(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】空調用分岐チャンバー
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F13/02 A
F24F13/02 H
F24F13/02 F
(21)【出願番号】P 2019222000
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】村田 孝友
(72)【発明者】
【氏名】京井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】望月 勇佑
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-337690(JP,A)
【文献】特開2006-057967(JP,A)
【文献】国際公開第2011/021574(WO,A1)
【文献】特開2013-100928(JP,A)
【文献】登録実用新案第3029474(JP,U)
【文献】特開2007-147185(JP,A)
【文献】実開平05-083587(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機からの空気を分流させる空調用分岐チャンバーであって、
発泡樹脂からなる断熱材を含み、基端部から先端部へ向かって幅が小さくなるよう形成され、側面にダクト接続口が設けられたチャンバー本体と、
前記基端部に設けられて前記空調機と接続される金属製の接続口部材と、
前記基端部と前記先端部を結ぶように、前記チャンバー本体の上面及び下面の少なくとも一方の面に沿って延びる金属製の帯板状の補強部材と、
垂下された1本の吊材との連結部を有して、前記先端部における前記補強部材から突出された吊金具と、
を備えたことを特徴とする空調用分岐チャンバー。
【請求項2】
前記補強部材が、前記チャンバー本体の上面に被さる上帯板部と、前記チャンバー本体の下面に被さる下帯板部と、前記チャンバー本体の先端面に被さる先端帯板部を有し、前記上帯板部と前記下帯板部とが前記先端帯板部を介して連なっており、
前記基端部において前記上帯板部及び下帯板部が前記接続口部材と接合されていることを特徴とする請求項1に記載の空調用分岐チャンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機からの空気を分流させる空調用分岐チャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルなどの建物の空調設備においては、空調機で空調された空気を分岐チャンバーで複数のダクトに分流させて、各空調エリアへ送っている(特許文献1など参照)。 例えば、特許文献1の分岐チャンバーは、長い箱型に形成され、側面に複数のダクト接続口が設けられている。長さ方向の先端側部分の幅が漸次小さくなった分岐チャンバーも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-183940号公報(
図1、
図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、この種の分岐チャンバーは、天井から垂下された棒状の吊材の下端部に連結されて吊支持されている。箱型の分岐チャンバーにおいては、吊材を複数本設けて、これら複数の吊材によって支持させる必要があり、設置施工に手間がかかる。
本発明は、かかる事情に鑑み、簡易に設置でき、施工が容易な構造の空調用分岐チャンバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、空調機からの空気を分流させる空調用分岐チャンバーであって、
発泡樹脂からなる断熱材を含み、基端部から先端部へ向かって幅が小さくなるよう形成され、側面にダクト接続口が設けられたチャンバー本体と、
前記基端部に設けられて前記空調機と接続される金属製の接続口部材と、
前記基端部と前記先端部を結ぶように、前記チャンバー本体の上面及び下面の少なくとも一方の面に沿って延びる金属製の帯板状の補強部材と、
垂下された1本の吊材との連結部を有して、前記先端部における前記補強部材から突出された吊金具と、
を備えたことを特徴とする。
【0006】
当該空調用分岐チャンバーによれば、基端部を空調機に支持させることで、空調機から片持ち状に突出された状態となる。該空調用分岐チャンバーの先端部を1本の吊材で支持させる。チャンバー本体の先端側部分の荷重は、補強部材及び吊金具を介して1本の吊材に伝達される。チャンバー本体の先端側部分は幅が小さくなっているため、1本の吊材だけで吊支持するものであっても、安定的に支持できる。必要な吊材の数が1本だけで済むために、吊支持に要する施工時間が、複数本の吊材を用いる必要がある場合の数分の1になる。発泡樹脂を主体とするチャンバー本体は、補強部材によって補強される。
【0007】
前記補強部材が、前記チャンバー本体の上面に被さる上帯板部と、前記チャンバー本体の下面に被さる下帯板部と、前記チャンバー本体の先端面に被さる先端帯板部を有し、前記上帯板部と前記下帯板部とが前記先端帯板部を介して連なっており、前記基端部において前記上帯板部及び下帯板部が前記接続口部材と接合されていることが好ましい。
これによって、接続口部材と補強部材とによって、チャンバー本体を一周するように囲んで保持できる。補強部材の基端部は、接続口部材を介して空調機に連結されて支持され、かつ補強部材の先端部は、吊金具を介して吊材に連結されて支持される。
前記補強部材の幅方向の両縁部には、前記チャンバー本体の外面から突出する縁壁が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空調用分岐チャンバーの設置施工を簡易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る空調用分岐チャンバーを含む空調装置の平面図である。
