(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】搬送ローラー
(51)【国際特許分類】
B65H 5/06 20060101AFI20230707BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
B65H5/06 B
B65H5/06 C
B65H5/06 F
F16C13/00 A
(21)【出願番号】P 2019546975
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2017073933
(87)【国際公開番号】W WO2018091174
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-09-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-17
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェルディナント・ヴィーナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・グリュスナー
【合議体】
【審判長】有家 秀郎
【審判官】藤本 義仁
【審判官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-295789(JP,A)
【文献】特開平8-102582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
F16C 13/00 - 15/00
H05K 3/02 - 3/08, 3/10 - 3/26, 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(3)を搬送するための水平搬送システム(2)
を含む湿式処理のための処理装置の搬送ローラー(1,1’)であって、前記搬送ローラー(1,1’)は、基本的に中実体ローラーの形状を有し、
前記搬送ローラー(1,1’)は、前記基板(3)との
複数の接触領域および凹部により非均一な接触を提供する改質表面(4)をさらに含み、
前記改質表面(4)が前記基板(3)と接触する
前記複数の接触領域(5,5’,5’’,5’’’)、および前記基板に接触しない、前記
複数の接触領域(5,5’,5’’,5’’’)の間の
前記複数の凹部(6,6’,6’’,6’’’)を含み、
前記改質表面(4)は、前記搬送ローラー(1,1’)によって移送される間、前記基板上の液膜を均一化するために、前記搬送ローラー(1,1’)の接触ラインを挟んだ両側において
凹部(6,6’,6’’,6’’’)における液体または気体を交換し、前記接触ラインは、搬送される前記基板と、前記搬送ローラーの表面との接触点から生じる仮想線を指し、前記改質表面(4)は、基本的に均質な材料から構成され、前記均質な材料は、繊維状材料または発泡体から作られておらず、
前記搬送ローラーは、前記接触領域(5,5’,5’’,5’’’)および前記凹部(6,6’,6’’,6’’’)によって処理液体または気体を保持し、
前記凹部(6,6’,6’’,6’’’)は、前記接触ラインに対して略垂直な前記搬送ローラー(1,1’)の周りを一周する線の形状である、または前記凹部(6,6’,6’’,6’’’)は、前記搬送ローラー(1,1’)
の軸と略平行な線の形状であることを特徴とする、搬送ローラー(1,1’)。
【請求項2】
搬送される前記基板と、前記搬送ローラーの表面との接触点付近の圧力の増加を減少するために、前記搬送ローラーの前記改質表面(4)により、前記搬送ローラーの前記両側の
前記凹部(6,6’,6’’,6’’’)で規定され
た液体または気体が交換される、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項3】
改質表面は凹部を含み、前記搬送ローラー(1,1’)の軸に沿った断面における各凹部(6,6’,6’’,6’’’)の前記表面および前記接触ライン
とで囲まれた面積は、最大5mm
2であり、または前記搬送ローラー(1,1’)の前記軸に垂直の断面における各凹部(6,6’,6’’,6’’’)の前記表面および接触円
(搬送ローラーの軸に垂直な断面において接触体から生じる円)とで囲まれた面積は、最大12mm
2であり、
前記搬送ローラー(1,1’)の軸に沿ったまたは前記搬送ローラー(1,1’)の前記軸に垂直の断面における最大面積を有する凹部
(6,6’,6’’,6’’’)の前記表面および前記接触ラインの間に囲まれた面積の合計面積は、
前記搬送ローラー(1,1’)の軸に沿ったまたは前記搬送ローラー(1,1’)の前記軸に垂直の断面における前記凹部(6,6’,6’’,6’’’)
の前記表面および前記接触ラインの間に囲まれた全面積の合計の少なくとも90%である、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項4】
対応する断面におけ
る前記改質表面(4)の前記
複数の接触領域(5,5’,5’’,5’’’)の少なくとも90%が、前記搬送ローラー(1,1’)の軸に沿った断面において最大1.3cmの長さを有する、または前記搬送ローラー(1,1’)の前記軸に垂直の断面において最大0.8cmの長さを有する、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項5】
前記改質表面(4)が接触ラインを提供し、各
凹部(6,6’,6’’,6’’’)の前記表面および前記接触ラインの間に囲まれた面積は合計で、前記接触ラインの長さに基づき、1m長当たり最大40mm
2である、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項6】
前記改質表面(4)が、接触ラインに沿って1cm毎に、または接触円
(搬送ローラーの軸に垂直な断面において接触体から生じる円)に沿って1cm毎に、少なくとも1つの接触領域(5,5’,5’’,5’’’)を含む、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項7】
前記接触領域(5,5’,5’’,5’’’
)が、最大0.8cmの次の凹部(6,6’,6’’,6’’’)までの距離を提供する、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項8】
隣接する接触領域が最大7mmの距離を有し、かつ
隣接する凹部(6,6’,6’’,6’’’)が最大6mmの距離を有する、請求項1に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項9】
搬送ローラーを含む水平搬送システムであって、少なくとも1つの搬送ローラーが請求項1~8のいずれか一項に記載の搬送ローラー(1,1’)である、水平搬送システム。
【請求項10】
搬送ローラーを含む水平搬送システムであって、少なくとも2つの搬送ローラーが保持ローラー対として配置され、前記少なくとも2つの搬送ローラーのそれぞれが請求項1~8のいずれか一項に記載の搬送ローラー(1,1’)である、水平搬送システム。
