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特許7308734防塵樹脂サッシ及び防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法
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  • 特許-防塵樹脂サッシ及び防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法 図1
  • 特許-防塵樹脂サッシ及び防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】防塵樹脂サッシ及び防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/20 20060101AFI20230707BHJP
   B29C 48/07 20190101ALI20230707BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20230707BHJP
   E06B 1/26 20060101ALI20230707BHJP
   B29C 48/18 20190101ALI20230707BHJP
【FI】
E06B3/20
B29C48/07
B29C48/00
E06B1/26
B29C48/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019216932
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085287
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 純
(72)【発明者】
【氏名】新井 こずえ
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-031568(JP,A)
【文献】特開2012-122213(JP,A)
【文献】特開2005-226031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/20
B29C 48/07
B29C 48/00
E06B 1/26
B29C 48/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する第一の樹脂組成物と、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂及び粉砕された導電性樹脂粒子を含有する第二の樹脂組成物との押出成形物であり、
前記第一の樹脂組成物が基層を形成し、前記第二の樹脂組成物が前記基層の一方の面に位置する表層を形成し、
前記表層の表面抵抗率が1012Ω/□以下である、防塵樹脂サッシ。
【請求項2】
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する第一の樹脂組成物と、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂及び導電性樹脂粒子を含有する第二の樹脂組成物との押出成形物であり、
前記導電性樹脂粒子の体積平均粒子径が1000μm以下であり、
前記第一の樹脂組成物が基層を形成し、前記第二の樹脂組成物が前記基層の一方の面に位置する表層を形成し、
前記表層の表面抵抗率が1012Ω/□以下である、防塵樹脂サッシ。
【請求項3】
前記導電性樹脂粒子の最大粒子径が1000μm以下である、請求項2に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項4】
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する第一の樹脂組成物と、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂及び導電性樹脂粒子を含有する第二の樹脂組成物との押出成形物であり、
前記導電性樹脂粒子の添加量が、前記第二の樹脂組成物に含まれる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1.2質量部以上3.0質量部未満であり、
前記第一の樹脂組成物が基層を形成し、前記第二の樹脂組成物が前記基層の一方の面に位置する表層を形成し、
前記表層の表面抵抗率が1012Ω/□以下である、防塵樹脂サッシ。
【請求項5】
前記導電性樹脂粒子の体積平均粒子径が1000μm以下である、請求項4に記載の防塵樹脂サッシ。
【請求項6】
導電性樹脂を含む成形物を粉砕して導電性樹脂粒子を得る粉砕工程と、
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する第一の樹脂組成物と、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂及び前記導電性樹脂粒子を含有する第二の樹脂組成物とを押出成形し、前記第一の樹脂組成物で基層を形成し、前記第二の樹脂組成物で前記基層の一方の面に位置する表層を形成する押出成形工程とを有する、防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、防塵樹脂サッシ及び防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂サッシは、断熱性、防音性、耐衝撃性等を良好に確保するため、一般に硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を押出成形して製造される。
しかし、樹脂サッシは帯電しやすく、表面に塵埃が付着しやすいという問題を有する。
【0003】
