(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】3-(アミノアルキル)安息香酸から得ることができるポリアミド
(51)【国際特許分類】
C08G 69/08 20060101AFI20230707BHJP
B29C 64/00 20170101ALI20230707BHJP
【FI】
C08G69/08
B29C64/00
(21)【出願番号】P 2019568322
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2018065656
(87)【国際公開番号】W WO2018229126
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-13
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー, ナンシー ジェー.
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-528911(JP,A)
【文献】特公昭32-007325(JP,B2)
【文献】特開2003-175543(JP,A)
【文献】米国特許第03438948(US,A)
【文献】特開昭59-124951(JP,A)
【文献】国際公開第2010/107131(WO,A1)
【文献】特表2016-521777(JP,A)
【文献】特表2016-505409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
B29C 64/00-64/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
(式中、
n
p、n
q、n
r及びn
sは、それぞれ各繰り返し単位p、q、r及びsのモル%であり;
繰り返し単位p、q、r及びsは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており;
n
p+n
q+n
r+n
s=100であり;
50≦n
p≦100であり;
1<m≦20であり;
R
1は
、C
1~C
15アルキレン及びC
6~C
30アリーレンからなる群から選択され;
R
2は
、C
1~C
20アルキレン及びC
6~C
30アリーレンからなる群から選択され;及び
R
3は
、C
2~C
20アルキレン及びC
6~C
30アリーレンからなる群から選択される)
を有するポリアミドであって、
ポリアミドが、
-
式(II):
(式中、1<m≦20である)
の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
以下、
- 6-アミノヘキサン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のアミノカルボン酸、及び/又は
- ドデカノラクタム、並びにカプロラクタム及びドデカノラクタ
ムの混合物からなる群から選択される、少なくとも1種のラクタム
からなる群から選択される成分の少なくとも1種と
を含む混合物の縮合生成物である、
ポリアミド。
【請求項2】
60≦n
p≦100である、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
ASTM D3418に従って測定されて少なくとも100℃のガラス転移温度を有する、請求項1又は2に記載のポリアミド。
【請求項4】
-
式(II):
(式中、1<m≦20である)
の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
- 11-アミノウンデカン酸と
を含む混合物の縮合生成物である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項5】
mが2又は3である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項6】
80≦n
p≦100である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項7】
ASTM D3418に従って測定されて少なくとも225℃の溶融温度(Tm)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項8】
ASTM
D6866に従って50%超のバイオ系含有量を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項9】
- 請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1種のポリアミド、
- 補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される成分の少なくとも1つ
を含むポリアミド組成物(C)。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド又は請求項9に記載の組成物(C)を含む物品。
【請求項11】
空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系並びに燃料系における、請求項10に記載の物品の使用。
【請求項12】
携帯用エレクトロニクスにおける、請求項10に記載の物品の使用。
【請求項13】
3次元(3D)物体を付加製造システムで製造する方法であって、
- 請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド又は請求項9に記載の組成物(C)を含む部品材料を提供する工程と、
- 前記部品材料から前記3次元物体の層を印刷する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年6月14日に出願された米国仮特許出願第62/519,486号及び2017年8月29日に出願された欧州特許出願公開第17188341.6号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、少なくとも1モル%の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)を含むポリアミドに関する。本発明は、そのようなポリアミドを含むポリマー組成物並びにそれを含む物品及び自動車用途、LEDパッケージング、電気及びエレクトロニクスデバイス、携帯用エレクトロニクス、ガスバリアパッケージング、配管設備及び石油ガス用途において前記物品を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
