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特許7308839層状構造を有するハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】層状構造を有するハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20230707BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20230707BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20230707BHJP
   C07F 1/02 20060101ALN20230707BHJP
   C07F 5/02 20060101ALN20230707BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B9/00 Z
C01B32/194
C07F19/00
C07F1/02
C07F5/02 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020537126
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 SE2018050933
(87)【国際公開番号】W WO2019054931
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】1751123-9
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520088638
【氏名又は名称】グラフマテック・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】タヘル,マモウン
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0144148(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370274(US,A1)
【文献】特開2012-240887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0103469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C01B 32/194
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
-炭素ベースの材料か、または前記の炭素ベースの材料以外の材料の基材かを含む第1層(1)、
-前記の炭素ベースの材料を含む第2層(2)、ならびに
-第1層および第2層(1、2)を分離し、相互接続させる第3の中間層(3)を含む層状構造を有する材料であって、
-前記の炭素ベースの材料が、少なくとも50原子百分率の炭素を含み、六方格子を有し、かつ前記の炭素ベースの材料を含む層(単数または複数)(1、2)が、炭素原子の大きさの1~20倍の厚さを有し、以下:
-前記の少なくとも1つの中間層(3)は、少なくとも2つの別々の環状平面基を含むイオンを有する塩を含む層であり、該塩はリチウムビス(サリチラト)ボレート [Li][BScB]塩又はナトリウムビス(サリチラト)ボレート [Na][BScB]塩であること;および
-前記の第3の中間層(3)は、少なくとも第2層(2)に接続されることを特徴とする材料。
【請求項2】
請求項1に記載の材料であって、第1層(1)が金属基材を含むことを特徴とし、前記の金属基材が、好ましくは以下の金属:Au、Ag、Al、Cu、Fe、Ti、Niまたはそれらの組み合わせのいずれか1つを主成分として含む材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の材料であって、炭素ベースの材料を含む、第1層および第2層のそれぞれ、または第2層が炭素原子の大きさの1~10倍の厚さを有することを特徴とする材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の材料であって、第3の中間層(3)の厚さが20nm未満であることを特徴とする材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の材料であって、該炭素ベースの材料が少なくとも99原子百分率(原子%)の炭素を含むことを特徴とする材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の材料であって、第1層および第2層のそれぞれがグラフェンからなるか、または第2層がグラフェンからなることを特徴とする材料。
【請求項7】
請求項1、3~6のいずれか1項に記載の材料であって、前記の材料がナノ複合材料であり、第1層および第2層がグラフェンからなり、グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])ナノ複合材料又はグラフェンナトリウムビス(サリチラト)ボレート (G[Na][BScB])ナノ複合材料を形成する材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本開示は、化学の分野に関し、特に、炭素ベースの層を相互接続しているかまたは炭素ベースの層を前記の炭素ベースの層以外の基材に接続している1以上の中間層を含む炭素ベースの多層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
[002] グラフェンは、一般に六方格子構造で配置された炭素原子の1原子の厚さの平面シートとして定義される。それは、高い電気伝導率および熱伝導率、優秀な機械的強度ならびに大きい表面積のようなその優れた特性により、非常に有望な材料として出現した。グラフェンは、フレキシブルエレクトロニクス、スーパーキャパシタ、センサー等のような異なる産業的適用に関して大きな注目を集めてきた。
