(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】プラズマ・アーク制御の方法としてニュートロード・スタックを利用する単アーク縦列低圧被覆銃
(51)【国際特許分類】
H05H 1/34 20060101AFI20230707BHJP
H05H 1/48 20060101ALI20230707BHJP
H05H 1/28 20060101ALI20230707BHJP
C23C 4/134 20160101ALI20230707BHJP
【FI】
H05H1/34
H05H1/48
H05H1/28
C23C4/134
(21)【出願番号】P 2020542364
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 US2019018539
(87)【国際公開番号】W WO2019164822
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-20
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーリー、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】コルメナレス、ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ガトルバー、ジョナサン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513764(JP,A)
【文献】特開2014-199821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0167063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00 - 1/54
C23C 4/00 - 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を含む後部銃本体セクションと、
前記後部銃本体セクションに接続するように構成されたカスケード・セクションと、
を備える、真空プラズマ銃であって、
前記カスケード・セクションが、ニュートロード・スタックを形成するように配置された複数のニュートロードを含
み、
前記複数のニュートロードが、絶縁体により互いに電気的に絶縁され、
前記絶縁体が、隣接するニュートロード間に空気又はガスの間隙を維持するように構成される、真空プラズマ銃。
【請求項2】
唯一のプラズマ・ガス源として単一ガスが供給される、請求項1に記載の真空プラズマ銃。
【請求項3】
前記銃の動作電圧が、65ボルトを超える、請求項1に記載の真空プラズマ銃。
【請求項4】
前記ニュートロード・スタックの端部に結合されたノズルをさらに備え、それにより、前記ニュートロード・スタックが、前記電極を前記ノズルから分離する、請求項1に記載の真空プラズマ銃。
【請求項5】
前記複数のニュートロードのそれぞれが、中央ボアを含む円板形状を有し、
前記複数のニュートロードが、前記中央ボアが前記ニュートロード・スタックの中央プラズマ・ボアを形成するように配置される、
請求項1に記載の真空プラズマ銃。
【請求項6】
前記複数のニュートロードのそれぞれが、前記中央ボアを取り囲む複数の冷却チャネルを含む、請求項5に記載の真空プラズマ銃。
【請求項7】
前記複数の冷却チャネルが、前記円板を貫通して延在する軸方向ボアを含む、請求項
6に記載の真空プラズマ銃。
【請求項8】
前記軸方向ボアが、前記ニュートロード内で区切られる、請求項
7に記載の真空プラズマ銃。
【請求項9】
前記軸方向ボアが、前記ニュートロードにわたって全体的に円形の幾何形状を有する、請求項
8に記載の真空プラズマ銃。
【請求項10】
前記軸方向ボアが、前記ニュートロードの外周面に開口している凹部である、請求項
7に記載の真空プラズマ銃。
【請求項11】
前記軸方向ボアが、平行な側壁と、前記側壁に対してほぼ垂直な底壁とを有する、請求項
10に記載の真空プラズマ銃。
【請求項12】
前記複数のニュートロードが、中央軸方向ボアと、外周表面と、前記中央軸方向ボアを取り囲む複数の凹部とを有する円板形状の本体を備える、請求項1に記載の真空プラズマ銃。
【請求項13】
前記複数のニュートロードが、前記複数の凹部が位置合わせされて前記ニュートロード・スタック内に複数の軸方向冷却チャネルを形成するように配置される、請求項
12に記載の真空プラズマ銃。
【請求項14】
