(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20230707BHJP
F24C 3/08 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A47J37/06 366
A47J37/06 316
F24C3/08 Q
(21)【出願番号】P 2019213135
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀本 正也
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126448(JP,A)
【文献】特開平4-54923(JP,A)
【文献】特開2001-56107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00~37/07
F24C 3/00~3/14
F23D 14/00~14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼用空気と燃料ガスとを元混合方式で混合した予混合気を内部に通流すると共に、内部から外部へ前記予混合気を噴射して燃焼火炎を形成する複数の炎孔を有するパイプバーナを備えた調理器であって、
前記パイプバーナに導かれる前記予混合気
に混合される前記燃焼用空気と、熱源機の排熱を有する熱媒とを熱交換する熱交換器を備えると共に、
複数の前記炎孔の炎孔負荷が、7.2kcal/mm
2h以上14kcal/mm
2h以下の設定炎孔負荷に設定されている調理器。
【請求項2】
複数の前記炎孔に関し、
前記炎孔の孔径を、前記炎孔が形成される前記パイプバーナのパイプ肉厚である炎孔深さで除算した値である孔径深さ比率が1以下に設定されている請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記パイプバーナは、長手方向に直交する断面が多角形状である請求項1又は2に記載の調理器。
【請求項4】
複数の前記炎孔は、前記パイプバーナの長手方向に沿って直線状に配列されて設けられ、
前記炎孔から噴出される予混合気の噴出方向視で、複数の前記炎孔の前記直線状の配列方向に沿うと共に複数の前記炎孔を挟む形で前記パイプバーナの外面に周囲壁が設けられている請求項1~3の何れか一項に記載の調理器。
【請求項5】
前記パイプバーナの内部は、前記予混合気を導入する予混合気導入路に連通接続する予混合気導入領域と、前記予混合気導入路から前記予混合気が直接導入されない領域であって且つ複数の前記炎孔を介して外部と連通接続する予混合気間接導入領域とを区画する区画壁が、前記パイプバーナの長手方向に沿って設けられ、
前記区画壁には、前記予混合気導入領域と前記予混合気間接導入領域とを連通接続する複数の連通孔が、前記パイプバーナの長手方向に沿って分散する形で設けられ、
前記パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの前記予混合気導入領域の容積が、前記パイプバーナの長手方向で前記予混合気導入路から離れるに従って徐々に小さく形成されると共に、前記パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの前記予混合気間接導入領域の容積が、前記パイプバーナの長手方向で前記予混合気導入路から離れるに従って徐々に大きく形成される請求項1~4の何れか一項に記載の調理器。
【請求項6】
前記パイプバーナは、前記パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの前記予混合気導入領域の容積に対する前記予混合気間接導入領域の容積である導入容積比を調整可能な容積比調整機構を備えている請求項5に記載の調理器。
【請求項7】
前記燃焼用空気を圧送する単一の圧送手段と、
当該圧送手段により圧送された前記燃焼用空気に前記燃料ガスを混合する単一のベンチュリーミキサと、
前記ベンチュリーミキサにて形成された予混合気を通流する予混合気通流路から複数に分岐して前記パイプバーナに予混合気を分配供給する予混合気分配路と、