【請求項11】
湿式処理のための処理装置であって、請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの搬送ローラー(1,1’)、または搬送ローラーを含む少なくとも1つの水平搬送システムであって、少なくとも1つの搬送ローラーが前記搬送ローラー(1,1’)である、水平搬送システムを含む、処理装置。
【請求項12】
前記搬送ローラー(1,1’)が基板(3)を水平に搬送するために使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【請求項13】
前記搬送ローラー(1,1’)は、乾燥モジュール内に配置される、または乾燥モジュール内で機能する、請求項1~8のいずれか一項に記載の搬送ローラー(1,1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に非常に敏感な基板およびそれらの使用に関して改善された搬送挙動を提供するタイプの搬送ローラーに関する。さらに、本発明は、基板を搬送するための本発明の搬送ローラーを使用してこのような基板を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ローラーは、基板を水平に搬送するための手段として有利に使用されることが当技術分野において知られている。これらは、非常に効率的な搬送方法であるため、非常に便利である。さらに、これらは、通常基板を損傷する可能性があるクランプや他の装置を必要とせずに基板を水平に搬送することを可能にする。このような装置は、例えば、プリント回路基板のような基板を処理装置の異なる処理ゾーンを通して搬送するのに特に有用であることが判明している。しかし、例えばより柔軟性のある新しい種類の基板は新しい問題をもたらす。より柔軟な基板は、例えば、搬送ローラーを通過する間の接着効果に基づいて、少なくともわずかに曲がり、表面に軽微な損傷をもたらすことがありうる。一般的に使用されるような中実体を備える搬送ローラーも、複数のディスクが中心ロッド上に間隔を置いて配置される、中心ロッドを備えるホイール軸も、これに関して適切な結果を提供しなかった。
【0003】
解決すべき特別な問題は、特に敏感な表面を備える新しい種類の基板を処理することである。特に、装置の特定の領域に処理液を保持するための保持ローラー対を備えた水平処理装置でこのような基板を処理することは問題があることが判明した。このような構成は、例えば、典型的な配置における上部ローラーの重量が基板を押し下げると、典型的には基板に対してより高い応力を提供する。現在の基板の中には実質的に損傷を受けないように見えるものもあるが、特に、表面に非常に微細な構造を持つ新世代の基板のテストモデルでは感度が非常に高くなり、処理後に損傷を示す。より繊細な表面を含むこのような種類の基板が現代の製品の必須部分になることが予想される。したがって、このような次世代基板の処理を可能にするために、搬送システムに対する一般的な要求も決定的に高まると予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、基板の処理における将来の課題に対して改善された特性を提供する新しいタイプの搬送ローラーを提供することである。
【0005】
好ましくは、このような搬送ローラーは、理想的には、このような搬送ローラーを備える保持ローラー対を通って基板が搬送される間に、より機能的な基板処理も可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題は、独立請求項および従属請求項ならびに明細書に開示されている本発明によって解決される。さらなる目的およびさらなる利点が以下の説明に含まれるが、本明細書で明示的に述べられていないが、本明細書で論じられた関連からすぐに導出または識別できるさらなる目的は、本発明および本明細書に開示のその実施形態によって解決される。
【0007】
本発明は、基板を搬送するための水平搬送システム用の搬送ローラーに関し、搬送ローラーは、中実体ローラーの形態を実質的に有し、搬送ローラーは、さらに基板との不均一な接触をもたらす改質表面をさらに含み、改質表面は、基板と接触するための接触領域と、基板と接触しない接触領域間の凹部とを含み、改質表面は、搬送ローラーを使用して搬送されながら搬送ローラーの両側で液体または気体交換をもたらすように構成され、改質表面がポリマーまたは金属のような実質的に均質な材料からなり、均質な材料は繊維状材料またはフォームから作られていないことを特徴とする。
【0008】
本発明による「搬送ローラー」という語句は、少なくとも部分的に基板と接触するようになっているローラーを指す。例えば、この用語は、搬送面の上下に配置されたローラーを指し、前記基板を送りながらその基板と接触するようになっている。
【0009】
「改質表面」という語句は、前記接触領域および凹部を有する搬送ローラーの表面を指す。典型的には、前記改質表面は、基板と接触するようになっている搬送ローラーの表面にわたって少なくとも延在する。このような基板は通常、搬送ローラーよりはるかに小さく、複数の搬送経路が可能であるため、単一の基板は通常、搬送ローラーの基板に接触するようになっている表面全体とは接触しない。しかし、このような搬送ローラーが通常の搬送中に基板に接触することを意図しない安全領域をその端部に設けることが好ましいので、このような改質表面が必ずしも搬送ローラーの表面全体を覆う必要はない。改質表面を必要とされる表面領域に制限することは、改質表面がより複雑になる。
【0010】
さらに、本発明は、少なくとも1つの搬送ローラーが本発明の搬送ローラーである搬送ローラーを含む水平搬送システムに関する。
【0011】
さらに、本発明は、化学エッチング、化学洗浄、化学金属堆積または電解金属堆積、特に化学金属堆積または電解金属堆積のような湿式処理のための処理装置に関し、処理装置は、少なくとも1つの本発明の搬送ローラー、または少なくとも1つの本発明の水平搬送システムを含む。
【0012】
さらに、本発明は、本発明の搬送ローラー、本発明の水平搬送システムまたは本発明の処理装置を使用して基板を搬送する工程を含む、基板を処理する方法に関する。
【0013】
さらに、本発明は、基板を水平に搬送するための本発明の搬送ローラーの使用に関する。
【0014】
本発明のより完全な理解のために、添付の図面と併せて考慮される以下の発明の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による本発明の搬送ローラーの概略側面図を示す。
【
図2】
図1に示されるような搬送ローラーを含む本発明の水平搬送システムの概略断面の断面図を示す。
【
図3】
図1に示す搬送ローラーを含む本発明の水平搬送システムの一部の概略斜視側面図を示す。
【
図4】
図1に示す搬送ローラーを含む本発明の水平搬送システムの一部の概略斜視側面図を示す。
【
図5】
図4に示す水平搬送システムの一部を含む本発明の処理装置の一部の概略断面図を示す。
【
図6a】
図1に示す搬送ローラーと同様の本発明の異なる種類の搬送ローラーの改質表面の概略断面の切り取り図である。
【