真空プラズマ溶射(VPS)プロセス、低圧プラズマ溶射(LPPS、LVPS)プロセス、又は減圧真空吹付け(RPPS)プロセスのうちの少なくとも1つのために構成された、請求項1に記載の真空プラズマ銃。
【請求項15】
請求項1に記載の真空プラズマ銃におけるプラズマ・アークを制御する方法であって、
カスケード・ニュートロード・スタックを真空プラズマ銃の後部本体セクションに接続すること
を含む、方法。
【請求項16】
複合プラズマ銃を唯一のプラズマ・ガス源として使用される単一ガスに接続することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記複合プラズマ銃に65ボルトを超える動作電圧を供給することをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
前記カスケード・ニュートロード・スタックが、複数のニュートロードを備え、各ニュートロードが、中央軸方向ボアと、前記中央軸方向ボアを取り囲む複数の凹部とを有する円板形状の本体を備え、前記方法が、
前記複数の凹部が軸方向に位置合わせされて前記カスケード・ニュートロード・スタックにわたって複数の軸方向冷却チャネルを形成するように前記カスケード・ニュートロード・スタック内の前記複数のニュートロードを配向すること
をさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際出願は、2018年2月20日に出願した米国仮出願第62/632,899号の利益を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
実施例は、真空プラズマ銃を対象とし、より詳細には、カスケード型プラズマ銃のニュートロード・スタック(neutrode stack)又はカスケード型プラズマ銃の最適化ニュートロード・スタックを有する真空プラズマ銃を動作させることを対象とする。
【背景技術】
【0003】
カスケード型プラズマ銃は、より安定した銃出力をもたらすより高い電圧とより安定したプラズマ・アークとを可能にするという利点を提供する。そのような銃の欠点は、比較的長いニュートロード・スタックを移動するプラズマ・アークからもたらされる熱除去が、より大きい熱損失をもたらし、且つ、ニュートロード・スタックの実際的な長さを制限することである。より長いスタックは、より高い電圧及びより安定したアークの利点を相殺する、より大きい熱損失をもたらす。ニュートロード・スタックへの熱的な損傷をもたらすことなしに熱損失を制限するために、冷却を最適化する構造が必要とされている。
【0004】
現在のニュートロード・スタックは、ニュートロード、絶縁体、又は封止用Oリングへの損傷をもたらすであろう熱を除去するために、可能な限りプラズマ・ボアの近くに同軸に設置されたドリル穴を利用する。プラズマ・ボア内のプラズマ温度は、しばしば20,000Kを超え、そのため、スタックの冷却は、構成要素への損傷を防ぐための基本要件である。
【0005】
慣例的なプラズマ銃ノズルのための既存の冷却設計である水冷チャネル及び/又は水冷穴は、ボア材料の温度を可能な限り低く保って損傷を防ぐために、典型的には可能な限りプラズマ銃ボアの近くに設置される。この設計は、効果的な冷却の方法として、ニュートロードのための設計に持ち込まれた。
【0006】
熱的に最適化されたプラズマ銃ノズル全般に及ぶ最近の発明性のある発見、例えば国際出願PCT/US2013/076603によれば、水路をプラズマ銃ボアから離れる方へ移動させることによりノズル冷却が変化され得ることが発見され、また、銅材料が平均温度を高める一方で熱減少ピーク温度を移動させることが可能になる。水冷断面積(water cooling cross section)は、プラズマ・ノズルのボア沿いの平均温度の上昇を可能にしながら、プラズマ銃ノズルに対して妥当な温度を維持するのに十分な効果的な冷却を実現するために、水速度を高めるように縮小され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際出願PCT/US2013/076603
【文献】国際出願WO2018/170090