【0003】
[003] イオン性液体(IL)は、低い融解温度を有する塩であり、好ましくは、室温で液体である。それらは、時に“デザイナー塩”と呼ばれ、無視できる蒸気圧、高い熱安定性および伝導性、イオン伝導性ならびに高い極性のようなそれらの調整可能な物理化学的特性のために、かなりの注目を集めてきた。イオン性液体は、エネルギー貯蔵、太陽電池、二酸化炭素捕捉、潤滑剤、フィルター等のような異なる適用のための可能性のある材料として研究されてきた。
【0004】
[004] イオン性液体によるグラフェン関連材料の官能化は、非常に興味深い話題である。1つの目標は、それらの構成材料/元素の個々の特性の他にタスク特有の特性を示す機能性ハイブリッドナノ材料を開発することである。そのようなナノ複合材料は、センサー、触媒、色素増感太陽電池、エネルギー貯蔵(バッテリーおよびスーパーキャパシタ)、潤滑添加剤等に関する可能性を有する。
【0005】
[005] 摩擦学的適用のための異なるイオン性液体によるグラフェンの共有結合性官能化(J. Mater. Chem. A 2016, 4, 926)、高性能スーパーキャパシタにおける使用のためのグラフェンフィルム(Adv. Mater. 2011, 23, 2833)、ポリ(イオン性液体)改質グラフェン電極に基づく高性能スーパーキャパシタ(ACS Nano 2011, 5, 436)、超高エネルギー密度を有するグラフェンベースのスーパーキャパシタ(Nano Lett. 2010, 10, 4863)および剥離した黒鉛フレークの間の陰イオンのインターカレーション、特にリチウムビス(オキサラト)ボレートのインターカレーション(J. of Phys. and Chem. of Solids 68 (2007) 394-399)のような数多くの異なる適用が、提案されてきた。陰イオンは、その酸化物頭部基がグラファイトに向かって配向され、フッ化物陰イオンがコインターカレートされた状態で、インターカレートされる。
【0006】
[006] さらに、米国特許第9,484,158号は、グラフェン-イオン性液体複合材料を作製するための方法および結果として得られるエネルギー貯蔵適用のためのグラフェン-イオン性液体複合材料電極を開示している。
【0007】
[007] 国際公開第2011/029006 A2号は、ウルトラキャパシタにおける使用のためのイオン性液体およびグラフェンベースのウルトラキャパシタを開示している。
【0008】
[008] 上記の例から明らかであるように、グラフェンの特性が利用されることができるであろう数多くの可能性のある適用が、存在する。しかし、多くの適用は、様々な適用において受ける可能性のある外部衝撃に耐えるのに十分な厚さの材料を形成するために、複数のグラフェン層が相互接続されることを必要とするであろう。
【0009】
[009] 単一のグラフェンシートが優秀な特性を有することは、周知である。しかし、純粋な集合的グラフェン製品またはグラフェン複合材料(例えば、いわゆる改質剤、例えば特定のポリマーの薄い中間層を有するグラフェンシート)の特性は、弱いシート間相互作用によって著しく損なわれる。従って、グラフェン自体の特性を劣化させることなく隣接するグラフェンシートおよびそれらの改質剤の間の相互作用ならびにグラフェンシートおよび異なる性質(例えば金属性および非金属性)の基材の間の相互作用を設計することは、依然として大きな課題である。
【0010】
[0010] 米国特許出願公開第2016264814号(International Business Machines Corp.)は、グラフェンの第1層、グラフェンの第2層;およびグラフェンの第1層をグラフェンの第2層に結合させる介在層を含む多層グラフェン構造を開示しており、ここで、介在層は、多芳香族化合物を含む。
【0011】
[0011] 米国特許第9,388,049号(Research & Business Foundation Sungkyunkwan University)は、還元型酸化グラフェンを製造する方法を開示しており、前記の方法は、酸化グラフェンおよび少なくとも2つの芳香族官能基を含む界面活性剤を含む酸化グラフェン分散溶液を形成し、酸化グラフェン分散溶液を還元して少なくとも2つの芳香族官能基を含む還元型酸化グラフェンの層状構造を得て、そして還元型酸化グラフェンの層状構造を溶媒中で分散させて多層還元型酸化グラフェンを製造することを含む。
【0012】
[0012] 国際公開第2015/189335号(Centre National de la Rechereche Scientifique,CNRS)は、完全に剥離されたナノカーボン材料の水性または有機性懸濁液を調製する方法であって以下の工程:
a)不活性雰囲気下で非プロトン性有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中でナノカーボンインターカレーション化合物を溶解させ;それによって還元型ナノカーボンの有機溶液をもたらし;
b)還元型ナノカーボン材料を再酸化(電子の除去)してその中性状態に戻し、中性ナノカーボン材料の有機溶媒(A)または非プロトン性有機溶媒の混合物(A’)中における有機性懸濁液をもたらし;そして
c)工程b)で得られた中性ナノカーボンの有機性懸濁液を、適切な量の脱気された水、脱気されたイオン性水溶液、脱気された有機溶媒(B)、有機溶媒の脱気された混合物(Β’)、または(B)もしくは(Β’)の水もしくはイオン性水溶液との脱気された混合物と混合する;
を含む方法を開示しており、ここで、溶媒(A)または溶媒混合物(A’)は、完全にもしくは部分的に水混和性であるか、または溶媒(B)もしくは溶媒混合物(Β’)と完全にもしくは部分的に混和性であり;それによってナノカーボン材料の空気準安定性(air-metastable)の水性または有機性懸濁液をもたらす。