PA66などの一定数のポリアミドは、280℃よりも低い溶融温度(Tm)を有する。PA46など、290℃超の溶融温度を有するポリアミドと比べて、これらのポリマーの利点は、それらの合成及び溶融体での加工についてはるかにより幅広い温度ウィンドウを有し、それによって合成及び加工の両方においてより多い柔軟性及びロバスト性を提供し、それは、多くの場合、より少ない分解に由来するより少ない着色の部品をもたらすことである。しかしながら、これらのポリアミドは、一般に、例えば、とりわけ自動車でのボンネット下用途などの140℃超の操作温度で高い剛性を必要とする用途でのそれらの使用を制限する低いガラス転移温度(Tg)を有する。一例として、PA66は、260℃に等しいTm及び70℃に等しいTgを有する。別の例は、240℃に等しいTm及び85℃に等しいTgを有するMXD6である。
【0004】
本出願人は、3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)から誘導されるポリアミドが高いTg温度を示し、それが、例えば自動車用途向けのような、高い耐温度性を必要とする用途向けにそれから製造されたポリアミドを非常に好適なものにすることを明らかにした。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明のポリアミドは、次式(I):
(式中、
n
p、n
q、n
r及びn
sは、それぞれ繰り返し単位p、q、r及びsのモル%であり;
繰り返し単位p、q、r及びsは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに配置されており;
n
p+n
q+n
r+n
s=100であり;
1≦n
p≦100であり;
1<m≦20であり;
R
1は、結合、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SO
3M)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C
15アリールオキシ及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC
1~C
15アルキル及びC
6~C
30アリールからなる群から選択され;
R
2は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル(-OH)、スルホ(-SO
3M)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C
15アリールオキシ及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC
1~C
20アルキル及びC
6~C
30アリールからなる群から選択され;及び
R
3は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシル(-OH)、スルホ(-SO
3M)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C
15アリールオキシ及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC
2~C
20アルキル及びC
6~C
30アリールからなる群から選択される)
を有する。
【0006】
本発明の実施形態によれば、mは、
1<m≦10であるか;又は
1<m≦5であるか;又は
m=2若しくは3であるようなものである。
【0007】
表現「ポリアミド」は、ホモポリアミド、すなわち専ら繰り返し単位pから構成されるもの又は1モル%以上の、例えば3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)に由来する繰り返し単位pを含むコポリアミドを示すために本明細書で用いられ、ここで、アルキルは、C2~C20である。本発明のコポリアミドは、例えば、少なくとも約1モル%、例えば少なくとも約5モル%、少なくとも約10モル%、少なくとも約15モル%、少なくとも約20モル%、少なくとも約25モル%、少なくとも約30モル%、少なくとも約35モル%、少なくとも約40モル%、少なくとも約45モル%、少なくとも約50モル%、少なくとも約55モル%、少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%の、例えば3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)に由来する繰り返し単位pを含み得る。
【0008】
本発明のポリアミドは、1,000g/モル~40,000g/モル、例えば2,000g/モル~35,000g/モル又は4,000~30,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有し得る。数重量平均分子量Mnは、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0009】
本発明のコポリアミドにおいて、繰り返し単位qは、脂肪族又は芳香族であり得る。本発明の目的のために、表現「芳香族繰り返し単位」は、少なくとも1つの芳香族基を含む任意の繰り返し単位を意味することを意図する。芳香族繰り返し単位は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合、又は少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの重縮合、又は芳香族アミノカルボン酸の重縮合によって形成され得る。本発明の目的のために、ジカルボン酸又はジアミンは、それが1つ又は2つ以上の芳香族基を含む場合に「芳香族」と考えられる。
【0010】
本発明のコポリアミドにおいて、繰り返し単位rは、脂肪族であり、R3は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ及びC6~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換された線状、分岐又は環状C2~C14アルキル又はC6~C30アリールである。
【0011】
本発明のコポリアミドは、例えば、繰り返し単位p及びq、又は繰り返し単位p及びr、又は繰り返し単位p及びs、又は繰り返し単位p、q及びsから構成され得る。繰り返し単位p、q、r及びsは、ブロックにおいて、交互に又はランダムに、好ましくはランダムに配置されている。
【0012】
本出願において、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり;
