(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】繰出容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/00 20060101AFI20230707BHJP
A45D 40/04 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A45D40/00 P
A45D40/00 L
A45D40/04
(21)【出願番号】P 2020033280
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彰紀
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-090720(JP,U)
【文献】特開平08-266330(JP,A)
【文献】実開平05-013313(JP,U)
【文献】特開2002-000348(JP,A)
【文献】実開昭63-202214(JP,U)
【文献】特開2002-223847(JP,A)
【文献】特開平9-65925(JP,A)
【文献】特開2004-343(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状内容物を保持する保持筒と、
前記保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、
前記規制筒に、前記保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、
前記外装筒に対する前記規制筒の上昇移動を規制する係止筒部材と、を備え、
前記保持筒に、前記縦孔を通して前記螺旋溝に挿入された被案内突起が形成され、
前記係止筒部材は、下部が前記外装筒の上端部内に嵌合され、かつ上部が前記外装筒の上端開口から上方に突出した本体筒を備え、
前記本体筒の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、前記外装筒の上端開口縁に載置されたフランジ部が設けられ、
前記本体筒の上部には、有頂筒状のキャップ内に着脱可能に嵌合される金属筒が、前記フランジ部の上面を露出させた状態で外嵌されている、繰出容器。
【請求項2】
前記フランジ部の上面に、前記金属筒の下端部が挿入された環状溝が形成されている、請求項1に記載の繰出容器。
【請求項3】
前記フランジ部は、合成樹脂材料で形成され、
前記フランジ部の上面に、金属を主体とする膜体が設けられている、請求項1または2に記載の繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、棒状内容物を保持する保持筒と、保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、規制筒に、保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、外装筒に対する規制筒の上昇移動を規制する係止筒部材と、を備え、保持筒に、縦孔を通して螺旋溝に挿入された被案内突起が形成された繰出容器が知られている。
この繰出容器では、外装筒および規制筒を周方向に相対回転することにより、被案内突起が、縦孔の内周面により規制筒に対する周方向の移動が規制された状態で、螺旋溝内を相対移動することで、保持筒が、外装筒および規制筒に対して前記中心軸線に沿う軸方向に移動する。
【0003】
また、係止筒部材が、下部が外装筒の上端部内に嵌合され、かつ上部が外装筒の上端開口から上方に突出した合成樹脂製の本体筒を備え、本体筒の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、外装筒の上端開口縁に載置されたフランジ部が形成され、本体筒の上部に、有頂筒状のキャップ内に着脱可能に嵌合される金属筒が外嵌され、金属筒に、本体筒のフランジ部の上面を覆う金属フランジ部が形成された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の繰出容器では、金属筒のうち、特に、筒部分の外周面と金属フランジ部の上面との接続部分を、例えば研磨等の表面処理により鏡面に仕上げることが困難であり、鏡面に仕上げられた金属筒を有する繰出容器を容易に製造することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鏡面に仕上げられた金属筒を有していても、容易に製造することができる繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る繰出容器は、棒状内容物を保持する保持筒と、前記保持筒に外装され、径方向に貫く縦孔が形成された規制筒と、前記規制筒に、前記保持筒の中心軸線回りに沿う周方向に相対回転可能に外装され、内周面に螺旋溝が形成された外装筒と、前記外装筒に対する前記規制筒の上昇移動を規制する係止筒部材と、を備え、前記保持筒に、前記縦孔を通して前記螺旋溝に挿入された被案内突起が形成され、前記係止筒部材は、下部が前記外装筒の上端部内に嵌合され、かつ上部が前記外装筒の上端開口から上方に突出した本体筒を備え、前記本体筒の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、前記外装筒の上端開口縁に載置されたフランジ部が設けられ、前記本体筒の上部には、有頂筒状のキャップ内に着脱可能に嵌合される金属筒が、前記フランジ部の上面を露出させた状態で外嵌されている。