【0013】
[0013] しかし、これまでに知られているアプローチは、多層炭素ベース構造、特にグラフェンフレーク間の凝集を解消する多層グラフェン構造を製造するのに成功していないか、または不十分に成功している。
【0014】
[0014] 本発明の1つの目的は、炭素ベースの材料か、または前記の炭素ベースの材料とは別の材料の基材かを含む第1層および炭素ベースの材料の第2層を含む多層の炭素ベースの材料を与えることであり、ここで、炭素ベースの層(単数または複数)は、グラフェンの優秀な特性の少なくともいくつかを与えるのに十分に薄い厚さを有し、かつ中間層は、層の間、または炭素ベースの層と炭素ベースの層以外の基材との間の信頼性のある結合を達成する。中間層はまた、炭素ベースの層の間に十分な分離を提供するべきである。
【0015】
本発明の他の問題および目的、対応する解決策ならびにそれらの利点は、以下の開示、実施例および特許請求の範囲から当業者に明らかになるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第9,484,158号
【文献】国際公開第2011/029006 A2号
【文献】米国特許出願公開第2016264814号
【文献】米国特許第9,388,049号
【文献】国際公開第2015/189335号
【非特許文献】
【0017】
【文献】J. Mater. Chem. A 2016, 4, 926
【文献】Adv. Mater. 2011, 23, 2833
【文献】ACS Nano 2011, 5, 436
【文献】Nano Lett. 2010, 10, 4863
【文献】J. of Phys. and Chem. of Solids 68 (2007) 394-399
【発明の概要】
【0018】
[0015] 上記の目的および他の目的は、以下の記載、実施例および特許請求の範囲で定められるように、以下の側面および態様によって達成される。
[0016] 第1側面は、以下:
-炭素ベースの材料か、または前記の炭素ベースの材料以外の材料の基材かを含む第1層、
-前記の炭素ベースの材料を含む第2層、ならびに
-第1層および第2層を分離し、相互接続させる第3の中間層
を含む層状構造を有する材料に関し、ここで、
-前記の炭素ベースの材料は、少なくとも50原子百分率の炭素を含み、六方格子を有し、かつここで、前記の炭素ベースの材料を含む層(単数または複数)は、炭素原子の大きさの1~20倍の厚さを有し、ここで、
-前記の少なくとも1つの中間層は、少なくとも第2層の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成することができる少なくとも2つの環状平面基を含むイオンを有する塩を含む層であり、そして
-第3の中間層は、塩イオンの前記の環状平面基によって引き起こされるπ-πスタッキング相互作用によって少なくとも第2層に接続される。
【0019】
[0017] 環状平面基は、環の形状の平坦な基と呼ばれることもできる。好ましくは、それらは、イミダゾール環またはベンゼン基のような、環を定める5個以上の原子を有する環を含むことができる。炭素ベースの材料の層(単数または複数)は、連続的であることも不連続であることもできる。塩は、イオン性化合物と呼ばれることもできる。
【0020】
[0018] 炭素ベースの材料の層(単数または複数)は、互いに接続されて例えばある程度互いに重なり合うか、または大体平行な延長平面で互いに隣り合って配置されるかのどちらかによって相互に一緒になって層を形成する複数の別々のフレークを含むことができる。
【0021】
[0019] 本発明の材料は、一態様によれば、前記の炭素ベースの材料の複数の層を含むことができ、ここで、前記の層は、本明細書において上記および下記で定義されるように前記の第3の中間層に対応する、対応する複数の層によって分離および相互接続され、前記の複数の第2層および第3層は、層のスタックを形成し、ここで、前記の層のスタックは、層状構造を有する材料の厚さを定める。
【0022】
[0020] 一態様によれば、厚さは、少なくとも10nmである。終端層は、前記の炭素ベースの層以外の材料の基材を含むことができ、一態様によれば、金属ベースの材料からなることができる。既に言及されたように、基材がそれに続いて第1層を形成し、その上に、中間の第3層によって相互接続される第2層のスタックが、本明細書において上記および下記で定義されるように中間の第3層によって接続される。第1層は、第2層を形成する炭素ベースの材料の定義に該当しない炭素ベースの材料を含むことができる。第1層が、特許請求の範囲および本明細書で定義されるような前記の炭素ベースの材料以外の材料のもの、例えば、金属性基材である場合、追加のまたは他の相互作用(静電、イオン性、共有結合、水素結合、ファンデルワールス)も、π-πスタッキングに加えて、またはπ-πスタッキングの代替として含まれ得る。一態様によれば、第1および第2層の両方は、前記の炭素ベースの材料を含み、中間層は、塩イオンの前記の環状平面基によって引き起こされるπ-πスタッキング相互作用によって第1および第2層の両方に接続される。
【0023】
[0021] 理論的には、第1および第2層は、両方とも本明細書において上記で示されたような材料の定義に該当するが組成および/または厚さの点でわずかに異なる炭素ベースの材料を含むことができる。材料が第3層によって相互接続された第2層のスタックを含む場合、個々の層の厚さは、異なることができるが、依然として、本明細書において上記および特許請求の範囲で定義される本発明の概念によって与えられる限界内である。好ましくは、前記の第3の中間層は、前記の塩のみからなる。
【0024】
[0022] 一態様によれば、前記の塩の前記のイオンの環状平面基は、少なくとも1つの芳香族基を含む。
[0023] 一態様によれば、前記の塩の前記のイオンの前記の環状平面基の各々は、芳香族基である。
【0025】