こうした問題に対し、例えば、特許文献1には、共押出によって基層と表層の2層構造とし、表層に特定の導電性物質を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂に特定量分散させた防塵樹脂サッシが提案されている。特許文献1の防塵樹脂サッシでは、表層の表面抵抗値を特定の値にすることにより、優れた防塵性の確保が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5629153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の防塵樹脂サッシの防塵性をより高めるためには、導電性物質をより多く分散させる必要がある。
しかしながら、導電性物質をより多く分散させると、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を押出しにくくなり、成形金型のわずかな隙間や傷に導電性物質を含む樹脂組成物が滞留あるいは付着しやすくなる。成形金型の滞留物や付着物によって防塵樹脂サッシの外観が悪化する原因ともなり得る。このため、成形金型の頻繁な清掃が必要となり、生産性の低下を招く。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、防塵性に優れ、生産性を高められる防塵樹脂サッシ及び防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る防塵樹脂サッシは、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する第一の樹脂組成物と、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂及び粉砕された導電性樹脂粒子を含有する第二の樹脂組成物との押出成形物であり、前記第一の樹脂組成物が基層を形成し、前記第二の樹脂組成物が前記基層の一方の面に位置する表層を形成し、前記表層の表面抵抗率が1012Ω/□以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】防塵樹脂サッシの基層と表層の一例を示す断面図である。
図2】防塵樹脂サッシ用の押出成形機の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1に示す防塵樹脂サッシ1は、基層10と、基層10の一方の面に位置する表層20とを有する押出成形物である。
【0010】
防塵樹脂サッシ1の厚さTは、特に限定されないが、例えば、1.5mm以上2.0mm以下が好ましい。防塵樹脂サッシ1の厚さTは、例えば、ノギス等を用いて測定できる。
【0011】
基層10の厚さT10は、特に限定されないが、例えば、1.9mm以上1.95mm以下が好ましい。基層10の厚さT10は、例えば、ノギス等を用いて測定できる。
【0012】
表層20の厚さT20は、特に限定されないが、例えば、0.05mm以上0.5mm以下が好ましく、0.1mm以上0.4mm以下がより好ましく、0.15mm以上0.3mm以下がさらに好ましい。表層20の厚さT20が上記下限値以上であると、表面抵抗率を低減しやすい。このため、防塵樹脂サッシ1の防塵性をより高めやすい。表層20の厚さT20が上記上限値以下であると、原料の使用量を低減でき、コストを低減しやすい。表層20の厚さT20は、例えば、防塵樹脂サッシ1を厚さ方向に切断し、その切断面をマイクロスコープ等で観察することにより測定できる。
【0013】
防塵樹脂サッシ1としては、例えば、JIS A5558:2010「無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材」に準拠する樹脂サッシが挙げられる。
【0014】
基層10は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を含有する第一の樹脂組成物で形成される。硬質ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。硬質ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方を意味する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸のいずれか一方を意味する。
【0016】
前記塩化ビニルモノマーをグラフト共重合する重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらの重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
第一の樹脂組成物は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。硬質ポリ塩化ビニル系樹脂以外の他の樹脂としては、上述した他のモノマーのポリマーが挙げられる。基層10において、第一の樹脂組成物の総質量に対する硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の添加量は、70質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0018】
第一の樹脂組成物は、樹脂以外の添加剤を含有してもよい。樹脂以外の添加剤としては、例えば、着色剤、難燃剤、安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記添加剤の添加量は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0質量部でもよい。
第一の樹脂組成物において、樹脂と添加剤との合計量は、100質量%を超えない。
【0020】
表層20は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂及び粉砕された導電性樹脂粒子を含有する第二の樹脂組成物で形成される。
【0021】