【0008】
この発明によれば、金属筒が、フランジ部の上面を露出させた状態で、本体筒の上部に外嵌されていて、フランジ部の上面を覆う金属フランジ部を有していないので、金属筒の外周面を、表面処理により容易に鏡面に仕上げることができる。
金属筒が、有頂筒状のキャップ内に着脱可能に嵌合されるので、樹脂筒がキャップ内に着脱可能に嵌合される構成と比べて、キャップを着脱する使用者に高級品を操作するときの感触を与えることができる。
【0009】
前記フランジ部の上面に、前記金属筒の下端部が挿入された環状溝が形成されてもよい。
【0010】
この場合、フランジ部の上面に、金属筒の下端部が挿入された環状溝が形成されているので、金属筒における下端開口縁と外周面とがなす角部分が、環状溝内に位置し外部に露出するのを防ぐことができる。
【0011】
前記フランジ部は、合成樹脂材料で形成され、前記フランジ部の上面に、金属を主体とする膜体が設けられてもよい。
【0012】
この場合、フランジ部の上面に、金属を主体とする膜体が設けられているので、金属筒に金属フランジ部を設けなくても、外装筒の上端部に軸方向で隣接し、かつキャップを外した状態で外部から視認できる部分の外観を、現行と同様に維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鏡面に仕上げられた金属筒を有していても、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る繰出容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1を参照し、本発明の一実施形態に係る繰出容器を説明する。
繰出容器1は、保持筒11、規制筒12、外装筒13、および係止筒部材15を備えている。保持筒11、規制筒12、外装筒13、および係止筒部材15は、共通軸と同軸に配設されている。
以下、この共通軸を中心軸線Oといい、中心軸線Oに沿う軸方向から見て、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0016】
保持筒11は、棒状内容物を、軸方向のうちの一方側に突出させ、かつ他方側に突出させない状態で保持している。
以下、軸方向のうち、前記一方側を上側といい、その反対側を下側という。棒状内容物としては、例えば化粧料(口紅、リップクリーム、若しくはスティックアイシャドー等)、薬剤、または糊等が挙げられる。
【0017】
保持筒11の下端部に、径方向の外側に向けて突出する被案内突起11aが形成されている。被案内突起11aは、保持筒11に2つ形成され、中心軸線Oを径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。被案内突起11aは、円柱状に形成されている。被案内突起11aの直径は、被案内突起11aの高さより大きい。なお、被案内突起11aの直径は、被案内突起11aの高さ以下としてもよい。
【0018】
規制筒12は、保持筒11に外装されている。規制筒12に、径方向に貫く縦孔17が形成されている。保持筒11は、規制筒12内に軸方向に移動可能に嵌合されている。規制筒12の上端開口縁は、保持筒11の上端開口縁より上方に位置している。規制筒12の上端開口縁は、棒状内容物の上端縁より上方に位置している。規制筒12の下端開口縁は、保持筒11の下端開口縁より下方に位置している。
【0019】
縦孔17は、規制筒12の下端開口縁から上方に向けて延びている。縦孔17の上端縁は、規制筒12における軸方向の中央部より下方に位置している。縦孔17の上端縁は、保持筒11の上端開口縁より下方で、かつ保持筒11の軸方向の中央部より上方に位置している。縦孔17の内周面のうち、周方向を向く側面17aは、被案内突起11aの外周面に当接、若しくは近接している。
【0020】
外装筒13は、規制筒12に周方向に相対回転可能に外装されている。図示の例では、外装筒13は、螺旋筒21および外筒22を備えている。なお、螺旋筒21および外筒22は一体に形成されてもよい。螺旋筒21は、外筒22内に挿入されている。螺旋筒21の外周面と外筒22の内周面との間には、径方向の隙間が設けられている。螺旋筒21の外周面、および外筒22の内周面に、螺旋筒21および外筒22の周方向の相対的な回転移動を規制する第1規制部21a、22aが各別に形成されている。螺旋筒21および外筒22それぞれの上端開口縁は、縦孔17の上端縁より上方で、かつ保持筒11の上端開口縁より下方に位置している。
【0021】
螺旋筒21の内周面は、規制筒12の外周面に当接、若しくは近接している。螺旋筒21の内周面に、周方向に延びる螺旋溝21bが形成されている。螺旋溝21bは、螺旋筒21の内周面に、軸方向の位置を異ならせて複数周にわたって延びている。螺旋溝21bに、保持筒11の被案内突起11aが、規制筒12の縦孔17を通して挿入されている。これにより、保持筒11が、規制筒12に対して、周方向の移動が規制された状態で、軸方向に移動可能になっている。
【0022】