[0024] 一態様によれば、第1層は、金属基材を含む。一態様によれば、金属基材は、主成分として以下の金属またはそれらの合金のいずれかを含む;Fe、Au、Ag、Al、Cu、Ti、Ni。
【0026】
[0025] 一態様によれば、それぞれの炭素ベースの層は、炭素原子の大きさの1~10倍の厚さを有する。それにより、グラフェンに特徴的な優秀な特性の少なくとも一部を炭素ベースの層が有する尤度(likeliness)は、層がより厚い場合に比べてさらに改善される。
【0027】
[0026] 一態様によれば、第3の中間層の厚さは、20nm未満である。第1層および第2層の間の厚すぎる中間層は、結果としてハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の特性のいくつか、例えば機械的強度の劣化をもたらすであろう。
【0028】
[0027] 一態様によれば、炭素ベースの材料は、少なくとも99原子百分率の炭素原子を含む。
[0028] 一態様によれば、前記の塩のイオンは、4配位イオン性化合物からなる。
4配位イオン性化合物との塩は、π-πスタッキング相互作用によって、本明細書において上記および下記で開示されるタイプの炭素ベースの材料への非常に良好な結合をもたらした。一態様によれば、前記の塩の前記のイオンの環状平面基は、少なくとも2つの芳香族基を含む。一態様によれば、前記の塩のイオンの1つは、少なくとも2つの芳香族基を含む。一態様によれば、少なくとも2つの芳香族基は、その荷電中心と比較してイオンのいずれかの末端に配置される。
【0029】
[0029] 一態様によれば、前記の塩は、以下の一般式によって記載され:
【0030】
【化1】
【0031】
[0030] 式中、
は、キレート化する可能性を有する周期表からのあらゆる元素で、結果として陰イオン性の性質を有するものであり、
y1、y2、y3、y4は、O、S、Si、C、NおよびPのいずれか1つであり、
R1、R2は、炭化水素鎖であり、その少なくとも1つは、芳香族であり、
R3、R4は、炭化水素鎖であり、その少なくとも1つは、芳香族であり、
R1およびR2は、C1およびC2と芳香環を形成し、
R3およびR4は、C3およびC4と芳香環を形成し、
Hは、水素またはカルボニル基であり、
ここで、X、H、y1、y2、y3、y4、R1、R2、R3、R4、C1、C2、C3およびC4の組み合わせは、塩の陰イオンを定め、そして
は、室温において陰イオンとの組み合わせで塩を形成することができるあらゆる陽イオンである。
【0032】
[0031] 従って、芳香環は、R1+C1、R2+C2およびR1+R2+C1+C2のいずれかによって形成されることは、理解されるべきである。別の環は、R3+C3、R4+C4およびR3+R4+C3+C4のいずれかによって形成される。
【0033】
[0032] 一態様によれば、陰イオンの2つ以下のHが、カルボニル基を含むことができ、陰イオンの2つのHがそれぞれのカルボニル基を含む場合、それらのカルボニル基は、陰イオンによって定められる配位において反対側に位置する。
【0034】
[0033] 一態様によれば、Xは、ホウ素(B)またはアルミニウム(Al)のいずれかである。
[0034] 一態様によれば、Aは、ナトリウム(Na)およびリチウム(Li)から選択され、Xは、アルミニウム(Al)およびホウ素(B)から選択され、好ましくはホウ素(Br)である。
【0035】
[0035] 一態様によれば、塩は、リチウムビス(サリチラト)ボレート [Li][BScB]である。別の態様によれば、塩は、ナトリウムビス(サリチラト)ボレート [Na][BScB]である。
【0036】
[0036] 一態様によれば、それぞれの炭素ベースの層は、グラフェンからなる。
[0037] 一態様によれば、前記の材料は、グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])ナノ複合材料である。別の態様によれば、前記の材料は、グラフェンナトリウムビス(サリチラト)ボレート (G[Na][BScB])ナノ複合材料である。
【0037】
[0038] 本発明のさらなる特徴および利点が、以下の態様の詳細な記載において開示されるであろう。
[0039] 異なる側面および態様が、本明細書において以下で添付された図面を参照して開示されると考えられ、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】[0040] 図1は、一側面に従うハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の一般的な構造の模式的表現であり、
図2】[0041] 図2は、ハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の第1態様を示し、
図3】[0042] 図3は、ハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の第2態様を示し、
図4】[0043] 図4は、ハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の第3態様を示し、
図5】[0044] 図5は、ハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の第4態様を示し、
図6】[0045] 図6は、ハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の第5態様を示し、
図7】[0046] 図7は、グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])コーティングを有する、および有しない銅の熱伝導率を示す図である。
図8】[0047] 図8は、リチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])添加剤を有する、および有しない焼結銅の熱伝導率を示す図である。