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に想定される関連実施形態において、要素又は成分はまた、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであり得るか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群から選択することができ、要素又は成分のリスト中に列挙されたいかなる要素又は成分もそのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり;
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0013】
本明細書の全体にわたり、全ての温度は、度摂氏(℃)単位で示される。
【0014】
特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で用いる場合、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル及びシクロプロピルである。特に具体的に記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ若しくはC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1個以上の置換基で置換され得、ただし、置換基が立体的に相溶性であり、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0015】
用語「アリール」は、フェニル、インダニル又はナフチル基を意味する。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれることもあり、例えばシクロ芳香族基及び2つのC1~C6基(例えば、メチル又はエチル)から構成され得る。アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えばN、O又はSも含み得、この場合、「ヘテロアリール」と呼ばれることもあり、これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族システムに縮合し得る。そのようなヘテロ芳香環には、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれるが、それらに限定されない。アリール又はヘテロアリール置換基は、非置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ若しくはC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1個以上の置換基で置換され得、ただし、置換基が立体的に相溶性であり、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0016】
アルキルがC2~C20である3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)は、バイオマス炭水化物、例えばセルロース、デンプン、ヘミセルロース、砂糖等から得られる、フルフラールから誘導することができるモノマーである。有利には、ポリアミドは、アルキルがC2~C20であるバイオ系3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)の縮合から例えば誘導された少なくとも部分的にバイオ系である。
【0017】
ある実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、
- 少なくとも1モル%の、式(II):
(式中、1<m≦20、好ましくは1<m≦10であり、より好ましくはm=2又は3である)
の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)と;
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分又はその誘導体及び少なくとも1種のジアミン成分、
- 少なくとも1種のアミノカルボン酸、及び/又は
- 少なくとも1種のラクタム
からなる群から選択される成分の少なくとも1つと
を含む混合物の縮合生成物である。
【0018】
表現「少なくとも」は、本明細書では、「~に等しいか又はそれを超える」を意味することを意図する。例えば、表現「少なくとも1モル%の3-AABaモノマー」は、本明細書では、コポリアミドが1モル%の3-AABaモノマー又は1モル%超の3-AABaモノマーを含み得ることを意味する。表現「少なくとも」は、そのため、本発明との関連で数学的記号「≧」に対応する。
【0019】
表現「未満」は、本発明との関連で数学的記号「<」に対応する。例えば、表現「100モル%未満の3-AABaモノマー」は、本明細書では、コポリアミドが厳密に100モル%未満の3-AABaモノマーを含むことを意味し、そのため、3-AABaモノマーと少なくとも1種の別のモノマー又はジアミン/二酸組み合わせとから製造されたコポリアミドとしての資格がある。
【0020】
表現「その誘導体」は、表現「3-AABaモノマー」と組み合わせて用いられる場合、重縮合条件で反応を受けてアミド結合を生成するいずれの誘導体も意味することを意図する。アミド形成誘導体の例としては、アシル基、例えば置換された又は非置換の脂肪族アシル及び芳香族アシル基が挙げられる。これらのアシル基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ベンゾイル、トルオイル及びキシロイルである。
【0021】
この実施形態によれば、ジカルボン酸成分は、少なくとも2個の酸性部分-COOHを含む多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。この実施形態によれば、ジアミン成分は、少なくとも2個のアミン部分-NH2を含む多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。
【0022】