前記圧送手段から前記パイプバーナへ導かれる前記燃焼用空気の流量を制御して、前記炎孔負荷を前記設定炎孔負荷に設定する制御部と、を備える請求項1~6の何れか一項に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼用空気と燃料ガスとの予混合気を内部に通流すると共に、内部から外部へ前記予混合気を噴射して燃焼火炎を形成する複数の炎孔を有するパイプバーナを備えた調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来知られているオーブン等の調理器としては、特許文献1に示されるように、燃焼用空気と燃料ガスとを元混合方式で混合した予混合気が供給される複数のパイプバーナを備えると共に、当該複数のパイプバーナからの燃焼火炎により燃焼室の内部を加熱するものが知られている。
より詳細には、複数のパイプバーナの夫々は、円筒形状の長尺パイプに、長手方向に沿って複数の炎孔を等間隔で形成して成り、当該炎孔から噴射される予混合気を燃焼する形で燃焼火炎を形成する。
また、調理器としてオーブンを用いる場合、波板状の金属板の複数を重ね合わせて、その間から噴射される予混合気を燃焼させて燃焼火炎を形成するリボンバーナが用いられる場合が多い(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-126448号公報
【文献】特開2018-201766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2に開示の技術のように、元混合方式で混合した予混合気をパイプバーナやリボンバーナに供給して燃焼火炎を形成する構成において、更なる省エネを図る構成として、排ガス等により予熱したホットエアを用いる構成が考えられる。
しかしながら、元混合方式のバーナにおいて、ホットエアを用いる場合、逆火(火炎が上流側へ戻り予混合気が存在する混合管の内部で燃える現象)が起きる恐れがある。このため、上記特許文献1、2に開示の従来技術においては、元混合方式のバーナにおいてホットエアを用いた省エネが図られることはなかった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、元混合方式で混合される予混合気が供給されるパイプバーナが設けられるものにおいて、逆火を良好に抑制しながらも、ホットエアを用いてエネルギ効率の向上を図ることができる調理器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための調理器は、
燃焼用空気と燃料ガスとを元混合方式で混合した予混合気を内部に通流すると共に、内部から外部へ前記予混合気を噴射して燃焼火炎を形成する複数の炎孔を有するパイプバーナを備えた調理器であって、その特徴構成は、
前記パイプバーナに導かれる前記予混合気に混合される前記燃焼用空気と、熱源機の排熱を有する熱媒とを熱交換する熱交換器を備えると共に、
複数の前記炎孔の炎孔負荷が、7.2kcal/mm2h以上14kcal/mm2h以下の設定炎孔負荷に設定されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、パイプバーナに導かれる予混合気に混合される燃焼用空気を、熱源機の排熱を有する熱媒と熱交換する形態で予熱するから、調理器が設けられる調理施設全体でのエネルギ効率の向上を図ることができる。
しかしながら、通常、予熱された燃焼用空気(ホットエア)と燃料ガスとを元混合方式で混合した予混合気を、パイプバーナに供給する場合、逆火が起き易くなる。
そこで、上記特徴構成によれば、複数の炎孔の炎孔負荷を、7.2kcal/mm2h以上14kcal/mm2h以下で、通常の炎孔負荷よりも高い設定炎孔負荷に設定することで、炎孔からの予混合気の噴出速度が高くでき、逆火の虞を低減できる。これにより、予混合気が導かれるパイプバーナであっても、逆火を十分に低減して安全性を高めた状態でエネルギ効率を高くすることができる(省エネ性を向上できる)。
以上より、予混合気が供給されるバーナが設けられる調理器において、逆火を良好に抑制しながらも、ホットエアを用いてエネルギ効率の向上を図ることができる調理器を提供できる。
【0008】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、
複数の前記炎孔に関し、