図6b】
図1に示す搬送ローラーと同様の本発明の異なる種類の搬送ローラーの改質表面の概略断面の切り取り図である。
【
図6c】
図1に示す搬送ローラーと同様の本発明の異なる種類の搬送ローラーの改質表面の概略断面の切り取り図である。
【
図7a】中央部分12およびコーティング材料13を有する本発明の搬送ローラー1’の概略断面図および概略側面図を示す。
【
図7b】中央部分12およびコーティング材料13を有する本発明の搬送ローラー1’の概略断面図および概略側面図を示す。
【
図7c】中央部分12およびコーティング材料13を有する本発明の搬送ローラー1’の概略断面図および概略側面図を示す。
【
図8】本発明の好ましい実施形態の異なる種類の線状凹部の概略側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、基板を搬送するための水平搬送システム用の搬送ローラーに関し、搬送ローラーは、中実体ローラーの形態を実質的に有し、搬送ローラーは、さらに基板との不均一な接触をもたらす改質表面をさらに含み、改質表面は、基板と接触するための接触領域と、基板と接触しない接触領域間の凹部とを含み、改質表面は、搬送ローラーを使用して搬送されながら搬送ローラーの両側で液体または気体交換をもたらすように構成され、改質表面がポリマーまたは金属のような実質的に均質な材料からなり、均質な材料は繊維状材料またはフォームから作られていないことを特徴とする。
【0017】
可能性のある新しい基板の例を試験している間、例えば非常に柔軟な基板は、基板がまだ濡れた状態である限り、最先端のフルボディローラーを使用して実質的に乾いたモジュールを通って運ばれる傾向がある。本明細書では、発生する損傷は、例えば、搬送ローラーへの基板の接着に起因する基板の一時的な変形に基づくと考えられる。搬送ローラーの改質表面の微細構造は、基板に付着した液滴が原因で、基板表面に堆積した液膜を平らにする少量の液体を集めると考えられる。このような液膜が遮られることが危惧される場合、本発明の改質表面の微細構造は、乾燥されている基板の部分を平らにするために搬送ローラーの両側での限られた液体交換を可能にする。このような液膜の均等化は、基板の制御されない動きをもたらす液膜の中断が最小限に抑えられるので、基板にかかる物理的応力を最小限に抑えるように思われる。
【0018】
さらに、本発明の搬送ローラーは、より均質な液膜がより大きな表面積を提供し、したがって、基板に付着する液体の乾燥速度を増大させるので、乾燥モジュールにおいても有益に使用され得る。また、表面に少量の液体しか供給しないようにゆっくりとした気体の流れを基板に向けると、基板を搬送ローラーからやさしく取り外すためのエアクッションが得られる。搬送物に向けられる気体は、結果として生じる圧力が基板を持ち上げるのに十分に高くなるまで閉じ込められないため、基板のばたつきは非常に減少するか、通常は防止さえされると想定される。それどころか、本発明の改質表面の凹部は、連続的な気体流を導きそして可能にするように見える。したがって、例えば、本発明の搬送ローラーは、十分に乾燥されるまで基板の液膜を自動的に均一化するために使用され、その後乾燥モジュールの乾燥効果を高めるために有利に使用される。
【0019】
さらに、基板の繊細な面の場合特に有用である小さな凹部を有する本発明の搬送ローラーは、搬送ローラーの表面に押し付けられる。例えば、液体が基板の搬送方向とは反対側に保持されている場合、搬送ローラーの動きは、例えば
図2に見られるように、基板のボトルネックと搬送ローラーに向かって液体流を前進させる。ここでは、液体の移動と基板と搬送ローラーとの間の間隙の狭小化との組み合わせが、基板と搬送ローラーとの接触点付近の圧力を増加させると仮定される。しかし、圧力が上がると、繊細な基板の微細構造が損傷するようである。本発明の搬送ローラーは、このような局所的な圧力ピークを減少させるために搬送ローラーの両側の規定された小さな液体交換をもたらす。さらに、本明細書に開示されているように多数の小さな接触領域を使用することは、基板を押し下げるこのような保持ローラー対の上部搬送ローラーの重量から生じる圧力の非常に良好な分散をもたらす。
【0020】
本発明で使用される「中実体ローラー」との用語は、ローラーによって搬送される基板の実質的に連続的な接触を提供するローラーを意味する。本明細書では、改質表面を有する、基板と接触するように適合されたこのような固体ローラーの部分は、好ましくは実質的に円筒、好ましくは円柱のような幾何学的本体の形態を有する。好ましくは、中実体ローラーのこのような部分は、改質表面が円筒のような理想的な幾何学的形状から1cm未満、より好ましくは0.5cm未満、さらにより好ましくは0.2cm未満、最も好ましくは0.1cm未満ずれる形態を有し、これらは理想的な幾何学的物体の表面に対して垂直に測定される。本明細書では、このような理想的な幾何学的本体、好ましくは円柱は、改質表面の点からそれ自体の表面までの最短距離を提供するように配置される。
【0021】
本発明による「接触ライン」という用語は、搬送される基板と、このような改質表面を有する前記基板と接触するように適合されている搬送ローラーの表面との接触点から生じる仮想線を指し、接触ラインは、好ましくは直線状またはわずかに湾曲しており、より好ましくは直線状である。搬送ローラーの改質表面が例えば弾性的である場合、接触領域は、改質表面と基板との接触点を表し、基板は本発明の搬送ローラーにより1000g/mの重量で押し下げられる。例えば、適切な重量を有する別の搬送ローラーを使用して基板が押し下げられる。
【0022】
本明細書で使用される「軸」という用語は、搬送ローラーの中央を通る幾何学的中心線を指し、搬送ローラーは、前記軸の周りを回転するようになっている。
【0023】
本発明による「接触体」という用語は、搬送ローラーの接触ライン全体から生じる三次元体を指す。
【0024】
本発明における「接触円」という用語は、搬送ローラーの軸に垂直な断面において接触体から生じる円を指す。
【0025】
本発明による「搬送平面」という用語は、搬送される場合に基板の下面を含む平面を指す。搬送経路に沿って多少の高低差があり、その結果搬送平面の波形が生じる可能性があるため、搬送平面は完全な幾何学的平面ではないかもしれないことを理解しなければならない。
【0026】
改質表面が線状凹部を提供することが典型的には好ましい。本明細書では、このような凹部は、典型的には、改質表面の容易な製造と、搬送ローラーの両側での液体または気体の交換を提供する能力との非常に優れた組み合わせを提供することに留意されたい。様々な形状の線状凹部を使用することができる。線状凹部の好ましい種類は、実質的に直線状、好ましくは直線状の線状凹部である。このような凹部は、特に容易に製造することができ、そして典型的に信頼できる効果を提供する。当然、このような線状凹部が直線状であるか否かを評価するためには、搬送ローラー表面の曲率は無視している。
【0027】
しかし、例えば曲線状の凹部を設けることも好ましい場合がある。このような凹部は、例えば、搬送ローラーの軸に沿った断面における接触ラインの50%未満が接触領域に接触する場合に、改善された効果をもたらすようである。
