りつまり第1回転軸27回りに、回転自在に連結される。本実施形態では第1リンク部28が、板状である。
第1回転軸27は、第1リンク部28の軸方向一方側の端部を上下方向に貫通する。
【0048】
第2回転軸29は、ドーマードア21に取り付けられる。第2回転軸29の中心軸は、上下方向に延びる。第2回転軸29は、ドア本体21aの左側の端部を上下方向に貫通する。第2回転軸29の上端部は、上ガイド溝22h内に配置される。第2回転軸29の上端部は、上ガイド溝22h内において軸方向に移動可能である。第2回転軸29の下端部は、下ガイド溝22i内に配置される。第2回転軸29の下端部は、下ガイド溝22i内において軸方向に移動可能である。このため、第2回転軸29およびドーマードア21は、上ガイド溝22hおよび下ガイド溝22iに対して、中心軸Oの軸方向に移動可能である。
【0049】
第2リンク部30は、第2回転軸29を介して、ドーマードア21に第2回転軸29の中心軸回りつまり第2回転軸29回りに、回転自在に連結される。本実施形態では第2リンク部30が、板状である。
第2回転軸29は、第2リンク部30の軸方向他方側の端部を上下方向に貫通する。
【0050】
第3回転軸31は、第1リンク部28と第2リンク部30とを連結する。第3回転軸31の中心軸は、上下方向に延びる。第3回転軸31は、第1リンク部28の軸方向他方側の端部と、第2リンク部30の軸方向一方側の端部とを、上下方向に貫通する。第3回転軸31は、第1リンク部28と第2リンク部30とを、第3回転軸31の中心軸回りつまり第3回転軸31回りに、回転自在に連結する。
【0051】
図2に示すように、位置決め部24は、ドーマードア21の閉状態において、本体フレーム22とドーマードア21とを位置合わせする。位置決め部24は、連結部23とは別体として設けられる。つまり連結部23と位置決め部24とは、別々に設けられる。
【0052】
図7および図8に示すように、位置決め部24は、軸方向位置決め部32と、径方向位置決め部33と、を有する。
軸方向位置決め部32は、本体フレーム22に対してドーマードア21を、ドーマー11の中心軸Oの軸方向に位置合わせする。軸方向位置決め部32は、本体側接触部32aと、ドア側接触部32bと、を有する。
【0053】
本体側接触部32aは、縦壁22eの軸方向他方側を向く壁面に設けられる。本体側接触部32aは、左フレーム部22aの縦壁22eおよび右フレーム部22bの縦壁22eにそれぞれ設けられる。つまり本体側接触部32aは、左右方向に互いに間隔をあけて一対設けられる。本体側接触部32aは、縦壁22eの軸方向他方側を向く壁面に位置し、この壁面の他の部分よりも軸方向他方側に突出する。本体側接触部32aの軸方向他方側を向く面は、中心軸Oと垂直な方向に拡がる平面状である。各本体側接触部32aには、各雌ネジ孔22fが配置される。本体側接触部32aの軸方向他方側を向く面には、雌ネジ孔22fが開口する。
【0054】
ドア側接触部32bは、ドア本体21aの軸方向一方側を向く板面に設けられる。ドア側接触部32bは、ドア本体21aの左右方向の両端部に一対設けられる。ドア側接触部32bは、ドア本体21aの軸方向一方側を向く板面に位置し、この板面の他の部分よりも軸方向一方側に突出する。ドア側接触部32bの軸方向一方側を向く面は、中心軸Oと垂直な方向に拡がる平面状である。
【0055】
ドア側接触部32bは、軸方向において、本体側接触部32aと接触可能である。詳しくは、ドーマードア21の閉状態において、本体側接触部32aの軸方向他方側を向く面と、ドア側接触部32bの軸方向一方側を向く面とが、軸方向に互いに接触する。本体側接触部32aとドア側接触部32bとが軸方向に接触させられることにより、本体フレーム22とドーマードア21とが、軸方向において互いに位置合わせされる。
【0056】
図2図6に示すように、径方向位置決め部33は、本体フレーム22に対してドーマードア21を、中心軸Oと直交する径方向に位置合わせする。径方向位置決め部33は、第1径方向位置決め部33aと、第2径方向位置決め部33bと、を有する。
【0057】