表現「その誘導体」は、表現「カルボン酸」と組み合わせて用いられる場合、重縮合条件で反応を受けてアミド結合を生成するいずれの誘導体も意味することを意図する。アミド形成誘導体の例としては、そのようなカルボン酸のモノ-又はジメチル、エチル又はプロピルエステルなどのモノ-又はジアルキルエステル;そのモノ-又はジアリールエステル;その一酸又は二酸ハロゲン化物;そのカルボン酸無水物及びその一酸又は二酸アミド、モノ-又はジカルボキシレート塩が挙げられる。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸の非限定的な例は、とりわけ、シュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH2-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH2)2-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH2)3-COOH]、2,2-ジメチルグルタル酸[HOOC-C(CH3)2-(CH2)2-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH2)4-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-CH2-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH2)5-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH2)6-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH2)7-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH2)8-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH2)9-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH2)10-COOH]、トリデカン二酸[HOOC-(CH2)11-COOH]、テトラデカン二酸[HOOC-(CH2)12-COOH]、ペンタデカン二酸[HOOC-(CH2)13-COOH]、ヘキサデカン二酸[HOOC-(CH2)14-COOH]、オクタデカン二酸[HOOC-(CH2)16-COOH]である。このカテゴリーに1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸も含まれる。
【0024】
芳香族二酸の非限定的な例は、とりわけ、イソフタル酸(IPA)及びテレフタル酸(TPA)などのフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’-ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0025】
芳香族ジアミン(NNar)の非限定的な例は、とりわけ、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)、p-キシリレンジアミン(PXDA)及びm-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0026】
脂肪族ジアミン(NNal)の非限定的な例は、とりわけ、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン(すなわち1,6-ジアミノヘキサン)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、2,5-ジアモノテトラヒドロフラン及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンである。このカテゴリーにイソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジアミンも含まれる。
【0027】
脂肪族ジアミン(NNal)は、ポリエーテルジアミンの群の中で選択することもできる。ポリエーテルジアミンは、エトキシレート化(EO)主鎖及び/又はプロポキシレート化(PO)主鎖をベースとすることができ、それらは、エチレンオキシド末端、プロピレンオキシド末端又はブチレンオキシド末端ジアミンであり得る。そのようなポリエーテルジアミンは、例えば、商品名Jeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)(Hunstman)で販売されている。
【0028】
本発明の実施形態によれば、コポリアミドは、少なくとも1種のアミノカルボン酸(繰り返し単位r)及び/又は少なくとも1種のラクタム(繰り返し単位r)を含む。
【0029】
アミノカルボン酸は、3~15個の炭素原子、例えば4~13個の炭素原子を有し得る。ある実施形態によれば、アミノカルボン酸は、6-アミノヘキサン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
ラクタムは、3~15個の炭素原子、例えば4~13個の炭素原子を有し得る。ある実施形態によれば、ラクタムは、カプロラクタム、ドデカノラクタム及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
ある実施形態によれば、コポリアミドは、
- 少なくとも1モル%の、式(II):
(式中、1<m≦20、好ましくは1<m≦10であり、より好ましくはm=2又は3である)
の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分又はその誘導体及び少なくとも1種のジアミン成分、
- 少なくとも1種のアミノカルボン酸、及び/又は
- 少なくとも1種のラクタム
からなる群から選択される成分の少なくとも1つと
を含む混合物の縮合生成物である。
【0032】
本発明の実施形態によれば、コポリアミドは、3-(アミノメチル)安息香酸モノマー(3-AMBa)(繰り返し単位)を含む。
【0033】
2016年12月8日に番号PCT/中国特許出願公開第2016/108997号明細書の下で出願された同時係属特許出願に記載されているように、3-(アミノメチル)安息香酸(3-AMBa)は、バイオマス炭水化物、例えばセルロース、デンプン、ヘミセルロース、砂糖等から得られる、フルフラールからも誘導することができるモノマーである。
【0034】
ある実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、
- 式(II):
(式中、1m≦20、好ましくは1<m≦10であり、より好ましくはm=2又は3である)
の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
- 3-(アミノメチル)安息香酸(3-AMBa)と
を含む混合物の縮合生成物である。
【0035】
ある実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、少なくとも部分的にバイオベースであり、例えば全体的にバイオベースである。