【文献】米国仮出願第62/472,202号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施例では、従来の真空プラズマ銃へのニュートロード・スタック組立体又は最適化ニュートロード・スタック組立体の組込みは、真空プラズマ処理における優れた利益を提供し、具体的には、ヘリウム又は任意の他の2次ガスの排除、必要とされる電流を減少させてより高出力の動作を促進すること、及び/又はより少量の電力供給の利益を提供する。既存の真空プラズマ銃は、ヘリウムなどの単原子に主に限定される2次ガスを常に必要とし、それらは、不足するか入手不可能になることすらあり得る、再生不可能な資源である。最適化ニュートロード・スタック組立体は、2017年3月16日に出願された米国仮出願第62/472,202号の利益を主張する、2018年9月20日に公表された国際出願WO2018/170090で説明されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0009】
本発明の実施例は、カスケード型プラズマ銃のニュートロード・スタック又は最適化ニュートロード・スタックを含むように改良された真空プラズマ銃を動作させることを対象にする。このため、Oerlikon Metco 03CPなどの既知の真空プラズマ銃は、いくつかの被覆要件を支持するために最大で2400ampsを必要とするが、実施例に従って改良された真空プラズマ銃を使用すると、たったの1200ampsで同じ被覆が作り出され得る。このようにして、現況技術の銃から利用可能な総出力に対して、実際的な限界が設けられ得る。
【0010】
カスケード型プラズマ銃のための既知のニュートロード・スタックの使用に加えて、本発明の実施例は、ピーク・スタック温度を最小限に抑えながら水に対する熱損失を減少させるために、真空プラズマ銃での使用のための熱的に最適化されたニュートロード・スタックの設計及び実施を対象とする。冷却を最適化することは、高い熱損失の不利益を伴わずに、より長いニュートロード・スタックが使用されることを可能にするであろう。
【0011】
この点に関して、本発明者らは、ニュートロードの銅材料が平均温度を高める一方で熱減少ピーク温度を移動させることを可能にする、水路をプラズマ銃ボアから離れる方へ移動させる技法は、銃の挙動への悪影響を伴わずに冷却特性を向上させるために真空プラズマ銃ニュートロード・スタックに使用できることを発見した。
【0012】
実施例では、既存のOerlikon Metco 03CP真空銃は、Oerlikon Metco Triplex及び/又はSinplex銃のタイプで利用されるニュートロード・スタック構成を含むように、又は、本明細書において説明される最適化ニュートロード・スタックを含むように、改良され得る。真空プラズマ溶射(VPS:Vacuum plasma Spray)、低圧プラズマ溶射(LPPS、LVPS:Low Pressure Plasma Spray)、及び、減圧真空吹付け(RPPS:Reduced Pressure Vacuum Spray)と呼ばれるプロセスは、既存の縦列プラズマ銃には取り込まれない、減圧環境において動作するための特定の設計考慮事項を有する銃を必要とする。これらの考慮事項には、例えば、(-)ネガティブ接続領域におけるガス密な電気的絶縁、及び、減圧プルーム生成のためのノズル内部設計幾何形状構成が含まれる。
【0013】
実施例は、電極を含む後部銃本体セクションと、後部銃本体セクションに接続するように構成されたカスケード・セクションとを含む、真空プラズマ銃を対象とする。カスケード・セクションは、ニュートロード・スタックを形成するように配置された複数のニュートロードを含む。
【0014】
実施例によれば、唯一のプラズマ・ガス源として単一ガスが供給される。
【0015】
他の実施例では、銃の動作電圧は、65ボルトを超える。
【0016】
他の実施例では、真空プラズマ銃はまた、ニュートロード・スタックの端部に結合されたノズルを含むことができ、それにより、ニュートロード・スタックは、電極をノズルから分離する。
【0017】
実施例によれば、複数のニュートロードのそれぞれは、中央ボアを含む円板形状を有することができ、また、複数のニュートロードは、中央ボアがニュートロード・スタックの中央プラズマ・ボアを形成するように配置され得る。複数のニュートロードは、絶縁体により互いに電気的に絶縁され得る。絶縁体は、隣接するニュートロード間に空気又はガスの間隙を維持するように構成され得る。さらに、複数のニュートロードのそれぞれは、中央ボアを取り囲む複数の冷却チャネルを含み得る。複数の冷却チャネルは、円板を貫通して延在する軸方向ボアを含み得る。さらに、軸方向ボアは、ニュートロード内で区切られ得る。この点に関して、軸方向ボアは、ニュートロードにわたって全体的に円形の幾何形状を有し得る。或いは、軸方向ボアは、ニュートロードの外周面に開口している凹部であってもよい。軸方向ボアは、平行な側壁と、側壁に対してほぼ垂直な底壁とを有し得る。
