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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】積層マニホルドを備えたカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20230707BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
G01N35/10 A
G01N35/02 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019549441
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 US2019016097
(87)【国際公開番号】W WO2019152677
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-07
(31)【優先権主張番号】2020616
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】62/626,022
(32)【優先日】2018-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202402
【氏名又は名称】イラミーナ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ダレン セーガレ
(72)【発明者】
【氏名】ハイ トラン
(72)【発明者】
【氏名】ポール クリヴェッリ
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146910(JP,A)
【文献】特開2016-208876(JP,A)
【文献】特開2002-214194(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0243523(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0122314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 - 35/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電気接続のための電気相互接続部を備えた回路及び該回路に取り付けられたダイ上の少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのセンサの活性表面上に液体試薬を送達するために前記回路に取り付けられた積層マニホルドであって、少なくとも1つの流体チャネルを含む積層マニホルドと、を備え、
前記ダイと前記流体チャネルとの間の界面が封止されており、
前記積層マニホルドは、前記ダイのための少なくとも1つの切り欠きを有する、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは半導体センサを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記積層マニホルドは複数の層を備え、前記複数の層は、
上部リッド層、
流体分配層、
基板層、および
底部平坦化層
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記回路は前記平坦化層に接合され、前記平坦化層は前記少なくとも1つのセンサと前記ダイの総厚にほぼ等しい厚さを有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記複数の層の隣接する層の間に感圧接着剤が存在する、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の層の隣接する層は機械的に結合される、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は生物学的分析のためのカートリッジの一部である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は化学的分析のためのカートリッジの一部である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置はカートリッジの一部であり、前記カートリッジは、
前記積層マニホルドに結合された試薬保存および送達システムと、
前記試薬保管および送達システムに連結されたカートリッジ本体及び試薬ポンプと、
をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ダイは前記回路にワイヤボンディングされる、請求項に記載の装置。
【請求項12】
使用時に、試薬が前記積層マニホルドを介して前記少なくとも1つのセンサの活性表面上に送達される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのセンサの活性表面のみが試薬にさらされる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの流体チャネルを備える積層マニホルドを組み立てる工程と、
少なくとも1つのセンサを備えたダイを、電気相互接続部を備える回路に取り付ける工程と、
前記回路にダイのための切り欠きを備えた平坦化層を取り付ける工程と、
前記ダイの側面に封止用接着剤を置く工程と、
前記積層マニホルドを前記回路に取り付ける工程と、
前記ダイと前記少なくとも1つの流体チャネルとの界面を封止する工程と、を含み、
一緒に取り付けられた前記積層マニホルドと前記回路がアセンブリを構成する、方法。
【請求項15】
前記アセンブリをカートリッジに取り付ける工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記積層マニホルドを組み立てる工程は複数の層を積層する工程を含み、前記複数の層は、
上部リッド層、
流体分配層、
基板層、および
底部平坦化層
を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記積層工程は、前記複数の層の隣接する層の間に感圧接着剤を使用する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アセンブリをシークエンシングに使用することをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記アセンブリを遺伝子型決定に使用することをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年2月3日に出願された米国仮特許出願第62/626,022号および2018年3月19日に出願されたオランダ国特許出願第2020616号の優先権を主張するものである。前記出願の各々の全内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
生物学的または化学的分析のための現在のカートリッジは、液体試薬を効率的な方法で処理しない。例えば、流体経路は長く、試薬保管領域から従来のマニホルドを通って半導体センサを含むダイまで進む。この構成は分析を遅くし、各サイクルで大量の洗浄試薬が使用される可能性がある。
【0003】
したがって、より効率的な流路設計が必要である。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、既存のアプローチの欠点を克服することができ、追加の利点が得られる装置を提供する。この装置は、回路および該回路に結合されたダイ上の少なくとも1つのセンサを備え、該回路は外部電気接続用の電気相互接続部を含み、さらに、前記回路に取り付けられ、液体試薬を前記少なくとも1つのセンサの活性表面上に送達する積層マニホルドを備え、該積層マニホルドは少なくとも1つの流体チャネルを備え、前記ダイと前記少なくとも1つの流体チャネルとの間の界面が密封されている。
【0005】
別の態様によれば、方法が提供される。該方法は、少なくとも1つの流体チャネルを備える積層マニホルドを組み立てる工程と、ダイ上の少なくとも1つのセンサを電気相互接続部を含む回路に取り付ける工程、およびダイのための切り欠きを含む平坦化層を前記回路に取り付ける工程を備える。この方法はさらに、前記ダイの側面に封止用接着剤を置く工程、前記積層マニホルドを前記回路に取り付ける工程、および前記ダイと前記少なくとも1つの流体チャネルとの界面を封止する工程を含み、互いに取り付けられた前記積層マニホルドと前記回路がアセンブリを構成する。
【0006】
本開示のこれらの、および他の目的、特徴および利点は、添付図面と関連して以下に詳細に記載される本開示の様々な態様の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の1つまたは複数の態様による、例えば生物学的または化学的分析に使用可能な、センサおよび積層マニホルドを備えたカートリッジの一例の斜視図である。
図2図1の積層マニホルドの一例の分解図であり、本開示の1つ以上の態様による、積層マニホルドの様々な層を示す。
図3】本開示の1つまたは複数の態様による、積層マニホルドおよび回路に関連するセンサの一例の斜視図である。