【0028】
凹部の特定の種類の形状がしばしば有益であることが証明されていることに留意された。本明細書において、凹部は、少なくとも部分的に横方向に配置された線の形状を有することが好ましい。好ましくは、凹部の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも95%が、凹部の中心線および前記凹部と接触する接触体の表面積に基づいて、このような横方向に配置された線の形状を提供する線状凹部である。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、本発明の搬送ローラーは線状凹部を有し、線状凹部は実質的に接触ラインに対して垂直に延びる。特に、改質表面が少なくとも1つの凹部、より好ましくは少なくとも10の凹部、さらにより好ましくは少なくとも30の凹部を含み、前記凹部が線形状を有し、前記線状凹部が接触ラインに実質的に垂直に配置されることが通常好ましい。この文脈において、実質的に垂直とは、接触ラインと線状凹部の中心線との間の角度が80°~100°の範囲内、より好ましくは85°~95°の範囲内であることを意味する。基板と接触するように適合されたこのような表面は、通常、容易に製造される一方で、多くの目的に対して信頼性のある効果を提供する。対応する搬送ローラーは、保持ローラー対に有利に使用されることが特に証明されている。
【0030】
典型的に有利に利用される他の種類の線状凹部は螺旋の形状をとる。ここで、改質表面は、好ましくは少なくとも1つの凹部、より好ましくは少なくとも2つの凹部、さらにより好ましくは少なくとも3つの凹部、最も好ましくは少なくとも7つの凹部を含み、前記凹部は線形状を提供し、線状凹部は、搬送ローラーの周りに1つまたは複数の螺旋を提供する。
【0031】
加えて、改質表面がある程度の対称性を提供することが典型的には好ましい。ここで、前記改質表面は、前記搬送ローラーの軸を基準とした線に対する対称性、前記搬送ローラーの軸を基準とした回転対称性、および搬送ローラーの軸に垂直な平面を基準とした鏡面対称性、搬送ローラーの軸上に位置する点に基づく点対称性、または搬送ローラーの軸に沿った回転と並進の混合に基づく対称性から選択される少なくとも1つの対称性を有することが好ましい。特に、表面が少なくとも回転対称性に基づく対称性、または搬送ローラーの軸に沿った回転と並進の組み合わせに基づく対称性を提供することが好ましい。好ましくは、実際の改質表面は、このような対称操作の結果として理想的な物体からわずかに外れるだけである。例えば、実際の改質表面のどの点も、対応する対称操作から生じる理想的な物体から1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらにより好ましくは0.05mm以上逸脱しない。
【0032】
特定の用途では、改質表面が少なくとも2つの凹部aおよびbを含み、凹部aおよびbが線状であり、線状凹部aおよびbが交差して交点を形成し、線状凹部aおよびbは、交点で角度αを有し、ここでαは60°~120°の範囲から選択され、より好ましくは80°~100°の範囲から選択され、さらにより好ましくは85°~95°の範囲から選択される。典型的には、改質表面は少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも7つ、さらにより好ましくは少なくとも12つのこのような凹部対aおよびbを有することが好ましい。
【0033】
用途によっては、改質表面が線状の少なくとも1つの凹部を有し、それが実質的に接触ラインと平行であることが有益であることが判明した。「接触ラインと実質的に平行」とは、接触ラインからわずかに外れている線を指す。好ましくは、線状凹部の中央と接触ラインとの間の距離は、最大5mm、より好ましくは最大3mm、さらにより好ましくは最大2mmである。
【0034】
さらに、このような線状凹部に対して、またはこのような線状凹部の代わりに、改質表面は、ドットの形態を有する少なくとも50個の凹部、より好ましくは100個の凹部、さらにより好ましくは200個の凹部を含む。ここでは、ドット形状は、搬送ローラーの側面図に基づいている。このような凹部を使用することは、典型的には搬送ローラーの移動中に搬送ローラーの両側で十分な液体または気体交換を提供するという利点を提供する。同時に、搬送ローラーが回転していない場合の液体や気体の交換が少なくなる。したがって、このようなタイプの凹部は、単純な線状凹部よりも通常は労働集約的であるにもかかわらず、特定の用途には有益であることが証明されている。
【0035】
好ましくは、本発明の改質表面は、基板と共に搬送される液体の量を大幅に減らすことができる。例えば、このような本発明の搬送ローラーは、上部搬送ローラーと下部搬送ローラーとを含む保持ローラー対を介して基板に付着する液体を提供し、上部搬送ローラーは、本発明の搬送ローラーであり、下部搬送ローラーは、中実体搬送ローラーであり、液体移送が、搬送時に上部搬送ローラーおよび下部搬送ローラーが中実体搬送ローラーであるアナログ保持ローラー対に付着する液体の13倍未満、より好ましくは10倍未満、さらにより好ましくは4倍未満である。好ましくは、基板は、幅20インチ、長さ24インチである。搬送ローラーが短い場合、基板のサイズは、基板と接触するように適合された改質表面の長さの最大80%、例えば80%である基板の幅を提供するように調整されることが好ましく、基板の比率は維持される。ここで、水は、基板の搬送方向とは反対に保持ローラー対の側面上に保持され、水は基板の搬送平面の上方の前記対上に蓄積される。反対側の基板は、処理装置から直接取り出され、基板に付着している液体の量は計量によって決定される。
【0036】
典型的には、各凹部が表面を提供し、そして断面が各凹部の表面と接触ラインまたは接触円との間に囲まれる領域であることが好ましく、搬送ローラーの軸に沿った断面の面積は、最大で5mm2であり、搬送ローラーの軸に垂直な断面の面積は、最大で12mm2以下、またはその両方であり、より好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面の面積は、最大で3mm2であり、搬送ローラーの軸に垂直な断面の面積は、最大で8mm2、またはその両方であり、さらにより好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面の面積は、最大で2mm2であり、搬送ローラーの軸に垂直な断面の面積は、最大で6mm2、またはその両方であり、最も好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面の面積が最大0.5mm2であり、搬送ローラーの軸に垂直な断面の面積が最大1mm2であるか、またはその両方であり、対応する断面の凹部の全面積の合計の少なくとも90%までを合計する。好ましくは、このような凹部の面積は、対応する断面における凹部の全面積の合計の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%になる。さらに好ましくは、対応する断面のすべての凹部がこのような面積を提供する。ごく少量の非常に大きな凹部を有することは、多くの実施形態に対して、あまり目立たない独創的な効果を典型的に提供することが注目された。例えば、搬送ローラー対の片側に液体を保持する必要がある場合、または搬送ローラー対の両側の液体または気体の交換を減らす必要がある場合である。ここでは、かなりの数の断面が測定される。