【0018】
さらに他の実施例によれば、複数のニュートロードは、中央軸方向ボアと、外周表面と、中央軸方向ボアを取り囲む複数の凹部とを有する円板形状の本体を含み得る。
【0019】
他の実施例では、複数のニュートロードは、複数の凹部が位置合わせされてニュートロード・スタック内に複数の軸方向冷却チャネルを形成するように配置され得る。
【0020】
さらに他の実施例によれば、真空プラズマ銃は、真空プラズマ溶射(VPS)プロセス、低圧プラズマ溶射(LPPS、LVPS)プロセス、又は減圧真空吹付け(RPPS)プロセスのうちの少なくとも1つのために構成され得る。
【0021】
実施例は、カスケード・ニュートロード・スタックを真空プラズマ銃の後部本体セクションに接続することを含む、真空プラズマ銃におけるプラズマ・アークを制御する方法を対象とする。
【0022】
実施例によれば、方法は、複合プラズマ銃を唯一のプラズマ・ガス源として使用される単一ガスに接続することをさらに含み得る。
【0023】
他の実施例では、方法は、複合プラズマ銃に65ボルトを超える動作電圧を供給することをさらに含み得る。
【0024】
なおもさらなる実施例によれば、カスケード・ニュートロード・スタックは、複数のニュートロードを含むことができ、各ニュートロードは、中央軸方向ボアと、中央軸方向ボアを取り囲む複数の凹部とを有する円板形状の本体を含む。さらに、方法はまた、複数の凹部が軸方向に位置合わせされてカスケード・ニュートロード・スタックにわたって複数の軸方向冷却チャネルを形成するようにカスケード・ニュートロード・スタック内の複数のニュートロードを配向することを含み得る。
【0025】
本発明の他の例示的な実施例及び利点は、本開示及び添付の図面を検討することによって判明され得る。
【0026】
本発明は、本発明の例示的な実施例の非限定的な実例として複数の図面を参照して以下の詳細な説明においてさらに説明され、図面のうちのいくつかの図にわたって、同様の参照番号は類似の部品を表わす。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】カスケード型プラズマ銃の真空プラズマ銃後部及びカスケード・セクションから形成された複合銃の図である。
【
図2A】本発明の実施例による例示的な最適化ニュートロードの図である。
【
図2B】本発明の実施例による例示的な最適化ニュートロードの図である。
【
図2C】本発明の実施例による例示的な最適化ニュートロードの図である。
【
図2D】本発明の実施例による例示的な最適化ニュートロードの図である。
【
図2E】本発明の実施例による例示的な最適化ニュートロードの図である。
【
図3】
図2に示された最適化ニュートロードを複数含むニュートロード・スタックの実施例の断面図である。
【
図4】積層された最適化ニュートロードの外周が示されている、
図3に示された実施例の図である。
【
図5】本発明の実施例による最適化ニュートロードの別の実施例の図である。
【
図6】既知の縦列プラズマ銃の慣例的なニュートロードの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において示される詳細は、実例としてのものであり、また単に本発明の実施例の説明に役立つ論述のためのものであり、且つ、本発明の原理及び概念的態様についての最も有用且つ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示される。この点に関して、本発明の構造上の詳細を本発明の基本的な理解に必要とされる以上に詳しく示す試みはなされず、説明は図面とともに、本発明のいくつかの形態が実際に具現化され得る方法を当業者に明らかにする。
【0029】
実施例では、複合(真空)プラズマ銃が、ニュートロード・スタックを利用するカスケード型プラズマ銃の部品を含むように改良されてきた既知の真空プラズマ銃の部品から形成され得る。このようにして、単アーク縦列低圧被覆銃が、プラズマ・アークの制御及び延長の方法としてニュートロード・スタックを利用する。具体的には、