前記炎孔の孔径を、前記炎孔が形成される前記パイプバーナのパイプ肉厚である炎孔深さで除算した値である孔径深さ比率が1以下に設定されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、炎孔の孔径が炎孔深さに対して適度に小さく形成されると共に、炎孔深さが炎孔の孔径に対して適度に深く形成されるから、炎孔の壁面で火炎が有する熱がパイプバーナの本体へ拡散する等の理由により、逆火の発生をより一層良好に抑制することができる。
【0010】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、
前記パイプバーナは、長手方向に直交する断面が多角形状である点にある。
【0011】
これまで説明してきたように、本発明にあっては、予混合気が導かれるパイプバーナにおいて逆火を抑制するべく、炎孔負荷を比較的高い設定炎孔負荷へ設定しているが、このように炎孔負荷を高く設定すると、パイプバーナに対する熱負荷が高くなり、パイプバーナに熱による歪みが生じる場合がある。
上記特徴構成によれば、長手方向に直交する断面が多角形状のパイプバーナを採用することで、角部が熱歪みを抑制する歪み抑制部位として機能し、熱歪みを効果的に防止できる。
【0012】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、
複数の前記炎孔は、前記パイプバーナの長手方向に沿って直線状に配列されて設けられ、
前記炎孔から噴出される予混合気の噴出方向視で、複数の前記炎孔の前記直線状の配列方向に沿うと共に複数の前記炎孔を挟む形で前記パイプバーナの外面に周囲壁が設けられている点にある。
【0013】
これまで説明してきたように、本発明の如く炎孔負荷を比較的高い設定炎孔負荷に設定する場合、炎孔に形成される燃焼火炎にリフトが発生して火炎の立ち消えが起きる虞がある。
上記特徴構成によれば、周囲壁が、炎孔から噴出される予混合気の噴出方向視で、複数の炎孔の直線状の配列方向に沿うと共に複数の炎孔を挟む形で設けられているから、空気対流による燃焼火炎の揺らぎが抑制されると共に、予混合気の噴出方向で周囲壁に沿って燃焼火炎が形成されることで燃焼火炎のリフトが抑制され、火炎の立ち消えを良好に抑制できる。
【0014】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、
前記パイプバーナの内部は、前記予混合気を導入する予混合気導入路に連通接続する予混合気導入領域と、前記予混合気導入路から前記予混合気が直接導入されない領域であって且つ複数の前記炎孔を介して外部と連通接続する予混合気間接導入領域とを区画する区画壁が、前記パイプバーナの長手方向に沿って設けられ、
前記区画壁には、前記予混合気導入領域と前記予混合気間接導入領域とを連通接続する複数の連通孔が、前記パイプバーナの長手方向に沿って分散する形で設けられ、
前記パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの前記予混合気導入領域の容積が、前記パイプバーナの長手方向で前記予混合気導入路から離れるに従って徐々に小さく形成されると共に、前記パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの前記予混合気間接導入領域の容積が、前記パイプバーナの長手方向で前記予混合気導入路から離れるに従って徐々に大きく形成される点にある。
【0015】
パイプバーナに対して予混合気を導入する予混合気導入路は、パイプバーナの長手方向に予混合気の流れ方向を沿わせる形で導入されるよう設けられる場合が多い。
このような構成にあっては、パイプバーナの先端側へ予混合気が導かれ易くなるため、パイプバーナの先端側ほど、炎孔からの予混合気の噴出圧が高くなり、先端側ほど燃焼火炎の火炎長が長くなり、バーナの先端側と基端側(予混合気導入路側)とで熱出力が異なるような状況となる虞がある。
上記特徴構成によれば、パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの予混合気導入領域の容積が、パイプバーナの長手方向で予混合気導入路から離れるに従って徐々に小さく形成されると共に、パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの予混合気間接導入領域の容積が、パイプバーナの長手方向で予混合気導入路から離れるに従って徐々に大きく形成されるから、区画壁の連通孔を介した予混合気導入領域から予混合気間接導入領域への予混合気の流入量が、パイプバーナの基端側で増加する。