図4】本開示の1つ以上の態様による、図3の線に沿ったセンサ領域の断面の一例の斜視図である。
図5図5図10図1のカートリッジを組み立てる様々な段階(工程)を示し、図5は、本開示の1つまたは複数の態様による、センサが取り付けられた回路の一例の斜視図である。
図6図5の回路に平坦化層を取り付ける段階を示し、本開示の1つまたは複数の態様によれば、例えば、感圧接着剤などの結合層を使用する。
図7】本開示の1つまたは複数の態様による、図6の構造にブリッジ接着剤をディスペンスし硬化する工程を示す。
図8】積層マニホルド(例えば、図2について記載されたもの)を図7の回路に取り付ける工程の一例を示し、本開示の1つまたは複数の態様によれば、例えば、感圧接着剤などの結合層(図2)を使用する。
図9】本開示の1つまたは複数の態様に従って、図8の構造へのワイヤボンディング148を形成し、ワイヤボンディングをカプセル封止し、フローセルチャネルを取り付ける工程を示す。
図10】本開示の1つ以上の態様に従って、図9の構造を試薬ローターおよびカートリッジ本体に接続する工程の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の態様およびその特定の特徴、利点、および詳細は、添付の図面に示される非限定的な例を参照して以下に十分に説明される。関連する詳細を不必要に曖昧にしないために、よく知られている材料、製造ツール、処理技術などの説明は省略されている。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本開示の態様を示しているが、例示としてのみ与えられており、限定としてではないことを理解されたい。基本的な発明の概念の精神および/または範囲内で様々な置換、変更、追加、および/または配置が可能であることはこの開示から当業者に明らかであろう。
【0009】
本明細書および特許請求の範囲を通して本明細書で使用される近似用語は、関連する基本機能に変化をもたらすことなく許容できるように変化する可能性のある定量的表現を修正するために適用できる。したがって、「約」または「実質的に」などの用語によって修正された値は、指定された正確な値に限定されない。場合によっては、近似言語は、値を測定する機器の精度に対応することがある。
【0010】
本明細書で使用される用語は、特定の例を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、複数形も含むものとする。さらに、用語「備える」(および「備える」および「備えている」などの任意の形)、「有する」(および「有する」および「有している」などの任意の形)、「含む」(および「含む」や「含んでいる」などの任意の形)、および「含有する」(および「含有する」や「含有している」などの任意の形)は、オープンエンド連結動詞である。その結果、1つ以上のステップまたは要素を「備える」、「有する」、「含む」、または「含有する」方法または装置は、それらの1つ以上のステップまたは要素を所有するが、それらの1つ以上のステップまたは要素だけを所有することに限定されない。同様に、1つ以上の特徴を「備える」、「有する」、「含む」、または「含有する」方法のステップまたは装置の要素は、これらの1つ以上の特徴を所有するが、それらの1つ以上の特徴だけを所有することに限定されない。さらに、特定の方法で構成されている装置または構造は、少なくともそのように方法で構成されているが、記載されていない方法で構成されてこともある。
【0011】
本明細書で使用される場合、「接続された」という用語は、2つの物理的要素に関連して使用される場合、2つの物理的要素間の直接的な接続を意味する。ただし、「結合」という用語は、直接的接続または1つ以上の中間要素を介した接続を意味し得る。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「may」および「may be」は、いくつかの状況における発生の可能性を示すこと、特定の特質、特性もしくは機能の所有を示すことがあり、および/または、適格な動詞に関連付けられた1つ以上の能力、性能または可能性を表現することによって他の動詞を適格とすることがある。従って、「may」および「may be」の使用は、いくつかの状況において修正された用語が時には適切でない、可能でないないまたは相応ではないこともあることを考慮に入れつつ、修飾された用語が、指示された容量、機能または使用に対して明らかに適切である、可能であるまたは相応することを示す。例えば、いくつかの状況ではイベントまたはキャパシティが期待できるが、他の状況ではイベントまたはキャパシティが発生し得ない区別を「may」および「may be」という用語は捉えている。
【0013】