第二の樹脂組成物に含まれる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂は、第一の樹脂組成物に含まれる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂と同様である。
【0022】
第二の樹脂組成物に含まれる導電性樹脂粒子は、導電性樹脂を含む成形物を粉砕してなる。導電性樹脂を含む成形物としては、導電性樹脂を含むペレット等の固体が挙げられる。導電性樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコールを含有する高分子固体電解質、4級アンモニウム塩を含有する高分子固体電解質、スルホン酸を含有する高分子固体電解質等が挙げられる。
【0023】
導電性樹脂粒子の体積平均粒子径は、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましく、240μm以下が特に好ましい。導電性樹脂粒子の体積平均粒子径が上記上限値以下であると、導電性樹脂粒子が第二の樹脂組成物中で分散されやすく、表層20の表面抵抗率を低減しやすい。これは、導電性樹脂粒子を第二の樹脂組成物中に分散配置することで、表層20に導電性樹脂粒子のネットワークによる導電回路を形成して、帯電性を防止できることによるものと考えられる。加えて、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径が上記上限値以下であると、導電性樹脂粒子の添加量を少なくできる。導電性樹脂粒子の体積平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば、50μmである。
本明細書において、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径は、ふるい分け法によって測定されるメジアン径(D50)である。ふるい分け法としては、例えば、ロータップ式自動ふるい器を用いた測定法、エアジェットシーブ(減圧吸引型ふるい分け機)を用いた測定法が挙げられる。ふるい分け法に用いられるふるいとしては、例えば、JIS Z8801-1:2019「試験用ふるい-第1部:金属製網ふるい」に規定されるふるいが挙げられる。
導電性樹脂粒子の体積平均粒子径は、後述する粉砕工程での粉砕条件及びふるいの目開きの大きさによって調整できる。
【0024】
導電性樹脂粒子の最大粒子径は、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。導電性樹脂粒子の最大粒子径が上記上限値以下であると、導電性樹脂粒子が第二の樹脂組成物中で分散されやすく、表層20の表面抵抗率を低減しやすい。導電性樹脂粒子の最大粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば、150μmである。
導電性樹脂粒子の最大粒子径は、ふるい分け法によって測定できる。
導電性樹脂粒子の最大粒子径は、後述する粉砕工程での粉砕条件及びふるいの目開きの大きさによって調整できる。
【0025】
導電性樹脂粒子の添加量は、第二の樹脂組成物に含まれる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1.2質量部以上3.0質量部未満が好ましく、1.6質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。導電性樹脂粒子の添加量が上記下限値以上であると、表層20の表面抵抗率を低減しやすい。このため、防塵樹脂サッシ1の防塵性をより高めやすい。導電性樹脂粒子の添加量が上記上限値未満であると、第二の樹脂組成物を押出やすくなり、成形金型が汚れることを抑制しやすい。このため、導電性樹脂粒子の添加量が上記上限値未満であると、導電性樹脂粒子の分散性が向上し、防塵樹脂サッシ1の生産性をより高めやすい。加えて、導電性樹脂粒子の添加量が上記上限値未満であると、原料の使用量を低減でき、コストを低減しやすい。
【0026】
第二の樹脂組成物は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂以外の他の樹脂を含有してもよい。硬質ポリ塩化ビニル系樹脂以外の他の樹脂としては、上述した他のモノマーのポリマーが挙げられる。表層20において、第二の樹脂組成物の総質量に対する硬質ポリ塩化ビニル系樹脂の添加量は、70質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0027】
第二の樹脂組成物は、樹脂及び導電性樹脂粒子以外の任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、着色剤、難燃剤、安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの任意成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
任意成分の添加量は、第二の樹脂組成物に含まれる硬質ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、0質量部でもよい。
第二の樹脂組成物において、樹脂と導電性樹脂粒子と任意成分との合計量は、100質量%を超えない。
【0029】
表層20の表面抵抗率は1012Ω/□以下であり、1011Ω/□以下が好ましく、1010Ω/□以下がより好ましい。表層20の表面抵抗率が上記上限値以下であると、塵埃の付着を抑制でき、防塵性により優れる。表層20の表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、例えば、10Ω/□である。
表層20の表面抵抗率は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」の「5.13 抵抗率」の記載に準拠して測定できる。
【0030】