これにより、パイプバーナの長手方向での先端側から基端側において、炎孔から噴出される予混合気の噴出圧を平準化でき、先端側から基端側まで略均等な熱出力が得られるパイプバーナを実現できる。
【0016】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、
前記パイプバーナは、前記パイプバーナの長手方向での単位長さあたりでの前記予混合気導入領域の容積に対する前記予混合気間接導入領域の容積である導入容積比を調整可能な容積比調整機構を備えている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、容積比調整機構により、設定炎孔負荷の変動に伴って、導入容積比を調整できるから、設定炎孔負荷を変更した場合でも、パイプバーナの基端側から先端側まで熱出力の均等化を図ることができる。結果、設定炎孔負荷の設定の自由度を高くすることができる。
【0018】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、
前記燃焼用空気を圧送する単一の圧送手段と、
当該圧送手段により圧送された燃焼用空気に燃料ガスを混合する単一のベンチュリーミキサと、
前記ベンチュリーミキサにて形成された予混合気を通流する予混合気通流路から複数に分岐して前記パイプバーナに予混合気を分配供給する予混合気分配路と、
前記圧送手段から前記パイプバーナへ導かれる前記燃焼用空気の流量を制御して、前記炎孔負荷を前記設定炎孔負荷に設定する制御部とを備える点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、予混合気を複数のパイプバーナへ供給する場合であっても、単一の圧送手段からパイプバーナへ導かれる前記燃焼用空気の流量を調整するのみで、すべてのパイプバーナの出力を一括で調整することができ、簡易な構成ながらも操作性の良い調理器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】実施形態に係るパイプバーナのバーナ軸心での断面図である。
【
図3】実施形態に係るパイプバーナのバーナ軸心方向視で予混合気導入口を視た図である。
【
図4】実施形態に係るパイプバーナの平面図である。
【
図5】実施形態に係る区隔壁を含むパイプバーナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る調理器100は、を元混合方式で混合した予混合気が供給されるパイプバーナ50が設けられるものにおいて、逆火を良好に抑制しながらも、ホットエアを用いてエネルギ効率の向上を図ることができるものに関する。尚、当該実施形態において、図面における各構成要素は必ずしも正確な縮尺で記載されているものではないものとする。
以下、実施形態に係る調理器100について図面に基づいて説明する。
【0022】
本発明の実施形態に係る調理器100は、
図1に示すように、燃焼用空気Aと燃料ガスF(例えば、都市ガス13A)との予混合気を内部に通流すると共に、内部から外部へ予混合気を噴射して燃焼火炎を形成する複数の炎孔53を有するパイプバーナ50を備えている。
【0023】
調理器100は、詳細な図示は省略するが、例えば、焼菓子等を加熱可能なオーブンとして構成されている。具体的には、燃焼用空気Aを燃焼用空気通流路L1へ圧送する単一のブロアB(圧送手段の一例)と、当該ブロアBにて圧送された燃焼用空気Aと図示しない燃料供給源から燃料ガス通流路L2を介して導かれた燃料ガスFとを混合した予混合気を予混合気通流路Lへ吐出する単一のベンチュリーミキサBMが設けられている。
ちなみに、燃焼用空気通流路L1には、燃焼用空気Aの流量を調整可能なバタフライ弁BVが設けられていると共に、燃料ガス通流路L2には、燃料ガス通流路L2を開閉する開閉弁EVと燃料ガスFの供給圧の変動を吸収し供給圧を大気圧に等しいガス圧に調整するゼロガバナZVが設けられている。当該ゼロガバナZVを設けることにより、ベンチュリーミキサBMにて混合される燃焼用空気Aと燃料ガスFとの混合比率を大凡一定に保っている。
予混合気通流路Lは、複数の予混合気分配路Laに分岐して連通接続されており、複数の予混合気分配路Laは、一の予混合気分配路Laが一のパイプバーナ50に対応する形で、パイプバーナ50に連通接続されている。