本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、測定、サイズなどの値とともに使用される「約」、「実質的に」などの近似用語は、プラスまたはマイナス10パーセントの変動が可能であることを意味する。
【0014】
本明細書で使用する「結合する」、「結合された」、および「結合している」という用語は、2つのものを加熱プロセスまたは圧力とともに接着剤または結合剤を使用してしっかりと結合することを指す。本明細書で使用するとき、用語「取り付ける」は、2つのものを留め具(例えば、ねじ、接着剤、または結合剤など)を使用して、または使用せずに結合することを指す。したがって、用語「結合する」は用語「取り付ける」の一部である。
【0015】
理解を容易にするために縮尺通りに描かれていない図面を以下で参照するが、同じまたは類似の構成要素を示すために異なる全図を通して同じ参照番号を使用する。
【0016】
本開示は、生物学的または化学的分析に関し、より具体的には、液体試薬をセンサの活性表面に効率的に送達するために積層マニホルドに接続されたセンサ付き回路に関する。
【0017】
図1は、カートリッジ100の一例の斜視図であり、このカートリッジは、例えば生物学的または化学的分析に使用することができる。一例では、このカートリッジを使用して、シークエンシング、例えばシークエンシング・バイ・シンセシスまたは次世代シークエンシング(ハイスループットシークエンシングとしても知られる)などのDNAシークエンシングを可能にすることができる。別の例では、このカートリッジを使用してジェノタイピングを可能にすることができる。当業者が知っているように、ジェノタイピングは、生物学的アッセイを使用して個人のDNA配列を調べ、それを別の個人の配列または参照配列と比較することにより、個人の遺伝子構造(遺伝子型)の違いを決定することを含む。使い捨てまたは再利用可能とし得るこのカートリッジは、試薬ローター102、カートリッジ本体104(カートリッジ本体にポンプ107を内蔵)、試薬を送達するための積層マニホルド106、カートリッジの様々な機能のための受動電子機器109を備えた回路108および外部電気接続のための電気相互接続部110を含む。本開示の1つ以上の態様によれば、その積層マニホルドは液体試薬をセンサ(134、図2)の活性表面に送達するために使用される。この例ではポンプはカートリッジの内部にあるが、ポンプは代わりにカートリッジの表面上またはカートリッジの外部にあってもよいことは理解されよう。
【0018】
貯蔵部(この例ではローター102)からの試薬の流体の流れは、ポンプ107により駆動される。ポンプは、液体試薬をローターから積層マニホルド106を介してフローセル119へと引き出し、流体開口部103を介してセンサ(図2の134)の活性表面(138、図3)上に供給する。液体試薬は、フローセルを出て、カンデラブラのように見えるアーム(チャネル117)に至る。液体試薬は、例えばカートリッジの底部にあるピンチバルブ111の配列を通ってポンプに戻る。ピンチバルブは通常閉じていて、ポンプ吸引時にどのピンチ弁が開いているかによってカンデラブラのどのアームが戻りに使用されるかが決まる。チャネル117からの過剰な流体は、流体経路115および流体開口部105を通ってポンプに戻る。マイクロ流体ポンプは、検出のためにカートリッジを通る試薬の流れを維持する。一例では、ポンプは自吸式マイクロポンプの形をとる。
【0019】
センサの機能の非限定的な例には、例えば、光検出(例えば、所定の検出波長範囲を有する)、1つ以上の物質(例えば、生物学的または化学物質)の存在の検出および何かの濃度(例、イオン濃度)の変化の検出を含む。センサは、例えば、半導体ベース(例えば、集積回路)であってよく、その個々のデバイスは、プレーナまたは非プレーナ(例えば、フィン電界効果トランジスタ(FinFET)ベース)であってよい。一例では、センサは、CMOS(相補型金属酸化物半導体)イメージセンサであってよい。当業者に周知のように、CMOSイメージセンサの回路は、クロックおよびタイミング生成回路、アナログデジタル変換器などのパッシブ電子素子、ならびに光子(光)を電子に変換した後電子を電圧に変換する光検出器のアレイを含む。別の例では、センサは、別のタイプのイメージセンサであるCCD(電荷結合素子)であってもよい。
【0020】