第1径方向位置決め部33aは、本体フレーム22に対してドーマードア21を、径方向のうち水平方向において位置合わせする。具体的に、第1径方向位置決め部33aは、本体フレーム22に対してドーマードア21を、左右方向において位置合わせする。本実施形態では、第1径方向位置決め部33aが、ドア本体21aの左右方向の両端部と、左フレーム部22aおよび右フレーム部22bの各上壁22cと、の間にそれぞれ設けられる。つまり第1径方向位置決め部33aは、左右方向に互いに間隔をあけて、一対(2つ)設けられる。
第1径方向位置決め部33aは、本体フレーム22およびドーマードア21のいずれか一方に設けられる転動体34と、本体フレーム22およびドーマードア21の前記一方とは異なる他方に設けられ、転動体34が転動する転動体案内部35と、を有する。つまり位置決め部24は、転動体34と、転動体案内部35と、を有する。本実施形態では、転動体34がドーマードア21に設けられ、転動体案内部35が本体フレーム22に設けられる。
【0058】
転動体34は、円筒状のコロ等の転動部と、転動部を回転自在に支持する回転軸と、を有する。転動部の中心軸は、回転軸の中心軸と同軸に配置される。以下では、転動部の中心軸および回転軸の中心軸を、転動体34の中心軸と呼ぶ。転動部は、回転軸に対して転動体34の中心軸回りに回転自在である。転動体34の中心軸は、上下方向に延びる。
転動体34は、ドア本体21aの左右方向の端部のうち上端部に設けられる。転動体34は、ドア本体21aの左右方向の端部の上面から上側に突出する。具体的に、転動体34の回転軸は、ドア本体21aの上面から上側に突出して上下方向に延び、転動部は、ドア本体21aの上面よりも上側に配置される。
【0059】
転動体案内部35は、上壁22cの下面に設けられる。転動体案内部35は、転動体34を軸方向他方側から受け入れ可能な溝状である。転動体案内部35は、軸方向に延び、下側および軸方向他方側に開口する。転動体案内部35の溝の側壁には、転動体34の転動部の外周面が接触する。転動体案内部35の軸方向他方側の端部における左右方向の溝幅、つまり開口部の溝幅は、軸方向一方側へ向かうに従い小さくなる。転動体案内部35の軸方向他方側の端部以外の部分の左右方向の溝幅、つまり開口部以外の部分の溝幅は、軸方向に沿って一定である。転動体案内部35の開口部以外の部分の溝幅は、転動部の外径つまり転動体34の外径と、略同じである。
【0060】
第2径方向位置決め部33bは、本体フレーム22に対してドーマードア21を、径方向のうち鉛直方向において位置合わせする。本実施形態では、第2径方向位置決め部33bが、ドア本体21aの左右方向の両端部と、左フレーム部22aおよび右フレーム部22bの各上壁22cと、の間にそれぞれ設けられる。また第2径方向位置決め部33bは、ドア本体21aの左右方向の両端部と、左フレーム部22aおよび右フレーム部22bの各下壁22dと、の間にそれぞれ設けられる。つまり第2径方向位置決め部33bは、左右方向および上下方向に互いに間隔をあけて、4つ設けられる。
第2径方向位置決め部33bは、本体フレーム22およびドーマードア21のいずれか一方に設けられる転動体36と、本体フレーム22およびドーマードア21の前記一方とは異なる他方に設けられ、転動体36が転動する転動体案内部37と、を有する。つまり位置決め部24は、転動体36と、転動体案内部37と、を有する。本実施形態では、転動体36がドーマードア21に設けられ、転動体案内部37が本体フレーム22に設けられる。
【0061】
転動体36は、円筒状のコロ等の転動部と、転動部を回転自在に支持する回転軸と、を有する。転動部の中心軸は、回転軸の中心軸と同軸に配置される。以下では、転動部の中心軸および回転軸の中心軸を、転動体36の中心軸と呼ぶ。転動部は、回転軸に対して転動体36の中心軸回りに回転自在である。転動体36の中心軸は、左右方向に延びる。
【0062】
複数の第2径方向位置決め部33bのうち、ドア本体21aと上壁22cとの間に配置される上側の各第2径方向位置決め部33bの転動体36は、ドア本体21aの左右方向の端部のうち上端部に設けられる。上記転動体36は、ドア本体21aの左右方向の端部の上面から上側に突出する。具体的に、上記転動体36の回転軸は、ドア本体21aの上端部に位置して左右方向に延び、転動部は、ドア本体21aの上面よりも上側に突出する部分を有する。