図1に示されるように、複合プラズマ銃が、真空プラズマ銃、例えばOerlikon Metco 03CP銃に相当する構造を有するネガティブ(後部)セクション1と、特異的に設計されたニュートロード・スタック組立体を含むカスケード型プラズマ銃に相当する構造を有するポジティブ(前部)銃セクション2と、を含み得る。さらに、複合プラズマ銃は、従来の真空プラズマ銃のポジティブ(前部)セクションがネガティブ(後部)セクション1から取り除かれて、特異的に設計されたニュートロード・スタック組立体を含むカスケード型プラズマ銃の再設計されたポジティブ(前部)銃セクション2に置き換えられる、改良された真空プラズマ銃とされ得ることが、意図されている。ニュートロード・スタック組立体は、1次ガスとしてのアルゴン及び2次ガスとしてのヘリウムの両方を使用して35から60ボルトで動作する従来のOerlikon Metco 03CP銃と比較して、唯一のプラズマ・ガス源として単一ガスを使用したときに銃の動作電圧が65ボルトよりも高くなるような形で設計される。複合プラズマ銃の前部は、最大で2000Ampsで動作する銃に適した水冷回路を組み込む。
【0030】
複合プラズマ銃のネガティブ(後部)セクション1は、電極(陰極)6を保持するように構成された電極ホルダ4を含む後部絶縁体アッセイ3を備える。電極6は、電極ホルダ4に当接する中間絶縁体5内にさらに保持される、電極6は、ネガティブ(後部)セクション2から外方に延在する。複合プラズマ銃のポジティブ(前部)セクション2は、ニュートロード・スタック8を備える。ニュートロード・スタック8は、電極6を収容する円錐形開口部を有するエンド・ピース33を内側端部に含み、且つ、ノズル(陽極)9を外側端部に含む。ノズル9は、ノズル9から出て行く前の発生プラズマ・ジェットに粉末を供給するために、例えば粉末噴射器を含み得る。ガス漏れを防ぐために、ネガティブ(後部)セクション1とポジティブ(前部)セクション2との間にガス・リング7が配置される。
【0031】
したがって、この複合プラズマ銃は、電極とノズルとの間にニュートロード・スタックを含むので、既知のOerlikon Metco 03CPとは異なり、ニュートロード・スタックは、アークをより長くして、同じ出力レベルに対してより高い動作電圧及びより少ない電流を可能にする。このことはまた、Oerlikon Metco 03CPの従来の単一ガス動作では取り扱えないレベルまで出力が増大され得るように、過度の電流でも銃に損傷を与えることなしに複合プラズマ銃がより高い電圧で動作することを可能にする。さらに、既知のOerlikon Metco 03CPは、いくつかの被覆要件を支持するために最大で2400ampsを必要とするが、本発明の実施例による複合プラズマ銃を使用すると、たったの1200ampsで同じ被覆が作り出され得る。このようにして、現況技術の銃から利用可能な総出力に対して、実際的な限界が設けられ得る。
【0032】
単アーク縦列低圧被覆銃(複合プラズマ銃)は、低圧プラズマ溶射被覆製作の分野における改善である。銃は、減圧プラズマ溶射からの知識の既存の本体を組み込み、且つ、効率を高めるとともに適用費用を下げながら、既存のプロセスに含まれる既知の問題を解決する。これに重要なのは、低圧環境に適応された「縦列」プラズマ銃配置を作り出すためのニュートロード・スタック組立体の追加である。設計の重要な特徴は、ヘリウムの使用又は任意の他の2次若しくは3次ガスの利用を伴わずに、要件を満たした産業用被覆を複製する、その能力である。
【0033】
図6は、既存の縦列プラズマ銃からの従来のニュートロード10の断面図である。従来のニュートロードにおける冷却は、中央プラズマ・ボア14の周りにそのボアに近接して配置された二十四(24)個の穴12によって実現されることが、明らかである。そのような従来のニュートロード10は、例えばOerlikon Metco Triplex及びSinplex銃型などの既知のカスケード型プラズマ銃での使用に関連して説明された態様で、互いに積層され得る。具体的には、ニュートロード10は、隣接するニュートロード10間に絶縁体を位置決めして隣接するニュートロード10間の空気又はガスの間隙を維持することにより、互いに電気的に絶縁され得る。さらに、中央プラズマ・ボア14内への冷却水の漏出を防ぐために、穴12と中央プラズマ・ボア14との間にシールが設けられ得る。
【0034】
従来のニュートロード10とは対照的に、
図2A~2Eは、2017年3月16日に出願された米国仮出願第62/472,202号の利益を主張する、2018年9月20日に公表された国際公開番号WO2018/170090で説明されているような、最適化ニュートロード・スタックのニュートロード20の例示的な実施例の様々な図を示し、それらの開示は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。ニュートロード20は、例示的な図に示されるように、ニュートロード20の本体に凹設され、且つ、中央プラズマ・ボア24を取り囲むニュートロード20の外周表面26に開口している、十二(12)個の軸方向冷却チャネル22を含み得る。この点に関して、軸方向に延在する貫通凹部は、突出部21を画定するように外方に延在し、突出部21は、外周表面26が円周方向に不連続であるように、外周表面26の部分を含む。ニュートロード20の第1の側、例えば