【0024】
更に、複数のパイプバーナ50は燃焼室NRの内部に設けられ、複数のパイプバーナ50の夫々に設けられる複数の炎孔53から噴出された予混合気はイグナイタ(図示せず)にて点火され燃焼火炎が形成され、燃焼室NRの内部に燃焼排ガスEが排出される。
当該実施形態に係る調理器100(熱源機の一例)では、燃焼排ガスEを通流する燃焼排ガス通流路L3が設けられており、当該燃焼排ガス通流路L3を通流する燃焼排ガスE(熱媒の一例)と、燃焼用空気通流路L1の少なくともベンチュリーミキサBMの上流側を通流する燃焼用空気Aとを熱交換させる熱交換器HEが設けられており、当該熱交換器HEにより、燃焼用空気Aを100℃程度にまで予熱可能となっている。
尚、当該実施形態においては、上述の熱交換器HEは、燃焼用空気通流路L1のうちブロアBとバタフライ弁BVとの間に設けられている。
【0025】
更に、制御基盤等のハードウェアとソフトウエアからなる制御装置Sが設けられており、図示しない操作部からの操作により、制御装置Sから、ブロアBへの回転数制御指令、バタフライ弁BVへの開度制御指令、パイプバーナ50のイグナイタ(図示せず)への点火指令がなされて調理器100の運転が制御される。
【0026】
以上の構成により、制御装置Sは、単一のブロアBの回転数及びバタフライ弁BVの開度の少なくとも何れか一方を制御することにより、複数のパイプバーナ50の出力を一括で制御できる。
【0027】
さて、これまで説明してきた構成によれば、予混合気をパイプバーナ50へ導くことで、簡易な構成を維持しながらも出力を一括制御できるが、熱交換器HEにて燃焼排ガスEとの熱交換により予熱された燃焼用空気Aと燃料ガスFとを元混合方式にて混合した予混合気をパイプバーナ50へ導くが故に、逆火が生じる虞が高くなる。
以下では、これらの課題を解決するためのパイプバーナ50の構成、及び制御について説明を追加する。
【0028】
〔パイプバーナ〕
パイプバーナ50は、
図2、3に示すように、その筐体を構成する構成部品として、長手方向(
図2、3で矢印Xに沿う方向)に沿って伸びる長尺状の角筒形状のバーナ本体51と、当該バーナ本体51の長手方向での基端に設けられる第1フランジ部F1に対してボルトNにより固定される基端側端部部材ET1と、バーナ本体51の長手方向での先端に設けられる第2フランジ部F2に対してボルトNにより固定されて先端側を閉塞する先端側端部部材ET2とを備えている。ここで、基端側端部部材ET1には、上述の予混合気分配路Laが連通接続する予混合気流入端54が設けられている。
【0029】
バーナ本体51は、長手方向に直交する断面(矢印Zに沿う断面)が、円形や楕円形ではなく多角形状に構成されており、当該実施形態にあっては、
図3に示すように、大凡、長方形形状を成している。
更に、
図4に示すように、バーナ本体51の外面としての4面のうち、一の外面51aに、複数の炎孔53が、バーナ本体51の長手方向に沿って直線状に配列して設けられている。ちなみに、当該実施形態に係るパイプバーナ50にあっては、長手方向に沿う二本の直線状に複数の炎孔53が、2×60個設けられている。ちなみに、夫々の炎孔53の内径は、2.0mmである。
【0030】
さて、当該実施形態に係るパイプバーナ50では、このように形成された複数の炎孔53から噴射された予混合気がイグナイタ(図示せず)にて点火されることにより、燃焼火炎が形成されるが、パイプバーナ50の内部には、熱交換器HEにて燃焼排ガスEとの熱交換により予熱された燃焼用空気Aと燃料ガスFとを元混合方式にて混合した予混合気が通流しているため、逆火の虞がある。
そこで、当該実施形態に係るパイプバーナ50にあっては、制御装置Sが、複数の炎孔53の炎孔負荷を7.2kcal/mm
2h以上の設定炎孔負荷となるようブロアBの回転数及びバタフライ弁BVの開度等を制御する。これにより、各炎孔53における予混合気の噴出速度が一定以上に保たれることになり、バーナ本体51の外部で形成される燃焼火炎が、内部へ伝搬する逆火を効果的に防止できる。
尚、当該実施形態における炎孔53は、
図3に示すように、炎孔53の孔径L5を、炎孔53が形成されるバーナ本体51のパイプ肉厚である炎孔深さL4で除算した値である孔径深さ比率が1以下に設定されている。これにより、炎孔53からの予混合気の噴出速度を高い値に保ち易くしている。