【0037】
本発明の搬送ローラーは、搬送ローラーの軸に沿った断面において上述の領域を提供することが一般的に好ましいことに留意されたい。このような凹部は、例えば、本発明の搬送ローラーを含む保持ローラー対を通過する処理液の量を減少させながら、保持ローラー対の両側に良好な圧力低下をもたらすのに特に有用であることが判明した。
【0038】
測定すべきこのような相当数の断面については、典型的には、改質表面から無作為に選択した長さ5cmの断面積を例えば少なくとも10個、例えば10個、好ましくは少なくとも50個、例えば50個測定すれば十分であり、信頼性の高い測定を提供する。ただし、当然ながら、断面の数とテスト対象の基板の長さを増やすことができる。例えば、非常に不規則な改質表面をテストする場合は、統計的に有意な結果が得られるまでより多くの測定を行うことが好ましい。例えば、100以上、例えば100、より好ましくは500以上、例えば500の異なる断面を測定することができる。特に明記しない限り、このようなかなりの数の断面は、特に凹部および接触領域を参照して本明細書に開示される実施形態について測定される。
【0039】
他に特定されない限り、本明細書で使用される「平均」値は、ある数の値の合計をそれらの数で割って計算される値の算術平均を指す(平均値=測定値の合計/測定値の数)。統計的に有意な値を達成するためには、前記値を計算するために少なくとも一定の数の値、例えば少なくとも10、例えば10の値を使用しなければならない。ただし、値の変動が大きい場合は、測定数を、例えば少なくとも50、例えば50、または少なくとも100、例えば100に増やすことができる。
【0040】
さらに、このような接触領域はさらに改善された発明効果を提供するように思われるので、より小さい接触領域を使用することが典型的に有益であることが注目された。したがって、改質表面のほとんどの接触領域は、搬送ローラーの軸に沿った断面において最大0.8cmの長さ、搬送ローラーの軸に垂直な断面において最大1.3cmの長さ、またはその両方、より好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面において最大0.5cmの長さ、搬送ローラーの軸に垂直な断面において最大1.1cmの長さ、またはその両方、さらに好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面において最大0.35cmの長さ、搬送ローラーの軸に垂直な断面において最大0.7cmの長さ、または両方、さらにより好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面において最大0.2cmの長さ、搬送ローラーの軸に垂直な断面において最大0.4cmの長さ、または両方であることが好ましく、接触ラインまたは接触円に沿って測定された長さに基づく。好ましくは、前記長さは、対応する断面における接触領域の数に基づいて、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の接触領域を指す。特定の好ましい実施形態によれば、全ての接触領域がこのような長さを有する。典型的には、基板と接触するように適合された本発明の表面の接触領域が、搬送ローラーの軸に沿った断面において前述の長さを提供することが特に好ましい。
【0041】
典型的には、改質表面が接触体を提供し、各凹部が表面と、搬送ローラーの軸に対して垂直に測定された接触体から最も遠い前記表面の点とを提供し、前記最も遠い点を通る断面において、ほとんどの凹部の各表面と接触体との間に領域が囲まれ、前記断面は可能な限り小さい面積を提供するように選択され、複数の断面がこのような領域を提供する場合には、さらに最小の角度αを提供し、αは、前記断面と搬送ローラーの軸に垂直な平面との間の角度であり、前記領域は、最大で x+|1.2・x・sin(α)|であり、xは、3mm2、好ましくは2.1mm2、より好ましくは1.3mm2である。好ましくは、搬送ローラーの軸に沿った断面、搬送ローラーの軸に垂直な断面、またはその両方、またはより好ましくは搬送ローラーの軸に沿った断面において、搬送ローラーの軸に対して垂直に測定された接触体に対する凹部の表面の距離に基づいて、少なくとも0.005mmの深さ、より好ましくは少なくとも0.03mmの深さを有する凹部の数に基づいて、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の凹部がこのような領域を提供する。例えば、本発明の多くの実施形態にとって、接触ラインの方向に実質的に延びる線状凹部と比較して、実質的に接触ラインに対して垂直に延びる場合に、より小さい線状凹部を提供することが有益であることが注目された。
【0042】
さらに、典型的な用途では、搬送ローラーの両側で液体または気体の交換を可能にするために、最小量の凹部を設けることが好ましいことが注目された。本明細書では、搬送ローラーの軸に沿った断面において、領域は各凹部と接触ラインとの間で囲まれ、該領域は、接触ラインの長さに基づいて、1メートル長当たり少なくとも0.5mm2、より好ましくは1メートル長当たり少なくとも1.2mm2、さらにより好ましくは1メートル長当たり少なくとも2.1mm2、さらにより好ましくは1メートル長当たり少なくとも3.0mm2であることが好ましい。
【0043】
改質表面が接触ラインを提供し、各凹部が表面を提供し、領域が搬送ローラーの軸に沿った断面において各凹部の表面と接触ラインとの間に囲まれることがさらに一般的に好ましく、前記領域は合計で、接触ラインの長さに基づいて、1メートル長当たり最大40mm2、より好ましくは1メートル長当たり最大26mm2、さらにより好ましくは1メートル長当たり最大21mm2である。さらに、接触ラインの長さに基づいて、前記領域は合計で、1メートル長当たり最大16mm2、より好ましくは1メートル長当たり最大12mm2になることが好ましいこともあり得る。このようなタイプのローラーは、保持ローラー対に使用される搬送ローラーに特に有用であることが証明されている。特に上述の最後に言及した搬送ローラーは、例えば、保持ローラー対の側面に液体を保持することができる、または保持ローラー対の両側で2つの液体を分離することができる搬送ローラー対を提供するのに特に有用である。このような搬送ローラーは、過度の液体または気体交換を防止しながら、通常の用途に必要な圧力均等化を効果的に提供する。
【0044】