当業者が理解するように、「CMOS」は集積回路を製造するために使用される技術を指す。本明細書で使用されるように、「CMOSセンサ」及び「CMOSイメージセンサ」はCMOS技術を用いて製造されたセンサを指す。「相補的」という名前の側面は、CMOS技術を用いて製造された集積回路(IC)にはn型およびp型の両タイプの金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)が含まれることを指す。各MOSFETは、酸化物などのゲート絶縁層を有する金属ゲート(よって、名前の「金属-酸化物」部分に相当する)と、ゲートの下の半導体材料(名前の「半導体」部分に相当する)を有する。ICは半導体基板またはウェハの一部分であるダイに製造され、ダイは製造後に切り出され、CMOS技術を用いて製造されたICは、例えば高い雑音排除性及び低い電力消費(トランジスタの一方が常にオフ)であることを特徴とする。
【0021】
一例では、CMOSイメージセンサは、例えば、ピクセルとも呼ばれる何百万の光検出器を含み得る。各ピクセルは光からの電荷を蓄積するフォトセンサと、蓄積した電荷を電圧に変換する増幅器と、ピクセル選択スイッチとを含む。各ピクセルは、例えば、より多くの光を補足するための個別のマイクロレンズを含んでもよく、または、例えば、ノイズ低減などの画像を改善するための他の強化手段を含んでもよい。
【0022】
ここで、CMOS技術を用いて製造される半導体デバイスの製造の一例を提示する。例えば、p型半導体基板から出発して、PMOS領域内にn型ウェルを生成しつつNMOS領域を保護することができる。これは、例えば、1つ以上のリソグラフィプロセスを用いて達成することができる。その後、薄いゲート酸化物とゲート(例えば、ポリシリコン)をNMOS領域とPMOS領域の両方内に形成することができる。NMOS領域のp型基板内でダミーゲート(すなわち、ソース及びドレインが形成される)の両側にn+型ドーパント領域を形成することができるとともに、n+型ドーパントの1つの領域をPMOS領域内に本体(ここでは、ウェル)接点として形成することができる。これは、例えば、マスクを用いて達成することができる。その後、マスキング及びドーピングの同じプロセスを用いてPMOS領域内にソース及びドレインを形成するとともにNMOS領域内に本体接点を形成することができる。その後、NMOSおよびPMOSトランジスタの様々な領域(すなわち、本体、ソース、ドレイン及びゲート)への端子を形成するための金属化を実行することができる。CCDと異なり、CMOSセンサには同じチップ上にほとんどまたは全く追加の費用をかけることなく他の回路を含めることができ、画像の安定化や画像の圧縮などの機能をオンチップで提供することができる。
【0023】
図2は、図1の積層マニホルド106の一例の分解図である。積層はリッド層112を含み、この層112は、例えばポリマーフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)であってよく、例えば、一例では約100ミクロンから約700ミクロンの厚さ、別の例では約100ミクロンから約400ミクロンの厚さを有してよい。積層マニホルドは、液体試薬を分配する流体分配層116も含み、この層116は、例えば、一例では約200ミクロンから約1000ミクロンの厚さ、別の例では約300ミクロンから約700ミクロンの厚さを有してよい。流体分配層116は、例えば、自己蛍光が低いまたはない材料、例えば薄いプラスチックフィルムまたはガラスであってよい。層116の材料の非限定例としては、例えば、ニュージャージー州パーシッパニーのエボニット社から市販されているPMMA、例えば、カリフォルニア州ロスアンジェルスのアメリカンエレメント社から市販されているコバルト燐(CoP)フィルム、例えば、ケンタッキー州ルイスビルのゼオンケミカルスL.P.社から市販されている環状オレフィンコポリマー(COC)、およびニューヨーク州エルムスフォードのスコットノースアメリカ社から市販されているホウケイ酸ガラスがある。バルクまたは比較的太い流体用のチャネル117を通る流体通路は層116によって画定される。これらのチャネルは、例えば約0.25mmから約1mmの間の幅を有する低インピーダンスの流体の流れを可能にするサイズである。リッド層と流体分配層との間には接着剤層114があり、この層は、例えば、一例では約20ミクロンから約50ミクロンの厚さ、別の例では約25ミクロンの厚さを有してよい。一例では、接着剤層は、その真上および真下の層を圧力下でしっかりくっ付ける感圧接着剤としてよい。層114の接着剤の非限定的な例には、アクリルまたはシリコン接着剤が含まれる。感圧接着剤は、例えば、その上に接着剤を有する硬質プラスチックライナー(例えば、PET)を含んでよい、例えば片面接着テープの一部としてもよい。そのような接着テープは、例えば、ミネソタ州セントポールの3M社、またはペンシルベニア州グレンロックのAdhesives Research社から市販されている。当業者が知っているように、感圧接着剤は、加圧時に、溶媒、水または熱の必要なしに結合を生じる。