【0063】
複数の第2径方向位置決め部33bのうち、ドア本体21aと下壁22dとの間に配置される下側の各第2径方向位置決め部33bの転動体36は、ドア本体21aの左右方向の端部のうち下端部に設けられる。上記転動体36は、ドア本体21aの左右方向の端部の下面から下側に突出する。具体的に、上記転動体36の回転軸は、ドア本体21aの下端部に位置して左右方向に延び、転動部は、ドア本体21aの下面よりも下側に突出する部分を有する。
【0064】
複数の第2径方向位置決め部33bのうち、ドア本体21aと上壁22cとの間に配置される上側の各第2径方向位置決め部33bの転動体案内部37は、上壁22cの下面に設けられる。上記転動体案内部37は、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。上記転動体案内部37の下面は、軸方向に延びる。上記転動体案内部37の下面には、転動体36の転動部の外周面が接触する。上記転動体案内部37の下面の左右方向の幅は、転動体36の転動部の外周面の左右方向の幅よりも大きい。上記転動体案内部37の軸方向他方側の端部は、軸方向一方側へ向かうに従い下側に向けて傾斜する傾斜面である。上記転動体案内部37の軸方向他方側の端部以外の部分は、上下方向の位置が軸方向に沿って一定とされた平面である。
【0065】
複数の第2径方向位置決め部33bのうち、ドア本体21aと下壁22dとの間に配置される下側の各第2径方向位置決め部33bの転動体案内部37は、下壁22dの上面に設けられる。上記転動体案内部37は、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。上記転動体案内部37の上面は、軸方向に延びる。上記転動体案内部37の上面には、転動体36の転動部の外周面が接触する。上記転動体案内部37の上面の左右方向の幅は、転動体36の転動部の外周面の左右方向の幅よりも大きい。上記転動体案内部37の軸方向他方側の端部は、軸方向一方側へ向かうに従い上側に向けて傾斜する傾斜面である。上記転動体案内部37の軸方向他方側の端部以外の部分は、上下方向の位置が軸方向に沿って一定とされた平面である。
【0066】
固定部25は、ドーマードア21の閉状態において、本体フレーム22とドーマードア21とが位置合わせされた状態で、本体フレーム22とドーマードア21とを固定する。固定部25は、ドア本体21aの左右方向の両端部に一対設けられる。本実施形態では、固定部25が、ドア本体21aを軸方向に貫通するボルト部材である。固定部25は、軸部25aと、操作部25bと、を有する。
【0067】
図8に示すように、軸部25aは、軸方向に延びる棒状である。軸部25aは、ドア本体21aを軸方向に貫通する貫通孔に挿入される。軸部25aの軸方向一方側の端部は、ドア本体21aの軸方向一方側を向く板面から軸方向一方側に突出する。
軸部25aは、雄ネジ部25cを有する。雄ネジ部25cは、軸部25aの外周面のうち少なくとも軸方向一方側の端部に配置される。雄ネジ部25cは、ドア側接触部32bの軸方向一方側を向く面から軸方向一方側に突出する。雄ネジ部25cは、縦壁22eの雌ネジ孔22f内に挿入され、雌ネジ部22gに螺着される。雄ネジ部25cと雌ネジ部22gとが螺着されることにより、ドア側接触部32bと本体側接触部32aとが軸方向に接触した状態が維持される。つまり本体フレーム22に対して、ドーマードア21が軸方向に位置合わせされた状態で固定される。
【0068】
図7に示すように、操作部25bは、軸部25aの軸方向他方側の端部に接続される。操作部25bは、ドア本体21aの軸方向他方側を向く板面よりも軸方向他方側に配置される。操作部25bの外径は、軸部25aの外径、および軸部25aが挿入されるドア本体21aの貫通孔の内径よりも大きい。操作部25bは、軸方向に延びる角柱状であり、図示の例では6角柱状である。操作部25bには、図示しないレンチ等の作業用工具が係止可能である。操作部25bに作業用工具を係止して操作することにより、軸部25aを軸部25aの中心軸回りに回転させることができ、雄ネジ部25cを雌ネジ部22gに容易にねじ込むことができる。