図2Aにおいて遠近法的に示されまた
図2Cにおいて平面図で示された右手側では、隆起部23が、突出部21の右手側より低いところに配置された陥凹表面25から軸方向に延在する。ニュートロード20の第2の側、例えば
図2Bにおいて遠近法的に示されまた
図2Dにおいて平面図で示された左手側では、隆起部27が、突出部21の左手側と同一平面であり得る表面29から軸方向に延在する。
図2Eは、隆起部23及び27の軸方向延長部が突出部21の左手側及び右手側の平面を越えて延在する、ニュートロード20の側面図を示す。さらに、
図2A~2Eの非限定的な示された実施例では、ニュートロードは、冷却チャネル22の側壁が好ましくは互いに平行であり、また、底壁が側壁に対してほぼ垂直であることを除いて、全体的に歯車形状を有し得る。さらに、
図2C及び2Dの平面図では、冷却チャネル22は、全体的に方形の形状を示し、この形状では、好ましくはその深さにわたって一定である凹部の幅は、凹部の深さに実質的に等しい。ニュートロード20の例示的な図では十二個の軸方向チャネルが形成されているが、ニュートロード20は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなしにより多くの又はより少ない軸方向チャネルがニュートロード20に形成され得るように、ただ十二個の軸方向チャネルに限定されるものではないことが、理解される。
【0035】
非限定的な実例として、
図2C及び2Dに示された平面図で見たときに、突出部21間に画定され且つ/又はニュートロード本体に凹設されて外周表面26に開口するチャネル22は、チャネル22の面積を画定する深さ及び幅の寸法を有する。非限定的な実例では、チャネル22は、95.22mm
2(0.1476平方インチ)の総面積を提供する、幅3.175mm(0.125インチ)掛ける深さ2.464mm(0.097インチ)の底面寸法を有し得る。例えば毎分二十二(22)リットルの水流量で動作された場合、チャネルを通る水の平均速度は、例えば3.8m/secであり得る。しかし、上述のように、チャネルに対するこれらの値は、単に例示的なものであり、突出部21間に形成され且つ/又はニュートロード20の外周表面26より低いところに凹設されて外周表面26に開口する冷却チャネル22の数及びサイズは、銃に損傷を与え得るレベルに温度が達するのを防ぐのに必要とされる水流量に依存する。さらなる実例として、チャネル22は、深さに対する寸法が、好ましくは一定の幅であるチャネル22の幅に対する寸法と実質的に同じであるという点で、実質的に正方形の形状であると考えられるように、形成され得る。さらに、実質的に正方形の形状のチャネルは、おおよそ1:1の、チャネルの底部を形成する幅寸法と外周面より低い深さ寸法との比を有するが、冷却チャネルに対する幅と深さとの比は、1:1~8:1の間の比の範囲内で変化し得ることが、さらに理解される。
【0036】
図3は、
図2A~2Eに示された最適化ニュートロード20を複数含む、ニュートロード・ハウジング38内の例示的なニュートロード・スタック30の断面図を示し、それらのニュートロード20は、互いに同軸上に積層されており、また、
図4は、
図3の代替的な図を示し、この図では、積層された最適化ニュートロード20の外周を含めて、ニュートロード・スタック・ハウジング38の断面図内の構成要素の外周26が示されている。示された実施例では、ニュートロード・スタック30の左手側から見たときに、
図2に示されたニュートロード20は、例えば、第2の、第3の、及び第4の位置に配置され得る。しかし、個々のニュートロード20は、互いに絶縁され、例えば電気的に絶縁され、且つ、隣接するニュートロード20がニュートロード・スタック30内で互いに接触しないように、物理的に離間される。さらに、ニュートロード・ハウジング38は、ニュートロード・スタック30内の隣接するニュートロード20間の絶縁を同様に維持するように、例えばプラスチックで作られ得る。
【0037】
図3に示されるように、ニュートロード20は、中央プラズマ・ボア24に沿って同軸に位置合わせされて、ニュートロード・スタック30を形成する。有利且つ非限定的な実施例では、ニュートロード・スタック30の各ニュートロード20は、