【0024】
図2の積層マニホルドは、基板層120をさらに含み、該基板層は、層118および122とともに、層116の開口部123および125と重なるアパーチャ121を含み、試薬が層116のチャネルからセンサの活性表面(138、図3)に達することを可能にする。一例では、開口部はチャネルと同様のサイズである。基板層は、例えば、一例では約50ミクロンから約70ミクロンの厚さ、別の例では約60ミクロンの厚さを有してよい。基板層120は、例えば、ポリマーフィルム(例えば、PETまたはPMMA)であってよい。センサ上の流体の流れは、流体分配層のチャネル内の比較的太い流れから、流体の効率的な使用を提供する比較的細い流体の流れに移行する。センサ上の流体経路は、図4に流線156で示されている。一例では、センサ上を通過する流体のみの化学反応、例えば蛍光がユーザーに観察可能とし得る。流体分配層と基板層との間には、接着剤層118があり、これは、例えば、一例では約20ミクロンから約50ミクロの厚さ、別の例では約25ミクロンの厚さを有し得る。一例では、層118は、その真上および真下の層を圧力下でしっかりくっつける感圧接着剤としてよい。層118の接着剤の非限定的な例には、アクリルまたはシリコン接着剤が含まれる。感圧接着剤は、例えば両面接着テープの一部としてよく、該テープは、例えばその上に接着剤を有する剛性プラスチックライナー(例えば、PET)を含んでよい。そのような接着テープは上記のように市販されている。この構造は、積層マニホルドを支持するとともに回路108に均一な表面を与える平坦化層124をさらに含み、本開示の1つまたは複数の態様によれば、この平坦化層124は、例えば、一例では約500ミクロンから約700ミクロンの厚さ、別の例では約600ミクロンの厚さを有してよい。一例では、平坦化層はダイとほぼ同じ厚さである。一例では、平坦化層124の材料は、押出プラスチック、例えば、PET、ポリプロピレンまたはポリカーボネートを含み得る。基板層120と平坦化層124との間には、接着層122があり、これは、例えば、一例では約20ミクロンから約50ミクロン、別の例では約25ミクロンの厚さを有し得る。一例では、層122は、感圧接着剤の真上および真下の層を圧力下でしっかりと取り付けるための感圧接着剤を含むことができる。層122の接着剤の非限定的な例には、アクリルまたはシリコン接着剤が含まれる。感圧接着剤は、例えば、その上に接着剤を有する剛性プラスチックライナー(例えば、PET)を含んでよい例えば両面接着テープの一部としてよい。そのような接着テープは上記のように市販されている。この構造は、積層マニホルドに対する支持を提供し、回路108に均一な表面を与える平坦化層124をさらに含み、該層は、本開示の1つまたは複数の態様によれば、例えば、一例では約500ミクロンから約700ミクロン、別の例では約600ミクロンの厚さを有し得る。一例では、平坦化層はダイとほぼ同じ厚さである。一例では、平坦化層124の材料は、押出プラスチック、例えば、PET、ポリプロピレンまたはポリカーボネートを含み得る。基板層120と平坦化層124との間には、接着層122があり、これは、例えば、一例では約20ミクロンから約50ミクロン、別の例では約25ミクロンの厚さを有し得る。一例では、層122は、その真上及び真下の層を圧力下でしっかりくっつけるための感圧接着剤を含むことができる。層122の接着剤の非限定的な例には、アクリルまたはシリコン接着剤が含まれる。感圧接着剤は、例えば、両面接着テープの一部としてよく、該テープは、例えば、その上に接着剤を有する剛性プラスチックライナー(例えば、PET)を含んでよい。そのような接着テープは上記のように市販されている。
【0025】
積層マニホルド106は、例えば、結合層126を介して回路108に結合することができ、結合層126は、例えば、一例では約50ミクロンから約70ミクロンおよび別の例では約60ミクロンの厚さの感圧接着剤を含んでよい。層126の接着剤の非限定的な例には、アクリルまたはシリコン接着剤が含まれる。感圧接着剤は、例えば、片面接着テープの一部としてよく、該テープは、例えば、その上に接着剤を有する硬質プラスチックライナー(例えば、PET)を含んでよい。そのような接着テープは上記のように市販されている。回路は、可撓性または剛性(例えば、PCBボード)であってよく、例えば、一例では約200ミクロンから約300ミクロンの厚さ、別の例では約250ミクロンの厚さを有してよい。
【0026】