【0036】
ある実施形態によれば、コポリアミドは、
- 少なくとも1モル%の、式(II)の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
- ジカルボン酸成分は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸及びそれらの混合物からなる群から選択されることと、
- ジアミン成分は、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアモノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクトアン、1,10-ジアミンデカン、H2N-(CH2)3-O-(CH2)2-O(CH2)3-NH2、m-キシリレンジアミン、p-キシリレン及びそれらの混合物からなる群から選択されることと
を含む混合物の縮合生成物である。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、コポリアミドは、
- 少なくとも1モル%の、式(II)の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
- ジカルボン酸成分は、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びそれらの混合物からなる群から選択されることと、
- ジアミン成分は、ヘキサメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択されることと
を含む混合物の縮合生成物である。
【0038】
別の実施形態によれば、コポリアミドは、
- 少なくとも1モル%の、式(II)の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)又はその誘導体と、
- カプロラクタム、ドデカノラクタム及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のラクタムと
を含む混合物の縮合生成物である。
【0039】
本発明のポリアミドは、少なくとも1モル%の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)モノマー又はそれらの誘導体を含む。
【0040】
別の好ましい実施形態によれば、コポリアミドは、少なくとも50モル%の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)モノマー又はそれらの誘導体、例えば少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%の3-AABa又はその誘導体を含む。この実施形態によれば、コポリアミドは、
50≦np≦100、
60≦np≦100、
70≦np≦100、又は
80≦np≦100であるようなものである。
【0041】
本発明のポリアミドは、約100モル%の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)モノマー又はそれらの誘導体を含み、ここで、アルキルは、C2~C20である。本発明のコポリアミドは、いくつかの別個の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)モノマー又はそれらの誘導体、例えば2又は3種の別個の3-AABaモノマーを含み得る。
【0042】
本発明のコポリアミドは、100モル%未満の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)モノマー又はそれらの誘導体を含む。
【0043】
別の好ましい実施形態によれば、コポリアミドは、99モル%未満の3-(アミノアルキル)安息香酸(3-AABa)モノマー又はそれらの誘導体、例えば98モル%未満、97モル%未満、96モル%未満の3-AABaを含む。この実施形態によれば、コポリアミドは、
5≦np≦99、
5≦np≦98、
5≦np≦97、又は
5≦np≦96であるようなものである。
【0044】
np、nq、nr及びnsは、それぞれ各繰り返し単位p、q、r及びsのモル%である。本発明の異なる実施形態の例として、本発明のコポリアミドが専ら繰り返し単位p及びqから構成される場合、np+nq=100であり、nr及びns=0である。この場合、繰り返し単位qは、ジアミン成分及び二酸成分から構成され、縮合反応に添加されるジアミンのモル数及び二酸のモル数は、等しい。
【0045】
ある実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、ASTM D3418に従って測定されて少なくとも約90℃のガラス転移温度(Tg)を有する。この実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、例えば、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃又は少なくとも約105℃の融点を有し得る。
【0046】
ある実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、ASTM D3418に従って測定されて少なくとも約200℃の溶融温度(Tm)を有する。この実施形態によれば、本発明のコポリアミドは、例えば、少なくとも約210℃、少なくとも約215℃、少なくとも約220℃又は少なくとも約225℃の溶融温度(Tm)を有し得る。
【0047】
本発明の実施形態によれば、コポリアミドは、半結晶性であり、少なくとも80モル%の3-(アミノエチル)安息香酸(3-AEBa)と、
- 少なくとも1種のジカルボン酸成分又はその誘導体及び少なくとも1種のジアミン成分、
- 少なくとも1種のアミノカルボン酸、及び/又は
- 少なくとも1種のラクタム
からなる群から選択される成分の少なくとも1つと
を含む混合物の縮合生成物である。
【0048】
ある実施形態によれば、コポリアミドは、ASTM D6866に従って50%超(又は60%超、70%超、80%超又は更に90%超)のバイオ系含有量、すなわち再生可能源からの炭素原子の%を示す。
【0049】
本発明のコポリアミドは、ポリアミド及びポリフタルアミドの合成に適応した任意の従来法、例えばモノマー及びコモノマーの水溶液の熱重縮合によって調製することができる。コポリアミドは、アミン又はカルボン酸部分と反応することができる、一官能性分子であり、且つコポリアミドの分子量を制御するために使用される連鎖リミッターを含有し得る。例えば、連鎖リミッターは、酢酸、プロピオン酸及び/又はベンジルアミンであり得る。触媒も使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属ハイポホスファイト及びフェニルホスフィン酸である。