【
図3】
図3は、前記空調用分岐チャンバーの斜視図である。
【
図4】
図4は、前記空調用分岐チャンバーの吊金具の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態に係る空調用分岐チャンバーを含む空調装置の側面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施形態に係る空調用分岐チャンバーを含む空調装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態
図1~
図4>
図1は、例えばオフィスビルなどの建物の空調装置1を示したものである。
空調装置1は、空調機2と、空調用分岐チャンバー3と、複数のダクト4を備えている。空調機2は、空気を温度調節、湿度調節等して送出口2cから送出する。送出口2cは、例えば横長の四角形の筒状になっている。
【0011】
図1~
図3に示すように、分岐チャンバー3は、空調機2からの空気を分流させるものであり、チャンバー本体10と、接続口部材20と、補強部材30と、吊金具40を備えている。
図2に示すように、チャンバー本体10は、上板11と、下板12と、一対の側板13と、先端部の先端板14を含む。チャンバー本体10における、先端板14とは反対側(
図2において左側)の基端部は開口されている。
図1に示すように、チャンバー本体10は、基端部から先端部へ向かって幅が小さくなるよう、平面視で概略三角形の箱状に形成されている。上板11及び下板12は、概略三角形の板状である。一対の側板13は、先端部へ向かうにしたがって互いに接近するよう、基端部と先端部を結ぶ中心線L3に対して傾斜されている。
図3に示すように、先端板14は、幅狭の四角形になっている。
【0012】
チャンバー本体10の板11,12,13,14は、好ましくは硬質の発泡樹脂からなる断熱材を主材としている。発泡樹脂としては、ポリイソシアヌレートフォームが挙げられるが、これに限定されるものではない。板11~14の厚みはそれぞれ十数mm~数十mmであるが、これに限定されるものではない。詳細な図示は省略するが、前記板11~14を構成する断熱材の表面の全体がアルミシートで覆われている。
【0013】
図3に示すように、一対の側板13には複数(例えば3つ)ダクト接続口15が設けられている。ダクト接続口15は円筒形状に形成され、側板13の外面すなわちチャンバー本体10の側面から突出されている。3つのダクト接続口15が各側板13の長手方向に間隔を置いて並べられている。各側板13のダクト接続口15の数は、
図3においては3つであるが、これに限らず、1つ又は2つでもよく、4つ以上でもよい。
ダクト接続口15の材質は、鋼、鉄、アルミなどの金属であり、例えば亜鉛めっき鋼板が用いられているが、これに限られるものではない
図1に示すように、各ダクト接続口15からダクト4が、対応する空調エリアの吹出口(図示省略)へ延びている。
【0014】
図2に示すように、チャンバー本体10の開口された基端部に接続口部材20が設けられている。接続口部材20の材質は、鋼、鉄、アルミなどの金属であり、例えば亜鉛めっき鋼板が用いられているが、これに限られるものではない。
【0015】
接続口部材20は、横長の段付きの筒形状になっている。詳しくは、接続口部材20は、チャンバー接続筒部21と、機器接続筒部22を一体に有している。チャンバー接続筒部21は、チャンバー本体10の基端部の外周面及び端面で作る角部に被さっている。
【0016】
機器接続筒部22は、チャンバー接続筒部21ひいてはチャンバー本体10から空調機2へ向かって突出されている。機器接続筒部22は、チャンバー接続筒部21よりひと回り小さく、筒部21,22どうしの間に段差23が形成されている。機器接続筒部22が、空調機2の送出口2cの外周に嵌め込まれている。機器接続筒部22の突出端部には鍔部24が形成されている。鍔部24が空調機2にビス止めされている。
これによって、分岐チャンバー3の基端部が空調機2に接続されて支持されている。空調機2が、分岐チャンバー3の基端側部分の荷重を受けている。
【0017】
図1~
図3に示すように、チャンバー本体10の幅方向の中央部の外周には、補強部材30が巻き付くように設けられている。補強部材30の材質は、鋼、鉄、アルミなどの金属であり、例えば亜鉛めっき鋼板が用いられているが、これに限られるものではない。補強部材30によってチャンバー本体10が補強されている。
【0018】
補強部材30は、上帯板部31と、下帯板部32と、先端帯板部33を含み、屈曲された帯板状になっている。上帯板部31及び下帯板部32は、上下に離れて、チャンバー本体10の基端部と先端部を結ぶように平行に延びている。上下の帯板部31,32の先端側の端部どうしが、鉛直をなす先端帯板部33を介して連なっている。
補強部材30は、1枚の帯板の折曲加工によって形成されたものに限らず、複数枚の帯板を溶接やボルトで繋げたものであってもよい。
【0019】
各帯板部31,32,33の幅方向の両縁部が外方へほぼ直角に折り曲げられることで、縁壁34が形成され、各帯板部31,32,33の断面形状がコ字状になっている。縁壁34は、各帯板部31,32,33のほぼ全長にわたって延びている。直角に交差する帯板部31,33及び32,33の縁壁34どうしの間には、これら縁壁34どうしを分離する切り込み35が形成されている。
縁壁34を設けることによって、各帯板部31,32,33の曲げ剛性が高められている。
なお、補強部材30の各帯板部31,32,33は、コ字状の断面形状に限らず、縁壁34が省略された平板状であってもよい。