図9】[0048] 図9は、コートされていないAgおよびグラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])コーティングでコートされたAgの摩擦係数を示す図である。摩擦試験は、CSMピンオンディスク摩擦計を用いて、2N荷重、5cm秒-1の速度の下で、対向面としてAgを用いて実施された。
図10】[0049] 図10は、コートされていないAgおよびグラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])コーティングでコートされたAgの摩耗係数を示す図である。摩擦試験は、CSMピンオンディスク摩擦計を用いて、2N荷重、5cm秒-1の速度の下で、対向面としてAgを用いて実施された。
図11】[0050] 図11は、コートされていないAlおよびグラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])コーティングでコートされたAlの摩擦係数を示す図である。摩擦試験は、CSMピンオンディスク摩擦計を用いて、、2N荷重、5cm秒-1の速度の下で、対向面としてAgを用いて実施された。
図12】[0051] 図12は、コートされていないAlおよびグラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])コーティングでコートされたAlの摩耗係数を示す図である。摩擦試験は、CSMピンオンディスク摩擦計を用いて、2N荷重、5cm秒-1の速度の下で、対向面としてAgを用いて実施され、そして
図13】[0052] 図13は、一態様による材料片の模式的表現である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[0053] 本発明の説明を行う前に、本発明の範囲は添付された特許請求の適用範囲およびその均等物によってのみ限定されると考えられるため、本明細書で使用される用語法は特定の態様を記載する目的のためにだけ使用され、限定することは意図されないということは、理解されるべきである。
【0040】
[0054] 本明細書および添付された特許請求の範囲で使用される際、単数形“a”、“an”、および“the”は、文脈がそうではないことを明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことは、留意されなければならない。
【0041】
[0055] “層状”および“多層”という用語は、同じまたは異なる組成を有する2つ以上の別々の層が、好ましくは中間結合層と共に互いに重なり合って実質的に平行に配置されている構造物を記載するために使用される。“第1”、“第2”および“第3”という用語は、層を同定するためにのみ使用される。
【0042】
[0056] “基材”は、その上に炭素ベースの層(単数または複数)が適用されるあらゆる材料を意味する。適切な基材は、金属性、セラミックまたは熱可塑性材料およびそれらの組み合わせを含む。
【0043】
[0057] “金属”および“金属性”という用語は、実質的に純粋な金属および金属合金を含む。
[0058] 図1は、本発明に従う材料、より正確には本発明に従うハイブリッドイオン性グラフェンナノ複合材料の一般的な構造を示す。図1において示されている材料は、炭素ベースの材料か、または前記の炭素ベースの材料以外の材料の基材かを含む第1層1、前記の炭素ベースの材料を含む第2層2、ならびに第1および第2層1、2を分離し相互接続させる第3の中間層3を含む層状構造を有する。炭素ベースの材料は、少なくとも50原子百分率の炭素原子を含み、六方格子を有し、そして前記の炭素ベースの材料を含む層(単数または複数)1、2は、好ましくは炭素原子の大きさの1~20倍の厚さを有する。
【0044】
[0059] 図1において、第1層1は、前記の炭素ベースの材料を含む。さらに、図1において示されている材料では、中間層3は、塩からなる層であり、ここで、そのイオンの1つ(ここでは陰イオン)は、少なくとも2つの別々の環状平面基R1、R2、R3、R4を含み、それは、第1および第2層1、2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成することができる。第3の中間層3は、塩イオンの前記の環状平面基R1、R2、R3、R4によって引き起こされるπ-πスタッキング相互作用によって第1および第2層に接続されている。
【0045】
[0060] 第3層の塩は、以下の一般的な合成プロトコルにより得られた:
【0046】
【化2】
【0047】

[0061] 塩イオンの成分は、以下の通りである:
X-は、キレート化する可能性を有する周期表からのあらゆる元素で、結果として陰イオン性の性質を有するものであり、
y1、y2、y3、y4は、O、S、Si、C、NおよびPのいずれか1つであり、
R1、R2は、炭化水素鎖であり、その少なくとも1つは、好ましくは芳香族であり、
R3、R4は、炭化水素鎖であり、その少なくとも1つは、好ましくは芳香族であり、
R1およびR2は、C1およびC2と芳香環を形成し、
R3およびR4は、C3およびC4と芳香環を形成し、
Hは、水素またはカルボニル基であり、
ここで、X、H、y1、y2、y3、y4、R1、R2、R3、R4、C1、C2、C3およびC4の組み合わせは、塩の陰イオンを定め、そして
A+は、陰イオンとの組み合わせで塩を形成することができるあらゆる陽イオンである。
【0048】
[0062] 好ましい態様において、塩は、室温で固体であり、例えばリチウムビス(サリチラト)ボレート [Li][BScB]である。