【0050】
ポリアミド組成物(C)
ポリアミド組成物(C)は、上記の本発明のポリアミドを含む。
【0051】
ポリアミドは、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%超、35重量%超、40重量%超又は45重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0052】
ポリアミドは、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満又は60重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0053】
ポリアミドは、例えば、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として35~60重量%、例えば40~55重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0054】
組成物(C)は、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1種の成分も含み得る。
【0055】
幅広い選択肢の補強剤(補強繊維又はフィラーとも呼ばれる)が本発明による組成物に添加され得る。それらは、繊維状及び粒子状の補強剤から選択することができる。繊維状補強フィラーは、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の、長さと、幅及び厚さの最大との間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。
【0056】
補強フィラーは、鉱物フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0057】
繊維状フィラーの中で、ガラス繊維が好ましく、それらには、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのchapter5.2.3,p.43~48に記載されているようなチョップドストランドA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、フィラーは、繊維状フィラーから選択される。それは、より好ましくは、高温用途に耐えることができる補強繊維である。
【0058】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として15重量%超、20重量%超、25重量%超又は30重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0059】
補強フィラーは、例えば、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として20~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0060】
本発明の組成物(C)は、強化剤も含み得る。強化剤は、一般に、低いガラス転移温度(Tg)のポリマーであり、例えば室温未満、0℃未満、更に-25℃未満のTgを有する。その低いTgの結果として、強化剤は、典型的には室温でエラストマー性である。強化剤は、官能化されたポリマー主鎖であり得る。
【0061】
強化剤のポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-ビニルアセテート(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー又は上記の1種以上の混合物を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0062】
強化剤が官能化されている場合、主鎖の官能化は、官能化を含むモノマーの共重合又は更なる成分でのポリマー主鎖のグラフト化によって起こることができる。
【0063】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンと、ブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたマレイミドコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0064】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として1重量%超、2重量%超又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0065】
組成物(C)は、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、線状低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤など、当技術分野で一般に使用されている他の従来の添加剤も含み得る。
【0066】
組成物(C)は、1種以上の他のポリマー、好ましくは本発明のポリアミドと異なるポリアミドも含み得る。とりわけ、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド及びより一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と脂肪族飽和若しくは芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との間の重縮合によって得られるポリアミドなど、半結晶性又は非晶性ポリアミドを挙げることができる。
【0067】
ポリアミド組成物(C)の調製
本発明は、上で詳述されたような組成物(C)を製造する方法であって、ポリアミドと、特定の成分、例えばフィラー、強化剤、安定化剤及び任意の他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドする工程を含む方法に更に関する。
【0068】