【0069】
操作ハンドル26は、ドーマードア21に取り付けられる。操作ハンドル26は、ドーマードア21に少なくとも2つ設けられる。本実施形態では操作ハンドル26が、ドア本体21aの左右方向の両端部に、一対(2つ)設けられる。操作ハンドル26は、ドア本体21aの軸方向他方側を向く板面から軸方向他方側に突出する。本実施形態では操作ハンドル26が、上下方向に延びる棒状の部分(把持部)を有する。図2に示すように、ドーマー11の中心軸Oの軸方向から見て、2つの操作ハンドル26間には、ドーマー11が配置される。
【0070】
図1に示すように、パンチ2は、ドーマー11の中心軸Oの軸方向において、ドーマー11と対向する。パンチ2は、軸方向に延びる円筒状または円柱状である。パンチ2は、往復直線運動機構4により、ラム軸3とともに軸方向に往復直線運動させられる。すなわちパンチ2は、図1に符号Sの双方向矢印で示すように、往復直線運動機構4により中心軸Oの軸方向に沿って往復直線運動させられる。以下では、パンチ2が往復直線運動させられる向きを、ストローク方向Sと呼ぶ場合がある。パンチ2は、ダイ8およびドーマー11に対して、ストローク方向Sに往復直線運動する。パンチ2は、ダイ8の軸方向一方側(+X側)から、軸方向他方側(-X側)へ向けてダイ8の貫通孔7内に挿入され、貫通孔7から軸方向他方側に突出する。パンチ2は、ストローク方向Sの軸方向他方端の位置、つまり前進端位置において、ドーマー11に接近配置される。
【0071】
往復直線運動機構4は、駆動モータ等の駆動源から伝達された回転駆動力を中心軸Oの軸方向への往復直線運動に変換して、ラム軸3およびパンチ2を軸方向に往復直線移動させる。往復直線運動機構4は、ドーマー11およびダイ8に対して、パンチ2を軸方向に往復直線運動させる。
【0072】
ラム軸3は、軸方向に延びる棒状である。ラム軸3の軸方向一方側の端部は、往復直線運動機構4に接続される。ラム軸3の軸方向他方側の端部は、パンチ2に接続される。ラム軸3は、軸方向に互いに離間して設けられる一対の軸受5により、軸方向に摺動自在に支持される。
【0073】
一対の軸受5のうち、軸方向他方側つまりダイ8に近い位置に配置される一方の軸受5は、前軸受5Fであり、軸方向一方側つまり往復直線運動機構4に近い位置に配置される他方の軸受5は、後軸受5Rである。前軸受5Fおよび後軸受5Rは、例えばハイドロスタティック軸受や静圧軸受等と呼ばれる流体軸受の構造を有する。
【0074】
また缶成形装置10は、ツールパック13を備える。ツールパック13は、軸方向に互いに接近して並ぶ複数のダイ8を有する。各ダイ8は、軸方向に延びる円筒状または円形リング状である。複数のダイ8は、中心軸Oを共通軸として互いに同軸に配置される。複数のダイ8は、パンチ2との間でカップ状体Wを絞り(再絞り)加工する1つの再絞りダイ(リドローダイ)8Aと、パンチ2との間でカップ状体Wをしごき加工する複数のしごきダイ(アイオニングダイ)8Bと、を有する。
【0075】
複数のダイ8のうち、再絞りダイ8Aは、ツールパック13の軸方向一方側の端部に配置される。再絞りダイ8Aの軸方向一方側を向く端面9には、カップ状体Wの底壁が接触する。端面9は、中心軸Oと垂直な方向に拡がる平面状である。再絞りダイ8Aの貫通孔7は、端面9の中央部に開口する。複数のダイ8の各貫通孔7は、中心軸Oに垂直な断面が円形状である。各貫通孔7は、中心軸Oを中心とする円孔状である。
【0076】
本実施形態では、しごきダイ8Bが3つ設けられる。3つのしごきダイ8Bは、ツールパック13の軸方向一方側の端部以外の部分に配置される。各しごきダイ8Bの軸方向他方側には、図示しないパイロットリングがそれぞれ接近配置される。パイロットリングが設けられることにより、成形中のDI缶100がしごきダイ8Bから外れたときの衝撃で、パンチ2が各しごきダイ8Bに接触することが抑制される。
DI缶100の成形時において、ツールパック13には、潤滑と冷却のためソリュブル等の水溶性潤滑剤(クーラント液)が供給される。
【0077】