さらに、非常に深い陥凹を回避することが通常有益であることが注目された。したがって、典型的には、改質表面が接触ラインを提供し、各凹部が表面を提供し、接触ラインと各凹部の表面との間の距離が搬送ローラーの軸に対して垂直に測定して、最大3.0mm、好ましくは最大1.7mm、さらにより好ましくは最大0.9mm、最も好ましくは最大0.5mmであることが好ましい。深すぎる凹部はあまり目立たない独創的な効果をもたらす傾向があると考えられる。これは表面張力によるもので、凹部の深さに液体が吸い込まれているようである。このようなメカニズムは、液体が表面から離れるように吸引され液膜を均一にすることができないため、液膜の中断をより容易にもたらすように思われる。また、このような搬送ローラーは、保持ローラー対の一部として使用されると保持効果が低下し、典型的な実施形態では均圧は改善されないようである。
【0045】
典型的には、より多数の小さい接触領域を提供することがさらに好ましい。本明細書では、改質表面は、接触ラインに沿って1cm毎に、接触円に沿って2cm毎に、またはその両方、好ましくは接触ラインに沿って1cm毎に少なくとも1つの接触領域、より好ましくは少なくとも3つの接触領域、さらにより好ましくは少なくとも4つの接触領域を含む。さらに、前記接触領域は、搬送ローラーの軸に対して垂直に測定して、少なくとも0.005mm、好ましくは少なくとも0.009mm、より好ましくは少なくとも0.03mm、さらにより好ましくは少なくとも0.05mmの断面の深さを有する凹部によって分離されることがしばしば有益である。本明細書では、距離の測定は、好ましくは、改質表面上の第1の凹部から始まって1cmごとに行われる。
【0046】
さらに、接触領域の特定の形状を提供することは典型的にはさらなる改善された有益な効果をもたらすことが注目された。ここでは、接触領域の任意の接触点は、次の凹部までの距離が最大0.8cm、好ましくは最大0.4cm、より好ましくは最大0.25cm、さらにより好ましくは最大0.15cmである。
【0047】
さらに、隣接する接触領域間の距離を短くすることが有用であることが証明されていることがさらに注目された。ここで、隣接する接触領域は、最大で7mm、より好ましくは最大で4.3mm、さらにより好ましくは最大で2.3mmの距離を有することが好ましく、隣接する凹部は、最大6mm、より好ましくは最大4.1mm、さらにより好ましくは最大2.9mmの距離を有する。このような規則正しい構造の改質表面を使用すると、より信頼性の高い効果が得られる。
【0048】
さらに、接触領域と凹部の表面積の合計の比を調整することは典型的には有益であった。ここでは、接触体は、接触領域と接触する表面積と接触領域と接触しない表面積とを提供し、接触領域と接触する表面積と、接触領域と接触しない表面積との比は、50:1~1:50、より好ましくは15:1~1:35、さらにより好ましくは10:1~1:30の範囲である。通常、このような搬送ローラーは、搬送ローラーの上方で基板を搬送するために使用される場合、または上部搬送ローラーが軽量である保持ローラー対に使用される場合に有益な結果をもたらす。しかし、前記比が50:1~1:30、より好ましくは40:1~1:10、さらにより好ましくは30:1~1:1から選択されることがまた好ましい。このような比率は、保持ローラー対で使用される搬送ローラーにとって特に有益と思われる。観察された利益は、重量分布とそれを分散するために利用可能な接触領域に相関すると仮定される。
【0049】
さらに、凹部の特定の量の表面積を提供することが典型的には有益であることが証明されていることが注目された。
本明細書では、接触体は表面積を提供し、前記表面積の一部は接触領域と接触せず、接触領域と接触しない表面積は、接触体の表面積に基づいて、10%~95%、好ましくは30%~80%、より好ましくは35%~70%の範囲である。例えば、保持ローラー対のために本発明の搬送ローラーを利用するような特定の目的のためには、接触領域と接触しない表面積は、2%~50%、より好ましくは3.5%~35%、さらにより好ましくは4%~22%の範囲であることが有益であることが典型的に判明した。
【0050】
さらに、接触ラインに沿って最小量の凹部を設けることが一般的に好ましいことが注目された。本明細書では、接触ラインの最大90%、より好ましくは最大83%、さらにより好ましくは最大75%が、搬送ローラーの軸に沿った断面における接触領域と接触することが好ましい。
【0051】
典型的には、凹部が接触ラインに沿ってそれらの長さの特定の上限を提供することも好ましい。ここでは、接触領域と接触していない接触ラインの部分は、搬送ローラーの軸に沿った断面において、最大1.5mm、より好ましくは最大1.1mm、さらにより好ましくは最大0.8mmの長さを提供することが好ましい。これは、接触ラインに対して実質的に垂直に延びる線状凹部に特に有用である。
【0052】
本発明の改質表面を備える典型的な搬送ローラーは、好ましくは少なくとも0.9m、より好ましくは少なくとも1.4mの全長を有する。
【0053】
「有機ポリマー」との用語は、有機ポリマー材料を指す。前記有機ポリマーは、充填剤、潤滑剤、可塑剤、および当技術分野において公知のさらなる典型的な添加剤を含有することができる。このような添加剤は通常、有機ポリマーの特性に影響を与える。
【0054】
さらに、典型的な用途では、搬送ローラーの全長にわたって本発明の改質表面を設けることは必ずしも必要ではないことが注目された。例えば、搬送ローラーは、基板と接触するように適合されていない端部を含むことが好ましい場合がある。このような改質表面は、機械的応力に対してより敏感であり得、そして例えば、このようなローラーを処理装置から取り出すことは、小さな磨耗、したがって望ましくない微粒子をもたらし得ることに留意されたい。
【0055】
本発明の改質表面は、様々な方法を用いて製造することができる。例えば、改質表面の接触領域および凹部は、化学的方法、電気化学的方法、物理的方法またはそれらの組み合わせを用いて製造することができる。上記のステップのいずれかで、ローラーの表面に材料が堆積するか、またはステップで材料が切除される。形状切断プロセスまたはレーザーアブレーションのような物理的方法を用いて本発明の表面構造を製造することが好ましい。
【0056】
さらに、凹部は、エッチングプロセス、アブレーションプロセス、およびそれらの組み合わせを使用して作製することができる。当業者は、例えばロータリーミルを用いたミリング、またはレーザーアブレーションを含む切断プロセスのような、これに関連して使用されるべき対応するプロセスを知っているだろう。容易に入手可能な装置を使用することができるのでミリングプロセスは有益である。しかし、このようなプロセスは典型的には鋭いエッジを提供するため、典型的には鋭いエッジを除去するためにさらなる処理工程を必要とする。レーザーアブレーションのような他のプロセスは、通常、利用可能性がより低く、より高価な機器を必要とする。しかし、対応して作られた刻み目の縁は、鋭いエッジを典型的には提供せず、後処理をほとんど必要としない。例えば金属表面からのレーザーの反射を防ぐための小さな前準備段階でさえ、鋭いエッジを有する対応する凹部のエッジを丸めるよりもはるかに少ない労力で済む。
【0057】
本発明の改質表面を製造するための他の可能性は、電解または無電解化学めっき法を利用することである。ここでは、例えば、堆積材料を接触領域として使用することができる。
【0058】