任意の溶融ブレンディング方法は、本発明との関連でポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために用いられ得る。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリューニーダー又はバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーへ供給され得、添加工程は、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式に徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部がまず添加され、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形を用いて補強された組成物を調製し得る。
【0069】
物品及び用途
本発明は、上記のポリアミドを含む物品及び上記のポリアミド組成物(C)を含む物品にも関する。
【0070】
物品は、とりわけ、自動車用途、例えば空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系及び燃料系において使用することができる。物品は、LEDパッケージング、携帯用エレクトロニクス、石油ガス用途及び配管設備において使用することもできる。電気及びエレクトロニクスデバイスの例は、コネクタ、コンタクタ及びスイッチである。コポリアミドは、単層又は多層物品における包装用途向けのガスバリア材料としても使用され得る。
【0071】
物品は、本発明のポリアミド又はポリアミド組成物(C)から、熱可塑性樹脂に適応した任意のプロセス、例えば押出、射出成形、ブロー成形、回転成形又は圧縮成形によって成形することができる。
【0072】
物品は、本発明のポリアミド又はポリアミド組成物(C)から、例えばフィラメントの形態の材料の押出の工程を含むか、又はこの場合には粉末の形態の材料のレーザー焼結の工程を含む方法によって印刷することができる。
【0073】
本発明は、3次元(3D)物体を付加製造システムで製造する方法であって、
- 本発明のポリアミド又はポリアミド組成物(C)を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含む方法にも関する。
【0074】
ポリアミド又はポリアミド組成物(C)は、そのため、3D印刷のプロセス、例えば熱溶解積層法(FDM)としても知られる融解フィラメント製造法に使用されるスレッド又はフィラメントの形態であり得る。
【0075】
ポリアミド又はポリアミド組成物(C)は、3D印刷のプロセス、例えば選択的レーザー焼結法(SLS)に使用される、粉末、例えば実質的に球形の粉末の形態でもあり得る。
【0076】
ポリアミド、組成物(C)及び物品の使用
本発明は、空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系及び燃料系又は携帯用エレクトロニクス、例えば携帯用電子デバイスにおける上記のコポリアミド、組成物(C)又は物品の使用に関する。
【0077】
本発明は、物体を3D印刷するための上記のコポリアミド又は組成物(C)の使用にも関する。
【0078】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0079】
原材料
11-アミノウンデカン酸(Fisher Scientific)
3-AEBa:次の方法に従って調製された3-(2-アミノエチル)安息香酸。5mLのエーテル中の2.0gの3-(トリフルオロメチル)フェニルアセトニトリル(Sigma Aldrich)の溶液を0℃で冷却しながら20mLのエーテル中の0.5gの水素化リチウムアルミニウムの溶液に滴加した。混合物を次に室温で4時間攪拌し、次に0.5mlの水、0.5mlの15%水酸化ナトリウム溶液及び1.5mLの水の順次添加によってクエンチした。混合物を濾過し、濾液を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。濾過された溶液をエーテル中の1Nの塩化水素溶液で酸性化し、沈澱した固体を集めて2-(3-トリフルオロメチルフェニル)エチルアミン塩酸塩を得た。1.38gの2-(3-トリフルオロメチルフェニル)エチルアミン塩酸塩を3.5gの濃硫酸中で100℃に3時間加熱した。冷えた溶液を100mLのエーテルで希釈し、結果として生じた沈澱物を集めて3-(2-アミノエチル)-安息香酸を硫酸塩として得た。そのようにして得られた生成物を次に10mLの水に溶解させ、1Nの水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを7までにした。
【0080】
11-アミノウンデカン酸(Fisher Scientific)
ポリアミド調製
本発明のポリアミドは、圧力調整弁を装着した留出物ラインを備えた電熱オートクレーブにおいて類似の方法に従って調製した。実施例2の調製では、反応器に0.552g(3.34ミリモル)の3-AEBa、0.119g(0.59ミリモル)の11-アミノウンデカン酸及び1gの脱イオン水を装入した。反応器を密封し、圧力逃がし弁を17バールに設定し、反応混合物を285℃に加熱した。圧力を大気圧に下げ、温度を300℃に上げた。反応混合物を15分間300℃に保ち、次に1時間内に200℃に、次に室温に冷却した。得られた生成物を210℃で4時間にわたって更に重合させた。
【0081】
試験
温度遷移(Tg、Tm)
様々なコポリアミドのガラス転移温度及び溶融温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度を用いてASTM D3418に従って示差走査熱量分析を使用して測定した。3つの走査:340℃までの第1加熱、続いて30℃への第1冷却、続いて350℃までの第2加熱を各DSC試験について使用した。Tg及びTmは、第2加熱から測定した。ガラス転移温度及び溶融温度を下の表1に一覧にする。
【0082】
【0083】
3-AEBaから誘導されたポリアミドは、3-(アミノメチル)安息香酸から誘導されたポリアミド(米国特許第3,438,948号明細書に記載されているようにTm=346℃)よりもほるかに低いTmを示す。この結果は意外である。すなわち、260℃のTmを有するPA5と1つのみのメチレン-CH2-だけ異なるPA6の223℃のTmに基づいて、溶融温度のはるかにより少ない低下が予期された。実施例1のポリアミドは、商業的に入手可能な半芳香族MXD6(Tm=243℃、アジピン酸とメタ-キシリレンジアミンとの反応によって得られるホモポリアミド)の溶融温度に類似したTmを有するが、MXD6よりも著しく高いTgを示す。これは、本発明のポリアミドを、温度がボンネットの下で通常100℃超である自動車用途におけるような使用温度で高い弾性率を必要とする用途向けに好適なものにする。
【0084】
意外にも、15モル%の11-ウンデカン酸と85モル%の3-AEBaとの共重合は、その融点に影響を及ぼさないが、そのTgは、はるかにより低く、それは、コポリアミドにとって極めて異例である。