カップホルダー6は、軸方向に延びる円筒状である。カップホルダー6は、パンチ2の外側に嵌め合わされ、かつパンチ2に対して軸方向にスライド移動可能である。カップホルダー6は、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押圧可能である。カップホルダー6は、ダイ8の端面9に配置されたカップ状体Wの内部に挿入され、カップ状体Wの底壁を端面9に押し付けて支持する。
特に図示しないが、カップホルダー駆動機構は、駆動モータ等の駆動源から伝達された回転駆動力を軸方向への往復運動に変換して、カップホルダー6を軸方向に往復直線移動させる。
【0078】
缶成形装置10によるカップ状体WへのDI加工は、下記のように行われる。
まず、ワークであるカップ状体Wが、カップ軸(缶軸)を水平方向に延ばし、その開口を軸方向一方側つまりパンチ2側へ向けた姿勢で、パンチ2と再絞りダイ8Aとの間に配置される。カップ状体Wの底壁は、再絞りダイ8Aの端面9と対向する。
【0079】
このカップ状体Wに対して、カップホルダー6およびパンチ2が軸方向他方側に前進移動させられる。すなわち、カップホルダー6およびパンチ2が、ストローク方向Sにおいて、往復直線運動機構4からダイ8側へ向けて移動する。そしてカップホルダー6が、再絞りダイ8Aの端面9にカップ状体Wの底壁を押し付けてカップ押し付け動作を行いつつ、パンチ2が、カップ状体Wを再絞りダイ8Aの貫通孔7内に押し込んでいくことで、再絞り加工を施す。
【0080】
再絞り加工により、カップ状体Wは小径に成形され、かつ軸方向に沿う長さ(高さ)が大きくなる。さらにこのカップ状体Wをパンチ2で押し込んでいき、複数のしごきダイ8Bの各貫通孔7を順次通過させながらしごき加工を施す。すなわち、カップ状体Wの周壁をしごいて延伸させ、周壁高さを高くするとともに周壁の厚さを薄くして、有底筒状のDI缶100とする。DI缶100は、周壁がしごかれることで冷間加工硬化され、強度が高められる。
【0081】
しごき加工が施されたDI缶100は、パンチ2によりツールパック13の軸方向他方側つまり前方へと押し出される。そしてDI缶100の底部(缶底となる部分)が、パンチ2とドーマー11との間で軸方向に挟まれ押圧されることにより、DI缶100の底部が、ドーム形状に成形される。
【0082】
以上説明した本実施形態の缶成形装置10のドーマー機構1、および缶成形装置10では、本体フレーム22に対してドーマードア21が、連結部23を介して開閉する。またドーマードア21が閉じられた状態で、本体フレーム22に対してドーマードア21が、位置決め部24により位置合わせされる。本実施形態では、本体フレーム22に対してドーマードア21を開閉する構造(連結部23)と、本体フレーム22に対してドーマードア21を位置合わせする構造(位置決め部24)とが、別々に設けられる。
【0083】
例えば本実施形態とは異なり、従来構造の旋回軸を用いて、ドーマードアの開閉および位置合わせの両方を行う場合、ドーマードアが繰り返し開閉されることにより、旋回軸周辺の部材が摩耗し、ドーマードアの位置精度を確保することが困難になる。
一方、本実施形態によれば、ドーマードア21を繰り返し開閉することにより、たとえ連結部23周辺の部材が摩耗した場合でも、ドーマードア21の位置精度は、位置決め部24により良好に維持される。このため、ドーマー機構1により成形されるDI缶100の品質が、長期にわたり安定して高められる。
【0084】
また、位置決め部24によりドーマードア21を位置決めすることで、ドーマードア21を支持するための力が分散される。これにより、連結部23にかかる荷重が小さく抑えられるため、他の部材に比べて摩耗しやすい連結部23の部品寿命を延長することができる。
【0085】
また本実施形態では、連結部23が、本体フレーム22とドーマードア21とを、ドーマー11の中心軸Oの軸方向に沿って相対移動可能に連結する。具体的に、連結部23は、第1回転軸27と、第1リンク部28と、第2回転軸29と、第2リンク部30と、第3回転軸31と、を有する。
この場合、本体フレーム22に対してドーマードア21が、ドーマー11の軸方向に移動させられつつ、位置決め部24により位置合わせされる。例えば、従来構造のように旋回軸回りにドーマードアを回転させる構成と比べて、本実施形態の上記構成によれば、本体フレーム22に対してドーマードア21を位置合わせしやすい。またドーマードア21の位置合わせの精度が安定して確保される。