[0063] 図2は、本発明に従う材料の第1態様を示し、ここで、第1層1は、炭素原子の大きさの1~10倍の範囲の厚さを有するグラフェン層によって形成され、そして第2層2は、炭素原子の大きさの1~10倍の範囲の厚さを有するグラフェン層によって形成される。R1は、C1と一緒に環状平面環を形成し、それは、第2層2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成する。R2は、C2と一緒に環状平面環を形成し、それは、第1層1の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成する。R3は、C3と一緒に環状平面環を形成し、それは、第2層2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成する。R4は、C4と一緒に環状平面環を形成し、それは、第1層1の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成する。好ましい態様において、R1、R2、R3およびR4によって形成されるそれぞれの環状平面環は、芳香環である。
【0049】
[0064] 従って、この態様において、塩イオンは、第1および第2層1、2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成することができる4つの芳香族基を含む。塩のイオンの1以上のイオンは、第1層および第2層の間の距離を橋渡しし、塩のイオンの少なくとも1つは、第1層および第2層の間の距離にわたって伸びる。
【0050】
[0065] 図3は、第2態様を示し、ここで、R1は、環状平面環を形成し、それは、第2層2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成し、R4は、C4と一緒に環状平面環を形成し、それは、第1層1の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成する。好ましくは、環状平面環は、ベンゼン環である。
【0051】
[0066] 図4は、第3態様を示し、ここで、イオン性分離層3の第1イオン性化合物の環状平面環は、第1層1の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成し、イオン性、水素結合およびファンデワールス相互作用のような異なる相互作用によって層中の前記の第1イオン性化合物と相互接続された分離層3中の第2イオン性化合物の環状平面環は、第2層2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成する。好ましくは、環状平面環は、ベンゼン環である。
【0052】
[0067] 図5は、第4態様を示し、ここで、R1およびR2は、C1およびC2と一緒に環状平面環を形成し、ここで、前記の環状平面環は、第1層1の材料および第2層2の材料の両方とπ-πスタッキング相互作用を形成する。R3およびR4は、第1層1および第2層2の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成することができる環状平面環を形成しない。好ましくは、環状平面環は、ベンゼン環である。
【0053】
[0068] 図6は、第5態様を示し、ここで、R1およびR2は、C1およびC2と一緒に第1環状平面環を形成し、ここで、前記の第1環状平面環は、第1層1の材料および第2層2の材料の両方とπ-πスタッキング相互作用を形成し、R3およびR4は、C3およびC4と一緒に第2環状平面環を形成し、ここで、前記の第2環状平面環は、第1層1の材料および第2層2の材料の両方とπ-πスタッキング相互作用を形成する。好ましくは、前記の第1および第2環状平面環は、ベンゼン環である。
【実施例
【0054】
[0069] 以下の実施例において、以下の合成が、グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])ハイブリッドナノ複合材料を調製するために使用された。これは、本開示の範囲に入る複合材料の説明的な実施例を構成する。
【0055】
リチウムビス(サリチラト)ボレート ([Li][BScB])塩の合成
[0070] [Li][BScB]が、サリチル酸(24.86g、180mmol)を無水炭酸リチウム(3.32g、45mmol)およびホウ酸(5.56g、90mmol)の100mLの蒸留水中における水溶液に添加することによって合成された(すべての試薬は、Sigma Aldrichからの合成グレードであった)。溶液は、60℃で1時間撹拌された。[Li][BScB]塩の透明な溶液が得られ、室温まで冷却された。水のロータリーエバポレーションの後、[Li][BScB]塩は、微量の未反応試薬を除去するためにアセトニトリルで洗浄され、続いて濾過および乾燥が行われた。[Li][BScB]塩は、約95%の収率で精製された。
【0056】
グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])複合材料の合成
[0071] 50mg/mlの濃度のグラフェンを含有する50/50水エタノール溶液が、調製され、撹拌され、室温で30分超音波処理された。50mg/mlの濃度を有する([Li][BScB])の別の50/50水エタノール溶液が、調製された。グラフェン含有溶液が、室温で撹拌の下で塩溶液に滴加された。撹拌は、グラフェン溶液の添加が完了した後、1時間継続された。その後、溶媒は、ロータリーエバポレーションされ、グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])複合材料の粉末が得られた。粉末は、真空下で60℃において12時間乾燥させられた。
【0057】
[0072] こうして製造されたG[Li][BScB]フィルムの横断面に関して、走査電子顕微鏡を用いてSEM測定が実施された。結果は、グラフェン層の厚さがおおよそ2~3nmであり、一方でイオン性層は、それよりわずかに高い、おおよそ5nmの厚さを有していることを示した。グラフェン単層の理論上の厚さは、0.345nmである。これは、おおよそ3nmの厚さを有する複合材料中のグラフェン層がおおよそ9つのグラフェンの単層を含有することを意味する。