【0031】
一方で、炎孔負荷が高すぎると、夫々の炎孔53からの予混合気の噴出速度が高くなりすぎて、炎孔53にて形成される燃焼火炎にリフト量が大きくなり、立ち消えが生じる虞がある。そこで、設定炎孔負荷は、14kcal/mm2h以下となるよう制御される。
ここで、任意のパイプ形状において、設定炎孔負荷は、空燃比を所定の値に設定した状態で、予混合気流量を任意の値に設定することで実現できる。
【0032】
そして、一般的なパイプバーナでは、パイプ肉厚が所定範囲内に収まるため、孔径深さ比率を1以下とすることで、炎孔53の上限が決定され、当該構成において設定炎孔負荷を上述の如く設定することにより、逆火を良好に抑制しながらも火炎の立ち消えを抑制できるパイプバーナ50を実現できることになる。
【0033】
更に、バーナ本体51には、
図3、4に示すように、炎孔53から噴出される予混合気の噴出方向視(
図3、4で矢印Zの先端から基端へ向けた方向視)で、複数の炎孔53の直線状の配列方向に沿う一対の壁を含むパイプバーナ50の外面に周囲壁52が形成されている。
説明を追加すると、周囲壁52としての一対の壁のうち一方は、二本の直線状に形成された炎孔列の間を除いて一方の炎孔列に沿って設けられ、周囲壁52としての一対の壁のうち多方は、配列方向で二本の直線状に形成された複数の炎孔53に対して、二本の直線状に形成された炎孔列の間を除いて多方の炎孔列に沿って設けられる。
更に、当該周囲壁52は、
図4に示す平面視で、矩形状で且つその内部に複数の炎孔53のすべてが位置する形で設けられている。これにより、隣接する炎孔53の火移りを許容するものとなる。また、当該周囲壁52は、平面視において、各炎孔53の近傍において予混合気の噴出方向(燃焼火炎の形成方向)に沿って立設されるため、燃焼火炎の立ち消えを効果的に抑制する効果が期待できる。尚、当該実施形態にあっては、前記周囲壁52の予混合気の噴出方向に沿う高さは、上述した炎孔53の炎孔深さよりも大きく構成されている。
因みに、当該パイプバーナ50の空気比は0.82以上0.92以下に設定することが好ましい。
【0034】
因みに、上述の設定炎孔負荷は、通常オーブンに用いられるリボンバーナの炎孔負荷(ガス種にもよるが例えば、4kcal/mm
2h)よりも高く設定されており、このような高い炎孔負荷を設定する場合、バーナ本体51の熱負荷が高くなり熱により変形する虞がある。
そこで、当該実施形態に係るパイプバーナ50にあっては、バーナ本体51を、長手方向に直交する断面(矢印Zに沿う断面)で、円形や楕円形ではなく多角形状に構成しており、当該実施形態にあっては、
図3に示すように、長方形形状を成している。これにより、高い炎孔負荷による熱変形を抑制している。
【0035】
さて、これまで説明してきたように、パイプバーナ50には、
図2に示すように、その長手方向に沿う形で、予混合気分配路Laから予混合気が流入することになるため、当該予混合気の流れ方向で予混合気の噴出速度が速くなるほど、バーナ本体51の内部において基端側(
図2で矢印Xの先端側)より先端側(
図2で矢印Xの基端側)で圧力が高くなり、バーナ本体51の先端側に設けられる炎孔53にて形成される燃焼火炎の火炎長のほうが、基端側に設けられる炎孔53にて形成される燃焼火炎の火炎長よりも長くなり、パイプバーナ50の長手方向で熱出力が異なる状態になる場合がある。
【0036】
このような状態を改善するべく、当該実施形態に係るパイプバーナ50は、
図2に示すように、バーナ本体51の内部に長手方向に沿って配設される区画壁KWを設けている。
説明を追加すると、区画壁KWは、バーナ本体51の内部を、予混合気を導入する予混合気分配路La(予混合気通流路Lの下位概念)に連通接続する予混合気導入領域Y1と、予混合気分配路Laから予混合気が直接導入されない領域であって且つ複数の炎孔53を介して外部と連通接続する予混合気間接導入領域Y2とを区画する。
当該区画壁KWには、
図5に示すように、予混合気導入領域Y1と予混合気間接導入領域Y2とを連通接続する複数の連通孔KHが、パイプバーナ50の長手方向に沿って分散する形で設けられている。