平坦化層124と結合層126の両方は、試薬が活性表面(図3の138)と接触する際に活性表面が積層マニホルドと実質的に平面になるように、回路上のセンサ134のための切り欠き132を含む。最後に、回路が接着層130を介してカートリッジ本体104に結合され、接着層130は感圧接着剤を含むことができ、例えば、一例では約50ミクロンから約150ミクロンの厚さ、および別の例では約100ミクロンの厚さを有することができる。層130の接着剤の非限定的な例には、アクリルまたはシリコン接着剤が含まれる。感圧接着剤は、例えば、両面接着テープの一部としてよく、該テープは、例えばその上に接着剤を有する剛性プラスチックライナー(例えば、PET)を含んでよい。そのような接着テープは上記のように市販されている。
【0027】
図3は、積層マニホルド106および回路108に関連するセンサ134の一例の斜視図である。センサの活性表面および試薬が導入されるセンサ上部(すなわち、図2の流体分配層116)を取り囲む積層マニホルド構造がフローセルを構成する。フローセルチャネル136は、ダイ140上に位置するセンサの活性表面138に液体試薬を送達し、次いで液体試薬をセンサから運び去る。生体物質または化学物質などの物質を、センサの活性表面によるオンチップセンシングのための空間に導入することができる。半導体ベースの場合、センサはシリコン基板(例えば、シリコンウェーハ)上に製造され、シリコンウェーハから切断されてダイになる。ダイの厚さは、シリコンウェーハのサイズ(直径)に依存する。例えば、直径51mmの標準的なシリコンウェーハは約275ミクロンの厚さを有し、一方、直径300mmの標準的なシリコンウェーハは約775ミクロンの厚さを有し得る。本明細書で使用するとき、センサの活性領域は、検出のために試薬と接触するセンサ表面を指す。ダイには複数のセンサがあってよく、同じダイに異なるセンサを含んでよい。フローセルチャネルは、例えば、ケイ酸塩ガラス(例えば、アルミノケイ酸塩ガラス)を含み得る。ダイは、封止領域142で封止される。本開示の1つ以上の態様によれば、一例では、各封止領域は、例えば、ブリッジ接着剤144、構造接着剤146、および例えば金線を使用するワイヤボンディング148を含み、ワイヤボンドカプセル150で覆われる。ダイは、接着剤、例えば、分散紫外線硬化性接着剤または感圧接着テープ(例えば、アクリルまたはシリコン接着剤)によって回路108に取り付けてよい。回路とセンサの間の電気的接続は、多くの方法、例えば、ダイを高温に曝さない低温ワイヤボンディングで達成することができる。ワイヤボンドは比較的小さく、センサと回路を電気的に接続する超音波溶接ワイヤとすることができる。これらの電気接続は、たとえば、ワイヤ上に分散された接着剤(たとえば、紫外線(UV)硬化接着剤)で保護することができる。この接着剤は、UV光で硬化されたとき固体に変化してワイヤを完全にカプセル化する。商業的に入手可能なUV硬化性接着剤は、例えば、コネチカット州トリントンのダイマックスコーポレーションから入手することができる。ダイ140とマニホルドの流体チャネルとの間の界面141は、導電性液体の存在により短絡されるかもしれない電気相互接続部および回路の他の特徴部から液体を分離しながら、センサの活性表面が積層マニホルド内の流体と接触するように封止される。
【0028】
図4は、図3の線152に沿ったセンサ領域の断面の一例の斜視図である。図に示されるように、本開示の1つまたは複数の態様によれば、試薬リザーバ(例えば、図1に示される試薬ローター102内)からの入口103が、ポンプ(図1、107)の力により試薬をフローセルチャネルに接続されたフローライン156を通してセンサの活性表面138に分配する。
【0029】
図5図10は、図1のカートリッジ100を構築する様々な段階(工程)を示している。図5は、本開示の1つまたは複数の態様に従って、回路108にセンサ134が取り付けられた、例えば結合された、回路108の一例の斜視図である。
【0030】
図6は、本開示の1つまたは複数の態様に従って、例えば、結合層126を用いて平坦化層124を図5の回路108に取り付ける工程を示す。
【0031】
図7は、本開示の1つまたは複数の態様に従って、図6の構造にブリッジ接着剤144をディスペンスし、硬化させる工程を示す。
【0032】
図8は、本開示の1つまたは複数の態様に従って、図7の回路108上の平坦化層124に積層マニホルド106(例えば、図2につき説明したもの)を、例えば、結合層122(図2)を使用して取り付ける工程の一例を示す。
【0033】
図9は、本開示の1つまたは複数の態様に従って、図8の構造へのワイヤボンディング148を例えば低温ワイヤボンディングを用いて形成し、例えばワイヤボンドカプセル材150によりワイヤボンディングをカプセル封止し、および検出のためにセンサの活性表面に試薬を送達するフローセルチャネル136とセンサの両側の流体経路のV字型延長部を取り付ける工程を示す。ワイヤボンドは、例えば、アルミニウム、銅、銀、または金などの金属を含み得る。