【0020】
図2に示すように、補強部材30はチャンバー本体10の外面に沿って延びている。上帯板部31は、チャンバー本体10の上面(上板11の外面)に被さっている。下帯板部32は、チャンバー本体10の下面(下板12の外面)に被さっている。先端帯板部33は、チャンバー本体10の先端面(先端板14の外面)に被さっている。
補強部材30とチャンバー本体10に跨ってアルミテープを貼り付けてもよい。補強部材30とチャンバー本体10を接着剤で接着してもよい。縁壁34を省略してもよい。
【0021】
チャンバー本体10の基端部において、補強部材30の両端部が接続口部材20と接合されている。すなわち、上帯板部31の端部が、チャンバー接続筒部21の上板部21aとビス止めされている。下帯板部32の端部が、チャンバー接続筒部21の底板部21bとビス止めされている。これによって、接続口部材20と補強部材30とが、互いに協働して、チャンバー本体10を一周するように囲んで保持している。
【0022】
先端帯板部33(先端部における補強部材)に吊金具40が設けられている。吊金具40は、L字のアングル材によって構成されている。吊金具40材質は、鋼、鉄、アルミなどの金属であり、例えば亜鉛めっき鋼板が用いられているが、これに限られるものではない。
【0023】
図4に示すように、吊金具40は、固定部41と、連結部42を含む。固定部41及び連結部42は、互いに直交している。固定部41が、先端帯板部33に溶接やビス止めによって固定されている。連結部42は、先端帯板部33から先端側へ突出されている。連結部42には、挿通孔43が形成されている。挿通孔43は、チャンバー本体10の幅方向に長い長穴になっている。
【0024】
図2に示すように、天井6から1本の吊材5が垂下されている。吊材5は例えば寸切ボルトなどの棒材によって構成されている。吊材5の下端部が、挿通孔43に挿し入れられ、ナット5bによって連結部42と接続されている。1本の吊材5によって、空調用分岐チャンバー3の先端部が吊支持されている。チャンバー本体10の先端側部分の荷重は、補強部材30及び吊金具40を介して、1本の吊材5によって受けている。
【0025】
空調用分岐チャンバー3を設置する際は、該空調用分岐チャンバー3の接続口部材20を空調機2の送出口2cに嵌め込むことで、空調用分岐チャンバー3の基端部を空調機2に支持させる。これによって、空調用分岐チャンバー3が、空調機2から片持ち状に突出された状態となる。
続いて、天井6から垂下させた1本の吊材5の下端部を吊金具40の挿通孔43に通し、吊材5と吊金具40とを連結する。挿通孔43が長穴であるために、吊材5と吊金具40との位置ずれを吸収できる。これによって、空調用分岐チャンバー3の先端部を1本の吊材5で吊支持させる。空調用分岐チャンバー3は、吊支持される先端部へ向かって幅が小さくなっているため、1本の吊材5だけで吊支持するものであっても、安定的に支持できる。
【0026】
このようにして、空調用分岐チャンバー3の設置施工を簡易に行うことができる。1つの空調用分岐チャンバー3あたりの必要な吊材5の数が1本だけで済む。したがって、吊支持に要する施工時間が、複数本の吊材を用いる必要がある場合の数分の1になる。
【0027】
空調用分岐チャンバー3によれば、発泡樹脂断熱材からなるチャンバー本体10によって断熱性を確保できる。
空調機2からの温調空気は、送出口2cから空調用分岐チャンバー3内に導入され、複数のダクト4に分流される。空調用分岐チャンバー3の内部流路が先端へ向かって狭くなることで、温調空気を複数のダクト4へ出来るだけ均等に分流させることができる。
【0028】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図5)>
図5に示すように、第2実施形態の空調用分岐チャンバー3Bにおいては、補強部材30Bが、上帯板部31及び先端帯板部33で構成され、概略L字状になっている。先端帯板部33の下端部は、基端部側へ折り曲げられることで、下部係止片36を構成している。下部係止片36は、上帯板部31より十分に短い。
チャンバー本体10の先端部が、下部係止片36上に載せられて係止されている。チャンバー本体10の先端側部分の荷重は、下部係止片36を含む補強部材30及び吊金具40を介して、吊材5に伝達される。これによって、チャンバー本体10を安定的に支持できる。
【0029】
<第3実施形態(
図6)>
図6に示すように、第3実施形態の空調用分岐チャンバー3Cにおいては、補強部材30Cが、下帯板部32及び先端帯板部33で構成され、概略L字状になっている。先端帯板部33の上端部は、基端部側へ折り曲げられることで、上部係止片37を構成している。上部係止片37は、下帯板部32より十分に短い。
チャンバー本体10の先端部の上面部が、上部係止片37に係止されている。これによって、チャンバー本体10を安定的に支持できる。
【0030】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、ダクト接続口15の材質は、金属に限らず、樹脂であってもよい。
吊金具41の固定部42が、上帯板部31の先端部又は下帯板部32の先端部に固定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば建物の空調設備に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 空調装置
2 空調機
2c 送出口
3 空調用分岐チャンバー
3B,3C 空調用分岐チャンバー
4 ダクト
5 吊材
10 チャンバー本体
13 側板
14 先端板
15 ダクト接続口
20 接続口部材
30 補強部材
30B,30C 補強部材
31 上帯板部
32 下帯板部
33 先端帯板部
40 吊金具
43 挿通孔