表層20の表面抵抗率は、導電性樹脂粒子の種類、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径、導電性樹脂粒子の添加量、及びそれらの組み合わせによって制御できる。
【0031】
防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法は、粉砕工程と押出成形工程とを有する。
粉砕工程は、導電性樹脂を含む成形物を粉砕して導電性樹脂粒子を得る工程である。導電性樹脂を含む成形物を粉砕する方法は特に限定されず、公知の粉砕機を用いて粉砕できる。公知の粉砕機としては、例えば、ハンマーミル等のハンマー式衝撃粉砕機、乾式微粉砕機、シリンダー粉砕機、ローラー粉砕機等が挙げられる。
本明細書において、「粉砕された導電性樹脂粒子」とは、粉砕工程を経て、体積平均粒子径が1000μm以下となった導電性樹脂粒子を意味する。
【0032】
粉砕工程では、表層の表面抵抗率が所望の値となるように導電性樹脂を含む成形物を粉砕する。表層の表面抵抗率は1012Ω/□以下であり、1011Ω/□以下が好ましく、1010Ω/□以下がより好ましい。表層の表面抵抗率が上記上限値以下であると、塵埃の付着を抑制でき、防塵性により優れる。表層の表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、例えば、10Ω/□である。
表層の表面抵抗率は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」の「5.13 抵抗率」の記載に準拠して測定できる。
【0033】
粉砕工程で得られる導電性樹脂粒子の体積平均粒子径は、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましく、240μm以下が特に好ましい。導電性樹脂粒子の体積平均粒子径が上記上限値以下であると、導電性樹脂粒子が第二の樹脂組成物中で分散されやすく、表層の表面抵抗率を低減しやすい。加えて、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径が上記上限値以下であると、導電性樹脂粒子の添加量を少なくできる。導電性樹脂粒子の体積平均粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば、50μmである。
導電性樹脂粒子の体積平均粒子径は、ふるい分け法によって測定できる。
【0034】
粉砕工程で得られる導電性樹脂粒子の最大粒子径は、1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。導電性樹脂粒子の最大粒子径が上記上限値以下であると、導電性樹脂粒子が第二の樹脂組成物中で分散されやすく、表層の表面抵抗率を低減しやすい。導電性樹脂粒子の最大粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば、150μmである。
導電性樹脂粒子の最大粒子径は、ふるい分け法によって測定できる。
【0035】
粉砕工程での粉砕条件としては、粉砕する時間、粉砕する導電性樹脂を含む成形物の質量、粉砕するときの温度、粉砕するときの湿度、粉砕に用いる容器の形状、粉砕に用いる容器の大きさ、粉砕に用いる粉砕機の種類等が挙げられる。粉砕条件は、表層の表面抵抗率が所望の値となるように適宜設定できる。
【0036】
押出成形工程は、第一の樹脂組成物と第二の樹脂組成物とを押出成形し、第一の樹脂組成物で基層を形成し、第二の樹脂組成物で基層の一方の面に位置する表層を形成する工程である。生産性をより高める観点から、基層と表層とは、共押出によって成形されることが好ましい。
【0037】
第一の樹脂組成物を押出成形することによって基層が得られる。
第一の樹脂組成物は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂と、必要に応じて添加剤とをヒートミキサー等を用いて混合することにより得られる(第一の混合工程)。第一の樹脂組成物は粉状でもよく、ペレット状でもよい。第一の樹脂組成物は、取扱い性に優れることから、ペレット状が好ましい。
【0038】
第二の樹脂組成物を押出成形することによって表層が得られる。
第二の樹脂組成物は、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂と、粉砕された導電性樹脂粒子と、必要に応じて任意成分とをヒートミキサー等を用いて混合することにより得られる(第二の混合工程)。第二の樹脂組成物は粉状でもよく、ペレット状でもよい。第二の樹脂組成物は、取扱い性に優れることから、ペレット状が好ましい。
【0039】
防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法を図2に基づいて説明する。図2は、防塵樹脂サッシ用の押出成形機の一例を示す側面図である。図2に示すように、押出成形機100は、基層押出機110と、ホッパー112と、表層押出機120と、ホッパー122と、ダイス130と、冷却機140とを有する。
【0040】
まず、第一の樹脂組成物をホッパー112に投入し、基層押出機110にて160℃以上180℃以下に加熱し、第一の溶融物を得る。第一の溶融物は、基層押出機110によって押出される。
【0041】
第一の溶融物を得るのと並行して、第二の樹脂組成物をホッパー122に投入し、表層押出機120にて加熱し、第二の溶融物を得る。第二の樹脂組成物を加熱する際の温度は、120℃以上180℃以下が好ましく、140℃以上160℃以下がより好ましい。第二の樹脂組成物を加熱する際の温度が上記下限値以上であると、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂と粉砕された導電性樹脂粒子とを充分に混練できる。第二の樹脂組成物を加熱する際の温度が上記上限値以下であると、粉砕された導電性樹脂粒子が変質して表面抵抗率が上昇することを抑制しやすい。第二の溶融物は、表層押出機120によって押出される。
【0042】