【0034】
図10は、本開示の1つまたは複数の態様に従って、図9の構造を試薬ローター102およびカートリッジ本体104に取り付ける工程の一例を示し、例えば、接着層130(図2)を用いて接着し、該接着層130は、例えば、接着剤(例えば、前述の感圧接着剤)を含んでよい。
【0035】
第1の態様では、装置が以上に開示されている。この装置は、回路と該回路取り付けられたダイの上のセンサを含み、前記回路は外部電気接続用の電気相互接続部を含み、前記センサの活性表面上に液体試薬を送達するために前記回路に取り付けられた積層マニホルドを含み、前記積層マニホルドは流体チャネルを含み、前記ダイと前記流体チャネルとの間の界面が封止されている。
【0036】
一例では、前記センサは、例えば半導体センサを含むことができる。別の例では、前記センサは、例えば、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ(例えば、CMOSイメージセンサ)の形をとってもよい。
【0037】
一例では、第1の態様の装置における前記積層マニホルドは、例えば、複数の層を含んでよく、例えば、上部リッド層、流体分配層、基板層、および底部平坦化層を含んでよい。一例では、前記回路は、例えば、前記平坦化層に接合されてよく、前記平坦化層は、例えば、前記センサと前記ダイの総厚にほぼ等しい厚さとしてよい。
【0038】
一例では、感圧接着剤が、例えば、前記積層マニホルドの前記複数の層の隣接する層の間に介在してもよい。
【0039】
一例では、前記積層マニホルドの隣接する層は、例えば、留め具またはネジによって機械的に接続されてもよい。
【0040】
一例では、第1の態様の装置は、例えば、生物学的分析に使用されるようなカートリッジの一部であってもよい。
【0041】
一例では、第1の態様の装置は、例えば、化学的分析に使用されるようなカートリッジの一部であってもよい。
【0042】
一例では、第1の態様の装置は、例えば、カートリッジの一部であってもよく、前記カートリッジは、例えば、前記積層マニホルドに結合された試薬保存および配達システムと、カートリッジ本体と、前記試薬保管および送達システムに連結された試薬ポンプとをさらに含んでもよい。
【0043】
一例では、第1の態様の装置における前記積層マニホルドは、例えば、ダイのための切り欠きを有してもよい。一例では、ダイは、例えば、回路にワイヤボンディングされてもよい。
【0044】
一例では、第1の態様の装置は、使用時に、例えば、前記積層マニホルドを介して前記センサの活性表面上に試薬が送達され得る。一例では、センサの活性表面のみが試薬にさらされる。
【0045】
第2の態様では、方法が以上に開示されている。この方法は、流体チャネルを含む積層マニホルドを組み立てる工程と、センサを備えたダイを電気相互接続部を含む回路に取り付ける工程を含む。この方法はさらに、前記回路にダイのための切り欠きを含む平坦化層を取り付ける工程、ダイの側面に封止用接着剤を置く工程、積層マニホルドを回路に取り付ける工程、およびダイと流体チャネルとの界面を封止する工程を含み、一緒に取り付けられた前記積層マニホルドと前記回路がアセンブリを構成する。
【0046】
一例では、この方法は、例えば、前記アセンブリをカートリッジに取り付ける工程をさらに含んでよい。
【0047】
一例では、第2の態様の方法における積層マニホルドを組み立てる工程は、例えば複数の層を積層する工程を含み、前記複数の層は、例えば上部リッド層、流体分配層、基板層および底部平坦化層を含んでよい。一例では、積層工程は、例えば、隣接する層の間に接着剤(例えば、感圧接着剤)を使用することを含んでよい。
【0048】
一例では、第2の態様の方法は、例えば、前記アセンブリをシークエンシングに使用することを含んでよい。
【0049】
一例では、第2の態様の方法は、例えば、前記アセンブリを遺伝子型決定に使用することをさらに含んでよい。
【0050】
本開示のいくつかの態様を本明細書で図に示し説明したが、同じ目的を達成するために代替の態様が当業者によってもたらされ得る。したがって、添付の特許請求の範囲はそのようなすべての代替態様を網羅することを意図している。
【0051】
上述の概念のすべての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しない限り)が、本明細書で開示される本発明の主題の一部として企図されることを理解されたい。特に、本開示の最後に添付された請求の範囲に記載された主題のすべての組み合わせは、本明細書に開示された本発明の主題の一部であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10