【0058】
[0073] 図13は、本発明の一態様に従う材料片の模式的表現であり、ここで、材料片は、基材(第1層)1ならびに基材1の表面上に配置された本開示で定義される第2層2および第3層3のスタックを形成する金属合金を含む。以下で与えられる実施例で使用される試験標本のいくつかは、図3において示されている原理設計を有していた。
【0059】
実施例1
[0074] 熱測定が、カスタムメイドのセルおよび熱伝導率センサーを有するHot Disk(登録商標)機器(Hot Disk AB、ヨーテボリ、スウェーデン)を用いて実施された。センサーは、おおよそ3μmのグラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])でコートされた2つの基材の間に配置された。
【0060】
[0075] 基材は、純度99.99%のCuで作製され、直径12mm、厚さおおよそ1mmおよび面粗度100~200nmを有する円の形状を有していた。コートされていない基材が、参照として試験された。3回の測定が実施され、標準偏差を伴なう平均値が、異なる温度に関して与えられる。
【0061】
[0076] 結果が、図7で示されている図において与えられている。見て分かるように、(G[Li][BScB])コーティングでコートされた基材の熱伝導率は、Cu参照試料に関するよりも著しく高く、温度が上昇することにつれて差が増大する。これらの結果は、(G[Li][BScB])コーティングの純Cuの熱伝導率の向上への作用を示している。
【0062】
実施例2
[0077] 焼結純Cuの4つの試料が、粉末冶金によって以下のように調製された:Cuナノ粒子(200nmの平均サイズ)が、粉末からの不純物の除去を確実にするためにエタノールで3回洗浄され、真空下で120℃において12時間乾燥させられた。乾燥後、Cu粉末は、600MPa下でプレスされ、Ar雰囲気下で300℃において12時間焼結された。12mmの寸法、おおよそ1mmの厚さおよび理論密度の95%の密度を有する円形試料が調製された。
【0063】
[0078] さらに、1重量%の(G[Li][BScB])を含有する焼結Cuの4つの試料も、上記と同じ粉末冶金を用いて調製された。
[0079] 別の側面によれば、金属イオン性グラフェンナノ複合材料を製造する方法が、提供される。その方法は、金属ナノ粒子を含有する懸濁液(この特定の実施例ではエタノールおよびCuナノ粒子)に所望の濃度でイオン性グラフェン添加剤を添加することを含む。その方法は、混合物を室温で少なくとも30分間同時に攪拌することも含む。
【0064】
[0080] その方法は、溶媒(この特定の実施例ではエタノール)を蒸発させて金属-(G[Li][BScB])粉末を得ることも含む。溶媒を蒸発させた後、微量の溶媒の除去を確実にするために真空下でおおよそ80℃の温度において乾燥させる。乾燥後、600MPa下でプレスした後、Ar雰囲気下で300℃において12時間焼結することにより、試料が調製された。試料は、12mmの寸法およびおおよそ1mmの厚さおよび理論上の密度のおおよそ93%の密度を有する円形である。(G[Li][BScB])添加剤の層状構造は、焼結プロセス後も維持された。熱特性を測定するために実施例1で適用されたプロトコルと同じプロトコルが、ここでも適用された。センサーが、2つの焼結ディスクの間に置かれ、各温度で2回の測定が、実施された。平均値が計算され、標準偏差が与えられる。
【0065】
[0081] 図8を見て分かるように、(G[Li][BScB])添加剤を提供された試料の熱伝導率は、比較試料に関する熱伝導率よりも著しく高く、測定温度の上昇に伴って差が増大する。結果は、(G[Li][BScB])添加剤の、Cuマトリックスの熱特性の向上への作用を示している。
【0066】
実施例3
[0082] グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])でコートされた銀基材を含む試料が、以下のように調製された:
[0083] 基材は、純度99.99%のAgで作製され、寸法5×5cm、厚さおおよそ5mmおよび面粗度おおよそ300nmを有する四角の形状を有していた。コートされていないAg基材が、参照として試験された。コーティングは、5mg/ml(G[Li][BScB])を含有するエタノール懸濁液をAg基材上に滴加することによって適用された。EtOHを蒸発させた後、コーティングは、Ar雰囲気下で80℃において2時間アニーリングされた。
【0067】
[0084] 摩擦試験が、CSMピンオンディスク摩擦計を用いて、2N荷重、5cm秒-1の速度の下で、対向面として純Agを用いて実施された。磨耗測定が、チップカンチレバー側面計により実施された。
【0068】
[0085] その結果が、図9で示されている図において与えられている。見て分かるように、Ag-(G[Li][BScB])-オン-Ag接触対の摩擦係数は、Ag-Ag接触対に関する摩擦係数よりも著しく低い。さらに、図10を見て分かるように、Ag-(G[Li][BScB])-オン-Ag接触対の磨耗係数も、Ag-Ag接触対に関する摩耗係数よりも著しく低い。
【0069】
実施例4
[0086] グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])コーティングでコートされたアルミニウム基材を含む試料が調製され、実施例3における方法と同じ方法で試験された。
【0070】
[0087] その結果が、図11で示されている図において与えられている。見て分かるように、Ag-(G[Li][BScB])-オン-Alの摩擦係数は、Ag-Al接触対に関する摩擦係数よりも著しく低い。さらに、図12を見て分かるように、Ag-(G[Li][BScB])-オン-Alの磨耗係数も、Ag-Al接触対に関する摩耗係数よりも著しく低い。これは、コーティングの重要な利点であり、それは、多層コーティングの望ましい特性が実際に達成されていることを示している。