押出された第一の溶融物と第二の溶融物とは、ダイス130を通過し共押出され、一体となり、図示省略の引取機によって冷却機140を通過して、押出成形物3が得られる(押出成形工程)。押出成形物3は、任意の長さに切断され、基層10の一方の面に位置する表層20を有する防塵樹脂サッシ1が得られる。冷却機140における冷却温度は、例えば、0℃以上30℃以下が好ましく、5℃以上15℃以下がより好ましい。冷却温度が上記下限値以上であると、冷却に要するエネルギーを軽減しやすい。冷却温度が上記上限値以下であると、基層10及び表層20を充分に冷却できる。
【0043】
本実施形態の防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法によれば、粉砕工程を有するため、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径を小さくできる。このため、導電性樹脂粒子が第二の樹脂組成物中で高度に分散され、表層の表面抵抗率を低減できる。その結果、防塵性に優れる樹脂サッシが得られる。
加えて、本実施形態の防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法によれば、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径を小さくできるため、導電性樹脂粒子の添加量を低減できる。このため、第二の樹脂組成物の粘度を低減でき、第二の樹脂組成物を押出やすくできる。その結果、押出成形物の生産性をより高められる。
さらに、本実施形態の防塵樹脂サッシ用の押出成形物の製造方法によれば、導電性樹脂粒子の体積平均粒子径を小さくできるため、導電性樹脂粒子の添加量を低減できる。このため、押出成形機の成形金型が汚れることを抑制しやすい。その結果、成形金型の頻繁な清掃が不要となり、押出成形物の生産性をより高められる。
【0044】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態では、第二の樹脂組成物は粉砕された導電性樹脂粒子を含有するが、導電性樹脂粒子は必ずしも粉砕されている必要はなく、防塵樹脂サッシの表層の表面抵抗率が1012Ω/□以下であればよい。粉砕されていない導電性樹脂粒子としては、例えば、体積平均粒子径が1000μm以下の導電性樹脂粒子が挙げられる。体積平均粒子径が1000μm以下の導電性樹脂粒子は、市販品を購入することによって得てもよい。
【実施例
【0045】
次に、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0046】
導電性樹脂として、ポリエチレングリコールを含有するポリエーテル系の高分子剤(体積平均粒子径3500μmのペレット)を以下の条件でハンマー式衝撃粉砕機を用いて粉砕した。
・条件I:粉砕工程なし。
・条件II:粉砕工程あり。上記の高分子剤100gを10分間粉砕。
・条件III:粉砕工程あり。上記の高分子剤100gを10分間粉砕し、16メッシュ(Me)のふるいにて分級。
・条件VI:粉砕工程あり。上記の高分子剤100gを10分間粉砕し、30メッシュ(Me)のふるいにて分級。
【0047】
上記の各条件で粉砕された導電性樹脂粒子の体積平均粒子径及び粒度分布を、エアジェットシーブを用いたふるい分け法によって測定した。測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
[実験例1~28]
硬質ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする第一の樹脂組成物と、硬質ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、上記の各条件で粉砕した導電性樹脂粒子を表2に示す添加量で配合した第二の樹脂組成物とを共押出成形して、基層と表層とを有する防塵樹脂サッシを得た。基層の厚さは1.5mmであった。表層の厚さは0.2mmであった。共押出成形する際の表層の成形温度は、150℃とした。得られた各例の防塵樹脂サッシについて、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」の「5.13 抵抗率」の記載に準拠して表面抵抗率を測定した。測定器は、株式会社三菱ケミカルアナリテック製のハイレスタ(登録商標)UXを用いた。
【0050】
各例の防塵樹脂サッシについて、下記評価基準に基づいて防塵性を評価した。結果を表2に示す。
《評価基準》
A:表面抵抗率1011Ω/□以下。
B:表面抵抗率1011Ω/□超1012Ω/□以下。
C:表面抵抗率1012Ω/□超。
【0051】
各例の防塵樹脂サッシについて、表層の表面の外観を目視で確認して、下記評価基準に基づいて生産性を評価した。結果を表2に示す。
《評価基準》
A:表層の表面に変色や汚れが見られない。
B:表層の表面に若干の変色が認められる。
C:表層の表面に変色及び汚れが認められる。
【0052】
【表2】
【0053】
実験例10~12、17~19、24~26は実施例であり、残りの実験例は比較例である。表2に示すように、粉砕された導電性樹脂粒子を硬質ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、1.5~2.0質量部含有する実験例10~12、17~19、24~26は、防塵性が「A」又は「B」で、生産性が「A」又は「B」だった。粉砕された導電性樹脂粒子を含有しない実験例1~7、粉砕された導電性樹脂粒子の添加量が1.0質量部以下3.0質量部以上の実験例8、9、13~16、20~23、27、28は、防塵性又は生産性が「C」だった。
【0054】
本開示の防塵樹脂サッシによれば、防塵性に優れ、生産性を高められることが分かった。
【符号の説明】
【0055】
1 防塵樹脂サッシ
3 押出成形物
10 基層
20 表層
100 押出成形機
110 基層押出機
112,122 ホッパー
120 表層押出機
130 ダイス
140 冷却機
図1
図2