更に、パイプバーナ50は、パイプバーナ50の長手方向での単位長さあたりでの予混合気導入領域Y1の容積に対する予混合気間接導入領域Y2の容積である導入容積比を調整可能な容積比調整機構Iを備えており、パイプバーナ50の長手方向での単位長さあたりでの予混合気導入領域Y1の容積が、パイプバーナ50の長手方向で予混合気分配路Laから離れるに従って徐々に小さく形成されると共に、パイプバーナ50の長手方向での単位長さあたりでの予混合気間接導入領域Y2の容積が、パイプバーナ50の長手方向で予混合気分配路Laから離れるに従って徐々に大きく形成される。
【0037】
説明を追加すると、容積比調整機構Iは、
図2に示すように、バーナ本体51の基端側にで、予混合気導入領域Y1と予混合気間接導入領域Y2とを貫通する状態でバーナ本体51に固定される第1ボルトBa1と、当該第1ボルトBa1に螺合する一対の第1ナットNa1を備えると共に、バーナ本体51の先端側において、予混合気導入領域Y1と予混合気間接導入領域Y2とを貫通する状態でバーナ本体51に固定される第2ボルトBa2と、当該第2ボルトBa2に螺合する一対の第2ナットNa2を備えて成る。
区画壁KWは、
図5に示すように、その基端部に上記第1ボルトBa1を貫通する第1貫通孔KH1を有すると共に、その先端部に上記第2ボルトBa2を貫通する第2貫通孔KH2を有する。
そして、区画壁KWは、
図2に示すように、第1貫通孔KH1に第1ボルトBa1を貫通し且つ第2貫通孔KH2に第2ボルトBa2を貫通した状態で、その基端部を一対の第1ナットNa1に挟持されその他端部を一対の第2ナットNa2に挟持される。
当該状態において、第1ナットNa1の第1ボルトBa1への螺合位置、及び第2ナットNa2の第2ボルトBa2への螺合位置を調整することで、容積比調整機構Iとして機能することになる。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、バーナ本体51としては、長手方向に直交する断面が、経済性の観点から市場への流通量が多い長方形形状のパイプを例示したが、長方形形状以外の多角形状も好適に採用することができ、例えば、六角形状等の種々の形状のものを採用することができる。
また、一のパイプバーナ50の出力を抑えられる場合であって、熱変形の虞が低いときには、円筒形状のものを採用しても構わない。更に、炎孔53に関し、孔径深さ比率は1を超える構成を採用しても構わない。
【0039】
(2)上記実施形態において、バーナ本体51には、
図3、4に示すように、炎孔53から噴出される予混合気の噴出方向視(
図3、4で矢印Zの先端から基端へ向けた方向視)で、複数の炎孔53の直線状の配列方向に沿って複数の炎孔53の一方側と他方側とを挟む形で周囲壁52が形成されている構成例を示した。
当該周囲壁52は設けない構成を採用しても構わない。また、複数の炎孔53の直線状の配列方向に沿って複数の炎孔53の一方側にのみ設ける構成であっても構わない。
また、炎孔53についても、炎孔数、炎孔列数を任意に設定することができる。
【0040】
(3)上記実施形態では、バーナ本体51の内部を区画壁KWで仕切る構成を例示したが、バーナ本体51への予混合気の流入形態により、パイプバーナ50の長手方向で出力の差を抑制することができる場合等には、区画壁KWは必ずしも設けなくても構わない。
【0041】
(4)本発明の調理器100では、ブロアB及びベンチュリーミキサBMを複数設ける構成についても権利範囲に含むものであり、例えば、パイプバーナ50毎に、ブロアB及びベンチュリーミキサBMを備える構成を採用しても構わない。
【0042】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の調理器は、予混合気が供給されるパイプバーナが設けられるものにおいて、逆火を良好に抑制しながらも、エネルギ効率の向上を図ることができる調理器として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
50 :パイプバーナ
53 :炎孔
100 :調理器
A :燃焼用空気
B :ブロア
BM :ベンチュリーミキサ
Ba1 :第1ボルト
Ba2 :第2ボルト
E :燃焼排ガス
F :燃料ガス
HE :熱交換器
I :容積比調整機構
KH :連通孔
KW :区画壁
L :予混合気通流路
L4 :炎孔深さ
L5 :孔径
La :予混合気分配路
Na1 :第1ナット
Na2 :第2ナット
S :制御装置
Y1 :予混合気導入領域
Y2 :予混合気間接導入領域