【0071】
[0088] さらに詳述することなく、当業者は、実施例を含む本記載を用いて、本発明をその最大限まで利用することができると考えられる。また、本発明は、本発明者に現在知られている最良の形態を構成するその好ましい態様に関して本明細書で記載されてきたが、当業者には明らかであろう様々な変更および修正が本明細書に添付された特許請求の範囲において記載されている本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることは、理解されるべきである。
【0072】
[0089] 従って、様々な側面および態様が本明細書で開示されてきたが、他の側面および態様が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示される様々な側面および態様は、説明の目的のためのものであり、限定することを意図するものではなく、真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示される。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]
以下:
-炭素ベースの材料か、または前記の炭素ベースの材料以外の材料の基材かを含む第1層(1)、
-前記の炭素ベースの材料を含む第2層(2)、ならびに
-第1層および第2層(1、2)を分離し、相互接続させる第3の中間層(3)を含む層状構造を有する材料であって、
-前記の炭素ベースの材料が、少なくとも50原子百分率の炭素を含み、六方格子を有し、かつ前記の炭素ベースの材料を含む層(単数または複数)(1、2)が、炭素原子の大きさの1~20倍の厚さを有し、以下:
-前記の少なくとも1つの中間層(3)は、少なくとも第2層(2)の材料とπ-πスタッキング相互作用を形成することができる少なくとも2つの別々の環状平面基を含むイオンを有する塩を含む層であること;および
-前記の第3の中間層(3)は、該塩イオンの前記の環状平面基によって引き起こされるπ-πスタッキング相互作用によって少なくとも第2層(2)に接続されることを特徴とする材料。
[2]
[1]に記載の材料であって、前記の塩の前記のイオンの環状平面基が少なくとも1つの芳香族基を含むことを特徴とする材料。
[3]
[1]または[2]のいずれか1項に記載の材料であって、前記の塩の前記のイオンの前記の環状平面基の各々が芳香族基であることを特徴とする材料。
[4]
[1]~[3]のいずれか1項に記載の材料であって、第1層(1)が金属基材を含むことを特徴とし、前記の金属基材が、好ましくは以下の金属:Au、Ag、Al、Cu、Fe、Ti、Niまたはそれらの組み合わせのいずれか1つを主成分として含む材料。
[5]
[1]~[4]のいずれか1項に記載の材料であって、それぞれの炭素ベースの層が炭素原子の大きさの1~10倍の厚さを有することを特徴とする材料。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の材料であって、第3の中間層(3)の厚さが20nm未満であることを特徴とする材料。
[7]
[1]~[6]のいずれか1項に記載の材料であって、該炭素ベースの材料が少なくとも99原子百分率(原子%)の炭素を含むことを特徴とする材料。
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載の材料であって、該塩の前記のイオンが4配位イオン性化合物からなることを特徴とする材料。
[9]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の材料であって、前記の塩が、以下の一般式によって記載され:
【化3】
式中、
は、キレート化する可能性を有する周期表からのあらゆる元素で、結果として陰イオン性の性質を有するものあり、
y1、y2、y3、y4は、O、S、Si、C、NおよびPのいずれか1つであり、
R1、R2は、炭化水素鎖であり、その少なくとも1つは、芳香族であり、
R3、R4は、炭化水素鎖であり、その少なくとも1つは、芳香族であり、
R1およびR2は、C1およびC2と芳香環を形成し、
R3およびR4は、C3およびC4と芳香環を形成し、
Hは、水素またはカルボニル基であり、
ここで、X、H、y1、y2、y3、y4、R1、R2、R3、R4、C1、C2、C3およびC4の組み合わせは、該塩の陰イオンを定め、そして
は、室温において該陰イオンとの組み合わせで塩を形成することができるあらゆる陽イオンであることを特徴とする材料。
[10]
[9]に記載の材料であって、該陰イオンの2つ以下のHが、カルボニル基を含むことができること、および該陰イオンの2つのHがそれぞれのカルボニル基を含む場合、それらのカルボニル基は、該陰イオンによって定められる配位において反対側に位置することを特徴とする材料。
[11]
[9]または[10]に記載の材料であって、Xが、ホウ素(B)またはアルミニウム(Al)のいずれかであることを特徴とする材料。
[12]
[9]~[11]のいずれか1項に記載の材料であって、Aが、ナトリウム(Na)およびリチウム(Li)から選択され、Xが、アルミニウム(Al)およびホウ素(B)から選択されることを特徴とする材料。
[13]
[1]~[12]のいずれか1項に記載の材料であって、該塩が、リチウムビス(サリチラト)ボレート [Li][BScB]であることを特徴とする材料。
[14]
[1]~[13]のいずれか1項に記載の材料であって、各炭素ベースの層がグラフェンからなることを特徴とする材料。
[15]
[1]~[14]のいずれか1項に記載の材料であって、前記の材料が、グラフェンリチウムビス(サリチラト)ボレート (G[Li][BScB])ナノ複合材料であることを特徴とする材料。
【符号の説明】
【0073】
1 第1層
2 第2層
3 第3の中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13