さらに、高速プロトタイピングを用いて改質表面を製造することができる。高速プロトタイピングの例は、一種のプリンターを使用する有機ポリマーの3D印刷、あるいは選択的レーザー溶融、選択的レーザー焼結、または特に金属を溶融するためのレーザーまたは電子ビームを使用する電子ビーム溶融のような方法である。
【0059】
加えて、改質表面を提供するために、凹部は、中実体ローラーの実質的に平らな表面を引っ掻いて作り出すことができる。例えば、このような表面の引っ掻き傷は、例えば、サンドブラスト、サンドペーパー、またはその表面にセラミック粒子または工業用ダイヤモンドのような研磨粒子を含む追加のローラーを使用して達成することができる。
【0060】
本明細書において、本発明の接触領域は、鋭いエッジを提供しないことが典型的には好ましい。このような接触領域を提供する搬送ローラーは、特に非常に柔軟な基板の損傷をさらに減らすことができる。
【0061】
例えば上記の方法によって生成された接触領域の鋭いエッジは、その後、当業者に知られている方法を使用して丸くすることができる。例えば、金属表面にはエッチングプロセス、典型的な有機ポリマー表面には溶融プロセスを使用することができる。
【0062】
本明細書で使用されるさらなる種類の搬送ローラーは、コア領域およびその上のコーティングを含む。ここで、搬送ローラーは、搬送ローラーの中央部分を提供するコア材料と、改質表面を提供するコーティング材料とを提供することが典型的には好ましく、コア材料とコーティング材料は異なる。
【0063】
さらに、改質表面に対して実質的に均質な材料を提供する搬送ローラーは、長期間にわたってより良い結果を提供した。しかし、例えば金属表面または有機ポリマー表面を使用すると、例えば凹部が前記表面に引っかかれるか、または材料がいくつかの異なる方法を使用して切除されると、より長い寿命を有する搬送ローラーが典型的に提供される。ここでは、改質表面は、ポリマーまたは金属、好ましくはポリマーのような実質的に均質な材料からなる。このような場合の材料は、特に繊維素材や発泡体で作られない。好ましくは、改質表面の材料の最上部の1mm、より好ましくは最上部の2mmは、搬送ローラーの軸に沿った断面において1体積%未満、好ましくは0.5体積%未満の閉キャビティを提供し、ここで、距離は接触ラインから測定される。このような要件はまた、改質表面を提供する本発明の搬送ローラーのコーティングに関する。
【0064】
本発明の改質表面を提供するために様々な材料を使用することができる。例えば、前記材料は、金属、有機ポリマー、またはそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。有機ポリマーは、一般的に容易に改質され、高い耐薬品性を提供するため、多くの用途に特に有用であることが証明されている。
【0065】
好ましくは、搬送ローラーは、搬送ローラーの総重量に基づき、実質的に、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%の金属、有機ポリマーまたはそれらの組み合わせからなる。搬送ローラーの総重量は、可逆的に取り付けられている部品を除いた搬送ローラーの重量に基づいている。例えば、搬送ローラーにしっかりと接続されていない軸受の部品は、総重量を決定するときに含まれない。
【0066】
本発明の搬送ローラー、特に物質と接触するのに適した表面に使用できる有機ポリマーの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)である。 PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、EPDMゴム(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)、それらの混合物またはそれらの組み合わせである。一般的に使用されている有機ポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、EPDM、特にポリプロピレンとポリエチレンである。前記有機ポリマーの好ましい混合物の例は、ポリエチレンとポリエチレンの共重合体である。前述の有機ポリマーの組み合わせを提供することは、例えば、異なる摩擦のような異なる特徴を提供する異なるポリマーからなる改質表面の異なる領域を提供することを可能にする。
【0067】
多くの用途にとって、改質表面がポリプロピレン、ポリエチレンまたはそれらの混合物から選択される有機ポリマーを提供することが有益であることが証明された。好ましくは、改質表面は有機ポリマーからなり、潤滑剤、可塑剤、着色剤または充填剤のような添加剤を除いた有機ポリマーの総重量に基づき、有機ポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはそれらの混合物を少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%含む。好ましくは、前述の重量%は、着色剤および充填剤を含む有機ポリマーの総重量を指し、より好ましくは添加剤を含む有機ポリマーの総重量を指す。
【0068】
さらに、本発明は、搬送ローラー対の一方の側に液体を保持するために搬送面の上下に配置された一対の搬送ローラーに使用されるようになっている搬送ローラーのキットに関する。
【0069】
さらに、本発明は、少なくとも1つの搬送ローラーが本発明の搬送ローラーである、搬送ローラーを含む水平搬送システムに関する。
【0070】
典型的には、水平搬送システムの搬送ローラーの少なくとも50%が本発明の搬送ローラーであることが好ましい。特に、水平搬送システムの保持ローラー対の搬送ローラーの少なくとも50%が本発明の搬送ローラーであることが好ましい。大量の非独創的な搬送ローラーは、独創的な利益を減少させる。
【0071】
さらに、本発明の搬送ローラーは、搬送平面の下方の搬送ローラーとして利用されるのが好ましいことに留意されたい。ここでは、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも5つの本発明の搬送ローラーが搬送平面の下に配置されている。
【0072】
特に、保持ローラー対に使用される本発明の搬送ローラーは、本発明の水平搬送システムに含まれることが好ましい。例えば、水平搬送システムは、保持ローラー対として配置されている少なくとも2つの本発明の搬送ローラーを含むことが好ましい。さらに好ましくは、水平搬送システムは、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも4つのこのような保持ローラー対を含む。
【0073】
さらに、本発明は、無電解処理または電気めっきのための処理装置に関し、処理装置は、少なくとも1つの本発明の搬送ローラーまたは少なくとも1つの本発明の水平搬送システムを含む。
【0074】
好ましくは、処理装置は、化学エッチング、化学洗浄、化学金属堆積または電解金属堆積、特に化学金属堆積または電解金属堆積のための水平処理装置である。例えば、このような処理装置は、銅、錫、金、銀、またはこれらの合金のような金属の堆積に使用することができる。対応する処理は、堆積物の実際の堆積および改質のステップの前後、間に配置された多くの前処理と後処理のステップを含む多数の異なるステップを含む非常に複雑な手順を表す。このような前処理および後処理ステップの例は、すすぎ、乾燥およびエッチングである。