図4に示されるように、同数の冷却チャネルを有し、且つ、冷却チャネル22が軸方向に位置合わせされるように配向され得る。ニュートロード20はニュートロード・スタック30内で互いに絶縁されるので、絶縁体36が、隣接するニュートロード20間に隔離板として配置され得る。絶縁体36は、例えば窒化ホウ素であってもよく、且つ、隆起部23の径方向内側に配置されてニュートロード・スタック30の中央プラズマ・ボア34へ径方向内方に延在し得る。実施例では、個々のニュートロード20の中央プラズマ・ボア24とニュートロード30の中央プラズマ・ボア34内の絶縁体36との間の移行部は、平滑であり得る。挿入
図300により詳細に示されるように、絶縁体36は、第1のニュートロード20の隆起部23及び隣接するニュートロード20の隆起部27の向かい合う表面間に例えば約0.76mm(0.030インチ)の空気又はガスの間隙322を維持するために、適切に厚みがある。さらに、隆起部23の径方向外側では、例えば、シリコン、例えばVITON(登録商標)などの合成ゴム、BUNA-Nなどのニトリル・ゴム、又はニュートロード・スタック30の領域内で生じる温度に耐えるのに適した他の適切な水封材料で作られる、Oリングなどのシール320が、空気又はガスの間隙322を形成し且つカバーしそれにより冷却水が冷却チャネルから径方向内方に空気又はガスの間隙322内に侵入するのを防ぐために、隣接するニュートロード20の向かい合う表面間に配置され得る。
【0038】
示された実施例では、ニュートロード・スタック30は、冷却水穴35を有するより大径の円板31と終端冷却チャネル又は盲冷却チャネルであり得る冷却チャネル37を有するエンド・ピース33との間に挟まれ得る。
図1に示されるように、エンド・ピース33は、軸方向に配置された円錐形のくぼみを含むことができ、このくぼみ内には、電極(陰極)が位置決め可能である。有利且つ非限定的な例では、円板31は、各ニュートロード20内の冷却チャネル22の数及びエンド・ピース33内の冷却チャネル37の数に対応する、複数の冷却水穴35を含む。
図1に示されるように、エンド・ピース33の反対側の円板1の表面上には、ノズル(陽極)が位置決め可能である。ニュートロード・スタック30内の隣接するニュートロード20と同様に、絶縁体36及びシール320が、空気又はガスの間隙322を形成し且つカバーするために、円板31とノズルとの間に絶縁体36及びシール320が配置されてよく、それにより、冷却水が冷却チャネルから径方向内方に空気又はガスの間隙322内に侵入することが防がれる。
【0039】
さらに、冷却水穴35、冷却チャネル22、及び冷却チャネル37は、
図4に示されるように、軸方向に位置合わせされるように配向され得る。なおもさらに、周囲表面26を含むニュートロード20の径方向に延在する部分は、軸方向において互いに離間されているので、ニュートロード・スタック30内に円周方向冷却チャネル32が形成される。より大径の円板31は、例えば、ねじ、ボルト、クランプ、等を介してハウジング38に結合されてよく、且つ、そうすることで、積層された最適化ニュートロード20、絶縁体36、シール320、及びエンド・ピース33を一緒に付勢することもできる。有利には、付勢力は、隣接するニュートロードの向かい合う表面にシール320が適切に係合して所望の水封構成を達成するように、十分なものである。実施例では、ニュートロード・スタック30は、
図2A~2Eに示された最適化ニュートロードをより多く又はより少数ですら含み得ることが、容易に理解される。さらに、ニュートロード・スタック・ハウジング38は、ハウジングの外周面内又は外周面上に形成された同様の冷却チャネルを含み得ることが、さらに理解される。
【0040】
図5は、ニュートロード50の別の例示的な実施例を示す。この実施例では、ニュートロード50は、ニュートロード50の外周面56内及び外周面56の周りに形成された八(8)つの平坦な冷却チャネル52を含み得る。非限定的な実例として、ニュートロード50の周囲56に形成された平坦なチャネル52は、20.65mm
2(0.032平方インチ)の総面積を提供する、幅5.08mm(0.200インチ)掛ける深さ0.572mm(0.0225インチ)のものとされ得る。毎分9リットルの水流量で動作された場合、チャネルを通る水の平均速度は、6.4m/secである。しかし、上述のように、チャネルに対するこれらの値は、単に例示的なものであり、冷却チャネルの数及びサイズは、銃に損傷を与え得るレベルに温度が達するのを防ぐのに必要とされる水流量に依存する。
【0041】