係止筒部材15は、外装筒13に対する規制筒12の上昇移動を規制している。係止筒部材15は、合成樹脂製の本体筒23および内筒24を備えている。なお、本体筒23および内筒24は、一体に形成されてもよい。
【0023】
本体筒23は、外装筒13の上端部内に嵌合された下部と、外装筒13の上端開口から上方に突出した上部と、を備えている。本体筒23の下部は、外筒22の上端部内に嵌合されている。本体筒23の上端部に、径方向の内側に向けて突出した第1環状突起23aが形成されている。第1環状突起23aの内周面は、規制筒12の外周面に近接している。本体筒23の下部内に、螺旋筒21の上端部が嵌合されている。本体筒23の下部、および螺旋筒21に、本体筒23および螺旋筒21の周方向の相対的な回転移動を規制する第2規制部23b、21cが各別に形成されている。
【0024】
内筒24は、本体筒23の上部内に嵌合されている。内筒24の外周面、および本体筒23の上部の内周面に、内筒24および本体筒23の周方向の相対的な回転移動を規制する第3規制部24a、23cが各別に形成されている。内筒24の下端開口縁が、規制筒12の外周面に形成された係止突部12bに、係止突部12bの上方から係合することで、外装筒13に対する規制筒12の上昇移動が規制されている。内筒24の上端部は、規制筒12の外周面に当接している。内筒24の上端開口縁は、本体筒23の第1環状突起23aの下面に当接、若しくは近接している。
【0025】
本体筒23の外周面に、径方向の外側に向けて突出し、外装筒13の上端開口縁に載置されたフランジ部25が設けられている。フランジ部25は、外筒22の上端開口縁に載置されている。フランジ部25は、合成樹脂材料で形成され、本体筒23と一体に形成されている。フランジ部25の外周面は、外筒22の外周面と軸方向に段差なく連なっている。
フランジ部25の上面に、金属を主体とする不図示の膜体が設けられている。膜体の表面は、金属材料を表面処理により鏡面に仕上げたような光沢を有している。フランジ部25の外周面にも前記膜体が設けられている。なお、フランジ部25における上面および外周面に、前記膜体を設けなくてもよい。膜体は、例えば蒸着、若しくはメッキ等により形成される。
【0026】
本体筒23の上部には、有頂筒状のキャップC内に着脱可能に嵌合される金属筒26が、フランジ部25の上面を露出させた状態で外嵌されている。金属筒26の上端部に、径方向の内側に向けて突出した第2環状突起26aが形成されている。第2環状突起26aの下面は、本体筒23の第1環状突起23aの上面に当接している。金属筒26は、第2環状突起26aを除く全体が、軸方向に真直ぐ延びている。金属筒26の外周面は、外筒22の内周面より径方向の内側に位置している。
【0027】
フランジ部25の上面に、金属筒26の下端部が挿入された環状溝27が形成されている。環状溝27は、フランジ部25の上面における内周縁部に形成されている。環状溝27は、周方向の全長にわたって連続して延びている。環状溝27の溝底面は、外筒22の上端開口縁より上方に位置している。環状溝27の溝底面は、金属筒26の下端開口縁より下方に位置している。
【0028】
キャップCは、嵌合筒C1および被覆筒C2を備え、規制筒12および棒状内容物を覆っている。嵌合筒C1は、合成樹脂材料で有頂筒状に形成されている。被覆筒C2は、金属材料で有頂筒状に形成されている。嵌合筒C1は、被覆筒C2内に挿入されて固定されている。嵌合筒C1内に、金属筒26が嵌合されている。嵌合筒C1および被覆筒C2それぞれの下端開口縁は、フランジ部25の上面に膜体を介して当接している。
【0029】
以上説明したように、本実施形態による繰出容器1によれば、金属筒26が、フランジ部25の上面を露出させた状態で、本体筒23の上部に外嵌されていて、フランジ部25の上面を覆う金属フランジ部を有していないので、金属筒26の外周面を、表面処理により容易に鏡面に仕上げることができる。
金属筒26が、有頂筒状のキャップC内に着脱可能に嵌合されるので、樹脂筒がキャップC内に着脱可能に嵌合される構成と比べて、キャップCを着脱する使用者に高級品を操作するときの感触を与えることができる。
【0030】
フランジ部25の上面に、金属筒26の下端部が挿入された環状溝27が形成されているので、金属筒26における下端開口縁と外周面とがなす角部分が、環状溝27内に位置し外部に露出するのを防ぐことができる。
【0031】
フランジ部25の上面に、金属を主体とする膜体が設けられているので、金属筒26に金属フランジ部を設けなくても、外装筒13の上端部に軸方向で隣接し、かつキャップCを外した状態で外部から視認できる部分の外観を、現行と同様に維持することができる。
【0032】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0033】
本体筒23を合成樹脂材料で形成し、フランジ部25を金属材料で形成してもよい。この場合、フランジ部25を予め鏡面に仕上げておき、その後、フランジ部25をキャビティ内にセットした状態で、本体筒23を射出成形してもよい。
【0034】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 繰出容器
11 保持筒
11a 被案内突起
12 規制筒
13 外装筒
15 係止筒部材
17 縦孔
21b 螺旋溝
23 本体筒
25 フランジ部
26 金属筒
27 環状溝
C キャップ
O 中心軸線