【0075】
本明細書では、本発明の搬送ローラーは、好ましくは、処理装置の湿式処理モジュールの始めまたは終わりに配置される。例えば、本発明の搬送ローラーは、乾燥モジュールの一部として、または処理装置の一部に処理液を蓄積するための保持ローラー対として使用することができる。
【0076】
処理装置が、保持ローラー対として配置されている少なくとも2つの本発明の搬送ローラーを含み、処理装置が搬送平面の上方の保持ローラー対の側で処理液をバックアップするようになっていることが特に好ましい。
【0077】
さらに、本発明は、基板を処理する方法に関し、方法は、本発明の搬送ローラー、本発明の水平搬送システムまたは本発明の処理装置を使用して基板を搬送する工程を含む。
【0078】
さらに、本発明は、基板を水平に搬送するための本発明の搬送ローラーの使用に関する。
【0079】
図1は、本発明の好ましい実施形態による本発明の搬送ローラー1の概略側面図を示す。ここでは、搬送ローラー1は、搬送ローラー1の周囲に配置された実質的に均質な材料からなる改質表面4を含む。ここでは、改質表面4の材質は、ポリプロピレンである。改質表面4は、基板の不均一な接触を提供するようになっており、前記改質表面4は、基板と接触するようになっている接触領域5と、接触領域5の間の凹部6の形の搬送ローラー1の非接触領域とを含む。搬送ローラー1は、実質的に中実体ローラーの形態を提供するが、それは同時に搬送ローラーの両側で可能な液体または気体交換を提供する。搬送ローラーの両端に、基板と接触するように適合されていない表面7が配置されており、この表面は改質されていない。
【0080】
接触ラインと改質表面4の凹部6との間に囲まれた領域は、搬送ローラー1の軸に沿った断面において最大5mm2である各凹部によって囲まれた領域である。ここで、150cmの改質表面4の長さを提供する搬送ローラー1の場合、前記凹部の面積の合計は30mm2未満である。前記凹部6は、搬送ローラー1の周りを一周する線の形状を提供し、前記線状凹部は、接触ラインに対して実質的に垂直である。前記線状凹部6は、接触ラインに沿って測定された約0.2mmの長さを提供し、接触ラインに沿って測定された約0.8mmの接触領域5の長さを提供するように配置されている。
【0081】
図2は、
図1に示されるような搬送ローラー1を含む本発明の水平搬送システムの概略断面を示す。ここでは、本発明の搬送ローラー1を含む保持ローラー対を用いて基板を前進させる。
【0082】
下部搬送ローラー1は、時計回り10に回転し、基板3を搬送方向に前進させる。同時に、処理液8を移動させ、移動方向9は、前記搬送ローラー1の頂部に向けられている。上部搬送ローラー1は、反時計回りに回転し、処理液8を同様に移動させる。
【0083】
図3は、
図1に示すような搬送ローラーを含む水平搬送システムの一部の概略側面図を示す。ここでは、
図1による2つの搬送ローラー1が保持ローラー対として使用されている。搬送ローラー1の改質表面4は、基板3と接触し、前記搬送ローラー1の回転は、前記基板3を前進させる。2つの搬送ローラー1を保持ローラー対として配置することにより、保持ローラー対の片側または両側に処理液を保持しながら基板3を搬送することができる。このような配置はさらに、乾燥モジュールにおいて基板3の表面から液体を除去するために使用することができる。
【0084】
図4は、
図1に示すような搬送ローラーを含む水平搬送システム2の一部の概略側面図を示す。ここでは、水平搬送システム2の一部は、
図1に示すような、改質表面4と改質されていない表面7とを提供する8つの搬送ローラー1を含む。これらの搬送ローラー1は、4つの保持ローラー対を提供するように配置されている。これらの保持ローラー対の間には、本発明の改質表面がない5つの搬送ローラー15が配置されている。
【0085】
図5は、
図4に示す水平搬送システムの一部を含む本発明の処理装置の一部の概略断面図である。ここでは、2つの本発明の搬送ローラー1を含む1つの保持ローラー対が処理浴の始めと終わりに配置されている。これらの保持ローラー対は、それぞれの堰11とともに処理液8を蓄積するので、基板3は、処理浴の高さの下に搬送されることができる。それぞれが2つの搬送ローラー1を含む追加の保持ローラー対は、処理浴に入る前と出た後に、基板の表面から液体をさらに除去することを確実にする。
【0086】
図6a、
図6b、および
図6cは、
図1に示される搬送ローラーに匹敵する本発明の異なる種類の搬送ローラーの改質表面の概略断面を示す図である。ここでは、異なる種類の凹部6’、6’’、6’’’が設けられている。
図6aは、不規則な大きさの複数の三角形の凹部6’を示す。
図6bは、不規則な大きさの丸い凹部6’’を示す。
図6cは、不規則な大きさの長方形の凹部6’’’を示す。これらの凹部6’、6’’、6’’’は、接触領域5’、5’’、5’’’の間に位置している。
【0087】
図7a、
図7bおよび
図7cは、中央部分12およびコーティング材料13を提供する搬送ローラー1’の概略断面図および概略側面図を示す。ここでは、搬送ローラー1’は、搬送ローラーの周りに配置された改質表面を提供する有機ポリマーからなるコーティングを含む。改質表面は、基板の不均一な接触を提供するように適合され、前記改質表面は、基板と接触するように適合された接触領域と、接触領域間の凹部とを含む。搬送ローラーは、中実体ローラーの形をしているが、それは同時にコーティングによって提供される改質表面によって生じる凹部に基づいて搬送ローラーの両側で液体または気体を交換する可能性を提供する。
【0088】
図8は、本発明の好ましい実施形態の異なる種類の線状凹部14、14’、14’’、14’’’、14’’’’、14’’’’’の概略側面図を示す。ここで、
図8は、
図1に示されるような線状凹部14と、搬送ローラー1を一周する線状凹部14’’、14’’’、14’’’’、14’’’’’の4つの異なる例を示す。さらに、
図8は、線状凹部14’を示しており、ここで前記線は、搬送ローラー1を一周せず、搬送ローラー1の軸線に対して実質的に平行である。
図1には示されていないが搬送ローラーを一周する線を提供する線状凹部14’’、14’’’、14’’’’、14’’’’’の4つの例が
図1と同様に搬送ローラー1に適用される。搬送ローラーの軸と実質的に平行な線状凹部14’は、
図1と同様の搬送ローラーに適用され、線状凹部14’は、凹部と接触円との間に囲まれた領域を提供し、前記領域は、搬送ローラー1の軸に垂直な断面において最大で12mm
2であることをさらに特徴とする。
【符号の説明】
【0089】
1、1’ 搬送ローラー
2 水平搬送システム
3 基板
4 改質表面
5、5’、5’、5’’ 接触領域
6、6’、6’、6’’ 凹部
7 基板と接触しない表面
8 処理液
9 処理液の移動
10 搬送ローラーの移動方向
11 堰
12 搬送ローラー中央部分
13 コーティング材
14、14’、14’’、14’’’、14’’’’、14’’’’ 線状凹部
15 改質表面のない搬送ローラー