実施例によれば、ニュートロード・スタックが、例えば
図2A、5に示されるように、各最適化ニュートロードの外周に配置された水冷チャネルを備え得る。チャネルの断面領域は、例えば1.0m/sec超、好ましくは2.0m/sec超、最も好ましくは3.0m/sec超の、高い水速度を生み出すように設計され得る。各チャネルは、ニュートロード20の最外周面における水冷流量を最大限にするために、例えば
図2A~2Eに示されるおおよそ正方形の形状から例えば
図5に示される平坦な形状に及ぶ形状を有して構成され得る。さらに、チャネルはまた、三角形の断面を有して構成又は形成され、且つ、各ニュートロードの外周における水冷流量を最大限にするように配置され得る。冷却チャネルの数及びサイズ並びに幾何形状は、銃に損傷を与え得るレベルに温度が達するのを防ぐのに必要とされる水流量に依存する。ニュートロード・スタック内のニュートロードの総数、又はニュートロード・スタックの各ニュートロードの厚さは、この設計において限定されない。実際に、実施例による最適化ニュートロードによれば、今や、より長いニュートロード・スタックが、限定的な熱冷却損失で実現可能である。
【0042】
実施例は、上記で説明された冷却チャネルに対する底部対深さ比の特定の実例に限定されるものではないことが、留意される。冷却チャネルに対する底部対深さの比は、より高い径方向プロファイルから全体的に正方形の断面に及ぶ冷却チャネルを得るための1:1までの比、より平坦なプロファイルの断面を得るための8:1より大きい比、及び、1:1から8:1の間の範囲内の任意の比とされ得ることが、理解される。したがって、比は、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1の特定の底部対深さの比、並びにそれらの間の任意の比とされ得るが、やはりこれらに限定されるものではない。
【0043】
図5に示されるような複数のニュートロード50によって形成されたニュートロード・スタックを利用する、説明された実施例による複合プラズマ銃では、既知の計算流体力学(CFD:computational fluid dynamics)ソフトウェアを介して計算されたときのプラズマ銃における水流は、毎分8.1リットルの水流量の場合、ニュートロード・スタック内の平均水速度は3.2m/secを上回ったことを示す。
【0044】
図3に示されるようなニュートロード・スタック30を組み込んだ複合プラズマ銃が試験され、プラズマ・ノズルを冷却するために水冷フィン又は水冷チャネルを使用する長いノズルを含む、同じ全体設計の従来のプラズマ銃と比較された。試験結果は、本発明の実施例によるニュートロード・スタック30を使用する銃では、従来通りに冷却されるノズルに対して10%の熱効率の増大を示した。他の試験は、慣例的なニュートロード・スタックをプラズマ銃に追加することにより熱効率が6%から10%の間で低下することを示した。なおもさらなる試験は、プラズマ銃に対して慣例的なニュートロード・スタックの長さを2倍にすることにより熱効率が20%低下することを示したが、一方で、最適化ニュートロード20を追加してニュートロード・スタック30の長さを増大することは、慣例的なニュートロード・スタックのそれのおおよそ半分未満であるように計画された、熱効率のはるかに少ない低下を有した。さらに、ニュートロード・スタック30の耐久試験は、同一のスタックを用いた200時間を超える試験後ですら、有害な熱効果を示さなかった。
【0045】
前述の実例は、単に説明の目的のために提供されたものであって、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことが、留意される。本発明は例示的な実施例に関して説明されたが、本明細書において使用された用語は、限定の用語ではなく説明及び例証の用語であることが、理解される。本発明の態様において本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、目下述べられたように、また、補正されるように、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内で変更がなされ得る。本発明は、具体的な手段、材料、及び実施例に関連して本明細書において説明されたが、本発明は、本明細書において開示された詳細に限定されるように意図されておらず、むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲に含まれるような、機能的に等価なあらゆる構造、方法、及び使用法にまで及ぶ。