【0086】
また本実施形態では、ドーマー11の中心軸Oの軸方向から見て、2つの操作ハンドル26間にドーマー11が配置される。
この場合、ドーマー11の軸方向から見て、ドーマードア21の中でも重量が大きいドーマー11の両側に、操作ハンドル26がそれぞれ設けられるので、2つの操作ハンドル26を把持したときのドーマードア21の重量バランスが安定する。このため、ドーマー11の金型交換やメンテナンス等を行うオペレーターが、本体フレーム22に対してドーマードア21を両手で押し込んだり引き出したりする操作が容易である。
【0087】
また本実施形態では、位置決め部24が、軸方向位置決め部32と、径方向位置決め部33と、を有する。
この場合、本体フレーム22に対してドーマードア21が、位置決め部24によって、ドーマー11の中心軸Oの軸方向および径方向にそれぞれ位置決めされる。ドーマードア21の位置精度が安定して確保される。
【0088】
また本実施形態では、径方向位置決め部33が、本体フレーム22に対してドーマードア21を水平方向に位置合わせする第1径方向位置決め部33aと、本体フレーム22に対してドーマードア21を鉛直方向に位置合わせする第2径方向位置決め部33bと、を有する。
この場合、本体フレーム22に対してドーマードア21が、径方向位置決め部33によって、ドーマー11の径方向のうち、水平方向および鉛直方向に位置決めされる。ドーマードア21の位置精度が安定して確保される。
【0089】
また本実施形態では、位置決め部24が、転動体34,36と、転動体案内部35,37と、を有する。
この場合、転動体34,36が転動体案内部35,37を転動することにより、本体フレーム22に対してドーマードア21が位置合わせされる。転動体34,36と転動体案内部35,37との摩擦抵抗は、転動により小さく抑えられるため、転動体34,36および転動体案内部35,37の摩耗が抑制される。このため、位置決め部24の位置合わせ機能が、長期にわたり良好に維持される。
【0090】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0091】
前述の実施形態では、第1径方向位置決め部33aの転動体34がドーマードア21に設けられ、転動体案内部35が本体フレーム22に設けられる例を挙げたが、これに限らない。すなわち、第1径方向位置決め部33aの転動体34が本体フレーム22に設けられ、転動体案内部35がドーマードア21に設けられてもよい。
また、第2径方向位置決め部33bの転動体36がドーマードア21に設けられ、転動体案内部37が本体フレーム22に設けられる例を挙げたが、これに限らない。すなわち、第2径方向位置決め部33bの転動体36が本体フレーム22に設けられ、転動体案内部37がドーマードア21に設けられてもよい。
【0092】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の缶成形装置のドーマー機構、および缶成形装置によれば、ドーマードアを繰り返し開閉しても、ドーマードアの位置精度が良好に維持される。このため、成形される缶の品質が、長期にわたり安定して高められる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0094】
1…缶成形装置のドーマー機構、2…パンチ、4…往復直線運動機構、6…カップホルダー、7…貫通孔、8…ダイ、9…端面、10…缶成形装置、11…ドーマー、21…ドーマードア、22…本体フレーム、23…連結部、24…位置決め部、25…固定部、26…操作ハンドル、27…第1回転軸、28…第1リンク部、29…第2回転軸、30…第2リンク部、31…第3回転軸、32…軸方向位置決め部、33…径方向位置決め部、33a…第1径方向位置決め部、33b…第2径方向位置決め部、34,36…転動体、35,37…転動体案内部、O…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8